特許第5972271号(P5972271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972271
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20160804BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20160804BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160804BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160804BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20160804BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20160804BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20160804BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/06
   A61K8/34
   A61K8/31
   A61K8/891
   A61K8/37
   A61K8/86
   A61Q19/00
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-535957(P2013-535957)
(86)(22)【出願日】2012年4月4日
(86)【国際出願番号】JP2012059166
(87)【国際公開番号】WO2013046770
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-217339(P2011-217339)
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】伊部 絢子
(72)【発明者】
【氏名】松下 裕史
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−102281(JP,A)
【文献】 特開2005−320263(JP,A)
【文献】 特開2010−006726(JP,A)
【文献】 特開2004−051850(JP,A)
【文献】 特開2011−068600(JP,A)
【文献】 特開2010−077072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)〜(F)成分からなり、非極性油分の配合量が(C)成分全量中30%以下であることを特徴とする水中油型乳化皮膚用化粧料。
(A)数平均分子量が2000〜3000である水添ポリイソブテン 0.1〜5質量%
(B)高級アルコール 0.1〜1質量%未満
(C)油性成分 1〜25質量%
(D)界面活性剤 0.3〜5質量%
(E)水溶性増粘剤 0.05〜5質量%
(F)水性成分
【請求項2】
請求項1に記載の水中油型乳化皮膚用化粧料において、25℃における粘度が50000mPa・s以下であることを特徴とする水中油型乳化皮膚用化粧料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水中油型乳化皮膚用化粧料において、(C)成分中に油溶性薬剤を含むことを特徴とする水中油型乳化皮膚用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2011年9月30日付け出願の日本国特許出願2011−217339号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は水中油型乳化化粧料に関し、特にはり感に優れ、やわらかさおよび保湿効果にも優れた水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0003】
水中油型乳化化粧料において、近年、肌へのはり感(肌がたるまず、つっぱらず、適度に弾力を有する使用感)の付与が求められている。
従来、はり感を付与する物質としては、高分子等が用いられている。例えば、ステアリン酸ステアリルと、水添ポリイソブテン等の炭化水素を併用することにより、はり感を有する乳化化粧料が知られている(特許文献1)。しかし、保湿効果や他の使用感を出すために配合される保湿剤や油分により、はり感が弱まってしまう場合があった。
水添ポリイソブテンおよび特定量の高級アルコールを配合した皮膚化粧料が知られている(特許文献2)。また、ポリブテン等の高粘稠性油剤を配合した水中油型乳化化粧料が知られている(特許文献3)。しかし、これらの化粧料は、はり感に満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−235472号公報
【特許文献2】特開2010−6726号公報
【特許文献3】特開2007−261971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記従来技術の課題に鑑み行われたものであり、はり感に優れ、やわらかさおよび保湿効果にも優れた水中油型乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが前述の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定量の水添ポリイソブテンと少量の高級アルコールを配合し、水中油型乳化化粧料とすることにより、はり感およびやわらかさが両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明にかかる水中油型乳化皮膚用化粧料は、次の(A)〜(F)成分からなり、非極性油分の配合量が(C)成分全量中30%以下であることを特徴とする。
(A)数平均分子量が2000〜3000である水添ポリイソブテン 0.1〜5質量%
(B)高級アルコール 0.1〜1質量%未満
(C)油性成分 1〜25質量%
(D)界面活性剤 0.3〜5質量%
(E)水溶性増粘剤 0.05〜5質量%
(F)水性成分
【0008】
前記水中油型乳化皮膚用化粧料において、25℃における粘度が50000mPa・s以下であることが好適である。
前記水中油型乳化皮膚用化粧料において、(C)成分中に油溶性薬剤を含むことが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる水中油型乳化化粧料は、水添ポリイソブテンおよび少量の高級アルコールを含む油性成分と、界面活性剤と、水溶性増粘剤を含む水性成分と、を含む化粧料であり、はり感に優れ、やわらかさおよび保湿効果にも優れた水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる水中油型乳化化粧料は、(A)水添ポリイソブテン、(B)高級アルコール、(C)油性成分、(D)界面活性剤、(E)水溶性増粘剤、(F)水性成分から構成されている。
以下、各成分について詳述する。
【0011】
((A)水添ポリイソブテン)
(A)水添ポリイソブテンは、イソブテンとn−ブテンとを共重合した後に水素添加して得られる炭化水素混合物である。本発明に用いられる水添ポリイソブテンは、化粧料に一般に用いられているものを使用することができる。
【0012】
水添ポリイソブテンは、数平均分子量2000〜3000であることが必要である。数平均分子量が小さすぎると、はり感が十分でない場合がある。また、数平均分子量が大きすぎると、のびが重くなる等、使用感に影響が出る場合がある。
【0013】
本発明の水中油型乳化化粧料における(A)水添ポリイソブテンの配合量は、化粧料全量に対して、0.1〜5質量%であることが必要である。また、(A)成分の配合量が0.5質量%以上であることが好ましい。0.1質量%未満では、はり感が十分に得られない。また、(A)成分の配合量が3質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、やわらかさおよびべたつきのなさに劣る。
【0014】
((B)高級アルコール)
本発明の水中油型乳化化粧料に配合される(B)高級アルコールは、炭素数6以上のアルコールである。
高級アルコールとしては、例えば、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
【0015】
本発明の水中油型乳化化粧料における(B)高級アルコールの配合量は、化粧料全量に対して、0.1〜1質量%未満であることが必要である。また、(B)成分の配合量が0.3質量%以上であることが好ましい。0.1質量%未満では、やわらかさおよび保湿効果が得られない。また、(B)成分の配合量が0.8質量%以下であることが好ましい。1質量%以上では、はり感が得られない傾向にある。
【0016】
((C)油性成分)
(C)油性成分は、化粧料に通常使用可能な(A)成分および(B)成分以外の油性成分である。
このような(C)油性成分としては、例えば、シリコーン油分、極性油分、非極性油分等の液状油分、固形油分、半固形油分、油溶性紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0017】
シリコーン油分としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどの鎖状シリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン油等が挙げられる。
極性油分としては、例えば、ジイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ピバリン酸トリプロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソパルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソデシル、コハク酸2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、エチルヘキサン酸セチルなどのエステル油等が挙げられる。
非極性油分としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソヘキサデカン等の炭化水素油等が挙げられる。
【0018】
固形油分としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化ヒマシ油などの固体油脂、パラフィンワックス(直鎖炭化水素)、マイクロクリスタリンワックス(分岐飽和炭化水素)、セレシンワックス、モクロウ、フィッシャートロプスワックスなどの炭化水素類、ミツロウ、カルナバワックス、キャンデリラロウ、米ぬかロウ(ライスワックス)、ゲイロウ、ホホバ油、ヌカロウ、モンタンロウ、カポックロウ、ベイベリーロウ、セラックロウ、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、還元ラノリン、硬質ラノリン、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどのロウ類、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸などの高級脂肪酸等が挙げられる。
【0019】
半固形油分としては、例えば、ワセリン、ラノリン、シア脂、部分水添ヤシ油などの植物脂、部分水添ホホバ油、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、マカデミアナッツ油ポリグリセリル−6−エステルズベヘネート、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット等が挙げられる。
【0020】
油溶性紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン、2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0021】
(C)油性成分として、油溶性薬剤を含むことが好ましい。
油溶性薬剤としては、例えば、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKおよびそれらの誘導体等の油溶性ビタミン類(ビタミンA油、パルミチン酸レチノール等)、ビタミンCやアルブチン等の水溶性薬剤の油溶性誘導体(ビタミンCパルミテート等)、油溶性植物抽出物、油溶性香料、表面を疎水化処理した物質、シクロスポリン等が挙げられる。
【0022】
本発明の水中油型乳化化粧料における(C)油性成分の配合量は、化粧料全量に対して、1〜25質量%であることが必要である。(C)成分の配合量が1質量%未満では、保湿感、やわらかさに劣り、べたつきが生じる。また、25質量%を超えると、油っぽくなる。
【0023】
また、本発明において、非極性油分の配合量は、(C)成分全量に対して30%以下であることが必要であり、20%以下であることが好ましい。(C)成分中の非極性油分の配合量が(C)成分全量に対して30%を超えると、はり感およびべたつきのなさに劣る場合がある。
一方、極性油分については、極性(IOB)の高い油分の配合がより効果の点で好ましい。特に、IOB値が0.3以上の油分を配合することで、非常に優れたはり感を得ることができる。
【0024】
((D)界面活性剤)
(D)界面活性剤は、化粧料に通常使用可能なものを用いることができる。
界面活性剤としては、特に、HLBが5以上のものを用いることが好ましい。HLBが5未満のものでは親油性が高く、安定な水中油型乳化化粧料を得るのが難しい場合がある。
なお、上記HLBの値は、HLB=7+11.7・log(MW/MO)(ただし、MWは親水基部の分子量を表し、MOは親油基部の分子量を表す)で表される川上式により算出することができる。
【0025】
このような界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0026】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0027】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルグルタミン酸塩、アシルタウリン塩、アシルアルキルタウリン塩、高級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、リン酸エステル塩、スルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0028】
本発明の水中油型乳化化粧料における(D)界面活性剤の配合量は、化粧料全量に対して、0.3〜5質量%であることが必要である。(D)成分の配合量が0.3質量%未満では、安定性に劣る。また、5質量%を超えると、使用感に劣る。
【0029】
((E)水溶性増粘剤)
本発明に配合される(E)水溶性増粘剤は、化粧料に通常使用可能な水溶性増粘剤である。
【0030】
水溶性増粘剤としては、例えば、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)などの植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチンなどの動物系高分子、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン系高分子等が挙げられる。
また、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末などのセルロース系高分子等、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系高分子等が挙げられる。
さらに、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマーなどのビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミドなどのアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸などの無機系水溶性高分子、PEG−240/デシルテトラデセス−20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー等が挙げられる。
【0031】
本発明の水中油型乳化化粧料における(E)水溶性増粘剤の配合量は、化粧料全量に対して、0.05〜5質量%であることが必要である。(E)成分の配合量が0.05質量%未満では、安定性に劣る。また、5質量%を超えると、使用感に劣る。
【0032】
((F)水性成分)
(F)水性成分は、化粧料に通常使用可能な(E)成分以外の水性成分である。
このような(F)水性成分としては、例えば、保湿剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性薬剤等が挙げられる。
【0033】
保湿剤としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D−マンニット等が挙げられる。
金属イオン封鎖剤としては、エデト酸ナトリウム塩、メタリン酸ナトリウム、リン酸等が挙げられる。
【0034】
酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸等が挙げられる。
【0035】
水溶性薬剤としては、例えば、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸2−グルコシド、dl−α−トコフェロール2−Lアスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、アラントイン、アズレン等の抗炎症剤、アルブチン、4−メトキシサリチル酸またはその塩、トラネキサム酸またはその誘導体等の美白剤、タンニン酸等の収斂剤、塩化リゾチーム、塩酸ピリドキシン、マリンコラーゲン等が挙げられる。
また、上記薬剤は遊離の状態で使用されるほか、造塩可能なものは酸または塩基の塩の型で、またカルボン酸基を有するものはそのエステルの形で使用することができる。
【0036】
本発明の水中油型乳化化粧料における(F)水性成分の配合量は、化粧料全量に対して59〜96質量%が好ましい。
なお、その他成分として、本発明の効果を損なわない範囲で微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の粉末成分を配合してもよい。
【0037】
また、本発明の水中油型乳化化粧料は、粘度が50000mPa・s以下であることが好ましい。本発明において、粘度とは、常温(25℃)で粘度計において測定された値である。粘度が高すぎると、使用感に劣る場合がある。
【0038】
本発明にかかる水中油型乳化化粧料は、従来外皮に適用されている化粧料に広く応用することが可能である。例えば、乳液、ジェル、美容液、クリーム、化粧下地、ファンデーション、アイライナー、マスカラ等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた試験の評価方法について説明する。
【0040】
評価(1):安定性
25℃および40℃で1ヶ月保存した試料の硬度および外観を、調製直後と比較し安定性を評価した。
:どの保存条件でも、硬度の低下が10%以下であり、外観の変化は認められなかった。
A:どの保存条件でも、外観の変化は認められなかったが、40℃で保存したもののみ10%以上の硬度変化が認められた。
:どの保存条件でも、外観の変化は認められなかったが、10%以上の硬度変化が認められた。
B:外観において、水または油の分離が若干認められた。
C:1ヶ月以内に、外観において水または油の分離が認められた。
【0041】
評価(2):はり感
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
:9名以上のパネルがはり感があると回答した。
A:7名以上9名未満のパネルがはり感があると回答した。
B:5名以上7名未満のパネルがはり感があると回答した。
C:5名未満のパネルがはり感があると回答した。
【0042】
評価(3):べたつきのなさ
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
:9名以上のパネルがべたつきがないと回答した。
A:7名以上9名未満のパネルがべたつきがないと回答した。
B:5名以上7名未満のパネルがべたつきがないと回答した。
C:5名未満のパネルがべたつきがないと回答した。
【0043】
評価(4):やわらかさ
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
:9名以上のパネルが肌がやわらかいと回答した。
A:7名以上9名未満のパネルが肌がやわらかいと回答した。
B:5名以上7名未満のパネルが肌がやわらかいと回答した。
C:5名未満のパネルが肌がやわらかいと回答した。
【0044】
評価(5):保湿効果
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
:9名以上のパネルが保湿効果があると回答した。
A:7名以上9名未満のパネルが保湿効果があると回答した。
B:5名以上7名未満のパネルが保湿効果があると回答した。
C:5名未満のパネルが保湿効果があると回答した。
【0045】
本発明者らはこれまでに、油中水型乳化化粧料において、肌への密着性が高い、はり感を有する成分として、水添ポリイソブテンの配合が有効であることを見出している。
そこで、水添ポリイソブテンの、水中油型乳化化粧料への配合について検討を行った。本発明者らは下記表1に示す配合組成で、常法により水中油型乳化化粧料(クリーム)を製造した。そして、各試料を評価項目(1)〜(5)について上記採点基準にて評価した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
*1:脱臭ポリブテンP 200SH(日興リカ社製、数平均分子量3000)
【0047】
水中油型乳化化粧料である試験例1−1に、水添ポリイソブテンを配合した試験例1−2、1−3は、はり感および保湿効果が若干向上した。しかし、特にはり感において、十分に満足できないことがわかった。
【0048】
そこで、本発明者らは、水添ポリイソブテンを配合し、併用する高級アルコール量を変化させた、下記表2に示す配合組成よりなる水中油型乳化化粧料(クリーム)を、常法により製造した。そして、各試料を評価項目(1)〜(5)について上記採点基準にて評価した。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
試験例2−3〜2−5より、水添ポリイソブテンを配合した水中油型乳化化粧料において、高級アルコールを少量配合すると、はり感に優れたものを得ることができる。加えて、やわらかさ、保湿効果にも優れていることが明らかになった。
しかし、高級アルコールが配合されていない試験例2−2は、やわらかさに劣り、保湿効果にも改善の余地があった。
また、高級アルコールの配合量を多くすると、はり感に影響が出ることがわかった。
したがって、本発明にかかる(A)水添ポリイソブテンを含む水中油型乳化化粧料において、(B)高級アルコールを0.1〜1質量%未満含むことが必要である。
【0051】
次に、(A)水添ポリイソブテンの配合量について検討を行った。本発明者らは、水添ポリイソブテンの配合量を変化させた下記表3に示す配合組成よりなる水中油型乳化化粧料(クリーム)を、常法により製造した。そして、各試料を評価項目(1)〜(5)について上記採点基準にて評価した。結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3によれば、(A)成分を適宜配合した試験例3−1、3−2、2−4、3−3は、はり感や使用感等に優れていた。
したがって、本発明の水中油型乳化化粧料における(A)水添ポリイソブテンの配合量は、0.1〜5質量%であることが必要である。
【0054】
次に、油分の組成についてさらなる検討を行った。本発明者らは、下記表4に示す配合組成よりなる水中油型乳化化粧料(クリーム)を、常法により製造した。そして、各試料を評価項目(1)〜(5)について上記採点基準にて評価した。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
表4より、非極性油であるスクワランの配合量が多くなると、はり感およびべたつきのなさに満足できる水中油型乳化化粧料が得られないことがわかった。
したがって、本発明の水中油型乳化化粧料において、非極性油分が(C)成分全量中30%以下であることが必要である。
また、試験例2−4と試験例4−5を比較すると、IOBの高い極性油分の一部をIOBの低い極性油分に置換すると、はり感が若干抑制されることが分かった。したがって、極性(IOB)の高い極性油分の配合がより効果の点で好ましい。
【0057】
次に、乳化系についての検討を行った。本発明者らは、下記試験例5−1の油中水型乳化化粧料(クリーム)を、常法により製造した。そして、各試料を評価項目(1)〜(5)について上記採点基準にて評価した。結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
表5より、油中水型乳化化粧料とした試験例5−1は、はり感ややわらかさに劣っていた。
したがって、本発明の組成の乳化化粧料は、水中油型乳化系であることが必要である。
【0060】
以下に、本発明の水中油型乳化化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって限定されるものではない。
【0061】
処方例1 乳液
(質量%)
(1)水 残余
(2)グリセリン 8
(3)ジプロピレングリコール 3
(4)キサンタンガム 0.2
(5)ベヘニルアルコール 0.2
(6)ステアリルアルコール 0.16
(7)モノイソステアリン酸グリセリン 0.8
(8)POEグリセリンモノイソステアレート 1.2
(9)スクワラン 3
(10)メチルフェニルポリシロキサン 6
(11)ジイソステアリン酸グリセリル 3
(12)水添ポリイソブテン 1.5
非極性油分量/(C)成分量:25.0%
粘度(ビスメトロン粘度計、VDA型、12rpm、ローターNo.3;測定温度25℃):4500mPa・s
(製法)
(5)〜(12)を加熱混合し、油相の均一分散を行う。(1)〜(4)を加熱混合し、水相を調製する。加熱した油相を前記水相に添加し、ホモジナイザーで乳化粒子を整え、攪拌しながら冷却し、目的の乳液を製造した。
得られた乳液は安定性が良好で、はり感、肌のやわらかさともに優れた使用感を有していた。
【0062】
処方例2 ジェル
(質量%)
(1)水 残余
(2)グリセリン 5
(3)ジプロピレングリコール 5
(4)ポリアクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体
2.5
(5)ベヘニルアルコール 0.15
(6)ステアリルアルコール 0.07
(7)ソルビタンモノイソステアレート 0.5
(8)POEグリセリンモノイソステアレート 0.8
(9)スクワラン 2
(10)メチルフェニルポリシロキサン 3
(11)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール 4
(12)イソノナン酸イソノニル 2
(13)水添ポリイソブテン 2
非極性油分量/(C)成分量:18.2%
粘度(ビスメトロン粘度計、VDA型、12rpm、ローターNo.3;測定温度25℃):34600mPa・s
(製法)
(5)〜(13)を加熱混合し、油相の均一分散を行う。(1)〜(4)を加熱混合し、水相を調製する。加熱した油相を前記水相に添加し、ホモジナイザーで乳化粒子を整え、攪拌しながら冷却し、目的のジェルを製造した。
得られたジェルは安定性が良好で、はり感、肌のやわらかさともに優れた使用感を有していた。
【0063】
処方例3 美容液
(質量%)
(1)水 残余
(2)グリセリン 8
(3)ジプロピレングリコール 3
(4)カルボマー 0.2
(5)苛性カリ 0.06
(6)ベヘニルアルコール 0.2
(7)ステアリルアルコール 0.16
(8)モノイソステアリン酸グリセリン 0.8
(9)POEグリセリンモノイソステアレート 1.2
(10)スクワラン 3
(11)メチルポリシロキサン 2
(12)エチルヘキサン酸セチル 3
(13)リンゴ酸ジイソステアリル 5
(14)水添ポリイソブテン 1.5
(15)レチノール 0.05
非極性油分量/(C)成分量:23.1%
粘度(ビスメトロン粘度計、VDA型、12rpm、ローターNo.3;測定温度25℃):7900mPa・s
(製法)
(6)〜(15)を加熱混合し、油相の均一分散を行う。(1)〜(5)を加熱混合し、水相を調製する。加熱した油相を前記水相に添加し、ホモジナイザーで乳化粒子を整え、攪拌しながら冷却し、目的の美容液を製造した。
得られた美容液は安定性が良好で、はり感、肌のやわらかさともに優れた使用感を有していた。