(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972321
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】近赤外光吸収ガラス、近赤外光吸収素子、及び近赤外光吸収光学フィルタ
(51)【国際特許分類】
C03C 4/08 20060101AFI20160804BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20160804BHJP
C03C 3/247 20060101ALI20160804BHJP
C03C 3/066 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
C03C4/08
G02B5/22
C03C3/247
C03C3/066
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-159660(P2014-159660)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-30665(P2015-30665A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2014年8月5日
(31)【優先権主張番号】201310337002.5
(32)【優先日】2013年8月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】▲孫偉▼
【審査官】
吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−148964(JP,A)
【文献】
特開2013−087054(JP,A)
【文献】
特開2012−153542(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/018026(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/118724(WO,A1)
【文献】
特開2013−053058(JP,A)
【文献】
特開2011−093757(JP,A)
【文献】
特開2009−263190(JP,A)
【文献】
特開2007−101585(JP,A)
【文献】
特開2004−083290(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0207057(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/062 − 3/066
C03C 3/16 − 3/247
C03C 4/08
G02B 5/22
INTERGLAD
GAZ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
15〜30質量%のP5+と、1〜8質量%のAl3+と、5〜20質量%のBa2+と、3〜12質量%のNa+と、1〜10質量%のZn2+と、0〜5質量%のMg2+と、0〜5質量%のCa2+と、0〜5質量%のSr2+と、0.1〜8質量%のCu2+と、0〜3質量%のSi4+と、1〜10質量%のF-と、30〜50質量%のO2-とを含有する近赤外光吸収ガラス。
【請求項2】
更に、0〜1質量%のSb3+及び/又は0〜1質量%のCl-を含有する、請求項1に記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項3】
15〜30質量%のP5+と、1〜8質量%のAl3+と、5〜20質量%のBa2+と、3〜12質量%のNa+と、1〜10質量%のZn2+と、0〜5質量%のMg2+と、0〜5質量%のCa2+と、0〜5質量%のSr2+と、0.1〜8質量%のCu2+と、0〜3質量%のSi4+と、1〜10質量%のF-と、30〜50質量%のO2-と、0〜1質量%のSb3+及び/又は0〜1質量%のCl-とからなる(但し、不可避不純物を含んでいてもよい)、請求項1に記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項4】
P5+の含有量が20〜27質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項5】
Al3+の含有量が1〜4.9質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項6】
Ba2+の含有量が6〜15質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項7】
Na+の合計含有量が5〜10質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項8】
Zn2+の含有量が2〜6質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項9】
Mg2+の含有量が0.5〜3質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項10】
Ca2+の含有量が0.5〜3質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項11】
Sr2+の含有量が0.5〜3質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項12】
Cu2+の含有量が0.5〜5質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項13】
Cu2+の含有量が1〜3.5質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項14】
Si4+の含有量が0〜1質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項15】
F-の含有量が1.5〜7質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項16】
O2-の含有量が35〜44質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項17】
ガラスの耐酸作用安定性DAが3クラス超である、請求項1〜16のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項18】
厚さ0.45mmにおける、波長1200nmの光の透過率が15%未満である、請求項1〜16のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラス。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラスにより形成された近赤外光吸収素子。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載の近赤外光吸収ガラスにより形成された近赤外光吸収光学フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外光吸収ガラス、近赤外光吸収素子、及び近赤外光吸収光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ及びVTRカメラ等の普及に伴い、これらカメラの画像効果と画像品質に対してより高い要求がなされるようになっている。デジタルカメラ及びVTRカメラ等に用いられるCCD(Charge-coupled Device)等の固体撮影素子のスペクトル感度のカバー範囲は、可視域から1100nm付近の近赤外域に及ぶようになっている。従来一般的な光学ガラスは、上記要求に対応することが難しい。そこで、近赤外光を吸収する光学フィルタを使用して、人間の視界に近い画像を得ている。
【0003】
従来技術において、近赤外光吸収ガラスは、リン酸塩或いは弗リン酸塩にCu
2+を添加して製造されている。特許文献1には、CuOを含む近赤外光吸収ガラスが開示されている。リン酸塩ガラスにおいては、Cu
2+の含有量が増大すると、ガラスの耐失透性が低下してガラスの結晶体が析出されやすくなり、ガラスの液相線温度が上昇し、液相線温度におけるガラスの粘度が低下し、成形ガラスにおいて溶融ガラスの対流が発生し、刷毛筋等の問題が起こりやすい傾向がある。
特許文献1に記載のガラスは更に2〜12.5%の酸化リチウムを含有する。このことは、ガラスの相分離を加速させ、それによりガラスの耐久性と加工性能を低下させる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-342045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた化学安定性を有する近赤外光吸収ガラス、近赤外光吸収素子、及び近赤外光吸収光学フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、
15〜30%のP
5+と、1〜8%のAl
3+と、5〜20%のBa
2+と、3〜12%のNa
+と、1〜10%のZn
2+と、0〜5%のMg
2+と、0〜5%のCa
2+と、0〜5%のSr
2+と、0.1〜8%のCu
2+と、0〜3%のSi
4+と、1〜10%のF
-と、30〜50%のO
2-とを含有する近赤外光吸収ガラスを提供する。
【0007】
本発明の近赤外光吸収ガラスは更に、0〜1%のSb
3+及び/又は0〜1%のCl
-を含有することが好ましい。
【0008】
本発明の近赤外光吸収ガラスの好ましい態様としては、15〜30%のP
5+と、1〜8%のAl
3+と、5〜20%のBa
2+と、3〜12%のNa
+と、1〜10%のZn
2+と、0〜5%のMg
2+と、0〜5%のCa
2+と、0〜5%のSr
2+と、0.1〜8%のCu
2+と、0〜3%のSi
4+と、1〜10%のF
-と、30〜50%のO
2-と、0〜1%のSb
3+及び/又は0〜1%のCl
-とからなる(但し、不可避不純物を含んでいてもよい)ものが挙げられる。
【0009】
P
5+の含有量が20〜27%であることが好ましい。
Al
3+の含有量が1〜4.9%であることが好ましい。
Ba
2+の含有量が6〜15%であることが好ましい。
Na
+の含有量が5〜10%であることが好ましい。
Zn
2の含有量が2〜6%であることが好ましい。
Mg
2+の含有量が0.5〜3%%であることが好ましい。
Ca
2+の含有量が0.5〜3%であることが好ましい。
Sr
2+の含有量が0.5〜3%%であることが好ましい。
Cu
2の含有量が0.5〜5%であることが好ましい。
Cu
2+の含有量が1〜3.5%であることが好ましい。
Si
4+の含有量が0〜1%であることが好ましい。
F
-の含有量が1.5〜7%であることが好ましい。
O
2-の含有量が35〜44%であることが好ましい。
【0010】
本発明の近赤外光吸収ガラスは、耐酸作用安定性D
Aが3クラス超であることが好ましい。
本発明の 近赤外光吸収ガラスは、厚さ0.45mmにおける波長1200nmの光の透過率が15%未満であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、上記の近赤外光吸収ガラスにより形成された近赤外光吸収素子を提供する。
本発明はまた、上記の近赤外光吸収ガラスにより形成された近赤外光吸収光学フィルタを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の近赤外光吸収ガラスでは、弗リン酸塩ガラスを母材とするガラス中のCu
2+成分の含有量を合理的に配分することにより、リチウムを添加しなくても、優れた化学安定性が得られる。
本発明によれば、厚さ0.45mmにおける波長1200nmの光の透過率が15%未満である近赤外光吸収ガラスを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る実施例20の近赤外光吸収ガラスのスペクトル透過率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、プラスイオン成分の含有量は、当該プラスイオンの質量がプラス・マイナスイオン全体の質量に占める質量%である。同様に、マイナスイオン成分の含有量は、当該マイナスイオンの質量がプラス・マイナスイオン全体の質量に占める質量%である。
【0015】
本発明の近赤外光吸収ガラスは、弗リン酸塩ガラスを母材(マトリックスガラス)とし、近赤外光吸収作用のあるCu
2+を添加して得ることができる。ガラスにおいて、銅はCu
2+の形で存在することが効果的である。Cu
2+のCu
+への還元を防ぐために、溶融ガラスはアルカリ性環境を保持しなければならない。Cu
2+の含有量が0.1%未満の場合、近赤外光吸収光学フィルタは、所望の近赤外光吸収効果を充分に達成できない。但し、その含有量が8%超では、ガラスの耐失透性とガラス成形性が低下する。従って、本発明のガラスにおいて、 Cu
2+の含量は0.1〜8%であり、好ましくは0.5〜5%であり、より好ましくは1〜3.5である。
【0016】
P
5+は本発明のガラスのネットワーク構造を形成するための必須成分であり、また、赤外域の光吸収に重要な成分である。但し、その含有量が15%未満では、ガラスの色が低品位になり、緑色になる傾向がある。その含有量が30%超では、ガラスの耐失透性と耐候性が低下する。従って、本発明のガラスにおいて、P
5+の含量は15〜30%であり、好ましくは20〜27%である。
【0017】
Al
3+は本発明のガラスの必須成分であり、ガラスの安定性を向上させることができる。但し、その含有量が1%未満では上記の効果を達成できない。その含有量が8%超では、近赤外光吸収特性が低下する。上記効果を達成するため、Al
3+の含有量は1〜8%であり、好ましくは1〜4.9%である。
【0018】
Na
+は、ガラスの耐候性を効果的に向上させ、同時に溶融ガラスのアルカリ性を向上させてガラスの近赤外光吸収性能を優れたものにさせる。本発明者は研究を通じて、Li
+とK
+に比べ、Na
+の導入はガラスの化学安定性とスペクトル特性をより効果的に向上させることができることを見出している。但し、その含有量が12%超では、ガラスの化学耐久性が低下する。従って、本発明のガラスにおいて、Na
+の含有量は3〜12%であり、好ましくは5〜10%である。
【0019】
R
2+は本発明のガラスの必須成分であり、ガラスの成形性、耐失透性、及び加工性を効果的に向上させることができる。ここで、R
2+は、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+、及びBa
2+からなる群より選ばれた1種或いは2種以上を示す。近赤外光吸収光学フィルタとして、可視域の光透過率が比較的に高い方が好ましい。R
2+の存在はガラスのアルカリ性を増加させるが、過剰なR
2+はガラスの失透安定性を増大させる。同時にCa
2+とSr
2+を適量導入することにより、ガラスは結晶化し難くなる。従って、本発明のガラスにおいて、R
2+の含有量は以下のように規定される。Mg
2+の含有量は0〜5%であり、Ca
2+の含有量は0〜5%であり、Sr
2+の含有量は0〜5%である。好ましくは、Mg
2+の含有量は0.5〜3%であり、Ca
2+の含有量は0.5〜3%であり、Sr
2+の含有量は0.5〜3%である。
加えて、Ba
2+は、ガラスの成形を安定させることだけではなく、ガラスの耐失透性と溶融性を向上させることができる。本発明者は研究を通じて、ガラスに大量のBa
2+とNa
+を導入させ協同作用させることにより、ガラスのアルカリ性を著しく向上させ、ガラスの近赤外光吸収性能を向上できることを見出している。従って、Ba
2+の含有量は5〜20%であり、好ましくは6〜15%である。
【0020】
Zn
2+は、溶融ガラスのアルカリ性向上に有効な成分である。溶融ガラスのアルカリ性環境は銅イオンのCu
2+の形での存在に有利である。Zn
2+を添加することで、母材ガラスに対してより多くのCu
2+が導入され、ガラスの近赤外光の光吸収性能が向上される。また、本発明のガラスにおいて、Zn
2+とP
5+はガラスの化学安定性、特に耐水性を優れたものとする。本発明者は研究を通じて、硝酸亜鉛の代わりにZnOを用いてZn
2+を導入することにより、ガラスの化学安定性が効果的に向上し、且つ、溶解炉が腐食しにくい事を見出している。同時に、当該方法は、溶融プロセスにおけるNO
2等の地球温暖化ガスの排出を効果的に低減させ、環境汚染を低減させることができる。従って、本発明のガラスにおいて、Zn
2+の含有量は1〜10%であり、好ましくは2〜6%である。
【0021】
Si
4+はガラスの溶融安定性を効果的に向上させることができる。但し、Si
4+が過剰では、ガラスの溶融性が低下し、溶融温度が上昇し、銅イオン減少により色感度校正機能が低下する恐れがある。従って、本発明のガラスにおいて、Si
4+の含有量は0〜3%であり、好ましくは0〜1%である。
【0022】
O
2-は、本発明のガラスの必須マイナスイオン成分である。但し、その含有量が過少では、Cu
2がCu
+に還元されやすくなる。その含有量が過剰では、ガラスの粘度が比較的高くなることにより、溶融温度が上昇する。従って、本発明のガラスにおいて、O
2-の含有量は30〜50%であり、好ましくは35〜44%である。
【0023】
近赤外光吸収ガラスにおいて、溶融温度が高くなる程、Cu
2+がCu
+に還元されやすくなり、ガラスの色も青色から緑色に変わる傾向がある。本発明はリン酸塩ガラスをベースに研究開発されているが、リン酸塩ガラスの化学安定性が低下する傾向がある。本発明によってガラスにF
-を適量添加することにより、優れたガラス化学安定性が得られる。F
-は、好ましくはRF(ここで、RはLi、K、或いはNaを示す。)の形で導入される。少量のLiFはガラス化学安定性を改善することができ、少量のKFはガラスのスペクトル特性を向上させることができ、NaFはガラスの化学安定性とスペクトル特性を同時に向上させることができる。従って、F
-は、より好ましくはNaFの形で導入される。本発明者は研究を通じて、F
-の含有量が過剰では、ガラスの波長1200nmにおける吸収性能が低下するため、通常は更に塗膜を塗布する方式により、吸収性能を向上させる必要がある一方、F
-の含有量が比較的少ない場合,この波長での吸収性能が著しく向上されることを見出している。本発明のガラスは、F
-を適量導入することにより、製品の塗膜技術に対する依存度を低減させることができ、これによって製品の材料コストを低減させることができる。但し、F
-の含有量が過剰では、溶融プロセスにおいてフッ化ガスが揮発する恐れがある。このことは、地球環境上、好ましくない。従って、本発明のガラスにおいて、F
-の含有量は1〜10%であり、好ましくは1.5〜7%である。
【0024】
Sb
3+はSb
2O
3の形で導入され、本発明のガラスにおいて清澄剤として使用される。その含有量は0〜1%である。
Cl
3-はBaCl
2の形で導入され、本発明のガラスにおいて同様に清澄剤として使用される。その含有量は0〜1%である。
【0025】
本発明のガラスに鉄及びバナジウムは特に添加されないが、不可避的に不純物の形で導入される場合がある。但し、製造プロセスにおいて、最大限減少させ、尚且つ導入されないよう務める。
【0026】
本発明のガラスはその特定の組成設計により、ガラスの化学安定性に関して以下の特性を有することができる。耐水性作用安定性D
Wは、1クラスまで達することができる。耐酸性作用安定性D
Aは3クラス超であり、好ましくは2クラスである。
【0027】
上記の耐水性作用安定性D
W(粉末法)は、GB/T17129試験方法に規定の方法に準拠して測定され、以下の計算式により算出される。
【0028】
D
W =(B-C)/(B-A)× 100
(式中、各符号は以下の通りである。
D
W:ガラス浸出百分率(%)、
B:フィルタと試料の合計質量(g)、
C:フィルタと侵蝕後の試料の合計質量(g)、
A:フィルタの質量(g)。)
算出された浸出百分率から、光学ガラスの耐水作用安定性D
Wは6クラスに区分される。クラス区分の詳細は下表の通りである。
【0030】
上記の耐酸作用安定性D
A(粉末法)は、GB/T17129試験方法に規定の方法に準拠して測定され、以下の計算式により算出される。
【0031】
D
A =(B-C)/(B-A)× 100
(式中、各符号は以下の通りである。
D
A:ガラス浸出百分率(%)、
B:フィルタと試料の合計質量(g)、
C:フィルタと侵蝕後の試料の合計質量(g)、
A:フィルタの質量(g)。)
算出された浸出百分率から、光学ガラスの耐酸作用安定性D
Aは6クラスに区分される。クラス区分の詳細は下表の通りである。
【0033】
本発明のガラスにおける好ましい透過率特性は以下の通りである。
ガラスの厚さが0.45mmの場合、400〜1200nmの波長範囲内におけるスペクトル透過率は以下の通りである。
400nmの波長におけるスペクトル透過率は好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは87%以上である。
500nmの波長におけるスペクトル透過率は好ましくは85%以上であり、より好ましくは87%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
600nmの波長におけるスペクトル透過率は好ましくは55%以上であり、より好ましくは57%以上であり、特に好ましくは59%以上である。
700nmの波長におけるスペクトル透過率は好ましくは9%以下であり、より好ましくは8%以下であり、特に好ましくは7%以下である。
800nmの波長におけるスペクトル透過率は好ましくは2%以下であり、より好ましくは1.5%以下であり、特に好ましくは0.8%以下である。
900nmの波長におけるスペクトル透過率は好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下である。
1000nmの波長におけるスペクトル透過率は好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、特に好ましくは2.5%以下である。
1100nmの波長におけるスペクトル透過率は好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下であり、特に好ましくは6%以下である。
1200nmの波長におけるスペクトル透過率は好ましくは15%以下であり、より好ましくは13%以下であり、特に好ましくは12%以下である。
上記から、本発明のガラスは、700〜1200nmの近赤外域の波長範囲内の吸収が大きく、400〜600nmの可視域の波長範囲内の吸収は小さい事が分かる。
500〜700nmの波長におけるスペクトル透過率において、透過率50%に対応する波長(即ち、λ
50対応の波長値)の範囲は613±10nmである。
【0034】
本発明のガラスの透過率は、分光光度計を用いて測定される値である。
ガラスの透過率は、以下のように定義される。
ガラス試料が互いに平行な2つの光学研磨平面を有し、光が一方の平面から垂直に入射し、他方の平面から出射すると仮定したとき、出射光の強度を入射光の強度で割った値が透過率である。当該透過率は、外光透過率とも称される。
【0035】
本発明のガラスの上記特性は、CCD或いはCMOS等の半導体撮像素子の色を顕著に良好に校正することができる。
【0036】
本発明の近赤外光吸収素子は、上記の近赤外光吸収ガラスにより形成されたものである。
本発明の近赤外光吸収素子は、近赤外光吸収フィルタ中の薄板状のガラス素子或いはレンズ等に用いられ、固体撮像素子の色修正用途に適し、優れた光透過性能及び化学安定性を有する。
【0037】
本発明の近赤外光吸収フィルタは上記の近赤外光吸ガラスにより形成されたものである。従って、本発明の近赤外光吸収フィルタは、優れた光透過性能及び化学安定性を有する。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、他の技術者の参考内容とするが、本発明の権利範囲はこれらの実施例に限られない。
【0039】
本発明のガラスにおいて、各原料はメタリン酸塩、フッ化物、酸化物、或いは炭酸塩の形態で用いられるが、硝酸塩の形態では用いられない。これによって、ガラスの化学安定性を効果的に向上させることができる。
本発明の近赤外光吸収ガラスは、以下のプロセスによって得られる。
表3〜4に示すガラス組成となるように複数種の原料を計量し、完全に混合した後、得られた混合原料をガラス溶融設備に投入し、ある温度で加熱溶融させ、清澄化及び均質化する。なお、溶融ガラスは、清澄剤によって生じた酸素によって清澄化されると同時に均質化される。
表3、4の各成分の含有量の単位は、「%」である。
【0040】
上記のガラスを板状に加工し、且つ、相対の両面を光学研磨して透過率を測定する試料を製作した。分光計を用いてそれぞれの試料のスペクトル透過率を測定し、0.45mm厚さの各試料の典型的な波長の透過率を得た。
表5〜6は厚さが0.45mmの場合のガラスの透過率の値を示したもので、実施例1〜20のガラスが全て半導体撮像素子用の色感度校正ガラスとして優れた性能を有することが示されている。
【0041】
表5〜6には、ガラスの厚さが0.45mmの場合、波長1200nmの光の透過率は15%未満であり、700〜1200nmの近赤外域での波長範囲内の吸収は大きく、400〜600nmの可視域での波長範囲内の吸収は小さいことが示されている。
図1は、実施例20のスペクトルグラフである。
図1に示すように、500〜700nmの波長範囲内のスペクトル透過率において、透過率50%に対応する波長(即ち、λ
50対応の波長値)の範囲は613±10nmである。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】