特許第5972257号(P5972257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972257
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20160804BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20160804BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
   C04B37/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-503600(P2013-503600)
(86)(22)【出願日】2012年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2012055965
(87)【国際公開番号】WO2012121331
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-53208(P2011-53208)
(32)【優先日】2011年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】平川 敏弘
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2003/078026(WO,A1)
【文献】 特開2007−229700(JP,A)
【文献】 特開2003−254034(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/108328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/20
B01D46/00−46/54
F01N3/022
C04B37/00−38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面から他方の端面まで貫通し流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、前記一方の端面における所定のセルの開口部および前記他方の端面における残余のセルの開口部を封止する目封止部とを有し、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された複数のハニカムセグメント、
前記複数のハニカムセグメントの対向する側面同士を接合する接合部、および、
前記複数のハニカムセグメントと接合部とで構成されるハニカム構造部の外周面を覆う外周壁を含み、
前記ハニカム構造の両端面上における最長部を長径とし、前記端面上において前記長径と直交する向きの最長部を短径としたとき、アスペクト比(長径/短径)が1.2以上であるハニカム構造体において、
前記接合部と前記外周壁との交点から前記短径の方向に沿って10mm以内の接合部の領域である角部が、前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在し、前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する前記角部を含む接合部の厚さが0.5mm以上5mm以下であって、その他の部分における接合部の厚さが1.5mm以下であり、前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する前記角部を含む接合部の厚さより、その他の接合部の厚さが薄い事を特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する前記角部を含む接合部の厚さが1mm以上1.5mm以下である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
短径が150mm以上である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する前記角部を含む接合部以外の接合部において、厚さ0.5mm未満の接合部を少なくとも1箇所含む請求項1〜のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関し、更に詳しくは、端面のアスペクト比が1.2以上であって、フィルタの内外温度差が発生した時に、フィルタの接合部にクラックが生じにくいハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関、ボイラー、化学反応機器、及び燃料電池用改質器などの触媒作用を利用する触媒用担体や、排ガス中の粒子状物質、特にディーゼル微粒子の捕集フィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:以下、「DPF」ということがある)などに、セラミックスからなるハニカム構造体が用いられている。
【0003】
このような目的に使用されるハニカム構造体は、一般に、多孔質の隔壁によって区画された流体の流路となる複数のセルを有する。粒子状物質の捕集用のフィルタとして用いられる場合には、端面が市松模様状を呈するように、隣接するセルが互いに反対側の端部において目封止された構造を有する。このような構造を有するハニカム構造体において、被処理流体は流入側端面が封止されていないセル、即ち流出側端面が封止されているセルに流入し、多孔質の隔壁を通って隣のセル、即ち、流入側端面が封止され、流出側端面が封止されていないセルから排出される。この際、隔壁がフィルタとなり、例えば、DPFとして使用した場合には、ディーゼルエンジンから排出されるススなどの粒子状物質(パティキュレート・マター:以下「PM」と表記する場合がある。)が隔壁に捕捉され隔壁上に堆積する。
【0004】
このようなハニカム構造体としては、ハニカム形状の複数のハニカムセグメントを接合材で接合して構成されるものが知られている。具体的には、ハニカム形状の複数のハニカムセグメントを接合材で接合して構成されるハニカム構造部と、このハニカム構造部の外周面を覆うように形成された外周壁と、を備えるものなどを挙げることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−291054
【発明の概要】
【0006】
内燃機関の排ガス浄化フィルタにおいては、Soot Mass Limit(以下、「SML」と表記する場合がある。)、圧損およびコストが重要である。SMLを向上させるためには、フィルタ容量を大きくすることおよびフィルタ基材を緻密化することという手法が考えられる。しかしながら、前者はコストを上昇させ、後者は圧損を悪化させる。そこで、別の方法として、SiCやSiNのような熱伝導率の高い基材が使われる例が見られる。しかしながら、これらの基材は熱膨張係数が大きいという欠点を有する。そこで、四角柱や三角柱のような形状をしたセグメントと呼ばれるものを接合材で張り合わせた構造をとり、接合材において、セグメントの熱膨張を吸収させて、基材の熱膨張係数が高いという欠点を補う場合がある。しかしながら、熱膨張係数が高いということに変わりはないため、過剰なSoot(排ガス中の粒子状物質)をフィルタに堆積させて燃焼させた場合には、基材や接合部にクラックを生じさせ、フィルタとしての機能に影響を及ぼすことになる。特に、端面の形状が円形ではない場合には、端面の形状が円形である場合に比べて、急激な温度変化を伴う条件下において、よりクラックが発生しやすい傾向にあった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ハニカム構造体の両端面上における最長部を長径とし、前記端面上において前記長径と直交する向きの最長部を短径としたとき、アスペクト比(長径/短径)が1.2以上であるハニカム構造体であって、クラックが発生しにくいハニカム構造体を提供することにある。
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の部位の接合部の厚さを規定することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0010】
[1] 一方の端面から他方の端面まで貫通し流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、前記一方の端面における所定のセルの開口部および前記他方の端面における残余のセルの開口部を封止する目封止部とを有し、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された複数のハニカムセグメント、前記複数のハニカムセグメントの対向する側面同士を接合する接合部、および、前記複数のハニカムセグメントと接合部とで構成されるハニカム構造部の外周面を覆う外周壁を含み、前記ハニカム構造の両端面上における最長部を長径とし、前記端面上において前記長径と直交する向きの最長部を短径としたとき、アスペクト比(長径/短径)が1.2以上であるハニカム構造体において、前記接合部と前記外周壁との交点から前記短径の方向に沿って10mm以内の接合部の領域である角部が、前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在し、前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する前記角部を含む接合部の厚さが0.5mm以上5mm以下であって、その他の部分における接合部の厚さが1.5mm以下であり、前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する前記角部を含む接合部の厚さより、その他の接合部の厚さが薄い事を特徴とするハニカム構造体。
【0011】
[2] 前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する前記角部を含む接合部の厚さが1.0mm以上1.5mm以下である上記[1]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[3] 短径が150mm以上である上記[1]に記載のハニカム構造体。
【0014】
] 前記長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する前記角部を含む接合部以外の接合部において、厚さ0.5mm未満の接合部を少なくとも1箇所含む上記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
本発明のハニカム構造体によれば、アスペクト比が1.2以上であるハニカム構造体において、長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部を含む接合部の厚さを0.5mm以上5.0mm以下としたため、急激な温度変化によって発生するハニカム構造体の端面におけるクラックの発生が抑制される。ここで、角部とは、前記接合部と前記外周壁との交点から前記短径の方向に沿って10mm以内の接合部の領域である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のハニカム構造体の第1の実施形態の端面を示す平面図である。
図2】本発明のハニカム構造体の第1の実施形態を示す模式的斜視図である。
図3】本発明のハニカム構造体の第1の実施形態を構成するハニカムセグメントの端面を示す平面図である。
図4】本発明のハニカム構造体の第2の実施形態の端面を示す平面図である。
図5】本発明のハニカム構造体の第3の実施形態の端面を示す平面図である。
図6】本発明のハニカム構造体の第4の実施形態の端面を示す平面図である。
図7】本発明のハニカム構造体の第5の実施形態の端面を示す平面図である。
図8】接合部の厚さ(接合幅)が0.4mmである位置とクラック発生温度との関係を示すグラフである。
図9】本発明のハニカム構造体の第1の実施形態の端面を示す平面図であり、ハニカム構造体のクラック発生のメカニズムを説明する図である。
図10】本発明のハニカム構造体の第1の実施形態の端面の一部拡大図であり、角部を含む接合部を説明する図である。
図11】本発明のハニカム構造体の第4の実施形態の端面の拡大図であり、角部を含む接合部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良などが加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0018】
[1]ハニカム構造体:
図1は、本発明のハニカム構造体の第1の実施形態の端面を示す平面図であり、図2は、本発明のハニカム構造体の第1の実施形態を示す模式的斜視図であり、図3は、本発明のハニカム構造体の第1の実施形態を構成するハニカムセグメントの端面を示す平面図である。図1図3に示すように、本実施形態のハニカム構造体100は、一方の端面2から他方の端面2まで貫通し流体の流路となる複数のセル4を区画形成する多孔質の隔壁5と一方の端面2における所定のセル4の開口部及び他方の端面2における残余のセル4の開口部を封止する目封止部8とを有する複数のハニカムセグメント10からなるハニカム構造部11と、このハニカム構造部11の外周面を覆うように形成された外周壁20と、を備えている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のハニカム構造体100は、端面上における最長部を長径Lとし、端面上において前記長径Lと直交する向きの最長部を短径Lとしたとき、アスペクト比(長径/短径)が1.2以上である。すなわち、短径Lに対する長径Lのアスペクト比が1.2以上である。このようなハニカム構造体100は、DPF中心部が高温でかつ、外周部が低温となった場合、中心部では膨張する力が発生する一方、外周部では低温域であるために中心部ほどの膨張力が発生しない。このため、引張り応力が発生する。アスペクト比が1.2以上の場合、引張り応力は長径方向中央部で最大となり、そこに接合部40が存在すると、基材強度よりも接合剥離強度の方が弱いため、接合部にクラックが発生することになる。通常、接合部40に使われている接合材は、このようなクラック発生を防止するため、一定のヤング率を持った材料が使われるが、接合部40が薄い場合、接合材が持っているヤング率では応力を吸収できずにクラック発生に至ってしまう。
【0020】
そこで、本実施形態のハニカム構造体100においては、接合部40と外周壁20との交点から短径Lの方向に沿って10mm以内の接合部40の領域である角部が、長径L上の中心点Cを通り短径Lに平行な直線Cから25mm以内に存在し、「長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部」50を含む接合部40の厚さを0.5mm以上とした。ここで、接合部の厚さとは、当該接合部により接合されるハニカムセグメントの側面同士の距離を指す。また、角部を含む接合部とは、角部を形成する接合部を、接合部の厚さ方向に垂直な方向に延長した部分に存在する接合部全体を指す。すなわち、図10および図11の斜線部Sを指す。長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部50を含む接合部40の厚さは0.5〜5.0mmであることが好ましく、1.0〜1.5mmであることが更に好ましい。0.5mmより薄いと、急激な温度変化により角部においてクラックが発生しやすくなる。5.0mmより厚いと、排ガスが通過する方向(セルの延びる方向)に垂直な断面において、接合部40の面積が大きくなるため、排ガスを流すときに、圧力損失が大きくなることがある。
【0021】
長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部50を含む接合部以外の接合部40の厚さは、1.5mm以下であることが好ましく、0.1〜1.5mmであることが更に好ましい。0.1mmより薄いと、ハニカムセグメント10を接合する力が弱くなることがあり、更に、隣接するハニカムセグメント10同士が接触することがある。1.5mmより厚いと、排ガスが通過する方向(セルの延びる方向)に垂直な断面において、接合部40の面積が大きくなるため、排ガスを流すときに、圧力損失が大きくなることがある。なお、接合部40の厚さが隣接するハニカムセグメント10間の距離になる。
【0022】
本実施形態のハニカム構造体においては、長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部50を含む接合部の厚さに比べて、長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部50を含む接合部以外の接合部40の厚さが薄い方が好ましい。内燃機関の排ガス浄化フィルタ等に用いられるハニカム構造体は、圧損が少ないことが望ましい。ハニカム構造体の圧損を減少させるための方法の一つとして、端面の開口率を大きくすることが挙げられる。ハニカムセグメントおよび接合部を含むハニカム構造体においては、接合部の厚さを薄くすることにより開口率を大きくすることができる。本実施形態のハニカム構造体においては、長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部50を含む接合部の厚さに比べて、長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部50を含む接合部以外の接合部40の厚さを薄くすることで、クラックの発生を抑制しつつ、効率的に開口率を増大させ、圧損を減少させることが可能となる。
【0023】
本実施形態のハニカム構造体においては、長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部50を含む接合部以外の接合部40において、厚さ0.5mm未満の接合部40を少なくとも1箇所含むのが好ましい。内燃機関の排ガス浄化フィルタ等に用いられるハニカム構造体は、圧損が少ないことが望ましい。ハニカム構造体の圧損を減少させるための方法の一つとして、端面の開口率を大きくすることが挙げられる。ハニカムセグメントおよび接合部を含むハニカム構造体においては、接合部の厚さを薄くすることにより開口率を大きくすることができる。本実施形態のハニカム構造体においては、長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部50を含む接合部以外の接合部40の厚さを、少なくとも1箇所において0.5mm未満とすることにより、クラックの発生を抑制しつつ、開口率を増大させ、圧損を減少させることが可能となる。長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部50を含む接合部以外の接合部40の少なくとも1箇所以上厚さは、0.1mm以上0.5mm未満であることが好ましい。
【0024】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル4の延びる方向に垂直な断面における全体形状が、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、これらの形状の組合せ(例えば、一方の端面における全体形状が四角形であり、他方の端面における全体形状が円形である場合など)を挙げることができる。
【0025】
ハニカム構造体100の全体の大きさは、特に限定されず、所望の大きさとすることができる。具体的には、ハニカム構造体100の長径が80〜300mmであることが好ましく、100〜280mmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造体100のセル4の延びる方向の長さ(中心軸方向の長さ)は、100〜350mmであることが好ましく、100〜300mmであることが更に好ましい。
【0026】
[1−1]ハニカムセグメント:
ハニカムセグメント10の材料としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れることにより、炭化珪素(SiC)、素(SiN)、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。これらの中でも、炭化珪素が好ましい。セラミック原料の含有量は、成形原料全体に対して40〜90質量%であることが好ましい。
【0027】
ハニカムセグメント10(ハニカムセグメント10を構成する隔壁5)は、多孔質であることが好ましい。ハニカムセグメント10の気孔率は30〜70%であることが好ましく、40〜60%であることが更に好ましい。気孔率をこのような範囲とすることにより、強度を維持しながら圧力損失を小さくすることができる。気孔率が30%未満であると、圧力損失が上昇することがある。気孔率が70%を超えると、強度が低下したり、熱伝導率が低下したりすることがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0028】
ハニカムセグメント10は、平均細孔径が5〜30μmであることが好ましく、10〜25μmであることが更に好ましい。平均細孔径をこのような範囲とすることにより、粒子状物質(PM)を効果的に捕集することができる。平均細孔径が5μm未満であると、粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすくなることがある。平均細孔径が30μmを超えると、粒子状物質(PM)がフィルタに捕集されず通過することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0029】
ハニカムセグメント10の材質が炭化珪素である場合、炭化珪素粒子の平均粒径が5〜40μmであることが好ましい。このような平均粒径とすることにより、フィルタに好適な気孔率、気孔径に制御しやすいという利点がある。平均粒径が5μmより小さいと、気孔径が小さくなり過ぎ、40μmより大きいと気孔率が大きくなり過ぎることがある。気孔径が小さ過ぎると粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすくなることがあり、気孔率が大き過ぎると圧力損失が上昇することがある。原料の平均粒径は、JIS R 1629に準拠した方法で測定した値である。
【0030】
ハニカムセグメント10のセル4の形状(ハニカム構造体100のセル4が延びる方向に対して垂直な断面におけるセル4の形状)は、四角形、六角形、八角形またはその組み合わせが好ましく、正方形又は長方形が更に好ましい。
【0031】
隔壁5の厚さは、0.20〜0.50mmであることが好ましく、0.25〜0.45mmであることが更に好ましい。隔壁5の厚さが、0.20mmより薄いと、ハニカム構造体100の強度が低下することがある。隔壁5の厚さが0.50mmより厚いと、排ガスを処理する隔壁5の面積が小さくなり、排ガスを処理する能力が低下することがあり、また、排ガスを処理するときの圧力損失が増大することがある。
【0032】
ハニカムセグメント10のセル密度は、20〜90セル/cmであることが好ましく、30〜70セル/cmであることが更に好ましい。20セル/cmより小さいと、隔壁の厚さが厚くなりすぎるか、又はセルの幅が大きくなりすぎることがある。90セル/cmより大きいと、隔壁の厚さが薄くなりすぎるか、又はセルの幅が小さくなりすぎることがある。
【0033】
また、ハニカムセグメント10の個数は、本実施形態のハニカム構造体100のセル4の延びる方向に垂直な断面内において、4〜60個であることが好ましく、9〜40個であることが更に好ましい。ハニカムセグメント10の大きさは、セル4の延びる方向に垂直な断面の面積が9〜25cmであることが好ましく、12〜19cmであることが更に好ましい。9cmより小さいと、ハニカム構造体100に排ガスが流通するときの圧力損失が大きくなることがあり、25cmより大きいと、ハニカムセグメント10が破損するおそれがある。
【0034】
複数のハニカムセグメント10は、多角柱状の柱状ハニカムセグメント10を有している。柱状ハニカムセグメント10としては、具体的には、四角柱状、六角柱状、八角柱状、三角柱状、円柱状などを挙げることができる。あるいは、それらを組み合わせても良い。これらの中でも、製造が容易であるという観点から、図2に示すように、四角柱状であることが好ましい。
【0035】
ハニカム構造体100(ハニカム構造部11)は、図1および図2に示すように、複数のハニカムセグメント10が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されるとともに、対向する側面同士が接合部40により接合されて構成されている。接合部40は、隣接するハニカムセグメント10の対向する側面の全体に配置されることが好ましい。接合部40の材料は、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC(炭化珪素)粒子などの無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤などの添加材を加えたものに水を加えて混練したものなどが好ましい。
【0036】
目封止部8の材質(セラミックス原料)は、ハニカム構造体100を構成する隔壁5の材質と同じ材質とすることが好ましい。これにより、焼成時に、目封止部8が隔壁5と強固に結合するようになる。
【0037】
目封止部8は、所定のセル4と残余のセル4とが、ハニカムセグメント10の端面に市松模様が形成されるように、交互に配置されていることが好ましい。
【0038】
目封止部8の深さは、1.0〜15.0mmであることが好ましく、3.0〜12.0mmであることが更に好ましい。1.0mmより浅いと、目封止部8の強度が低下するおそれがある。一方、15.0mmより深いと、隔壁5の、PMを捕集する面積が小さくなるおそれがある。ここで、目封止部8の深さとは、目封止部8の、セル4の延びる方向における長さを意味する。
【0039】
[1−2]外周壁:
外周壁20は、上述したように、ハニカム構造部11の外周面を覆うように形成されたものである。このように外周壁20を備えることによって、ハニカム構造体100の外周の凹凸をより少なくすることができる。
【0040】
外周壁20は、成形時に多孔質基材と一体的に形成させる成形一体壁であることが好ましいが、成形後に、多孔質基材の外周を研削して所定形状とし、セラミックセメントなどで外周壁を形成するセメントコート壁であることも好ましい態様である。成形一体壁の場合、外周壁20の材質は、隔壁5の材質と同じであることが好ましい。また、外周壁20がセメントコート壁の場合、セメントコート壁の材質としては、共素地にガラスなどのフラックス成分を加えた材料などを挙げることができる。
【0041】
外周壁20の厚さは、0.1〜3.0mmであることが好ましく、0.3〜2.0mmであることが更に好ましい。0.1mmより薄いと、外周コートを行うときにクラックが発生し易くなることがある。3.0mmより厚いと、排ガスを流すときに、圧力損失が大きくなることがある。
【0042】
[1−3]触媒:
本発明のハニカム構造体は、隔壁に触媒を担持していてもよい。触媒を担持することによって、排ガス中に含まれるCO、HCおよびNOを浄化することができる。
【0043】
触媒としては、三元触媒、酸化触媒、NO選択還元用SCR触媒およびNO吸蔵触媒などを挙げることができる。酸化触媒には、貴金属が含有される。この貴金属としては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、およびパラジウム(Pd)からなる群より選択される一種以上が好ましい。貴金属の合計量は、ハニカム構造体100の単位体積(1リットル)当り、10〜100gであることが好ましい。
【0044】
三元触媒とは、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NO)を浄化する触媒のことをいう。例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)およびロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができる。この三元触媒により、炭化水素は水と二酸化炭素に、一酸化炭素は二酸化炭素に、窒素酸化物は窒素に、それぞれ酸化または還元によって浄化される。
【0045】
NO選択還元用SCR触媒としては、金属置換ゼオライト、バナジウム、チタニア、酸化タングステン、銀、およびアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを挙げることができる。また、NO吸蔵触媒としては、アルカリ金属、および/またはアルカリ土類金属などを挙げることができる。アルカリ金属としては、K、NaおよびLiなどを挙げることができる。アルカリ土類金属としては、Caなどを挙げることができる。K、Na、Li、およびCaの合計量は、ハニカム構造体100の単位体積(1リットル)当り、30〜300gであることが好ましい。
【0046】
[2]ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体の一実施形態は、例えば、以下のようにして作製することができる。
【0047】
[2−1]ハニカムセグメントの作製:
まず、セラミック原料にバインダ、界面活性剤、造孔材、水などを添加して成形原料とする。セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合材料が好ましい。珪素−炭化珪素系複合材料とする場合、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末を混合したものをセラミック原料とする。セラミック原料の含有量は、成形原料全体に対して40〜90質量%であることが好ましい。
【0048】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜20質量%であることが好ましい。
【0049】
水の含有量は、成形原料全体に対して7〜45質量%であることが好ましい。
【0050】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールなどを用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0051】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂およびシリカゲルなどを挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して15質量%以下であることが好ましい。
【0052】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機などを用いる方法を挙げることができる。
【0053】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を複数個形成する。押出成形に際しては、所望のハニカムセグメント形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度などを有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有するものである。
【0054】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周部の厚さなどは、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0055】
得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥および高周波誘電加熱乾燥などの電磁波加熱方式と、熱風乾燥および過熱水蒸気乾燥などの外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜90質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0056】
ハニカム成形体のセルの延びる方向における長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機などを用いる方法を挙げることができる。
【0057】
次に、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を作製することが好ましい。焼成の前に、バインダなどを除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉およびガス炉などを用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素およびアルゴンなどの不活性雰囲気において、1300〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。
【0058】
次に、得られたハニカム焼成体の、流体の入口側の端面における所定のセルの開口部と、流体の出口側の端面における残余のセルの開口部に目封止部を形成し、ハニカムセグメントを作製する。目封止部を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。ハニカム焼成体の一方の端面にシートを貼り付けた後、当該シートの目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に穴を開ける。そして、目封止部の構成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカム焼成体の当該シートを貼り付けた端面に浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止部を形成しようとするセルの開口部内に目封止用スラリーを充填する。
【0059】
そして、ハニカム焼成体の他方の端面については、一方の端面において目封止を施さなかったセルについて、上記一方の端面に目封止部を形成した方法と同様の方法で目封止部を形成する(目封止用スラリーを充填する)。目封止用スラリーは、ハニカム成形体のセラミック原料にメチルセルロースなどのバインダと造孔材を加えて、混合したものを使用することが好ましい。目封止部を形成した後に、上記焼成条件と同様の条件で焼成を行うことが好ましい。また、目封止部の形成は、ハニカム成形体を焼成する前に行ってもよい。
【0060】
[2−2]ハニカム構造体の作製:
所定数のハニカムセグメントを接合材で接合し、乾燥させて、複数個のハニカムセグメントが、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されると共に、対向する側面同士が接合部により接合されたハニカム構造体を形成する。接合部は、対向する側面全体に配設されることが好ましい。接合部は、ハニカムセグメントが熱膨張、熱収縮したときに、体積変化分を緩衝する(吸収する)役割を果たすとともに、各ハニカムセグメントを接合する役割を果たす。
【0061】
接合材をハニカムセグメントの側面に塗布する方法は、特に限定されず、刷毛塗りなどの方法を用いることができる。
【0062】
接合材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子などの無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤などの添加材を加えたものに水を加えて混練したスラリーなどを挙げることができる。
【0063】
複数のハニカムセグメントを接合材で接合し、乾燥させてハニカムセグメント接合体(ハニカム構造部)を得る。次に、ハニカムセグメント接合体の外周部分を、所定の切削線に沿って切削して、切削加工されたハニカムセグメント接合体を得る。切削加工されたハニカムセグメント接合体の外周面に、外周コート処理を行って外周壁を形成する。外周コート処理の方法としては、外周コート材をハニカムセグメント接合体の外周面に塗布して、乾燥させる方法を挙げることができる。外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤、水などを混合したもの等を用いることができる。また、外周コート材を塗布する方法は、特に限定されず、ハニカムセグメント接合体をろくろ上で回転させながらゴムへらなどでコーティングする方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(実験例1)
まず、セラミックス原料として、SiC粉、金属Si粉を80:20の質量割合で混合し、これに、成形助材としてメチルセルロースおよびヒドロキシプロポキシメチルセルロース、造孔材として澱粉と吸水性樹脂、界面活性剤および水を添加して混練し、真空土練機により四角柱状の坏土を作製した。
【0066】
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形で、全体形状が四角柱形のハニカム成形体を得た。そして、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、ハニカム成形体の両端面にマスクを貼り付けた。その後、上記マスクの、ハニカム成形体の一方の端面における所定のセルの開口部に対応する部分、及び、他方の端面における残余のセルの開口部に対応する部分に孔を開けた。次に、一方の端部をSiC原料を含有する目封止スラリーに浸漬した後、他方の端部を目封止スラリーに浸漬した。このようにして、一方の端面における所定のセルの開口部及び他方の端面における残余のセルの開口部に、いわゆる市松模様状に交互に目封止スラリーを充填した。その後、熱風乾燥機で乾燥し、更に、1410〜1440℃で、15時間、焼成することによって、一方の端面における所定のセルの開口部及び他方の端面における残余のセルの開口部に、いわゆる市松模様状に交互に目封止部が配設されたハニカム焼成体(ハニカムセグメント)を得た。
【0067】
得られたハニカムセグメントは、セルの延びる方向に直交する断面の、端部の幅が36.0mmであった。また、ハニカムセグメントのセルの延びる方向に直交する断面の面積(セグメント面積)は、1296mmであった。また、ハニカムセグメントのセルの延びる方向における長さは152.4mmであった。また、ハニカムセグメントの、隔壁の厚さは0.3mmであり、セル密度は46.5セル/cmであった。
【0068】
次に、所定数のハニカムセグメントを接合材で接合し、乾燥させて、複数個のハニカムセグメントが互いの側面同士が対向するように隣接して配置されるとともに、対向する側面同士が接合部により接合されたハニカムセグメント接合体を形成した。この際、ハニカムセグメント接合体の端面のアスペクト比が1.0〜2.0である長方形であり、長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部を含む接合部(以下、中央接合部と表記する場合がある。)の厚さが、乾燥後に0.2〜1.0mmとなるよう調製して複数のハニカムセグメント接合体を製造した。ここで、角部とは、接合部と外周壁との交点から短径の方向に沿って10mm以内の接合部の領域である。その他の部分の接合部の厚さは、乾燥後に1.0mmとなるよう調製した。
【0069】
その後、複数のハニカムセグメント接合体の外周を粗加工、研削して楕円筒状の所望の形状を得た。その際、アスペクト比が1.0〜2.0になるように、外周加工旋盤におけるハニカムセグメント接合体の把持位置を調整した。外周加工後、ハニカムセグメント接合体において外周コート処理を行い、ハニカムセグメント接合体の最外周に外周部を配設して、図1に示すような、ハニカム構造体を複数得た。なお、外周コート処理に使用した外周コート材としては、SiC粒子、及び、コロイダルシリカを混合したものを用いた。
【0070】
以上のようにして、容積が2.5L、長さが152.4mmであり、アスペクト比が1.0〜2.0であり、かつ、中央接合部の厚さが0.2〜1.0mmである66個のハニカム構造体を得た。
【0071】
得られたハニカム構造体について、「電気炉ポーリング試験」を行った。
本実施例で採用した電気炉ポーリング試験では、製品全体が350℃に達するまで電気炉内に保持しておき、その後電気炉から大気中に一気に製品を取り出して冷却させ、製品にクラックが発生するかどうかをチェックした。この方法は、内燃機関の排ガス浄化用セラミック担体の耐熱衝撃性試験としてよく用いられている。結果を表1に示す。表1において、クラックが発生しなかった場合にOK、クラックが発生した場合にNGと表記した。なお、NGの場合に発生したクラックは、いずれも接合部に発生していた。
【0072】
【表1】
【0073】
表1から、アスペクト比が高く、中央接合部の厚さが薄いものに選択的にクラックが入っていることがわかる。
【0074】
(実験例2および3)
電気炉の温度を400℃(実験例2)及び450℃(実験例3)としたことを除いて、実験例1と同様の試験を行った。結果を表2および3に示す。表2および表3において、クラックが発生しなかった場合にOK、クラックが発生した場合にNGと表記した。なお、NGの場合に発生したクラックは、いずれも接合部に発生していた。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
表2および表3から、実験例2および3においても、実験例1と同様にアスペクト比が高く、中央接合部の厚さが薄いものに選択的にクラックが入っていることがわかる。さらに、表1〜3により、アスペクト比が1.2以上の場合は中央接合部の厚さが0.5mm以上ないと低温でクラックが発生してしまうことがわかる。
【0078】
(実験例4〜6)
ハニカム構造体の形状を、端面が図4図5および図6の形状となる形状とした以外、上記実験例1と同様にして実験を行った。実験例1と同様な結果が得られた。
【0079】
(実験例7)
図7は、実験例7に使用したハニカム構造体の端面の形状を示す平面図である。実験例7においては、長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部を含む接合部以外の接合部である破線部の接合部の厚さを0.2〜1.0mmとし、その他の接合部の厚さを1.0mmとし、電気炉の温度を450℃とした以外、実験例1と同様とした。結果を表4に示す。表4において、クラックが発生しなかった場合にOK、クラックが発生した場合にNGと表記した。なお、NGの場合に発生したクラックは、いずれも接合部に発生していた。
【0080】
【表4】
【0081】
表4より明らかなように、長径上の中心点を通り前記短径に平行な直線から25mmよりも離れた接合部の厚さが薄くなったとしても、クラック発生に対して特別弱くなったりはしていない。
【0082】
(実験例8)
長径上の中心点を通り短径に平行な直線から0〜40mm離れた位置における角部を含む接合部の厚さを0.4mmとし、その他の部位の接合部の厚さは1.0mmとし、アスペクト比を1.8として、実験例1と同様の試験を行った。結果を図8に示す。図8は、クラック発生温度と接合部の厚さ(接合幅)が0.4mmである位置の関係を示すグラフである。図8中、横軸は、接合厚さを0.4mmとした位置、すなわち、長径の中心点を通り短径に平行な直線からの距離(mm)を示し、縦軸は、クラック発生温度を示す。図8より明らかなように、長径の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内にあるときにクラック発生温度が著しく低下する。
【0083】
図9は、本発明のハニカム構造体の第1の実施形態の一方の端面を示す平面図であり、ハニカム構造体のクラック発生のメカニズムを説明する図である。DPF中心部が高温、外周部が低温となった場合、9−1を高温−低温の境界とすると、中心部では9−2のような膨張する力が発生し、外周部では低温域であるために中心部ほどの膨張力が発生せず、9−4に示すような引張り応力が発生する。アスペクト比が1以上の場合、引張り応力は9−3のような長径方向中央部で最大となり、そこに接合部が存在すると、基材強度よりも接合剥離強度の方が弱いため、接合部にクラックが発生することになる。通常、接合部に使われている接合材は、このようなクラック発生を防止するため、一定のヤング率を持った材料が使われるが、接合層が薄い場合、接合材が持っているヤング率では応力を吸収できずにクラック発生に至ってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のハニカム構造体は、内燃機関などから排出される排ガス中の微粒子を捕集するためのフィルタとして用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
2:端面、4:セル、5:隔壁、8:目封止部、10:ハニカムセグメント、11:ハニカム構造部、20:外周壁、40:接合部、50:長径上の中心点を通り短径に平行な直線から25mm以内に存在する角部、100:ハニカム構造体、L:長径、L:短径、C:長径L上の中心点、C:長径L上の中心点Cを通り短径Lに平行な直線、S:斜線部、9−1:高温−低温の境界、9−2:膨張する力、9−4:長径方向中央部、9−4:引張り応力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11