(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
サクションローラは、高分子フィルムなどの帯状シートを負圧吸引しながら搬送するローラであり、代表的には特許文献1(特許第4884166号)に示すように表面に多数の真空吸引孔(吸着孔)が配設されており、真空吸引孔は、ローラの軸方向に延設されている空気の通路である複数のアキシャル孔(吸引路)によって真空源に導かれることにより帯状シートを吸着する構造となっている。
【0003】
被搬送物である帯状シートの種類によってはシートを加温状態により所定の温度に保ちながら搬送したい場合がある。例えばセラミックグリーンシートの製造では、生産効率化の観点から加温状態により所定の温度を保ちながら搬送することが求められる。このようなシートがサクションローラ上を通過する場合においても、表面温度が他の搬送状態と同様の所定の温度に保たれていることが求められる。従来、このような帯状シートを搬送するサクションローラとして、ローラ表面の温度ムラを少なくするために熱伝導率の高い金属製のサクションローラが用いられている。
【0004】
近年、このような、加温状態により所定の温度に保つ必要のある帯状シートについて、更なる生産効率向上が求められており、シート幅を広幅化することが検討されている。シートの広幅化のためには、帯状シートを搬送するサクションローラも軸方向に長尺化させる必要がある。しかし、サクションローラを長尺化するには吸引路も長尺化する必要があるが、特許文献1(特許第4884166号)のような構造の金属製サクションローラの場合、ガンドリルを用いて形成できる貫通孔の長さには限界があること等から、500mm以上の長さの吸引路の形成は困難である。さらに、ローラを長尺化することによる重量の増加や、自重による撓みが大きくなるという問題もある。
【0005】
特許文献2(特許第2822758号)、特許文献3(特許第4203271号)、及び特許文献4(特開2011−51782号公報)では何れも吸着孔の代わりに多孔質の部材を設けたサクションローラが開示されている。ここで提案されているサクションローラでは、多孔質の部材を嵌め込む部分と吸引路部分を一体としてローラ表面側から掘穿できるため、吸引路を軸方向に穿孔して形成する必要がなく、穿孔できる長さの限界による問題は解決できる。しかし、ローラの重量増加の問題や、自重による撓みの問題は解決されていないため長尺化は難しい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施形態について説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。なお、本発明の説明に用いる各図面は、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
本発明のサクションローラは、加温状態を保ちながら、帯状シートを搬送するサクションローラであって、前記帯状シートを吸着するための吸着孔が、外周面に複数穿孔されている、金属製外筒体及び、前記金属製外筒体に内嵌され、前記吸着孔に連通する1又は2以上の吸引路がローラ軸方向に延設され、加熱源及び/又は保熱材が保持される中空部を有する繊維強化樹脂製内筒体を備えたサクションローラである。
【0020】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態に係るサクションローラについて、
図1及び
図2に基づいて説明する。
サクションローラ10は、吸着孔11が外周面に複数穿孔されている中空円筒状の外筒体12と、該吸着孔11に連通しローラ軸方向に延設した吸引路13が周方向にほぼ等間隔に周設され、該外筒体12に内嵌される中空円筒状の内筒体14とを備えている。
【0021】
サクションローラ10の軸方向長さは550mm以上2000mm以下であることが好ましく、700mm以上1500mm以下であることがより好ましい。
【0022】
外筒体12は中空円筒状であり、その厚みは1〜5mmであることが好ましく、2〜3.5mmであることがより好ましい。外筒体の厚みが厚すぎるとローラが重くなってしまうからであり、外筒体12の厚みが薄すぎると表面温度に温度ムラが出来やすくなるからである。
【0023】
外筒体12は、表面温度を均一にするために熱伝導率の高い金属材料で構成されている。また、ローラの重量が重くなりすぎないようにするため、密度の低い金属が好ましく、具体的にはアルミニウム、マグネシウム、銅など又はその合金などを用いることが出来るが、より好ましくはアルミニウムが用いられる。
【0024】
吸着孔11は、外筒体12の径方向に穿孔された、外筒体12を貫通する断面円形の円柱状の孔で、各吸着孔11が等間隔を置いて複数開設された軸方向に延びる列をなし、更にこのような複数の吸着孔11,11,11,…からなる吸着孔の列が、周方向にほぼ等間隔に設けられている。吸着孔11の開口面積は、0.1〜0.5mm
2であることが好ましい。開口面積が大きすぎると被搬送物に吸着痕が生じやすくなり、開口面積が小さすぎると被搬送物を保持する力が弱くなってしまうからである。
【0025】
吸着孔11の形成方法は特に限定せず、ドリルやレーザー加工機等で外筒体表面から穿孔して形成する方法や、その他の公知の方法を用いて形成することができる。吸着孔11の形成は、外筒体12と内筒体14とを嵌合した状態で行ってもよいし、外筒体12と内筒体14とを嵌合する前の外筒体12に行ってもよい。
【0026】
さらに、外筒体12表面は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて耐摩耗性、潤滑性、耐蝕性、耐酸化性、絶縁性、密着性などを向上させる目的で下地処理や表面処理を施してあってもよい。また、吸着孔形成などの際に生じたバリを除去するためにバリ取りなどを施すがことが好ましい。さらに、真円度や円筒度、表面粗さなどの精度を向上させるために研磨などを施してもよい。
【0027】
内筒体14は、長さ500mm以上でも吸引路の形成が容易で、自重で撓むことの少ない軽量でヤング率の高い材料が好ましく用いられる。具体的には、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド系繊維などの強化繊維で強化された繊維強化樹脂(FRP)などを用いることができ、好ましくは炭素繊維強化樹脂(CFRP)が用いられる。繊維強化樹脂のマトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれを用いてもよいが、耐熱性の観点から熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
内筒体14は中空円筒状であり、外筒体12に内嵌されている。内筒体14の厚みは、強度や伝熱効率の点から20〜75mmであることが好ましく、35〜50mmであることがより好ましい。また、内筒体14と外筒体12の厚みの比は1:10〜1:15であることが好ましい。
【0029】
内筒体14の形成方法は特に限定せず、内筒体14の材料に応じて適切な方法を用いることができる。マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いる繊維強化樹脂の場合例えば、シートワインディング法などのプリプレグシートを用いて成形する方法や、フィラメントワインディング法、RTM法、VaRTM法、圧縮成形法などを用いることができ、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いる繊維強化樹脂の場合例えば、押出成形法や引抜成形法、真空成型法、圧縮成形法などを用いることができる。また、その他の公知の方法を用いることもできる。なお、内筒体14は1回の成形により形成してもよいが、円筒を2以上に分割した半円筒状や四分円筒状のような形状のパーツを個々に成形した後、これらを固着等することにより円筒状の内筒体14に形成してもよい。
【0030】
吸引路13は、吸着孔11と連通し、内筒体外表面に凹設されたローラ軸方向に貫通する溝で、周方向にほぼ等間隔に45°の間隔で8本配設されている。吸引路13の幅(周方向距離)は吸着孔11の幅より広いことが好ましく、また、8〜35mmが好ましい。吸引路13の断面積は真空引きの効率の点から15〜40mm
2であることが好ましい。
【0031】
吸引路13は、内筒体14の成形に際して形成してもよいし、円筒状成形体の表面を後加工することにより形成してもよい。
表面の後加工による吸引路の形成方法としては特に限定しないが、グラインダーやレーザー加工機などを用いた研削や切削などにより溝を形成すればよい。従って、500mm以上の長さの吸引路13でも容易に形成することができる。
【0032】
さらに、内筒体14表面は、内筒体14の形成や表面の後加工などの際に生じたバリを除去するためにバリ取りを施すことが好ましく、真円度や円筒度、表面粗さなどの精度を向上させるために研磨などを施してもよい。
【0033】
内筒体14と外筒体12とを嵌合する方法は特に限定しないが、例えば、内筒体14に外筒体12を焼嵌することによって嵌合することができる。その他公知の方法を用いて嵌合させることもできる。
【0034】
尚、サクションローラ10では吸着孔11の開口形状は円形であるが、本発明のサクションローラはこれに限定されない。円形などの楕円形、四角形などの多角形又は任意の形状であってもよいが、好ましくは円形である。また、吸着孔11の形状は柱体に限らず、錐台形状やラッパ形状、釣鐘形状などやそれらを組み合わせた形状であってもよい。
【0035】
吸着孔1の開設パターンは特に限定せず、
図3に示すように、(a)一定でない間隔で吸着孔を開設する、(b)等間隔ではあるが千鳥格子状に吸着孔を開設する、(c)ランダムに開設するなど種々のパターンで開設することができる。なお、
図2(a)〜(c)はローラの円筒側面を展開して平面上に表したものの一部である。(c)のようなパターンでは、外筒体と内筒体を嵌合する際に周方向の位置合わせが簡単になるというメリットがある。
【0036】
また、サクションローラ10では吸引路13はほぼ等間隔に45°の間隔で8本配設されているが、本発明のサクションローラの吸引路の間隔は等間隔に限らない。また、吸引路の本数も限定しない。好ましくは5〜45°の間隔で等間隔に配設されている形態である。なお、吸引路の間隔の角度はサクションローラの径に依存し、サクションローラの直径が80〜500mmの場合、吸引路と吸引路の間の距離は8〜30mmであることが好ましい。以上のような形態では、吸引路の本数は8〜72本となる。
【0037】
吸引路13は断面略四角形状の溝であるが、断面形状は特に限定せず、V字状溝やU字状溝などであってもよい。また、円形などの楕円形、多角形、又はその一部を切断したような形状の断面であってもよい。
【0038】
吸引路13は内筒体外表面に軸方向に平行に凹設されているが、ローラの両端に開口した連通路であればよく、ローラ軸方向に対して所定角度傾いて凹設してもよいし、ローラ表面に螺旋(弦巻線)状に凹設されていてもよい。
また、吸引路は内筒体を軸方向に貫通する孔でもよい。その場合、吸着孔を外筒体だけでなく吸引路に達するように内筒体も穿孔させることで、吸引路と吸着孔を連通させることができる。
【0039】
以上のような構成を有するサクションローラ10の使用方法について説明する。
サクションローラ10は、ローラを加温状態にするため、中空部1に加熱源、保熱材又は加熱源と保熱材の組み合わせを保持することができる。
加熱源はローラを所定の温度に加温するもので、例えばヒーターなどを用いることができる。加熱源は、ローラの外部に設置することもできる。
保熱材は、ローラの温度変化を小さくするために熱を保持する。例えばローラの温度が低下した場合には保熱材に保持された熱によってローラが加温されることで温度変化を小さくすることができる。保熱材は、熱を保持するため、熱伝導率の低い材料からなることが好ましく、例えばシリコーン油などの油を用いることができる。保熱材は中空部1を満たしていることが好ましい。
また、ローラを回転させるための機構に連結するための連結部がローラ両端部に設けられていてもよく、中空部1に回転軸を内挿してもよい。
【0040】
以上のような構成を有する本発明のサクションローラは、吸引路13に、負圧源を接続して用いられる。吸引路13及び、吸引路13と連通する吸着孔11を減圧することで、シート状部材を吸着することができる。この状態でローラを加温しつつ回転させることによりシート状部材を吸着させながら搬送することができる。本発明のサクションローラは、外筒体12が熱伝導率の高い金属で作成されていることから、吸引路13が形成されている内筒体14がFRPで構成されているにもかかわらず、所定温度を例えば60〜100℃、例えば80℃程度に設定した場合において、後述のシミュレーションで示すようにローラ表面温度の温度ムラ(ローラがシート状部材と接触する部分のうち、最も温度が高い部分と最も温度が低い部分の差)を2℃以内におさめることができる。特に好ましい形態では1℃以内におさめることができる。
【0041】
〔第二実施形態〕
本発明の第二実施形態に係るサクションローラについて、
図4に基づいて説明する。
サクションローラ20は、上述の第一実施形態と同様に吸着孔21が外周面に複数穿孔されている中空円筒状の外筒体22と、該吸着孔21に連通しローラ軸方向に延設した断面略円形状の吸引路23が周方向にほぼ等間隔に周設され、該外筒体22に内嵌される中空円筒状の内筒体24とを備え、さらに、該吸引路23の内側表面に被覆材25が設けられている。
【0042】
被覆材25は、吸引路23の空気漏れを防ぐ効果や管摩擦係数を小さくする効果などが得られ、真空引きの際の効率を上げることに役立つ。また、吸引路23の耐久性を高める効果なども得られる。
【0043】
被覆材25の構成材料、配設方法は特に限定せず、表面樹脂コーティングにより形成してもよいし、別途、吸引路23の内周面形状に対応する形状を有する被覆材を吸引路23内に嵌合することにより形成してもよい。また、吸着孔21の内側表面にも同様に被覆部材を貼設してもよい。
【0044】
吸引路23は代表的には
図5又は6に示すような方法で形成することができる。
図5に示す方法では、内筒体24a表面に吸引路形成材26aの一部が露出するように、吸引路形成材26aを内筒体24a内にローラ軸方向に延設するように配置し(
図5(a))、その後、吸引路形成材26aを除去する(
図5(b))ことで内筒体24a表面に凹設された吸引路23aが形成される。
図6に示す方法では、内筒体24b内に吸引路形成材26bをローラ軸方向に延設するように配置し(
図6(a))、その後、吸引路形成材26bを除去する(
図6(b))ことで内筒体24b内を軸方向に貫通する孔23b’が形成される。さらに、内筒体24bの外表面を少なくとも孔23b’に達するまで研磨することにより、孔23b’の一部を内筒体24bの外表面に開口させる(
図6(c))ことで、内筒体24b外表面に凹設された吸引路23bが形成される。
【0045】
吸引路形成材26a又は26bは、熱を加えて溶融させることにより、あるいは、溶媒に溶かすことによって除去することができる。熱を加えて溶融させることにより除去する方法を用いる場合、内筒体24を構成する繊維強化樹脂のマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いると熱により変形する恐れがあるため、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
このような方法を用いることで、吸引路形成材の長さに応じた長さの吸引路23を形成することができる。従って、500mm以上の長さの吸引路23でも容易に形成することができる。
【0046】
〔第三実施形態〕
第一実施形態及び第二実施形態では中空部の熱が、内筒体を通じて外筒体を加温するが、更に伝熱効率をあげるために、熱伝導率の高い物質からなる伝熱体を内筒体の内周面に内設してもよい。伝熱体は、加熱源や保熱材などの中空部の熱を高い熱伝導率により効率よく伝えることができる。加熱源がローラの外部に設置してある場合は外部の加熱源の熱をローラ内部に導く目的で伝熱体を設けることもできる。
また、伝熱体や中空部の熱を外筒体に伝えるため、外筒体の内周面と伝熱体の外周面とを連結するように内筒体内部に複数埋設された、熱伝導率の高い物質からなる柱状の伝熱連結部材を有していてもよい。
【0047】
伝熱体は
図7に示すように、内筒体34に内嵌された中空円筒状の伝熱体37と、伝熱体37と外筒体32を連結するように内筒体34内に埋設された伝熱連結部材38との組み合わせでもよいし、
図8に示すように内筒体44の内周面に貼り付けられた複数のシート状の伝熱体47であってもよい。
【0048】
伝熱体及び伝熱連結部材は、銅などの熱伝導率の高い物質からなることが好ましい。また、伝熱連結部材はヒートパイプであってもよい。
【0049】
以上のような構成を有するサクションローラ30の使用形態の一例を
図9に示す。
図9に示す使用形態では、
図7に示すサクションローラ30の中空部に加熱源2、保熱材3及び回転軸4を保持している。
【0050】
〔製造方法〕
本発明のサクションローラの製造方法は、
(1)金属製円筒体に複数の吸着孔を穿孔する工程、
(2)前記金属製円筒体の内周に嵌挿できる繊維強化樹脂製円筒体の外周面に、軸方向に延びる吸引路を開設する工程、及び
(3)前記吸着孔の少なくとも1つ以上が前記吸引路に連通するように、前記金属製円筒体と前記繊維強化樹脂製円筒体とを嵌合する工程
を含む。
【0051】
前記吸着孔は例えば、ドリルやレーザー加工機等を用いて前記金属製円筒体表面をローラ径方向に穿孔することにより形成することができる。
前記吸着孔の穿孔は、前記金属製円筒体と前記繊維強化樹脂施円筒体を嵌合する前におこなってもよいし、前記金属製円筒体と前記繊維強化樹脂製円筒が嵌合された状態でおこなってもよい。
【0052】
前記吸引路の開設は例えば、前記繊維強化樹脂施円筒体外表面にグラインダーやレーザー加工機などを用いて研削や切削することにより開設することができる。
他の方法として、吸引路形成材を前記繊維強化樹脂施円筒体内にローラ軸方向に延設するように配置し、その後該吸引路形成材を除去することにより開設することもできる。
また別の方法として、前記繊維強化樹脂製円筒体の軸方向に延設する貫通孔を形成した後、該繊維強化樹脂製円筒体の外周面を研磨して、該貫通孔の一部が該外周面にて開口することにより開設することもできる。前記貫通孔の形成は例えば、吸引路形成材を前記繊維強化樹脂施円筒体内にローラ軸方向に延設するように配置し、その後該吸引路形成材を除去することにより行うことができる。
【0053】
前記金属製円筒体と前記繊維強化樹脂製円筒体とを嵌合する方法は特に限定しないが、焼き嵌めや冷やし嵌めなどによって外嵌や内嵌することにより行うことができる。
【0054】
〔数値解析〕
本発明の外筒体の厚みとローラ表面の温度保持との関係について、解析モデル1〜4に基づいて説明する。数値解析に用いた解析モデルは、本発明の範囲を限定するものではない。
【0055】
(解析モデル1)
図10に示すように、内径φ
1が250mm、外径φ
2が340mm、外筒体の厚みdが3mmのサクションローラ50を27℃の気体中で角速度1.324rad/sで回転させた。前記サクションローラ50は、アルミニウムを外筒体51として採用し、CFRPを内筒体52として採用した。前記内筒体の内側中空部には出力1350Wの加熱源53を取り付け、保熱材54としてシリコーン油を採用し、中空部をシリコーン油で満たした。前記CFRPの熱伝導率は8W/(m・K)、前記CFRPの熱伝導率は228W/(m・K)、前記シリコーン油の熱伝達率は51W/(m
2・K)、前記気体の熱伝達率は7W/(m
2・K)とした。前記CFRPの熱伝導率については、本発明に用いることが出来るCFRPを、熱線法を用いる非定常熱流法により測定した値を用いた。また、前記熱伝達率については計算により求めた。このサクションローラを、ローラ表面温度が所定温度T
C(80℃)になるように前記加熱源により加温した時の熱分布を、熱流体解析ソフトウェア(Pro/MECHANICA)を用いて数値解析を行った。この結果を
図11に示す。
図11はローラ表面の周方向距離−表面温度特性を示した図である。
【0056】
(解析モデル2)
外筒体の厚みdが2mmである以外は解析モデル1と同様のサクションローラについて、解析モデル1と同様に数値解析を行った。
【0057】
(解析モデル3)
外筒体の厚みdが1mmである以外は解析モデル1と同様のサクションローラについて、解析モデル1と同様に数値解析を行った。
【0058】
(解析モデル4)
外筒体が無い(外筒体の厚みdが0mmである)以外は解析モデル1と同様のサクションローラについて、解析モデル1と同様に数値解析を行った。この結果を
図12に示す。
図12はローラ表面の周方向距離−表面温度特性を示した図である。
【0059】
また、解析モデル1〜4の解析結果について、それぞれのローラ表面温度の最高値T
h、最低値T
L、温度ムラ(最高温度と最低温度の差(T
h-T
L))を表1に示す。
【0061】
表1に示すように、外筒体を有しない解析モデル4は温度差2℃以内を達成できなかった。これに対し解析モデル1〜3はいずれも、温度差2℃以内を達成できた。
解析モデル1〜3との比較からわかるように、外筒体の厚みが厚くなるほど温度ムラを小さくでき、外筒体厚み3mmのモデルでは温度ムラ1℃以内を達成できた。しかしながら、外筒体の厚みを厚くするほどローラの重量は増加し、また、外筒体の厚み増大による温度ムラ低減の効果は正比例の関係になく、厚みが厚くなるほど厚みの増加に対する温度ムラ低減の効果の伸びが鈍化することから、外筒体の厚みは3mm程度が好ましい。