(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972277
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】少なくとも2つの薬剤を送達するための薬液注入ポンプ薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
A61M 39/04 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
A61M39/04
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-540403(P2013-540403)
(86)(22)【出願日】2011年11月28日
(65)【公表番号】特表2013-544164(P2013-544164A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】EP2011071137
(87)【国際公開番号】WO2012072561
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】10192994.1
(32)【優先日】2010年11月29日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/433,809
(32)【優先日】2011年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ギャレン・コーヨムジャン
(72)【発明者】
【氏名】マルコム・スタンリー・ボイド
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・トーマス・デ ソースマレズ リンテル
【審査官】
鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第6620138(US,B1)
【文献】
特表昭63−503366(JP,A)
【文献】
特開昭60−242864(JP,A)
【文献】
米国特許第4596555(US,A)
【文献】
米国特許第4511352(US,A)
【文献】
特表2010−522012(JP,A)
【文献】
特表2002−535093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/04
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの薬剤を送達するための薬物送達システムであって:
第一の流体又は薬剤(106)の入った第一のリザーバ(104)に操作可能に連結されたポンプ;
一端が第一のリザーバに連結される送出管(108);
送出管と流体連通している投薬インターフェース(116);及び
送出管と流体連通している第二のモジュール(110)、
を含んでなり、ここで第二のモジュールは、ハウジング(326)、第一の流体又は薬剤を送達するためのバイパスチャンネル(336)、第二の流体又は薬剤(314)の入った第二のリザーバ(312)、近位針(330)、及び遠位針(332)を含み、
前記第二のモジュールは、作動ボタン(338)をさらに含み、ここで作動ボタンは、作動ボタンが、近位針(330)及び遠位針(332)がバイパスチャンネル(336)と流体連通する非作動位置にあるときは第一の流体又は薬剤の送達を可能にし、そして作動ボタンが、近位針(330)及び遠位針(332)が第二のリザーバ(312)と流体連通する作動位置にあるときは第二の流体又は薬剤の送達を選択的に可能にするように構成される、上記薬物送達システム。
【請求項2】
送出管(108)がハブ(118)を介して第一のリザーバ(104)に連結される、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薬物送達システムであって、作動ボタン(338)はボタンをスライドさせることによって作動され、作動ボタンは、第二のモジュールのハウジングの内面にある少なくとも1つの溝(350)と係合するように構成された少なくとも1つのスナップアーム(352)を含み、近位針(33)は作動ボタンに固定され、そして少なくとも1つの溝は作動ボタン(338)の作動位置に対応する、上記薬物送達システム。
【請求項4】
第二のモジュール(110)が、作動後に作動ボタンが非作動位置に逆転されることを防止するように構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項5】
第二のモジュール(110)が、第一のリザーバ(104)に連結される送出管(108)の端の近くに位置する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項6】
第二のモジュール(110)が、第一のリザーバ(104)に連結される送出管(108)の端と投薬インターフェース(116)の間の位置に置かれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項7】
第二のモジュールが、投薬インターフェースの近くに置かれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項8】
送出管と流体連通している第二のモジュール(110)が再使用可能な第二のモジュールを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項9】
第二のモジュール(11)がハブ620と取り外し可能に連結される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項10】
少なくとも2つの流体及び/又は薬剤を送達するための薬物送達システムであって:
第一の流体及び/又は薬剤の入った第一のリザーバに操作可能に連結されたポンプ;
一端が第一のリザーバに連結される送出管(408);
送出管と流体連通している投薬インターフェース(416);及び
送出管と流体連通している第二のモジュール(410);
を含んでなり、
ここで第二のモジュールは、ハウジング(426)、並びに(i)第二の流体及び/又は薬剤の入ったカートリッジ用のチャンバ、及び(ii)第一の流体及び/又は薬剤を送達するためのバイパスチャンネル(436)、を含む作動ボタン(436)、を含み、ここで作動ボタンは、作動ボタンが非作動位置にあるときは第一の流体及び/又は薬剤の送達を可能にし、そして作動ボタンが作動位置にあるときは第二の流体及び/又は薬剤の送達を選択的に可能にするように構成される、上記薬物送達システム。
【請求項11】
作動ボタンが非作動位置にあるとき、カートリッジは送出管から横にオフセットされ、そして作動ボタンが作動位置にあるとき、カートリッジは送出管と一列にされる、請求項10に記載の薬物送達システム。
【請求項12】
カートリッジは、カートリッジが送出管と一列にされそして第1の流体及び/又は薬剤が送出管を通って送り込まれる場合に開き、それによって第2の流体及び/又は薬剤を送達できるように構成される少なくとも1つの一方向弁を含む、請求項10又は11に記載の薬物送達システム。
【請求項13】
少なくとも2つの流体及び/又は薬剤を送達するための薬物送達システムであって:
第一の流体及び/又は薬剤の入った第一のリザーバに操作可能に連結されたポンプ;
一端が第一のリザーバに連結される送出管(508);
送出管と流体連通している投薬インターフェース;及び
送出管と流体連通している第二のモジュール(510);
を含んでなり、
ここで第二のモジュールは、ハウジング(526)、並びに(i)第二の流体及び/又は薬剤(514)の入ったカートリッジ(512)用のチャンバ、及び(ii)第一の流体及び/又は薬剤を送達するためのバイパスチャンネル(536)、を含む回転部材(538)、を含み、ここで回転部材は、バイパスチャンネルが送出管と一列にされたとき第一の流体及び/又は薬剤の送達を可能にし、カートリッジが送出管と一列にされたとき第二の流体又は薬剤の送達を選択的に可能にするように構成される、上記薬物送達システム。
【請求項14】
カートリッジは、カートリッジが送出管と一列にされそして第1の薬剤が予備の管を通って送り込まれる場合に開き、それによって第2の薬剤を送達できるように構成される少なくとも1つの一方向弁を含む、請求項13に記載の薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、別個のリザーバ(本明細書では、「容器」、「カートリッジ」、及び「パッケージ」と呼ばれる場合がある)から少なくとも2つの薬剤を使用者に送達するための医療システム及び方法に関する。特に、本出願は、1つ又はそれ以上の薬剤をそれぞれのリザーバから輸液セットを介して使用者に投薬するように設計された連続注入療法(CIT)(continuous infusion therapy)ポンプシステムに関係する。それぞれの薬剤は、単独(単一薬剤化合物)の又はレミックスされた(共製剤化多剤薬物化合物(co-formulated multiple drug compounds))薬物作用物質を含有してもよい。
【背景技術】
【0002】
或る疾患は、1つ又はそれ以上の異なる薬物作用物質を使用する処置(即ち、併用療法)を必要とする及び/又はその恩恵を受ける。例えば、症例によっては、糖尿病を、長時間作用型のインスリン及びプログルカゴン遺伝子の転写産物から誘導されるグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)で処置することは、有益であり得る。GLP−1は人体で発見され、腸のL−細胞によって消化管ホルモンとして分泌される。GLP−1は、それを(及びその類似体を)糖尿病の潜在力のある治療法として重点的な研究課題にさせる幾つかの生理学的特性を有する。併用療法は、症例によっては好ましいかもしれないが、いくつかの薬物作用物質は、最適な薬用量を送達するために互いに固有の関係で送達される必要がある。開示されたシステム及び対応する方法は、併用療法は望ましいが、安定性、治療成績の不確実性及び毒性など、だがこれらに限定されない理由で、単一製剤化が不可能な場合にとりわけ有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2つの活性薬物作用物質の保存及び送達に関連した多くの潜在的な問題がある。例えば、2つの活性薬物作用物質は、長期保存期間中に相互作用する可能性がある。従って、活性薬物作用物質を別々に保存し、注射、無針注入、ポンプ、又は吸入などを経由する送達の時点でのみ、それらを混合することが有利である。しかし、2つの活性薬物作用物質を混ぜ合わせる方法は、使用者が確実に、繰り返し、そして安全に実施することが、簡単で且つ便利である必要がある。
【0004】
さらなる問題は、併用療法を構成する各活性薬物作用物質の量及び/又は割合が、個々の使用者に対して又は彼らの治療の異なる段階で変化させる必要があり得ることである。例えば、或る活性薬物作用物質は、使用者を徐々に「維持」用量に誘導するための調節(titration)期間を必要とする可能性がある。さらなる例は、1つの活性薬物作用物質が調節不可能な固定投与量を必要とするが、他方は使用者の症状又は体調に応じて変更されるかどうかである。この問題は、複数の活性薬物作用物質のプレミックスされた薬剤製剤は、医療専門家又は使用者によって変えることができない固定された活性薬物作用物質の比率を有するので、好適でない可能性があることを意味する。
【0005】
さらに、多くの使用者は、2つ以上の薬物送達システムを使用しなければならないこと又は要求される用量配合に必要な正確な計算をしなければならないことに対処できない。これは、器用さ又は計算力に問題を持つ使用者では特にそうである。従って、実施が使用者にとって簡単であり、2つ又はそれ以上の薬物作用物質を送達するためのシステム及び方法を提供することに対する強いニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示されたシステム及び対応する方法は、望ましい併用療法を構成する2つ又はそれ以上の薬物作用物質用の個別のリザーバを提供することによって上述の問題を克服する助けとなる。2つ又はそれ以上の活性薬物作用物質は、送達の時点で、単に混合され及び/又は使用者に送達される。従って、2つ又はそれ以上の活性薬物作用物質は、長期保存の間、互いに相互作用しないことになる。さらに、開示されたシステム及び対応する方法は、さまざまな薬用量プロファイルを達成することができ、それ故、個々の使用者に対して又は彼らの治療の異なる段階で変化させる必要があり得る併用療法を可能にする。
【0007】
これらの利点および他の利点は、下記の本発明のより詳細な説明から明らかになる。
【発明の効果】
【0008】
本明細書に開示されるのは、少なくとも2つの薬剤及び/又は流体を使用者に送達する(本明細書では「投薬する」と呼ばれる場合がある)ための薬液注入ポンプ薬物送達システム及び対応する方法のさまざまな例であり、ここで薬剤及び/又は流体は単独の(単一の化合物)又はプレミックスされた(共製剤化された複数の化合物)薬物作用物質を含有してもよい。より具体的には、開示されたシステム及び対応する方法は、操作可能にポンプに接続されたリザーバから第一の薬剤の継続的な送達及び別のリザーバから第二の薬剤の選択的な送達を可能にし、ここで第二の薬剤は、第一の薬剤と逐次的又は同時に送達されればよい。本出願では主として薬液注入ポンプ薬物送達システムとして記述されるが、基本原理は、注射ペン、吸入、鼻、眼、口腔、局所、及び同様のシステムなどの、だがこれらに限定されない薬物送達の他の形態に適用することができる。1つの配置では、システムは1つの薬剤、及び生理食塩水又は薬剤投薬システムに通常使用される他の種類の流体のような流体を含んでもよい。
【0009】
2つの薬剤を、単一投薬インターフェースを介して単一システムの個別のリザーバから送達することによって、薬物送達システムは複数システムの使用及び/又は複数の針使用に関連する固有のリスクの無い使用者のための併用療法(即ち、薬剤のさまざまな薬物作用物質の間の治療用量プロファイル)を明確にする。これは、患者の安全性を高める一方で、併用療法の投与の複雑性を減らす。1つ又はそれ以上の薬剤は、流体であってもよく、本明細書では、流れることができ、力が作用した場合安定した比率で形が変わりその形態を変える傾向がある液体又は気体又は粉末として定義される。或いは又はさらに、1つ又はそれ以上の薬剤は、別の流体薬剤で担持された、可溶化された或いは共に投薬される固体、粉末、スラリーの懸濁液であってもよい。
【0010】
出願者の本特許出願は、具体的な可能性のある2つの薬物併用として、インスリン、インスリン類似体又はインスリン誘導体、及びGLP−1又はGLP−1類似体について言及するが、鎮痛薬、ホルモン、β−アゴニスト又はコルチコステロイドなどの他の薬物又は薬物の組み合わせ、又は上述の薬物のあらゆる組み合わせは、出願者の提唱したシステム及び方法で使用することができる。
【0011】
本明細書で用いられる「インスリン」という用語は、ヒトインスリン又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体を含むインスリン、インスリン類似体、インスリン誘導体又はそれらの混合物を意味する。インスリン類似体の例は、制限なしに、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B29位のLysは、Proで代替されてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。インスリン誘導体の例は、制限なしに、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン;及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0012】
本明細書で使われる用語の「GLP−1」は、GLP−1、GLP−1類似体、又はそれらの混合物を意味し、制限すること無く、エキセナチド(エキセンジン−4(1−39):配列がH−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH
2のペプチド)、エキセンジン−3、リラグルチド、又はAVE0010(H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Ser−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−NH
2)を含む。
【0013】
β−アゴニストの例は、制限無しに、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、メタンスルホン酸ビトルテロール、サルメテロール、フォルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、インダカテロールである。
【0014】
ホルモンは、例えば、脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストであり、例えばゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、絨毛性ゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トレプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどである。
【0015】
本開示に記載の薬物送達システムは、(i)第一の薬剤の入った第一のリザーバに操作可能に連結されたポンプ、(ii)送出管、ここで送出管の1つの端は第一のリザーバに連結されている、(iii)送出管と流体連通している投薬インターフェース、及び(iv)送出管と流体連通している第二の薬剤モジュールを含んでもよい。
【0016】
第二の薬剤モジュールは、ハウジング、第一の薬剤を送達するためのバイパスチャンネル、第二の薬剤の入った第二のリザーバ、及び作動ボタンを含めばよい。作動ボタンは、作動ボタンが非作動位置にあるときは第一の薬剤の送達を可能にし、作動ボタンが作動位置にあるときは第二の薬剤の送達を選択的に可能にするように構成されればよい。
【0017】
本明細書に開示される薬物送達システムの1つの例示的な実施態様では、システムは、(i)第一の薬剤の入った第一のリザーバに操作可能に連結されたポンプ、(ii)送出管、ここで送出管の1つの端は第一のリザーバに連結されている、(iii)送出管と流体連通している投薬インターフェース、及び(iv)送出管と流体連通している第二の薬剤モジュールを含む。第二の薬剤モジュールは、(i)第一の薬剤を送達するためのバイパスチャンネル、(ii)第二の薬剤の入った第二のリザーバ、(iii)近位針、(iv)遠位針、及び(v)作動ボタンを含む。作動ボタンは、作動ボタンが非作動位置にあるときは第一の薬剤の送達を可能にし、そして作動ボタンが作動位置にあるときは第二の薬剤の送達を選択的に可能にするように構成される。作動ボタンが非作動位置にあるとき、近位針及び遠位針はバイパスチャンネルと流体連通する。作動ボタンが作動位置にあるとき、近位針及び遠位針は第二のリザーバと流体連通する。
【0018】
本明細書に開示される薬物送達システムの別の例示的な実施態様では、システムは、(i)第一の薬剤の入った第一のリザーバに操作可能に連結されたポンプ、(ii)送出管、ここで送出管の1つの端は第一のリザーバに連結されている、(iii)送出管と流体連通している投薬インターフェース、及び(iv)送出管と流体連通している第二の薬剤モジュールを含む。第二の薬剤モジュールは、ハウジング及び作動ボタンを含み、それは(i)第二の薬剤の入ったカートリッジ用のチャンバ及び(ii)第一の薬剤を送達するためのバイパスチャンネルを含む。作動ボタンは、作動ボタンが非作動位置にあるときは第一の薬剤の送達を可能にし、そして作動ボタンが作動位置にあるときは第二の薬剤の送達を選択的に可能にするように構成される。作動ボタンが非作動位置にあるとき、カートリッジは送出管から横にオフセットされ、そしてここで、作動ボタンが作動位置にあるとき、カートリッジは送出管と一列にされる。カートリッジは、カートリッジが送出管と一列にされそして第一の薬剤が送出管を通って送り込まれるときに開くように構成される、少なくとも1つの一方向弁を含んでもよい。
【0019】
本明細書に開示される薬物送達システムの別の例示的な実施態様では、システムは、(i)第一の薬剤の入った第一のリザーバに操作可能に連結されたポンプ、(ii)送出管、ここで送出管の1つの端は第一のリザーバに連結されている、(iii)送出管と流体連通している投薬インターフェース、及び(iv)送出管と流体連通している第二の薬剤モジュールを含む。第二の薬剤モジュールは、ハウジング及び回転式部材を含み、それは(i)第二の薬剤の入ったカートリッジ用のチャンバ及び(ii)第一の薬剤を送達するためのバイパスチャンネルを含む。回転式部材は、バイパスチャンネルが送出管と一列にされたとき、第一の薬剤の送達を可能にし、そしてカートリッジが送出管と一列にされたとき、第二の薬剤の送達を選択的に可能にするように構成される。使用者が第二の薬剤の送達を望むとき、使用者は、カートリッジが送出管と一列になるまで回転式部材を回転させる。上記の例のように、カートリッジは、カートリッジが送出管と一列にされそして第一の薬剤が予備の管を通って送り込まれるときに開き、それによって第二の薬剤を送達できるように構成される少なくとも1つの一方向弁を含んでもよい。
【0020】
本発明の様々な態様の、これら並びに他の利点は、添付の図面を適切に参照し、以下の詳細な説明を読むことによって当業者には明白になる。
【0021】
出願者らの薬物送達システムのさまざまな例及び対応する方法は、本明細書では次の図面を参照して記述され、その中で類似した番号は類似した実体を表す:
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】例示的な薬液注入ポンプ薬物送達システムの前面図である。
【
図2】
図1の薬液注入ポンプ薬物送達システムの背面図であり、第二の薬剤モジュールのさまざまな可能な位置を示す。
【
図3A】
図1及び2に示されるシステムで使用できる第二の薬剤モジュールの例示的な実施態様を図示する。
【
図3B】ボタンが非作動の位置にあるときの、
図3Aの第二の薬剤モジュールの断面図を図示する。
【
図3C】ボタンが非作動の位置にあるときの、
図3Aの第二の薬剤モジュールの別の断面図を図示する。
【
図3D】ボタンが作動の位置にあるときの、
図3Aの第二の薬剤モジュールの別の断面図を図示する。
【
図3E】ボタンが作動の位置にあるときの、
図3Aの第二の薬剤モジュールの部分的な透視図を図示する。
【
図3F】ボタンが作動の位置にあるときの、
図3Aの第二の薬剤モジュールの別の部分的な透視図を図示する。
【
図4A】
図1及び2に示される薬液注入ポンプ薬物送達システムで使用できる第二の薬剤モジュールの別の例示的な実施態様の部分的な分解図を図示する。
【
図4B】ボタンが非作動の位置にあるときの、
図4Aの第二の薬剤モジュールを図示する。
【
図4C】ボタンが作動の位置にあるときの、
図4Aの第二の薬剤モジュールを図示する。
【
図5A】
図1及び2に示される薬液注入ポンプ薬物送達システムで使用できる第二の薬剤モジュールの別の例示的な実施態様を図示する。
【
図5B】
図5Aの第二の薬剤モジュールの回転式部材及びカートリッジを図示する。
【
図5C】回転式部材が非作動の位置にあるときの、
図5Aの第二の薬剤モジュールの部分的な透視図を図示する。
【
図5D】回転式部材が回転されているときの、
図5Aの第二の薬剤モジュールの部分的な透視図を図示する。
【
図5E】回転式部材が作動の位置にあるときの、
図5Aの第二の薬剤モジュールの部分的な透視図を図示する。
【
図5F】回転式部材が作動の位置にあるときの、
図5Aの第二の薬剤モジュールを図示する。
【
図6】
図1及び2に示される薬液注入ポンプ薬物送達システムで使用できる第二の薬剤モジュールの別の例示的な実施態様を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に開示される薬液注入ポンプ薬物送達システム及び対応する方法は、操作可能にポンプに接続されたリザーバから第一の薬剤の継続的な送達及び別のリザーバから第二の薬剤の選択的な送達を可能にし、ここで使用者の指令で第二の薬剤は、第一の薬剤と逐次的に又は同時に送達されればよい。両者の薬剤は、単一投薬インターフェース(例えば、針)を経由して送達される。薬剤は、本明細書では異なる(即ち、第一の及び第二の薬剤)ように呼ばれるが、第二の薬剤は第一の薬剤と異なる必要はない(例えば、基本インスリンの流れに付加されるインスリンボーラス)。第二の薬剤モジュールを作動させる(例えば、第二の薬剤の入ったリザーバと操作可能に連結されたボタンを作動させる)ことによって、使用者(又は使用者を援助する人、例えば医療提供者)は、第二の薬剤の遅れた投薬が好ましい又は求められることが有効な第二の薬剤を送達するときに、選択することができる。
【0024】
本明細書に開示される例示的な実施態様に示されるように、第二の薬剤はシステムの輸液セットに組み込まれ、そしてそれは送出管、投薬インターフェース、及び投薬インターフェースを送出管と連結し、そして使用者の身体上の投薬インターフェースの位置を維持するのを支援するハブを含んでもよい。使用者の身体上に投薬インターフェースがその位置を維持するのを支援するために、ハブは、使用者の皮膚に接着するための接着剤を含む使い捨てのパッチを含んでも又はそれに取り付けられてもよい。輸液セットの寿命制限の間中に単一用量だけが要求されるとき、第二の薬剤は、輸液セットに完全に/恒久的に組み込まれ(例えば、予充填され)てもよく、それによって全輸液セット又はそのさまざまな構成要素(例えば、送出管及び/又は第二の薬剤モジュール)を交換することなく一度だけで投薬することができる。しかし、幾つかの用量が要求されるなら又は第二の薬剤を変える必要があるなら、輸液セットは、第二の薬剤の導入を受け入れる引き込み口の役割を果たしてもよく、又は第二の薬剤の入ったカプセル又はカートリッジの交換を可能にしてもよい。輸液セットが引き込み口の役割をするとき、引き込み口は、不適切な薬剤の導入を防止するために専用の取り付け手段の特徴をもてばよい。
【0025】
本明細書に記載される大多数の例示的な実施態様は、投薬インターフェースの近くの第二の薬剤モジュールを表現する。これは、第一の薬剤の流量への影響を最小にするために役立ち、そしてシステムプライミング中の第二の薬剤の迸りを回避することに役立つ。しかし、特定の状況下では、これらの考えは必要又は重要なく、そして第二の薬剤は、さらに上流(即ち、第一の薬剤リザーバのより近く)に組み込まれてもよい。
【0026】
例示的な薬液注入ポンプ薬物送達システムは、
図1及び2に示される。図のように、システム100は一般に、第一の薬剤106の入った第一のリザーバ104と操作可能に連結されたポンプ(示されていない)用のハウジング102、送出管108、第二の薬剤114の入った第二のリザーバ112を包含する第二の薬剤モジュール110、及び投薬インターフェース116を含む。第二の薬剤モジュール110は、第一のリザーバ104と投薬インターフェース116の間の送出管108に沿ったどこに設置されてもよい。例えば、
図2に示されるように、第二の薬剤モジュール110は、(i)送出管108を第一のリザーバ104に連結するのを支援するハブ118の内部又はその近く、(ii)送出管を投薬インターフェースに連結するのを支援する及び使用者の身体上の投薬インターフェースの位置を維持するのを支援するハブの内部又はその近く、及び/又は(i)と(ii)の間の如何なる場所に設置されてもよい。本明細書に開示されるシステムの例示的な実施態様は単一の第二の薬剤モジュール110を有するように説明されるが、いかなる数の第二の薬剤モジュール110がどの例示的なシステムで使用されてもよい。
【0027】
図2に最もよく示されるように、制御部122、124(例えば、用量ダイヤル、電源スイッチ、など)は、ハウジング102の外表面に取り付けられる。これらの制御部は、システム100の電源をオン/オフにする及び/又は第一の薬剤106の所望の用量を設定するために使用されてもよい。或いは、制御部はハウジング102から離れて備えられてもよい。簡潔性及び明瞭性の目的で、付加的な部材、例えば電子回路、制御機器、処理装置、電源、メモリー、コンバータ、マルチプレクサーなどは図示されない。しかし、そのような構成部材はCITポンプシステムに一般的に含まれ、そして業界に周知であることは理解されるべきである。従って、本明細書に開示されるシステムの例示的な実施態様は、必要に応じてそのような部材を含んでもよい。これらの部材は、例えばハウジング102の上又は中に在ればよい。
【0028】
図3A〜6は、
図1及び2で使用することができる第二の薬剤モジュール110のさまざまな例示的な実施態様を図示する。
図3A〜3Fを参照すると、第二の薬剤モジュール310の第一の例示的な実施例が示される。第二の薬剤モジュール310は、投薬インターフェース316の近くに位置し、そして一般に、内側に摺動可能なカプセル328が置かれるハウジング326(それはハブ320の一部であってもよい)、第二の薬剤314を含むカプセル328内のリザーバ312、近位針330、遠位針332、第一の薬剤(示されない)を送達するためのバイパスチャンネル336(
図3Cを参照)、及び作動ボタン338を含む。
【0029】
ボタン338が非作動位置(即ち、
図3B及び3Cに示されるように、その最近位の位置)にあるとき、第一の薬剤の送達は可能であるが、第二の薬剤314の送達は不可能である。この位置で、近位針330は送出管308からバイパスチャンネル336までの流体管を提供し、一方遠位針332はバイパスチャンネル336から投薬インターフェース316までの流体管を提供する。従って、ポンプが作動している間、第一の薬剤は、送出管308を通り、次に近位針330を通り、次にバイパスチャンネル336(
図3Cを参照)を通り、次に遠位針332を通り、そして最後に投薬インターフェース316を通って遠位方向340に押し進められ、それによって第一の薬剤は使用者に送達される。
【0030】
使用者が第二の薬剤314の送達を望むとき、使用者は、作動ボタン338を遠位方向340に、ボタン338が作動位置に到達する(即ち、近位及び遠位針、330及び332、が両者とも第二の薬剤の入ったリザーバ312と流体連通するとき)までスライドさせることによって第二の薬剤モジュール310を作動させる。近位針330はボタン338に(多分接着剤で)固定されているので、使用者がボタン338を遠位方向340にスライドさせるとき、近位針330は、それと一致して遠位方向340に移動する。或いは、近位針330は、機械的に捕捉される又は共鋳造(co-molding)を通して接着されればよい。送出管308とカプセル328の間に位置したスライドするセプタム又はシール334は、近位針330を遠位方向340に移動するように誘導することを支援すると同時に、第一の薬剤がハウジング326の空洞342内に漏れるのを防止する。スライドするシール334は、送出管308の遠位端又は第二の薬剤モジュール310のハウジング326に固定される又はその一部であってもよい。
【0031】
使用者がボタン338を遠位方向340にスライドさせにつれて、ボタン338の最初の所定の軸方向の位置で、近位針330の遠位端はリザーバ312の近位シール344を穿刺し、それによって、近位針330は第二の薬剤314の入ったリザーバ312と流体連通する。ボタン338の2番目の所定の軸方向の位置で、ボタン338の内側部分348はカプセル328と隣接状態になり、従って、ボタン338のさらなる遠位移動340は、相当する移動を摺動可能なカプセル228に起こさせる。ボタン338の3番目の所定の軸方向の位置で、遠位針332(ハウジング326に固定されている)の近位端はリザーバ312の遠位シール346を穿刺し、従って、遠位針332は第二の薬剤314の入ったリザーバ312と流体連通する。近位及び遠位針、330及び332の両者がリザーバ312と流体連通した後、ボタン338は作動位置(
図3Dに表示)にある。本明細書ではボタン338の最初、2番目、及び3番目の所定の軸方向の位置として説明されたが、最初及び2番目の所定の軸方向の位置は同じであってもよい。言い換えれば、近位針330の遠位端は、ボタン338の内側部分348がカプセル328と隣接状態になるのと実質的に同時に、リザーバ312の近位シール344を穿刺すればよい。
【0032】
針330及び332の両者がリザーバ312と流体連通した後、ポンプによって発生された第一の薬剤の遠位方向の力は、リザーバ312から第二の薬剤を、遠位針330を通り、そして投薬インターフェース316を通って押し進め、それによって第二の薬剤314を使用者に送達する。第二の薬剤モジュール310は、ボタン338が作動位置にあるとき、近位及び遠位針、330及び332のそれぞれ遠位及び近位端は、それぞれ近位及び遠位シール、344及び346に非常に接近しており、それ故、リザーバ312内のデッドスペースの量を最小にする。第二の薬剤314が使用者に送達された後、第一の薬剤は、ポンプがそのリザーバから第一の薬剤を汲み出すことを継続する限り、使用者に(針330及び332の両者と流体連通しているリザーバ312によって創られた流路を経由して)送達され続けることになる。
【0033】
図3E及び3Fに示すように、第二の薬剤モジュール310のハウジング326は、ボタン338のスナップアーム352と係合するように構成された溝350が備えられればよく、そのようにして、触覚及び/又は可聴フィードバックを使用者に提供する。図のように、ハウジング326は、3つの溝350を持つ2つの列が備えられ、それはボタン338の2つのスナップアーム352と係合するように構成され、ここで、列は、ハウジング326の内面に互いに向き合って配列され、そしてスナップアーム352は、カプセル328と相互作用するボタン338の一部分348の外縁上に互いに反対側に配列される。それぞれの溝350は、上記したボタン338の所定の軸方向の位置の1つに一致すればよい。例えば、最近位の溝350は、ボタン338の最初の所定の軸方向の位置に相当すればよく、中央の溝350は、ボタン338の2番目の所定の軸方向の位置に相当すればよく、そして最遠位の溝350は、ボタン338の3番目の所定の軸方向の位置に相当すればよい。何個の溝350及びスナップアーム352が使われてもよい。溝350及びスナップアーム352の数に関わりなく、使用者が、いつボタン338が作動位置にあるか、ひいては、第二の薬剤314がいつ送達されるかを知るために、ボタン338の作動位置に相当する溝350を備えることが望ましい。
【0034】
溝350及び対応するスナップアーム352は、ボタン338が、作動位置に到達した後に非作動位置に逆進することを防止するように構成されればよく、例えば第二の薬剤モジュール310を使い捨て(即ち、単回使用)にする。これは、一方向歯止め型のシステムを用いて達成されればよい。従って、第二の薬剤314の送達の後、同じ又は異なる第二の薬剤の第二の用量を送達するために、第二の薬剤モジュール310及び/又は全輸液セットは、交換される必要があることになる。或いは、第二の薬剤モジュール310は再使用可能(即ち、複数回使用)であればよい。そのようなものとして、ボタン338が非作動位置に逆転されるように構成されればよい。さらに、第二の薬剤モジュール310は、(i)第二の薬剤の補給用量を受け取るため及び(ii)補給用量をリザーバ312に移送するための引き込み口が備えられればよい。別の再使用可能な実施態様では、第二の薬剤モジュール310は、カプセル328全体が交換し得るように構成されてもよい。
【0035】
図4A〜4Cは、第二の薬剤モジュール410の別の例示的な実施態様を図示する。図のように、第二の薬剤モジュール410は投薬インターフェース416の近傍に位置し、一般にハウジング426(それはハブ420の一部であってもよい)及び(i)第二の薬剤414を含むカートリッジ412を保持するためのチャンバ428及び(ii)バイパスチャンネル436(
図4Cを参照)を含む作動ボタン438を含む。第二の薬剤モジュール410は、使い捨て(即ち、単回使用)又は再使用可能(即ち、複数回使用)であってもよい。第二の薬剤モジュール410が使い捨てであるなら、あらかじめ組み込まれた恒久的カートリッジ412が備えられればよい。第二の薬剤モジュール410が再使用可能であるなら、使用者は、第二の薬剤の用量を送達させたいとき、カートリッジ412をチャンバ428に装着しなければならない。そのようなとき、カートリッジ412及びそこに含まれる第二の薬剤の無菌性を維持すること、並びに第二の薬剤モジュール410を作動させる前に第二の薬剤414の漏出を防止することが重要である。従って、カートリッジ412は、その近位端及び遠位端を覆うシール(示されていない)を装備すればよい。これらのシールは、第二の薬剤モジュール410を作動させる前に使用者が除去できる金属箔シールであればよい。さらに、チャンバ428は、特定のカートリッジだけを受領する専用の取り付け手段を特色としてもよく、それは不適切な薬剤の導入を防止する。
【0036】
二次薬剤モジュール410が非作動位置にあるとき(即ち、
図4Bによく示されるように、バイパスチャンネル436が送出管408及び投薬インターフェース416と流体連通しているとき、そしてカートリッジ412が送出管408から横にオフセットされたとき)、第一の薬剤の送達は可能であるが、第二の薬剤414の送達は阻止される。この位置で、バイパスチャンネル436は、送出管408から投薬インターフェース416までの流体管を提供する。従って、ポンプが動いている間、第一の薬剤は送出管408を通して遠位方向440に押し進められ、次にバイパスチャンネル436を通り、そして最終的に投薬インターフェース416を通り、それによって第一の薬剤を使用者に送達する。
【0037】
使用者が第二の薬剤414を送達したいとき、使用者は、ボタン438を作動位置に到達するまで(即ち、
図4Cに示されるように、カートリッジチャンネル454が送出管408及び投薬インターフェース416と流体連通するように、カートリッジ412が送出管408と一列にされる時まで)押し下げることによって第二の薬剤モジュール410を作動させる。図に示されていないが、カートリッジチャンネル454の近位端及び遠位端の両者は、第一の薬剤がそのリザーバからポンプで送り込まれるときに、第一の薬剤の力で開くように設計された一方向弁が装備される。従って、カートリッジチャンネル454が送出管408及び投薬インターフェース416と流体連通するように、カートリッジ412が送出管408と一列にされた時点で、第一の薬剤の力によって一方向弁が開けられる。弁が開けられると同時に、第一の薬剤は、第二の薬剤414をカートリッジ412からそして投薬インターフェース416を通して押し出し、それによって第二の薬剤414を使用者に送達する。第二の薬剤414が使用者に送達された後、第一の薬剤は、ポンプが第一の薬剤をそのリザーバから送り続ける限り(送出管408及び投薬インターフェース416と流体連通しているカートリッジチャンネル454によって創られた流路を経由して)使用者に送達され続けることになる。
【0038】
示されてはいないが、第二の薬剤モジュール410のハウジングは、ボタン438のスナップアーム452と係合するように構成された溝450が備えられればよく、そのようにして、触覚及び/又は可聴フィードバックを使用者にもたらす。何個の溝450及びスナップアーム452が使われてもよい。溝450及びスナップアーム452の数に関わりなく、使用者が、いつボタン438が作動位置にあるか、ひいては、第二の薬剤414がいつ送達されるかを知るために、ボタン438の作動位置に相当する溝450を備えることが望ましい。
【0039】
溝450及び対応するスナップアーム452は、ボタン438が、作動位置に到達した後に非作動位置に逆進することを防止するように構成されればよく、例えば第二の薬剤モジュール410を使い捨て(即ち、単回使用)にする。これは、一方向歯止め型のシステムを用いて達成されればよい。従って、第二の薬剤414の送達の後、同じ又は異なる第二の薬剤の第二の用量を送達するために、第二の薬剤モジュール410及び/又は全輸液セットは交換される必要があることになる。或いは、上で述べたように、第二の薬剤モジュール410は再使用可能であればよい。そのようなものとして、ボタン438が非作動位置に逆転されるように構成されればよい。ボタン438が非作動位置になると同時に、使用済カートリッジは新しいもので置き換えられればよい。
【0040】
図5A〜5Fは、第二の薬剤モジュール510の別の例示的な実施態様を図示する。図のように、第二の薬剤モジュール510は、投薬インターフェース516の近傍に位置し、一般にハウジング526(それはハブ520の一部であってもよい)及び(i)第二の薬剤514を含むカートリッジ512を保持するためのチャンバ528及び(ii)操作可能にポンプと連結されたリザーバから第一の薬剤を送達するためのバイパスチャンネル536(
図5Bを参照)を含む回転作動部材538を含む。第二の薬剤モジュール510は、使い捨て(即ち、単回使用)又は再使用可能(即ち、複数回使用)であってもよい。第二の薬剤モジュール510が使い捨てであるなら、あらかじめ組み込まれた恒久的カートリッジ512が備えられればよい。第二の薬剤モジュール510が再使用可能であるなら、使用者は、第二の薬剤の用量を送達させたいとき、カートリッジ512をチャンバ528に装着しなければならない。そのようなとき、カートリッジ512及びそこに含まれる第二の薬剤の無菌性を維持すること、並びに第二の薬剤モジュール510を作動させる前の第二の薬剤514の漏出を防止することが重要である。従って、カートリッジ512は、その近位端及び遠位端を覆うシール(示されていない)を装備すればよい。これらのシールは、第二の薬剤モジュール510を作動させる前に使用者が除去できる金属箔シールであればよい。さらに、チャンバ528は、特定のカートリッジだけを受理する専用の取り付け手段を特色としてもよく、それは不適切な薬剤の導入を防止する。
【0041】
第二の薬剤モジュール510が非作動位置にあるとき(即ち、バイパスチャンネル536が送出管508及び投薬インターフェース516と流体連通しているとき、そしてカートリッジ512が送出管508から横にオフセットされたとき)、第一の薬剤の送達は可能であるが、第二の薬剤514の送達は阻止される。この位置で、バイパスチャンネル536は、送出管508から投薬インターフェース516までの流体管を提供する。従って、ポンプが動いている間、第一の薬剤は送出管508を通して遠位方向540に押し進められ、次にバイパスチャンネル536を通り、そして最終的に投薬インターフェース516を通り、それによって第一の薬剤を使用者に送達する。
【0042】
使用者が第二の薬剤514を送達したいとき、使用者は、回転部材538(
図5Dは、その非作動位置から作動位置に回転する間の回転部材538を示す)をその作動位置に到達するとき(即ち、
図5E及び5Fに示されるように、カートリッジチャンネル554が送出管508及び投薬インターフェース516と流体連通するように、カートリッジ512が送出管508と一列にされる時まで)回転させて第二の薬剤モジュール510を作動させる。図に示されていないが、カートリッジチャンネル554の近位端及び遠位端の両者は、第一の薬剤がそのリザーバからポンプで送り込まれるときに、第一の薬剤の力で開くように設計された一方向弁が装備される。従って、カートリッジチャンネル554が送出管508及び投薬インターフェース516と流体連通するように、カートリッジ512が送出管508と一列にされた時点で、第一の薬剤の力によって一方向弁が開けられる。弁が開けられると同時に、第一の薬剤は、第二の薬剤514をカートリッジ512から押し出し、そして投薬インターフェース516を通し、それによって第二の薬剤514を使用者に送達する。第二の薬剤514が使用者に送達された後、第一の薬剤は、ポンプが第一の薬剤をそのリザーバから送り続ける限り(送出管508及び投薬インターフェース516と流体連通しているカートリッジチャンネル554によって創られた流路を経由して)使用者に送達され続けることになる。
【0043】
第二の薬剤モジュール510のハウジング526は、回転部材538のスナップアーム552と係合するように構成された溝550が備えられればよく、そのようにして、触覚及び/又は可聴式のフィードバックを使用者に提供する。何個の溝550及びスナップアーム552が使われてもよい。溝550及びスナップアーム552の数に関わりなく、使用者が、いつ回転部材538が作動位置にあるか、ひいては、第二の薬剤514がいつ送達されるかが分かるように、回転部材538の作動位置に相当する溝550を備えることが望ましい。
【0044】
溝550及び対応するスナップアーム552は、回転部材538が、作動位置に到達した後に非作動位置に逆進することを防止するように構成されればよく、例えば第二の薬剤モジュール510を使い捨て(即ち、単回使用)にする。これは、一方向歯止め型のシステムを用いて達成されればよい。従って、第二の薬剤514の送達の後、同じ又は異なる第二の薬剤の第二の用量を送達するためには、第二の薬剤モジュール510及び/又は全輸液セットは交換する必要があることになる。或いは、上で述べたように、第二の薬剤モジュール510は再使用可能であればよい。そのようなものとして、回転部材538が非作動位置に逆転されるように構成されればよい。回転部材538が非作動位置になると同時に、使用済カートリッジ512は新しいもので置き換えられればよい。カートリッジを交換するためには、回転部材538はハウジング526から取り外される必要があってもよい。
【0045】
図6は、第二の薬剤モジュール610のさらに別の例示的な実施態様を図示する。図のように、第二の薬剤モジュール610は、輸液セットのハブ620に恒久的に組み込まれていない/固定されてはいない。その代わり、ハブ620は、第二の薬剤モジュール610を受けるための注入口としての役割を果たす。そのようなものとして、第一の薬剤を用いる継続的治療の利益は維持され、その一方、使用者が、別の注射部位の皮膚に穿孔する必要が無く、第二の薬剤を送達することを可能にする。これは特に、針恐怖症及び/又は器用さに問題がる患者に有益である。
【0046】
ハブ620は、シリコンゴム又は業界に知られる同様の弾性のある若しくは自己回復性素材で作られればよいセルフシールのセプタム656を含む。従って、第二の薬剤614の用量が送達され、第二の薬剤モジュール610の投薬インターフェース660がハブ620のセプタム656から取り除かれた後、セプタム656は、第一の薬剤の流れの混入を防止するように、再び閉じる。この配置は、輸液セットの寿命の間、同じ又は異なる第二の薬剤モジュールから、同じ又は異なる第二の薬剤の反復投与を可能にする。
【0047】
第二の薬剤モジュール610は、一般にハウジング662、ボタン638、第二の薬剤614の入ったカートリッジ612、及び投薬インターフェース660を含む。ハブ620と第二の薬剤モジュール610の間の連結は、専用にされればよい。これは、ハブ620が特定の第二の薬剤モジュールとのみ接続することを可能にすることによって、使用者安全性を推進するのに役立つ。しかし、別の実施態様では、ハブ620は任意の投薬インターフェース、例えば、だがこれらに限定されない業界に知られるシリンジの針及び/又は注射ペンを受理するように構成されてもよい。
【0048】
操作において、使用者は、投薬インターフェース660が使用者の皮膚内に挿入される投薬インターフェース(示されていない)と流体連通するように、第二の薬剤モジュール610の投薬インターフェース660をハブ620のセプタム656に挿入する。使用者は、次にボタン638を作動させることによって第二の薬剤モジュール610を作動させる。ボタン638が作動すると、第二の薬剤614は送達される。図には示されないが、第二の薬剤モジュール610は、使用者が選択可能な第一の薬剤の用量を設定するための手段(例えば、ダイヤル)を含んでもよい。
【0049】
本薬物送達システムの例及びそのさまざまな構成部材について記述した。しかし当業者は、請求項によって定義される本発明の真の目的及び精神から逸脱することなく、これらの例を変更及び修正してもよいことを理解する。
【0050】
参照番号一覧
100 システム;
102 ハウジング;
104 第一のリザーバ;
106 第一の薬剤;
108 送出管;
110 第二の薬剤/薬用モジュール;
116 投薬インターフェース;
118 ハブ;
120 ハブ;
122 制御部;
124 制御部;
308 送出管;
310 薬用モジュール;
312 リザーバ;
314 第二の薬剤;
316 投薬インターフェース;
320 ハブ;
326 ハウジング;
328 摺動可能なカプセル;
330 近位針;
332 遠位針;
334 摺動可能シール;
336 バイパスチャンネル;
338 作動ボタン;
340 遠位方向;
342 空洞;
344 近位シール;
346 遠位シール;
348 内側部分;
350 溝;
352 スナップアーム;
408 送出管;
410 薬用モジュール;
412 カートリッジ;
414 第二の薬剤;
416 投薬インターフェース;
420 ハブ;
426 ハウジング;
428 チャンバ;
436 バイパスチャンネル;
440 遠位方向;
450 溝;
452 スナップアーム;
454 カートリッジチャンネル;
508 送出管;
510 薬用モジュール;
512 カートリッジ;
514 第二の薬剤;
516 投薬インターフェース;
520 ハブ;
526 ハウジング;
528 チャンバ;
536 バイパスチャンネル;
538 回転作動部材;
550 溝;
552 スナップアーム;
554 カートリッジチャンネル;
610 薬用モジュール;
612 カートリッジ;
614 第二の薬剤;
620 ハブ;
638 ボタン;
656 セプタム;
568 セプタム;
660 投薬インターフェース;
662 ハウジング。