(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972307
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】耐久性が改良されたガスタービン熱シュラウド
(51)【国際特許分類】
F01D 11/08 20060101AFI20160804BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20160804BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20160804BHJP
F02C 7/24 20060101ALI20160804BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20160804BHJP
C04B 37/02 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
F01D11/08
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F02C7/24 A
F01D9/02
C04B37/02 B
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-81789(P2014-81789)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206170(P2014-206170A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年4月11日
(31)【優先権主張番号】13163413.1
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】グレゴワール エティエンヌ ヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー エスケール
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュテューア
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル リナッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ペーター ボスマン
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04728257(US,A)
【文献】
特開平02−196109(JP,A)
【文献】
特開2008−297193(JP,A)
【文献】
特開2009−041059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/08
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンブレードを熱的に保護するシュラウド装置(10)であって、セラミック層(11)と、金属層(12)とを備え、該金属層(12)は、前記セラミック層(11)によって熱的に保護されているシュラウド装置(10)において、
前記セラミック層(11)は、固定装置(20)によって前記金属層(12)に機械的に結合されており、前記固定装置(20)は、前記セラミック層(11)に配置された複数のキャビティ(22)と係合するように設計された、前記金属層(12)に配置された複数の突出部(21)を含み、周囲温度において前記キャビティ(22)と前記突出部(21)との間に隙間(50)が存在し、該隙間(50)は、ガスタービンの高温での作動時に消失し、前記突出部(21)はこれにより前記キャビティ(22)内にロックされるものであり、
前記固定装置(20)は、前記セラミック層(11)における前記キャビティ(22)と適合する前記金属層(12)における前記突出部(21)が互いに実質的に垂直、又は、互いに実質的に平行かつ前記金属層(12)及びセラミック層に対し約45°の角度になるように設計されており、
前記セラミック層(11)は、アルミナ及び/又はイットリア、カルシア、マグネシア又はそれらのあらゆる組合せによって安定化されたジルコニアから成り、
前記セラミック層(11)における材料の空隙率は、20%〜80%であり、
前記セラミック層(11)は、30%未満の空隙率を有する材料から形成された追加のセラミック層によって被覆されていることを特徴とする、ガスタービンブレードを熱的に保護するシュラウド装置。
【請求項2】
前記固定装置(20)は、前記金属層(12)への又は前記金属層(12)からの前記セラミック層(11)の挿入及び取出し方向における移動方向(30)に従って前記セラミック層(11)を移動させることができるように設計されており、
前記シュラウド装置(10)は、前記セラミック層(11)の据付位置を規定しかつ前記移動方向(30)に沿った前記セラミック層(11)の移動を制限するブロッキング装置(13)をも有し、この移動方向(30)は、回転しているときにガスタービンによって加えられるせん断移動(40)に対して平行である、請求項1記載のシュラウド装置。
【請求項3】
前記セラミック層(11)における材料の空隙率は、30%〜50%である、請求項1又は2記載のシュラウド装置。
【請求項4】
前記セラミック層(11)における空隙率グレードは、一時的な材料を使用することによって、一時的なポアフォーマを導入することによって、又はスラリの直接的な発泡成形によって得られる、請求項1から3までのいずれか1項記載のシュラウド装置。
【請求項5】
ガスタービンのブレードのうちの少なくとも1つにおいて、請求項1から4までのいずれか1項記載のシュラウド装置(10)を有するガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンのブレードを熱的に保護するために使用されるシュラウド装置に関し、このシュラウド装置は、耐久性が改良されている。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの構成部材が耐える温度及び圧力に関する特に強い条件は、ガスタービン構成部材の材料及び設計を一次的に重要なものとする。特に、ガスタービンのブレードは、これらのブレードを次第に摩耗させる強い作動条件に耐える。摩耗するたびにブレードを交換するのは極めてコストがかかるので、ブレードを交換しないために、従来技術では、ブレードを遮蔽するシュラウド装置を使用することが知られており、これらの装置は、必要なときに交換可能である。
【0003】
従来技術において知られている現在のシュラウド装置は、金属シュラウドから成り、この金属シュラウドにハニカムが埋め込まれている。通常、これらのハニカムは、薄い金属層から成り、ガスタービンの作動中に酸化し、シュラウド装置がより脆くなるという問題を有する。この理由から、米国特許第6435824号明細書に開示されているようないくつかの解決手段は、金属ハニカムを、金属シュラウドに埋め込まれたセラミックフォームなどのセラミック材料によって置き換えている。セラミック材料(フォームとして又はあらゆるその他の形態で)を使用する場合の主な問題は、セラミック材料と、金属材料、特にガスタービンブレードに使用される超合金との熱的な不適合により、セラミック材料をどのように、シュラウド装置を構成する金属シュラウドに結合するかということである。その結果、これらの公知の解決手段では、シュラウド装置の加熱及び/又は冷却の間にセラミック材料に高レベルのひずみが生じ、最終的に、セラミック材料の故障、ひいてはシュラウド装置の故障を生ずる。
【0004】
材料の熱的不適合によるひずみの減少に向けられた他の解決手段が見られ、従来技術において知られている。そのうちの1つは、金属シュラウドと、金属シュラウドの上側におけるセラミック層と、金属シュラウドとセラミック層との間のひずみコンプライアント層とを有するシュラウド装置である。しかしながら、このひずみコンプライアント層は、延性であり、強度が制限されている。したがって、高レベルのせん断(ひずみ)応力がセラミック層及びひずみコンプライアント層に加えられるような用途の場合、ひずみ(せん断)コンプライアンスと強度との兼ね合いが見いだされなければならず、これは容易に成し得るものではない。
【0005】
金属層にセラミック層を取り付けるためのいくつかの他の公知の解決手段は、ろう付け、又は、セラミックフォームが使用される場合には、米国特許第6435824号明細書に開示されているように、溶浸によるものである。しかしながら、全てのこれらの公知の解決手段は、セラミック材料のあらゆる故障がシュラウド装置全体の交換を必要とし、これは、コストがかかりかつ時間を浪費するものであるという欠点を有する。公知の別の解決手段は、機械的クランピングにより金属層とセラミック層とを固定することであるが、この解決手段は、セラミック層に蓄積された応力を生じ、これは、セラミック層の故障、ひいてはシュラウド装置全体の故障につながる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6435824号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術による上述の欠点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガスタービンのブレードを熱的に保護するために使用されるシュラウド装置に関し、このシュラウドは、耐久性が改良されている。本発明のシュラウド装置は、セラミック層と、金属層とを有し、セラミック層は、固定装置によって金属層に機械的に接合されている。本発明のシュラウド装置では、セラミック層は、摩耗される部分であり、固定装置は、必要なときにセラミック層を交換するために、金属層からのセラミック層の容易な取外しを可能にするように設計されている。シュラウド装置は、金属層がセラミック層によって熱的に保護されるように構成されており、これにより、分解速度もしくは反応速度が最小限にされている。この構成により、熱的シュラウド装置の寿命は長くなり、ガスタービン機関の運転中、必要なときにセラミック層を交換するだけでよい。
【0009】
本発明の前記課題及び付随する利点の多くは、添付の図面に関連して読まれた場合に以下の詳細な説明を参照することによってさらによく理解されることにより、さらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1a】本発明による、ガスタービンのブレードを熱的に保護するために使用される、耐久性が改良されたシュラウド装置の概略図である。
【
図1b】本発明による、ガスタービンのブレードを熱的に保護するために使用される、耐久性が改良されたシュラウド装置の概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態による、ガスタービンのブレードを熱的に保護するために使用される、耐久性が改良されたシュラウド装置の概略図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態による、ガスタービンのブレードを熱的に保護するために使用される、耐久性が改良されたシュラウド装置の概略図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態による、ガスタービンのブレードを熱的に保護するために使用される、耐久性が改良されたシュラウド装置の概略図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態による、ガスタービンのブレードを熱的に保護するために使用される、耐久性が改良されたシュラウド装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、耐久性が改良された、ガスタービンブレードを熱的に保護するシュラウド装置10に関する。シュラウド装置10は、セラミック層11と、金属層12とを有し、セラミック層11は、固定装置20によって金属層12に機械的に接合されている。固定装置20は、必要なときにセラミック層11を交換するために、金属層12からのセラミック層11の容易な取外しを可能にするように設計されている。金属層12は、セラミック層11によって熱的に保護されており、これにより、分解速度もしくは反応速度(degradation kinetic)が最小限にされており、シュラウド装置10の寿命を長くし、ガスタービン機関運転中、必要なときにセラミック層11を交換するだけでよい。
【0012】
本発明の固定装置20により、セラミック層11は、摺動方向30に沿ってシュラウド装置10に出入するように摺動し、これにより、セラミック層11はシュラウド装置10内で容易に交換することができる。ブロッキング装置13は、ヒートシールドへの据付後に、セラミック層11を摺動方向30でさらに移動させず、セラミック層11の据付位置を規定している。ブロッキング装置30は、回転しているときにガスタービンブレードによって加えられる荷重の方向40へセラミック層11を移動させない。固定装置20は、ガスタービンブレードの高温での作動中に、セラミック層20を緊密に保持するようにも設計されており、つまり、固定装置20は、ガスタービンブレードの休止位置の間、周囲温度において、僅かに緩くなる(金属層12に対するセラミック層11のある程度の移動を許容する)。
【0013】
固定装置20は、セラミック層11に配置された複数のキャビティ22と係合するように設計された、金属層12に配置された複数の突出部21を有する。本発明によれば、キャビティ22は、突出部21よりも僅かに大きく、カウンターパートとして作用し、ガスタービンが作動しているときにキャビティ22及び突出部21の表面は接触し、セラミック層11は、700℃を超える温度を有する高温ガスと接触する。温度は、据え付けられる段に依存し、最後の段のブレードは、好適には、〜700℃又は700〜1000℃の高温ガス温度を有するのに対し、第1の段のブレードは、〜1500℃及びさらに高い高温ガス温度を有する。この構成により、セラミック層11は、金属層12へのセラミック層11の挿入方向での移動30を除き、シュラウド装置10内での金属層12に対する移動の自由度をもはや有さず、この移動30は、回転しているガスタービンブレードによって加えられるせん断移動40とは反対方向である。
【0014】
シュラウド装置10の設計は、金属層12が、ヒートシールドとして作用するセラミック層11によって熱的に保護されるように形成されており、これは、この金属層12の低い分解速度もしくは反応速度と、摩耗可能なシステムとして作用するシュラウド装置10のこの部分の高い耐久性とを保障する。シュラウド装置10のこの構成により、ガスタービンにおけるブレードの所定の作動期間が経過した後、セラミック層11が交換されるだけでよく、これは、現場で手作業によって行うことができる仕事である。
【0015】
セラミック層11は、セラミックフォームから成る。セラミック層11の材料は、好適にはアルミナを含むが、イットリア、カルシア、マグネシア又はこれらのあらゆる組合せによって安定化されたジルコニアを含むことができる。
【0016】
セラミック層11における材料の空隙率は、20%〜80%、より好適には30%〜50%である。セラミック層11は、焼結した後に所望の寸法につながる形状に材料を成形することによって製造することができ、所要の形状及び寸法にセラミック層11を仕上げるための最小限の機械加工を必要とする。セラミック層11における空隙率グレードは、セラミックを焼きもどしするための一過性材料を使用することによって、一過性ポアフォーマを導入することによって、又はスラリの直接的な発泡成形によって得ることができる。
【0017】
加えて、セラミック層11は、30%未満の空隙率を有する材料から形成された追加のセラミック層によって被覆することができる。この追加のセラミック層は、腐食を低減するために、高温ガスに面したセラミック層11の側に配置されている。この追加のセラミック層は、まず高密度のセラミックグリーンボディを薄い層で成形し(セラミックのためのグリーン材料は、成形された材料であり、最終的なセラミックよりも著しく柔軟な、セラミック又はセラミック前駆体及びバインダなどのその他の材料から形成されており、容易に機械加工することができる;この段階において、セラミックはバインダによってその形状が保たれており、その後、高温熱処理が行われ、バインダは焼尽され、セラミック粒子が焼結し、最終製品を生じ、これにより、焼結プロセスの間に、セラミックボディの体積は減少し、これは、グリーンボディの寸法及び形状が最終製品の寸法及び形状と等しくないことを意味する)、セラミック層11のグリーンな多孔質のセラミック材料前駆体を独立して成形し、材料のうちの一方又は両方を独立して燃焼させ、これにより、両材料(高密度セラミック及び多孔質セラミック)の焼結は未完了であり、最後の焼結ステップの間の寸法減少は適合し、両材料を組み立て、最後の焼結プロセスを行うことによって製造することができる。これは、両材料が、それらの境界面における最小限の残留応力で強く接合されることを保証する。
【0018】
図2及び
図3に示したように、本発明の第1の実施の形態によれば、固定装置20は、セラミック層11におけるキャビティ22と適合する金属層12における突出部21が、互いに実質的に垂直になるように設計されている。
図2及び
図3に示したように、隙間50が存在し、この隙間50は、周囲温度において突出部21とキャビティ22との緩い結合を提供し、隙間50は、ガスタービンの作動状態において高温が生ぜしめられると、キャビティ22内での突出部21の緊密なロックが形成され、これにより隙間50が消失するような寸法になっている。
【0019】
同様に、本発明の第2の実施の形態によれば、
図4及び
図5に示したように、固定装置20は、セラミック層11におけるキャビティ22と適合する金属層12における突出部が互いに実質的に平行であり、好適には、金属層12及びセラミック層11に対して約45°の角度を形成するように設計されている。
図4及び
図5に示したように、隙間50が存在し、この隙間は、周囲温度において突出部21とキャビティ22との緩い結合を生じ、この隙間50は、ガスタービンの作動状態において高温が生ぜしめられると、キャビティ22内での突出部21の緊密なロックが形成され、これにより隙間50が消失するような寸法になっている。
【0020】
本発明は好適な実施の形態に関連して完全に説明されているが、変更が発明の範囲に含まれてよく、発明を、これらの実施の形態によって限定されるものと考えるのではなく、以下の請求項の内容によって限定されると考える。
【符号の説明】
【0021】
10 シュラウド装置
20 固定装置
11 セラミック層
12 金属層
13 ブロッキング装置
21 金属層における突出部
22 セラミック層におけるキャビティ
30 セラミック層の挿入移動
40 ブレードの回転によって生ぜしめられるせん断移動
50 周囲温度における突出部とキャビティとの間の隙間