(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)第一及び第二の抗原結合Fab分子、及び2つのサブユニットからなるFcドメインを含む、免疫グロブリン分子、及び(ii)エフェクター部分を含み、1以下のエフェクター部分が存在し、
前記第一及び第二のFab分子がCEAを指向し、かつ、配列番号191の重鎖可変領域配列及び配列番号189の軽鎖可変領域配列を含み、
前記エフェクター部分が、アミノ酸置換のF42A、Y45A、L72Gを含む変異体ヒトインターロイキン−2(IL−2)ポリペプチドである、イムノコンジュゲート。
前記エフェクター部分が、Fcドメインの前記2つのサブユニットの一方のカルボキシ末端のアミノ酸に、任意でリンカーペプチドを介して融合している、請求項1に記載のイムノコンジュゲート。
前記修飾が、Fcドメインのサブユニットの一つにおいてノブ修飾及びFcドメインの2つのサブユニットの他方においてホール修飾を含む、ノブ・イントゥ・ホール(knob into hole)修飾である、請求項3に記載のイムノコンジュゲート。
ノブ修飾がアミノ酸置換のT366Wを含み、ホール修飾がアミノ酸置換のT366S、L368A及びY407V(EU番号付け)を含む、請求項4に記載のイムノコンジュゲート。
ノブ修飾を含むFcドメインのサブユニットが、アミノ酸置換のS354Cを更に含み、ホール修飾を含むFcドメインのサブユニットが、アミノ酸置換のY349Cを更に含む、請求項5に記載のイムノコンジュゲート。
Fcドメインが、そのサブユニットの各々において、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329G(EU番号付け)を含む、請求項13から15の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート。
前記エフェクター部分が、免疫グロブリン重鎖の一方のカルボキシ末端のアミノ酸に、任意でリンカーペプチドを介して融合している、請求項1から20の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート。
前記変異体ヒトインターロイキン−2(IL−2)ポリペプチドが、アミノ酸置換のC125Aを更に含む、請求項1から22の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート。
前記変異体ヒトインターロイキン−2(IL−2)ポリペプチドが、配列番号3のポリペプチド配列を含む、請求項1から23の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート。
前記宿主細胞が、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する一以上のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作された、請求項28に記載の宿主細胞。
(i)第一及び第二の抗原結合Fab分子、及び2つのサブユニットからなるFcドメインを含む、免疫グロブリン分子、及び(ii)エフェクター部分を含み、1以下のエフェクター部位が存在する、イムノコンジュゲートを生成する方法であって、請求項28又は29に記載の宿主細胞を、イムノコンジュゲートの発現に適した条件下で培養すること、及び任意でイムノコンジュゲートを回収することを含む、方法。
請求項30に記載の方法により生成される、(i)第一及び第二の抗原結合Fab分子、及び2つのサブユニットからなるFcドメインを含む、免疫グロブリン分子、及び(ii)エフェクター部分を含み、1以下のエフェクター部位が存在する、イムノコンジュゲート。
必要とする個体における疾患の治療において使用のための、請求項1から25又は請求項31の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート、又は請求項32に記載の薬学的組成物。
必要とする個体における疾患の治療のための医薬の製造のための、請求項1から25又は請求項31の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート、又は請求項32に記載の薬学的組成物。
請求項1から25又は請求項31の何れか一項に記載のイムノコンジュゲートを含む組成物の治療的有効量を薬学的に許容される形態で含む、個体において疾患を治療するための医薬。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】当技術分野で知られている典型的な免疫グロブリン−サイトカインイムノコンジュゲートの略図。ここでサイトカイン(点線)は、2本の免疫グロブリン重鎖の各々のC末端に融合される。
【
図2】1以下のエフェクター部分(点線)を含む、本発明による新規なイムノコンジュゲートの略図。エフェクター部分は、必要に応じてリンカーペプチドを介して(グレーのボックス)Fcドメインのカルボキシ末端(フォーマットA及びB)又はアミノ末端アミノ酸(フォーマットC)に融合している。イムノコンジュゲートは、1つ(フォーマットB及びC)又は複数(典型的には2つ、フォーマットA)の抗原結合部分を含み、それは抗体重鎖及び軽鎖可変ドメイン(斜線)を含むFab断片であってもよい。Fcドメインは、2つの非同一のポリペプチド鎖のヘテロダイマー化を促進する修飾(黒丸)、及び/又はFc受容体結合及び/又はエフェクター機能を改変する修飾(黒星)を含み得る。
【
図3】FAPを標的とした4G8ベースのIgG−IL−2四重変異体(qm)イムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン、MOPSランニングバッファー)。D)Superdex200カラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(97%単量体含有量)
【
図4】FAPを標的とした28H1ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的SDS−PAGE(還元:NuPAGE Novex ビス−トリスミニゲル、インビトロジェン、MOPSランニングバッファー;非還元:NuPAGE トリス酢酸、インビトロジェン、トリス酢酸ランニングバッファー)。D)Superdex200カラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(100%単量体含有量)。
【
図5】FAPを標的とした28H1ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートのCHO細胞からの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン、MOPSランニングバッファー)。D)Superdex200カラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(100%単量体含有量)。
【
図6】FAPを標的とした4B9ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン、MOPSランニングバッファー)。D)Superdex200カラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(100%単量体含有量)。
【
図7】CEAを標的としたCH1A1A 98/99 2F1−ベースのIgG−IL−2qmイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的キャピラリー電気泳動SDS(キャリパー)。D)TSKgel G3000 SW XLカラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(98.8%単量体含有量)。
【
図8】TNC A2を標的とした2B10ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的キャピラリー電気泳動SDS(キャリパー)。D)TSKgel G3000 SW XLカラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(100%単量体含有量)。
【
図9】非標的化DP47GSベースIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン、MOPSランニングバッファー)。D)Superdex200カラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(100%単量体含有量)。
【
図10】安定的にトランスフェクトされたHEK293細胞に発現されるヒトFAPに対するFAPを標的とした4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの結合。FACSにより測定され、対応するFab−IL−2 qm−Fabコンストラクトに対して比較される。
【
図11】28H1ベースのFab−IL−2 qm−Fabコンストラクトに対して比較される、溶液中でFAPを標的とした4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートにより誘導されるNK92細胞上でのインターフェロン(IFN)−γの放出。
【
図12】溶液中でFAPを標的とした4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートで20分間刺激後において、異なる細胞型におけるFACSによるリン酸化STAT5の検出、28H1ベースのFab−IL−2 qm−Fabコンストラクト並びにプロロイキンと比較される。A)NK細胞(CD3
−CD56
+);B)CD8
+ T細胞(CD3
+CD8
+);C)CD4
+ T細胞(CD3
+CD4
+CD25
−CD127
+);D)制御性T細胞(CD4
+CD25
+FOXP3
+)。
【
図13】FACSにより測定される、TNC A2を標的とした2B10 IgG−IL−2 qmと対応するr非結合型IgGのTNC A2発現U87MG細胞への結合。
【
図14】TNC A2を標的とした2B10 IgG−IL−2 qm、CEAを標的としたCH1A1A 98/99 2F1 IgG−IL−2 qm及びCH1A1A 98/99 2F1 IgG−IL−2 wtイムノコンジュゲートによるNK92細胞増殖の誘導。
【
図15】FAPを標的とした4B9 IgG−IL−2 qm及び4B9 IgG−IL−2 wtイムノコンジュゲートによるNK92細胞増殖の誘導。
【
図16】コンジュゲートしていない糖鎖操作型CH1A1A IgGと比較した、糖鎖操作型(ge)及び野生型(wt)CH1A1A IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートにより媒介されるADCCを介したPBMCによるCEAを過剰発現するA549腫瘍細胞の死滅(LDH放出により測定される)。
【
図17】非標的化DP47GS IgG−IL−2 wtイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン、MOPSランニングバッファー)。D)Superdex200カラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(99.6%単量体含有量)。
【
図18】28H1ベースのFAPを標的とした28H1 IgG−IL−2 wtイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン、MOPSランニングバッファー)。D)Superdex200カラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(99.6%単量体含有量)。
【
図19】CEAを標的としたCH1A1A 98/99 2F1−ベースのIgG−IL−2wtイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的キャピラリー電気泳動SDS(キャリパー)。D)TSKgel G3000 SW XLカラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(100%単量体含有量)。
【
図20】FAPを標的とした4B9ベースIgG−IL−2 wtイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインA親和性およびサイズ排除の混合クロマトグラフィーの溶出プロファイル。B)Aにおけるサイズ排除クロマトグラフィーの溶出プロファイルの拡大。C)最終産物の分析的SDS−PAGEE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン、MOPSランニングバッファー)。D)TSKgel G3000 SW XLカラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(98.5%単量体含有量)。
【
図21】A)分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン)、NuPAGE LDSサンプルバッファー(4x)、10分間70℃で加熱、MOPSバッファー、160V、60分、MWマーカーMark12、還元(1)及び非還元(2)2B10 IgG−IL−10M1の無染色標準物質(インビトロジェン、M)。B)1:1相互作用モデルに対して全体的に近似される、2B10 IgG−IL−10M1のヒト TNC A2に対するSPRにもとづく親和性決定(ProteOn XPR36)。(チップ:NLC;リガンド:TNCA2(250RU);分析物:TNCA2 2B10 IgG−IL−10M1 164kDa;分析物の濃度の範囲:50、10、2、0.4、0.08、0nM;会合時間:180s;解離時間:600s;流速:50μl/分;k
on 1.80x10
6 1/Ms;k
off:9.35x10
−5 1/s;K
D:52pM)。C)1:1相互作用モデルに対して全体的に近似される、2B10 IgG−IL−10M1のヒトIL−10R1に対するSPRにもとづく親和性決定(ProteOn XPR36)(チップ:NLC;リガンド:IL−10R1(1600RU);分析物:TNCA2 2B10 IgG−IL−10M1 164kDa;分析物の濃度の範囲:50、10、2、0.4、0.08、0nM;会合時間:180s;解離時間:600s;流速:50μl/分;k
on 5.56x10
5 1/Ms;k
off:2.89x10
−4 1/s;K
D:520pM)。
【
図22】A)分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン)、NuPAGE LDSサンプルバッファー(4x)、10分間70℃で加熱、MOPSバッファー、160V、60分、MWマーカーMark12、還元(1)及び非還元(2)4G8 IgG−IL−10M1の無染色標準物質(インビトロジェン、M)。B)1:1相互作用モデルに対して全体的に近似される、4G8 IgG−IL−10M1のヒトFAPに対するSPRにもとづく親和性決定(ProteOn XPR36)(チップ:GLM;リガンド:huFAP(500RU);分析物:FAP 4G8 IgG−IL−10M1 164kDa;分析物の濃度の範囲:10、2、0.4、0.08、0nM;会合時間:180s;解離時間:600s;流速:50μl/分;k
on 6.68x10
5 1/Ms;k
off:1.75x10
−5 1/s;K
D:26pM)。C)1:1相互作用モデルに対して全体的に近似される、4G8 IgG−IL−10M1のヒトIL−10R1に対するSPRにもとづく親和性決定(ProteOn XPR36)(チップ:NLC;リガンド:IL 10R1(1600RU);分析物:FAP 4G8 IgG−IL−10M1 164kDa;分析物の濃度の範囲:50、10、2、0.4、0.08、0nM;会合時間:180s;解離時間:600s;流速:50μl/分;k
on:3.64x10
5 1/Ms;k
off:2.96x10
−4 1/s;K
D:815pM)。
【
図23】FAPを標的とした4B9にもとづく「1+1」IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインA親和性およびサイズ排除の混合クロマトグラフィーの溶出プロファイル。B)最終生成物の分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン、MOPSランニングバッファー)。C)TSKgel G3000 SW XLカラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(99.2%単量体含有量)。
【
図24】FAPを標的とした28H1にもとづく「1+1」IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインA親和性およびサイズ排除の混合クロマトグラフィーの溶出プロファイル。B)最終生成物の分析的SDS−PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン、MOPSランニングバッファー)。C)TSKgel G3000 SW XLカラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(100%単量体含有量)。
【
図25】FAPを標的とした4B9にもとづく「1+1」IgG−IL−7イムノコンジュゲートの精製。A)プロテインA親和性およびサイズ排除の混合クロマトグラフィーの溶出プロファイル。B)最終生成物の分析的キャピラリー電気泳動SDS(キャリパー)。C)TSKgel G3000 SW XLカラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(98.6%単量体含有量)。
【
図26】FAPを標的とした4B9にもとづく「1+1」IgG−IFN−αイムノコンジュゲートの精製。A)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。B)サイズ排除クロマトグラフィー工程の溶出プロファイル。C)最終生成物の分析的キャピラリー電気泳動SDS(キャリパー)。D)TSKgel G3000 SW XLカラム上での最終生成物の分析的サイズ排除クロマトグラフィー(92.8%単量体含有量)。
【
図27】FAPを標的とした4B9「1+1」IgG−IL−2 qm及び28H1「1+1」IgG−IL−2 wtイムノコンジュゲートによるNK92細胞増殖の誘導。対応するIgG−IL−2コンストラクトに対して比較される。
【
図28】IgG−IL−2 qm及びIgG−IL−2 wtコンストラクトと比較した、4B9「1+1」IgG−IL−7及び4B9「1+1」IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートにより誘導されたPHA活性化(A)CD4及び(B)CD8T細胞の増殖。
【
図29】ロフェロンAと比較した、4B9「1+1」IgG−IFN−αによるダウディ細胞増殖の誘導。
【
図30】野生型(wt)又は四重変異体(qm)IL−2の何れかを含む、FAP標的化(A)及び非標的化(B)IgG−IL−2コンストラクトの単回静脈注射投与後のIL−2イムノコンジュゲートの血清濃度。
【
図31】静脈注射後24時間での、非結合型のFAPを標的とした8H1 IgG及び4B9 IgG、並びに非標的化DP47GS IgGと比較される、FAPを標的とした28H1 IgG−ILqmの組織分布。
【
図32】FACSにより測定される、28H1 IgG−IL−2 qm及び28H1 IgG−(IL−2 qm)
2イムノコンジュゲートのNK92細胞に対する結合。
【
図33】FAPを標的とした異なる28H1 IL−2イムノコンジュゲート又はプロロイキンによる4日間(A)、5日間(B)又は6日間(C)のインキュベーションによるNK細胞の増殖。
【
図34】FAPを標的とした異なる28H1 IL−2イムノコンジュゲート又はプロロイキンによる4日間(A)、5日間(B)又は6日間のインキュベーションによるCD4 T細胞の増殖。
【
図35】FAPを標的とした異なる28H1 IL−2イムノコンジュゲート又はプロロイキンによる4日間(A)、5日間(B)又は6日間のインキュベーションによるCD8 T細胞の増殖。
【
図36】異なるIL−2イムノコンジュゲートによる6日間のインキュベーション後における、予め活性化されたCD8(A)及びCD4(B)T細胞の増殖。
【
図37】異なるIL−2イムノコンジュゲートによる6日間のインキュベーション及び抗Fas抗体による一晩の処理後における、CD3
+ T細胞の活性化誘導細胞死。
【
図38】野生型(A)又は四重変異体IL−2(B9の何れかを含む、非標的化DP47GS IgG−IL−2コンストラクトの単回静脈注射投与後のIL−2イムノコンジュゲートの血清濃度。
【
図39】異なる抗原にDP47GSのIgGの結合。結合は、プレート上に捕獲された抗原によるELISAにもとづくアッセイで検出された。ほとんど全ての捕獲抗原に対して非特異的結合を示すヒトIgG1抗体が陽性対照として用いられ、空のサンプルは任意の抗体を含まなかった。
【
図40】FACS解析により測定された、FcドメインにLALA P329G変異を含む又は含まないDP47GS IgGの、新鮮な(A)、PHA−L活性型(B)及び再刺激型(C)ヒトPBMCのサブセットに対する結合。上の左のパネル:B細胞(A、Bにおける)又はCD4
+ T細胞(Cにおける);上の右のパネル:CD8
+ T細胞;下の左のパネル:NK細胞;下の右のパネル:CD14
+細胞(単球/好中球)。
【0029】
発明の詳細な記述
定義
本明細書において、用語は、以下に定義されていない限り、当技術分野で一般的に使用されるように使用される。
【0030】
本明細書で使用する用語「コンジュゲート」は、一つのエフェクター部分および更なるペプチド分子、特に免疫グロブリン分子を含む融合ポリペプチド分子を指す。
【0031】
本明細書で使用しているように、用語「イムノコンジュゲート」は、1つ以下のエフェクター部分が存在することを条件として、1つのエフェクター部分、少なくとも一つの抗原結合部分及びFcドメインを含む融合ポリペプチド分子を指す。特定の実施態様では、イムノコンジュゲートは、1つのエフェクター部分、2つの抗原結合部分、及びFcドメインを含む。本発明による特定のイムノコンジュゲートは、一以上のリンカー配列により連結される、エフェクター部分、2つの抗原結合部分、及びFcドメインから本質的になる。抗原結合部分およびエフェクター部分は、様々な相互作用によって、本明細書に記載されるように様々な立体配置でFcドメインに結合することができる。特定の実施態様において、2つの抗原結合部分とFcドメインは、完全な免疫グロブリン分子を形成するような立体配置でお互いに連結される。本明細書で言及されるイムノコンジュゲートは、融合タンパク質であり、すなわち、イムノコンジュゲートの成分はペプチド結合により、直接又はリンカーペプチドを介して相互に連結されている。
【0032】
本明細書で使用しているように、用語「抗原結合部分」は、抗原決定基に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。一実施態様では、抗原結合部分は、標的部位、例えば特定のタイプの腫瘍細胞又は抗原決定基をもつ腫瘍間質に付着される実体(例えばエフェクター部分又は第二抗原結合部分)を指向することが可能である。さらに本願明細書において定められるように、抗原結合部分には抗体およびその断片が含まれる。特定の抗原結合部分は、抗体の重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む抗体の抗原結合ドメインを含む。特定の実施態様において、抗原結合部分は、本明細書でさらに定義され、当技術分野で公知の抗体定常領域を含むことができる。有用な重鎖定常領域は、5のアイソタイプ:α、δ、ε、γ又はμを含む。有用な軽鎖定常領域は、2のアイソタイプ:κおよびλを含む。 有用な軽鎖定常領域は、2つのアイソタイプ:κ及びλの何れかを含む。
本明細書で使用しているように、用語「抗原決定基」は「抗原」および「エピトープ」と同義で、抗原結合部分が結合するポリペプチド高分子上の部位(例えばアミノ酸の隣接するストレッチ又は非連続アミノ酸の異なる領域から成り立つ立体配置的配位)を指し、抗原結合部分−抗原複合体を形成する。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面上で、ウイルス感染細胞の表面上で、他の疾患細胞の表面上で、血清中に遊離して、および/または細胞外マトリックス(ECM)中に見つけることができる。特定の実施態様において、抗原決定基は、ヒト抗原である。
【0033】
「特異的に結合する」とは、結合が抗原について選択的であり、不必要な又は非特異的相互作用と区別されうることを意味する。特定の抗原決定基に結合する抗原結合部分の能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)または当業者によく知られている他の技術、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore機器で解析される)(Liljeblad,et al.,Glyco.J.17:323-329(2000))および伝統的な結合アッセイ(Heeley,R.P.,Endocr.Res.28:217-229(2002))のいずれかによって測定することができる。一実施態様では、無関係のタンパク質への抗原結合部分の結合の程度は、例えばSPRにより測定される場合、抗原に対する抗原結合部分の結合の約10%未満である。ある実施態様において、抗原へ結合する抗原結合部分、又はその抗原結合部分を含むイムノコンジュゲートは、解離定数(K
D)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM,、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10−
8M未満、例えば、10−
8Mから10−
13M、例えば、10−
9Mから10−
13M)である。
【0034】
「親和性」とは、分子(例えば、受容体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、リガンド)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、受容体とリガンド)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に、解離の比率である解離定数(K
D)および会合速度定数(ぞれぞれkoffとkon)で表すことができる。従って、同等の親和性は、速度定数の比が同じままである限り、別の速度定数を含み得る。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で良く確立される方法によって測定することができる。親和性を測定するための特別な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0035】
「結合の減少」とは、例えばFc受容体又はCD25に対する結合の減少であり、例えばSPRにより測定される場合、それぞれの相互作用の親和性の減少を指す。明確にするために、この用語はまた、親和性がゼロへの低下(又は分析法の検出限界以下)、即ち、相互作用の完全な撤廃をも含む。逆に、「結合の増加」は、それぞれの相互作用に対する結合親和性の増加を指す。
【0036】
本明細書で使用しているように、抗原結合部分などに関して用語「第一」及び「第二」は、一より多くのタイプの部分がある場合に、便宜上区別するために用いる。これらの用語の使用は、特記しない限り、イムノコンジュゲートの特別な順番又は方向を指すためのものではない。
【0037】
本明細書で使用しているように、用語「エフェクター部分」は、例えば、シグナル伝達または他の細胞経路を介して細胞活性に影響を与えるポリペプチド、例えばタンパク質又は糖タンパク質を指す。従って、本発明のエフェクター部分は、エフェクター部分のための一つ以上の受容体をもつ細胞の応答を調整するために細胞膜の外側からシグナルを伝えるレセプター媒介性シグナル伝達と関係していてもよい。一実施態様では、エフェクター部分は、エフェクター部分のための一つ以上のレセプターをもつ細胞の細胞障害反応を誘発してもよい。他の実施態様では、エフェクター部分は、エフェクター部分のための一つ以上のレセプターをもつ細胞の増殖反応を誘発してもよい。他の実施態様では、エフェクター部分は、エフェクター部分のためのレセプターをもつ細胞の分化を誘発してもよい。他の実施態様では、エフェクター部分は、エフェクター部分のためのレセプターをもつ細胞の内在性細胞性タンパク質の発現(すなわち上方制御又はダウンレギュレート)を変えてもよい。エフェクター部分の非限定的な例には、サイトカイン、増殖因子、ホルモン類、酵素、基質、補助因子を含む。エフェクター部分は、イムノコンジュゲートを形成するために、様々な立体配置で抗原結合部分と関係していてもよい。
【0038】
本明細書で使用しているように、用語「サイトカイン」は、生物学的又は細胞性機能又はプロセス(例えば免疫、炎症および造血)を媒介および/または制御する分子を指す。本願明細書において使用する用語「サイトカイン」には、「リンホカイン」、「ケモカイン」、「モノカイン」及び「インターロイキン」が含まれる。有用なサイトカインの例には、GM−CSF、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、MIP−1α、MIP−1β、TGF−β、TNF−αおよびTNF−βが含まれるが、これに限定されるものではない。特定のサイトカインは、IL−2、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IFN−α及びIFN−γである。特定の実施態様において、サイトカインは、ヒトサイトカインである。本明細書で使用される用語「サイトカイン」はまた、Sauve et al., Proc Natl Acad Sci USA 88, 4636-40 (1991); Hu et al., Blood 101, 4853-4861 (2003) 及び米国特許出願公開第2003/0124678号; Shanafelt et al., Nature Biotechnol 18, 1197-1202 (2000); Heaton et al., Cancer Res 53, 2597-602 (1993) 及び米国特許第5,229,109号;米国特許出願公開第2007/0036752号;国際公開第2008/0034473号;国際公開第2009/061853号;PCT特許出願PCT/EP2012/051991に記述される、IL−2変異体などの野生型サイトカインに対応するアミノ酸配列における一以上のアミノ酸変異を含むサイトカイン変異体を含む。更に、サイトカイン変異体、例えばIL−15変異体が本明細書に記載されている。特定の実施態様において、サイトカインは、グリコシル化を排除するために変異されている。
【0039】
本明細書で使用しているように、用語「単鎖」は、ペプチド結合によって線形に結合されるアミノ酸モノマーを含んでなる分子を指す。一実施態様では、エフェクター部分は、単鎖エフェクター部分である。単鎖エフェクター部分の非限定的な例には、サイトカイン、増殖因子、ホルモン類、酵素、基質、補助因子が含まれる。エフェクター部分がサイトカインであり、対象とするサイトカインが天然で多量体として通常見いだされるときに、多量体のサイトカインの各サブユニットはエフェクター部分の単鎖によって逐次にコードされる。したがって、有用な単鎖エフェクタ部分の非限定的な例には、GM−CSF、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、MIP−1α、MIP−1β、TGF−β、TNF−αおよびTNF−βが含まれる。
【0040】
本明細書で使用しているように、用語「コントロールエフェクター部分」は、コンジュゲートしていないエフェクター部分を指す。例えば、本明細書に記載されるIL−2イムノコンジュゲートをコントロールエフェクター部分と比較した場合、コントロールエフェクター部分はフリーな、コンジュゲートしていないIL−2である。同様に、例えば、IL−12イムノコンジュゲートをコントロールエフェクター部分と比較した場合、コントロールエフェクター部分はフリーな、コンジュゲートしていないIL−12(例えば、p40およびp35サブユニットがジスルフィド結合(一又は複数)だけを共有するヘテロ二量体タンパク質として存在する)である。
【0041】
本明細書で使用しているように、用語「エフェクター部分受容体」は、エフェクター部分に特異的に結合が可能なポリペプチド分子を指す。例えば、IL−2がエフェクター部分であるとき、IL−2分子(例えばIL−2を含むイムノコンジュゲート)と結合するエフェクター部分受容体はIL−2受容体である。同様に、例えば、IL−12がイムノコンジュゲートのエフェクター部分であるとき、エフェクター部分受容体はIL−12受容体である。エフェクター部分が特異的に複数のレセプターと結合するとき、エフェクター部分と特異的に結合するすべての受容体はそのエフェクター部分のための「エフェクター部分受容体」である。
【0042】
用語「免疫グロブリン分子」は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から成る約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、続いて重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)がある。同様に、N末端からC末端に、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、続いて軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインがある。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG),又はμ(IgM)と呼ばれる5つのタイプの1つに割り当てることができ、そのうち幾つかは更にγ
1(IgG
1)、γ
2(IgG
2)、γ
3(IgG
3)、γ
4(IgG
4)、α
1(IgA
1)及びα
2(IgA
2)などのサブタイプに分割され得る。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプのいずれかに割り当てることができる。免疫グロブリンは、免疫グロブリンのヒンジ領域を介して連結された2つのFab分子およびFcドメインから本質的になる。
用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。
【0043】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原を結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SHは、F(ab’)
2、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えばscFv)、及び単一ドメイン抗体を含む。所定の抗体断片の総説については、Hudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003)を参照。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,第113巻, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), 頁269-315(1994)を参照;また、国際公開第93/16185号;及び米国特許第5,571,894号及び第5,587,458号も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、かつインビボ半減期を増加させたFab及びF(ab’)
2断片の議論については、米国特許第5869046号を参照のこと。ダイアボディは2価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第1993/01161号; Hudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003); 及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)を参照。トリアボディ及びテトラボディもまた Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部、又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体断片である。ある実施態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA; 例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照)。抗体断片は様々な技術で作成することができ、限定されないが、本明細書に記載するように、インタクトな抗体のタンパク質分解、並びに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による生産を含む。
【0044】
「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部又は全体に相補的であり特異的に結合する領域を含む抗体の一部を指す。抗原結合ドメインは、例えば、一以上の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)により与えられうる。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0045】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然型抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)を含む各ドメインを持ち、一般的に似たような構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., 91頁(2007)を参照)。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。
【0046】
本明細書で使用される用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列が超可変であるか、及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの各領域を指す。一般的に、天然型4鎖抗体は、VH(H1、H2、H3)に3つ、及びVL(L1、L2、L3)に3つの6つのHVRを含む。HVRは一般的に、超可変ループ由来及び/又は「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は、最高の配列可変性であり、及び/又は抗原認識に関与している。VHのCDR1の例外を除いて、CDRは一般的に超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。超可変領域(HVR)は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれ、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域の部分への参照において本明細書で互換的に使用される。この特定の領域は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest" (1983)及びChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)に記述されており、そこで本定義は、相互に対して比較するときにアミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。にも関わらず、抗体又はその変異体のCDRを参照するために、何れかの定義の適用は、本明細書において定義され使用される用語の範囲内であることを意図されている。上記の引用文献の各々によって定義されるように、CDRを包含する適切なアミノ酸残基が、比較として以下の表1に記載されている。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列や大きさによって異なる。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを含むかを日常的に決定することができる。
【0047】
【0048】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能である可変領域配列の番号付けシステムを定義した。当業者は、配列それ自体を超えた任意の実験データに頼ることなく、任意の可変領域配列に対してこのKabatの番号付けシステムを一義的に割り当てることができる。本明細書で用いる場合、「Kabat番号付け」とは、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest" (1983)で明記されている番号付けシステムを指す。特記されない限り、抗体可変領域内の特定のアミノ酸残基の位置の番号付けへの参照は、Kabat番号付けシステムに従う。
【0049】
配列表のポリペプチド配列(即ち、配列番号23、25、27、29、31など)はKabatの番号付けシステムに従って番号付けされてはいない。しかし、Kabatの番号付けを配列表の配列の番号に変換することは当業者の通常の技術の範囲内である。
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に4つのFRのドメインで構成される:FR1、FR2、FR3、及びFR4。従って、HVR及びFR配列は一般にVH(又はVL)の以下の配列に現れる:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4。
【0050】
抗体又はイムノコンジュゲートの「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらの幾つかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2に、IgG
3、IgG
4、IGA
1、及びIgA
2に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0051】
用語「Fcドメイン」又は「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。その用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界は、若干異なる場合があるものの、ヒトIgG重鎖のFc領域は通常、Cys226から又はPro230から重鎖のカルボキシル末端へ伸展するように定義されている。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しているか、又は存在していない場合がある。本明細書に明記されていない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。本明細書で使用されるFcドメインの「サブユニット」は、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドの一つ、即ち、安定に自己会合可能な免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを指す。例えば、IgGのFcドメインのサブユニットは、IgGのHC2及びIgGのCH3定常ドメインを含む。
【0052】
「ヘテロ二量体化促進修飾」は、ホモ二量体を形成する同一なポリペプチドとポリペプチドとの会合を低減するか防止する、ペプチド骨格の操作又はポリペプチドの翻訳後修飾である。ヘテロ二量体化促進修飾は、本明細書で使用される場合、二量体を形成することが所望される2つのポリペプチドの各々に為される別々の修飾を特に含み、その修飾は2つのポリペプチドの会合を促進するために互いに相補的である。例えば、ヘテロ二量体化促進修飾は、その会合をそれぞれ立体的又は静電気的に好ましくするために、二量体を形成することが所望されるポリペプチドの一方又は双方の構造又は電荷を改変しうる。ヘテロ二量体化は、サブユニットの各々に融合された更なるイムノコンジュゲート要素(例えば抗原結合部分、エフェクター部分)が同じではない、Fcドメインの2つのサブユニットなど、2つの非同一ポリペプチド間で生じる。本発明によるイムノコンジュゲートでは、ヘテロ二量体化促進修飾はFcドメインにある。幾つかの実施態様では、ヘテロ二量体化促進修飾は、アミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。特定の実施態様では、ヘテロ二量体化促進修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの各々における別々のアミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。
【0053】
「エフェクター機能」なる用語は、抗体に言及して使用される場合、抗体のFc領域に起因するそれらの生物学的活性を指し、抗体アイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例は:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存細胞媒介細胞傷害(ADCC)、抗体依存細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化を含む。
本明細書で使用される場合、「操作(engineer、engineered、engineering)」なる用語は、天然に生じるか又は組換えのポリペプチド又はその断片のペプチド骨格の何れかの修飾又は翻訳後修飾を含むと考えられる。操作は、アミノ酸配列の、糖鎖付加パターンの、又は個々のアミノ酸の側鎖基の修飾、並びにこれらのアプローチの組合せを含む。特に接頭語「糖」を持つ「操作」、並びに用語「グリコシル化操作」には、細胞中で発現される糖タンパク質のグリコシル化の改変を達成するためのオリゴ糖合成経路の遺伝子操作を含む、細胞のグリコシル化機構の代謝的操作を含む。さらに、グリコシル化操作は、グリコシル化における変異及び細胞環境の影響を含む。一実施態様において、グリコシル化操作は、糖転移酵素活性の変化である。特定の実施態様では、操作が変更されたグルコサミニル転移酵素活性及び/又はフコース転移酵素活性をもたらす。グリコシル化操作は、「GnTIII活性が増加した宿主細胞」、「ManII活性が増加した宿主細胞」、又は「α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ活性が低下した宿主細胞」を得るために用いることができる。
【0054】
「アミノ酸変異」なる用語は、本明細書で使用される場合、アミノ酸置換、欠失、挿入、及び修飾を包含することを意味する。最終コンストラクトが所望の特徴、例えばFc受容体への結合の減少又はCD25への結合の減少を有することを条件として、置換、欠失、挿入、及び修飾の何れかの組合せが最終コンストラクトに到達するために成されても良い。アミノ酸配列欠失及び挿入は、アミノ酸のアミノ−及び/又はカルボキシル−末端欠失及び挿入を含む。特定のアミノ酸変異はアミノ酸置換である。例えば、Fc受容体又はIL−2などのサイトカインの結合特性を変更する目的のために、非保存的アミノ酸置換、即ち一のアミノ酸を、異なる構造的及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸と置換することが特に所望される。アミノ酸置換は、20の標準的アミノ酸の非天然に生じるアミノ酸又は天然に生じるアミノ酸誘導体による置換を含む(例えば4−ヒドロキシプロリン、3−メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5−ヒドロキシリジン)。アミノ酸変異は、当分野でよく知られた遺伝学的又は化学的方法を使用して生成されうる。遺伝学的方法は、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成等を含みうる。化学的修飾など、遺伝子工学以外の方法によるアミノ酸の側鎖基の改変方法がまた有用でありうることが意図される。本明細書において同一のアミノ酸変異を示すために様々な名称が使用されてもよい。例えば、Fcドメインの位置329のプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G
329、P329G、又はPro329Glyとして示すことができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」はアミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって線形に結合される単量体(アミノ酸)から成る分子を指す。「ポリペプチド」なる用語は、2以上のアミノ酸の何れかの鎖を指し、特定長の産物を指すものではない。このように、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2以上アミノ酸の鎖を指すために使用される何れかの他の用語が、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」なる用語はこれらの何れかの用語の代わりに又は互換的に使用されうる。「ポリペプチド」なる用語は、限定するものではないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、知られている保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、又は非天然に生じるアミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾の産物を指す。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来するか又は組換え技術によって生産され得るが、必ずしも指定の核酸配列から翻訳される必要はない。それは化学合成を含む何れかの方法において生成されうる。本発明のポリペプチドは、約3以上、5以上、10以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、200以上、500以上、1,000以上、又は2,000以上のアミノ酸のサイズでありうる。ポリペプチドは定められた三次元構造を有しうるが、それらは必ずしもこのような構造を有する必要はない。定められた三次元構造を有するポリペプチドはフォールドしたと言及され、定められた三次元構造を持たないが多数の異なるコンホメーションをとりうるポリペプチドはアンフォールドとして言及される。
【0056】
「単離された」ポリペプチド又は変異体、又はその誘導体は、その天然環境中にはないポリペプチドを意図する。特定レベルの精製は必要とされない。例えば、単離されたポリペプチドは、その天然又は自然環境から除去することができる。何れかの好適な技術によって分離、分画化、又は部分的又は実質的に精製される天然又は組換えポリペプチドのように、宿主細胞において発現された組換え生産されたポリペプチド及びタンパク質は、本発明の目的のために単離されることが考えられる。
【0057】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインするための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用することによって生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁、ワシントンD.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN−2もまた、ジェネンテック社、サウスサンフランシスコ、カリフォルニアから公的に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIXのV4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定され変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN−2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(或いは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して所定の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN−2により、AとBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一と一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての%アミノ酸配列同一性値が、ALIGN−2コンピュータプログラムを使用し、直前の段落で説明したように、得られる。
【0058】
「ポリヌクレオチド」なる用語は、単離された核酸分子又はコンストラクト、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)、ウィルス由来RNA、又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、通常のホスホジエステル結合又は非一般的な結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含みうる。「核酸分子」なる用語は、ポリヌクレオチドに存在する何れかの一又は複数の核酸セグメント、例えばDNA又はRNA断片を指す。
【0059】
「単離された」核酸分子又はポリヌクレオチドとは、それの天然環境から採られた核酸分子、DNA又はRNAを意図する。例えば、ベクターに含まれる治療用ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されていると考えられる。単離されたポリヌクレオチドの更なる例は、異種性宿主細胞に維持された組換えポリヌクレオチド又は溶液中における(部分的又は実質的に)精製されたポリヌクレオチドを含む。単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド分子を通常含有する細胞に含有されるポリヌクレオチド分子を含むが、ポリヌクレオチド分子は染色体外に、又はそれの染色体上の位置と異なる染色体上の位置に存在する。単離されたRNA分子は、本発明のインビボ又はインビトロRNA転写物、並びにプラス及びマイナス鎖形態、及び二本鎖形態を含む。本発明による単離されたポリヌクレオチド又は核酸は、合成的に生産されたこのような分子を更に含む。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーター等の調節要素であるか又はそれを含みうる。
【0060】
本発明の参照ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「同一」であるヌクレオチド配列を有する核酸又はポリヌクレオチドにより、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列のそれぞれ100ヌクレオチドにつき最大で5つの点変異を含みうることを除けば、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意図している。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中のヌクレオチドの5%までが欠失されたり、又は別のヌクレオチド置換され得、または参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%までの多数のヌクレオチドが参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの変化は参照ヌクレオチド配列の5’又は3’末端位置又はそれらの位置の間のどこでも起こり得、参照配列中の残基中に個別に散在するか又は参照配列内における一以上の隣接グループ中に散在している。実際問題として、任意の特定のポリヌクレオチド配列が、本発明のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるかどうかは、従来法により、上記のものような既知のコンピュータプログラムを用いて決定することができる。
「発現カセット」なる用語は、標的細胞において特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸要素を伴う、組換え又は合成によって生成されるポリヌクレオチドを指す。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、色素体DNA、ウイルス、又は核酸断片に組み込まれうる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、他の配列の中でもとりわけ、転写される核酸配列及びプロモーターを含む。ある実施態様では、本発明の発現カセットは、本発明のイムノコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む。
【0061】
「ベクター」又は「発現ベクター」なる用語は、「発現コンストラクト」と同義であり、標的細胞において作動的に関連した特定の遺伝子の発現を導入する及び指向するために使用されるDNA分子を指す。
【0062】
この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、並びにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターは、多量の安定なmRNAの転写を可能にする。一旦発現ベクターが標的細胞内に入ると、遺伝子にコードされたリボ核酸分子又はタンパク質が、細胞の転写及び/又は翻訳機構によって生産される。一実施態様では、本発明の発現ベクターは、本発明のイムノコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む発現カセットを含む。
【0063】
「人工的」なる用語は、合成の又は非宿主細胞由来の組成物、例えば化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを指す。
【0064】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養」は互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含める。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、継代の数に関係なく、それに由来する一次形質転換細胞及び子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸含量が完全に同一ではないかもしれないが、突然変異が含まれる場合がある。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異型子孫が本明細書において含まれる。宿主細胞は、本発明で使用されるイムノコンジュゲートを産生するために使用することができる任意のタイプの細胞システムである。一実施態様において、宿主細胞は、修飾されたオリゴ糖をそのFc領域に持つイムノコンジュゲートの産生を可能にするように操作されている。特定の実施態様において、宿主細胞は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する一以上のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作されている。特定の実施態様において、宿主細胞は、α−マンノシダーゼII(ManII)活性を有する一以上のポリペプチドの増加したレベルを発現するように更に操作されている。宿主細胞は、培養細胞、例えば、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOの骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞などの哺乳類培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、わずかな例を挙げると、しかしまた、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織の中に含まれる細胞も含む。
【0065】
本明細書において使用される場合、「GnTIII活性を有するポリペプチド」とは、N−結合型オリゴ糖のトリマンノシルコアのβ結合型マンノシドへのβ1−4結合でのN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の付加を触媒できるポリペプチドを指す。これは、用量依存性を伴うか又は伴わない特定の生物学的アッセイで測定した場合に、生化学と分子生物学の国際連合命名委員会(NC−IUBMB)に従って、β−1,4−マンノシル−糖タンパク質の4−β−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.144)としても知られているβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIの活性に、必ずしも同一ではないが、類似した酵素活性を示す融合ポリペプチドを含む。用量依存性が存在する場合、それは、GnTIIIのものと同一である必要はなく、むしろGnTIIIに比べた場合、特定の活性における用量依存性に対して実質的に類似している(すなわち、候補のポリペプチドは、GnTIIIに比べて、より大きい活性を示すか又は最高で約25倍以下の活性、好ましくは最高で約10倍以下の活性、及びより最も好ましくは最高で約3倍以下の活性を示し得る)。特定の実施態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、異種性ゴルジ常駐性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメイン及びGnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドである。特に、ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼII又はGnTIの局在化ドメインであり、最も具体的にはマンノシダーゼIIの局在化ドメインである。あるいは、ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、GnTIIの局在化ドメイン、及びα1,6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群から選択される。このような融合ポリペプチドを生成し、増加したエフェクター機能を有する抗体を産生するためにそれらを使用するための方法は、国際公開第2004/065540号、米国仮特許出願第60/495,142号及び米国特許出願公開第2004/0241817号に開示され、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0066】
本明細書において用いられる場合、用語「ゴルジ局在化ドメイン」は、ゴルジ複合体内の位置にポリペプチドを固定するためのに関与するゴルジ常在性ポリペプチドのアミノ酸配列を指す。一般的に、局在化ドメインは酵素のアミノ末端「尾部」を含む。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「ManII活性を有するポリペプチド」は、N結合型オリゴ糖の分岐したGlcNAcMan
5GlcNAc
2マンノース中間体における末端1,3−及び1,6−結合α−D−マンノース残基の加水分解を触媒することができるポリペプチドを指す。これは、生化学と分子生物学の国際連合の命名委員会(NC−IUBMB)による、マンノシルオリゴ糖1,3−1,6−α−マンノシダーゼII(EC3.2.1.114)としても知られる、ゴルジα−マンノシダーゼIIの活性に必ずしも同一ではないが類似の酵素活性を示すポリペプチドを含む。
【0068】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域による結合後に、エフェクター機能を遂行させるために受容体−担持細胞を刺激するシグナル伝達イベントを誘発させるFc受容体である。活性化Fc受容体はFcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、及びFcαRI(CD89)を含む。
【0069】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクター細胞による抗体被覆標的細胞の溶解をもたらす免疫機構である。標的細胞は、Fc領域を含む抗体、イムノコンジュゲート又はその断片が、N末端にあるタンパク質部分を一般に介してFc領域に特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される場合、用語、「ADCCの増加」は、標的細胞を取り囲む培地中で、上に定義されたADCCのメカニズムによって、所定の時間内に、イムノコンジュゲートの所定の濃度で溶解される標的細胞の数の増加、及び/又はADCCのメカニズムによって、所定の時間内に、所定の数の標的細胞の溶解を達成するために必要とされる、標的細胞を取り囲む培地中のイムノコンジュゲートの濃度の減少のいずれかとして定義される。ADCCの増加は、同じ標準的な産生、精製、製剤、及び保存の方法(当業者に公知である)を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生されるが、操作されていない、同じイムノコンジュゲートによって媒介されるADCCに関連している。例えば、本明細書に記載の方法によりグリコシル化のパターンを改変されるように(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、GnTIII、または他のグリコシルトランスフェラーゼを発現させるために)操作された宿主細胞により産生されるイムノコンジュゲートにより媒介されるADCCの増加は、同じタイプの非操作型宿主細胞により産生される同じイムノコンジュゲートにより媒介されるADCCに関連する。
【0070】
「抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有するイムノコンジュゲート」によって、当業者に公知である任意の適切な方法によって決定されるADCCの増加を有するイムノコンジュゲートが意味される。1つの受容されるインビトロADCCアッセイは以下の通りである。
1)このアッセイは、イムノコンジュゲートの抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2)このアッセイは、エフェクター細胞として、ランダムに選択された健常ドナーの血液から単離されたヒト末梢血単球細胞(PBMC)を使用する;
3)このアッセイは以下のプロトコールに従って使用される。
i)PBMCを、標準的な密度遠心分離手順を使用して単離し、RPMI細胞培養培地中、5×10
6細胞/mlで懸濁する;
ii)標的細胞を、標準的な培養方法によって増殖させ、90%よりも高い生存度を有する指数増殖期から収集し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの
51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、そして10
5細胞/mlの密度で細胞培養培地中に再懸濁する;
iii)100マイクロリットルの上記の最終的な標的細胞懸濁物を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv)イムノコンジュゲートを、細胞培養培地中で4000ng/mlから0.04ng/mlまで段階希釈し、得られるイムノコンジュゲート溶液の50マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に加えて、上記の全体の濃度範囲を網羅する種々なイムノコンジュゲートの濃度を3通りで試験する;
v)最大放出(MR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルは、イムノコンジュゲート溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルの2%(V/V)非イオン性界面活性剤(Nonidet,Sigma,St.Louis)の水溶液を受容する;
vi)自発性放出(SR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルに、イムノコンジュゲート溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルのRPMI細胞培養培地を受容する;
vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを、50×gで1分間遠心分離し、そして1時間4℃でインキュベートする;
viii)50マイクロリットルのPBMC懸濁液(上記の要点i)を各ウェルに加えて25:1のエフェクター:標的細胞比を生じ、そしてプレートをインキュベーター中、5%CO
2大気、37℃下に4時間配置する;
ix)各ウェルからの無細胞上清を収集し、実験的に放出された放射能(ER)をガンマカウンターを使用して定量する;
x)特異的溶解のパーセンテージを、計算式(ER−MR)/(MR−SR)×100に従って各イムノコンジュゲート濃度について計算し、ここで、ERはイムノコンジュゲート濃度について定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、MRはMRコントロール(上記の要点vを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、そしてSRはSRコントロール(上記の要点viを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)である;
4)「ADCCの増加」は、上記の試験されたイムノコンジュゲート濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの増加、及び/又は上記の試験されたイムノコンジュゲート濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの半分を達成するために必要とされるイムノコンジュゲートの濃度の減少のいずれかとして定義される。ADCCの増加は、同じ標準的な産生、精製、製剤、及び保存の方法(当業者に公知である)を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生されるが、操作されていない、同じイムノコンジュゲートによって媒介され、上のアッセイにより測定される、ADCCに関連している。
【0071】
「有効な量」の薬剤とは、投与される細胞又は組織において生理学的変化をもたらすために必要な量を指す。
【0072】
薬剤、例えば、薬学的組成物の「治療的有効量」とは、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。治療的に有効な量の薬剤は例えば、疾患の有害作用を除去、低下、遅延、最小化又は防止させる。
【0073】
「個体」又は「被検体」は、哺乳動物である。哺乳動物は、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む。特に、個体又は被検体はヒトである。
【0074】
用語「薬学的組成物」は、その中に有効で含有される活性成分の生物学的活性を許容するような形態であって、製剤を投与する被検体にとって許容できない毒性である他の成分を含まない調製物を指す。
【0075】
「薬学的に許容される担体」は、被検体に非毒性であり、有効成分以外の薬学的組成物中の成分を指す。薬学的に許容される担体は、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤を含む。
【0076】
本明細書で用いられるように、「治療」(及び「治療する(treat)」または「治療している(treating)」など文法上の変形)は、治療されている個体における疾患の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理の過程においてのいずれかで実行できる。治療の望ましい効果は、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含む。幾つかの実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートは、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0077】
用語「パッケージ挿入物」は、効能、用法、用量、投与、併用療法、禁忌についての情報、及び/又はそのような治療用製品の使用に関する警告を含む、治療用製品の商用パッケージに慣習的に含まれている説明書を指すために使用される。
【0078】
実施態様の詳細な説明
第一の態様において、本発明は、第一の抗原結合部分、2つのサブユニットからなるFcドメイン、及びエフェクター部分を含み、1以下のエフェクター部分が存在するイムノコンジュゲートを提供する。更なるエフェクター部分の欠如は、それぞれのエフェクター部分の受容体が提示される部位へのイムノコンジュゲートの標的化を減らし、それによって抗原結合部分により認識されるイムノコンジュゲートの実際の標的抗原が提示される部位への標的化及び蓄積を改善する場合がある。また、各エフェクター部分の受容体に対する親和性効果の欠如は、イムノコンジュゲートの静脈内投与時の末梢血中のエフェクター部分の受容体陽性細胞の活性化を低減することができる。さらに、単一のエフェクター部分のみを含むイムノコンジュゲートの血清半減期は、二つ以上のエフェクター部分を含むイムノコンジュゲートに比べて長くなると思われる。
【0079】
イムノコンジュゲートのフォーマット
イムノコンジュゲートの構成要素は、様々な立体配置で相互に融合することができる。例示的な立体配置を
図2に示す。一実施態様において、エフェクター部分はFcドメインの2つのサブユニットの一方のアミノ末端又はカルボキシ末端のアミノ酸に融合している。一実施態様において、エフェクター部分はFcドメインの2つのサブユニットの一方のカルボキシ末端のアミノ酸に融合している。エフェクター部分は、直接又は一つ以上のアミノ酸、典型的には約2〜20個のアミノ酸を含むリンカーペプチドを介して、Fcドメインに融合され得る。リンカーペプチドは、当技術分野で知られているか、または本明細書に記載されている。適切な、非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、(G
4S)nは、(SG
4)n又はG
4(SG
4)nはリンカーペプチドが挙げられる。「n」は一般には1と10の間、典型的には2から4の間の数である。代わりに、エフェクター部分がFcドメインのサブユニットのN末端に連結される場合、それは、免疫グロブリンのヒンジ領域またはその一部(追加のリンカーペプチドの有無にかかわらず)を介して連結されてもよい。
【0080】
同様に、第一の抗原結合部分は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方のアミノ末端又はカルボキシ末端のアミノ酸に融合することができる。一実施態様において、抗原結合部分はFcドメインの2つのサブユニットの一方のアミノ末端のアミノ酸に融合している。第一の抗原結合部分は、Fcドメインに直接またはリンカーペプチドを介して融合させることができる。特定の実施態様において、第一の抗原結合部分は、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインに融合される。具体的な実施形態において、免疫グロブリンのヒンジ領域は、ヒトIgG
1ヒンジ領域である。
【0081】
一実施態様において、第一の抗原結合部分は、抗体の重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む抗体の抗原結合ドメインを含む。特定の実施態様において、第一の抗原結合部分は、Fab分子である。一実施態様において、Fab部分はFcドメインの2つのサブユニットの片方のアミノ末端のアミノ酸に対して、その重鎖又は軽鎖のカルボキシ末端で融合している。特定の実施態様において、Fab部分はFcドメインの2つのサブユニットの片方のアミノ末端のアミノ酸に対して、その重鎖のカルボキシ末端で融合している。更に特定の実施態様において、Fab部分は、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインに融合される。具体的な実施形態において、免疫グロブリンのヒンジ領域は、ヒトIgG
1ヒンジ領域である。
【0082】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、本質的には、抗原結合部分、2つのサブユニットからなるFcドメイン、エフェクター部分、及び必要に応じて1つ又は複数のリンカーペプチドからなり、ここで、前記抗原結合ドメインがFab分子であり、そして、その重鎖のカルボキシ末端でFcドメインの2つのサブユニットの一方のアミノ末端アミノ酸に融合され、前記エフェクター部分が、(i)Fcドメインの2つのサブユニットのうちの他方のアミノ末端アミノ酸、又は(ii)Fcドメインの2つのサブユニットの一方のカルボキシ末端アミノ酸の何れかに対して融合される。後者の場合、エフェクター部分及び第一の抗原結合部分は、両方ともFcドメインの同じサブユニットに融合してもよいし、各々がFcドメインの2つのサブユニットの異なる1つに融合させてもよい。
単一抗原結合部位を持つイムノコンジュゲートフォーマット(例えば
図2B及び2Cに示される)は、特に、高親和性の抗原結合部分の結合後に標的抗原の内在化が予想される場合、有用である。そのような場合、イムノコンジュゲートごとに一以上の抗原結合部分の存在は、内在化を高めることができ、それによって標的抗原の使用可能性が低減する。
しかし、他の多くのケースにおいては、エフェクター部分受容体と対比して標的抗原への標的化、及びイムノコンジュゲートの医薬用量の範囲を最適化するために、複数の抗原結合部分及び単一のエフェクター部分を含むイムノコンジュゲートを有することが有利であろう。
【0083】
従って、特定の実施態様では、本発明のイムノコンジュゲートは、第一および第二の抗原結合部分を含む。一実施態様において、前記第一及び第二の抗原結合部分はFcドメインの2つのサブユニットの一方のアミノ末端のアミノ酸に融合している。第一及び第二の抗原結合部分は、Fcドメインに直接またはリンカーペプチドを介して融合させることができる。特定の実施態様において、前記第一及び第二の抗原結合部分は、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインのサブユニットに融合される。具体的な実施形態において、免疫グロブリンのヒンジ領域は、ヒトIgG
1ヒンジ領域である。
【0084】
一実施態様において、前記第一及び第二の抗原結合部分は、抗体の重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む抗体の抗原結合ドメインを含む。特定の実施態様において、前記第一及び第二の抗原結合部分は、Fab分子である。一実施態様において、前記Fab分子の各々は、その重鎖又は軽鎖のカルボキシ末端でFcドメインの2つのサブユニットの片方のアミノ末端のアミノ酸に対して融合している。特定の実施態様において、前記Fab分子の各々は、その重鎖のカルボキシ末端でFcドメインの2つのサブユニットの片方のアミノ末端のアミノ酸に対して融合している。特定の実施態様において、前記Fab分子の各々は、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインのサブユニットに融合される。具体的な実施形態において、免疫グロブリンのヒンジ領域は、ヒトIgG
1ヒンジ領域である。
【0085】
一実施態様において、第一及び第二の抗原結合部分及びFcドメインは免疫グロブリン分子の一部である。特定の実施態様において、免疫グロブリン分子は、IgGクラスの免疫グロブリンである。さらにより特定の実施態様において、免疫グロブリンは、IgG
1サブクラスの免疫グロブリンである。別の特定の実施態様において、免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。別の実施態様において、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。一実施態様において、エフェクター部分は、免疫グロブリン重鎖の一方のカルボキシ末端のアミノ酸に融合している。エフェクター部分は、免疫グロブリン重鎖に直接またはリンカーペプチドを介して融合させることができる。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、本質的に、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン重鎖の一方のカルボキシ末端アミノ酸に融合したエフェクター部分、および任意で1つまたは複数のリンカーペプチドからなる。
【0086】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド、及びFcドメインサブユニットがエフェクター部分ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドを含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、第一のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド、及び第二のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これは次いでエフェクター部分ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドを含む。更なる実施態様において、イムノコンジュゲートは、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド、及びエフェクター部分ポリペプチドがFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドを含む。幾つかの実施態様においてイムノコンジュゲートは、更にFab軽鎖ポリペプチドを含む。特定の実施態様において、ポリペプチドは、共有結合、例えばジスルフィド結合により連結されている。
【0087】
上記実施態様の何れかによれば、イムノコンジュゲートの構成要素(例えば、エフェクター部分、抗原結合部分、Fcドメイン)は、直接または様々なリンカー、特に、一以上のアミノ酸を含み、典型的には、本明細書に記載されているか、又は当技術分野で知られている約2〜20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーによって連結されていてもよい。適切な非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、(G
4S)n、(SG
4)n又はG
4(SG
4)nリンカーペプチドを含み、nは一般に、1と10の間、典型的には2と4の数である。
【0088】
Fcドメイン
イムノコンジュゲートのFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含むポリペプチド鎖の対からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは、二量体であり、その各サブユニットは、CH
2及びCH
3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定な会合が可能である。一実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートは、一又は複数のFcドメインを含む。
【0089】
本発明に係る一実施態様において、イムノコンジュゲートのFcドメインは、IgGのFcドメインである。特定の実施態様において、FcドメインはIgG
1のFcドメインである。別の実施態様において、FcドメインはIgG
4のFcドメインである。更なる特定の実施態様において、Fcドメインはヒトである。ヒトIgG
1のFcドメインの例示的な配列は配列番号1に与えられる。
【0090】
Fcドメインは、Fcドメインを欠くイムノコンジュゲートフォーマットと比較して大幅に延長された血清半減期を付与する。特に、イムノコンジュゲートがかなり弱い活性の(しかし、例えば毒性が減少した)エフェクター部分を含む場合には、長い半減期はインビボで最適な効果を達成するために不可欠であるかもしれない。また、更に後述するように、Fcドメインはエフェクター機能を媒介することができる。
【0091】
ヘテロ二量体化を促進するFcドメインの修飾
本発明に係るイムノコンジュゲートは、Fcドメインの2つのサブユニットの片方に融合した単一エフェクター部分を一つだけ含み、従ってそれらは2つの非同一ポリペプチド鎖を含む。これらのポリペプチドの組換え共発現及び続く二量体化は、2つのポリペプチドの幾つかの可能な組み合わせをもたらし、それらのうちの2つの非同一ポリペプチドのヘテロダイマーのみが本発明に従って有用である。組換え産生におけるイムノコンジュゲートの収率および純度を向上させるために、2つの同一ポリペプチド(すなわち、エフェクター部分を含む2つのポリペプチド、又はエフェクター部分を欠く2つのポリペプチド)のホモ二量体の形成を妨げ、および/またはエフェクター部分を含むポリペプチドとエフェクター部分を欠くポリペプチドとのヘテロ二量体の形成を促進する修飾をイムノコンジュゲートのFcドメインに導入することは有利であり得る。
【0092】
したがって、本発明の特定の実施態様において、コンジュゲートのFcドメインは、非同一ポリペプチド鎖のヘテロ二量体化を促進する修飾を含む。ヒトIgGのFcドメインの2つのポリペプチド鎖間の最も広範なタンパク質−タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメインにある。従って、一実施態様では、前記修飾は、FcドメインのCH3ドメインにある。
【0093】
特定の実施態様において、前記修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの一つにおけるノブ修飾及びFcドメインの2つのサブユニットの他方におけるホール修飾を含む、ノブ・イントゥ・ホール(knob into hole)修飾である。
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば米国特許第5,731,168号;米国特許第7,695,936号; Ridgway et al., Prot Eng 9, 617-621 (1996)及びCarter, J Immunol Meth 248, 7-15 (2001)に記載される。一般に、本方法は、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げるように、突起が空洞内に配置することができるように、第一のポリペプチドの界面での突起(「ノブ」)及び第二ポリペプチドの界面における対応する空洞(「穴」)を導入することを含む。突起は、第一のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置換することによって構築される。突起と同一又はより小さい大きさの相補的な空洞が、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置換することによって第二ポリペプチドの界面に作成される。突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を改変することにより、例えば部位特異的突然変異誘発により、またはペプチド合成により作製することができる。特定の実施態様において、ノブ修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの片方でアミノ酸置換T366Wを含み、そしてホール修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの他方でアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む。更なる特定の実施態様において、ノブ修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換S354Cを更に含み、ホール修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換Y349Cを更に含む。これらの2つのシステイン残基の導入は、Fc領域の2つのサブユニット間のジスルフィド架橋の形成をもたらし、更に二量体を安定化させる (Carter, J Immunol Methods 248, 7-15 (2001))。
【0094】
代わりの実施態様において、2つの非同一ポリペプチド鎖のヘテロ二量体化を促進する修飾は、PCT出願公開WO2009/089004に記載されるように、静電的ステアリング効果を媒介する修飾を含む。一般に、この方法は、ホモ二量体形成は静電的に不利になるが、ヘテロ二量体は静電的に有利になるように、2つのポリペプチド鎖の界面で、荷電したアミノ酸残基による一又は複数のアミノ酸残基の置換を含む。
【0095】
特定の一実施態様において、エフェクター部分は、ノブ修飾を含むFcドメインのサブユニットのアミノ末端又はカルボキシ末端のアミノ酸に融合している。理論に縛られることを望むものではないが、Fcドメインのノブを含むサブユニットに対するエフェクター部分の融合は、さらに、2つのエフェクター部分(二つのノブを含有するポリペプチドの立体的な衝突)を含むホモ二量体イムノコンジュゲートの生成を最小限にするであろう。
【0096】
Fc受容体結合を改変するFcドメインの修飾
本発明の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートのFcドメインは、Fc受容体に対する結合親和性が改変されるように、具体的には非操作型Fcドメインに比べて、Fcγ受容体に対する結合親和性を改変されるように操作される。
【0097】
Fc受容体への結合は、例えば、BIAcore装置(GEヘルスケア)など標準的な計測機器を使用してELISAによって又は表面プラズモン共鳴(SPR)によって容易に決定することができ、そのようなFc受容体は、組換え発現によって得ることができる。適切なこのような結合アッセイが本明細書に記載されている。代わりに、FcドメインまたはFc受容体に対するFcドメインを含むイムノコンジュゲートの結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えばFcγIIIa受容体を発現するNK細胞などを使用して評価することができる。
【0098】
幾つかの実施態様において、イムノコンジュゲートのFcドメインは、非操作型Fcドメインと比較して、改変されたエフェクター機能を有するように、とりわけADCCを改変されるように操作される。
【0099】
Fcドメイン又はFcドメインを含むイムノコンジュゲートのエフェクター機能は、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。ADCCを測定するのに適したアッセイが本明細書に記載されている。対象とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの他の例は、米国特許第5,500,362号:Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83, 7059-7063 (1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82, 1499-1502 (1985); 米国特許第5,821,337号; Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361 (1987)に記述されている。あるいは、非放射性アッセイ法(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI
TM非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA)及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega, Madison, WI)を参照)を用いることができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は更に、目的の分子のADCC活性は、例えばClynes et al., Proc Natl Acad Sci USA 95, 652-656 (1998)に開示される動物モデルにおいてインビボで評価することができる。
【0100】
幾つかの実施態様において、補体成分に対する、具体的にはC1qに対するFcドメインの結合が改変される。従って、Fcドメインがエフェクター機能を改変されるように操作される幾つかの実施態様において、前記改変されたエフェクター機能は改変されたCDCを含む。イムノコンジュゲートがC1qに結合することができそれ故にCDC活性を有するかを決定するためにC1q結合アッセイを実施することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J Immunol Methods 202, 163 (1996); Cragg et al., Blood 101, 1045-1052 (2003);及び Cragg and Glennie, Blood 103, 2738-2743 (2004))。
【0101】
a)Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能の低下
Fcドメインは、その標的組織における良好な蓄積及び好ましい組織−血液分配比率に寄与する長い血清半減期を含む好ましい薬物動態学的特性をイムノコンジュゲートに付与する。しかし、同時期に、好適な抗原保有細胞に対するよりもむしろFc受容体を発現する細胞に対するイムノコンジュゲートの所望されない標的化を導く。更に、Fc受容体シグナル伝達経路の同時活性化はサイトカイン放出につながる可能性があり、イムノコンジュゲートのエフェクター部分と長い半減期が長いと組み合わさって、サイトカイン受容体の過剰な活性化及び全身投与の際に重篤な副作用をもたらす。これに伴い、従来のIgG−IL−2イムノコンジュゲートは注入反応に関連することが説明されている(例えばKing et al., J Clin Oncol 22, 4463-4473 (2004))。
【0102】
従って、本発明に係る特定の実施態様では、イムノコンジュゲートのFcドメインは、Fc受容体に対する結合親和性を低下させるいるように操作される。一つのそうした実施態様において、Fcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を減少させる一以上のアミノ酸変異を含む。典型的には、同一の一以上のアミノ酸置換がFcドメインの2つのサブユニットの各々に存在する。一実施態様において、前記アミノ酸置換は、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍減少させる。Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を減少させる複数のアミノ酸変異が存在する実施態様において、これらのアミノ酸変異は、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を少なくとも10倍、少なくとも20倍、又は更に少なくとも50倍減少させ得る。
【0103】
一実施態様において、操作されたFcドメインを含むイムノコンジュゲートは、非操作型Fcドメインを含んでなるイムノコンジュゲートと比較した場合、Fc受容体に対する結合親和性の20%未満、具体的には10%未満、より具体的には5%未満の結合親和性を示す。一実施態様において、Fc受容体は活性化Fc受容体である。特定の実施態様において、Fc受容体は、Fcγ受容体であり、より具体的にはFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa受容体である。好ましくは、これらの受容体の各々に対する結合が減少する。幾つかの実施態様において、補体成分に対する結合親和性、具体的にはC1qに対する結合親和性もまた減少する。一実施態様において、新生児Fc受容体(FcRn)への結合親和性は低下しない。FcRnへの実質的に類似な結合、すなわち、前記受容体への免疫グロブリンの結合親和性の保存は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含んでなるイムノコンジュゲート)が、FcRnに対し、非操作型形態のFcドメイン(又は前記非操作型形態のFcドメインを含んでなるイムノコンジュゲート)の約70%より大きな結合親和性を呈する場合に達成される。Fcドメイン又は前記Fcドメインを含む本発明のイムノコンジュゲートは、約80%を越える、又は更に約90%を越えるそのような活性を示す場合がある。一実施態様では、アミノ酸変異はアミノ酸置換である。一実施態様において、Fcドメインは位置P329でのアミノ酸置換を含む。より特異的な実施態様では、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329Gである。一実施態様では、Fcドメインは、S228、E233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置に更なるアミノ酸置換を含む。より特異的な実施態様では、更なるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定の実施態様では、Fcドメインは、位置P329、L234及びL235にアミノ酸置換を含む。更に特定の実施態様では、Fcドメインはアミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(LALA P329G)を含む。欧州特許出願番号EP11160251.2に記載され、その全体が参照により本明細書に援用されるように、アミノ酸置換のこの組み合わせは、IgGのFcドメインのFcγ受容体結合をほとんど完全に消滅させる。EP 11160251.2はまた、このような変異体Fcドメインを調製する方法、及びFc受容体結合またはエフェクター機能などその特性を決定するための方法を記載する。
【0104】
変異型Fcドメインは、当技術分野で知られている遺伝子的又は化学的方法を用いて、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は修飾によって調製することができる。遺伝的方法は、コードするDNA配列、PCR、遺伝子合成等の部位特異的変異誘発を含むことができる。正しいヌクレオチド変化は、例えば配列決定によって検証することができる。
【0105】
一つの実施態様において、Fcドメインは、非操作型Fcドメインと比較して、エフェクター機能が減少するように操作される。エフェクター機能の減少は、限定されないが、以下の一つ又は複数を含み得る:抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少、抗体依存性細胞貪食(ADCP)の減少、サイトカイン分泌の減少、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの減少、NK細胞への結合の減少、マクロファージへの結合の減少、単球への結合の減少、多形核細胞への結合の減少、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの減少、標的結合抗体の架橋の減少、樹状細胞成熟の減少、又はT細胞プライミングの減少。
【0106】
一実施態様において、エフェクター機能の低下は、CDCの減少、ADCCの減少、ADCPの減少、及びサイトカイン分泌の減少から選択される一又は複数である。特定の実施態様において、エフェクター機能の低下はADCCの減少である。一実施態様において、ADCCの減少は、非操作型Fcドメイン(又は非操作型Fcドメインを含むイムノコンジュゲート)により誘導されるADCCの20%未満である。
【0107】
本明細書中に上述され、及び欧州特許出願番号EP11160251.2Fcドメインに加えて、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能の減少を伴うFcドメインはまた、一以上のFcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329の置換を持つものを含む(米国特許第6737056)。そのようなFc変異体は、残基265と297のアラニンへの置換を持ついわゆる「NANA」Fc変異体を含む、二以上のアミノ酸位置265、269、270、297及び327で置換を持つFc変異体を含む(米国特許第7332581)。
【0108】
IgG
4抗体は、IgG
1抗体と比較して、Fc受容体への結合親和性の低下及びエフェクター機能の減少を呈示する。従って、いくつかの実施態様において、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、IgG
4のFcドメイン、特にヒトIgG
4のFcドメインである。一実施態様において、IgG
4のFcドメインは、位置S228でアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む。Fc受容体に対する結合親和性及び/又はそのエフェクター機能を更に低下させるために、一実施態様において、IgG
4のFcドメインは、位置L235でアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む。その他の実施態様において、IgG
4のFcドメインは、位置P239でアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換P329Gを含む。特定の実施態様において、IgG
4のFcドメインは、位置S228、L235及びP329でアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228P、L235E及びP329Gを含む。このようなIgG
4のFcドメイン変異体とそのFcγ受容体結合特性は欧州特許出願EP11160251.2に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
b)Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能の増加
逆に、例えば、イムノコンジュゲートが高度に特異的な腫瘍抗原を標的としているときなど、イムノコンジュゲートのFc受容体結合及び/又はエフェクター機能を維持あるいは向上させることが望ましい状況があり得る。従って、特定の実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートのFcドメインは、Fc受容体に対する結合親和性が増加しているように操作される。増加する結合親和性は、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性の少なくとも2倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍の増加であってもよい。一実施態様において、Fc受容体は活性化Fc受容体である。特異的な実施態様において、Fc受容体は活性化Fcγ受容体である。一実施態様において、Fc受容体は、FcγRIIIa、FcγRIおよびFcγRIIaの群から選択される。特定の実施態様において、Fc受容体はFcγRIIIaである。
【0110】
一つのこのような実施態様において、Fcドメインは、非操作型Fcドメインと比較して改変されたオリゴ糖構造を有するように設計される。特定のこのような実施態様において、Fcドメインは、非操作型Fcドメインと比較して非フコシル化オリゴ糖の増加した割合を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートのFcドメインにおけるN−結合型糖鎖の少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%、特に少なくとも約50%、より具体的には少なくとも約70%は非フコシル化型である。非フコシル化オリゴ糖は、ハイブリッドまたは複合タイプのものであってもよい。別の特定の実施態様において、Fcドメインは、非操作型Fcドメインと比較して二分オリゴ糖の増加した割合を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートのFcドメインにおけるN−結合型糖鎖の少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%、特に少なくとも約50%、より具体的には少なくとも約70%は二分型である。二分型オリゴ糖は、ハイブリッドまたは複合タイプのものであってもよい。さらに別の具体的な実施態様において、Fcドメインは、非操作型Fcドメインと比較して、二分された非フコシル化オリゴ糖の増加した割合を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートのFcドメインにおけるN−結合型糖鎖の少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%、特に少なくとも約15%、より具体的には少なくとも約25%、少なくとも約35%、少なくとも約50%は非フコシル化型である。二分型、非フコシル化型オリゴ糖は、ハイブリッドまたは複合タイプのものであってもよい。
【0111】
イムノコンジュゲートのFcドメイン中のオリゴ糖構造は、当該分野で周知の方法によって、例えばUmana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180 (1999)又はFerrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006)で説明したように、MALDI TOF質量分析法により分析することができる。非フコシル化型オリゴ糖の割合は、Asn297(例えば、複合、ハイブリッド、高マンノース構造)に付着し、MALDI TOF MSにより、N−グリコシダーゼF処理したサンプルで特定される全オリゴ糖に対するフコース残基が欠損したオリゴ糖の量である。ASN297は、Fcドメインの位置297(Fc領域残基のEU番号)付近で位置するアスパラギン残基を意味するが、しかし、Asn297はまた、位置297の約±3個上流または下流に、すなわち、免疫グロブリンのわずかな配列の変化に起因して位置294と300の間に位置することができる。二分型、又は二分された非フコシル化型、オリゴ糖は同様に決定される。
【0112】
イムノコンジュゲートのFcドメインにおけるグリコシル化の修飾は、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有する1以上のポリペプチドの改変されたレベルを発現するように操作されている宿主細胞におけるイムノコンジュゲートの産生から生じ得る。
【0113】
一実施態様において、非操作型Fcドメインと比較して、イムノコンジュゲートのFcドメインは、1つ又はそれ以上のグリコシルトランスフェラーゼの改変された活性を有する宿主細胞においてイムノコンジュゲートを生成することによって、改変されたオリゴ糖構造を有するように操作される。グリコシルトランスフェラーゼには、例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)、β(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、β(1,2)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTI)、β(1,2)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII(GnTII)及びα(1,6)−フコシルトランスフェラーゼを含む。特定の実施態様において、非操作型Fcドメインと比較して、イムノコンジュゲートのFcドメインは、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT III)の増加した活性を有する宿主細胞においてイムノコンジュゲートを生成することによって、非フコシル化型オリゴ糖の増加した割合を含むように操作される。さらにより具体的な実施態様において、宿主細胞はさらに、増加したα−マンノシダーゼII(ManII)活性を有している。本発明のイムノコンジュゲートを糖鎖操作のために使用することができる糖鎖工学の方法論は、Umana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180 (1999); Ferrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006);国際公開第99/54342号(米国特許第6,602,684号;欧州特許第1071700号);国際公開第2004/065540(米国特許出願公開第2004/0241817号;欧州特許第1587921号)、国際公開第03/011878号(米国特許出願公開第2003/0175884号)に詳細に記載されており、その各々の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
一般に、本明細書で議論された細胞株を含む培養細胞株の任意のタイプが、変更されたグリコシル化パターンを有するイムノコンジュゲートの産生のための細胞株を生成するために使用できる。特定の細胞株は、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、及び他の哺乳動物細胞が挙げられる。特定の実施態様において、宿主細胞は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する一以上のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作されている。特定の実施態様において、宿主細胞は、α−マンノシダーゼII(ManII)活性を有する一以上のポリペプチドの増加したレベルを発現するように更に操作されている。特定の実施態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、異種性ゴルジ常駐性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメイン及びGnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドである。特に、前記ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIのゴルジ局在化ドメインである。このような融合ポリペプチドを生成し、増加したエフェクター機能を有する抗体を産生するためにそれらを使用するための方法は Ferrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006)及び国際公開第2004/065540号に開示され、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0115】
本発明のイムノコンジュゲートのコード配列および/またはグリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのコード配列を含有し、生物学的に活性な遺伝子産物を発現する宿主細胞は、例えば、DNA−DNA又はDNA−RNAハイブリダイゼーション;「マーカー」遺伝子機能の有無;宿主細胞内でのそれぞれのmRNA転写物の発現により測定される転写のレベルを評価すること;又はイムノアッセイによって、又はその生物学的活性−当技術分野でよく知られている方法によって測定されるような遺伝子産物の検出により同定され得る。GnTIII又はMan II活性は、例えば、GnTIII又はManIIの生合成産物に結合するレクチンを用いることによって検出することができる。そのようなレクチンの例は二分するGlcNAcを含むオリゴ糖に優先的に結合するE
4−PHAレクチンである。GnTIII又はManII活性を有するポリペプチドの生合成産物(すなわち、特定のオリゴ糖構造)はまた、前記ポリペプチドを発現する細胞により生産される糖タンパク質から遊離されたオリゴ糖の質量分析によって検出することができる。あるいは、GnTIII又はManII活性を有するポリペプチドで操作された細胞によって産生されるイムノコンジュゲートによって媒介される、エフェクター機能の増加および/またはFc受容体の結合の増加を測定する機能アッセイを使用してもよい。
【0116】
別の実施態様において、非操作型Fcドメインと比較して、Fcドメインは、β(1,6)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT III)の増加した活性を有する宿主細胞においてイムノコンジュゲートを生成することによって、非フコシル化型オリゴ糖の増加した割合を含むように操作される。低下したα(1,6)フコシルトランスフェラーゼ活性を有する宿主細胞は、α(1,6)−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子が破壊されたか又は別の方法で失活された、例えばノックアウトされた細胞であってもよい(Yamane-Ohnuki et al., Biotech Bioeng 87, 614 (2004); Kanda et al., Biotechnol Bioeng 94(4), 680-688 (2006); Niwa et al., J Immunol Methods 306, 151-160 (2006)を参照)。
【0117】
脱フコシル化されたイムノコンジュゲートを産生することができる細胞株の他の例には、タンパク質フコース化が欠失したLec13 CHO細胞が含まれる(Ripka et al., Arch Biochem Biophys 249, 533-545 (1986);米国特許出願番号US2003/0157108;及び国際公開第2004/056312号、具体的には実施例11)。本発明のイムノコンジュゲートは、欧州特許第1 176 195 A1号、国際公開第03/084570号、国際公開第03/085119号及び米国特許出願公開第2003/0115614号、第2004/093621号、第2004/110282号、第2004/110704号、第2004/132140号、米国特許第6,946,292号(Kyowa)に開示された技術に従って、例えばイムノコンジュゲートの産生に使用される宿主細胞におけるGDP−フコーストランスポータータンパク質の活性を低下または消滅させることにより、Fcドメイン内のフコース残基を減少させるように代替的に糖鎖操作をすることができる。
【0118】
本発明の糖鎖操作型イムノコンジュゲートはまた、国際公開第2003/056914号(GlycoFi, Inc.)又は国際公開第2004/057002号及び国際公開第2004/024927号(Greenovation)に教授されるものなど、修飾された糖タンパク質を産生する発現系において生産することができる。
【0119】
一つの実施態様において、イムノコンジュゲートのFcドメインは、非操作型Fcドメインと比較して増加したエフェクター機能を有するように操作される。エフェクター機能の増加は、限定されないが、以下の一つ又は複数を含み得る:補体依存性細胞傷害(CDC)の増加、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の増加、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、単球への結合の増加、多形核細胞への結合の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、標的結合抗体の架橋の増加、樹状細胞成熟の増加、又はT細胞プライミングの増加。
【0120】
一実施態様において、エフェクター機能の増加は、CDCの増加、ADCCの増加、ADCPの増加、及びサイトカイン分泌の増加から選択される一又は複数である。特定の実施態様において、エフェクター機能の増加とはADCCの増加である。一実施態様において、操作型Fcドメイン(又は操作型Fcドメインを含むイムノコンジュゲート)により誘導されるADCCは、非操作型Fcドメイン(又は非操作型Fcドメインを含むイムノコンジュゲート)により誘導されるADCCと比べて少なくとも2倍増加している。
【0121】
エフェクター部分
本発明における使用のためのエフェクター部分は、一般に、例えばシグナル伝達経路を介して細胞活性に影響を与えるポリペプチドである。従って、本発明において有用なイムノコンジュゲートのエフェクター部分は、細胞内応答を調節する細胞膜の外側からシグナルを伝達する受容体媒介性シグナル伝達と関連することができる。例えば、イムノコンジュゲートのエフェクター部分は、サイトカインとすることができる。特定の実施態様において、エフェクター部分はヒトである。
【0122】
特定の実施態様において、エフェクター部分は、単鎖エフェクター部分である。特定の実施態様において、エフェクター部分はサイトカインである。有用なサイトカインの例としては、限定されないが、GM−CSF、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IL−21、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、MIP−1α、MIP−1β、TGF−β、TNF−α、及びTNF−βを含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分は、GM−CSF、IL−2、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IL−15、IL−21、IFN−α、IFN−γ、MIP−1α、MIP−1β及びTGF−βの群から選択されるサイトカインである。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分は、IL−2、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IFN−α及びIFN−γの群から選択されるサイトカインである。特定の実施態様において、サイトカインのエフェクター部分は、N−および/またはO−グリコシル化部位を除去するために変異される。グリコシル化の排除は、組換え生産で得られる生成物の均質性を向上させる。
【0123】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分はIL−2である。
【0124】
特定の実施態様において、IL−2のエフェクター部分は、活性化Tリンパ球細胞における増殖、活性化Tリンパ球細胞における分化、細胞傷害性T細胞(CTL)活性、活性化B細胞における増殖、活性化B細胞における分化、ナチュラルキラー(NK)細胞内の増殖、NK細胞における分化、活性化T細胞またはNK細胞によるサイトカイン分泌、及びNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞毒性からなる群から選択される一又は複数の細胞応答を誘発することができる。別の特定の実施態様において、IL−2エフェクター部分は、IL−2受容体のαサブユニットへの結合親和性が低下した変異体IL−2エフェクター部分である。β−およびγ−サブユニット(それぞれCD122及びCD132としても知られている)と一緒に、α−サブユニット(CD25とも呼ばれる)は、ヘテロ三量体高親和性IL−2受容体を形成し、一方β−およびγ−サブユニットのみからなる二量体受容体は、中間体親和性IL−2受容体と呼ばれている。その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT特許出願番号PCT/EP2012/051991に記載されるように、IL−2受容体のαサブユニットへの結合が減少した変異体IL−2ポリペプチドは、野生型IL−2ポリペプチドと比較して、調節性T細胞におけるIL−2シグナル伝達を誘導する能力の低下を有し、T細胞においてより少ない活性化誘導細胞死(AICD)を誘導し、そしてインビボで減少した毒性プロファイルを有する。毒性が低下したそのようなエフェクター部分の使用は、Fcドメインの存在に起因して長い血清半減期を有する、本発明によるイムノコンジュゲートに特に有利である。一実施態様において、本発明によるイムノコンジュゲートの変異体IL−2エフェクター部分は、非変異型IL−2エフェクター部分に比べて、IL−2受容体のαサブユニット(CD25)に対する変異体IL−2エフェクター部分の親和性を低減又は消失させるが、(IL−2受容体のβ−及びγ−サブユニットからなる)中間体親和性IL−2受容体への変異体IL−2エフェクター部分の親和性を保持した少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。一実施態様において、一又は複数のアミノ酸変異はアミノ酸置換である。特定の実施態様において、変異体IL−2エフェクター部分は、ヒトIL−2の残基42、45、及び72に対応する位置から選択される一つ、二つ、または三つの位置で、一つ、二つ又は三つのアミノ酸置換を含む。より特定の実施態様において、変異体IL−2エフェクター部分は、ヒトIL−2の残基42、45、及び72に対応する位置で三つのアミノ酸置換を含む。更により具体的な実施態様において、変異体IL−2エフェクター部分は、アミノ酸置換のF42A、Y45A及びL72Gを含むヒトIL−2である。一実施態様において、変異体IL−2エフェクター部分はさらに、ヒトIL−2の位置3に相当する位置でアミノ酸変異を含み、これはIL−2のO−グリコシル化部位を除去する。特に、前記の付加的アミノ酸変異は、アラニン残基によってトレオニン残基を置換するアミノ酸置換である。本発明において有用な特定の変異体IL−2エフェクター部分は、ヒトIL−2の残基、3、42、45および72に対応する位置に4個のアミノ酸置換を含む。具体的なアミノ酸置換はT3A、F42A、Y45A及びL72Gである。PCT特許出願番号PCT/EP2012/051991及びその添付の実施例に示すように、四重変異体IL−2ポリペプチド(IL−2 qm)は、CD25への検出可能な結合、T細胞においてアポトーシスを誘導する能力の低下、Treg細胞においてIL−2シグナル伝達を誘導する能力の低下、及びインビボでの毒性プロファイルの減少を呈示しない。しかし、それはエフェクター細胞においてIL−2シグナル伝達を活性化する能力を保持しており、エフェクター細胞の増殖を誘導し、NK細胞による二次的サイトカインとしてIFN−γを生成する。
【0125】
上記実施態様のいずれかに記載のIL−2又は変異体IL−2エフェクター部分は、発現の増加又は安定性などのさらなる利点を提供する付加的な変異を含み得る。例えば、位置125のシステインは、ジスルフィド架橋IL−2二量体の形成を回避するためにアラニンなどの中性アミノ酸で置換されてもよい。従って、特定の実施態様において、本発明によるイムノコンジュゲートのIL−2又は変異体IL−2エフェクター部分は、ヒトIL−2の残基125に対応する位置で付加的なアミノ酸変異を含む。一実施態様において、前記付加的アミノ酸変異はアミノ酸置換C125Aである。
【0126】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートのIL−2エフェクター部分は、配列番号2のポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートのIL−2エフェクター部分は、配列番号3のポリペプチド配列を含む。
【0127】
別の実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分はIL−12である。特定の実施態様において、前記IL−12のエフェクター部分は、単鎖IL−12のエフェクター部分である。更により具体的な実施態様において、単鎖IL−12のエフェクター部分は、配列番号4のポリペプチド配列を含む。一実施態様において、IL−12のエフェクター部分は、NK細胞における増殖、NK細胞における分化、T細胞における増殖、及びT細胞分化からなる群から選択される細胞応答の一つ以上を誘発することができる。
【0128】
別の実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分はIL−10である。特定の実施態様において、前記IL−10のエフェクター部分は、単鎖IL−10のエフェクター部分である。更により具体的な実施態様において、単鎖IL−10のエフェクター部分は、配列番号5のポリペプチド配列を含む。特定の実施態様において、前記IL−10のエフェクター部分は、単鎖IL−10のエフェクター部分である。更により具体的な実施態様において、単鎖IL−10のエフェクター部分は、配列番号6のポリペプチド配列を含む。一実施態様において、IL−10のエフェクター部分は、サイトカイン分泌の阻害、抗原提示細胞による抗原提示の阻害、酸素ラジカルの放出の減少、及びT細胞増殖の阻害からなる群から選択される細胞応答の一つ以上を誘発することができる。エフェクター部分はIL−10であることを特徴とする本発明によるイムノコンジュゲートは、炎症の下方制御のため、例えば炎症性疾患の治療において特に有用である。
【0129】
別の実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分はIL−15である。特定の実施態様において、前記IL−15エフェクター部分は、IL−15受容体のαサブユニットへの結合親和性が低下した変異体IL−15エフェクター部分である。理論に縛られることを望むものではないが、IL−15受容体のαサブユニットへのへの結合が減少した変異体IL−15ポリペプチドは、身体全体の線維芽細胞に特異的に結合する能力が低下しており、野生型IL−15ポリペプチドと比較して、改善された薬物動態及び毒性プロファイルをもたらす。毒性が低下したエフェクター部分、例えば説明され変異体IL−2及び変異体IL−15エフェクター部分の使用は、Fcドメインの存在に起因して長い血清半減期を有する、本発明によるイムノコンジュゲートに特に有利である。一実施態様において、本発明によるイムノコンジュゲートの変異体IL−2エフェクター部分は、非変異型IL−15エフェクター部分に比べて、IL−15受容体のαサブユニットに対する変異体IL−15エフェクター部分の親和性を低減又は消失させるが、(IL−15/IL−2受容体のβ−及びγ−サブユニットからなる)中間体親和性IL−15/IL−2受容体への変異体IL−15エフェクター部分の親和性を保持した少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。一実施態様では、アミノ酸変異はアミノ酸置換である。特定の実施態様において、変異体IL−15エフェクター部分は、ヒトIL−15の残基53に対応する位置でアミノ酸置換を含む。より具体的な実施態様において、変異体IL−15エフェクター部分は、アミノ酸置換のE53Aを含むヒトIL−15である。一実施態様において、変異体IL−15エフェクター部分はさらに、ヒトIL−15の位置79に相当する位置でアミノ酸変異を含み、これはIL−15のN−グリコシル化部位を除去する。特に、前記の付加的アミノ酸変異は、アラニン残基によってアスパラギン残基を置換するアミノ酸置換である。更により具体的な実施態様において、IL−15のエフェクター部分は、配列番号7のポリペプチド配列を含む。一実施態様において、IL−15のエフェクター部分は、活性化Tリンパ球細胞における増殖、活性化Tリンパ球細胞における分化、細胞傷害性T細胞(CTL)活性、活性化B細胞における増殖、活性化B細胞における分化、ナチュラルキラー(NK)細胞内の増殖、NK細胞における分化、活性化T細胞またはNK細胞によるサイトカイン分泌、及びNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞毒性からなる群から選択される一又は複数の細胞応答を誘発することができる。
【0130】
イムノコンジュゲートにおけるエフェクター部分として有用な変異型サイトカイン分子は、当技術分野で公知の遺伝的または化学的方法を用いて、欠失、置換、挿入または修飾によって調製することができる。遺伝的方法は、コードするDNA配列、PCR、遺伝子合成等の部位特異的変異誘発を含むことができる。正しいヌクレオチド変化は、例えば配列決定によって検証することができる。置換又は挿入は、天然ならびに非天然のアミノ酸残基を含むことができる。アミノ酸修飾は、グリコシル化部位の付加又は除去又は炭水化物連結など化学修飾の周知の方法を含む。
【0131】
一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はGM−CSFである。特定の実施態様において、GM−CSFのエフェクター部分は、顆粒球、単球又は樹状細胞において増殖及び/又は分化を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はIFN−αである。特定の実施態様において、IFN−αのエフェクター部分は、ウイルス感染細胞におけるウイルス複製の阻害、及び主要組織適合性複合体I(MHC I)の発現の上方制御からなる群から選択される細胞応答の一以上を誘発することができる。別の特定の実施態様では、IFN−αのエフェクター部分は、腫瘍細胞において増殖を阻害することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はIFN−γである。特定の実施態様において、IFN−γのエフェクター部分は、マクロファージ活性の増加、MHC分子の発現の増加、及びNK細胞活性の増加の群から選択される細胞応答の一以上を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はIL−7である。特定の実施態様において、IL−7エフェクター部分は、T及び/又はBリンパ球の増殖を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はIL−8である。特定の実施態様において、IL−8のエフェクター部分は、好中球において走化性を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はMIP−1αである。特定の実施態様において、MIP−1αのエフェクター部分は、単球およびTリンパ球細胞において走化性を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はMIP−1βである。特定の実施態様において、MIP−1βのエフェクター部分は、単球およびTリンパ球細胞において走化性を誘発することができる。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分、特に一本鎖のエフェクター部分はTGF−βである。特定の実施態様において、TGF−βのエフェクター部分は、単球における走化性、マクロファージにおける走化性、活性化マクロファージにおけるIL−1発現の上方制御、及び活性化B細胞におけるIgA発現の上方制御からなる群から選択される細胞応答の一以上を誘発することができる。
【0132】
一実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートは、対照エフェクター部分のそれよりも少なくとも約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10倍以上大きい解離定数(K
D)で、エフェクター部分の受容体に結合する。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、二つ以上のエフェクター部分を含むイムノコンジュゲート分子に対応するものよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍大きいK
Dでエフェクター部分の受容体に結合する。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、二つ以上のエフェクター部分を含むイムノコンジュゲートに対応するものよりも約10倍大きい解離定数K
Dでエフェクター部分の受容体に結合する。
【0133】
抗原結合部分
本発明のイムノコンジュゲートは、少なくとも一の抗原結合部分を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、二つの抗原結合部分、すなわち第一及び第二の抗原結合部分を含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートは二以下の抗原結合部分を含む。
【0134】
本発明のイムノコンジュゲートの抗原結合部分は、一般に、特定の抗原決定基に結合し、かつ標的部位、例えば抗原決定基を担う特定のタイプの腫瘍細胞又は腫瘍間質に結合する実体(例えば、エフェクター部分及びFcドメイン)を指向することができるポリペプチド分子である。イムノコンジュゲートは、例えば、腫瘍細胞の表面上で、ウイルス感染細胞の表面上で、他の疾患細胞の表面上で、血清中に遊離して、および/または細胞外マトリックス(ECM)中に見つけることができる抗原決定基に結合することができる。
【0135】
特定の実施態様において、抗原結合部分は、炎症部位、又はウイルス感染細胞上で、腫瘍細胞上又は腫瘍細胞環境において提示された抗原など病状と関連した抗原を指向する。
【0136】
腫瘍抗原の非限定の例は、MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ−結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児抗原(CEA)及びその免疫原性エピトープCAP−1及びCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)及びその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2、及びPSA−3、前立腺−特異的膜抗原(PSMA)、T−細胞受容体/CD3−ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGE−ファミリー(例えばMAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGE−ファミリー(例えばGAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン及びγ−カテニン、p120ctn、gp100 Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2及びGD2ガングリオシド、ウイルス産物、例えばヒトパピローマウイルスタンパク質、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、P1A、EBV−コード核内抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1及びCT−7、及びc−erbB−2を含む。
【0137】
ウィルス性抗原の非限定例は、インフルエンザウイルス血球凝集素、エプスタイン・バーウイルスLMP−1、C型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、HIV gp160、及びHIV gp120を含む。
【0138】
ECM抗原の非限定例は、シンデカン、ヘパラナーゼ、インテグリン、オステオポンチン、リンク、カドヘリン、ラミニン、ラミニンタイプEGF、レクチン、フィブロネクチン、ノッチ、テネイシン、及びマトリキシン(matrixin)を含む。
【0139】
本発明のイムノコンジュゲートは、細胞表面抗原の以下の具体的な非限定例に結合できる:FAP、Her2、EGFR、IGF−1R、CD22(B−細胞受容体)、CD23(低親和性のIgE受容体)、CD30(サイトカイン受容体)、CD33(骨髄系細胞表面抗原)、CD40(腫瘍壊死因子受容体)、IL−6R(IL6受容体)、CD20、MCSP、及びPDGFβR(β血小板由来増殖因子受容体)。特定の実施態様において、抗原はヒト抗原である。
【0140】
特定の実施態様において、抗原結合部分は、腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境において提示される抗原を指向する。他の実施態様において、抗原結合部分は、炎症部位で提示される抗原を指向する。より具体的な実施態様において、抗原結合部分は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、テネイシンCのA1ドメイン(TNC A1)、テネイシン−CのA2ドメイン(TNC A2)、フィブロネクチンのエキストラドメインB(EDB)、癌胎児性抗原(CEA)、及びメラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)からなる群から選択される抗原を指向する。
【0141】
一実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートは、2つ又はそれ以上の抗原結合部分を含み、これらの抗原結合部分のそれぞれは、特に、同じ抗原決定基に結合することを特徴とする。
【0142】
抗原結合部分は、抗原決定基に特異的に結合することを保持する抗体またはその断片の任意のタイプとすることができる。抗体断片は、限定するものではないが、VH断片、VL断片、Fab断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ(例えばHudson and Souriau、Nature Med 9、129-134 (2003)を参照)を含む。特定の実施態様において、抗原結合部分は、Fab分子である。一実施態様において、前記Fab分子はヒトである。別の実施態様において、前記Fab分子はヒト化されている。また別の実施態様では、Fab分子は、ヒト重鎖及び軽鎖定常領域を含む。
【0143】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、フィブロネクチンのエキストラドメインB(EDB)に特異的である少なくとも一、典型的には二以上の抗原結合部分を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、EDBのエピトープに対する結合をモノクローナル抗体L19と競合することができる、少なくとも一、典型的には二以上の抗原結合部分を含む。例えば、PCT公開WO2007/128563 A1(参照によりその全体が援用される)を参照。
【0144】
さらに別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、L19モノクローナル抗体に由来するFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL−2ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号215のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、L19モノクローナル抗体に由来するFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号213のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートはL19モノクローナル抗体由来のFab軽鎖を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号217のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号213、配列番号215及び配列番号217のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、ポリペプチドは、共有結合、例えばジスルフィド結合により連結されている。幾つかの実施態様において、Fcドメインサブユニットの各々は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。
【0145】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号216の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号216のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、ポリヌクレオチド配列は、配列番号214の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号214のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、ポリヌクレオチド配列は、配列番号218の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号218のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。
【0146】
一実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートは、テネイシンCのA1ドメイン(TNC−A1)に特異的である少なくとも一、典型的には二以上の抗原結合部分を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、TNC−A1のエピトープに対する結合をモノクローナル抗体F19と競合することができる、少なくとも一、典型的には二以上の抗原結合部分を含む。例えば、PCT公開WO2007/128563 A1(参照によりその全体が援用される)を参照。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA1及び/又はA4ドメイン(TNC−A1又はTNC−A4又はTNC−A1/A4)に特異的である少なくとも一、典型的には二以上の抗原結合部分を含む。
【0147】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号33又は配列番号35の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号29又は配列番号31の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持したその変異体を含む。更に具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号33又は配列番号35の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持したその変異体、及び配列番号29又は配列番号31の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持したその変異体を含む。
【0148】
別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の重鎖可変領域配列は、配列番号34又は配列番号36の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。更に別の特定の実施態様では、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の重鎖可変領域配列は、配列番号34又は配列番号36の何れかのポリヌクレオチド配列によりコードされる。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の軽鎖可変領域配列は、配列番号30又は配列番号32の何れかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。更に別の特定の実施態様では、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の軽鎖可変領域配列は、配列番号30又は配列番号34の何れかのポリヌクレオチド配列によりコードされる。
【0149】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA1ドメインに特異的なFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL−2ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA1ドメインに特異的なFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。より特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、これらのポリペプチド配列の両方を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA1ドメインに特異的なFab軽鎖を更に含む。別の特定の実施態様において、ポリペプチドは共有結合性、例えばジスルフィド結合により連結されている。幾つかの実施態様において、Fcドメインサブユニットの各々は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。
【0150】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA2ドメイン(TNC−A2)に特異的である少なくとも一、典型的には二以上の抗原結合部分を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号27、配列番号159、配列番号163、配列番号167、配列番号171,配列番号175、配列番号179、配列番号183及び配列番号187の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号23、配列番号25;配列番号157、配列番号161、配列番号165、配列番号169、配列番号173、配列番号177、配列番号181及び配列番号185の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持したその変異体を含む。より特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号27、配列番号159、配列番号163、配列番号167、配列番号171、配列番号175、配列番号179、配列番号183及び配列番号187の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である重鎖可変領域、又は機能性を保持したその変異体、及び配列番号23、配列番号25;配列番号157、配列番号161、配列番号165、配列番号169、配列番号173、配列番号177、配列番号181及び配列番号185の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である軽鎖可変領域、又は機能性を保持したその変異体を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号27の重鎖可変領域配列、及び配列番号25の軽鎖可変領域配列を含む。
【0151】
別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の重鎖可変領域配列は、配列番号28、配列番号160、配列番号164、配列番号168、配列番号172、配列番号176、配列番号180、配列番号184及び配列番号188の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の重鎖可変領域配列は、配列番号28、配列番号160、配列番号164、配列番号168、配列番号172、配列番号176、配列番号180、配列番号184及び配列番号188の群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の軽鎖可変領域配列は、配列番号24、配列番号26、配列番号158、配列番号162、配列番号166、配列番号170、配列番号174、配列番号178、配列番号182及び配列番号186の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の軽鎖可変領域配列は、配列番号24、配列番号26、配列番号158、配列番号162、配列番号166、配列番号170、配列番号174、配列番号178、配列番号182及び配列番号186.の群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0152】
更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA2ドメインに特異的なFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL−10ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号235又は配列番号237のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA2ドメインに特異的なFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号233のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA2ドメインに特異的なFab軽鎖を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号239のポリペプチド配列又は機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号233、配列番号235及び配列番号239のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号233、配列番号237及び配列番号239のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、ポリペプチドは、共有結合、例えばジスルフィド結合により連結されている。幾つかの実施態様において、Fcドメインサブユニットの各々は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。
【0153】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号236又は配列番号238の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号236又は配列番号238のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、ポリヌクレオチド配列は、配列番号234の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号234のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、ポリヌクレオチド配列は、配列番号240の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号240のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。
【0154】
更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA2ドメインに特異的なFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL−2ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号285のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA2ドメインに特異的なFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号287のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、テネイシンCのA2ドメインに特異的なFab軽鎖を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号239のポリペプチド配列又は機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号285、配列番号287及び配列番号239のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、ポリペプチドは、共有結合、例えばジスルフィド結合により連結されている。幾つかの実施態様において、Fcドメインサブユニットの各々は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。
【0155】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号286の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号286のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、ポリヌクレオチド配列は、配列番号288の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号288のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、ポリヌクレオチド配列は、配列番号240の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号240のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。
【0156】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的である少なくとも一、典型的には二以上の抗原結合部分を含む。具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号51、配列番号55、配列番号59、配列番号63、配列番号67、配列番号71、配列番号75、配列番号79、配列番号83、配列番号87、配列番号91、配列番号95、配列番号99、配列番号103、配列番号107、配列番号111、配列番号115、配列番号119、配列番号123、配列番号127、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号143、配列番号147、配列番号151及び配列番号155からなる群から選択される配列に対して、少なくともおよそ80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である重鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体を含む。別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号37、配列番号39、配列番号43、配列番号49、配列番号53、配列番号57、配列番号61、配列番号65、配列番号69、配列番号73、配列番号77、配列番号81、配列番号85、配列番号89、配列番号93、配列番号97、配列番号101、配列番号105、配列番号109、配列番号113、配列番号117、配列番号121、配列番号125、配列番号129、配列番号133、配列番号137、配列番号141、配列番号145、配列番号149及び配列番号153,からなる群から選択される配列に対して、少なくともおよそ80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である軽鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号51、配列番号55、配列番号59、配列番号63、配列番号67、配列番号71、配列番号75、配列番号79、配列番号83、配列番号87、配列番号91、配列番号95、配列番号99、配列番号103、配列番号107、配列番号111、配列番号115、配列番号119、配列番号123、配列番号127、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号143、配列番号147、配列番号151及び配列番号155からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である重鎖可変領域配列又は機能性を保持したその変異体、及び配列番号37、配列番号39、配列番号43、配列番号49、配列番号53、配列番号57、配列番号61、配列番号65、配列番号69、配列番号73、配列番号77、配列番号81、配列番号85、配列番号89、配列番号93、配列番号97、配列番号101、配列番号105、配列番号109、配列番号113、配列番号117、配列番号121、配列番号125、配列番号129、配列番号133、配列番号137、配列番号141、配列番号145、配列番号149及び配列番号153からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である軽鎖可変領域配列又は機能性を保持したその変異体を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号111の重鎖可変領域配列、及び配列番号109の軽鎖可変領域配列を含む。更なる特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号143の重鎖可変領域配列、及び配列番号141の軽鎖可変領域配列を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号51の重鎖可変領域配列、及び配列番号49の軽鎖可変領域配列を含む。
【0157】
別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の重鎖可変領域配列は、配列番号42、配列番号46、配列番号48、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号68、配列番号72、配列番号76、配列番号80、配列番号84、配列番号88、配列番号92、配列番号96、配列番号100、配列番号104、配列番号108、配列番号112、配列番号116、配列番号120、配列番号124、配列番号128、配列番号132、配列番号136、配列番号140、配列番号144、配列番号148、配列番号152、及び配列番号156からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%,又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされる。更に別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の重鎖可変領域配列は、配列番号42、配列番号46、配列番号48、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号68、配列番号72、配列番号76、配列番号80、配列番号84、配列番号88、配列番号92、配列番号96、配列番号100、配列番号104、配列番号108、配列番号112、配列番号116、配列番号120、配列番号124、配列番号128、配列番号132、配列番号136、配列番号140、配列番号144、配列番号148、配列番号152、及び配列番号156からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によりコードされる。別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の軽鎖可変領域配列は、配列番号38、配列番号40、配列番号44、配列番号50、配列番号54、配列番号58、配列番号62、配列番号66、配列番号70、配列番号74、配列番号78、配列番号82、配列番号86、配列番号90、配列番号94、配列番号98、配列番号102、配列番号106、配列番号110、配列番号114、配列番号118、配列番号122、配列番号126、配列番号130、配列番号134、配列番号138、配列番号142、配列番号146、配列番号150,及び配列番号154からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%,又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされる。更に別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の軽鎖可変領域配列は、配列番号38、配列番号40、配列番号44、配列番号50、配列番号54、配列番号58、配列番号62、配列番号66、配列番号70、配列番号74、配列番号78、配列番号82、配列番号86、配列番号90、配列番号94、配列番号98、配列番号102、配列番号106、配列番号110、配列番号114、配列番号118、配列番号122、配列番号126、配列番号130、配列番号134、配列番号138、配列番号142、配列番号146、配列番号150、及び配列番号154からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によりコードされる。
【0158】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、FAPに特異的なFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL−2ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号195、配列番号197、配列番号203、配列番号209、配列番号269、配列番号271及び配列番号273、又は機能性を保持したその変異体を含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、FAPに特異的なFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL−15ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号199のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、FAPに特異的なFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更に具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号193、配列番号201及び配列番号207からなる群から選択されるポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートはFAPに特異的なFab軽鎖を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号205又は配列番号211のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号205のポリペプチド配列、配列番号193のポリペプチド配列、及び配列番号195、配列番号197、配列番号199及び配列番号269の群から選択されるポリペプチド配列、又は機能性を保持したその変異体を含む。更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号201、配列番号203及び配列番号205のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号207、配列番号209及び配列番号211のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号205、配列番号193及び配列番号269のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号211、配列番号207及び配列番号271のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号211、配列番号207及び配列番号273のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、ポリペプチドは、共有結合、例えばジスルフィド結合により連結されている。幾つかの実施態様において、Fcドメインサブユニットの各々は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。
【0159】
更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、FAPに特異的なFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL−10ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号243又は配列番号245のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、FAPに特異的なFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号241のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートはFAPに特異的なFab軽鎖を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号205のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号205、配列番号241及び配列番号243のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号205、配列番号241及び配列番号245のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、ポリペプチドは、共有結合、例えばジスルフィド結合により連結されている。幾つかの実施態様において、Fcドメインサブユニットの各々は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。
【0160】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号196、配列番号198、配列番号200、配列番号204、配列番号210、配列番号244、配列番号246、配列番号270、配列番号272及び配列番号274の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列を含む。別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号196、配列番号198、配列番号200、配列番号204、配列番号210、配列番号244、配列番号246、配列番号270、配列番号272及び配列番号274の群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号194、配列番号202、配列番号208及び配列番号242の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号194、配列番号202、配列番号208及び配列番号242からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号206又は配列番号212の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号206又は配列番号212のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、癌胎児性抗原(CEA)に特異的である少なくとも一、典型的には二以上の抗原結合部分を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号191又は配列番号295に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号189又は配列番号293に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号191の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体、及び配列番号189の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体を含む。更に具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号295の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体、及び配列番号293の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体を含む。
別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の重鎖可変領域配列は、配列番号192又は配列番号296の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。更に別の特定の実施態様では、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の重鎖可変領域配列は、配列番号192又は配列番号296のポリヌクレオチド配列によりコードされる。別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の軽鎖可変領域配列は、配列番号190又は配列番号294の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる。更に別の特定の実施態様では、イムノコンジュゲートの抗原結合部分の軽鎖可変領域配列は、配列番号190又は配列番号294のポリヌクレオチド配列によりコードされる。
【0161】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、CEAに特異的なFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL−2ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号229、配列番号275、配列番号277及び配列番号279からなる群から選択されるポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、CEAに特異的なFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号227又は配列番号282のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートはCEAに特異的なFab軽鎖を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号231又は配列番号283のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号227、配列番号229及び配列番号231のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号275、配列番号281及び配列番号283のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号277、配列番号281及び配列番号283のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号279、配列番号281及び配列番号283のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、ポリペプチドは、共有結合、例えばジスルフィド結合により連結されている。幾つかの実施態様において、Fcドメインポリペプチド鎖は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。
【0162】
具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号230、配列番号276、配列番号278及び配列番号280の群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号230、配列番号276、配列番号278及び配列番号280からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号228又は配列番号282の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号228又は配列番号282のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号232又は配列番号284の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。更に別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号232又は配列番号284のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列を含む。
【0163】
幾つかの実施態様において、イムノコンジュゲートは、エフェクター部分のポリペプチドが、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号247、配列番号249及び配列番号251からなる群から選択されるポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。一つのそのような実施態様において、イムノコンジュゲートは、FAPに特異的なFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を更に含む。より具体的な実施態様において、配列番号193、配列番号201及び配列番号207の群から選択されるポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を更に含む。別のそのような実施態様において、イムノコンジュゲートは、EDB、TNC A1、TNC A2又はCEAに特異的なFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を更に含む。幾つかの実施態様において、Fcドメインサブユニットの各々は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。上の実施態様の何れかに従って、イムノコンジュゲートは、対応する抗原に特異的なFab軽鎖を更に含み得る。
【0164】
本発明のイムノコンジュゲートは、配列番号23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、293、295、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、269、271、273、275、277、279、281、283、285及び287に明記される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である配列を有するものを、その機能性断片又は変異体を含み、含む。本発明はまた、保存的アミノ酸置換を有するこれらの配列を含んでなるイムノコンジュゲートを包含する。
【0165】
ポリヌクレオチド
本発明はさらに、本明細書に記載されるイムノコンジュゲートまたはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0166】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、294、296、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、270、272、274、276、278、280、282、284、286及び288に明記される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるものを、その機能性断片又は変異体を含み、含む。
【0167】
本発明のイムノコンジュゲートをコードするポリヌクレオチドは、イムノコンジュゲート全体をコードする単一のポリヌクレオチドとして、又は共発現される複数(例えば、2つ以上の)ポリヌクレオチドとして発現され得る。共発現されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、例えばジスルフィド結合又は別の手段を介して会合することができ、機能性イムノコンジュゲートを形成しうる。例えば、抗原結合部分の軽鎖部分は、抗原結合部分、Fcドメインサブユニット及び任意でエフェクター部分の重鎖部分を含んでなるイムノコンジュゲートの部分に由来する別々のポリヌクレオチドによりコードされ得る。共発現されたとき、重鎖ポリペプチドが軽鎖ポリペプチドと会合し、抗原結合部分を形成する。別の例において、第一の抗原結合部分の重鎖部分、2つのFcドメインサブユニットの一方及びエフェクター部分を含んでなるイムノコンジュゲートの部分は、第二の抗原結合部分の重鎖部分及び2つのFcドメインサブユニットの他方を含んでなるイムノコンジュゲートの部分に由来の別々のポリヌクレオチドによりコードされることができる。共発現されると、Fcドメインのサブユニットが会合しFcドメインを形成する。
【0168】
一実施態様において、単離された本発明のポリヌクレオチドは、イムノコンジュゲートの断片をコードする。第一の抗原結合部分、2つのサブユニットからなるFcドメイン、単一のエフェクター部分を含んでなるイムノコンジュゲートの断片をコードし、ここで抗原結合部分は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗原結合ドメイン、特にFab分子である。一実施態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、第一の抗原結合部分の重鎖、Fcドメインのサブユニット、及びエフェクター部分をコードしている。別の実施態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、第一の抗原結合部分の重鎖、及びFcドメインのサブユニットをコードしている。更に別の実施態様において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、Fcドメインのサブユニット及びエフェクター部分をコードする。更に具体的な実施態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。別の具体的な実施態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fcドメインサブユニットがエフェクター部分のポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。更に別の実施態様において、単離されたポリヌクレオチドは、Fab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にエフェクター部分のポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。更に別の具体的な実施態様において、単離されたポリヌクレオチドは、エフェクター部分のポリペプチドがFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドをコードする。
【0169】
別の実施態様において、本発明はイムノコンジュゲート又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを対象とし、ここで該ポリヌクレオチドは、配列番号23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、293又は295に示される可変領域配列をコードする配列を含む。別の実施態様において、本発明はイムノコンジュゲート又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを対象とし、ここで該ポリヌクレオチドは、配列番号193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、269、271、273、275、277、279、281、283、285又は287に示されるポリペプチド配列をコードする配列を含む。別の実施態様において、本発明はイムノコンジュゲート又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを更に指向し、ここで該ポリヌクレオチドは、配列番号24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、294、296、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、270、272、274、276、278、280、282、284、286又は288に示されるヌクレオチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む。別の実施態様において、本発明はイムノコンジュゲート又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを対象とし、ここで該ポリヌクレオチドは、配列番号24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、294、296、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、270、272、274、276、278、280、282、284、286又は288に示される核酸配列を含む。別の実施態様において、本発明はイムノコンジュゲート又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを対象とし、ここで該ポリヌクレオチドは、配列番号23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、293又は295に示される可変領域配列をコードする配列を含む。別の実施態様において、本発明はイムノコンジュゲート又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを対象とし、ここで該ポリヌクレオチドは、配列番号193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、269、271、273、275、277、279、281、283、285又は287のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド配列をコードする配列を含む。本発明はイムノコンジュゲート又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチド包含し、ここで該ポリヌクレオチドは、保存的アミノ酸置換を有する、配列番号23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、293又は295の可変領域配列をコードする配列を含む。本発明はまた、本発明のイムノコンジュゲート又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを包含し、ここで該ポリヌクレオチドは、保存的アミノ酸置換を有する、配列番号193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、269、271、273、275、277、279、281、283、285又は287のポリペプチド配列をコードする配列を含む。
【0170】
ある実施態様において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。一実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の形態のRNAである。本発明のRNAは、一本鎖または二本鎖であってもよい。
【0171】
非標的化コンジュゲート
本発明は、特定の抗原(例えば腫瘍抗原)を標的としたイムノコンジュゲートだけでなく、任意の抗原に特異的に結合しない、とりわけ任意のヒト抗原に結合しない一以上のFab分子を含んでなる非標的化コンジュゲートも提供する。任意の抗原に対するこれらのコンジュゲートの特異的結合の欠如(即ち、非特異的相互作用から区別できる任意の結合の欠如)は、本明細書に記載されるように例えばELISA又は表面プラズモン共鳴により測定することができる。そのようなコンジュゲートは、例えば、それらが含むエフェクター部分の血清半減期を、特定の組織への標的化が望ましくない非結合型エフェクター部分の血清半減期と比較して、増強するために特に有用である。
【0172】
具体的には、本発明は、特異的には任意の抗原に結合しない第一のFab分子、2つのサブユニットからなるFcドメイン、及びエフェクター部分を含み、1以下のエフェクター部分が存在するコンジュゲートを提供する。より具体的には、本発明は、配列番号299の重鎖可変領域配列及び配列番号297の軽鎖可変領域配列を含んでなる第一のFab分子、2つのサブユニットからなるFcドメイン、及びエフェクター部分を含み、1以下のエフェクター部分が存在するコンジュゲートを提供する。本発明のイムノコンジュゲートのように、コンジュゲートは上記「イムノコンジュゲートのフォーマット」に記述されるように様々な立体配置をとることができる(イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、特異的に任意の抗原に結合しないFab分子、例えば配列番号299の重鎖可変領域配列及び配列番号297の軽鎖可変領域配列を含んでなるFab分子などによって置換されている)。同様に、Fcドメイン並びにエフェクター部分の特徴は、本発明のイムノコンジュゲートについての「Fcドメイン」及び「エフェクター部分」の下で上述したように、本発明の非標的化コンジュゲートに対して、単独又は組み合わせて適用する。
【0173】
特定の実施態様において、コンジュゲートは、(i)任意の抗原を特異的には結合しない第一及び第二のFab分子及びFcドメイン含む免疫グロブリン分子、及び(ii)エフェクター部分を含み、ここで1以下のエフェクター部分が存在し、そして免疫グロブリン分子は、ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンであり;Fcドメインは、その2つのサブユニットの一方にノブ修飾を、他方にホール修飾を含み、そのサブユニットの各々にアミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含み;そしてエフェクター部分は、免疫グロブリン重鎖の一方のカルボキシ末端アミノ酸に、任意でリンカーペプチドを介して融合されるIL−2分子である。特定の実施態様において、コンジュゲートは、配列番号299の重鎖可変領域配列、及び配列番号297の軽鎖可変領域配列を含む。
【0174】
ある実施態様において、コンジュゲートは、(i)配列番号299の重鎖可変領域配列及び配列番号297の軽鎖可変領域配列を含んでなる免疫グロブリン分子、及び(ii)エフェクター部分のポリペプチドを含み、1以下のエフェクター部分が存在する。一つのそのような実施態様において、免疫グロブリン分子は、ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンである。一つのそのような実施態様において、Fcドメインはその2つのサブユニットの一方にノブ修飾を、他方にホール修飾を含む。特定のそのような実施態様において、Fcドメインはそのサブユニットの各々において、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。更に別のそのような実施態様において、エフェクター部分は、免疫グロブリン重鎖の一方のカルボキシ末端のアミノ酸に、任意でリンカーペプチドを介して融合しているIL−2分子である。
【0175】
一実施態様において、コンジュゲートは、任意の抗原に特異的には結合しないFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL−2ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。より具体的な実施態様において、コンジュゲートは配列番号221、配列番号223、配列番号289及び配列番号291の群から選択されるポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。一実施態様において、コンジュゲートは、任意の抗原に特異的には結合しないFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、コンジュゲートは配列番号219のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、コンジュゲートは、任意の抗原に特異的には結合しないFab軽鎖を含む。更により具体的な実施態様において、コンジュゲートは配列番号225のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、コンジュゲートは配列番号219、配列番号221及び配列番号225のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、コンジュゲートは配列番号219、配列番号223及び配列番号225のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、コンジュゲートは配列番号219、配列番号289及び配列番号225のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、コンジュゲートは配列番号219、配列番号291及び配列番号225のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、ポリペプチドは、共有結合、例えばジスルフィド結合により連結されている。幾つかの実施態様において、Fcドメインポリペプチド鎖は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。
【0176】
特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号298、配列番号300、配列番号220、配列番号222、配列番号224、配列番号226、配列番号290及び配列番号292からなる群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列を含む。別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは、配列番号298、配列番号300、配列番号220、配列番号222、配列番号224、配列番号226、配列番号290及び配列番号292からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列を含む。
【0177】
本発明はまた、本発明のコンジュゲートをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。特定の実施態様において、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号298、配列番号300、配列番号220、配列番号222、配列番号224、配列番号226、配列番号290及び配列番号292からなる群から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である配列を含む。本発明はさらに、単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び本発明の単離されたポリヌクレオチド又は発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。別の態様において、a)本発明の宿主細胞をコンジュゲートの発現に適した条件下で培養し、b)コンジュゲートを回収する工程を含む、本発明のコンジュゲートを産生する方法が提供される。本発明はまた、本発明の方法により製造されたコンジュゲートを包含する。本発明のイムノコンジュゲートを製造する方法に関する本明細書中に提供される開示(例えば「組換え方法」を参照)は、本発明のコンジュゲートに等しく適用することができる。
【0178】
本発明はさらに、本発明のコンジュゲートおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。本発明のイムノコンジュゲートの薬学的組成物に関する本明細書中に提供される開示(例えば「組成物、製剤、及び投与の経路」を参照)は、本発明のコンジュゲートに等しく適用することができる。更に、コンジュゲートは、本発明のイムノコンジュゲートのために本明細書に記載の使用方法で使用することができる。本発明のイムノコンジュゲートを使用する方法に関する本明細書中に提供される開示(例えば「治療的方法及び組成物」、「他の薬剤及び治療」及び「製造品」を参照)は、本発明のコンジュゲートに等しく適用することができる。
【0179】
組換え方法
本発明のイムノコンジュゲートは、例えば、固相ペプチド合成(例えばメリフィールド固相合成)又は組換え産生によって得ることができる。組換え生産のために、例えば上述したように、イムノコンジュゲート(断片)をコードする一又は複数のポリヌクレオチドが単離され、宿主細胞内での更なるクローニング及び/又は発現のために一又は複数のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは、一般的な手順を使用して容易に単離され配列決定されうる。一実施態様では、本発明の一又は複数のポリヌクレオチドを含んでなるベクター、好ましくは発現ベクターが提供される。当業者によく知られている方法は、適切な転写/翻訳制御シグナルとともに、イムノコンジュゲート(断片)のコード配列を含む発現ベクターを構築するために使用することができる。これらの方法は、インビトロでの組換えDNA技術、合成技術及びインビボでの組換え/遺伝子組換えが含まれる。例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (1989);及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y (1989)に記載される技術を参照。発現ベクターはプラスミド、又はウイルスの一部でもよく、核酸断片でありうる。発現ベクターは、イムノコンジュゲート(断片)をコードするポリヌクレオチド(すなわちコーディング領域)がプロモーター及び/又は他の転写又は翻訳コントロール要素と作動可能な関係においてクローン化される発現カセットを含む。本発明で使用される場合、「コーディング領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンから成る核酸の一部である。「停止コドン」(TAG、TGA、又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、存在するならばそれはコーディング領域として考えられ、しかし、任意の隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム、結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’非翻訳領域などはコーディング領域の一部ではない。二以上のコーディング領域が、単一のポリヌクレオチドコンストラクト中、例えば単一ベクター上に、又は別個のポリヌクレオチドコンストラクト中、例えば別個の(異なる)ベクター上に存在してもよい。更に、何れかのベクターは単一のコーディング領域を有し得、又は二以上のコーディング領域を有し得、例えば本発明のベクターは、タンパク質分解切断により最終タンパク質へ翻訳後的又は共翻訳的に分けられる一又は複数のポリタンパク質をコードしうる。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、又は核酸は、本発明のイムノコンジュゲート(断片)、又は変異体又はその誘導体をコードするポリヌクレオチドに融合又は非融合された異種性コーディング領域をコードしうる。異種性コーディング領域は、限定するものではないが、特殊化要素又はモチーフ、例えば分泌シグナルペプチド又は異種性機能ドメインを含む。作動的関係とは、遺伝子産物の発現を制御性配列の影響又はコントロール下に置かれるように、遺伝子産物、例えばポリペプチドのコーディング領域が一又は複数の制御性配列と関連する場合である。2つのDNA断片(例えばポリペプチドコーディング領域及びそれと関連するプロモーター)は、プロモーター機能の誘導が所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらし、2つのDNA断片間の連鎖の性質が遺伝子産物の発現を指示する発現制御性配列の能力を干渉しないか又は転写されるDNA鋳型の能力を干渉しない場合に「作動的に関連」する。このように、プロモーターがその核酸の転写に影響できる場合に、プロモーター領域はポリペプチドをコードする核酸と作動的に関連するだろう。プロモーターは、所定の細胞においてのみDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターでありうる。プロモーターに加えて、他の転写コントロール要素、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルが、細胞特異的転写を支持するためにポリヌクレオチドと作動的に関連していてもよい。好適なプロモーター及び他の転写コントロール領域がここに開示される。様々な転写コントロール領域が当業者に知られている。これらは、限定するものではないが、脊椎動物細胞において機能する転写コントロール領域、例えば限定するものではないがサイトメガロウイルスからのプロモーター及びエンハンサーセグメント(例えば、イントロン−Aと併せて前初期プロモーター)、サルウイルス40(例えば初期プロモーター)、及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルスなど)を含む。他の転写コントロール領域は、脊椎動物遺伝子由来のもの、例えばアクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ−グロビン、並びに真核生物細胞における遺伝子発現をコントロールできる他の配列を含む。更なる好適な転写コントロール領域は、組織特異的プロモーター及びエンハンサー並びに誘導性プロモーター(例えばプロモーター誘導性テトラサイクリン)を含む。同様に、様々な転写コントロール要素が当業者に知られている。これらは、限定するものではないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び終止コドン、及びウィルス系由来の要素(特に、内部リボソーム進入部位、又はIRES、CITE配列としても知られる)を含む。発現カセットはまた、他の特性、例えば複製起源、及び/又は染色体組込み要素、例えばレトロウイルス長末端反復(LTR)、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位配列(ITR)を含みうる。
【0180】
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コーディング領域は、本発明のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドの分泌を指示する分泌又はシグナルペプチドをコードする更なるコーディング領域を伴い得る。例えば、イムノコンジュゲートの分泌が望まれる場合、シグナル配列をコードするDNAが本発明のイムノコンジュゲート又はその断片をコードする核酸の上流に配置されうる。シグナル仮説によると、哺乳類細胞によって分泌されるタンパク質はシグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有し、これは一旦粗面小胞体を横切って成長するタンパク質鎖の排出が開始すると成熟タンパク質から切断される。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドはポリペプチドのN末端に融合されたシグナルペプチドを一般的に有し、それはポリペプチドの分泌又は「成熟」形態を生産するために翻訳ポリペプチドから切断されることを認識しているだろう。ある実施態様では、天然シグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドが使用され、又はその配列の機能的誘導体であって、それに作動的に関連したポリペプチドの分泌を指示する能力を保持した機能的誘導体が使用される。あるいは、異種性哺乳類シグナルペプチド、又はその機能性誘導体が使用されうる。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)又はマウスβ−グルクロニダーゼのリーダー配列と置換されうる。分泌シグナルペプチドの例示的なアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を、配列番号8〜16に示す。
【0181】
後の精製を容易にし又は又はイムノコンジュゲートの標識化における補助のために使用されうる短タンパク質配列(例えば、ヒスチジンタグ)をコードするDNAは、ポリヌクレオチドをコードするイムノコンジュゲート(断片)の中又は末端に含まれうる。
【0182】
更なる実施態様では、本発明の一又は複数のポリヌクレオチドを含んでなる宿主細胞が提供される。ある実施態様では、本発明の一又は複数のベクターを含んでなる宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、単独で又は組合せにおいて、それぞれポリヌクレオチド及びベクターに関して本明細書に記載されている特徴の何れかを組み込みうる。一つのそのような実施態様において、宿主細胞は、本発明のイムノコンジュゲート(の一部)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む(例えば該ベクターで形質転換又はトランスフェクトされる)。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」なる用語は、本発明のイムノコンジュゲート又はその断片を生成するよう操作できる何れかの種類の細胞システムを指す。イムノコンジュゲートの複製及び発現の補助に好適な宿主細胞は当分野でよく知られている。このような細胞は特定の発現ベクターで適切にトランスフェクト又は形質導入され得、大量のベクター含有細胞が、臨床利用のための十分な量のイムノコンジュゲートを得るために、大規模発酵槽での播種のために増殖されうる。好適な宿主細胞は、原核生物微生物、例えば大腸菌、又は様々な真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞などを含む。例えば、ポリペプチドは、特に糖鎖付加が必要でない場合、細菌において生産されうる。発現の後、ポリペプチドは可溶性画分において細菌の細胞ペーストから単離され得、更に精製することができる。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、菌類や酵母菌株を含むポリペプチドをコードするベクターのための、適切なクローニング宿主又は発現宿主であり、そのグリコシル化経路が、「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトのグリコシル化パターンを有するポリペプチドの生成をもたらす。Gerngross, Nat Biotech 22, 1409-1414 (2004)、及びLi et al., Nat Biotech 24, 210-215 (2006)を参照。(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物と脊椎動物)から派生している。無脊椎動物細胞の例としては、植物および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株が同定され、これらは特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と組み合わせて使用することができる。植物細胞培養を宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5959177号、第6040498号、第6420548号、第7125978号及び第6417429号(トランスジェニック植物における抗体産生に関するPLANTIBODIES
TM技術を記載)を参照。脊椎動物細胞もまた宿主として用いることができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS−7)で形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(Graham et al., J Gen Virol 36, 59 (1977)に記載された293細胞又は293T細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスのセルトリ細胞(Mather, Biol Reprod 23, 243-251 (1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76)、ヒト子宮頚癌細胞(HeLa)、イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2)、マウス乳腺腫瘍細胞(MMT060562)、(例えばMather et al., Annals N.Y. Acad Sci 383, 44-68 (1982)に記載される)TRI細胞、MRC5細胞、およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、dhfr−CHO細胞(Urlaub et al., Proc Natl Acad Sci USA 77, 4216 (1980)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及びYO、NS0、P3X63およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。タンパク質産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞系の総説については、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003)を参照。宿主細胞は、培養細胞、例えば、哺乳動物の培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞、また、トランスジェニック生物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞を含む。一実施態様では、宿主細胞は真核生物細胞、好ましくは哺乳類細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞又はリンパ球系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0183】
これらのシステムにおいて外来遺伝子を発現させるための標準的な技術は当分野で知られている。抗体等の抗原結合ドメインの重又は軽鎖のどちらかを含むポリペプチドを発現する細胞は、発現された生成物が重及び軽鎖の両方を有する抗体であるように、抗体鎖の他方をまた発現するように操作されうる。
【0184】
一実施態様において、本発明によるイムノコンジュゲートを生産する方法が提供され、その方法は、本明細書に与えられるように、イムノコンジュゲートの発現に適した条件下で、イムノコンジュゲートをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養すること、及び宿主細胞(または宿主細胞培養培地)からイムノコンジュゲートを回収することを含む。
【0185】
イムノコンジュゲートの構成要素は、遺伝的に互いに融合されている。イムノコンジュゲートは、その成分が、お互いに直接的に又はリンカー配列を介して互いに間接的に融合されるように設計することができる。リンカーの組成および長さは、当該技術分野において周知の方法に従って決定することができ、有効性について試験され得る。エフェクター部分とFcドメインとの間のリンカー配列の例は、配列番号195、197、199、203、209、215、229、235、237、243、245、247、249、251、269、271、273、275、277、279及び285に示される配列に見出される。さらなる配列はまた、所望であれば、融合体の個々の成分を分離するための切断部位、例えばエンドペプチダーゼ認識配列を組み込むことが含まれていてもよい。
ある実施態様では、イムノコンジュゲートの一又は複数の抗原結合部分は、抗原決定基に結合できる抗体可変領域を少なくとも含む。可変領域が、天然に又は非天然に生じる抗体及びその断片の一部を形成し、及びそれに由来しうる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を生産する方法は、当分野でよく知られている(例えばHarlow and Lane, "Antibodies, a laboratory manual", Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)を参照)。非天然に生じる抗体は、固相−ペプチド合成を使用して構築されるか、組換え的に生産されるか(例えば米国特許第4,186,567号に記載のように)、又は例えば可変重鎖及び可変軽鎖を含んでなるコンビナトリアルライブラリーのスクリーニング(例えばMcCaffertyの米国特許第5,969,108号を参照)によって得られうる。抗原結合部分及びその生産方法がまたPCT公開番号WO2011/020783に詳細に記載されており、その全体を出典明記によって本明細書に援用する。
【0186】
何れかの動物種の抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域が、本発明のイムノコンジュゲートで用いることができる。本発明において有用な非限定的抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域は、マウス、霊長類、又はヒト起源のものでありうる。コンジュゲートがヒトでの使用を意図する場合、抗体の定常領域はヒトに由来するキメラ形態の抗体が使用され得る。ヒト化又は完全ヒト形態の抗体がまた、当分野でよく知られている方法に従って調製されうる(例えばWinterの米国特許第5,565,332号を参照)。ヒト化は、様々な方法によって達成することができ、限定するものではないが(a)非ヒト(例えばドナー抗体)CDRの、ヒト(例えば、レシピエント抗体)フレームワーク及び定常領域への、決定的なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体機能を保つのに重要なもの)の有無におけるグラフティング、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa−CDR;抗体−抗原相互作用に決定的な残基)のみの、ヒトフレームワーク及び定常領域へのグラフティング、又は(c)全非ヒト可変ドメインの移植(ただし、表面残基の置換によりヒト様セクションでそれらを「覆う」)を含む。ヒト化抗体およびそれらの製造方法は、例えば、Almagro and Fransson, Front Biosci 13, 1619-1633 (2008)に総説され、更に、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号及び第7,087,409号; Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv. Immunol. 44:65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun. 31(3):169-217 (1994); Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(SDR(a−CDR)グラフティングを記述); Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (「リサーフェシング」を記述); Dall’Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (「FRシャッフリング」を記述);及びOsbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) 及びKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングへの「誘導選択」アプローチを記述)に記載されている。ヒト可変領域は、ハイブリドーマ法によって生成されるヒトモノクローナル抗体の部分を形成し、それから得られることができる(例えばMonoclonal Antibody Production Techniques and Applications、pp. 51-63 (Marcel Dekker、Inc.、New York、1987)を参照)。ヒト抗体及びヒト可変領域はまた、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を生産するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製されうる(例えばLonberg、Nat Biotech 23、1117-1125 (2005)を参照)。ヒト抗体及びヒト可変領域はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変領域配列を単離することによって生成されうる(例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178, 1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001); 及びMcCafferty et al., Nature 348, 552-554; Clackson et al., Nature 352, 624-628 (1991)を参照)。ファージは典型的には、抗体断片を短鎖Fv(scFv)断片として又はFab断片としてディスプレイする。ファージディスプレイによるイムノコンジュゲートの抗原結合部分の調製の詳細な説明は、PCT公開番号WO2011/020783に添付される実施例に見出される。
【0187】
ある実施態様では、本発明に有用な抗原結合部分は、例えばPCT公開番号WO2011/020783(親和性成熟に関する実施例を参照)又は米国特許出願公開番号2004/0132066(この全内容を出典明記によってここに援用する)に開示される方法に従い、増強された結合親和性を有するように操作される。特定の抗原決定基に結合する本発明のイムノコンジュゲートの能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)または当業者によく知られている他の技術、例えば表面プラズモン共鳴技術(BIAcoreT100システムで解析される)(Liljeblad, et al., Glyco J 17, 323-329 (2000))および伝統的な結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))のいずれかによって測定することができる。競合アッセイは、特定の抗原への結合について参照抗体と競合する抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変ドメイン、例えばフィブロネクチンのエクストラドメインB(EDB)への結合についてL19抗体と競合する抗体を同定するために使用されうる。ある実施態様では、このような競合する抗体は、参照抗体によって結合される同じエピトープ(例えば線状又はコンホメーションエピトープ)に結合する抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な典型的な方法が、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols,”Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。典型的な競合アッセイにおいて、固定化抗原(例えばEDB)は、抗原(例えばL19抗体)に結合する第一の標識された抗体、及び抗原へ結合について第一の抗体と競合するその能力について試験されている第二の未標識抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第二抗体はハイブリドーマ上清中に存在してもよい。コントロールとして、固定化抗原が、第二の未標識の抗体でなく、第一の標識された抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第一の抗体の抗原への結合を許容する条件下でインキュベートした後、過剰の未結合の抗体が除去され、固定化された抗原に結合した標識の量が測定される。もし、固定化抗原に結合した標識の量が、コントロールサンプルと比較して試験サンプル中で実質的に減少している場合、それは、第二抗体が、抗原への結合に対して、第一の抗体と競合していることを示している。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照。
【0188】
本明細書で記載のように調製されるイムノコンジュゲートは、当分野で知られている技術、例えば高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等によって精製されうる。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、一部には正味荷電、疎水性、親水性等の要因に依存し、当業者に明瞭であろう。アフィニティークロマトグラフィー精製では、イムノコンジュゲートが結合する抗体、リガンド、受容体又は抗原が使用されうる。例えば、本発明のイムノコンジュゲートのアフィニティークロマトグラフィー精製では、プロテインA又はプロテインGを伴うマトリックスが使用されうる。逐次的なプロテインA又はGアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーが、実施例に本質的に記載されるようにイムノコンジュゲートを単離するために使用されうる。イムノコンジュゲートの純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー等を含む様々なよく知られた分析方法の何れかによって決定されうる。例えば、実施例に記載されるように発現される重鎖融合タンパク質は、還元SDS−PAGEで実証されるようにインタクトで、正しく会合していると示された(例えば
図4を参照)。3つのバンドはおよそ分子量25000、分子量50000及び分子量60000で分離され、免疫グロブリン軽鎖、重鎖及び重鎖/エフェクター部分融合タンパク質の予測された分子量に対応する。
【0189】
アッセイ
本明細書で提供されるイムノコンジュゲートは、同定され、当技術分野で公知の様々なアッセイによってその物理的/化学的性質及び/又は生物学的活性についてスクリーニングされ、または特徴づけることができる。
【0190】
親和性アッセイ
Fc受容体又は標的抗原に対するエフェクター部分受容体(例えば、IL−10R又は様々な形態のIL−2R)に対するイムノコンジュゲートの親和性は、実施例に記載の方法に従って、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、BIAcore装置(GEヘルスケア)のような標準的な器具類を使用して決定することができ、そしてそのような受容体又は標的タンパク質は、組換え発現によって得ることができる。代替的に、異なる受容体又は標的抗原に対するイムノコンジュゲートの結合を、特定の受容体又は標的抗原を発現する細胞株を用いて、例えば、フローサイトメトリー(FACS)により評価することができる。結合親和性を測定するための具体的な実例であり、例示的な実施態様は、以下及び下記実施例に記載されている。
【0191】
一実施態様によると、K
Dは、CM5チップ上に固定されたリガンド(例えば、エフェクター部分受容体、Fc受容体または標的抗原)を用いて、25℃で、BIACORE(登録商標)T100機器(GE Healthcare)を使用して表面プラズモン共鳴によって測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,GE Healthcare)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。組換えリガンドを10mMの酢酸ナトリウム、pH5.5で0.5−30μg/mlに希釈し、結合したタンパク質の応答単位(RU)がおよそ100−5000になるように10μl/分の流速で注入する。リガンドの注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動力学測定のために、イムノコンジュゲート3から5倍の段階希釈(〜0.01nMから300nM)が、HBS−EP+(GE Healthcare、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%界面活性剤P20、25℃、pH7.4)中で約30〜50μl/分の流量で注入される。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model)(BIACORE(登録商標)T100評価ソフトウェアバージョン1.1.1)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(K
D)はk
off/k
on比として算出される。例えば、Chen et al., J Mol Biol 293, 865-881 (1999)を参照。
【0192】
活性のアッセイ
実施例に記載のように、本発明のイムノコンジュゲートの生物学的活性は、様々なアッセイによって測定することができる。生物学的活性は、例えば、エフェクター部分受容体保有細胞の増殖の誘導、エフェクター部分の受容体保有細胞におけるシグナル伝達の誘導、エフェクター部分受容体保有細胞によるサイトカイン分泌の誘導、及び腫瘍退縮の誘導、及び/又は生存の改善を含んでもよい。
【0193】
組成物、製剤、及び投与の経路
更なる態様においは、本発明は、例えば下記の治療方法の何れかにおける使用のための、本明細書に提供されるイムノコンジュゲートの何れかを含んでなる薬学的組成物を提供する。一実施態様では、薬学的組成物は、本明細書に提供されるイムノコンジュゲートの何れか及び薬学的に許容可能な担体を含む。別の実施態様では、薬学的組成物は、本明細書に提供されるイムノコンジュゲートの何れか及び少なくとも一つの更なる治療剤、例えば下記のものを含む。
【0194】
更に提供されるのは、インビボでの投与に適した形態における本発明のイムノコンジュゲートを生産する方法であって、(a)本発明によるイムノコンジュゲートの獲得、及び(b)少なくとも一つの薬学的に許容可能な担体を伴うイムノコンジュゲートの製剤化を含んでなり、それによってイムノコンジュゲートの調整物がインビボでの投与のために製剤化される方法である。
【0195】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体中に溶解又は分散された治療的に有効な量の一又は複数のイムノコンジュゲートを含む。「薬学的に又は薬理学的許容可能な」なる語句は、用いられる投与量及び濃度ではレシピエントに一般的に非毒性であり、すなわち、例えばヒトなどの動物に適宜投与された時に、有害な、アレルギー性の又は他の望まない応答をもたらさない分子実体及び組成物を指す。少なくとも一つのイムノコンジュゲート及び場合によっては更なる活性成分を含有する薬学的組成物の調製は、本開示に照らして当業者によく知られており、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990に例示され、出典明記によってここに援用する。更に、動物(例えばヒト)投与では、調製物が、生物学的基準のFDAオフィス(FDA Office of Biological Standards)又は他の国において対応する当局によって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性及び純度標準を満たすべきであることが理解されるだろう。好ましい組成物は凍結乾燥製剤又は水溶液である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、当業者に知られているありとあらゆる溶剤、バッファー、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、抗酸化剤、タンパク質、薬物、薬物安定剤、ポリマー、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、色素、同様な物質及びその組合せを含む(例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照(出典明記によってここに援用する))。
【0196】
何れかの一般的な担体が活性成分と不適合である場合を除き、治療的又は薬学的組成物におけるその使用が意図される。
【0197】
組成物は、それが固体、液体又はエアロゾル形態で投与されるか、またそれが注射などの投与経路のために無菌である必要があるかに依存して、異なるタイプの担体を含みうる。本発明のイムノコンジュゲート(及び何れかの追加の治療剤)は、当業者に知られているように、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、脾臓内に、腎内に、胸膜内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、腟内に、直腸内に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍内に、眼球内に、経口で、局所的に、局在的に、吸入によって(例えば、エアロゾル吸入)、注射によって、注入によって、持続注入によって、標的細胞を浸す限局灌流によって直接、カテーテルによって、洗浄(lavage)によって、クリームにおいて、液体組成物(例えばリポソーム)において、又は他の方法によって、又は前述の何れかの組合せによって投与されうる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990を参照(出典明記によってここに援用する))。非経口投与、特に静脈内注射が、発明のイムノコンジュゲートなどのポリペプチド分子の投与に最も一般的に使用される。
【0198】
非経口組成物は、注射、例えば皮下、皮内、病巣内、静脈内、動脈内、筋肉内、くも膜下腔内又は腹腔内注射による投与のために設計されたものを含む。注射では、本発明のイムノコンジュゲートは、水溶液中、好ましくは生理学的適合したバッファー、例えばハンクス液、リンガー液、又は生理学的緩衝生理食塩水中に製剤化されうる。溶液は、懸濁、安定及び/又は分散剤などのフォーミュラトリー剤を含みうる。あるいは、イムノコンジュゲートは、使用前は、適切なビヒクル、例えば滅菌発熱性物質除去蒸留水の構成用に粉末形態でありうる。滅菌注射溶液は、本発明のイムノコンジュゲートを、必要に応じて下に挙げる様々な他の成分を伴う適切な溶媒中に必要量で組み入れることによって調製される。滅菌は、例えば滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成されうる。一般的に分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基礎分散培地及び他の成分を含有する無菌ビヒクルに組み入れることによって調製される。滅菌注射溶液、懸濁液又はエマルションの調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分+任意の追加の所望成分の粉末を、先に滅菌−濾過されたその液体培地から得る真空乾燥又は凍結乾燥技術である。液体培地は、必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤は注射の前に十分な生理食塩水又はグルコースでまず等張にされるべきである。組成物は、製造及び保管の条件下で安定でなければならなく、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。内毒素汚染は安全なレベル、例えば0.5ng/mg未満のタンパク質で最小限に保たれるべきであることが理解されるだろう。適な薬学的に許容可能な担体は、限定するものではないが;リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;マンノサッカライド、ジサッカライド、およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、ソルビトール、デキストランなど、懸濁液の粘度を増加させる化合物を含有しうる。
【0199】
場合によっては、懸濁液は、高濃縮液の調製を可能にするために、適切な安定剤又は化合物の溶解度を増加させる薬剤をまた含有しうる。更に、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製されうる。適切な親油性溶媒又はビヒクルは、脂肪油、例えばゴマ油、又は合成脂肪酸エステル、例えばエチルクリート(ethyl cleats)又はトリグリセリド、又はリポソームを含む。
【0200】
活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ−粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed. Mack Printing Company, 1990)に開示されている。徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の適切な例は、ポリペプチドを含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。特定の実施態様では、注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン又はその組合せの組成物における使用によって実施されうる。
【0201】
前述の組成物に加えて、イムノコンジュゲートはまた、デポー調製物として製剤化されうる。そのように長く作用する製剤は、インプラント術(例えば皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射によって投与されうる。従って、例えば、イムノコンジュゲートは、適切なポリマー又は疎水性材料(例えば許容可能な油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂とともに、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤化されうる。
【0202】
本発明のイムノコンジュゲートを含んでなる薬学的組成物は、慣習的な混合、溶解、乳化、カプセル化、封入、凍結乾燥プロセスによって製造されうる。薬学的組成物は、薬剤的使用可能な調製物へのタンパク質の加工を容易にする一又は複数の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤又は補助剤を使用して、一般的な方法において製剤化されうる。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。イムノコンジュゲートは、遊離酸又は塩基、中性又は塩形態の組成物に製剤化されうる。薬学的に許容可能な塩は、遊離酸又は塩基の生物学的活性を実質的に保った塩である。これらは酸付加塩、例えばタンパク質組成物の遊離アミノ基で形成されるもの、又は塩酸又はリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸又はマンデル酸などの有機酸で形成されるものを含む。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄などの無機塩基;又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン又はプロカインなどの有機塩基から得られうる。薬学的塩は、対応する遊離塩基形態よりも水性及び他のプロトン性溶媒中において溶けやすい傾向がある。
【0203】
治療方法及び組成物
本明細書で提供される任意のイムノコンジュゲートは、治療方法に使用することができる。本発明の免疫複合体は、免疫治療剤として、例えば癌の治療において使用することができる。
【0204】
治療的方法において使用のために、本発明のイムノコンジュゲートは良好な医療行為に合致した方法で処方され、投与され、投薬される。この観点において考慮すべき要因は、治療すべき特定の障害、治療すべき特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程及び医療従事者が知る他の要因を包含する。
【0205】
一態様では、医薬として使用するために本発明のイムノコンジュゲートが提供される。更なる態様では、疾患の治療において使用のために本発明のイムノコンジュゲートが提供される。ある実施態様において、治療の方法における使用のために本発明のイムノコンジュゲートが提供される。一実施態様において、本発明は、それを必要としている個体において、疾患の治療に使用のために、本明細書に記載されるイムノコンジュゲートを提供する。ある実施態様において、本発明は、個体にイムノコンジュゲートの治療的有効量を投与することを含む、疾患を有する個体を治療する方法に使用のためのイムノコンジュゲートを提供する。ある実施態様において、治療すべき疾患は、増殖性疾患である。特定の実施態様において、疾患は癌である。他の実施態様において、治療すべき疾患は、炎症性疾患である。ある実施態様において、本方法は、少なくとも一の更なる治療剤、例えば、治療すべき疾患が癌である場合には抗癌剤の治療的有効量を個体に投与することを更に含む。上記実施態様のいずれかに記載の「個体」は、哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0206】
更なる態様では、本発明は、必要している個体における疾患の治療のための医薬の製造又は調製における、本発明のイムノコンジュゲートの使用を提供する一実施態様において、本医薬は、疾患を有する個体に、医薬の治療的有効量を投与することを含む、疾患を治療する方法で使用するためのものである。ある実施態様において、治療すべき疾患は、増殖性疾患である。特定の実施態様において、疾患は癌である。他の実施態様において、治療すべき疾患は、炎症性疾患である。一実施態様において、本方法は、少なくとも一の更なる治療剤、例えば、治療すべき疾患が癌である場合には抗癌剤の治療的有効量を個体に投与することを更に含む。上記実施態様のいずれかに記載の「個体」は、哺乳動物であり、好ましくはヒトであり得る。
【0207】
更なる態様において、本発明は、本発明のイムノコンジュゲートの治療的有効量を前記個体に投与することを含む、個体において疾患を治療するための方法を提供する。一実施態様において、本発明のイムノコンジュゲートを薬学的に許容される形態で含むイムノコンジュゲートが前記個体に投与される。ある実施態様において、治療すべき疾患は、増殖性疾患である。特定の実施態様において、疾患は癌である。他の実施態様において、治療すべき疾患は、炎症性疾患である。ある実施態様において、本方法は、少なくとも一の更なる治療剤、例えば、治療すべき疾患が癌である場合には抗癌剤の治療的有効量を個体に投与することを更に含む。上記実施態様のいずれかに記載の「個体」は、哺乳動物であり、好ましくはヒトであり得る。
【0208】
ある実施態様において、治療すべき疾患は、増殖性疾患、特に癌である。癌の非限定的例は、膀胱癌、脳癌、頭頸部癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、血液癌、皮膚癌、扁平上皮癌、骨癌、及び腎臓癌を含む。本発明のイムノコンジュゲートを使用して治療できる他の細胞増殖障害は、限定するものではないが、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部、及び泌尿生殖器系の新生物を含む。また含まれるのは、前癌性の状態又は病変及び癌転移を含む。ある実施態様では、癌は、腎細胞癌、皮膚癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、脳癌、頭頸部癌から成る群から選択される。幾つかの実施態様において、特にイムノコンジュゲートのエフェクター部分がIL−10である場合、治療すべき疾患は炎症性疾患である。炎症性疾患の非限定的な例としては、慢性関節リウマチ、乾癬又はクローン病が挙げられる。当業者は、多くの場合において、イムノコンジュゲートが治癒ではなく、部分的恩恵のみをもたらしうることを認識するだろう。幾つかの実施態様では、何らかの利益を有する生理学的変化がまた治療的に有益であると考えら得る。従って、幾つかの実施態様では、生理学的変化をもたらすイムノコンジュゲートの量が、「有効な量」又は「治療的に有効な量」と考えられる。治療を必要とする被験体、患者、又は個体は典型的には哺乳動物、より具体的にはヒトである。
【0209】
本発明のイムノコンジュゲートはまた、診断用試薬として有用である。抗原決定基へのイムノコンジュゲートの結合は、エフェクター部分に特異的な二次抗体を使用して容易に検出できる。一実施態様では、二次抗体及びイムノコンジュゲートは、細胞又は組織表面上に位置する抗原決定基へのイムノコンジュゲートの結合の検出を容易にする。
【0210】
幾つかの実施態様では、有効量の本発明のイムノコンジュゲートが、細胞に投与される。他の実施態様では、治療的に有効な量の本発明のイムノコンジュゲートが、疾患の治療のために個体に投与される。
【0211】
疾患の予防又は治療のためには、本発明のイムノコンジュゲートの適切な用量(単独で使用されるか、又は、一以上の更なる治療的薬剤との組み合わされる場合)は治療すべき疾患の種類、投与の経路、患者の体重、イムノコンジュゲートの種類、疾患の重症度及び経過、イムノコンジュゲートを予防又は治療目的のいずれにおいて投与するか、前の又は同時の治療介入、イムノコンジュゲートに対する患者の臨床的履歴及び応答性、及び担当医の判断に依存する。何れの場合も、投与に責任のある実践者が、個々の被験体に対し、組成物中の活性成分の濃度及び適切な用量を決定するだろう。限定するものではないが、単回又は様々な時間点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含む様々な投与スケジュールが、ここで考えられる。
【0212】
イムノコンジュゲートは、患者に対して、単回、又は一連の治療にわたって適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一回以上の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、イムノコンジュゲートの約1μg/kgから15mg/kg(例えば0.1mg/kgから10mg/kg)が患者への投与のための初期候補用量となり得る。1つの典型的な一日当たり用量は上記した要因に応じて約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲である。数日間以上にわたる反復投与の場合には、状態に応じて、治療は疾患症状の望まれる抑制が起こるまで持続するであろう。イムノコンジュゲートの1つの例示される用量は約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲であろう。他の非限定的な例では、用量はまた、投与あたり約1マイクログラム/kg/体重から、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重、約1000mg/kg/体重まで又はそれ以上、及びその中で導きだされる何れかの範囲を含む。ここで挙げた数値から導きだされる範囲の非限定的な例は、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重〜約500ミリグラム/kg/体重などの範囲が、上記の数値に基づき投与されうる。このように、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg又は10mg/kgの一又は複数(又はその何れかの組合せ)の用量が、患者に投与されうる。このような用量は、間欠的に、例えば毎週又は3週間毎に投与されうる(例えば、患者は約2〜約20、又は例えば約6用量のイムノコンジュゲートを受ける)。最初の高負荷用量と、その後の一又は複数の低用量が投与されうる。しかしながら、他の投与レジメンが有用でありうる。この療法の進行は、一般的な技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0213】
本発明のイムノコンジュゲートは一般的に、意図した目的を達成するために有効な量において使用されるだろう。疾患状態を治療又は防止するための使用では、発明のミュータントIL−2ポリペプチド及びイムノコンジュゲート又はその薬学的組成物は、治療的に有効な量において投与又は適用される。治療的に有効な量の決定は、特にここに提供される詳細な開示の考慮のもと、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0214】
全身性投与では、治療的に有効な用量は最初に、細胞培養アッセイなどのインビトロアッセイから推定されうる。次いで用量は、細胞培養において決定されるIC
50を含む循環濃度範囲を得るために、動物モデルにおいて組み立てられうる。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用されうる。
【0215】
最初の投与量はまた、当分野においてよく知られている技術を使用して、インビボデータ、例えば動物モデルから推定されうる。当業者は、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化できるだろう。
【0216】
投与量及び間隔は、治療効果を維持するのに十分なイムノコンジュゲートの血漿レベルを提供するために、個々に調整されうる。注射による投与のための通常の患者の投与量は、約0.1〜50mg/kg/日、典型的には約0.5〜1mg/kg/日である。治療的に有効な血漿レベルは、毎日の複数回投与によって達成されうる。血漿中のレベルは、例えばHPLCによって測定されうる。
【0217】
局所投与又は選択的取込みの場合、イムノコンジュゲートの有効な局所濃度は血漿濃度と関連しない場合がある。当業者は、過度な実験をすることなく、治療的に有効な局所投与量を最適化できるだろう。
【0218】
治療的に有効な用量のイムノコンジュゲートは一般的に、実質的な毒性をもたらすことなく治療効果を提供するだろう。イムノコンジュゲートの毒性及び治療効果は、細胞培養又は実験動物において標準的な手順によって決定できる。細胞培養アッセイ及び動物研究は、LD
50(集団の50%に致死性である用量)及びED50(集団の50%に治療的に有効である用量)を決定するために使用できる。毒性及び治療効果間の用量比は、比LD
50/ED
50として表現される治療指数である。大きい治療指数を示すイムノコンジュゲートが好ましい。一実施態様では、本発明によるイムノコンジュゲートは、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用に好適な投与量の範囲の策定に使用されうる。投与量は好ましくは、ほとんどあるいは全く毒性の無いED
50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、様々な要因、例えば採用される剤形、利用される投与経路、被験体の状態などに応じて、この範囲内において変わりうる。正確な処方、投与の経路及び投与量は、患者の状態を考慮してそれぞれの医師によって選択されうる。(例えばFingl et al., 1975, in: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch. 1, p. 1(出典明記によってその全体をここに援用する)を参照)。
【0219】
本発明のイムノコンジュゲートで治療される患者の主治医は、毒性、臓器不全などに対し、どのように及びいつ投与を終了、中断、調整するかを知っているだろう。逆に、主治医はまた、臨床反応が十分でない場合、治療を高レベルに調整することを知っているだろう(毒性を除く)。目的の障害の管理における投与量の程度は、治療される状態の重症度、投与の経路などによって様々だろう。状態の重症度は、例えば標準的な予後評価方法によって一部には評価されうる。さらに、用量及びおそらくは投与頻度はまた、個々の患者の年齢、体重及び反応によって様々だろう。
【0220】
他の薬剤及び治療
本発明によるイムノコンジュゲートは、治療において一又は複数の他の薬剤との組合せにおいて投与されうる。例えば、本発明のイムノコンジュゲートは、少なくとも一つの追加の治療剤と共投与されうる。「治療剤」なる用語は、治療を必要としている個体における症状又は疾患を治療するために投与される何れかの薬剤を包含する。このような追加の治療剤は、治療されている特定の徴候に好適な何れかの活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補活性を伴うものを含みうる。ある実施態様では、追加の治療剤は、免疫調節剤、細胞分裂阻害剤、細胞接着の阻害剤、細胞傷害剤、細胞アポトーシスの活性化剤、又はアポトーシス誘導物質に対する細胞の感受性を増加させる薬剤である。特定の実施態様では、追加の薬剤は、抗癌剤、例えば微小管撹乱物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン療法、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、又は抗血管新生剤である。
【0221】
このような他の薬剤は、意図した目的のために有効な量で組み合わされ適切に存在する。そのような他の薬剤の有効量は、使用されるイムノコンジュゲートの量、障害又は治療の種類及び上記した他の要因に依存する。イムノコンジュゲートは一般的には本明細書に記載されるのと同じ用量及び投与経路において、又は、本明細書に記載された用量の1%から99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の用量及び任意の経路により使用される。
【0222】
上記のこうした併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同一または別々の組成物に含まれている)、及び、本発明のイムノコンジュゲートの投与が、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与の前、同時、及び/又はその後に起きうる分離投与を包含する。本発明のイムノコンジュゲートはまた放射線治療と併用して用いることができる。
【0223】
製造品
本発明の他の態様では、上記の疾患の治療、予防及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。該製造品は容器と該容器上又は該容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、IV液バッグ等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は、症状を治療、予防及び/又は診断するために有効な組成物単独又は他の組成物と組み合わせる組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内投与溶液バッグでありうる)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は本発明のイムノコンジュゲートである。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が選択された症状の治療に使用されることを示す。更に、製造品は、(a)本発明のイムノコンジュゲートを含有する組成物を中に収容する第一の容器と(b)更なる細胞障害剤又はそれ以外の治療薬を含有する組成物を中に収容する第二の容器とを含みうる。本発明のこの実施態様における製造品は、組成物を特定の症状の治療に使用することができることを示しているパッケージ挿入物を更に含む。あるいは、もしくは付加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二の(又は第三の)容器を更に具備してもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【実施例】
【0224】
以下は本発明の方法および組成物の例である。上記提供される一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施され得ることが理解される。
【0225】
実施例1:
一般的な方法
組換えDNA技術
Sambrook et al., Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に既述されるように、標準的な方法がDNAを操作するために使用された。分子生物学的試薬を、製造元の指示に従って使用した。ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖の塩基配列に関する一般情報については次に与えられる:Kabat, E.A. et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Ed., NIH Publication No 91-3242。
【0226】
DNA配列決定
DNA配列は、二本鎖配列決定により決定した。
遺伝子合成
必要な場合、所望の遺伝子を、適切な鋳型を使用してPCRによって生成するか、又は自動化遺伝子合成による合成オリゴヌクレオチド及びPCR産物からGeneart AG(Regensburg, Germany)によって合成した。正確な遺伝子配列が入手可能でない場合、オリゴヌクレオチドプライマーを最も近いホモログからの配列に基づいて設計し、遺伝子を適切な組織に由来するRNAからRT−PCRによって単離した。特異な制限エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接する遺伝子セグメントを標準のクローニング/シークエンシングベクターにクローン化した。プラスミドDNAを形質転換した細菌から精製し、UV分光法により濃度を決定した。サブクローニング遺伝子断片のDNA配列を、DNA配列決定によって確認した。遺伝子セグメントは、それぞれの発現ベクター中にサブクローニングできるように適切な制限部位を伴って設計された。全てのコンストラクトは、真核細胞内の分泌のためにタンパク質を標的とするリーダーペプチドをコードする5’末端DNA配列を含んでいた。配列番号8から16は、典型的なリーダーペプチドを提供し、ポリヌクレオチド配列はそれらをコードする。
【0227】
IL−2R βγサブユニット−Fc融合体及びIL−2R αサブユニットFc融合体の調製
IL−2受容体結合の親和性を試験するために、ヘテロ二量体IL−2受容体の発現を可能にするツールが生成され;「ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)」技術を用いて、IL−2受容体のβサブユニットが、ヘテロ二量体化(Fc(ホール))(配列番号17及び18を参照)するように操作されたFc分子に融合された(Merchant et al., Nat Biotech. 16, 677-681 (1998))。次いでIL−2受容体のγサブユニットがFc(ノブ)変異体(配列番号19及び20)へ融合され、Fc(ホール)とヘテロ二量体化した。次いでこのヘテロ二量体化Fc融合タンパク質は、IL−2/IL−2受容体相互作用を解析するために基質として使用された。IL−2Rαサブユニットが、AcTev開裂部位とAvi Hisタグを持つ単量体鎖として発現された(配列番号21及び22)。それぞれのIL−2Rサブユニットを、IL−2Rβγサブユニットコンストラクトについては血清を含み、α−サブユニットコンストラクトについては血清を含まずに、一過性にHEK EBNA293で発現させた。IL−2RβγサブユニットコンストラクトはプロテインAで精製され(GE Healthcare)、続いてサイズ排除クロマトグラフィーで精製した(GE Healthcare, Superdex 200)。IL−2Rαサブユニットは、NiNTAカラム(Qiagen)上でHisタグを介して精製され、続いてサイズ排除クロマトグラフィーで精製した(GE Healthcare, Superdex 75)。様々な受容体コンストラクトのヌクレオチド配列に対応するアミノ酸が配列番号17〜22及び255〜268に与えられる。
【0228】
イムノコンジュゲートの調製
FAPを指向する抗原結合部分の生成及び親和性成熟についての詳細は、その全体が出典明記により本明細書に援用されるPCT特許出願公開番号WO2012/020006に追加された実施例に見いだすことができる。そこに記載されるように、FAPを指向した様々な抗原結合ドメインが、ファージディスプレイにより生成され、以下の実施例で使用される4G8、28H1及び4B9と指定されたものを含む。クローン28H1は親クローンの4G8ベースの親和性成熟抗体であるが、クローン4B9は親クローン3F2ベースの親和性成熟抗体である。本明細書に使用されている2B10と指定される抗原結合ドメインは、テネイシンCのA2ドメイン(TNC A2)に指向される。TNC A2を指向するこれと他の抗原結合部分についての詳細は、その全体が出典明記により本明細書に援用されるPCT特許出願公開番号WO2012/020038号に見いだすことができる。L19と指定される抗原結合ドメインは、フィブロネクチンのエキストラドメインB(EDB)を指向し、PCT特許出願公開番号WO2007/128563に記載されるL19抗体に由来する。本明細書で使用されるCH1A1A及びCH1A1A 98/99 2F1と指定された抗原結合ドメインはCEAに対して指向し、その詳細は、その全体が出典明記により本明細書に援用されるPCT特許出願公開番号PCT/EP2012/053390に記載される。
【0229】
以下の実施例の幾つかでエフェクター部分として使用されるIL−2四重変異体(qm)は、詳細が、その全体が出典明記により本明細書に援用されるPCT特許出願公開番号PCT/EP2012/051991に記載される。簡潔には、IL−2 qmは、以下の変異によって特徴付けられる。
1.T3A−予測O−糖鎖付加部位のノックアウト
2.F42A−IL−2/IL−2Rα相互作用のノックアウト
3.Y45A−IL−2/IL−2Rα相互作用のノックアウト
4.L72G−IL−2/IL−2Rα相互作用のノックアウト
5.C125A−ジスルフィド架橋IL−2二量体を避けるための変異
【0230】
T3A変異は、それを含むIL−2 qmポリペプチド又はイムノコンジュゲートが例えば、CHOまたはHEK293細胞などの真核細胞で発現されるときに、O−グリコシル化部位を排除しより高い均一性および純度のタンパク質生成物を得るために選択された。3つの変異F42A、Y45A及びL72Gは、IL−2受容体のαサブユニット、CD25への結合を妨げるために選択された。CD25結合の減少または消滅は、活性化誘導細胞死(AICD)、調節性T細胞の選択的活性化の欠如、並びに毒性の減少を生じた(欧州特許出願公開第11153964.9号に記載されるように)。
【0231】
DNA配列は、遺伝子合成及び/又は古典的な分子生物学の技術によって生成され、MPSVプロモーターの制御下で、哺乳動物発現ベクター中、合成ポリA部位の上流に、サブクローニングし、各ベクターがEEBV OriP配列を保有する。下記の実施例に適用されるイムノコンジュゲートは、リン酸カルシウムトランスフェクションを用いて、指数関数的に増殖しているHEK293−EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターとともに共トランスフェクトすることにより産生された。あるいは、懸濁液中で増殖するHEK293細胞を、それぞれの発現ベクターを用いてポリエチレンイミン(PEI)によりトランスフェクトした。あるいは、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞プール又はCHO細胞クローンを無血清培地での生産のために使用した。続いて、IgG−サイトカイン融合タンパク質を上清から精製した。簡単に述べると、IgG−サイトカイン融合タンパク質は、20mMリン酸ナトリウム、20mMのクエン酸ナトリウムpH7.5中で平衡化されたプロテインA(HiTrap ProtA, GE Healthcare)による一親和性工程で精製した。上清をロードした後、カラムを最初に20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.5で洗浄し、続いて13.3mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、pH5.45で洗浄した。IgG−サイトカイン融合タンパク質は、20mMクエン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、100mMグリシンpH3で溶出した。画分を中和し、プールし、最終製剤緩衝液:25mMリン酸カリウム、125mM塩化ナトリウム、100mMグリシンpH6.7でサイズ排除クロマトグラフィー(HiLoad 16/60 Superdex 200, GE Healthcare)によって精製した。典型的な詳細な精製手順および結果が以下の選択されたコンストラクトにおいて与えられる。精製されたタンパク質サンプルのタンパク質濃度を、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光係数を用いて、280nmでの光学密度(OD)を測定することによって決定した。イムノコンジュゲートの純度及び分子量は、還元剤(5mMの1,4−ジチオトレイトール)の存在下及び非存在下でのSDS−PAGEにより分析され、クマシーブルー(SimpleBlue
TM SafeStain,インビトロジェン)により染色される。NuPAGE(登録商標)Pre−Castゲルシステム(インビトロジェン)を、製造業者の取扱説明書に従って使用した(4−20%のトリスグリシン・ゲル又は3−12%のBis−Tris)。イムノコンジュゲートサンプルの凝集体量を、2mMのMOPS、150mMのNaCl、0.02%のNaN
3、pH7.3の泳動バッファー中、25℃にてSuperdex200 10/300GL分析用サイズ排除カラム(GE Healthcare)を使用して分析した。還元した抗体軽鎖及び重鎖のアミノ酸骨格の完全性を、ペプチド−N−グリコシダーゼF(Roche Molecular Biochemicals)での酵素的処理によるN−グリカンの除去後のナノエレクトロスプレー(NanoElectrospray) Q−TOF質量分析によって確認することができる。イムノコンジュゲートのFcドメインに結合したオリゴ糖は、後述するように、MALDI TOF−MSによって分析される。オリゴ糖はPNGaseF消化によりイムノコンジュゲートから酵素的に放出される。放出オリゴ糖を含む得られた消化溶液は、MALDI TOF−MS分析のために直接調製されるか、又はMALDI TOF−MS分析のためのサンプル調製に先立ち、EndoHグリコシダーゼで更に消化する。
【0232】
実施例2:
FAP−標的化IgG−IL−2 qm融合タンパク質は、FAP−抗体4G8、28H1及び4B9に基づいて生成され、ここでは
図2Aに示すように、一つのIL−2四重変異体(qm)が一つのヘテロ二量体化重鎖のC末端に融合したことを特徴とする。FAPが選択的に発現される腫瘍間質への標的化は、二価抗体のFab領域を介して達成される(アビディティー効果)。単一のIL−2四重変異体の存在下で生じるヘテロ二量体は、ノブ・イントゥ・ホール技術の適用によって達成される。ホモ二量体IgG−サイトカイン融合体の生成を最小限にするために、サイトカインは、(G
4S)
3またはG4−(SG
4)
2リンカーを介してノブを含むIgG重鎖の(C末端Lys残基の欠失を有する)C−末端に融合させた。抗体−サイトカイン融合体は、IgG様特性を有する。FcγR結合/エフェクター機能を低下させ、FcR同時活性化を防止するために、P329G L234A L235A(LALA)の変異がFcドメインに導入された。これらのイムノコンジュゲートの配列が、配列番号193、269及び205((G
4S)
3リンカーを含む28H1)、配列番号193、195及び205(G
4−(SG
4)
2リンカーを含む28H1)、配列番号201、203及び205(G
4−(SG
4)
2リンカーを含む4G8)、配列番号207、209及び211(G
4−(SG
4)
2リンカーを含む4B9)、配列番号207、271及び211((G
4S)
3リンカーを含む4B9)に与えられる。
【0233】
更に、抗CEA抗体CH1A1A 98/99 2F1ベースのCEA標的化IgG−IL−2 qmの融合タンパク質、IgGが指定された標的に結合しない、コントロールDP47GS非標的化IgG−IL−2 qmの融合タンパク質、並びにテネイシン−CのA2ドメインを標的とする腫瘍間質特異的2B10ベースのIgG−IL−2 qm融合タンパク質が生成された。これらのイムノコンジュゲートの配列が、配列番号275、281及び283(G
4−(SG
4)
2リンカーを含むCH1A1A 98/99 2F1)、配列番号277、281及び283((G
4S)
3リンカーを含むCH1A1A 98/99 2F1)、配列番号219、221及び225(G
4−(SG
4)
2リンカーを含むDP47GS)、配列番号219、289及び225(SG
4−(SG
4)
2リンカーを含むDP47G)、配列番号285、287及び239((G
4S)
3リンカーを含む2B10)に与えられる。コンストラクトはHEK293 EBNA細胞における一過性発現によって生成され、上記のように精製した。
図3から9は、精製の典型的なクロマトグラム及び溶出プロファイル(A、B)、並びに最終の精製されたコンストラクトの分析用SDS−PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィー(C、D)を示す。一過性の発現収率は、4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートで42mg/L、28H1ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートで20mg/L、CH1A1A 98/99 2F1ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートで10mg/L、CH1A1A 98/99 2F1ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートで5.3mg/L、2B10ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートで36.7mg/L及びDP47GSベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートで13.8mg/Lであった。
【0234】
更に、28H1ベースのFAP標的化IgG−IL−15イムノコンジュゲートが生成され、その配列は配列番号193、199及び205に与えられる。IL−15ポリペプチド配列において、IL−15受容体のαサブユニットへの結合を減少させるために、53位のグルタミン酸残基がアラニンで置換され、グリコシル化を消滅するために、79位のアスパラギン残基がアラニンに置換される。IgG−IL−15融合タンパク質は、一過性発現によって生成され、上記のように精製される。
【0235】
FAP結合親和性
4G8及び28H1抗FAP抗体に基づいたIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートのFAP結合活性が、対応する非修飾型IgG抗体に比較してBiacore機器で表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された。簡潔には、抗His抗体(Penta-His, Qiagen 34660)をCM5チップ上に固定し、10nMのHisタグ付ヒトFAP(20s)を捕獲した。温度は25℃であり、HBS−EPを緩衝液として使用した。分析物濃度は50nMから0.05nMまで下がり、流量は50μl/分(会合:300s,解離:900s、再生:60s10mMグリシンpH2)だった。フィッティングを1:1結合モデル、RI=0、Rmax=local(捕獲フォーマットのため)に基づいて実施した。以下の表は、1:1結合モデル、RI=0、Rmax=localを用いて適合したSPRによって測定された、推定される見かけの二価の親和性(pMアビディティ)を与える。
【0236】
データは、この方法の誤差の範囲内で、対応する未修飾抗体と比較した場合、ヒトFAPの親和性は28H1ベースのイムノコンジュゲートでは保持され、又は4G8ベースのイムノコンジュゲートではほんのわずか減少したことを示している。
【0237】
同様に、4B9 IgG−IL−2 qm(16pM)、CH1A1A 98/99 2F1 IgG−IL−2 qm(400pM)、CH1A1A 98/99 2F1 IgG−IL−2 wt(実施例4参照;470pM)、及び2B10 IgG−IL−2 qm(非結合型2B10 IgGにおいて150pM対300pM)のヒトFAP、CEA及びTNC A2に対するそれぞれの親和性(K
D)が25℃でSPRによって測定された。ヒト、マウス及びカニクイザルのFAP又はTNC A2のそれぞれに対する4B9および2B10抗体の交差反応性もまた確認された。
【0238】
続いて、IL−2Rβγヘテロ二量体とIL−2Rαサブユニットへの4G8−及び28H1ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの親和性を表面プラズモン共鳴(SPR)により測定し、PCT特許出願PCT/EP2012/051991に記載されたFab−IL−2 qm−Fab−イムノコンジュゲートのフォーマットと直接比較した。簡単に言うと、リガンド−ヒトIL−2Rαサブユニット又はヒトIL−2Rβγヘテロ二量体のどちらか−をCM5チップ上に固定化した。続いて、比較のために4G8−及び28H1ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲート又は4G8−及び28H1ベースのFab−IL−2 qm−Fabイムノコンジュゲートが、分析物として、300nMから下限1.2nMの範囲の濃度でHBS−EP緩衝液中で25℃でチップに適用された(1:3希釈)。流速は30μl/分で以下の条件が、会合:180s、解離:300s、及び再生:IL−2R βγヘテロ二量体では3MのMgCl
2を含み2x30s、IL−2R α−サブユニットでは50mMのNaOHを含み10sに適用された。1:1結合がフィッティングに適用された(1:1結合 RI≠0、Rmax=local(IL−2R βγにおいて)、見かけのK
D、1:1結合RI=0、Rmax=local(IL−2R αにおいて)。それぞれのK
D値を以下の表に示す。
【0239】
本データは、4G8−及び28H1ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートは、Fab−IL−2 qm−Fabイムノコンジュゲートと少なくとも同程度に良好な親和性でIL−2Rβγヘテロ二量体に結合するが、それらはCD25の結合に干渉する変異の導入に起因してIL−2Rαサブユニットに結合しないことを示している。それぞれのFab−IL−2 qm−Fabイムノコンジュゲートに比べて、IgG−IL−2 qm融合タンパク質の親和性はこの方法の誤差の範囲内でわずかに増強されるように見える。
【0240】
同様に、IL−2 wt(実施例4参照)又はIL−2 qmのどちらかを含む更なるコンストラクト(4B9、DP47GS、2B10、CH1A1A 98/99 2F1)のIL−2Rβγヘテロ二量体及びIL−2Rαサブユニットに対する親和性が25℃でSPRによって測定された。全てのコンストラクトにおいて、ヒトIL−2Rβγヘテロ二量体の見かけのK
Dは、(コンストラクトがIL−2 wt又はIL−2 qmを含むかどうかに関わらず)6と12nMの間であったが、IL−2 wtを含むコンストラクトだけがIL−2Rαサブユニットに結合する(ヒトIL−2RαのK
Dは20nM程度)。
【0241】
IgG−サイトカインイムノコンジュゲートとの生物学的活性アッセイ
FAP標的化4G8ベースのIgG−IL−2 qm融合体の生物学的活性を、市販のIL−2(Proleukin, Novartis/Chiron)及び/又はEP11153964.9に記載されるFab−IL−2Fabイムノコンジュゲートと比較して幾つかの細胞アッセイで調べた。
【0242】
FAP発現細胞への結合
FAP標的化4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの、安定的にトランスフェクトしたHEK293細胞に発現したヒトFAPに対する結合を、FACSにより測定した。簡潔には、丸底96ウェルプレートにおいて、ウェルあたり250000細胞を、イムノコンジュゲートの指示された濃度でインキュベートし、4℃で30分間インキュベートし、PBS/0.1%のBSAで1回洗浄した。結合したイムノコンジュゲートを、FACS CantoII(Software FACS Diva)を使用して、FITC結合AffiniPure F(ab’)2断片ヤギ抗ヒトF(ab’)2 Specific(Jackson Immuno Research Lab #109-096-097、希釈標準溶液:PBS/0.1%BSAで1:20に希釈、新たに調製)を用いて4℃で30分間インキュベーション後に検出した。結果を
図10に示す。本データは、IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートは、4G8ベースのFab−IL−2 qm−Fabコンストラクトのそれ(0.7nM)に匹敵する、0.9nMのEC50値でFAP発現細胞に特異的に結合することを示している。
【0243】
NK細胞によるIFN−γ放出(溶液中)
続いて、FAP標的化4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートは、IL−2Rβγシグナル伝達の活性化によって誘発されるNK92細胞によるIFN−γ放出の誘導について研究された。簡潔には、IL−2欠乏NK92細胞(96Uウェルプレート中に100,000細胞/ウェル)を、四重変異体IL−2を含んでいる異なる濃度のIL−2イムノコンジュゲートとともに、24時間、NK培地中(10%FCS、10%ウマ血清、0.1mMの2−メルカプトエタノール、0.2mMのイノシトールおよび0.02mMの葉酸を添加したインビトロジェンのMEMアルファ(#22561−021))でインキュベートした。上清を回収し、IFN−γの放出は、ベクトン・ディッキンソン(#550612)からの抗ヒトIFN−γELISAキットIIを使用して分析した。プロロイキン(ノバルティス)と28H1ベースのFab−IL−2 qm−Fあbは、細胞のIL−2媒介性活性化の陽性対照とした。
図11は、FAP標的化4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートは、IFN−γの放出の誘導において、親和性成熟型28H1ベースのFab−IL−2 qm−Fabイムノコンジュゲートと等しく有効であることを示している。
【0244】
STAT5リン酸化アッセイ
実験の最後の組において、我々は、STAT5のリン酸化の誘導における、FAP標的化4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの効果を、28H1ベースのFab−IL−2−Fab及びFab−IL−2 qm−Fabイムノコンジュゲート、並びにヒトPBMCからのヒトNK細胞、CD4
+ T細胞、CD8
+ T細胞、およびTreg細胞上のプロロイキンと比較して研究した。簡単に言えば、健康なボランティアからの血液をヘパリン含有注射器で採取し、PBMCを単離した。PBMCを指定した濃度で指定したイムノコンジュゲートで処理し、又は対照としてプロロイキン(ノバルティス)と処理した。37℃で20分間インキュベートした後、PBMCを、37℃で10分間、予め温めたCytofix緩衝液(Becton Dickinson #554655)を用いて固定し、その後4℃で30分間Phosflow Perm Buffer III(Becton Dickinson #558050)で透過処理した。細胞を、0.1%BSAを含有するPBSで2回洗浄し、その後異なる細胞集団およびSTAT5のリン酸化の検出のため、FACS染色をフローサイトメトリー抗体の混合物を使用して行った。サンプルはBecton DickinsonからのHTSでFACSCantoIIを用いて分析した。NK細胞はCD3
−CD56
+として定められ、CD8陽性T細胞はCD3
+CD8
+として定められ、CD4陽性T細胞はCD4
+CD25
−CD127
+として定められ、T
reg細胞はCD4
+CD25
+FoxP3
+として定められた。CD25の発現が非常に低いか又は全く発現を示さないNK細胞およびCD8
+ T細胞においては(IL−2Rのシグナル伝達は、主に、IL−2Rβγヘテロ二量体によって媒介されることを意味する)、結果は、4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートは、プロロイキンよりもSTAT5のリン酸化の誘導が10倍より強くなく、28H1ベースのFab−IL−2のFabおよびFab−IL−2 qm−Fabのイムノコンジュゲートよりもわずかに強いことを示している。刺激されるとCD25の急速な上方制御を示すCD4
+ T細胞においては、4G8ベースのIgG−IL−2qmイムノコンジュゲートは、28H1 Fab−IL−2−Fabイムノコンジュゲートよりも弱かったが、28H1 Fab−IL−2 qm−Fabイムノコンジュゲートよりわずかに強力なであり、プロロイキン及び28H1 Fab−IL−2−Fabと同等の飽和濃度でなおIL−2Rシグナル伝達の誘導を示していた。このことは、4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの効力が、Treg細胞における高度なCD25の発現、及びCD25に対する4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの低い結合親和性に起因して、Fab−IL−2−Fabイムノコンジュゲートに比べて著しく低下しているTreg細胞とは対照的である。4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートにおけるCD25結合の消滅の結果、Treg細胞におけるIL−2シグナル伝達は、IL−2Rのシグナル伝達がIL−2Rβγヘテロ二量体を通じてCD25陰性エフェクター細胞上で活性化された濃度で、IL−2R βγヘテロ二量体を介してのみ活性化される。まとめると、4G8ベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートは、IL−2Rβγヘテロ二量体を通じて、IL−2Rのシグナル伝達を活性化することができるが、他のエフェクター細胞よりもTreg細胞の優先的な刺激をもたらさない。これらの実験の結果を
図12に示す。
【0245】
2B10 IgG−IL−2 qmのTNC A2発現細胞への結合
TNC A2を標的とした2B10 IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの、U87MG細胞上に発現されるヒトTNC A2に対する結合がFACSにより測定される。簡潔には、丸底96ウェルプレートにおいて、ウェルあたり200000細胞を、イムノコンジュゲートの指示された濃度でインキュベートし、4℃で30分間インキュベートし、PBS/0.1%のBSAで2回洗浄した。結合したイムノコンジュゲートを、FACS CantoII(Software FACS Diva)を使用して、FITC結合AffiniPure F(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcγ Specific(Jackson Immuno Research Lab #109-096-098、希釈標準溶液:PBS/0.1%BSAで1:20に希釈、新たに調製)を用いて4℃で30分間インキュベーション後に検出した。結果を
図13に示す。データは、2B10 IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートは、TNC A2発現U87MG細胞対して、対応する非結合型IgGと等しく良好に結合する。
【0246】
IgG−IL−2イムノコンジュゲートによるNK92細胞増殖の誘導
2B10 IgG−IL−2 qm、CH1A1A 98/99 2F1 IgG−IL−2 qm、CH1A1A 98/99 2F1 IgG−IL−2 wt、4B9 IgG−IL−2 qm及び4B9 IgG−IL−2 wtイムノコンジュゲートがNK92細胞の増殖を誘導するそれらの能力について試験された。増殖アッセイにおいて、NK92細胞を、2時間、IL−2を含まない培地中で飢餓状態にし、10000細胞/ウェルで平底96ウェルプレートに播種し、次いでIL−2イムノコンジュゲートの存在下で、37℃、5%CO
2の加湿インキュベーター中で3日間インキュベートした。3日後、細胞溶解物のATP含量は、PromegaからのCellTiter−Glo発光細胞生存率アッセイ(#G7571/2/3)を用いて測定した。増殖の割合を算出し、1.1mg/mlのプロロイキン(ノバルティス)濃度を100%の増殖に、IL−2刺激を伴わない未処理細胞を0%の増殖に設定した。結果を
図14及び15に示す。データは、全てのコンストラクトはNK92細胞増殖を誘導することができ、CH1A1Aベースのコンストラクトは2B10 IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートよりも活性であり、IL−2 wtを含むコンストラクトはIL−2 qmを含む対応するコンストラクトよりも活性であった。
【0247】
実施例3:
一般に、それぞれのサイトカイン受容体がFcγRシグナル伝達と共活性化されるときに、FcγR結合/エフェクター機能を低下させ、よって過剰なサイトカイン放出を防ぐために、ほぼ完全ヒトIgG
1抗体のFcγRとの相互作用を消失したP329G LALA変異(その全体が参照により本明細書に組み入れられる欧州特許出願EP11160251.2を参照)が導入される。具体的な場合、例えば抗体が高度に腫瘍特異的抗原を標的としたとき、Fcエフェクター機能は非修飾型IgGのFcドメインを使用して保持することができ、又はIgGのFcドメインの糖鎖工学を介して更に強化することができる。
【0248】
その一例として、我々は、一つのIL−2四重変異体が、抗CEA抗体クローンCH1A1Aに基づいた(SG
4)
3−リンカーを介して1つのヘテロ二量体重鎖のC末端に融合された、CEAを標的としたIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートを生成した。このイムノコンジュゲートには、P329G LALA変異が含まれていなかった(配列番号227、229及び231を参照)。イムノコンジュゲートは、後述するようにヒト野生型IgG−又は糖鎖操作型IgG−IL−2 qm融合タンパク質として発現され精製された。
【0249】
(糖鎖操作型)IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの調製
CEAを標的としたCH1A1AベースのIgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートは、哺乳動物抗体発現ベクターによりHEK293−EBNA細胞を同時導入することにより産生した。指数関数的に増殖しているHEK293−EBNA細胞は、リン酸カルシウム法により遺伝子導入された。あるいは、懸濁液中で増殖しているHEK293細胞は、ポリエチレンイミンにより遺伝子導入される。非修飾型の非糖鎖操作型IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの産生のために、細胞は、抗体の重鎖および軽鎖発現ベクターのみを1:1の比率で遺伝子導入した(抗体の重鎖ベクターは、二つのベクターの1:1混合物である:エフェクター部分を有する重鎖用のベクター、及びエフェクター部分のない重鎖用ベクター)。糖鎖操作型CEA標的化IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートの産生に対しては、細胞に、2つの追加のプラスミド、一つはGnTIII融合ポリペプチド発現用(GnT−III発現ベクター)、もう一つはマンノシダーゼII発現用(ゴルジマンノシダーゼII発現ベクター)をそれぞれ4:4:1:1の比で同時導入した。細胞を、10%のFCSを補填したDMEM培養培地を使用してTフラスコ中で付着単層培養として増殖させ、それらが50及び80%集密になったときに形質移入した。T150フラスコの遺伝子導入では、FCS(最終10%V/Vで)を補填した25mlのDMEM培養培地に遺伝子導入の24時間前に1500万細胞を播種し、細胞を5%CO
2大気のインキュベーターに37℃で一晩配した。遺伝子導入される各T150フラスコに対して、DNA、CaCl
2及び水の溶液を、軽鎖及び重鎖発現ベクター間に等しく分配された94μgの全プラスミドベクターDNA、469μlの最終容量までの水及び469μlの1MのCaCl
2溶液を混合することによって調製した。この溶液に、938μlの50mMのHEPES、280mMのNaCl、1.5mMのNa
2HPO
4溶液(pH7.05)を加え、直ぐに10秒間混合し、室温で20秒間静置した。懸濁液を、2%のFCSを補填した10mlのDMEMで希釈し、既存の培地の代わりにT150フラスコに加えた。ついで、更なる13mlの遺伝子導入培地を加えた。細胞を約17から20時間、37℃、5%CO
2でインキュベートし、ついで培地を25mlのDMEM、10%FCSに置換した。条件培養培地を210×gでの15分の遠心分離による培地交換から約7日後に収集した。溶液を滅菌濾過(0.22μmフィルター)し、0.01%w/vの最終濃度のアジ化ナトリウムを加え、4℃に維持した。
【0250】
分泌された野生型又は糖鎖操作型CEA IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートを、上述のように、プロテインA親和性クロマトグラフィーを用いた親和性クロマトグラフィーにより、その後HiLoad Superdex200カラム(GE Healthcare)上でのサイズ排除クロマトグラフィー工程により細胞培養上清から精製した。上述したように、タンパク質濃度、純度、分子量、凝集体含有量および完全性を分析した。
【0251】
(糖鎖操作型)IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートのオリゴ糖構造解析
フコース含有オリゴ糖構造及び非フコシル化オリゴ糖構造の相対比の測定のために、精製したイムノコンジュゲート材料の放出されたグリカンをMALDI TOF質量分析法によって分析する。タンパク質骨格からオリゴ糖を放出するために、イムノコンジュゲートサンプル(約50μg)を2mMのTris、pH7.0中で5mUのN−グリコシダーゼF(QAbio;PNGaseF:E−PNG01)と一緒に37℃にて一晩インキュベートするグリカンの脱アミノ化のために、酢酸が最終濃度150mMまで添加され、37℃で1時間インキュベートされる。MALDI TOF質量分析法による分析のために、2μLのサンプルがを2μLのDHBマトリックス溶液(4mg/mlで50%エタノール/5mMのNaClに溶解された2,5−ジヒドロキシ安息香酸[Bruker Daltonics #201346])とともにMALDIターゲット上で混合され、MALDI TOF質量分析計AutoflexII測定器(Bruker Daltonics)で分析される。日常的に、50から300ショットが記録され、単一の実験にまとめられる。得られたスペクトルを、フレックス分析ソフトウェア(Bruker Daltonics)によって評価し、そして質量を検出したピークのそれぞれについて決定する。続いて、計算した質量を、それぞれの構造物(例えばそれぞれフコースを含む及び含まない複合体、ハイブリッド、及びオリゴ又は高マンノース)について理論的に予想した質量を比較することによって、ピークをフコース含有及び非フコシル化糖鎖構造物に割り当てる。
【0252】
ハイブリッド構造の比率を決定するために、抗体サンプルはN−グリコシダーゼFとEndo−グリコシダーゼH[QAbio;EndoH:E−EH02]とで同時に消化される。N−グリコシダーゼFはタンパク質骨格から全てのN−結合型糖鎖構造(複合体、ハイブリッド、及びオリゴ及び高マンノース構造)を放出し、EndoグリコシダーゼHは、グリカンの還元末端で、2つのN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の間の全てのハイブリッドタイプのグリカンをさらに開裂する。この消化物は、その後、N−グリコシダーゼF消化サンプルについて上記と同様にMALDI TOF質量分析法によって処理され、分析される。N−グリコシダーゼF消化物からのパターンをN−グリコシダーゼF/Endo Hの組み合わせによる消化物と比較することにより、特定の糖鎖構造のシグナルの減少の程度が、ハイブリッド構造の相対含量を推定するために使用される。各糖鎖構造の相対的な量は、個々の構造のピーク高さと検出された全オリゴ糖のピーク高さの和との比から算出される。フコースの量は、N−グリコシダーゼF処理した試料(例えば、複合体、ハイブリッド、及びオリゴ及び高マンノース構造物)に同定された全ての糖鎖構造に関連したフコース含有構造の割合である。非フコシル化の程度は、N−グリコシダーゼF処理した試料(例えば、複合体、ハイブリッド、及びオリゴ及び高マンノース構造物)に同定された全ての糖と比べたフコース欠失構造の割合である。
【0253】
抗体依存性細胞傷害アッセイ
野生型及び糖鎖操作型CEA標的化CH1A1A IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートを、抗体媒介性細胞傷害を媒介するそれらの可能性についてADCCアッセイで比較された。簡潔には、CEAを過剰発現するA549ヒト腫瘍細胞を収集し、洗浄し、培地中に再懸濁し、30分間37℃で新たに調製したカルセインAM(Molecular Probes)で染色し、3回洗浄し、カウントされ、300000細胞/mlに希釈した。この懸濁液を丸底96ウェルプレート(30000細胞/ウェル)に移し、それぞれのイムノコンジュゲート希釈液を添加し、試験されたイムノコンジュゲートの細胞に対する結合を容易にするために、エフェクター細胞と接触させる前に、10分間インキュベートした。新鮮に単離されたPBMCについてエフェクターと標的の比率は1〜25であった。共インキュベーションは4時間実施された。二つの異なる読み出しシステムを使用した:攻撃された細胞の分解後の上清への乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出、及び残存生細胞におけるカルセインの保持。共培養上清からのLDHはLDH検出キット(Roche Applied Science)を使用して収集され分析された。LDH酵素による基質変換は、ELISA吸光リーダー(SoftMaxProソフトウェア、リファレンス波長:490nm対650nm)を用いて測定された。ペレット化した細胞からの上清の残余を除去し、溶解前にPBS中での1回洗浄工程、及びホウ酸緩衝液(50mMのホウ酸、0.1%トリトン)による細胞の固定の後、生細胞における残留カルセインが蛍光リーダー(Wallac VICTOR3 1420 Multilabel COUNTER (Perkin Elmer))で分析された。
【0254】
図16は、LDHの検出に基づく結果を示している。同様の結果はカルセイン保持率に基づいて得られた(示さず)。両方のコンストラクトがADCCを媒介することができ、糖鎖操作コンストラクトは、対応する糖鎖操作型非結合型IgGと同様に活性であった。期待どおりに、非糖鎖操作型コンストラクトは糖鎖操作型コンストラクトと比較して活性の低下を示した。
【0255】
実施例4:
FAP標的化28H1又は4B9ベースの、CEA標的化CH1A1A 98/99 2F1ベースの、及び非標的化DP47GSベースのIgG−IL−2イムノコンジュゲートが産生され、ここでは一つの単一野生型IL−2ポリペプチドが、一本のヘテロ二量体重鎖のC末端へ融合している。単一のIL−2部分を持つイムノコンジュゲートにおいて生じるヘテロ二量体は、ノブ・イントゥ・ホール技術の適用によって達成される。ホモ二量体IgG−IL−2融合体の生成を最小限にするために、サイトカインは、G
4−(SG
4)
2又はa(G
4S)
3リンカーを介して、ノブを含むIgG重鎖(C末端Lys残基の欠失を有する)に融合させた。これらのイムノコンジュゲートの配列が、配列番号193、197及び205(G
4−(SG
4)
2リンカーを含む28H1)、配列番号207、273及び211((G
4S)
3リンカーを含む4B9)、配列番号277、279及び283((G
4S)
3リンカーを含むCH1A1A 98/99 2F1)、配列番号219、223及び225(G
4−(SG
4)
2リンカーを含むDP47GS)、配列番号219、293及び225((G
4S)
3リンカーを含むDP47GS)に与えられる。抗体−サイトカイン融合体は、IgG様特性を有する。FcγR結合/エフェクター機能を低下させ、FcR同時活性化を防止するために、P329G LALAの変異がFcドメインに導入された。両方のコンストラクトは上記の方法に従って精製された。最終精製は、最終製剤緩衝液:20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH6において、サイズ排除クロマトグラフィー(HiLoad 26/60 Superdex 200、GE Healthcare)によって行われた。
図17から20は、精製の各クロマトグラム及び溶出プロファイル(A、B)、並びに最終の精製されたコンストラクトの分析用SDS−PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィー(C、D)を示す。収率は、非標的化DP47GS IgG−IL−2イムノコンジュゲートにおいて15.6mg/L、28H1 IgG−IL−2イムノコンジュゲートにおいて26.7mg/ml、CH1A1A 98/99 2F1 IgG−IL−2イムノコンジュゲートにおいて4.6mg/L、及び4B9 IgG−IL−2イムノコンジュゲートにおいて11mg/Lであった。
【0256】
続いて、FAPに対する結合特性、それぞれの結合の欠如、並びにIL−2R βγ及びIL−2R αへの結合が上述のようにSPRによって測定された(実施例2を参照)。免疫エフェクター細胞集団における細胞活性及びインビボでの薬力学的効果も検討した。
【0257】
実施例5:
FAP標的化4G8ベース、並びにTNC A2標的化2B10ベースのIgG−IL−10イムノコンジュゲートが、2つの異なるIL−10サイトカインフォーマットを、ホール修飾を含んでなるヘテロ二量体IgGの重鎖のC末端へ融合させることにより構築された:(G
4S)
420量体リンカーが2つのIL−10分子の間に挿入された単鎖IL−10、又は操作された単量体IL−10のどちらか (Josephson et al., J Biol Chem 275, 13552-7 (2000))。両方の分子は、(G
4S)
315量体リンカーを介して、C末端Lys残基の欠失を伴い、ホール修飾を含んでなる重鎖のC末端へ融合された。IL−10部分を保有する一重鎖のみにて生じる生じるヘテロ二量体は、ノブ・イントゥ・ホール技術の適用によって達成される。IgG−サイトカイン融合体は、IgG様特性を有する。FcγR結合/エフェクター機能を低下させ、FcR同時活性化を防止するために、P329G LALAの変異がイムノコンジュゲートのFcドメインに導入された。各コンストラクトの配列は配列番号233、235及び239(scIL−10を含む2B10)、配列番号233、237及び239(単量体IL−10“IL−10M1”を含む2B10)、配列番号241、243及び205(scIL−10を含む4G8)、配列番号241、245及び205(IL−10M1を含む4G8)に与えられる。これらの全てのイムノコンジュゲートは上記の方法に従って精製された。続いて、FAP又はTNC A2のそれぞれに対する結合特性、並びにヒトIL−10R1へのそれらの親和性がProteOn XPR36バイセンサーを用いてSPRによって測定された。簡潔には、標的のFAP又はTNC A2並びにヒトIL−10R1はセンサーチップ表面に垂直な配向で固定化された(FAPは標準的なアミンカップリングにより、TNC A2及びヒトIL−10R1(両方ともC末端avi−タグを介してビオチン化)はニュートラアビジン捕捉による)。続いて、IgG−IL−10イムノコンジュゲートは、水平配向での分析物として、ゼロ濃度を含む6つの異なる濃度で注入された。二重に参照した後、運動速度定数および親和性を決定するために、センサーグラムは1:1相互作用モデルに適合させた。分析的SDS PAGE分析及び標的抗原並びにIL−10受容体に対するSPRに基づいた親和性決定の結果を
図21および
図22に示す。データは、イムノコンジュゲートはTNC A2又はFAPにK
D値がそれぞれ52又は26で結合するが、IL−10受容体に対するK
D値は520と815pMであることを示している。
【0258】
実施例6:
上述の方法に従って、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットのN末端に融合したFAPを指向し、一つの単一28H1ベース又は4B9ベースのFab領域からなるが、ノブ修飾を持つIgG重鎖の第二のFab領域が(G
4S)
nリンカー(n=1)を介してサイトカインにより置換されているIgG−サイトカイン融合タンパク質が生成され及び発現された。このイムノコンジュゲートフォーマット(「1+1」フォーマットとも言う)の概略については、
図2Cを参照。使用したサイトカイン部分は、上記及びPCT特許出願PCT/EP2012/051991に記載されるIL−2四重変異体(配列番号3を参照)、IL−7及びIFN−αであった。リンカーペプチドを介してノブ修飾を含むFcドメインサブユニットのN末端に融合した、サイトカイン部分を含む融合ポリペプチドの対応する配列は、配列番号247(四重変異体IL−2を含む)、249(IL−7を含む)、及び251(IFN−αを含む)に与えられる。これらのコンストラクトにおいては、イムノコンジュゲートの標的化は、高親和性の一価Fab領域を介して達成される。このフォーマットは、抗原の内在化が一価の結合剤を用いて減少しうる場合に推奨されうる。イムノコンジュゲートは上述のように産生され精製され分析された。IL−2 qm又はIL−7、プロテインA親和性クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーは1回の実行において組み合わされた。20mMヒスチジン、140mMのNaCl、pH6.0を、サイズ排除クロマトグラフィー及び最終製剤緩衝液として使用した。
図23から−26は、精製の溶出プロファイル及びクロマトグラム、並びに最終の精製されたコンストラクトの分析用SDS−PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィーを示す。収率は、4B9「1+1」IgG−IL−2 qmにおいて11mg/L、28H1「1+1」IgG−IL−2 qmにおいて43mg/L、4B9「1+1」IgG−IL−7において20.5mg/L、及び4B9「1+1」IgG−IFN−αコンストラクトにおいて10.5mg/Lであった。
【0259】
IL−2 qmを含む「1+1」コンストラクトのNK細胞増殖を誘導する能力は、IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートと比較して検証された。NK−92細胞を、96ウェル−黒の平らな透明底プレートに10000細胞/播種する前に、2時間飢餓状態にした。イムノコンジュゲートは播種されたNK−92細胞上において滴定された。72時間後、ATP含有量が測定され、CellTiter−Glo発光細胞生存率アッセイキット(Promega)を製造業者の指示に従って使用して生存細胞の数を決定した。
図27は、「1+1」コンストラクトはNK92細胞の増殖を誘導することができ、対応するIgG−IL−2 qmコンストラクトよりもわずかに活性が弱いことを示している。
【0260】
IL−2qm又はIL−7を含む4B9ベースの「1+1」コンストラクトは、IgG−IL−2イムノコンジュゲートと比較して、T細胞増殖を誘導するそれらの能力について試験された。末梢血単核細胞(PBMC)を、Histopaque−1077 (Sigma Diagnostics Inc., St. Louis, MO, USA)を使用して調製した。簡単に言えば、バフィーコートからの血液を、カルシウム及びマグネシウムを含まないPBSで5:1希釈し、Histopaque−1077上に積層した。グラジエントは中断することなく、室温(RT)で30分間、450×gで遠心分離した。PBMCを含有する中間相を回収し、PBSで3回洗浄した(室温で10分間、350×g、その後300×g)。PBMCは、100nM CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で15分間37℃で標識される前に、1μg/mlのPHA−M(シグマアルドリッチ#L8902)で一晩、前もって刺激された。標識されたPBMCを30分間37℃で回収する前に、細胞は20mlの培地で洗浄された。細胞を洗浄し、計数し、100000細胞を96ウェルU底プレートに播種した。イムノコンジュゲートは、6日間のインキュベーション時間のために播種した細胞上で滴定された。その後、細胞を洗浄し、適切な細胞表面マーカーについて染色し、BD FACSCantoIIを用いてFACSによって分析した。CD4 T細胞はCD3
+/CD8
−として定義されCD8 T細胞はCD3
+/CD8
+として定義された。
【0261】
図28は、IL−2 qm又はIL−7のどちらかを含む「1+1」コンストラクトはPHA活性化CD4(A)及びCD8 T細胞(B)の増殖を誘導することができることを示す。NK細胞については、IL−2 qmを含む「1+1」コンストラクトは、IgG−IL−2 qmコンストラクトよりもわずかに弱い活性である。
【0262】
IFN−αを含む4B9ベースの「1+1」コンストラクトは、ロフェロンA(ロッシュ)と比較して、ダウディ細胞増殖を阻害するその能力について試験された。簡潔には、ダウディ細胞を、100nMのCFSEで標識し、96ウェルU底プレート(50’000細胞/ウェル)に播種した。分子は、示された濃度で添加され、続いて37℃で3日間インキュベートした。増殖は、CFSE希釈を分析し、生存/死滅の染色を使用して分析から死細胞を除くことによって測定した。
【0263】
図29は、コンストラクトは少なくともロフェロンAと同様に強力に、ダウディ細胞の増殖を阻害することができたことを示している。
【0264】
実施例7:
野生型又は四重変異体IL−2のどちらかを含むFAP標的化IgG−IL−2イムノコンジュゲート、及び野生型又は四重変異体IL−2のどちらかを含む非標的化IgG−IL−2イムノコンジュゲートについて、単一用量薬物動態学的(PK)研究が腫瘍のない免疫応答性129のマウスで実施された。
【0265】
実験の開始時に8〜9週齢のメスの129匹のマウス(Harlan, United Kingdom)が特定病原体フリー条件下で、確約されたガイドライン(GV-Solas; Felasa; TierschG)に従って12時間明/12時間の暗闇の日々のサイクルを伴い維持された。実験研究プロトコールはレビューされ、地方政府によって承認された(P2008016)。到着後、動物を新しい環境に慣れさせてそして観察のために1週間維持した。持続的な健康モニタリングを定期的に実施した。
【0266】
マウスに、FAP標的化28H1 IgG−IL2 wt(2.5mg/kg)又は28H1 IgG−IL2 qm(5mg/kg)、又は非標的化DP47GS IgG−IL2 wt(5mg/kg)又はDP47GS IgG−IL2 qm (5mg/kg)を1回静脈注射した。全てのマウスは200μlの適切な溶液で静脈注射された。200μlあたりの適切なる量のイムノコンジュゲートを得るために、ストック溶液は必要に応じてPBSで希釈した。
【0267】
マウスは1、8、24、48、72、96時間後に採血し、その後2日ごとに3週間採血した。血清を抽出し、ELISA分析まで−20℃で保存した。血清中のイムノコンジュゲート濃度は、IL−2イムノコンジュゲート抗体(Roche-Penzberg)の定量化のためのELISAを用いて測定した。吸収は、405nmの測定波長および492nmの参照波長を用いて測定した(VersaMaxの調整可能なマイクロプレートリーダー、Molecular Devices)。
【0268】
図30は、これらのIL−2イムノコンジュゲートの薬物動態を示す。FAP標的化(A)及び非標的化(B)IgG−IL2 qmコンストラクトは、対応するIgG−IL−2 wtコンストラクト(約15時間)よりも長い血清半減期(約30時間)を有している。注目すべきは、実験条件は直接比較することはできないものの、例えばGillies et al., Clin Cancer Res 8, 210-216 (2002)に報告されるように、本発明のIL−2イムノコンジュゲートの血清半減期は、当該技術分野で公知の報告「2+2」のIgG−IL−2イムノコンジュゲート(
図2を参照)の血清半減期よりも長いように思われる。
【0269】
実施例8:
生体内分布の研究が、本発明のイムノコンジュゲートの腫瘍標的化を評価するために行われた。FAP標的化28H1ベースのIgG−IL−2 qmは、FAP標的化非結合型28H1 IgG及び4B9 IgG、及び非標的化DP47GS IgGに対して比較された。更に、SPECT/CTイメージング研究が4B9 IgG−IL−2 qmを用いて行われ、DP47GS IgG−IL−2 qm、4B9 IgG及びDP47GS IgGにgと比較された。
【0270】
DTPAのコンジュゲーション及び
111In標識化
28H1 IgG−IL−2 qm、28H1 IgG
1、4B9 IgG−IL−2 qm、4B9 IgG
1及びDP47 IgG
1の溶液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、15mM)に対して透析した。2mgのコンストラクト(5mg/ml)を0.1Mの炭酸水素ナトリウム、pH8.2の中で、厳格に金属を含まない条件下で、室温(RT)で1時間ITC−DTPAの5倍モル過剰とのインキュベーションにより、イソチオシアネートベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸 (ITC-DTPA, Macrocyclis, Dallas, TXと結合させた。非結合体ITC−DTPAを0.1Mの2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液、pH5.5に対する透析によって除去した。
【0271】
精製されたコンジュゲートを、0.05%のウシ血清アルブミン(BSA)と0.05%のTween80を含有する、0.1MのMES緩衝液、pH5.5中で、厳格に金属を含まない条件下で室温え30分間
111In(Covidien BV, Petten, The Netherlands)とのインキュベーションにより放射標識した。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を放射性標識した後に、未結合の
111Inをキレート化するために5mMの最終濃度まで添加した。
111In標識化生成物を使い捨てG25Mカラムでゲル濾過により精製した(PD10, Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)。精製された
111In標識化コンストラクトの放射化学的純度を、TECコントロールクロマトグラフィーストリップ(Biodex、Shirley、NY)上のインスタント薄層クロマトグラフィー(ITLC)によって、移動相として、0.1Mクエン酸緩衝液、pH6.0を用いて決定した。
111Inで標識された調製物の比活性は、0.6から4.6MBqで/μgであった。
【0272】
Lindmoアッセイ
111In標識化抗体調製物の免疫反応性画分は以前に記述されたように決定された (Lindmo et al. (1984) J Immunol Methods 72, 77-89)。簡潔には、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)cDNAを遺伝子導入されたヒト胚腎臓(HEK)細胞の連続希釈系列を、37℃で1時間
111In標識したコンストラクトの200ベクレルと共にインキュベートした。最低の細胞濃度の複製物を、非特異的結合について補正するために、過剰量の非標識化コンストラクトの存在下でインキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、スピンダウンし、細胞結合性放射活性をガンマカウンター(ワラックウィザード3’’1480自動γ−カウンター、ファルマシアLKB)で細胞ペレット中で測定した。調製物の免疫反応性画分は、75から94%の範囲であった。
【0273】
動物
雌のBALB/cヌードマウス(8−9週齢、+/−20g)をジャンバーから購入し、Radboud大学ナイメーヘン医療センターの中央動物施設において、5匹の動物を個別に換気したケージ内で、自由に食料と水を利用する標準的条件下で飼育した。1週間の順応後に、動物に、左脇腹にマトリゲル(1:3)中の0x10
6 HEK−FAP細胞を、任意で、右脇腹にマトリゲル(1:3)中の5x10
6 HEK−293細胞を皮下接種した。異種移植片の増殖はキャリパー測定(体積=(4/3・π)・(1/2・長さ)・(1/2・幅)・(1/2・高さ)によりモニターした。異種移植片が100立方ミリメートルの体積に達したとき、マウスに
111In標識されたコンストラクトを静脈注射した。
【0274】
体内分布(28H1 IgG−IL−2 qm、28H1 IgG
1、4B9 IgG
1及びDP47GS IgG
1)
111Inで標識されたコンストラクト(5MBq、150μg、200μl)を尾静脈から静脈内注射した。注射の24時間後に動物をCO
2/O
2の大気中で窒息により安楽死させた。血液、筋肉、異種移植、肺、脾臓、膵臓、腎臓、胃(空)、十二指腸(空)と肝臓を集め、計量し、放射活性をガンマカウンター(Wallac Wizard)で測定した。注射用量(1%)の標準規格を同時に計数し、組織取り込みは、グラム組織あたりの注射用量の%として計算した(%ID/g)。
【0275】
SPECT−CT解析(4B9 IgG−IL−2 qm、4B9 IgG
1、DP47GS IgG−IL−2 qm及びDP47GS IgG
1)
111In−標識化4B9−IgG−IL−2 qm、4B9−IgG
1、DP47GS−IgG−IL−2 qm及びDP47GS−IgG
1を静脈注射した。(20MBq、50、150、300μg、200μl)。注入後4、24、72および144時間で、動物はイソフラン/O
2で麻酔し、1.0ミリメートルマウスコリメータを備えたU−SPECT II microSPECT/CTカメラ(MILabs、Utrecht、The Netherlands)で30〜60分間スキャンした。コンピュータ断層撮影(CT)は、SPECTの直後に実施された。SPECT(0.4ミリメートルのボクセルサイズ)とCTスキャンの両方がMILabsソフトウェアを使用して再構成され、SPECTとCTスキャンは放射性シグナルの正確な位置を決定するために共に記録された。3D画像は、シーメンスInveonリサーチワークプレースソフトウェアを使用して作成された。
【0276】
図31は、24時間での28H1及び4B9 IgG1及び28H1 IgG−IL−2 qmの組織分布と腫瘍標的化の間に有意差はなく(それ故サイトカインはイムノコンジュゲートの組織分布および腫瘍標的化の特性を有意には変更せず)、そしてFAP標的化コンストラクトの腫瘍対血液比は、非標的化DP47GS対照IgGよりも有意に大きいことを示している。
【0277】
これらの結果は、4B9 IgG−IL−2 qmイムノコンジュゲートのSPECT/CTイメージングで確認された(データは示さず)。4B9 IgG−IL−2 qmはFAP陽性HEK−FAPに局在化するが、FAP陰性HEK−293対照腫瘍には局在化せず、一方非標的化DP47GSイムノコンジュゲートはどちらの腫瘍にも局在化しなかった。非結合体のIgGとは異なり、4B9 IgG−IL−2 qmの弱い取り込みは、脾臓でも観察された。
【0278】
実施例9:
28H1ベースのIgG−IL−2 qm及び28H1ベースのIgG−(IL−2 qm)
2(すなわち、
図1に示される「2+2」フォーマットのイムノコンジュゲート:配列は配列番号253及び205に示される)のNK92細胞への結合が比較された。ウェル当たり200000個のNK92細胞を96ウェルプレートに播種した。イムノコンジュゲートNK92細胞上に滴定し、結合を可能にするために4℃で30分間インキュベートした。細胞を、0.1%BSAを含有するPBSで2回洗浄し、未結合のコンストラクトを除去した。イムノコンジュゲートの検出のため、FITC標識化抗ヒトFc特異的抗体が4℃で30分間加えられた。細胞を再び0.1%BSAを含有するPBSで2回洗浄し、BD FACSCantoIIを用いてFACSにより分析した。
図32に示されるように、「2+2」イムノコンジュゲートは、対応する「2+1」コンストラクトよりもNK92細胞に対する良好な結合を示している。
【0279】
実施例10:
IL−2イムノコンジュゲートによるヒトPBMC増殖の誘導
末梢血単核細胞(PBMC)を、Histopaque−1077(Sigma Diagnostics Inc., St. Louis, MO, USA)を使用して調製した。簡潔には、健康なボランティアからの静脈血をヘパリン化シリンジ内に吸引した。血液を、カルシウム及びマグネシウムを含まないPBSで2:1希釈し、Histopaque−1077上に積層した。グラジエントは中断することなく、室温(RT)で30分間、450×gで遠心分離した。PBMCを含有する中間相を回収し、PBSで3回洗浄した(室温で10分間、350×g、その後300×g)。
【0280】
続いて、PBMCは、40nMのCFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で15分間37℃で標識された。標識されたPBMCを30分間37℃で回収する前に、細胞は20mlの培地で洗浄された。細胞を洗浄し、計数し、100000細胞を96ウェルU底プレートに播種した。予め希釈しプロロイキン(市販の野生型IL−2)又はIL2イムノコンジュゲートは、示された時点でインキュベートした播種された細胞において滴定された。4〜6日後、細胞を洗浄し、適切な細胞表面マーカーについて染色し、BD FACSCantoIIを用いてFACSによって分析した。NK細胞はCD3
−/CD56
+として定義され、CD4 T細胞はCD3
+/CD8
−として定義され、CD8 T細胞はCD3
+/CD8
+として定義される。
【0281】
図33は、FAPを標的とした28H1 IL−2イムノコンジュゲートによる4日間(A)、5日間(B)又は6日間(C)のインキュベーション後のNK細胞の増殖を示す。試験した全てコンストラクトは濃度依存的にNK細胞の増殖を誘導した。プロロイキンは低濃度でイムノコンジュゲートよりも有効であったが、しかしながらこの違いはより高い濃度ではもはや存在しなかった。より早期の時点では(4日目)、IgG−IL2コンストラクトは、Fab−IL2−FABコンストラクトよりも若干強力に見えた。その後の時点では(6日目)、全てのコンストラクトは同等の有効性を持っており、Fab−IL2 qm−Fabコンストラクトは、低濃度で最小の強さであった。
【0282】
図34は、FAPを標的とした28H1 IL−2イムノコンジュゲートによる4日間(A)、5日間(B)又は6日間(C)のインキュベーション後のCD4 T細胞の増殖を示す。試験した全てコンストラクトは濃度依存的にCD4 T細胞の増殖を誘導した。プロロイキンはイムノコンジュゲートよりも高い活性を有しており、野生型IL−2を含むイムノコンジュゲートは、四重変異体IL−2を含むものよりもわずかに強力であった。NK細胞においては、Fab−IL2 qm−Fabコンストラクトは最低の活性を有していた。最も可能性の高い増殖性CD4 T細胞は、少なくとも野生型IL−2コンストラクトにおいては、部分的調節性のT細胞である。
【0283】
図35は、FAPを標的とした28H1 IL−2イムノコンジュゲートによる4日間(A)、5日間(B)又は6日間(C)のインキュベーション後のCD8 T細胞の増殖を示す。試験した全てコンストラクトは濃度依存的にCD8 T細胞の増殖を誘導した。プロロイキンはイムノコンジュゲートよりも高い活性を有しており、野生型IL−2を含むイムノコンジュゲートは、四重変異体IL−2を含むものよりもわずかに強力であった。NK細胞とCD4 T細胞においては、Fab−IL2 qm−Fabコンストラクトは最低の活性を有していた。
【0284】
実施例11:
IL−2活性化型PBMCの増殖および活性化誘導性細胞死
健康なドナーから新たに単離したPBMCを、10%FCS及び1%グルタミンを含むRPMI1640中で1μg/mlのPHA−Mで一晩予め活性化した。予め活性化した後で、PBMCをを回収し、PBS中の40nMのCFSEで標識し、そして100000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。予め活性化したPBMCはIL−2イムノコンジュゲート(4B9 IgG−IL−2 wt、4B9 IgG−IL−2 qm、4B9 Fab−IL−2 wt−Fab、及び4B9 Fab−IL−2 qm−Fab)の異なる濃度で刺激された。IL−2処理の6日後に、PBMCは0.5μg/mlの活性化抗Fas抗体で一晩処置された。CD4(CD3
+CD8
−)及びCD8(CD3
+CD8
+)T細胞の増殖はCFSE希釈により6日後に分析された。抗Fas処置後の生存T細胞の割合は、CD3
+アネキシンV陰性の生存細胞をゲーティングすることにより確定された。
【0285】
図36に示されるように、全てのコンストラクトは事前に活性化されたT細胞の増殖を誘導した。低濃度では、野生型IL−2 wtを含むコンストラクトは、IL−2 qmを含有するコンストラクトよりもより活性であった。IgG−IL−2 wt、Fab−IL−2 wt−Fab及びプロロイキンは類似の活性を持っていた。Fab−IL−2 qm−FabはIgG−IL−2 qmよりもわずかに弱い活性であった。野生型IL−2を含むコンストラクトは、おそらくは調節性T細胞の活性化の可能性のため、CD8 T細胞上よりもCD4 T細胞上でより活性であった。四重変異体IL−2を含むコンストラクトは、CD8およびCD4 T細胞において同様に活性であった。
図37に示されるように、高濃度の野生型IL−2で刺激したT細胞は、四重変異体IL−2で処理したT細胞よりも抗Fas誘導性アポトーシスに対する感受性が高い。
【0286】
実施例12:
非標的化DP47GSコンストラクト(VH及びVL配列はそれぞれ配列番号299及び297)は更に特徴付けされた。上述のように、DP47GS IgGの野生型又は四重変異体IL−2のコンジュゲートを作成した。これらのコンストラクトは、IL−2Rに対する結合および免疫細胞(例えばNK細胞、CD8
+細胞およびCD4
+細胞)のインビボでの増殖の誘導に、対応する標的化コンストラクトに類似した結合を示した(データ非表示)。腫瘍抗原を標的とするイムノコンジュゲートとは対照的に、しかしながら、それらは、腫瘍組織に蓄積しなかった(実施例8を参照)。
【0287】
(実施例7に示されたものに加えて)更なる薬物動態学的研究が、野生型又は四重変異体IL−2のいずれかを含む非標的化DP47GS IgG−IL−2コンストラクトにより実施された。オスC57BL/6Jマウス(各群n=6)に、0.3、1、3又は10mg/kgのDP47GS IgG−IL−2 wt又はDP47GS IgG−IL−2 qmコンストラクトを静脈内注射した。注入容量は全てのマウスで1mlであった。血液サンプルは、注射後2、4、8、24、48、72、96および168時間に採取し(各時点で3匹のマウスから)、分析まで−20℃で保存した。コンストラクトはコンストラクトの捕捉および検出のために抗Fab抗体を用いて、ELISAにより、血清試料中で定量した。全ての試料及び較正用標準を、分析前に(Bioreclamationから得られた)マウス血清中で1:25に希釈した。簡潔には、ストレプトアビジン被覆96ウェルプレート(ロシュ)を、PBS/0.05%Tween20で10秒間3回洗浄し、その後室温で1時間、100μl/ウェル(0.5μg/ml)のビオチン化抗ヒトFab抗体((M−1.7.10;ロシュ・ダイアグノスティックス)とインキュベーションした。PBS/0.05%Tween20で再度3回プレートを洗浄した後、50μlの血清サンプル又は校正標準及び50μl/ウェルのPBS/0.5%BSAが添加され、1:50の最終サンプル希釈物を与えた。サンプルを室温で1時間インキュベートした後に、PBS/0.05%Tween20で再度3回プレートを洗浄した。次に、次に、プレートを100μl/ウェル(0.5μg/ml)のジゴキシゲニン標識抗ヒトFab抗体(M−1.19.31;ロシュ・ダイアグノスティックス)と共に室温で1時間インキュベートし、洗浄し、100μl/ウェルの抗ジゴキシゲニンPOD(ロシュ・ダイアグノスティックスのカタログ番号11633716001)と共に1時間室温でインキュベートし、そして再び洗浄した。最後に、100μl/ウェルのTMBペルオキシダーゼ基質(ロシュ・ダイアグノスティックスのカタログ番号11484281001)を約5分間添加し、基質反応を、50μl/ウェルでの2NのHClで停止した。プレートは、450nmで反応を停止させた2分以内に、650nmの参照波長により読まれた。
【0288】
この研究の結果を
図38に示す。両方のコンストラクトは長い血清半減期を示し、四重変異体IL−2(B)を含むコンストラクトは野生型IL−2(A)を含むものよりも更に長く生存される。
【0289】
加えて、種々のタンパク質およびヒト細胞(PBMC)へのDP47GS IgGの結合の欠如が確認された。
【0290】
DP47GS抗体の結合特異性(または欠如)は、異なる無関係の抗原のパネルによりELISAベースの試験系で評価した。試験は、384ウェルマキシソープマイクロタイタープレート(Thermo Scientific Nunc,カタログ番号460372)で実施した。各インキュベーションの工程後、プレートをPBS/0.05%のTween−20で3回洗浄した。最初に、PBS中に希釈した異なる抗原を6℃で一晩プレート上にコーティングした。使用される抗原の試験濃度及び情報の詳細を次の表に示す。
【0291】
その後、ウェルを室温で1時間、水中の2%ゼラチン(RT)でブロックした。DP47GS抗体(PBS中で1μg/ml)を、室温で1.5時間、捕捉した抗原のパネルとインキュベートした。結合した抗体を、抗ヒトIgG抗体−HRPコンジュゲート(GEヘルスケア、カタログ番号9330V、0.2%のTween−20及び0.5%のゼラチンを含むPBSで1:1000に希釈)を用いて検出した。1時間のインキュベーション後に、プレートをPBS/0.05%Tween−20で6回洗浄し、新たに調製したBMブルーPOD基質溶液(BMブルー:3,3’−5,5’−テトラメチルベンジジン、ロシュ・ダイアグノスティックス、カタログ番号11484281001)で室温で30分間展開した。吸光度を370nmで測定した。ブランク値は、抗体を添加せずに定義した。捕捉した抗原のほぼ全てに非特異的結合を示す社内のヒトIgG1抗体が陽性対照としての役割を果たした。
【0292】
この実験の結果を
図39に示す。DP47GS抗体は捕捉された抗原の何れにも結合を示さなかった。検出されたシグナルは抗体を含まない対照サンプルの範囲であった。
【0293】
最後に、ヒトPBMCに対するDP47GS抗体の結合を評価した。典型的な免疫応答の過程において、細胞表面に提示されるタンパク質の組み合わせは、劇的に変化するので、結合は、健康な成人から分離した直後のPBMC、並びに二つの異なる刺激を用いたインビトロでの活性化後のPBMCで試験した。
【0294】
ヒトPBMCを、Histopaque1077(シグマアルドリッチ、ドイツ)を使用して、健康なボランティアからのバフィーコート又はヘパリン処理した新鮮な血液から、フィコール密度勾配遠心分離によって単離した。PBMCは、結合アッセイ(新鮮なPBMC)にかけるか又は培養され、さらに刺激した。PBMCを、10%(v/v)の熱不活化FBS(PAA Laboratories)を補充したRPMI1640(Gibco)、1mMピルビン酸ナトリウム(シグマアルドリッチ)、1%(v/v)のL−アラニル−L−グルタミン(Biochrom)、及び10nMのβ−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich)からなるT細胞培地中で、37℃で、2×10
6細胞/mlの細胞密度で培養した。インビトロでの刺激のため、プロロイキン(200単位/ml、ノバルティス)とフィトヘマグルチニン(PHA−L、2μg/mL、シグマアルドリッチ)が、6日間の培養(PHA−L活性化PBMC)の間に追加された。インビトロでの再刺激において、6ウェルの細胞培養プレートは、マウス抗ヒトCD3(クローンKT3、1μg/ml)及びマウス抗ヒトCD28抗体(クローン28.2、2μg/ml、両方ともeBioscienceから)で被覆され、そしてPHA−L活性化PBMCをさらに24時間添加した(再刺激されたPBMC)。細胞表面タンパク質へのDP47GS抗体の結合を(Fcドメイン中L234A L235A(LALA)P329G変異の有無にかかわらず)、5倍連続希釈系列(最高濃度200nM)において、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(ジャクソン・ラボラトリーズ)にコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgGのFc特異的二次抗体及びフローサイトメトリー分析を用いてモニターした。全てのアッセイは、表面タンパク質の内在化を防ぐために、4℃で行った。一次および二次抗体のインキュベーションは、それぞれ、2時間、1時間であった。白血球の同時タイピングを可能にするために、蛍光色素で標識したマウス抗ヒトCD14、CD15、CD4、CD19(全てBiolegend)、NKp46、CD3、CD56、CD8(全てBD Pharmingen))に、二次抗体が添加された。ヨウ化プロピジウム(1μg/ml)をFACSCantoIIデバイス上での測定の直前に添加し、FACS Divaソフトウェア(両方ともBDバイオサイエンス)を実行し、透過性の死細胞を除外した。ヨウ化プロピジウム陰性の生存細胞を、T細胞(CD14
−CD3
+CD4
+/CD8
+)、B細胞(CD14
−CD19
+)、NK細胞(CD14
−NKp46
+/CD56
+)または単球/好中球(CD3
−CD56
−CD14
+/CD15
+)についてゲートした。様々な白血球タイプのFITC蛍光の中央値を結合した一次抗体の指標として測定し、Prism4(グラフパッドソフトウェア)を用いた一次抗体濃度に対してブロットした。
【0295】
図40に示すように、Fc変異のないDP47GS IgG抗体は、例えばNK細胞および単球/好中球などのFcγ受容体を保有する細胞に対してのみ結合を示した。DP47GS(LALA P329G)の結合はその活性化状態に関わりなく、ヒトPBMCで検出されなかった。Fcドメイン中のLALA P329G変異は、またFcγ受容体保有細胞に対しても完全に結合を撤廃した。
【0296】
前述の発明は、理解を明確にする目的のために例示および実施例によってある程度詳細に説明してきたが、説明や例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての特許および本明細書に引用される科学文献の開示は、参照によりその全体が援用される。