特許第5972293号(P5972293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972293プロセスをドキュメント化(document:文書化)する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972293
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】プロセスをドキュメント化(document:文書化)する装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/10 20060101AFI20160804BHJP
   G06K 7/14 20060101ALI20160804BHJP
   G06K 17/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H04L9/00 621Z
   G06K7/14 008
   G06K7/14 034
   G06K17/00 025
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-557139(P2013-557139)
(86)(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公表番号】特表2014-509153(P2014-509153A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】EP2012054305
(87)【国際公開番号】WO2012120153
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年3月11日
(31)【優先権主張番号】11157617.9
(32)【優先日】2011年3月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513228535
【氏名又は名称】グボ,アダルベルト
(73)【特許権者】
【識別番号】513228546
【氏名又は名称】シュッテ,クリスティーナ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128657
【弁理士】
【氏名又は名称】三山 勝巳
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】グボ,アダルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュッテ,クリスティーナ
【審査官】 岸野 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−342096(JP,A)
【文献】 特開2008−134726(JP,A)
【文献】 特開2005−242530(JP,A)
【文献】 特表2007−534067(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01701293(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0086791(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0047200(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/10
G06K 7/14
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともつのステップを含むマルチステッププロセスRをドキュメント化するマルチコンポーネント装置Zにおいて、前記プロセスのステップiにおいて、製品Diが1つ又は複数のコンポーネントCijから作製され、前記マルチコンポーネント装置Zは前記プロセスステップiのそれぞれについて、
ステップiのn個の全てのコンポーネントCijから情報ICijpを収集する情報収集装置Yであって、個々のプロセスステップiにおいて用いられる出発製品若しくは出発材料又は前のプロセスステップからの製品とすることができる任意のコンポーネントCijに取り付けられたマーク又はラベルから前記コンポーネントCijを識別する情報ICijpを読み取ることによって、そのプロセスステップの前記製品Diを作製するのに用いられ、ここで、iは、1〜mの値を有することができる整数であり、mは、前記少なくとも1つのステップを含むプロセスにおけるステップ数に等しく、jは、1〜nの値を有することができる整数であり、nは、前記プロセスステップiにおいて用いられるコンポーネントCijの数に等しく、pは、前記ステップiのそれぞれについて異なることができ、1〜q(ij)の値を有することができる整数であり、q(ij)は、各コンポーネントCijに関係した個々の情報の数であり、q(ij)は、各異なるCijについて異なることができ、コンポーネントCij用の全ての情報ICijpの全体は、ICijとしても参照される、装置Yと、
前記プロセスステップiにおいて、1〜nの各jについて、1〜q(ij)の全てのpに関して、前記情報収集装置YによってコンポーネントCijから読み取られた前記情報ICijpから、ハッシュコードHijを計算するハッシュ計算装置Xと、
プロセスステップiにおいて用いられるn個の全てのコンポーネントCijのn個の全てのハッシュコードHijと、オプションとして付加的に、プロセスステップiにおいて用いられる機器のシステム時刻を提供するタイマーV、及び/又はプロセスステップiが行われる地理的ロケーションについての情報を提供する地理的ロケーション指示装置Uから読み取られたデータとからハッシュコードJiを計算するハッシュ計算装置Wと、
ステップiの前記製品Diに、前記ハッシュコードJiの視覚表現を有するマーク又はラベルMDiを提供するマーク又はラベル装置Tと、
を備える、装置Zであって、
前記マーク又はラベル装置Tは、前記マーク又はラベルMDi、前記マーク又はラベル装置Tにおいて行われるプロセスによって、ステップiの前記製品Diの表面に印刷されるか又は別の方法で付着、該プロセスは、
多量の粒子Pa及び少量の少なくとも1種類の粒子Pzkを準備することであって、該粒子Pa及び該粒子Pzkは、少なくとも1つの物理特性が相違し、該粒子Paと該粒子Pzkとの間の該物理特性の相違は検出装置Sによって検出されることと、
前記粒子Paと前記少量の少なくとも1種類の粒子Pzkとを混合することであって、粒子混合物Mlを準備することと、
プロセスステップiにおいて作製された前記製品Di若しくは該製品Diを収容するコンテナのいずれかである基材、又は前記製品Diに取り付けられたラベルに前記粒子混合物Mlを付着させることと、
前記基材上における前記粒子混合物Mlの分布を固定することであって、前記基材上に固定混合物Mfiを提供する印刷プロセス中に、該固定混合物Mfiは、前記マーク又はラベルMDiの少なくとも一部分を構成する、固定することと、
を含、ここで、、k、l、m、n、p、及びq(ij)のいずれも、互いに独立した少なくとも1の整数である、iは少なくとも2の整数であり、
前記マーク又はラベルMDiは空間的に分離した2つの部分を有し、一方のマークM2Diは他方のマークM1Diに関する情報を含み、前記情報が粒子Pziの分布に関する情報を含み、該粒子Pziはステップiの該マークM1Diに用いされる粒子Pzkであり、該粒子PziはマークM1Diに存在するステップiの前記固定混合物Mfi中にあり、該マークM1Diは該ハッシュ計算装置W内でハッシュコードHMfiに変換され、次に該ハッシュコードHMfiは、前記マーク又はラベル装置T内で該マークM2Diを発生し、前記マーク又はラベル装置Tによって該マークM2Diを前記製品Diに取り付けるために用いられることを特徴とするマルチコンポーネント装置Z。
【請求項2】
プロセスのステップi+1において用いられる前記コンポーネントのうちの少なくとも1つCi+1,jは、前の前記プロセスステップiの製品Diである、請求項1に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項3】
前記ハッシュコードJiは、プロセスステップiの前記製品Diの前記マーク又はラベルMDiから前記装置Yによって読み取られ、前記ハッシュ計算装置Xにおいて前記現行のステップi+1に関係した情報とともに用いられてハッシュコードHi+1が生成され、該ハッシュコードHi+1は、前記ハッシュ計算装置Wにおいて、ハッシュコードHMfiとともに用いられて、前記前のステップi+1の前記製品をマーク付けするのに用いられるハッシュコードH’’i+1が計算され、前記ハッシュコードHMfiは該マークM1Diから読み取られる情報から算出される、請求項1又は2に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項4】
前記マルチステッププロセスの各ステップについての情報は、データベースに記憶され、該データベースにおいて、前記ハッシュコードHMfi又は前記ハッシュコードH’’iは、キーフィールドとして用いられ、フィールドエントリーは、前記現在のステップの前記製品Diを作製するためにステップiにおいて用いられる前記コンポーネントCijの種類及びを記述する、請求項3に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項5】
前記ステップiで使用された前記コンポーネントCijの種類及び量を記述する前記フィールドエントリーは、該コンポーネントCij用に収集された原材料、補助材料、作業、及び品質データの指定である、請求項4に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項6】
前記マークMDiは、取り外すことができない方法又は破損させる形態でしか取り外すことができない方法で、装置Tによって製品Diに取着される、請求項に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項7】
RFIDタグが、複数のRFIDタグを読み出し書き込みユニットのコンテナに収集することによって個別化され、該読み出し書き込みユニットがバルク読み出しのコンテナに全てのRFIDタグの特定コードを読み出し、それらの内部的表を発生し、計算されたハッシュコードをコンテナ内のRFIDタグの各々に配分し、
前記RFIDタグが、ステップiの前記製品を前記マークMDiとしてマーク付けするのに用いられ、前記RFIDタグは、マーク又はラベル装置Tによって、トナー又はインクジェットインクを用いてこのRFIDタグの前記第1のラベル又は該マークM1Di上又は粒子Pa及び粒子Pziの何れか一つを含む感熱紙上に同様に印刷されるハッシュ計算装置Xによって計算されたハッシュコードHiを含むことを特徴とする、請求項に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項8】
前記第1のラベル又はマークM1Diは、検出装置Sによって読み取られ、ハッシュコードHMfiが、ハッシュ計算装置Xにおいて、前記読み取られたデータから計算され、前記第1のハッシュコードHiと組み合わされて又は連結されて、ハッシュコードJiが形成され、該ハッシュコードは、その後、マーク又はラベル装置Tによって、第2のラベル又はマークM2Diとして前記RFIDタグに印刷される、請求項に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項9】
複数のRFIDタグが、別個の識別コードによって個別化され、複数のRFIDタグが、読み取り書き込みユニットのコンテナに収集され、該読み取り書き込みユニットは、前記コンテナ内の全てのRFIDタグの前記識別コードをバルク読み取りで読み取り、これらの内部テーブルを生成し、計算されたハッシュコードを前記コンテナ内の前記RFIDタグのそれぞれに割り当てる、請求項に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項10】
前記RFIDタグの前記識別コード及び前記割り当てられたハッシュコードを有するラベルが、前記マーク又はラベル装置Tにおいて印刷される、請求項に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項11】
前記ラベルは2つの部分を有し、前記ラベルの前記第2の部分M2Diは、前記ラベルの前記第1の部分M1Diを前記情報収集装置Yにより読み取り、前記ラベルの前記第1の部分M1Diの前記粒子Pzkの固定位置を検出装置Sによって検出することによって生成され、前記粒子Pzkは前記印刷中に前記ラベルに固定される、請求項10に記載のマルチコンポーネント装置Z。
【請求項12】
請求項1に記載のマルチコンポーネント装置Zの使用方法において、該使用方法は、単一の各プロセスステップにおいて以下のプロセス、すなわち、
情報収集装置Yにおいて、個々のプロセスステップiの前記製品Diを作製するのに用いられる全てのコンポーネントCijから、該コンポーネントCijを識別する情報ICijを、そのプロセスステップにおいて用いられる出発製品又は出発材料とすることができる任意のコンポーネントCijに取り付けられるマーク又はラベルから読み取ることによって収集するプロセスであって、iは、1〜mの値を有することができる整数であり、mは、前記少なくともつのステップを含むプロセスにおけるステップ数に等しく、jは、1〜nの値を有することができる整数であり、nは、前記プロセスステップiにおいて用いられるコンポーネントCijの数に等しい、pは、前記ステップiのそれぞれについて異なることができ、1〜q(ij)の値を有することができる整数であり、q(ij)は、各コンポーネントCijに関係した個々の情報の数であり、q(ij)は、各異なるCijについて異なることができ、コンポーネントCij用の全ての情報ICijpの全体は、ICijとしても参照される、収集するプロセスと、
ハッシュ計算装置Xにおいて、前記プロセスステップiで、1〜nの各jについて、コンポーネントCijから読み取られた前記情報からハッシュコードHijを計算するプロセスと、
ハッシュ計算装置Wにおいて、プロセスステップiにおいて用いられるn個の全てのコンポーネントCijのn個の全てのハッシュコードHijと、オプションとして付加的に、プロセスステップiにおいて用いられる前記機器のシステム時刻を提供するタイマーV、及び/又はプロセスステップiが行われる前記地理的ロケーションについての情報を提供する地理的ロケーション指示装置Uから読み取られたデータとからハッシュコードJiを計算するプロセスと、
装置Tにおいて、ステップiの前記製品Diに、前記ハッシュコードJiの視覚表現を有するマーク又はラベルMDiを提供するプロセスと、
を適用することによって、マルチステッププロセスにおける各ステップをドキュメント化することを含む、使用方法であって、
前記マーク又はラベルMDiは、前記装置Tにおいて行われるプロセスによって、ステップiの前記製品Diの表面に印刷されるか又は別の方法で付着され、該プロセスは、
多量の粒子Pa及び少量の少なくとも1種類の粒子Pzkを準備することであって、前記粒子Pa及び前記粒子Pzkは、少なくとも1つの物理特性が相違し、前記粒子Paと前記粒子Pzkとの間の該物理特性の相違は検出装置Sによって検出されることと、
前記粒子Paと前記少量の少なくとも1種類の粒子Pzkとを混合することであって、粒子混合物Mlを準備することと、
プロセスステップiにおいて作製された前記製品Di若しくは該製品Diを収容するコンテナのいずれかである基材、又は前記製品Diに取り付けられたラベルに前記粒子混合物Mlを付着させることと、
前記基材上における前記粒子混合物Mlの分布を印刷プロセス中に固定することであって、前記基材上に固定混合物Mfiを準備し、該固定混合物Mfiは、前記マーク又はラベルMDiの少なくとも一部分を構成することと、
を含むことを特徴とし、ここで、j、k、l、m、及びnのいずれも、互いに独立した少なくとも1の整数であiは少なくとも2の整数である、使用方法。
【請求項13】
前記製品Diはドキュメントである、請求項12に記載の使用方法。
【請求項14】
単一の各ステップiの全てのj=1〜j=nについて、全てのコンポーネントCijに関する全ての情報と、i=1〜i=mの全てのステップの全てのDiに関する全ての情報とを、それらのハッシュコードHij及びJiの形態で記憶することを含むデータベースが設けられ、前記ハッシュコードH’’i又はハッシュコードHMfiは、iとともに、プロセスステップiの該製品Diに関する全ての情報用のキーフィールドKF(Di)として用いられ、前記ハッシュコードH’’i又は前記ハッシュコードHMfiは、i及びj及びpとともに、Cijに関するp個の全ての情報用のキーフィールドKF(Cijp)として用いられる、
前記ハッシュ計算装置XによりマークM2Diのために発生された前記ハッシュコードH’’iは、第1のハッシュコードHi及び粒子Pzkの固定位置から計算される連鎖ハッシュコードHMfiである、請求項12又は13に記載の使用方法。
【請求項15】
前記キーフィールドKF(Di)は、前記ハッシュ計算装置WでiとともにハッシュコードH’’i又は前記ハッシュコードHMfiからハッシュコードとして計算され、前記キーフィールドKF(Cijp)は、i及びj及びpとともに、前記ハッシュコードH’’i又は前記ハッシュコードHMfiからハッシュコードとして計算される、請求項14に記載の使用方法。
【請求項16】
前記キーフィールドKF(Di)は、前記ハッシュ計算装置Wでiとともに、前記データベースをホストするデータベースサーバのIPアドレス、前記ハッシュコードH’’i、又は前記ハッシュコードHMfiからハッシュコードとして計算され、前記キーフィールドKF(Cijp)は、前記ハッシュ計算装置Wでi及びj及びpとともに、前記データベースをホストするデータベースサーバの前記IPアドレス、前記ハッシュコードH’’i、又は前記ハッシュコードHMfiからハッシュコードとして計算される、請求項14に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのステップを含むプロセスをドキュメント化するマルチコンポーネント装置、その使用方法、並びに製造プロセス及びロジスティックプロセスの品質管理及び追跡におけるこのマルチコンポーネント装置及びその使用方法の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
各製造ステップ若しくは各輸送ステップ又は他のサービスステップに関する情報を含む、製造プロセス及び/又はロジスティックプロセス等のマルチステッププロセスの追跡は、現在、交換又は変更の余地がある書面化又は印刷されたドキュメントによって、改ざんを検出及び回避するには不十分な手段のみを用いて行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、任意の製品又はサービスの供給者と受取手との間に少なくとも1つのステップ又はステージを含むそのような製品又はサービスをドキュメント化する装置を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
製品自体であるか若しくは当該製品を収容するコンテナであることが好ましい対象物、又はサービスに関連付けられたドキュメント若しくはサービスを構成するドキュメントを、その対象物又はドキュメントが生成されるごとに一意である識別部分と、オプションとして、印刷されたテキスト又は印刷されたバーコード若しくはドットコードとすることができる可読部分とを含むマークを用いてマーク付けすることが、各対象物を曖昧性なく識別するのに用いることができることが分かっている。マークの識別部分の一意性は、ランダム要素を、ランダム分布を固定して当該ランダム分布を不変にする方法と組み合わせて導入することによって確実にすることができる。
【0005】
印刷の場合、本発明によれば、ランダム事象とランダム構成を不変的に固定する方法とのこの組み合わせは、多量の粒子の特性とは異なる任意の特性によって識別することができる少量の粒子を含むトナー又はインクジェットインクによって行われる。この文脈における「少」量とは、0.001%〜50%未満、実用的には0.01%と1%との間の質量分率を指す。「多量」に相当する粒子の対応する特性とは異なる、「少量」に相当する粒子の特性は、黒トナー内の少量の赤い顔料粒子、又はトナー若しくはインクジェットインク内の少量の発光顔料粒子、又はトナー若しくは印刷インク内の磁性粒子若しくは放射性粒子等の粒子が、例えば印刷プロセスによって表面に固定されると、適切な装置によって読み取ることができる色、発光、又は磁性若しくは放射性特性の相違とすることができる。
【0006】
組み立てられて準備された自動車若しくはハウジング上のコンピューター等の製品自体や、識別カード若しくはパスポート等のドキュメント、請求書(money bill)、又は積荷に付随する貨物ドキュメントをマーク付けすることが可能である。
【0007】
マークの付着は、マルチステッププロセス内の一ステップを構成することができ、最終ステップを構成することもできることが好ましい。
【0008】
したがって、本発明の対象は、少なくとも1つのステップを含むプロセスRをドキュメント化するマルチコンポーネント装置Zにおいて、前記プロセスのステップiにおいて、製品Diが1つ又は複数のコンポーネントCijから作製され、前記プロセスステップiのそれぞれについて、該装置は、
ステップiのn個の全てのコンポーネントCijから情報ICijpを収集する装置Yであって、jは、1〜nの整数から選択され、個々のプロセスステップiにおいて用いられる出発製品若しくは出発材料又は前のプロセスステップからの製品とすることができる任意のコンポーネントCijに取り付けられたマーク又はラベルから前記コンポーネントCijを識別する情報ICijpを読み取ることによって、そのプロセスステップの前記製品Diを作製するのに用いられ、ここで、iは、1〜mの値を有することができる整数であり、mは、前記少なくとも1つのステップを含むプロセスにおけるステップ数に等しく、jは、1〜nの値を有することができる整数であり、nは、前記プロセスステップiにおいて用いられるコンポーネントCijの数に等しく、pは、前記ステップiのそれぞれについて異なることができ、1〜q(ij)の値を有することができる整数であり、q(ij)は、各コンポーネントCijに関係した個々の情報の数であり、q(ij)は、各異なるCijについて異なることができ、コンポーネントCij用の全ての情報ICijpの全体は、ICijとしても参照される、装置Yと、
前記プロセスステップiにおいて、1〜nの各jについて、1〜q(ij)の全てのpに関して、コンポーネントCijから読み取られた前記情報ICijpから、ハッシュコードHijを計算する装置Xと、
プロセスステップiにおいて用いられるn個の全てのコンポーネントCijのn個の全てのハッシュコードHijと、オプションとして付加的に、プロセスステップiにおいて用いられる前記機器のシステム時刻を提供するタイマーV、及び/又はプロセスステップiが行われる前記地理的ロケーションについての情報を提供する装置Uから読み取られたデータとからハッシュコードJiを計算する装置Wと、
ステップiの前記製品Diに、前記ハッシュコードJiの視覚表現を有するマーク又はラベルMDiを提供する装置Tと、
を備える、装置Zであって、
前記マーク又はラベルMDiは、前記装置Tにおいて行われるプロセスによって、ステップiの前記製品Diの表面に印刷されるか又は別の方法で付着され、該プロセスは、
多量の粒子Pa及び少量の少なくとも1種類の粒子Pzkを準備することであって、該粒子Pa及び該粒子Pzkは、少なくとも1つの物理特性が相違し、該粒子Paと該粒子Pzkとの間の該物理特性の相違は装置Sによって検出されることと、
前記粒子Paと前記少量の少なくとも1種類の粒子Pzkとを混合することであって、粒子混合物Mlを準備することと、
プロセスステップiにおいて作製された前記製品Di若しくは該製品Diを収容するコンテナのいずれかである基材、又は前記製品Diに取り付けられたラベルに前記混合物Mlを付着させることと、
前記基材上における前記粒子混合物Mlの分布を固定することであって、前記基材上に固定混合物Mfiを準備し、該固定混合物Mfiは、前記マーク又はラベルMDiの少なくとも一部分を構成することと、
を含むことを特徴とし、ここで、i、j、k、l、m、n、p、及びq(ij)のいずれも、互いに独立した少なくとも1の整数である、少なくとも1つのステップを含むプロセスRをドキュメント化するマルチコンポーネント装置Zである。
【0009】
粒子Paと異なる粒子Pzkの数kは、少なくとも1つであり、表面にマーク若しくはラベルとして又は別の方法で付着されたときに、粒子Paとの混合物内においてこれらの粒子を検出するのに十分なものであることが好ましい。もちろん、kの値は、各ステップにおいて異なっていてもよい。
【0010】
「少なくとも1つのステップ」は、本明細書で用いられるとき、1つのステップであってもよいし、2つ以上のステップであってもよい。
【0011】
製品Diは、物体、又はサービス、又はドキュメントとすることができ、ドキュメントは、それ自体、製品とすることもできるし、製品又はサービスの説明とすることもできる。
【0012】
本発明の更なる対象は、少なくとも1つのステップにおいて行われるマルチステッププロセス又はサービスであって、該マルチステッププロセス又はサービスの任意のステップは、ドキュメントによって記述することができるか又は別の方法で表すことができ、
ハッシュコードJiが、装置Wにおいて、ドキュメントDiを作成するのに用いられる情報から、又はステップiにおいて作成されるか若しくはステップiを構成する前記ドキュメントDiから計算され、
オプションとして、Jiと、プロセスステップiにおいて用いられる前記機器のシステム時刻を提供するタイマーから及び/又はプロセスステップiが行われるか若しくは完結される前記地理的ロケーションについての情報を提供する装置から読み取られるデータとから、更なるハッシュコードJ’iを計算すること、
ステップiの前記ドキュメントDiに、前記ハッシュコードJi又は前記ハッシュコードJ’iの視覚表現を有するマーク又はラベルを提供すること、
ここで、iは、1〜mの値を有することができる整数であり、mは、前記マルチステッププロセス又はサービスにおけるステップ数に等しく、
前記ラベル又はマークは、
多量の粒子Pa及び少量の少なくとも1種類の粒子Pzkを準備することであって、前記粒子Pa及び前記粒子Pzkは、少なくとも1つの物理特性が相違することと、
前記粒子Paと前記少量の少なくとも1種類の粒子Pzkとを混合することであって、粒子混合物Mlを準備することと、
プロセスステップiにおいて作製された前記製品Di若しくは該製品Diを収容するコンテナのいずれかである基材、又は前記製品Diに取り付けられたラベルに前記混合物Mlを付着させることと、
前記基材上における前記粒子混合物Mの分布を固定することであって、前記基材上に固定混合物Mfiを準備することと、
を含むプロセスによって、ステップiの前記ドキュメントDiの表面に印刷されるか又は別の方法で付着され、
ここで、i、k、及びlのいずれも、互いに独立した少なくとも1の整数である、マルチステッププロセス又はサービスである。
【0013】
混合物Mlは、各ステップについて同じものとすることもできるし、異なるものとすることもでき、印刷用紙の現像されたトナー画像、又はインクジェットプリンターを用いて作製されたドライ印刷、又は感熱紙プリンターによって生成された部分加熱された画像等の固定混合物において粒子Pzkの分布の検出を可能にするには、上述したように、十分な数の粒子Pzkを必要とする。
【0014】
本発明の更なる対象は、前記固定混合物Mfiにおける粒子Pziの前記分布をハッシュコードHMfiに検出する装置Sを備えるマルチコンポーネント装置Zであって、前記ハッシュコードは、前記製品Di、又は前記サービスDiを記述又は構成することもできるドキュメントDi、又は前記ドキュメント若しくは製品若しくはサービスDiの対象物を収容する前記コンテナ、又はDiに取り付けられた前記ラベルをマーク付けするのに用いられ、前記変換手段は、ステップiのハッシュコードHiを生成する際に用いられる、マルチコンポーネント装置Zである。
【0015】
本発明の更なる対象は、少量の粒子のランダム生成されて固定された分布によって具現化されたマークが、前のステージの単数若しくは複数の前記製品又は単数若しくは複数の前記ドキュメントから読み取られ、現行の前記ステップiに関係した情報とともに用いられて、ハッシュコードHiが生成され、該ハッシュコードは、前記ハッシュコードHMfiとともに用いられ、本ステップiの前記製品又はドキュメントをマーク付けするのに用いられるハッシュコードH’’iが計算される、プロセスである。
【0016】
本発明の更なる対象は、前記マルチステージプロセスの各ステップについての情報をデータベースに記憶する方法であって、前記ハッシュコードHMfi又は前記ハッシュコードH’’iは、前記データベース内の前記キーフィールドとして用いられ、フィールドエントリーは、前記現在のステップの前記製品Diを作製するためにコンポーネントCij用に収集された原材料、補助材料、作業(labour)、及び品質データ等の、前記現在のステップiにおいて用いられる前記コンポーネントCijの種類及び量、又は前記現在のステップの前記ドキュメントDiが基礎とする前記ドキュメントの内容及びフォーマットを記述する、方法である。
【0017】
データベースをインデックス付けする制御システムは、添付図面において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】128ビットワード又は256ビットワードを用いる実際の実現物ではなく2ビットワードを用いた簡略化された構成(set-up)における配線図の概略図である。
図2】データがメモリに書き込まれる書き込みポートである図1の細部を示す図である。
図3】データ発見(Data Find)バス及び書き込みデータバスからの信号が比較される整合回路(Match Circuit)である図1の細部を示す図であり、図4に詳細に示されるような発見ポートにおいて計算されたアドレスにおけるメモリへのアクセスは、これらが整合すると許可される。
図4】読み取られたハッシュ読み取りをデータベースにおけるアドレスに変換する発見ポートである図1の細部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
プロセスRが少なくとも2つのステップを有するとともに、ステップi+1において用いられるコンポーネントCi+1,jのうちの少なくとも1つが前のステップiの製品Diである好ましい実施形態では、マルチコンポーネント装置Zが、少なくとも2つのプロセスステップのそれぞれにおいて用いられる。
【0020】
この装置Zにおいて、ハッシュコードJiは、ステージiの製品Diのマーク又はラベルMDiから読み取られる少量の少なくとも1種類の粒子Pzkの固定分布によって具現化されるマークMDiから、マルチコンポーネント装置Zの一部を構成する装置Sによって読み取られ、装置Xにおいて現行のステップi+1に関係した情報とともに用いられてハッシュコードHi+1が生成され、ハッシュコードHi+1は、装置Wにおいて、ハッシュコードHMfiとともに用いられて、前のステップiの製品をマーク付けするのに用いられるハッシュコードH’’iが計算される。粒子Pzkが、粒子Paとは、それらの色、又はそれらの反射率、又はUV若しくは短波長の可視光を用いて照射されたときに蛍光を放出する能力によって異なる一実施形態では、この装置Sは、可視光又はUV光又は赤外光を用いたラベル又はマークMDiの照射に基づいて反射光又は蛍光を検出する、スペクトル及びロケーションの分解能を有する走査型分光計とすることができる。もちろん、放射性粒子、又は磁性粒子、又は電気双極性の粒子、又は異なる電気感受率若しくは磁気感受率を有する粒子も、これらの特性を十分な空間分解能で測定することができる装置Sにおいて検出することが可能である。
【0021】
好ましい実施形態では、マルチコンポーネント装置Zは、データ処理機器及びデータ記憶機器用のインターフェースを装備し、プロセスの各ステップについての情報は、データベースに記憶される。このデータベースでは、ハッシュコードHMfi又はハッシュコードH’’iが、当該データベース内のキーフィールドとして用いられ、フィールドエントリーは、現在のステップの製品Diを作製するためにコンポーネントCij用に収集された原材料、補助材料、作業、及び品質データ等の、現在のステップiにおいて用いられるコンポーネントCijの種類及び量、又は現在のステップのドキュメントDiが基礎とするドキュメントの内容及びフォーマットを記述している。
【0022】
この文脈において、任意のプロセスステップの継続時間、並びに温度、圧力、湿度、及びそれらの時間変動等の更なる周囲条件、又はそのプロセスステップにおいて用いられる機械又は装置についての情報も、そのステップのコンポーネントCijとみなされ、したがって、そのプロセスステップに関係した全情報に含まれる。
【0023】
マークは、取り外すことができない方法又は破損させる形態でしか取り外すことができない方法で、製品、又はサービスを具現化するドキュメントに取着されることが好ましい。好ましいマークは、空間的に分離することができる2つの部分を含み、一方のマークM2Diは、他方のマークM1Diについての情報を含む。特に好ましい情報は、マークM1Diに存在する、ステップiの上記固定混合物Mfi内の粒子Pziの分布についての、装置Sを用いて読み取ることによって収集される情報である。この情報は、ハッシュコードHMfiに変換されており、このハッシュコードは、その後、装置TによってマークM2Diを生成して製品Diに付着させるのに用いられる。双方のマークは、その後、検出器によって読み取られる。この検出器は、双方のマークM1及びM2における粒子Pziの固定分布に反応し、この組み合わされた情報から生成されるハッシュコードは、このステップiについての全ての関連データを記録するキーフィールドとしてデータベースにおいて用いられる。
【0024】
更に好ましい実施形態において、RFIDタグが、ステップiの製品又はドキュメントDiをマーク付けするのに用いられ、RFIDタグは、装置Tによって、トナー又はインクジェットインクを用いてこのRFIDタグの第1のラベル上又は粒子Pa及び粒子Pziを含む感熱紙上に同様に印刷されるハッシュコードHiを含む。この場合において、第1のラベル又はマークM1Diは、読み取り装置Sによって読み取られ、ハッシュコードHMfiが、装置Xにおいて、読み取られたデータから計算され、第1のハッシュコードHiと組み合わされて又は連結されて、ハッシュコードJiが形成され、ハッシュコードは、その後、装置Tによって、第2のラベル又はマークM2DiとしてRFIDタグに印刷されることが更に好ましい。これらのRFIDタグは、好ましい実施形態では、複数のRFIDタグを読み出し書き込みユニットのコンテナに収集することによって印刷前に個別化することができる。この読み出し書き込みユニットは、そのコンテナ内の全てのRFIDタグの識別コードをバルク読み取りで読み取り、これらの内部テーブルを生成し、計算されたハッシュコードをコンテナ内のRFIDタグのそれぞれに割り当てる。次に、好ましい実施形態では、書き込みユニット装置Tにおいて印刷された、RFIDタグ識別コード及び割り当てられたハッシュコードを担持するラベルが、RFIDタグのそれぞれに提供される。このRFIDタグ上のラベルは、2つの部分を有することが好ましい。上述したように、ラベルの第2の部分M2Diは、ラベルの第1の部分M1Diと、ラベルの第1の部分M1Diの粒子Pzkの固定位置とを読み取ることから生成される。装置XにおいてM2Di用に生成されるハッシュコードH’’iは、第1のハッシュコードHiと粒子Pzkの固定位置とから計算された連結ハッシュコード(concatenated hash code)HMfiであることが更に好ましい。
【0025】
選択されたステップiの製品、又はサービスを具現化するか若しくはサービスに関係するドキュメントをマーク付けする1つの好ましい方法は、ハッシュコードHiを含むRFIDタグの使用によるものである。このハッシュコードHiも、トナー若しくはインクジェットインクを用いてこのRFIDタグの第1のラベル上に印刷されるか、又は粒子Pa及び粒子Pziを含む感熱紙上に印刷される。次に、第1のラベル又はマークM1Diは、適切な読み取り装置Sによって読み取られ、ハッシュコードHMfiが読み取られたデータから計算され、第1のハッシュコードHiと組み合わされて又は連結されて、ハッシュコードJiが形成され、ハッシュコードは、その後、装置Tによって、第2のラベル又はマークM2DiとしてRFIDタグに印刷される。これは、自己検証型RFIDタグを構成する。なぜならば、第1のラベル又はRFID自体の内容を複製すると、異なる第2のラベルM2Diが強制的に得られるからである。このRFIDタグは、前のステージの全ての要素のハッシュコードから生成されるハッシュコードHi−1からのコンポーネントCi−1,jについての情報を含むことによって、前のステップについての情報も含むので、これは、このステージの各製品又はドキュメントの履歴を検証する。この履歴は、製品の場合には、圧力、温度、湿度、時刻、日付、及びGPS信号が製造データに追加される場合にはロケーション等の製造データを含む、このステップの製品を作製するのに用いられる全ての材料の種類及び量のリストとすることができる。ドキュメントが、送り手からの収集、収集センター、配送センター又はハブ、様々な空港、配達センター、及び最終的に受取者等の異なるロケーションを有する幾つかのステージにわたって転送される場合、これらのステージのそれぞれについての時刻及びロケーションについての情報は、各場合において、先行するステージのハッシュコード及び現在のステージのラベルにおける粒子の分布から新たなハッシュコードを構築することによって記録することができる。
【0026】
サービスを表すドキュメントは、配達される品物に付随している用紙とすることができることが好ましい。サービスを具現化又は構成するドキュメントは、2人以上の関係者間の契約の草案、又は小切手若しくは為替手形であることが好ましい。
【0027】
各ステップのハッシュコードは、データベースに記録することができる。データベースでは、ハッシュコード自体が、このデータベース内のレコードのキーフィールドと、時刻及びロケーション、又は出発材料データ並びにこのレコードに同じく記録されることが好ましい製造ステージの日付及びロケーションのような更に具体的な情報とを構成する。キーフィールド番号を要求することは必要とされず、適切な長さのハッシュコードの使用によって、そのようなデータベースにおいて強制的である、各ハッシュコード又はキーフィールドが一意であることが保証される。したがって、検証が行われるステップ間の遷移は、高速のインターネット接続を必要としない。したがって、データベースの更新は、オフラインで行うことができる。
【0028】
ハッシュコードの一意性、及びそれによるデータベース内のキーフィールドの一意性は、独国特許文献第102007045692号に記載されているようなアルゴリズムを用いることによって保証される。このハッシュコードを生成する方法は、それらの特徴データを有する全ての先行するステージ、すなわち検討中のステージの前のステージが、これらからステップごとの形式で計算されるハッシュコードに含まれることを確実にする。少なくとも1つの先行するステップ又はそのような先行するステップにおいて用いられるいずれかの要素の交換は、異なるハッシュコードを生み出し、したがって、容易に検出される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、ハッシュコードの計算は、単純なブール論理によって行われる。このブール論理は、高速であるとともにほんの僅かな計算電力しか用いないという利点を有する。
【0030】
ハッシュコードのこの計算及びその記憶は、データベースインデックス付け回路と呼ばれる制御システムにおいて行われる。この回路は、以下のものを備える。
−複数のデータ書き込みポートWD及びメモリアドレス選択ポートWMを有する書き込みユニットW。この書き込みユニットは、記憶媒体への書き込みを行う。
−複数のデータ読み取りポートRDを有するランダム読み取りユニットR。この読み取りユニットは、記憶媒体からランダムなシーケンス又は順序付けられたシーケンスで情報を読み取る。
−一組のアクセスレジスタAi。当該レジスタのそれぞれは、データをデータ書き込みポートWDに供給する書き込み制御ポートAiWCと、読み取りポートRDからデータを受け取る読み取り制御ポートAiRCとを有する。これらの読み取り制御ポート及び書き込み制御ポートは、一組のバスによって論理ユニットに接続されている。この論理ユニットは、読み取りポートRDから受け取られたデータ及び/又は書き込みポートWDに書き込まれるデータをアドレスとリンクする。このアドレスは、上記読み取られたデータ及び/又は書き込まれるデータから、ハッシュ計算ユニットにおいて上記データから計算されたハッシュコードに基づいて、この論理ユニットにおいて計算される。ハッシュ計算ユニットは、ハードウェアベースの計算ユニットであることが好ましい。上記論理ユニットは、計算されたアドレスにデータを記憶し、及び/又は計算されたアドレスからデータを読み取る。
【0031】
分散データベースの構造を有するハッシュコードの生成及び記憶のためのモバイル装置をここで説明する。
【0032】
モバイル書き込み読み取り装置において、拡張されたデータベース構造は、バルク読み取りを可能にするように極超短波で動作するRFIDタグ(UHF RFIDタグ)が潜在的に可能であることに基づいている。単一の書き込み動作がはるかに頻繁に行われるので、バルク書き込みのオプションは、広くは用いられない。「バルクrw」という用語は、本明細書で用いられるとき、この装置において所定の動作をトリガーするために、或るロットにおいて個々の装置を選択するオプションのみを取り扱う。いわゆるハードワイヤード回路又は論理回路以外に、RFIDをアドレス指定することは、不定のロケーション及び方向から可能であり、ボード上の導電ストリップに限定されない。本明細書で用いられるデータベース概念は、複数のアドレス指定を必要とし、更なるバスを同じチップに結合するためにバスシステム全体を3つの状態のうちの1つに設定する必要がある。RFIDにおいて用いられる「オンエア」アドレス指定システムは、この手間を回避し、これは、柔軟性が速度よりも重要であるときに特に有利である。盗聴防止セキュリティを単純なシールドによって提供することができる。
【0033】
モバイル装置を高速用に適合させる必要はない。なぜならば、収集されたデータの量に関する全体の速度は、個々のモバイル装置の数の増加に起因するからである。したがって、モバイル装置の数が多いこと及び無線周波数を介したそれらのアドレス指定によって、これらのモバイル装置の並列使用による多くのデータ容量のハンドリングが可能になる。モバイル装置を用いるためのシステムは、コンテナに収集されるRFIDタグを数多く読み取り及び書き込む装置を備える。例えば、球形とすることができ、約2mmの直径を有することができるRFIDタグの今日のサイズによって、シールドされていることが好ましい同じコンテナにおいて、単一の読み取り書き込みユニット(RWU)を用いて、約1000個という、多くのタグを読み取り及び書き込むことが可能になる。なぜならば、それらのRFIDタグを個々にアドレス指定することができるからである。後に書き込まれるハッシュコードを計算するユニットは、RWUに接続された別個のユニットとすることもできるが、RWU内に統合することもできることが好ましい、多くのRFIDタグが格納されるピストルハンドル又は類似の形態のコンテナを有する。RWUユニットは、コンテナ内の全てのRFIDタグの識別コードをいわゆるバルク読み取りで読み取り、これらのRFIDタグの内部テーブルを生成する。次に、マーク付けされる全ての製品又はドキュメントは、計算されて割り当てられたハッシュコードを含むRFIDタグを受け取り、同時に、同じ情報、すなわち、RFIDタグ識別コード、及び割り当てられたハッシュコードを有するラベルが印刷される。好ましい方法では、このラベルは2つの部分を有する。ラベルの第2の部分は、ラベルの第1の部分と、ラベルの第1の部分の粒子Pzkの固定位置とを読み取ることから生成される。この場合、生成されたハッシュコードは、第1のハッシュコードと粒子Pzkの固定位置とから計算された連結ハッシュコードとなる。RFIDタグ及びラベルのための書き込みプロセスは、同じコンテナに存在する全てのRFIDタグについて繰り返される。マーク付けされた製品又はドキュメントは、その後、それらのそれぞれの受取手又はハブに出荷することができ、ハブからは、輸送及び配送が行われる。同様の方法で、いずれかのハブ又は受取手において、受け取られた製品又はドキュメントの同一性を、バルク読み取りと、受け取ったロットごとの全てのRFIDタグ及びラベルの検証とによって検査及び検証することができる。このプロセスは、中央データベースへのアクセスを必要としない。なぜならば、検証は、単に、RFIDタグ及びラベル、並びに2部分ラベルの双方の部分の同一性を検査することによって行うことができるからである。したがって、多くのステップからなるプロセスにおいて、各ステップが存在すること、並びに時刻及びロケーション等の各ステップの特徴データは、容易に検証することができる。外部の中央データベースへのアップロードは、通常の動作時間外でのバルク書き込みによって容易に行われる。
【0034】
データベースをインデックス付けするための制御システムは、添付図面に説明されている。
【0035】
本発明によるプロセスにおいて収集されたデータを記憶するのに用いられるデータベースをインデックス付けするための制御システムは、図1に説明するように構成される。図1は、128ビットワード又は256ビットワードを用いた商用の実現物ではなく、2ビットワードを用いた簡略化された構成による概略を含み、その3つのサブ図面である図2の書き込みポート、図3の整合回路、及び図4の発見ポートを含む。
【0036】
初期化は、ここでは、図1の書き込みポートをリセットすることによって行われる。詳細は、図2において、U1における書き込みリセットラインを用いて示されている。図2では、以下の素子の参照符号(designations)が用いられている。
U1は、2進アドレスカウンタであり、
U2は、書き込み選択信号X、書き込みクロック、及び書き込みイネーブル状態に応じて書き込み選択ライン0〜3を制御するマルチプレクサであり、
U3は、書き込みステータスを設定するXORゲートである。
【0037】
書き込み選択ライン0〜3は、個々の整合回路0〜3を選択する。ここでは、簡単にするために、これらのうちの1つのみが図1に示されている。
【0038】
個々のライン及びそれらの意味は以下のとおりである。
書き込みデータ:データベースに入力される2ビットデータは、全部で4×2=8ビットメモリを必要とする4つの可能な組み合わせである。
書き込みステータス:データベースのステータスを示す2ビットデータ出力。
書き込みイネーブル:イネーブルラインU1。
書き込みクロック:方形パルスクロック。
書き込みアップダウン:書き込み方向の変更。
書き込みリセット:カウンタのクリア。
書き込み選択:U2のイネーブルとして機能する。
【0039】
書き込みポート1への書き込みサイクルは、図2に示す適切な信号とともに物理メモリからハッシュコードと等価なキーフィールドデータを供給する。
【0040】
論理ユニットU1、U2、及びU3は、書き込みサイクルがアクティブである間、2状態又はフリップフロップメモリのうちの1つのみが選択されように組み合わされる。
【0041】
図3は、複数のフリップフロップメモリセルからなる整合回路の配線図及び論理回路を示している。これらのメモリセルは、U6、U8、及びU9を介して、明確な信号が、発見データバスからの値の存在が検出された場合の比較ビットとしてU9の出力に生成されるように、論理ユニットU4〜U9を介して相互接続されている。検査されるメモリセル(フリップフロップ)の全ての出力ラインはXORゲートU6及びU8の対応する入力ラインに接続され、上記XORゲートU6及びU8の第2の入力ラインは全て接続されているので、探しているデータの存在は、上記XORゲートの出力ラインに反映される。このことが、この回路が「整合回路」と呼ばれる所以である。
【0042】
図4は、発見回路の配線及び論理回路を示している。図3の発見回路が肯定的応答を返した場合、「読み取り進行中(Read-in-Progress)」信号が、U10及びU11を介してアドレスに変換される。図3の発見回路が肯定的応答を返さない場合、又は肯定的応答によって、同じアドレスがU10及びU11を介して計算される場合、エラーハンドリングがアクティブ化され、エラービットがU12に供給され、その結果、U13のCSはノット(not)/イネーブル状態になる。肯定的応答の場合、アドレスを表すハッシュコードが、U13の出力ラインに提供される。この構成において、読み取り進行中ラインは、メモリアクセスを制御するアービタとして機能している。
【0043】
用いられる論理部品は、以下のとおりである。
U4=NORゲート
U5=データフリップフロップ
U6=XORゲート
U7=データフリップフロップ
U8=XORゲート
U9=NORゲート
【0044】
書き込みデータバス及び発見データバス上のデータは、発見動作中に比較される。肯定的応答がない(整合していない)場合、追加のRAMは選択されない(エラー状態)。応答が肯定的である(整合している)場合、追加のRAMが選択され、追加のデータを記憶し及び/又は読み取ることができる。これは、ハッシュデータベースの内容に関して常に行われる。そのため、ハッシュは、記憶されるデータでもあるが、そのデータを再度どのように発見するのか及び追加のデータを対応するハッシュにどのように連結するのかの間接インデックスでもある。
【0045】
自己検証用にマルチコンポーネント装置Z内で生成されるハッシュコードをキーフィールドとして用いることで十分であり得るが、リモートアクセス可能なデータベースは、リモートアドレス指定を可能にする、そのデータベースのロケーションについての情報も含まなければならない。これは、IPv4アドレス(232=4294967296個の可能なアドレス値)又はまもなく実施されるIPv6アドレス(2128=ほぼ3.4×1038個の可能なアドレス値)をハッシュコードの情報に追加して、そこから、キーフィールドとして用いられる新たなハッシュコードを生成することによって、マルチコンポーネント装置Zによって提供されるドキュメント化に容易に実施される。
【0046】
本発明を以下の実施例によって更に説明する。
【実施例1】
【0047】
マルチステップ生成プロセス
化学製品を3ステッププロセスによって作製した。第1のステップでは、3つの反応物Al、A2、及びA3を温度ATで混合し、指定した時間間隔ASの間反応させることによって反応を行った。反応物の質量は、mA1、mA2、及びmA3であった。3つの反応物のCAS番号(ケミカルアブストラクツサービス番号)と、それらの質量と、反応温度(複数の場合もある)及び時間(複数の場合もある)(これらの全てのデータ又は値は「コンポーネントCij」として用いられる)とからハッシュコードを計算することによって製法をRFIDタグ内の第1のエントリーに記録し、ハッシュコードの値をキーフィールドとして用いてコンテナ又は反応製品(reaction product:反応生成物)B1に固定されたRFIDタグに記憶した。
【0048】
次に、B1として参照される第1のステップの製品を、第2のステップにおいて、温度BTで時間間隔BSの間、更なる化学物質B2と反応させた。反応物の質量は、mB1及びmB2であった。3つの反応物のCAS番号(ケミカルアブストラクツサービス番号)と、それらの質量と、反応温度(複数の場合もある)及び時間(複数の場合もある)(この場合も、これらの全ての値はコンポーネントCijとして用いられる)とからハッシュコードを計算することによって、製法を第2のエントリーに記録し、ハッシュコードの値をキーフィールドとして用いて、コンテナ又は反応製品に固定されたRFIDタグに記憶した。C1として参照される、結果の反応製品の収量及び純度を求め、また、反応製品C1用のコンテナに取着されたRFIDタグに、第2のステップの製法とともに記録した。
【0049】
次に、第2のステップの反応製品C1を、補助材料C2、C3、及びC4を用いた第3のステップの反応に移した。前のステップと同様に、ハッシュコードを計算するのに用いられた反応物の質量と、識別用のそれらのCAS番号と、反応条件(温度、時間間隔)とを記録した。その後、ハッシュコードを、第3の反応ステップの製品に取着されたRFIDタグに書き込んだ。その後、この製品の顧客への出荷の準備を行った。
【0050】
先行するステップのハッシュコードを追加のコンポーネントとして用いて任意のステージの反応製品用のハッシュコードを計算することによって、この実施例において品質管理システムの基礎である実行される全てのステップを明確に制御及びドキュメント化することが可能である。出発製品、中間製品、及び最終製品に関して測定された全ての解析データも、各製造ステップの日付及び時刻とともにハッシュコードを計算する際に用いた。
【0051】
加えて、実施例2において説明するような同様のシステムを用いて、ステップごとのハッシュコードをRFIDタグに印刷した。製造業者の品質管理データベース内へのエントリーは、1日につき1回オフラインで行うこともできた。なぜならば、ハッシュコードのサイズによって、各場合に一意のキーフィールド値の作成が可能になったからである。
【実施例2】
【0052】
マルチステップロジスティックプロセス
対象物Oを或る場所Aにおいて収集し、この場所で、レシートを送り手に発行した。その後、対象物をハブBに輸送し、ハブBにおいて、同じ宛先Dへの他の対象物と組み合わせて箱に入れ、第2のハブCに輸送した。この第2のハブにおいて、箱の中身を取り出し、次いで、対象物Oをその宛先Dに輸送し、レシートと引き換えに受取手Rに引き渡した。この対象物は、送り手、受取手、及び運び手についての情報を含んだRFIDタグを用いて識別された。
【0053】
収集ポイントAにおいて、送り手の署名を記録する手段を有するハンドヘルド電子装置を用いてRFIDタグを書き込み、このRFIDタグを対象物Oに取着した。RFIDタグ用のラベルをハンドヘルド装置によって印刷した。ハンドヘルド装置は、送り手の名前及び住所と、収集の日付及び時刻と、GPSセンサー素子によってハンドヘルド装置内で生成された収集のロケーションとから計算されたハッシュコード、タイマーシステム、及びハンドヘルド装置にファイルされた圧力検知シグネチャを含んでいた。ラベルの第1の部分は、感熱紙及び印刷ヘッドを用いて印刷された。この感熱紙は、ランダムに分散された蛍光顔料を含んでいた。次に、青色発光ダイオードを用いてラベル上の印刷ゾーンをスキャンし、ハンドヘルド装置内に組み込まれた走査ヘッドによって蛍光顔料粒子の位置を記録し、一連のX座標及びY座標に変換した。これらの座標を第1のハッシュコードとともに用いて第2のハッシュコードを計算し、次いで、この第2のハッシュコードをラベルの第2の部分として印刷した。これらのハッシュコードもRFIDタグに記憶した。
【0054】
対象物が荷下ろしされ、新たな輸送用車両に積荷される各ロケーションにおいて、更なるラベルが印刷される。したがって、この一連のラベルは一意である。
【0055】
対象物の同一性を検証することができるように、ロケーションA、B、C、及びDのそれぞれにおいて、前のラベルをスキャンし、それらの内容をRFIDタグの内容と比較する。ロケーションBにおけるラベルは、ロケーションAにおいて印刷したラベルから読み取られたハッシュコードを用いて生成し、ラベルをスキャンするのに用いられるハンドヘルド装置によって記録された日付、時刻、及びロケーションによって補完した。この手順を、他の全てのロケーションにおいても同様に用い、これによって、ロケーションA、B、C、及びD用のラベルを印刷した。これらのラベルによって、これらのロケーション、及びこれらのロケーションにおける到着時刻又は出発時刻の完全な再現が可能になる。時刻、ロケーション、並びに送り手及び受取手の名前のコード化されていない情報を記憶し、対象物の追跡を可能にした。この情報は、ハッシュコードの値をキーフィールドとして用いて、RFIDにデータベースフォーマットで記憶した。少なくとも128ビットの十分な長さを用いたこのハッシュコードは、約3.4×1038個の可能な異なる値を有するので、キーフィールドの同じ値を2回生成する確率は無視することができる。キーフィールドのこの生成によって、接続することなく、また、キーフィールドの値が割り当てられるのを待つ必要なく、データベースエントリーを生成することが可能になった。これによって、ロジスティクス会社の中央データベースへの、まさにその日に1度だけのデータベースレコードの入力を可能にした。
【0056】
この第2のハッシュコードは、第1のハッシュコードに用いられた情報と、ラベルの第1の部分における蛍光粒子のランダムな位置によって生成されたランダムコードとに基づいているので、ラベルの第2の部分は一意であり、特に、コピーすることは不可能である。なぜならば、コピーは、異なる第2のハッシュコードを生成することになり、したがって、ラベルの異なる第2の部分を生成することになるからである。第1のハッシュコード及び第2のハッシュコードを読み取り、第1のハッシュコードと、ラベルの第1の部分における蛍光顔料粒子の位置とから第2のハッシュコードを計算することによって、いずれのロケーションにおいても真正性を管理することができる。オリジナルのラベルのみが、同じ結果をもたらす。
図1
図2
図3
図4