(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972275
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】草刈り機用回転刃およびこれを用いた草刈り機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/73 20060101AFI20160804BHJP
A01D 34/416 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
A01D34/73 104
A01D34/416
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-538586(P2013-538586)
(86)(22)【出願日】2012年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2012076433
(87)【国際公開番号】WO2013054881
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-226584(P2011-226584)
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-99477(P2012-99477)
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511032707
【氏名又は名称】有限会社小林産業
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100115369
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 司
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】小林 正範
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−177812(JP,A)
【文献】
実公平7−33619(JP,Y2)
【文献】
実公平2−10894(JP,Y2)
【文献】
国際公開第98/18312(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第1101396(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/416
A01D 34/68
A01D 34/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
草刈り機の回転刃取付け軸に取付けられて回転させられる保持部材と、
上記保持部材に基端側が保持され、先端側が上記保持部材の半径方向外方に延出させられるコード状切断部材と、を備えた草刈り機用回転刃であって、
上記保持部材には、上記コード状切断部材の一端が連結される連結部と、上記保持部材の周方向に並び、上記コード状切断部材が掛け回される複数の掛け回し部と、を備えていることを特徴とする、草刈り機用回転刃。
【請求項2】
上記連結部は、上記保持部材に形成した壁部と、この壁部に形成した上記コード状切断部材が挿通しうる孔とを備えて構成され、上記コード状切断部材は、一端に大径部が形成されたものが用いられ、他端から上記孔に挿通された状態で、上記大径部が上記孔に挿通不可能に係止されることにより上記一端が連結される、請求項1に記載の草刈り機用回転刃。
【請求項3】
上記掛け回し部は、断面凹曲状の外周溝をもつ鼓型をしたローラ状部材を上記保持部材の周部に形成した支持壁の水平状の上面に取り付けることによって構成されている、請求項1または2に記載の草刈り機用回転刃。
【請求項4】
上記ローラ状部材は、上記支持壁の上面に対して垂直の軸線をもつように、当該軸線周りに回転可能、もしくは、回転不能に支持されている、請求項3に記載の草刈り機用回転刃。
【請求項5】
上記保持部材には、上記ローラ状部材に掛け回されたコード状切断部材が上記ローラ状部材から離脱するのを防止する離脱防止手段が設けられている、請求項4に記載の草刈り機用回転刃。
【請求項6】
上記離脱防止手段は、第1の離脱防止手段を含み、当該第1の離脱防止手段は、上記ローラ状部材の上端高さ位置に対して上記コード状切断部材が通過しうる間隙を隔てて上位に位置する離脱防止壁によって構成されている、請求項5に記載の草刈り機用回転刃。
【請求項7】
上記離脱防止壁には、その外周から凹入して平面視において上記ローラ状部材を臨ませる切欠き部が形成されている、請求項6に記載の草刈り機用回転刃。
【請求項8】
上記離脱防止手段は、第2の離脱防止手段を含み、当該第2の離脱防止手段は、隣接する2つの上記ローラ状部材の間に凸部を設けるとともに、当該凸部に、上記ローラ状部材に掛け回されたコード状切断部材が嵌合する溝部を設けることによって構成されている、請求項5に記載の草刈り機用回転刃。
【請求項9】
上記離脱防止手段は、第2の離脱防止手段をさらに含み、当該第2の離脱防止手段は、隣接する2つの上記ローラ状部材の間に凸部を設けるとともに、当該凸部に、上記ローラ状部材に掛け回されたコード状切断部材が嵌合する溝部を設けることによって構成されている、請求項6または7に記載の草刈り機用回転刃。
【請求項10】
上記保持部材の下位において、当該保持部材に対してその回転軸心を中心として相対回転可能なガイド部材をさらに備える、請求項1ないし9のいずれかに記載の草刈り機用回転刃。
【請求項11】
動力源と、この動力源の動力によって回転駆動される回転刃取付け軸と、を備え、
上記回転刃取付け軸には、請求項1ないし10のいずれかに記載の草刈り機用回転刃が
取付けられていることを特徴とする、草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈り機用回転刃およびこれを用いた草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
田畑の土手等に生育する雑草等を除去するための器具として、携帯型動力草刈り機がある。この草刈り機は、刈払機とも呼ばれるタイプのものであり、小型エンジンによって発生させられる回転動力を操作管の先端に支持させた回転刃に伝えるように構成されており、作業者は、スロットルレバーによってエンジンないしこれによって回転させられる回転刃の回転を制御しつつ、操作管を振回して所望の草刈り作業を行う。
【0003】
この種の携帯型動力草刈り機に適した回転刃のうち、ナイロンコード式の回転刃として、たとえば、特許文献1に示されたものがある。
【0004】
この特許文献1に示された回転刃は、取付け円盤の周部上面に複数の円形の巻取りブロックを立設し、隣接する巻取りブロック間の間隔をナイロンコードが通過しうる程度に設定してある。このような構成において、ナイロンコードは、所定長さとしつつ、一端に結び目をつくるなどして基端側に大径部を設けておき、これを先端側の自由端から隣接する巻取りブロック間に取付け円盤の内側から通すことにより、簡単に取り付けることができる。この状態において、ナイロンコードは、隣接する巻取りブロック間に基端側の大径部が係止されて、先端側の自由端が取付け円盤の外周から延出した状態が維持される。
【0005】
上記特許文献1に記載された回転刃は、ナイロンコードが磨耗して短くなったような場合、簡単に交換することができるが、ナイロンコードの先端が次第に磨耗して短くなったような場合に、延出長さを延長するための調整機能については考慮されていない。
【0006】
一方、特許文献2には、回転刃取付け軸とともに回転し、ナイロンコードを巻回保持する保持部材に加え、この保持部材に対して回転軸を中心として回転可能に支持されたガイド部材を装備したナイロンコード式の回転刃が示されている。
【0007】
この特許文献2に示された回転刃は、ナイロンコードが磨耗により延出長さが短くなったときには、保持部材に巻回されているナイロンコードを繰り出して延出長さを延長できる調整機能を備えているとともに、ガイド部材の外周より内方への雑草等の切断対象の進入がガイド部材によって阻止されることから、切断対象が高速旋回するナイロンコードの先端部分によって効率的に切断されるという機能を有する。
【0008】
しかしながら、特許文献2に示された回転刃は、保持部材の構成が複雑で重量があり、かつ、高価とならざるをえないという難点がある。また、特許文献2に示された回転刃のナイロンコードの保持機構として特許文献1の構成を採用したのでは、軽量化が達成でき、かつ安価ともなるが、ナイロンコードの延出長さ調整ができず、使い勝手が悪くなるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平7−177812号公報
【特許文献2】国際公開WO2007/023758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、簡便な構成によるナイロンコード延出長さ調整機構を備えたナイロンコード式の草刈り機用回転刃を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0012】
本発明の第1の側面によって提供される草刈り機用回転刃は、草刈り機の回転刃取付け軸に取付けられて回転させられる保持部材と、上記保持部材に基端側が保持され、先端側が上記保持部材の半径方向外方に延出させられるコード状切断部材と、を備えた草刈り機用回転刃であって、上記保持部材には、上記コード状切断部材の一端が連結される連結部と、上記保持部材の周方向に並び、上記コード状切断部材が掛け回される複数の掛け回し部と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
好ましい実施の形態では、上記連結部は、上記保持部材に形成した壁部と、この壁部に形成した上記コード状切断部材が挿通しうる孔とを備えて構成され、上記コード状切断部材は、一端に大径部が形成されたものが用いられ、他端から上記孔に挿通された状態で、上記大径部が上記孔に挿通不可能に係止されることにより上記一端が連結される。
【0014】
好ましい実施の形態ではまた、上記掛け回し部は、断面凹曲状の外周溝をもつ鼓型をしたローラ状部材を上記保持部材の周部に形成した支持壁の水平状の上面に取り付けることによって構成されている。
【0015】
好ましい実施の形態ではさらに、上記ローラ状部材は、上記支持壁の上面に対して垂直の軸線をもつように、当該軸線周りに回転可能、もしくは、回転不能に支持されている。
【0016】
好ましい実施の形態ではまた、上記保持部材には、上記ローラ状部材に掛け回されたコード状切断部材が上記ローラ状部材から離脱するのを防止する離脱防止手段が設けられている。
【0017】
好ましい実施の形態では、上記離脱防止手段は、第1の離脱防止手段を含み、当該第1の離脱防止手段は、上記ローラ状部材の上端高さ位置に対して上記コード状切断部材が通過しうる間隙を隔てて上位に位置する離脱防止壁によって構成されている。
【0018】
この場合において、好ましくは、上記離脱防止壁には、その外周から凹入して平面視において上記ローラ状部材を臨ませる切欠き部が形成されている。
【0019】
好ましい実施の形態ではまた、上記離脱防止手段は、第2の離脱防止手段を含み、当該第2の離脱防止手段は、隣接する2つの上記ローラ状部材の間に凸部を設けるとともに、当該凸部に、上記ローラ状部材に掛け回されたコード状切断部材が嵌合する溝部を設けることによって構成されている。
【0020】
好ましい実施の形態ではさらに、上記保持部材の下位において、当該保持部材に対してその回転軸心を中心として相対回転可能なガイド部材をさらに備えている。
【0021】
本発明の第2の側面によって提供される草刈り機は、動力源と、この動力源の動力によって回転駆動される回転刃取付け軸と、を備え、上記回転刃取付け軸には、上記本発明の第1の側面に係る草刈り機用回転刃が取付けられていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る草刈り機用回転刃によれば、当初は、連結部に一端が連結されたコード状切断部材を、上記連結部から遠位にある掛け回し部に掛け回して先端を延出させておき、このコード状切断部材の延出長さが磨耗等によって短くなった場合には、順次、上記連結部から近位にある掛け回し部に掛け回すことにより、掛け回し部の離間距離に相当する長さ分、コード状切断部材の延出長さを延長することができる。また、掛け回し部はローラ状部材を取り付けることによって構成されているので、掛け回し部の形成が簡単に行え、高速回転による遠心力によってコード状切断部材が回転刃の外方に強く引っ張られても、この力によってコード状切断部材や掛け回し部が損傷するといったこともない。さらに、ローラ状部材を鼓型に形成しておくと、このローラ状部材にコード状切断部材を掛け回す作業がしやすくなるとともに、回転刃の高速回転中のコード状切断部材の上下高さ位置を一定にすることができる。加えて、本発明に係る草刈り機用回転刃は、長尺状のコード状切断部材を巻回保持したり、延出長さを調整したりする機構が存在しないので、構造が簡単であり、安価で提供できるとともに、軽量化を達成することもできる。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に説明する実施形態の説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る草刈り機用回転刃およびこれを用いた草刈り機の要部縦断面図であり、
図2のI−I線に沿う断面図に相当する図である。
【
図2】
図1に示す草刈り機用回転刃を、一部を切り欠いて示した平面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る草刈り機用回転刃の要部縦断面図であり、
図4のIII−III線に沿う断面図に相当する図である。
【
図4】
図3に示す草刈り機用回転刃を、一部を切り欠いて示した平面図である。
【
図5】
図4のV−V線に沿う要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1および
図2は、本発明の第1の実施形態に係る草刈り機用回転刃A1およびこれが用いられた草刈り機Bを示している。
図1によく表れているように、草刈り機Bにおいては、操作管12の基端側には、駆動源としての小型エンジン(図示略)が連結されており、その回転出力が、操作管12に内挿された伝動軸13を介して操作管12の先端部に伝達される構成となっている。小型エンジンとしては、作業者の携帯性を考慮して、たとえば排気量が25cc程度のものが用いられる。操作管12の基端には小型エンジンが直接的に取り付けられる場合もあるし、フレシキブルな伝動軸を介してたとえば背負い枠に搭載されるエンジンが連結される場合もある。
図1によく表れているように、操作管12の先端部のギヤケース16には、回転刃取付け軸14が支持され、この回転刃取付け軸14と伝動軸13とは、ベベルギヤ機構(図示略)によって連携されている。回転刃取付け軸14には、その外周にスプラインが形成されているとともに、軸端には、軸方向に延びるねじ穴14aが形成されている。回転刃取付け軸14には、金属製の回転刃押さえ17がスプライン嵌合させられている。
【0027】
上記回転刃取付け軸14には、本発明によって特徴づけられる回転刃A1が取り付けられる。
【0028】
この回転刃A1は、
図1によく表れているように、上記回転刃取付け軸14に取付けられて回転させられ、かつ、コード状切断部材としてのナイロンコード4を保持する保持部材100と、この保持部材100に対してその回転軸心(回転刃取付け軸14と同一軸心)を中心として相対回転可能なガイド部材200とを備えている。
【0029】
保持部材100は、概して平面視円形をしており、中心孔111を有するボス部110と、このボス部110から水平方向外方に延びる円板部120と、この円板部120の外周方において、ナイロンコード4の一端を連結する連結部130と、連結部130に一端が連結されたナイロンコード4を掛け回す複数の掛け回し部140とを有する。
【0030】
円板部120には、一定の内径を有して下垂する下垂壁125が一体に形成されるとともに、この下垂壁125には、この下垂壁125の下端から水平方向外方に延出する支持壁126が繋がっている。円板部120の周縁部は、下垂壁125より外方まで延びて支持壁126の上位に重なるフランジ部121となっているが、このフランジ部121は、後記するようにナイロンコード4が掛け回し部140から離脱するのを防止する離脱防止壁121aとしての機能を有する。
【0031】
連結部130は、
図2に表れているように、支持壁126とフランジ部121との間を繋げるように上下方向に延びる壁部131にナイロンコード4が挿通しうる孔132を開けて構成されている。本実施形態では、この連結部130は、回転刃A1の直径方向に対向させて2箇所設けられている。
【0032】
掛け回し部140は、各連結部130に対して回転刃A1の周方向に所定間隔を隔てて位置する第1の掛け回し部140aと、この第1の掛け回し部140aに対して上記周方向に所定間隔ずつ隔てて位置する第2および第3の掛け回し部140b,140cとからなる3つの掛け回し部140を、回転刃Aの直径方向に対向する2つの領域に、合計6箇所形成されている。各掛け回し部140a,140b,140cは、支持壁126の上面からなる水平の支持面126aに対して垂直に立設された支持軸141にローラ状部材142を支持して構成されている。本実施形態では、支持軸141としてタッピングねじを用い、支持壁126に開けた孔126bに下方から通したタッピングねじをローラ状部材142の中心孔142bにねじ込むことにより、ローラ状部材142を支持している。本実施形態ではまた、ローラ状部材142は、
図1に示すように、断面凹曲状の外周溝142aをもつ鼓型に形成してある。このように、ローラ状部材142は、下端を支持壁126に固定された片持ち状の支持軸141に支持されているのであり、フランジ部121の下面と各ローラ状部材142の上端との間には、ナイロンコード4が挿通しうる程度の隙間Sが形成されている。また、フランジ部121における各ローラ状部材142の上位位置は、平面視において各ローラ状部材142が臨むように切欠き部122が形成されている。
【0033】
ガイド部材200は、中心筒部211およびこの中心筒部211の下端から延出する円板部220を備え、円板部220は、保持部材100の外周と対応する付近までは水平に延び、それより外周側は、上方に変位させられている。この実施形態においては、中心筒部211および円板部220の内周部は金属によって形成され、円板部220のその余の部分は樹脂によって形成されている。金属部分と樹脂部分の一体化は、インサート成形法によって行うことができる。このガイド部材200における中心筒部211の内面には、軸方向に重ねた2個のベアリング230がその外輪231を圧入することにより保持されている。このガイド部材200は、上側のベアリング230の内輪232を保持部材100のボス部110の下面に当接させた状態で、これらベアリング230および保持部材100のボス部110の中心孔111を通したボルト15を回転刃取付け軸14のねじ穴14aにねじ込むことにより、当該ボルト15に対し、その軸線(回転刃取付け軸14の軸線)を中心として相対回転可能に支持される。
【0034】
ナイロンコード4は、その一端を熱で潰したり、あるいは結び目をつくったりして上記連結部130の孔132を通過することができない大径部4aを形成した所定長さのもの、あるいは、所定長さに切断したナイロンコード材の一端に円筒状の大径部を形成してなる市販のものが用いられる。そして、このナイロンコード4は、
図2に表れているように、先端から孔132を通して大径部4aを壁部131に係止するようにして一端が保持部材100に連結され、壁部131から最も遠位の第3の掛け回し部140cを構成するローラ状部材142に掛け回して先端が回転刃A1の半径方向外方に延出させられる。ナイロンコード4の初期長さは、上記のようにして保持部100に保持させた状態において、先端がガイド部材200の外周から所定長さ延出しうるように設定される。掛け回し部140a,140b,140cは、鼓型のローラ状部材142を有して形成されており、フランジ部121には各ローラ状部材142が平面視において臨む切欠き部122が形成されているので、上記のようなナイロンコード4の掛け回し作業は容易に行える。また、各ローラ状部材142の上端より上位の位置にフランジ部121が形成されているので、ナイロンコード4が不用意にローラ状部材142に対する掛け回し状態から離脱することが防止される。
【0035】
ナイロンコード4は、磨耗によって次第に短くなる。この場合には、次のようにしてナイロンコード4の延出長さを延長することができる。すなわち、当初第3の掛け回し部140cに掛け回されていたナイロンコード4を、
図2において仮想線で表すように、第2の掛け回し部140bに掛け回し直す。本実施形態では、各ローラ状部材142の上端とフランジ部121との間にナイロンコード4が挿通しうる隙間Sが形成されているので、ローラ状部材142からナイロンコード4を掛け外す作業、および、隣のローラ状部材142に掛け回す作業を、容易に行える。このようにして、ナイロンコード4の延出長さは、隣り合うローラ状部材142,142間の距離に相当する長さ延長される。ナイロンコード4の先端が再び磨耗して延出長さが短くなった場合には、上記と同様の操作をしてナイロンコード4を第2の掛け回し部140bから第1の掛け回し部140aに掛け回し直せばよい。第1の掛け回し部140aに掛け回した状態においてさらに延出長さが短くなった場合には、ナイロンコード4を交換することになるが、ナイロンコード4は、大径部4aを引っ張って引き抜くことにより、容易に取り外すことができるし、新たなナイロンコード4を上記したように容易に取り付けることができる。
【0036】
草刈り機Bを用いて草刈り作業を行う際には、たとえば、スロットルレバーを操作するなどしてエンジンのスロットルの開度を上げると、エンジンの回転出力により、回転刃A1のうち、保持部材100ないしナイロンコード4が回転させられる。エンジンのスロットルの開度を調節することにより、ナイロンコード4の回転数を調節することができる。エンジンの回転出力は、伝動軸13からギヤケース16内のベベルギヤ(図示略)により減速され、回転刃取付け軸14を介して保持部材100ないしナイロンコード4へと伝えられる。保持部材100ないしナイロンコード4の回転数は、たとえば5,000〜6,300rpmに達する。回転刃A1の外径(ガイド部材200の外径)をたとえば300mmとすると、ナイロンコード4の先端部の周速は優に350km/hに達する。この回転刃A1を地面に沿って移動させてゆくと、雑草等の比較的軟質細状の物体は、ガイド部材200によってそれ以上の半径方向内方への進入を阻止され、高速で旋回するナイロンコード4による横方向からの強烈な衝突を受け、その衝撃によって難なく切断される。ナイロンコード4は、直径が高々3mm程度であり、かつ軽量であるが、先端部の周速が上記のようにきわめて高速であるため、軟質である雑草等の茎を切断するのには十分な運動エネルギを有しているのである。
【0037】
本実施形態では、掛け回し部140a,140b,140cは、鼓型をしたローラ状部材142によって形成されているので、回転刃A1の回転中、ナイロンコード4は、ローラ状部材142の外周溝142aの底部に位置づけられ、ガイド部材200の上面と旋回するナイロンコード4との間の間隔が正確に規定される。このことは、回転刃A1の切断性能の向上に大きく寄与する。
【0038】
ナイロンコード4は、使用を継続することによって、先端部において摩耗や切損等が起こり、ガイド部材200の外周からの延出長さが次第に短くなっていく。このような場合には、エンジンを停止して、上記したように、ナイロンコード4を、それまで掛け回されていた掛け回し部140から、ナイロンコード4の基端側に隣り合う掛け回し部140に掛け回し直すだけで、延出長さを延長することができることは、上述したとおりである。
【0039】
図3ないし
図5は、本発明の第2の実施形態に係る草刈り機用回転刃A2を示している。これらの図において、第1の実施形態に係る回転刃A1と同一または同等の部分または部材には同一の符号を付してある。以下においては、回転刃A2につき、回転刃A1と相違する点を中心に説明する。
【0040】
この回転刃A2は、
図3によく表れているように、回転刃A1と同様、回転刃取付け軸14に取付けられて回転させられ、かつ、コード状切断部材としてのナイロンコード4を保持する保持部材100と、この保持部材100に対してその回転軸心(回転刃取付け軸14と同一軸心)を中心として相対回転可能なガイド部材200とを備えている。
【0041】
保持部材100は、概して平面視円形をしており、中心孔111を有するボス部110と、このボス部110から水平方向外方に延びる円板部120と、この円板部120の外周方において、ナイロンコード4の一端を連結する連結部130と、連結部130に一端が連結されたナイロンコード4を掛け回す複数の掛け回し部140とを有する。
【0042】
円板部120には、概して短軸筒状に下垂する下垂壁125が一体に形成されるとともに、この下垂壁125には、この下垂壁125の下端から水平方向外方に延出する支持壁126が繋がっている。円板部120の周縁部は、下垂壁125より外方まで延びて支持壁126の上位に重なるフランジ部121となっているが、このフランジ部121は、後記するようにナイロンコード4が掛け回し部140から離脱するのを防止する、離脱防止壁(第1の離脱防止手段121a)としての機能を有する。
【0043】
連結部130は、
図4に表れているように、支持壁126とフランジ部121との間を繋げるように上下方向に延びる壁部131にナイロンコード4が挿通しうる孔132を開けて構成されている。本実施形態では、この連結部130は、回転刃A2の直径方向に対向させて2箇所設けられている。
【0044】
掛け回し部140は、各連結部130に対して回転刃A2の周方向に所定間隔を隔てて位置する第1の掛け回し部140aと、この第1の掛け回し部140aに対して上記周方向に所定間隔ずつ隔てて位置する第2および第3の掛け回し部140b,140cとからなる3つの掛け回し部140を、回転刃Aの直径方向に対向する2つの領域に、合計6箇所形成されている。各掛け回し部140a,140b,140cは、支持壁126の上面からなる水平の支持面126aに対して垂直に立設されたローラ状部材142からなる。
図5に表れているように、ローラ状部材142は、アルミニウム等の金属によって、断面凹曲状の外周溝142aをもつ鼓型に形成してあり、本実施形態では、無垢に形成したローラ状部材142の下面に突設した軸部142cを支持壁126に設けた貫通孔126bに通した上、軸部142cの先端の周溝にEリング142dを係止することにより、支持壁126に対して固定してある。フランジ部121の下面と各ローラ状部材142の上端との間には、ナイロンコード4が挿通しうる程度の隙間Sが形成されている。また、フランジ部121における各ローラ状部材142の上位位置は、平面視において各ローラ状部材142が臨むように切欠き部122が形成されている。
【0045】
本実施形態では、上記した第1の離脱防止手段121aに加え、以下に説明する第2の離脱防止手段が形成されている。すなわち、下垂壁125の周面における、連結部130と第1の掛け回し部140aとの間、第1の掛け回し部140aと第2の掛け回し部140bとの間、および第2の掛け回し部140bと第3の掛け回し部140cとの間に、保持部材100の半径方向外方に膨出する凸部127が、支持壁126の上面とフランジ部121の下面との間を埋めるようにして設けられているとともに、当該凸部127に、ナイロンコード4が嵌まり込みうる溝128が設けられており、この溝128が第2の離脱防止手段128aとして機能するようにしている。凸部127の先端位置は、各ローラ状部材142の外周溝142aの、ナイロンコード4が掛け回る側の底部間をつなぐ円周よりも保持部材100の半径方向外方まで突出しており、溝128の上下方向位置は、各ローラ状部材142の外周溝142aの底部位置と同一位置となるようにしてある。
【0046】
ガイド部材200は、回転刃A1におけるガイド部材200と同様に形成されており、中心筒部211およびこの中心筒部211の下端から延出する円板部220を備えている。円板部220は、保持部材100の外周と対応する付近までは水平に延び、それより外周側は、上方に変位させられている。中心筒部211および円板部220の内周部は金属によって形成され、円板部220のその余の部分は樹脂によって形成されている。金属部分と樹脂部分の一体化は、インサート成形法によって行うことができる。このガイド部材200における中心筒部211の内面には、軸方向に重ねた2個のベアリング230がその外輪231を圧入することにより保持されている。このガイド部材200は、上側のベアリング230の内輪232を保持部材100のボス部110の下面に当接させた状態で、これらベアリング230および保持部材100のボス部110の中心孔111を通したボルト15を回転刃取付け軸14のねじ穴14aにねじ込むことにより、当該ボルト15に対し、その軸線(回転刃取付け軸14の軸線)を中心として相対回転可能に支持される。
【0047】
ナイロンコード4は、
図4に表れているように、先端から孔132を通して大径部4aを壁部131に係止するようにして一端が保持部材100に連結され、壁部131から最も遠位の第3の掛け回し部140cを構成するローラ状部材142に掛け回して先端が回転刃A2の半径方向外方に延出させられる。このとき、各ローラ状部材142の間の下垂壁125には、凸部127が膨出しているが、この凸部127に設けた溝128を通すようにして、ナイロンコード4の先端を3つのローラ状部材142の内側に通して第3の掛け回し部140cを構成するローラ状部材142に掛け回す操作を容易に行うことができる。ナイロンコード4の初期長さは、上記のようにして保持部材100に保持させた状態において、先端がガイド部材200の外周から所定長さ延出しうるように設定される。各ローラ状部材142の上端より上位の位置にあるフランジ部121が第1の離脱防止手段121aとして機能し、かつ、凸部127に設けた溝128が第2の離脱防止手段128aとして機能するので、ナイロンコード4が不用意にローラ状部材142に対する掛け回し状態から離脱することが防止される。
【0048】
ナイロンコード4は、磨耗によって次第に短くなる。この場合には、当初第3の掛け回し部140cに掛け回されていたナイロンコード4を、
図4において仮想線で表すように、第2の掛け回し部140bに掛け回し直す。本実施形態では、各ローラ状部材142の上端とフランジ部121との間にナイロンコード4が挿通しうる隙間Sが形成されているとともに、フランジ部121には、平面視において各ローラ状部材142を臨ませるように大きく凹入する切欠き部122が形成されているので、ローラ状部材142からナイロンコード4を掛け外す作業、および、隣のローラ状部材142に掛け回す作業を、容易に行える。このようにして、ナイロンコード4の延出長さは、隣り合うローラ状部材142,142間の距離に相当する長さ延長される。ナイロンコード4の先端が再び磨耗して延出長さが短くなった場合には、上記と同様の操作をしてナイロンコード4を第2の掛け回し部140bから第1の掛け回し部140aに掛け回し直せばよい。第1の掛け回し部140aに掛け回した状態においてさらに延出長さが短くなった場合には、ナイロンコード4を交換することになるが、ナイロンコード4は、大径部4aを引っ張って引き抜くことにより、容易に取り外すことができるし、新たなナイロンコード4を上記したように容易に取り付けることができる。
【0049】
本実施形態の回転刃A2を用いて草刈り作業を行う場合についても、回転刃A1を用いる場合について上述したのと同様にして、効果的な草刈り作業を行うことができるが、本実施形態の回転刃A2を用いる場合には、上述したように、第1の離脱防止手段121aと、第2の離脱防止手段128aとの、2重の離脱防止手段が設けられているので、操作管12を激しく左右に振回して草刈り作業を行っても、ナイロンコード4が不用意に現在掛け回されているローラ状部材142から離脱するといった不具合を確実に防止することができる。
【0050】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施形態に限定されることはなく、各請求項に記載した範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0051】
第1の実施形態に係る回転刃A1では、ローラ状部材142を支持軸141としてのタッピングねじによって支持壁126に対して固定しているが、ローラ状部材142は、支持軸141に対して回転可能となるように支持してもよい。このようにすれば、ナイロンコード4によるローラ状部材142の磨耗がなくなるので、回転刃A1の寿命を延長する上で好都合となる。
【0052】
各実施形態に係る回転刃A1,A2においては、周方向に並ぶ3つの掛け回し部140a,140b,140cを、直径方向に対向する2つの領域に設け、保持部材100から2本のナイロンコード4が延出するようにしているが、各領域における掛け回し部140の数は、複数であれば、いくつであってもよい。保持部材100から延出するナイロンコード4の本数を3本またはそれ以上としうるように構成することもできる。
【0053】
各実施形態に係る回転刃A1,A2においてはまた、保持部材100ないし回転刃取付け軸14に対して相対回転可能なガイド部材200を設けているが、このガイド部材200を設けるかどうかは、選択事項である。
【0054】
さらに、本発明の回転刃A1,A2が取付けられて使用される草刈り機は、
図1に示したような操作管12の先端に回転刃取付け軸14を備える構成のものに限定されず、車輪を有して地面を移動可能なフレームに、エンジン等の動力源およびこの動力源によって回転駆動される回転刃取付け軸を有する、いわゆる自走式の草刈り機にも本発明の回転刃を取り付けて使用することができる。