特許第5972272号(P5972272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972272侵襲最小限の処置のための埋め込みツールおよび改良された電極設計
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972272
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】侵襲最小限の処置のための埋め込みツールおよび改良された電極設計
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   A61N1/05
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-536915(P2013-536915)
(86)(22)【出願日】2011年10月31日
(65)【公表番号】特表2013-541390(P2013-541390A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2011058676
(87)【国際公開番号】WO2012058692
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】61/515,015
(32)【優先日】2011年8月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/408,421
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508343467
【氏名又は名称】シーブイアールエックス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CVRX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ケイツ、アダム
(72)【発明者】
【氏名】ラベット、エリック
(72)【発明者】
【氏名】マーニー、ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ラドウィグ、キップ
(72)【発明者】
【氏名】ピグナトー、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ソルティス、ブライアン
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−522015(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0172116(US,A1)
【文献】 米国特許第4920979(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み式のシステムであって、
埋め込み可能なハウジングを有する制御システムと、
前記制御システムに接続する電気リードと、
前記電気リードの遠位端部に隣接した電極構造であって、
血管の外面上に埋め込まれるように構成された電極と、
前記電極よりも大きい有効表面積を有する支持部材と、
ツールと着脱自在に連結する手段であって、前記血管の湾曲した外面において前記電極構造を移動させるように構成されている手段と
を含むものである前記電極構造と
を有し、
前記制御システムは、前記電極を介して血管壁内の圧受容器に圧反射治療を送達すようにプログラムされているものである、
システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記電極はカソードを有し、前記ハウジングはアノードを有するものであるシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記電極はカソードを有し、前記電気リードはアノードを有するものであるシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、
本体部と連結先端部とを備えるツールを有し、該連結先端部は、前記電極構造の前記着脱自在に連結する手段を介して前記電極構造に着脱自在に連結するように構成されるものであるシステム。
【請求項5】
請求項に記載のシステムにおいて、さらに、前記ツールの本体部は、1若しくはそれ以上の枢支点を含むものであるシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記支持部材は前記電極の直径の少なくとも2倍の直径を有しているシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記着脱自在に連結する手段は、少なくとも1の自由度をもたらすものであり、該自由度は前記電極構造の支持部材に垂直な方向の軸を中心とするピッチを有するものであるシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記着脱自在に連結する手段は、該手段における約150度の運動範囲を含むシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、反射治療を送達するようにプログラムされる前記制御システムは、40〜70Hzの間のパルス周波数、100〜150マイクロ秒の間のパルス幅、および5〜7ミリアンペアの間のパルス振幅を有する圧反射治療を送達するようにプログラムされるシステム。
【請求項10】
請求項に記載のシステムにおいて、前記制御システムは、
当該システムを埋め込むための一式の命令を格納する有形記憶媒体と、
前記一式の命令を処理するプロセッサと
を有し、
前記プロセッサは、前記一式の命令に基づいて前記電極構造の血管上における適切な埋め込み位置を決定する手段を有し、この手段は、
前記ツールを用いて血管上の第1の位置で圧受容器に隣接するように配置された前記電極に第1の刺激信号を送達する手段と、
前記第1の刺激信号に対する患者の応答を表す第1のセンサ信号を受信する手段と、
前記ツールを用いて前記血管上の第2の位置で圧受容器に隣接するように再配置された前記電極に第2の刺激信号を送達する手段と、
前記第2の刺激信号に対する患者の応答を表す第2のセンサ信号を受信する手段と、
前記第1の位置における前記第1のセンサ信号を前記第2の位置における前記第2のセンサ信号と比較する手段と、
前記比較に基づいて前記電極構造の血管上における埋め込み位置を決定する手段と
含むものであるシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、
接着剤を含んでおり、
前記電極構造が前記血管に接着剤で固定されるように構成されているシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記着脱自在に連結する手段は、ボールとソケットから構成される継ぎ手のどちらか一方を有するものであるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年10月29日付で出願された「Electrode and Lead Arrangement」という名称の米国仮特許出願第61/408,421号および2011年8月4日付で出願された「Implant Tool and Improved Electrode Design for Minimally Invasive Procedure」という名称の米国仮特許出願第61/505,015号の利益を主張し、これらの米国特許仮出願の開示の全体が、ここでの言及によって援用される。
【0002】
本発明は、圧反射刺激治療(baroreflex activation therapy)の装置および方法に関し、さらに詳しくは、圧反射刺激治療システムの一部として埋め込みツールおよび処置において使用される改良された電極設計に関する。
【背景技術】
【0003】
心血管疾患は、患者の病気および死亡の大きな原因である。これは、米国において数十億ドル/年にもなる保健医療の支出の主要な要因でもある。心不全が、虚血性心疾患を含むさまざまな心血管の障害の最終的な一般的表現である。それは、心臓が身体の必要を満たす充分な血液を送ることができないことを特徴とし、疲労、運動能力の低下、および生存率の低下につながる。心不全は、心臓による血液の供給の不足を補償するためのいくつかの体組織の活動を引き起こす。これらの応答の多くは、交感神経系の活動のレベルの上昇ならびに多数の他の神経ホルモンの応答の活性化の介在による。一般に、この交感神経系の活性化が、心臓に対して心拍出量を増加させるべく心拍数および収縮力を増すように求め、腎臓に対してナトリウムおよび水を保持することによって血液量を増やすように求め、細動脈に対して血圧を高めるべく収縮するように求める。これらの心臓、腎臓、および血管の応答により、心臓の負荷が大きくなり、心筋障害がさらに加速され、心不全の状態が悪化する。したがって、この不都合なサイクルを停止させ、あるいは少なくとも最小限にすることによって、心不全を治療または管理するために、交感神経系の活性化のレベルを下げることが望ましい。
【0004】
ハイパーテンション、すなわち高血圧は、患者が米国だけでも6500万人に上ると推定される主要な心血管の障害である。高血圧は、身体の小さな血管(細動脈)が収縮し、血圧の上昇を引き起こすときに生じる。血管の収縮ゆえに、心臓は、血流をより高い圧力に保つためにより激しく働かなければならない。身体は、短時間の血圧の上昇を許容することができるが、持続的な高血圧は、最終的に、腎臓、脳、眼、および他の組織などといった身体の多数の器官を損傷させ、関連するさまざまな疾患を引き起こしかねない。また、高い血圧は、血管の内面を損傷させ、アテローム性動脈硬化のプロセスを加速させ、血栓の発生の可能性を高める可能性もある。これは、心臓麻痺および/または心臓発作につながる可能性がある。持続的な高血圧は、最終的に、心不全につながりかねない心臓の肥大および損傷(心肥大)を引き起こす可能性がある。
【0005】
高血圧は、心不全および心臓発作の主な原因であり、数万人/年の患者の死亡の主因であり、米国において数十万人/年の患者の死亡の主因または一因として挙げられている。したがって、高血圧は、その治療について多大な研究開発を必要とする深刻な健康問題である。高血圧は、最近の30年間にわたる認識、防止、治療、および管理の改善にもかかわらず、世界中で、患者にとって大きなリスクおよび医療提供者にとっての課題であり続けている。高血圧の患者は、減量、DASH食事計画の採用、食事中のナトリウムの削減、身体的活動の増加、ならびにアルコールの摂取および喫煙の制限などといったライフスタイルの変更を行うように奨励される。現在では、多数の薬物治療も、高血圧の治療に利用可能である。
【0006】
1960年代および1970年代に最初に研究された高血圧の治療における初期の試みは、頸動脈洞神経を電気的に刺激することを含んでいる。この治療法は、おそらくは同時期の高血圧の治療のための優れた薬剤の開発、当時の電池技術に関する限界、ならびに電極の絶縁および頸動脈洞神経への配置に関する外科的な限界ゆえに、広く受け入れられることがなかった。さらに、頸動脈洞神経の刺激は、患者の呼吸パターンおよび血液の循環に悪影響を及ぼす可能性がある。頸動脈洞神経の刺激についての文献が少ないことが、このことならびに薬の効かない高血圧の治療のための類似または代替の刺激システムが存在しないことを反映している。
【0007】
最近では、高血圧、心不全、および/または他の心血管の障害を治療するための改良された手法が、開発されてきている。圧反射刺激治療(「BAT」)が、電気的、機械的、化学的、および/または他の刺激手段を利用して、圧受容器(baroreceptors)などの患者の圧反射系の1若しくはそれ以上の構成要素を活性化させる。
【0008】
圧受容器は、主要な動脈の動脈壁に豊富に分布し、さらには心臓、大動脈弓、頸動脈洞または頸動脈、ならびに肺動脈および大静脈などの血管系の低圧側に豊富に分布した知覚神経終末である。圧受容器の信号が、まとめて圧反射系と称することができるいくつかの体組織を活性化させるために使用される。圧受容器は、神経系を介して脳へとつながっており、脳にて心拍出量を表す血圧の変化を検出できるようにしている。心拍出量が需要を満たすには不充分である(すなわち、心臓が充分な血液を送り出せない)場合、圧反射系が、心臓、腎臓、血管、および他の器官/組織を含むいくつかの体組織を活性化させる。そのような圧反射系の自然の活性化は、おおむね神経ホルモンの活動の増大に相当する。具体的には、圧反射系が、心臓に対して心拍出量を増加させるべく心拍数および収縮力を増すように求め、腎臓に対してナトリウムおよび水を保持することによって血液量を増やすように求め、血管に対して血圧を高めるべく収縮するように求める神経ホルモンの一連の事象を開始させる。これらの心臓、腎臓、および血管の応答により、血圧が高まり、心拍出量が増加し、したがって心臓の負荷が大きくなる。これは、心不全を抱える患者において、心筋障害をさらに加速し、心不全の状態を悪化させる。
【0009】
圧受容器の刺激による高血圧の治療についての最初の記述の1つを、血圧の調節および/または他の心血管の障害の治療のために圧受容器または圧反射系を刺激し、あるいは活性化させるための装置および方法を開示しているKievalらの米国特許第6,522,926号明細書に見ることができる。一般に、圧受容器活性化装置を、1若しくはそれ以上の圧受容器を活性化させ、圧受容器信号または圧受容器信号の変化を生じさせることで、圧反射系の変化に影響を及ぼすように、作動させ、停止させ、あるいは他のやり方で調節することが可能である。圧受容器活性化装置を、継続的、周期的、または一時的に作動させ、停止させ、あるいは他のやり方で調節することができる。圧受容器活性化装置は、圧受容器を活性化させるために、電気、機械、熱、化学、生物学、またはこれらの組み合わせを使用することができる。圧受容器を、直接的に活性化でき、あるいは隣接の血管組織を介して間接的に活性化させることができる。この反射の活性化は、自律神経系の緊張を調節する延髄脳中枢へと頸動脈洞神経(ヘリング神経、舌咽神経の枝、脳神経IX)を通過する求心性の電気信号を強める。これらの延髄中枢への求心性の信号が強められることで、交感神経系の緊張が緩み、副交感神経の緊張が高まる。結果として、心拍数が下がり、腎臓によるナトリウムおよび水の再吸収が減少して利尿がもたらされ、血管の平滑筋が緩んで血管拡張および血圧の低下につながる。したがって、末梢の圧反射の活性化が、すべての末梢器官および血管への中枢神経系の作用の統合的な働きによって決定される機構によって、血圧を制御する生理学的な応答をもたらす。
【0010】
電極アセンブリなどの圧反射治療をもたらすための圧反射活性化装置を埋め込むプロセスは、電極が頸動脈洞の動脈壁に対して適切に位置するようにアセンブリを位置決めし、位置決めが維持されるように電極アセンブリを動脈へと固定することを含む。マッピングとして知られる埋め込みの際の電極アセンブリの位置の調節および再調節のプロセスにより、全体としての処置の時間が長くなる。今日の手順は、電極アセンブリを鉗子、止血鉗子、または同様のツールによって動かぬように配置および保持しつつ、刺激を加えて患者の応答を観察することを含む。わずか1mmの移動でも、圧受容器の活性化の有効性において医学的に意味のある差が生じうる。
【0011】
電極を埋め込むためのマッピング方法および技術の一例が、Kievalらの米国特許第6,850,801号明細書に開示されている。最大の効果および効率のために、電極が可能な限り多くのエネルギを圧受容器へと導かなければならないため、位置決めが重要な工程である。埋め込まれた圧反射刺激装置のエネルギ源は、典型的には有限の容量の内蔵電池であり、患者の安全を保証するためにより低いエネルギ源を備えることが望ましい。高効率の埋め込みは、必要とされる治療の程度を達成するために必要なエネルギを少なくするため、より長い電池の持ちをもたらし、したがって手術の間の有効な稼働時間を長くすることができる。したがって、電極アセンブリの埋め込みの際に、アセンブリの位置が、典型的には、圧反射の応答を最適化するために埋め込みの手順の最中に何度も調節される。
【0012】
位置決めプロセスに関する別の課題は、以前の望ましい位置を記録しておく作業である。電極アセンブリの位置決めは、最適化の手順であるため、医師は、すべての妥当な選択肢としての位置が尽きるまで、より良い位置を探す傾向にある。電極アセンブリを以前に観察された最適位置へと戻すことが、特に外科手術の状況下において、きわめて困難かつもどかしいものになりうる。さらに、これまでのマッピング手法は、電極アセンブリの配置および再配置のためのすき間をもたらすために、大きな切開を必要としている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第4,058,128号明細書
(特許文献2) 米国特許第4,146,037号明細書
(特許文献3) 米国特許第4,177,818号明細書
(特許文献4) 米国特許第4,404,971号明細書
(特許文献5) 米国特許第4,800,879号明細書
(特許文献6) 米国特許第4,972,847号明細書
(特許文献7) 米国特許第5,800,389号明細書
(特許文献8) 米国特許第6,602,241号明細書
(特許文献9) 米国特許第6,660,024号明細書
(特許文献10) 米国特許第6,718,212号明細書
(特許文献11) 米国特許第7,373,207号明細書
(特許文献12) 米国特許第7,369,901号明細書
(特許文献13) 米国特許第8,437,867号明細書
(特許文献14) 米国特許第8,788,066号明細書
(特許文献15) 米国特許出願公開第2003/0120264号明細書
(特許文献16) 米国特許出願公開第2004/0015193号明細書
(特許文献17) 米国特許出願公開第2005/0004644号明細書
(特許文献18) 米国特許出願公開第2005/0080470号明細書
(特許文献19) 米国特許出願公開第2005/0149155号明細書
(特許文献20) 米国特許出願公開第2006/0293712号明細書
(特許文献21) 米国特許出願公開第2007/0073098号明細書
(特許文献22) 米国特許出願公開第2007/0129760号明細書
(特許文献23) 国際公開第2007/075593号
(特許文献24) 米国特許出願公開第2008/0161887号明細書
(特許文献25) 米国特許出願公開第2008/0172116号明細書
(特許文献26) 米国特許出願公開第2009/0069738号明細書
(特許文献27) 米国特許出願公開第2009/0143837号明細書
(特許文献28) 米国特許出願公開第2009/0276025号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
侵襲最小限の技術の一部として電極の導入および埋め込みに使用される装置および方法。埋め込み式の圧反射活性化システムは、埋め込み可能なハウジングを有する制御システムと、この制御システムに取り付け可能な電気リードと、電極構造とを有する。前記電極構造は、前記電気リードの一端の近くに位置し、単極の電極と、この電極よりも大きい有効表面積を有する支持材料と、埋め込みツールとの結合のための着脱自在かつ枢動自在なインターフェイスとを有する。前記電極は、血管の外面上に埋め込まれるように構成され、前記制御システムは、この単極の電極を介して前記血管の壁内の圧受容器に圧反射治療をも送達するようにプログラムされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明を、本発明の種々の実施形態についての以下の詳細な説明を、添付の図面と併せて検討することによって、より完全に理解できるであろう。
図1図1は、血管壁に位置する圧受容器および圧反射系の概略の断面図である。
図2図2は、本発明による圧受容器活性化システムの概略図である。
図3A図3Aは、本発明の実施形態に従ってリードに接続された電極の平面図である。
図3B図3Bは、図3Aの一部分を裏返した拡大図である。
図4A図4Aは、本発明の実施形態による埋め込みツールの等角投影図である。
図4B図4Bは、図4Aの埋め込みツールのインターフェイス端の拡大平面図である。
図4C】説明なし
図5A図5Aは、本発明の別の実施形態による埋め込みツールの立面図である。
図5B図5Bは、図5Aの一部分の拡大立面図である。
図6A図6Aは、本発明の実施形態に従って電極構造に隣接して配置された図5Aの埋め込みツールの等角投影図である。
図6B図6Bは、電極構造に係合した図6Aの埋め込みツールの等角投影図である。
図7A図7Aは、本発明の実施形態に従って埋め込みツールを使用して血管上に埋め込まれた電極構造の概略図である。
図7B図7Bは、血管上に動かぬように固定された図7Aの電極構造の概略図である。
図8A図8Aは、患者の頸動脈洞に埋め込まれた本発明の実施形態による圧反射活性化システムの概略図である。
図8B図8Bは、患者の頸動脈洞に埋め込まれた本発明の実施形態による圧反射活性化システムの概略図である。
図9A図9Aは、本発明の実施形態による電極構造の組織接触面の平面図である。
図9B図9Bは、本発明の実施形態による固定部材の斜視図である。
図10A図10Aは、本発明の実施形態による関連の電極構造の構成の斜視図である。
図10B図10Bは、本発明の実施形態による関連の電極構造の構成の斜視図である。
図10C図10Cは、本発明の実施形態による関連の電極構造の構成の斜視図である。
図10D図10Dは、本発明の実施形態による関連の電極構造の構成の斜視図である。
図10E図10Eは、本発明の実施形態による関連の電極構造の構成の斜視図である。
図11A図11Aは、本発明の実施形態による電極構造および固定機構の等角投影図である。
図11B図11Bは、図11Aの電極の構成とともに使用するための本発明の別の実施形態による埋め込みツールの立面図である。
図11C図11Cは、図11Bの埋め込みツールによって開いた引っ込められた位置に保持された図11Aの電極構造の拡大平面図である。
図12A図12Aは、本発明の別の実施形態による埋め込みツールの斜視図である。
図12B図12Bは、本発明の実施形態による電極構造とともに使用するための固定要素の斜視図である。
図13A図13Aは、本明細書に記載の実験の際の動作パラメータの表である。
図13B図13Bは、本明細書に記載の実験の結果を示すグラフである。
図14図14は、本発明の実施形態によるキットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について、さまざまな変更および代案の形態が可能であるが、本発明の詳細を、図面にあくまでも例として示し、詳しく説明する。しかしながら、本発明が、説明される特定の実施形態に限られるわけではないことを、理解すべきである。むしろ反対に、本発明の技術的思想および技術的範囲に含まれるすべての変更、均等物、および代案が、保護されるべきである。
【0016】
以下の詳細な説明を、図面を参照して検討すべきであり、図面においては、異なる図であっても類似の構成要素には同じ番号が付されている。図面は、必ずしも比例尺ではなく、例示の実施形態を示しており、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0017】
高血圧、心不全、他の心血管の障害、および腎不全の問題に対処するために、本発明は、基本的には、過度の血圧、自律神経系の活動、および神経ホルモンの活性化を減少させるために圧反射系を活性化させるいくつかの装置、システム、および方法を提供する。特に、本発明は、圧受容器を活性化させることが可能であり、それによって血圧の上昇を知らせ、脳に対して身体の血圧ならびに交感神経系および神経ホルモンの活性化のレベルを下げ、副交感神経系の活性化を高めるように伝えることによって、心臓血管系および身体の他の系へと有益な影響をもたらすことができるいくつかの装置、システム、および方法を提供する。
【0018】
心臓血管系、循環系、および神経系、ならびに圧受容器および全体または一部を本発明の実施形態において使用することができる圧反射治療システムに関する一般的な情報として、譲受人が共通である以下の特許出願および特許、すなわち米国特許出願第10/284,063号、Kievalらの米国特許出願公開第2005/0154418号、Kievalらの米国特許出願公開第2005/0251212号、Kievalらの米国特許出願公開第2006/0293712号、Rossingらの米国特許出願公開第2006/0004417号、Kievalらの米国特許出願公開第2006/0074453号、Kievalらの米国特許出願公開第2008/0082137号、およびRossingらの米国特許出願公開第2009/0143837号、ならびにKievalらの米国特許第6,522,926号、Kievalらの米国特許第6,850,801号、およびKievalらの米国特許第6,985,774号が参照され、これらの特許出願および特許の開示は、特許請求の範囲および明確な定義を除き、その全体がここでの言及によって援用される。
【0019】
次に、一般的な血管壁40に位置した圧受容器30の概略図および圧反射系50の概略の流れ図を示している図1を参照する。圧受容器30は、すでに述べた血管壁に豊富に分布し、通常樹状構造(arbor)32を形成している。圧受容器樹32は、複数の圧受容器30を備えており、その各々が、神経38を介して脳52へと圧受容器信号を伝える。圧受容器30は、血管壁40において豊富に分布して樹状構造を形成しているため、個々の圧受容器樹状構造32を容易には識別できない。したがって、当業者であれば、図1に示した圧受容器30がそもそも例示および検討を目的とした概略図であることを、理解できるであろう。
【0020】
動脈の血管系の圧受容器信号は、まとめて圧反射系と称することができるいくつかの体組織を活性化させるために使用される。本発明の目的において、静脈および心肺の血管系ならびに心腔の「受容器」は、動脈の血管系の圧受容器と同様に機能すると仮定されるが、そのような仮定は、決して本発明を限定しようとするものではない。特に、本明細書に記載の方法は、結果の要因となる正確な実際の機構とは関係なく機能し、上述した治療の目的の少なくとも一部を達成する。さらに、本発明は、動脈の血管系の圧受容器と同様のやり方で血圧、神経系の活動、および神経ホルモンの活動に影響を及ぼす圧受容器、機械的受容器、圧受容体(pressoreceptors)、伸張受容器、化学受容器、あるいは任意の他の静脈、心臓、または心肺の受容器を活性化させることができる。便利のため、すべてのそのような静脈の受容器を、本明細書においては、特にそのようでないと明示しない限りは、まとめて「圧受容器」または「受容器」と称する。
【0021】
血管系における種々の受容器の間に小さな構造的または解剖学的な相違が存在するかもしれないが、本発明のいくつかの実施形態の目的においては、活性化を、所望の効果がもたらされる限りにおいて、これらの受容器ならびに/あるいはこれらの受容器からの神経および/または神経終末のいずれかへと向けることができる。特に、そのような受容器が、血圧および/または血液量の情報を脳へともたらす求心性の信号、すなわち脳への信号をもたらす。これにより、脳が自律神経系に「反射」の変化を生じさせることができ、次いでこれが、所望の血行動態および器官の灌流を維持するように器官の活動を調節することができる。圧反射系の刺激を、そのような受容器、神経、神経線維、または神経終末、あるいはこれらの任意の組み合わせを刺激することによって達成することができる。
【0022】
本発明の実施形態による改良された電極およびリード装置を利用する圧反射活性化治療システムは、大まかには、制御システム、圧受容器活性化装置、リード、およびセンサ(任意選択による)を備える。ここで図2を参照すると、制御システム60と、圧反射活性化装置70と、1若しくはそれ以上のセンサ80とを備える圧反射治療のためのシステムの一実施形態が示されている。制御システム60は、プロセッサ63とメモリ62とを備える治療ブロック61を備えることができる。制御システム60は、ハウジングに囲まれ、あるいはハウジングに囲まれてよく、電気制御ケーブル72あるいは高周波または他の無線通信の形態などの無線手段などにより、圧反射活性化装置70へと通信可能に接続される。ケーブル72は、電極−組織の界面にひずみの緩和をもたらすために患者にケーブル72を縫い付け、あるいは他の方法で取り付けるために使用することができる任意選択による取り付けタブ73を備えることができる。制御システム60は、圧受容器活性化装置70のための所望のパワーモードを提供するためのドライバ66を備えている。例えば、圧受容器活性化装置70が電気的な活性化を利用する場合、ドライバ66は、電気制御信号を選択的にもたらすための電力増幅器、パルス発生器、などを備えることができ、ケーブル72が、電気リードを備えることができる。
【0023】
ドライバ66によって生成される電気制御信号は、制御システム60のメモリ62に収容されたアルゴリズムによって命令されるとおりに、連続的、周期的、一時的、またはこれらの組み合わせであってよい。連続的な制御信号は、不変のパルス、不変のパルス列、トリガされたパルス、およびトリガされたパルス列を含む。周期的な制御信号は、指定された開始時間および指定された継続時間を有する上述の連続的な制御信号の各々を含む。一時的な制御信号は、エピソード(episode)によってトリガされる上述の連続的な制御信号の各々を含む。
【0024】
制御システムのメモリ62は、センサ信号、治療信号、ならびに/あるいは入力装置64によってもたらされる値およびコマンドに関するデータを収容することができる。メモリ62は、治療信号とセンサ信号との間の1若しくはそれ以上の関数または関係を定める1若しくはそれ以上のアルゴリズムを含むソフトウェアをさらに含むことができる。アルゴリズムが、センサ信号またはセンサ信号の数学的な導関数に応じて治療信号の作動または非作動を命令することができる。アルゴリズムは、センサ信号が下方の所定のしきい値を下回って低下するとき、上方の所定のしきい値を上回って上昇するとき、または特定の生理学的事象を示すときに、治療信号の作動または非作動を命令することができる。また、メモリ62は、測定されたパラメータにもとづいて患者の生理学的パラメータを割り出すための1若しくはそれ以上のアルゴリズムを含むソフトウェアを含むことができる。
【0025】
一実施形態においては、センサ80がパラメータを検出および/または監視し、このパラメータを表す信号を生成する。パラメータは、心血管の機能に関連しており、および/または圧反射系の変更の必要性および/または血管インピーダンスなどの物理的パラメータを表すことができる。制御システム60が、センサ80からのセンサ信号を受信し、治療信号を制御ケーブル72によって圧反射活性化装置70へと送信する。センサ80を、例えば検出および治療の能力を有する電極など、圧反射活性化装置70に組み合わせることができ、および/または一体化させることができる。あるいは、センサ80は圧反射活性化装置70から分離され、制御システム60へと通信可能に接続されてもよい。
【0026】
制御システム60は、圧反射活性化装置70を作動、停止、あるいは他の方法で調節する制御信号(治療信号とも称される)を生成する。一実施形態においては、治療信号は、5Hz〜200Hzの間のレートにおいて約1〜10ボルトの範囲にある。典型的には、装置70の作動が、圧受容器30の活性化をもたらす。あるいは、圧反射活性化装置70の停止または調節が、圧受容器30の活性化を生じさせ、あるいは変化させてもよい。圧反射活性化装置70は、圧受容器30を活性化させるために電極などの電気的手段を利用する幅広くさまざまな装置を含むことができる。
【0027】
制御システム60は、センサ80および選択的に、組み込まれた心拍センサなどの他のセンサからのフィードバックを利用する閉ループとして動作することができ、あるいは入力装置64によって受け取られたプログラム変更コマンドを利用する開ループとして動作することができる。制御システム60の閉ループ動作は、好ましくはセンサからの何らかのフィードバックを利用するが、フィードバックを必要としない開ループモードで動作することもできる。閉ループの実施形態においては、制御システム60が、センサ80から受信される信号の関数として制御信号を生成する。したがって、一実施形態においては、センサ80が圧反射系の活動を変更する必要性を示すパラメータ(例えば、過度の血圧)を検出すると、制御システム60が、圧反射活性化装置70を調節する(例えば、作動させる)ための治療信号を生成することで、脳52によって明らかに過度の血圧であると知覚される圧受容器30の信号を生じさせる。センサ80が正常な身体の機能を表すパラメータ(例えば、正常な血圧)を検出すると、制御システム60が、圧反射活性化装置70を調節する(例えば、停止させる)ための治療信号を生成する。
【0028】
入力装置64によって受け取られるプログラミングコマンドは、治療信号、出力作動パラメータに直接影響を及し、あるいはメモリ62に収容されたソフトウェアおよび関連のアルゴリズムを変更することができる。治療を行う医師および/または患者が、入力装置64へとコマンドを提供することができる。一実施形態においては、表示装置65を使用して、センサ信号、治療信号、および/またはメモリ62に収容されたソフトウェア/データを閲覧することができる。制御システム60の全体または一部を埋め込むことが可能である。
【0029】
一実施形態においては、圧受容器活性化装置70が、電極構造110を備える。電極構造110は、一般に、支持部材(backer)114に取り付けられ、一体化され、あるいは他のやり方で組み合わせられた電極112を備える。電極112は、白金イリジウムからなることができ、酸化イリジウムまたは窒化チタニウムなどの表面処理を備えることができ、および/または例えばステロイド、抗炎症、抗生、および/または鎮痛の化合物を含むことができる。支持部材114を、ダクロン(Dacron)で補強された絶縁シリコーン、あるいは柔軟性、頑強性、電気絶縁性があり、および/または身体への埋め込みに適している他の適切な材料で構成することができる。支持部材114および/または電極112は、本発明の技術的思想から離れることなく、円形の構造または他の適切な構造を備えることができる。例えば、支持部材114は、組織への固定を容易にするように構成された1若しくはそれ以上のタブまたは構造体を含むことができる。一実施形態においては、電極112は約1mmの直径を有し、支持部材114は約6mmの直径を有する。しかしながら、電極112が約0.25mm〜3mmの範囲の直径を有し、一方支持部材114が約1mm〜10mmの範囲の直径を有することができると考えられる。一実施形態においては、支持部材114の直径が、少なくとも電極112の直径の2倍である。
【0030】
電極112がカソードを備え、一実施形態においては、制御システム60のハウジングが陽極を備えることができる。別の実施形態においては、アノードを、リード72の一部として設けることができる。別の実施形態においては、アノードが、やはり制御システム60へと接続される第2のリードに設けられる。すべての実施形態において、アノードは、好ましくはカソードよりも充分に大きく、例えば10倍大きい。別の実施形態においては、アノードが、カソードの50倍大きい。さらに、アノードおよびカソードは、好ましくは最小限の互いの距離に配置され、例えば距離は、カソードの直径の約20倍であってよい。別の実施形態においては、アノードとカソードとの間の距離が、カソードの直径の少なくとも50倍である。
【0031】
1若しくはそれ以上の電極構造110を、本発明による圧反射活性化治療システムの一部として設けることができる。例えば、左頸動脈洞および右頸動脈洞など、第1の電極構造110を第1の身体構造上の位置に配置する一方で、第2の電極構造110を第2の身体構造上の位置に配置することができる。あるいは、例えば第1および第2の電極構造を互いに隣接させて左頸動脈および/または頸動脈に配置するなど、第1の電極構造110を第1の身体構造上の位置に配置する一方で、第2の電極構造を、第1の身体構造上の位置の近くの第2の身体構造上の位置に配置することができる。
【0032】
電極構造110は、埋め込みツールと結合するように構成されたインターフェイス手段120と、1若しくはそれ以上の固定手段122とをさらに備えることができる。好ましくは、インターフェイス手段120は、電極構造110の非有効面に備えられる。本明細書において説明されるとおり、インターフェイス手段(または、取り付けインターフェイス)は、Tバー、ソケット、あるいは埋め込みツールへの結合または埋め込みツールによる把持が可能な他の構造を備えることができる。ここで図3A〜4Cを参照すると、電極構造110が、電極構造110の非有効面の上方に持ち上げられたバー部分132を備えるTバー130の形態のインターフェイス手段120を備えている。Tバー130は、本体部136とインターフェイス端138とを通常備える埋め込みツール134と連結するように構成されている。ツール134の本体部136は、通常剛体であってよく、あるいはツール134の曲げまたは湾曲ならびに湾曲した形状の保持を可能にする内部のワイヤまたはコイルを備えることができる。さらに、本体部136は、ツール134の全長を調節可能にするために、入れ子または同様の機構を備えることができる。インターフェイス端138も同様に、本体部とは別の入れ子または同様の機構を備えることができる。さらに、1若しくはそれ以上の枢支点を、先端138と本体部136との間または本体136に沿った任意の所望の位置など、ツール134に設けることもできる。先端部138が、Tバー130に着脱自在に結合するように構成されたクレードル139を備え、このクレードルが、マッピングおよび/または埋め込みの手順の一部として、血管40の外面などの埋め込み位置の湾曲した表面における電極構造110の移動を容易にするために、ツール134を枢動させ、回転させ、および/または他のやり方でTバー130を中心とする運動の自由をもたらすことができる。
【0033】
図5A〜7Aに示される別の実施形態においては、インターフェイス手段120が、電極構造110の非有効面に配置されたソケット150を備える。ソケット150は、本体部156とインターフェイス端158とを通常備える埋め込みツール154と連結するように構成される。ツール154の本体部156は、通常剛体であってよく、あるいはツール154の曲げまたは湾曲ならびに湾曲した形状の保持を可能にする内部のコイルまたはワイヤを備えることができる。さらに、本体部156は、ツール154の全長を調節可能にするために、入れ子または同様の機構を備えることができる。インターフェイス端158も同様に、本体部とは別の入れ子または同様の機構を備えることができる。さらに、1若しくはそれ以上の枢支点を、先端部158と本体部156との間または本体156に沿った任意の所望の位置など、ツール154に設けることもできる。先端部158は、電極構造110のソケット150に着脱自在に結合するように構成されたボール状端部159を備える。ボールとソケットとからなる構成により、電極構造110と埋め込みツール154との間に多数の軸を中心とする広い運動範囲が提供され、マッピングおよび/または埋め込みの手順の一部である、血管40の外面などの埋め込み位置の湾曲した表面における電極構造110の移動が容易になる。このボールとソケットとからなる関節状の継ぎ手は、好ましくは少なくともピッチ、ヨー(yaw)、およびロールという3つの自由度をもたらす。さらに、ボールとソケットとからなる継ぎ手は、好ましくは少なくとも2つの別々の軸において150度もの運動範囲をもたらす。
【0034】
電極構造110を埋め込むために、医師は、最初に所望の埋め込み位置を特定してマークを施す。これに限られるわけではないが、圧反射活性化治療をもたらすために適した部位の一例は、頸動脈洞である。大まかな埋め込み位置を、超音波または公知かつ利用可能な他の画像化技術を使用して得ることができる。小さな切開が、特定された領域において患者に形成される。切開の長さは、4インチ未満の長さであるべきであり、好ましくは2インチ未満であるべきである。必要とされる切開のサイズは、埋め込みの位置および個々の患者によって決まるが、本明細書に記載の電極構造110および埋め込みツールの実施形態は、これまでの圧反射活性化装置の埋め込みの手順と比べて、最小限の侵襲の切開の使用を可能にする。
【0035】
電極構造110を添えるための最適位置の割り出しが、効果的な治療のためにきわめて重要であるため、マッピングの手順が行われる。電極構造110は、埋め込みツールに着脱自在に結合させられ、電極構造110が例えば頸動脈洞などの埋め込み部位に接するまで、切開部に導入される。刺激信号が、外部のパルス発生器などから電極構造110へと供給され、次いで信号への患者の1若しくはそれ以上の応答が測定される。埋め込みツールを使用し、電極構造110が頸動脈洞の外形の周囲を種々の位置へと動かされ、追加の刺激信号がもたらされて、各々の位置における患者の応答が測定される。医師が埋め込みに最適な部位を特定すると、電極構造110はその部位に固定される。次いで、埋め込みツールが取り除かれる。
【0036】
電極の埋め込み位置から制御システム60のハウジングの埋め込み位置まで、リード72のための経路がトンネル形成される。この経路は、マッピングの手順の前または後に形成される。リード72がひずみ緩和用の取り付けタブ73を備える場合、タブが電極構造110の近くに動かぬように縫い付けられる。次いで、制御システムのハウジングが、この技術分野において公知のとおりに皮下に埋め込まれ、リードが取り付けられる。図8Aおよび8Bは、完全に埋め込まれた圧反射活性化システムの概略図である。
【0037】
多数の固定手段および技術が、電極構造110を埋め込み部位へと固定するために提供され、受動的または能動的な固定を含むことができる。電極構造110は、血管に直接縫い付けられ、支持部材114は、縫合糸を支持部材114に容易に通すことができるように、図9Aに示されるような1若しくはそれ以上の開口123を選択的に備えることができる。少なくとも2本の縫合糸を利用して、確実に電極構造110を固定し、血管と充分な電気的接触を保証することが好ましい。
【0038】
図9Bに示されている電極構造110の固定手段122の他の実施形態は、自動的に閉じるニチノール製のU字クリップ部品を使用するU字クリップ技術である。U字クリップ124(ミネソタ州MinneapolisのMedtronic,Inc.によって製造されているものなど)が、電極構造110を固定するために使用可能であり、縫合糸と同じ位置に配置される。縫合針が、U字クリップの位置へと組織に通される(端部において)。医師がU字クリップに最も近い端部において縫合糸を切断し、U字クリップが配置位置に置かれる。いくつかの実施形態においては、上述のような「既製」のU字クリップを、支持部材114に調和するよう、正しい数の接続点を使用し、かつ(円形にするなどによって)正しいサイズおよび形状となるように変更しなければならない場合もある。
【0039】
図10A〜10Eに示されるさらなる実施形態においては、電極構造110の固定の全体または一部が、接着剤を使用することによって達成される。支持部材114は、開口182、溝184、および/またはタブ186など、接着剤の塗布を容易にするための1若しくはそれ以上の構造体を備えることができる。支持部材114は、接着剤との結合のための追加の表面積をもたらすように戦略的に露出させられた有孔ポリエステルメッシュ188をさらに備えることができる。適切な接着剤として、Cryolife社のbioglue、アクリル系の接着剤、または感光性の接着剤など、公知の医療用接着剤が挙げられる。抗炎症剤および/または抗瘢痕剤を、接着剤と組み合わせて使用することができる。さらに、接着剤による固定を、本明細書に記載の他の固定手段と組み合わせて使用することができる。
【0040】
図11A〜11Cに示される別の実施形態においては、電極構造110に、フレーム部162と複数の固定棘164とを通常備える選択的に展開可能な能動固定要素160が一体化されている。固定要素160は、電極構造110に結合しており、ニチノールなどの形状記憶合金または他の適切な材料で製作可能である。埋め込みツール170が、電極構造110のマッピングおよび埋め込みのために用意され、遠位端に位置する把持手段172と近位端に位置する制御手段173とを有する本体部171を通常備えている。医師が制御手段173を操作して、把持手段172によってフレーム部162を固定棘164が引き込まれる位置に保持することによって、電極構造110の埋め込み部位への導入が可能になる。上述のマッピング手順を実行して、満足できる埋め込み位置を発見したときに、フレーム162を把持手段172から解放し、固定要素160を展開状態へと移行させ、血管の外膜への棘164の進入を可能にして電極構造110を固定するように、制御手段173が操作される。
【0041】
図12Aおよび12Bに示される別の実施形態においては、固定要素160が、回転の手法によって展開される。複数の棘164が、電極構造110に結合したフレーム162に備えられている。棘164を、らせん状の湾曲を有するようにあらかじめ形成することができる。埋め込みツール140によって保持されたとき、棘164は、埋め込みツール140へと引き込まれ、あるいは他のやり方で引き込み位置に保持され、埋め込み部位への電極構造110の導入およびマッピングが可能となる。所望のときに、埋め込みツール140が、把持手段が固定要素162を回転によって展開するように操作される。
【0042】
次に、本発明による圧反射治療システムの動作を参照すると、上述のように、制御システム60によって生成される制御信号は、メモリ62に収容されたアルゴリズムによって命令されるとおりに連続的、周期的、一時的、またはこれらの組み合わせであってよい。メモリ62に収容されたアルゴリズムが、制御信号の特徴を時間の関数として命令し、したがって圧受容器の刺激を時間の関数として指示する刺激の型(regimen)を定義する。連続的な制御信号は、いずれも連続的に生成されるパルス、パルス列、トリガされたパルス、およびトリガされたパルス列を含む。
【0043】
圧受容器活性化装置70の出力(電力またはエネルギ)のレベルを、電圧、電流、および/または信号の継続時間を変えることによって変化させることができる。圧受容器活性化装置70の出力信号は、例えば一定の電流または一定の電圧であってよい。出力信号が例えば一連のパルスを含んでいる変調された信号を使用する電気的な活性化の実施形態においては、いくつかのパルスの特性を個別に、あるいは出力信号の電力またはエネルギのレベルの変化と組み合わせて、変化させることができる。そのようなパルスの特性として、これらに限られるわけではないが、パルスの振幅(PA)、パルスの周波数(PF)、パルスの幅または継続時間(PW)、パルスの波形(方形、三角形、正弦関数、など)、(2極の電極における)パルスの極性、およびパルスの位相(単相、二相)が挙げられる。
【0044】
出力信号がパルス列を含む電気的な活性化の実施形態においては、上述のパルスの特性に加えて、いくつかの他の信号特性を変化させることができる。制御または出力信号は、一般にバースト(bursts)にて生じる一連のパルスを含むパルス列を含むことができる。変化させることができるパルス列の特性として、これらに限られるわけではないが、バーストの振幅(バーストパケットにおいて一定である場合にはパルスの振幅に等しい)、バーストの波形(すなわち、バーストパケット内のパルスの振幅変化)、バーストの周波数(BF)、およびバーストの幅または継続時間(BW)が挙げられる。信号またはその一部(例えば、パルス列中のバースト)を、すでに述べた事象のいずれか、あるいは動脈圧の信号またはECG信号(例えば、R波)の特定の部分、若しくは他の生理学的なタイミング指標を引き金として、生じさせることができる。信号またはその一部を生じさせる場合に、引き金としての事象を変更でき、および/または引き金としての事象からの遅延を変更することがでる。
【0045】
本発明による単極の電極110を有する圧反射治療システムの制御信号の特性は、これまでの手法と異なり、より少ない電力の消費でより高い刺激の有効性をもたらす。例えば、本発明において適切なパルス幅は、約15マイクロ秒〜500マイクロ秒の範囲にあり、好ましくは60〜200マイクロ秒の範囲にあり、より好ましくは100〜150マイクロ秒の範囲にある。適切なパルスの振幅は、約0.4〜20ミリアンペアの範囲にあり、好ましくは3〜10ミリアンペアの範囲にあり、より好ましくは5〜7ミリアンペアの範囲にある。適切なパルスの周波数は、約10〜100Hzの範囲にあり、好ましくは25〜80Hzの範囲にあり、より好ましくは40〜70Hzの範囲にある。
【0046】
何名かの患者に、本明細書に記載の実施形態による圧反射活性化治療システムを埋め込んだ。これらの患者は、少なくとも3つの降圧薬の使用にもかかわらず、140mmHgを超える収縮期血圧を有していた。システムを埋め込んでから最初の5ヵ月の結果が、システムの平均動作パラメータおよび得られた平均の血圧低下を示す図13Aおよび13Bに示されている。これらの結果は、本明細書に記載の実施形態に従ってもたらされた治療により、患者の血圧が大きく下がったことを示している。
【0047】
次に、図14を参照すると、一実施形態において、圧反射治療システムをキット200にてユーザへと提供することができる。キット200は、ハウジング内の制御システム60と、少なくとも1つの電極構造110を有しており、制御システムへと接続される圧反射活性化装置70と、任意選択によるセンサと、任意選択による埋め込みツール202と、実体のある媒体に記録されたシステムの埋め込み、プログラミング、および/または操作のための一式の命令210を含むことができる。キット200を、1若しくはそれ以上の気密に封じられた無菌のパッケージで構成することができる。命令210をキット200の一部として備えることができ、あるいはユーザを電気的にアクセスすることができる命令210へと結び付ける表示を設けることができる。命令210は、埋め込みツールの使用および/またはマッピング手順を含む本明細書に記載のとおりの電極構造110および圧反射活性化治療システムの埋め込み、ならびに/あるいは制御システム60のプログラミングおよび/または操作のための命令を含むことができる。
【0048】
本発明の実施形態について、さまざまな変更が、本明細書の開示を検討することによって当業者にとって明らかになるであろう。例えば、当業者であれば、本発明の別々の実施形態について述べられた種々の特徴を、本発明の技術的思想の範囲内で、適切に組み合わせることができ、切り離すことができ、さらには単独または種々の組み合わせにて他の特徴と組み合わせ直すことができることを、理解できるであろう。同様に、上述の種々の特徴はすべて、本発明の技術的範囲または技術的思想に対する限定としてではなく、典型的な実施形態として考えられるべきである。したがって、上述の内容は、本発明の技術的範囲を限定しようとするものではない。
【0049】
当業者であれば、本発明が、上述の個々の実施形態に示したよりも少数の特徴しか含まなくてもよいことを、理解できるであろう。本明細書に記載の実施形態は、本発明の種々の特徴を組み合わせることができるやり方を、すべて述べ尽くそうとするものではない。したがって、実施形態は、特徴の相互に排他的な組み合わせではなく、むしろ本発明は、当業者であれば理解できるとおり、異なる個別の実施形態から選択される異なる個別の特徴の組み合わせを含むことができる。
【0050】
上記における言及による文献の援用は、本明細書における明示的な開示に矛盾するいかなる主題も援用しないように限定される。さらに、上記における言及による文献の援用は、それらの文献に含まれるいかなる請求項も本明細書に援用されないように限定される。また、上記における言及による文献の援用は、それらの文献においてもたらされているいかなる定義も、本明細書に明示的に含まれない限りは、本明細書に援用されないように限定される。
【0051】
本発明の実施形態についての特許請求の範囲を解釈する目的において、米国特許法第112条第6段落の規定が、「・・・ための手段(means for)」または「・・・ためのステップ(step for)」という具体的な用語が特許請求の範囲に記載されない限りは行使されないことを、ここに明らかにしておく。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図14