【文献】
Y. Hu, et al.,"Improved design of a DFB Raman fibre laser",Optics Communications,2009年 8月15日,Vol.282, No.16,p.3356-3359
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブラッグ回折格子が、前記ブラッグ回折格子の長さの少なくとも一部に沿ってブラッグ波長の偏位を生じさせるためにチャープされ、その場合において、関連する光場の強度が前記ブラッグ回折格子の長さの異なる部分について大きく、その場合において、最も大きい負のブラッグ波長の偏位の位置が、前記少なくとも一つのブラッグ回折格子の前記位相のずれの位置と一致する、請求項2に記載のラマンレーザ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
単一周波数および狭い線幅の可変レーザは、リモートセンシング、レーザレーダ(LIDAR)、分光学、光コヒーレンス断層撮影法など、多種多様な用途に使われる可能性を備える。
【0029】
レーザ放射を得る多くの方法があり、それには、外部の空洞共振器レーザ、半導体、およびファイバ分布帰還型(DFB)レーザが含まれる。DFBレーザは、活性なファイバ導波路のコアに刻まれるファイバブラッグ回折格子で作製することができ、適切な波長でポンプされると、狭帯域レーザ放射を生成することが可能である。半導体DFBレーザと比較して、ファイバDFBレーザは、低ノイズおよびより狭い線幅を含むそれらの優れた光学特性のために魅力的である。また、そのようなファイバDFBレーザのファイバ内の設計により、ファイバ増幅器、および他のファイバ構成要素への効率のよい結合が可能となる。「ポンプ」または「ポンピング」という表現は、典型的にはDFB空洞共振器のラマン散乱のようなある非線形効果によってレーザ信号の(出力)エネルギーに変換されるエネルギー源の供給として参照する。ここで、ポンプおよび信号の場を合せたものが光場として参照される。
【0030】
ファイバ回折格子において、モード有効屈折率n
grating(z)は、以下の式により疑似周期的に変調される。
【0031】
【数1】
ここで、ファイバの長さに沿う縦方向の座標z、平均(有効)屈折率n、dc屈折率変化Δn
dc(z)、屈折率変化の変調振幅Δn
ac(z)(「回折格子の強度」)、回折格子の位相φ(z)、および回折格子の周期Λである。そのような回折格子は、ファイバの異なるモードを結合するため、すなわち異なるモード間でエネルギーを変換するために用いることができる。(同じ方向に進行する)異なる共伝搬モードが結合される場合、共伝搬モードの空間周波数の間の差は小さいため、回折格子の要求される空間周波数1/Λは比較的小さい。典型的には数10ミクロンから数100ミクロンの範囲にわたるこの大きなΛによって、そのような回折格子は、長周期回折格子とも呼ばれる。
【0032】
それに対して、波長λの対向伝搬モードが結合される場合、回折格子の空間周波数1/Λは、対向伝搬モードの空間周波数の大きな差n/λ−(−n/λ)=2n/λに等しくなければならない。回折格子の周期Λ=λ/(2n)はわずか数100ナノメートル(典型的には、n≒1.45であるシリカファイバにおいてλ=1550nmに対してΛ≒535nm)のオーダーであるため、そのような回折格子は、短周期またはブラッグ回折格子と呼ばれ、上記の条件λ=2nΛがブラッグの条件である。
【0033】
n(z)は回折格子の周期Λのスケールで変化するのに対して、量Δnac(z)、Δndc(z)、およびφ(z)は一定であるか、あるいはより長いスケール(典型的には数10ミクロンからセンチメートル)にわたってのみ変化するかのいずれかであり、したがって、ゆっくり変化する量として参照される。
【0034】
回折格子の位相の一次微分係数が、ある定数a(すなわち、消滅する二次微分係数d2φ/dz2≡0)でdφ/dz=aを満足するならば、ブラッグ波長はλ=2nΛ/[1+aΛ/(2π)]である。したがって、一定の正のdφ/dz=a>0がスペクトルをより短波長にずらす。そうでなければ、すなわち二次微分係数がゼロでない(d2Φ/dz2≠0)場合には、回折格子はチャープされると呼ばれる。チャープされた回折格子の例が
図19に示される。
【0035】
いわゆるπだけずれたDFB回折格子において、位相φ(z)は、典型的には数ミリメートルより少ない短い距離にわたってπラジアンずつその値が変化する。数学的には、これはある位置z=z
0におけるφ(z)の不連続なジャンプによってしばしばモデル化される。しかしながら、実際には、物理的な回折格子は、連続する屈折率を有する、すなわちcos(φ(z))は常に連続した関数である。一般に、位相φ(z)は、有益な特性(例えば、レーザ空洞共振器の高いQ)を有する回折格子を与える任意の適切な関数であることができ、例えば
図18および
図19を参照のこと。
図18および
図19は本発明の異なる実施形態を示すということに留意すべきである。同様に、変調振幅Δn
ac(z)は、最も一般的な形状(一定またはアポダイズされた、例えばガウスまたは二乗余弦、例として
図23および
図24を参照)に制約されないが、任意の適切な関数であることもできる。具体的には、
図25に示されるように、Δn
ac(z)は、回折格子のある部分にわたって常に(またはほぼ)ゼロであり、かつ回折格子の他の部分においてゼロでなくてもよい。したがって、我々の「DFB回折格子」の概念は、二つ以上の空間的に分離された回折格子の場合をも含み、DBR(分布型ブラッグ反射器)回折格子構造として解釈されてもよい。一般に、不均一なdc屈折率Δn
dc(z)は、回折格子に刻みを入れることにより生じ、DFB空洞共振器の機能には必要ないものである。
【0036】
ここに用いられる「位相がずれた回折格子」、「位相のずれを有する回折格子」、または「位相のずれ」は、そのような適当な位相φ(z)を有する回折格子を意味することが意図されたものである。
【0037】
「πだけずれた回折格子」、「πのずれを有する」、またはここに用いられる類似のものは、位相φ(z)が回折格子の関連する部分の縦方向の座標zに沿ってπラジアンずつ値が変化するということを意味する。この変化は連続的または不連続であり得る。位相は三角関数の変数となるものであり、かつ三角関数は周期2πラジアンで周期的であるため、位相のずれπは位相のずれ(2n+1)πに等価であって、ここでnは任意の整数(正、負、あるいはゼロ)である。したがって、一般性を失うことなく、我々は表記を簡単にするために、n=0、すなわち、ずれπを選択する。
【0038】
必要とされる位相のずれπラジアンまたはπのずれは、πに近い、つまりπの0.1%以内の位相のずれであってもよいということに留意すべきである。そのような許容差は、得られる光空洞共振器がレーザ発振可能となるような十分高いQファクタを有するように十分πに近い位相のずれも含む。
【0039】
一般に、一定でないdc屈折率Δn
dc(z)は、回折格子の刻みを入れることにより生じるものであり、DFB空洞共振器の機能には必要ない。それにもかかわらず、前方向および後方向に伝搬するモードエンベロープを結合する複素数値モード結合係数は
【数2】
であるので、Δn
dc(z)は、モード結合に対して、
【数3】
を満たす回折格子の位相φ(z)と同じ効果を備える。言い換えれば、微分可能な回折格子の位相φ(z)、(例えば、ゆっくり変化するチャープまたはプリチャープ)は、理論的にdc屈折率
【数4】
に置き換えることができる。
【0040】
レーザ発振を開始するためにちょうど十分に高いポンプパワーが、しきい値パワーP
thとしてここに参照される。しきい値パワーは、空洞共振器のしきい値利得g
th(単位m
−1)、およびファイバのラマン利得効率e
R(単位W
−1m
−1)の割合に等しく、すなわちP
th=g
th/e
Rである。しきい値では、信号のパワー、および信号に誘起されるすべての非線形性を無視することができる。したがって、しきい値において、回折格子の信号の場は、既知の線形結合されたモード方程式によってモデル化することができる。回折格子の両端における消滅する入力信号の場の境界条件により、しきい値における信号の場の複素数値伝搬定数のための代数式がもたらされる。この伝搬定数の実数部が信号の周波数を与え、虚数部がしきい値利得を与える。
【0041】
しかし、代数式は、伝搬定数に対して非線形であるため、無限の数の異なる解を有することができる。最小の虚数部(最も低い損失)を有する伝搬定数に対応する信号の場は、空洞共振器の縦方向の基底モードであって、しきい値利得gthでレーザ発振する。しかしながら、ポンプパワーがさらに増加する場合、空洞共振器の(ラマン)利得がある点で上記の代数式の他の解の虚数部を超える、すなわちレーザが縦方向にマルチモードとなり、1つを超える周波数でレーザ発振することになる。このことは、振動する出力パワーによって観察することができる。
【0042】
一定の係数
【数5】
およびz=L
1(例えば、L
1=0.58L)における位相のずれがπ、およびチャープなしである長さLの回折格子(
図26を参照)に対して、しきい値利得は以下の式によって近似することができる。
【0043】
【数6】
ここで、r=cosh((2L
1−L)|q|)/cosh(L|q|)、かつ(パワー)損失定数α(単位m
−1)である。回折格子のパワー損失がxdB/mである場合、我々はα=xln(10)/(10m)=x0.2303/mを得る。例として、α=6.4/km(0.028dB/m)、L=12.4cm、L
1=7.192cm、|q|=90/m、かつe
R=5/(Wkm)であるHNLFシリカファイバにおいて、我々は、しきい値利得g
th=0.022/m、かつ、しきい値パワーP
th=g
th/e
R=4.4Wを得る。回折格子の強度を増加すると、この場合に理論的に達成できる最小のしきい値パワーはP
th,min=α/e
R=1.28Wである。
【0044】
本発明の実施形態には、しきい値パワーが0.08Wから5Wの範囲であるラマン利得媒体内に長さが20cmより短いDFB回折格子を有するラマンレーザが含まれる。他の実施形態は、しきい値パワーが1.28Wから4.4Wの範囲、0.24Wから1Wの範囲、または0.08Wから0.24Wの範囲であるラマン利得媒体内に長さが20cmより短いDFB回折格子を有するラマンレーザが含まれる。さらに本発明の他の実施形態では、しきい値パワーが2Wより小さい、1Wより小さい、または0.1Wより小さいラマン利得媒体内に長さが20cmより短いDFB回折格子を有するラマンレーザについて記述する。これらの実施形態によれば、DFB回折格子は長さが14cmより短いものであってよい。
【0045】
α=0.23/m(1dB/m)、かつe
R=0.95/(Wm)であるDFB回折格子用のAs
2Se
3カルコゲニドファイバを用いると、P
th,min=0.24Wとなる。α=0.0096/m(1dB/m)、かつe
R=0.055/(Wm)であるDFB回折格子用の酸化テルル鉱を用いると、P
th,min=0.08Wとなる。
【0046】
本発明の一実施形態において、As2Se3のようなカルコゲニドファイバのラマンファイバレーザは、好ましくは0.24Wから1Wの範囲にあるしきい値パワーを有し、さらに、20cmより短い長さを有するDFB回折格子とともに提供される。本発明の他の実施形態において、DFB回折格子は14cmより短い長さを有する。本発明のさらに他の実施形態において、酸化テルル鉱ファイバのラマンファイバレーザは、好ましくは0.08Wから0.24Wの範囲にあるしきい値パワーを有し、さらに、20cmより短い長さを有するDFB回折格子と共に提供される。この実施形態の一態様によれば、DFB回折格子は長さが14cmより短いものであってもよい。
【0047】
ポンプパワーがしきい値パワーPthを超えて増加する場合、空洞共振器の(ラマン)利得がある点で上記の代数式の他の解の虚数部を超え、レーザは縦方向にマルチモードとなる、すなわち1つを超える周波数でレーザ発振することになる。このことは、調子を合わせてで振動する出力パワーによって観察することができる。
【0048】
希土類ファイバのDFBレーザのレーザ発振波長は、利得を提供する希土類元素の利得帯域幅内に限定される(例えば、エルビウムについて1.55ミクロン、イッテルビウムについて1.05ミクロン、ツリウムについて2ミクロン)。他の波長領域については、希土類元素の利得帯域幅を超えるところで、第2高調波発生(SHG)、および非線形光結晶(χ
2)の光パラメトリック発振(OPO)、χ
3非線形性を有する材料(シリカなど)の誘導ラマン散乱(SRS)などの非線形過程を用いる波長変換を利用することができる。
【0049】
SRSに基づく波長変換は、広範囲の可変性、波長変換のカスケード化、高い(量子)効率、ならびにREIドーピングの設計および製造上の制約が存在しないことなどのいくつかの利点を有している。
図1には、カスケードになったラマン共振器に基づく公知の波長変換装置の模式図が示される。ここで、ポンプレーザからのレーザ放射がファイバ内にラマン利得を誘起し、ストークス波でのレーザ発振が、自然放出からまたはレーザ発振する空洞共振器から確立され、例えば1組のファイバブラッグ回折格子(FBG)を用いて作り出すことができる。ストークス波は、一旦レーザ発振すると、同様に他のFBGの組を用いて2次のストークスをレーザ発振させるために用いることができる。この方法は、所望の波長が得られるまで続けることができる。
【0050】
一般に、ラマン利得はREI利得よりはるかに小さいため、レーザ発振のしきい値を超えるために、より高いポンプパワー、およびより長い長さが必要とされる。長い長さ(典型的には、>100m)のため、ラマンレーザは大量の縦方向モードで動作し、したがって、そのような光源は、単一周波数または狭い線幅の出力ラマン放射を生成するために適当であるとは考えられない。
【0051】
最近、回折格子内のラマン利得に基づくラマンDFBレーザが、単一周波数または狭い線幅のレーザ発振を実現するために提案されている。例えば、 V.E.Perlin、およびH.G.Winful著、「Distributed Feedback Fiber Raman Laser(分布帰還型ファイバラマンレーザ)」、IEEE Journal of Quantum Electronics、2001年、第37巻、p.38; Y.Hu、およびN.G.R.Broderick著、「Improved design of a DFB Raman fiber laser(DFBラマンファイバレーザの改良された設計)」、Opt. Comm.、2009年、第282巻、p.3356を参照のこと。空洞共振器の高いQのために、単位長さ当たりのラマン利得は小さい(〜0.01dB/m/W)という事実にもかかわらず、空洞共振器内の信号強度は、ポンプパワーの著しい減少及びこれによるポンプの有効な利用をもたらすために十分強いと期待されている。
【0052】
位相πのずれがない長さ1メートルの一様なファイバのブラッグ回折格子が考えられている。例えば、V.E.Perlin、およびH.G.Winful著、「Distributed Feedback Fiber Raman Laser(分布帰還型ファイバラマンレーザ)」、IEEE Journal of Quantum Electronics、2001年、第37巻、p.38を参照のこと。線形解析を用いて、しきい値は1Wより小さいということが実証することができる。また、Y.Hu、およびN.G.R.Broderick著、「Improved design of a DFB Raman fiber laser(DFBラマンファイバレーザの改良された設計)」、Opt. Comm.、2009年、第282巻、p.3356においては、回折格子の物理的な中心からオフセットされて位相がπだけずれた一様な20cmの空洞共振器は1Wに近いしきい値で、かつスロープ効率80%で動作が可能であるということが理論的に示されている。
【0053】
これらの予測は魅力的な性能を提案するが、1m、および20cmでさえ非常に長い回折格子は、製造において重大な問題をもたらし、温度変化、曲げに起因する応力、振動などのような実装上の制約により、性能が信頼できない結果となるであろう。現実には、回折格子に位相のずれを有し、DFB長さが20cmより短いDFBラマンファイバレーザはこれまで実証または実現されていない。さらに、そのような長さが短い(20cmよりも短い)DFBのラマン放射の発生は、全く期待されていなかった。
【0054】
ラマンDFBレーザは、SBS後方散乱を回避するために十分短い長さで大きな変換効率をもって広帯域放射を単一の周波数の放射に変換する可能性を有している。
【0055】
研究では、レーザ発振特性への回折格子のある種の欠陥の影響が考慮されており、そのようなレーザは回折格子のプロファイルに課される白相(white phase)、および振幅ノイズに対して頑強であるべきであることが示されている。 J.Shi、およびM.Ibsen著、「Effects of phase and amplitude noise on π phase−shifted DFB Raman fibre lasers(位相がπずれたDFBラマンファイバレーザにおける位相、および振幅ノイズの影響)」Bragg Gratings Poling and Photosensitivity、2010年、JThA30。しかし、典型的な回折格子の欠陥はランダムではなく、しばしば書き込み装置の特定の光源に起因し、したがってホワイトノイズのようにはっきりと特徴づけられるものではない。
【0056】
実際、DFB構造を用いて単一周波数のラマンレーザ出射を達成することを困難にしている数多くの問題がある。これらには、1)例えば回折格子の書き込み中のUV照射に起因するファイバ損失、2)長い回折格子を製造することの困難さ、3)装置に沿うブラッグ波長の不均一性、4)カー非線形性によって誘起されるブラッグ波長の変動、5)高いポンプパワーの必要性、6)ポンプ吸収による回折格子に沿う熱変動、7)光ポンプ、および信号の場の利得媒体(例えばコア)との空間的な重なり、および回折格子の屈折率変調、および8)ポンプおよびDFB回折格子のスペクトルの重なりが含まれる。これらの要因が、レーザ発振のための大きなしきい値、小さな出力パワー、およびポンプパワーの効率の悪い利用をもたらしている。以下に記載されるように、非常に良好な利得ファイバ(低損失、高いラマン利得係数)、高品質のレーザ組み立て品(低い接合損失)、ならびに優れたブラッグ回折格子の設計製造(きれいなスペクトル、正確な位相のずれ、狭い線幅)を有する本発明の態様に従って実験結果が積み重ねられたが、その性能は上述した従来技術によるシミュレーションで予測されたこととは著しく異なっている。このことは、レーザ発振の性能を悪化させる更なるメカニズムが存在する可能性があることを示唆している。
【0057】
ラマンファイバDFBについての先のシミュレーションは、すべて、うまく動作させるために20cm、あるいはもっと長い回折格子を必要とするものであった。しかし、回折格子が長さをより短くすることができたならば、それは好都合であると考えられる。例えば、ファイバ回折格子は、位相マスクを用いて作製されてよい。現在の技術では、位相マスクを20cmの長さで作製することができない。したがって、そのような20cmの長さの回折格子は作製が困難である。
【0058】
我々は、ラマンファイバDFB設計空間を20cmより短い回折格子に拡張する方法を見出したので、ここに教示する。我々は、20cmより短い回折格子を、ラマンファイバDFBの狭い線幅のソースとして作用するように作製することができることを見出している。
【0059】
20cmより短い空洞共振器は、現在の技術を用いて作製することが比較的容易である一方、これはポンプパワーのしきい値を約5Wまで数倍増加させる結果となるが、一般的に入手可能なハイパワーの希土類またはラマンファイバレーザによって容易に達成することが可能である。大きなラマン利得係数、および低い固有損失(〜0.02dB/m)を有するファイバの使用も、適度に低いポンプパワー(5Wより低い)で短いラマンDFBレーザを作製するのに好適である。
【0060】
本発明は、ラマンDFBレーザの動作、他のラマンレーザの構成、およびそれらの改良された設計を開示するとともに、そのレーザを用いたハイパワーレーザシステムを開示する。より一般的には、従来のポンプ光源を用い、かつラマン利得を採用し、かつ3次のカー非線形性のような瞬間的な非線形性のレベルを変化させることを用いる狭帯域光の発生および変調がここに説明される。
【0061】
また、狭い線幅、REIドーピングによっては到達できない波長でのハイパワー信号の生成が説明される。さらに、利得および感光性がラマンファイバDFBレーザの最適な性能を可能にする最適化された光ファイバが示される。
【0062】
本発明の一態様は、前方、後方、またはその両方に出射されるポンプ放射によって開始される利得を用いるDFBファイバ回折格子構造を用いることである。DFB回折格子構造は、中心部にまたは中心からわずかにオフセットされて位置する少なくとも1つの分離した位相構造(位相のπずれ)を有する。レーザ放射は、例えばWDMカプラを用いて、(ポンプに対して)前方、後方、または両方に取り出される。レーザ空洞共振器内への不要な信号の帰還を防止するため、レーザ出力において分離が提供されてよい。そのような光学的な分離は、レーザの性能および安定性を改善するために一般的に知られた技術である。
【0063】
単一周波数または狭い線幅のラマンレーザ発振、およびDFB回折格子を出る残りのポンプ波は、ファイバ長を通してさらに伝搬させてMOPA(主増幅器パワー増幅器)の構成で更なる利得を生成し、さらにラマン(ストークス)信号を増幅することができる。
【0064】
本発明の一実施形態において、ラマンDFBレーザはカスケード接続されたラマン共振器の共振器内部に配置され、DFBレーザの出力から1ストークスのオーダーだけ下方にずらされた光を生じる。この設計において、ラマン共振器は、ポンプ波をより効率的に利用し、単一周波数または狭い線幅のストークス波への広帯域ポンプの変換を増加するため、DFBレーザにポンプ光を提供する。
【0065】
本発明の他の実施形態において、ポンプ光は、ラマン利得スペクトルの範囲内において異なるブラッグ波長を有する一連のラマンDFB構造を経て伝搬して、多数の単一または狭い周波数のレーザ発振出力を生成することができる。
【0066】
本発明の一実施形態において、高度に非線形で、複屈折の、または偏光保持ファイバ(例えばPANDAファイバ)が、適合した偏光状態でラマン振動を得るためのラマン利得媒体として用いられる。
【0067】
本発明の他の実施形態において、空洞共振器内部での波長変換を可能とするため、ラマンDFBレーザは、希土類(例えば、エルビウム、イッテルビウム)ファイバレーザ空洞共振器(線形、環状またはファブリ−ペロー)の内部に配される。
【0068】
本発明の他の実施形態において、(長さに沿って)ブラッグ波長の不均一な分布を有するDFBファイバ回折格子が用いられる。このプリチャープは、前方および後方に伝搬する非常に強い空洞共振器内部の場による自己/交差位相変調、または熱加熱の影響をゼロにすることに役立つ。
【0069】
本発明の他の実施形態において、DFB空洞共振器は、ブリリュアンシフトによって分離される2つの波長で動作するように設計される。したがって、ラマンポンピングにより、両波長でのレーザ発振が引き起こされることになる。しかし、一旦レーザ発振すると、誘導ブリリュアン散乱(SBS)がより高い波長にエネルギーを移動させ、したがってこのモードのパワーを増加させることになる。
【0070】
本発明の他の実施形態において、ファイバDFBレーザ、および/または、いずれかの、またはすべての増幅器は、高い(数ワットより大きい)SBSしきい値を有するファイバを用いる。高いSBSしきい値は、歪および温度分割、または反導波音響導波路をもたらすドーパントのプロファイルを通した方法のような周知の方法を用い、機能する光導波路を維持しつつ達成されてよい。
【0071】
本発明の一実施形態において、ファイバDFB空洞共振器は、導波路の有効屈折率が温度によって最も少なく変化するように非常に低い温度感受性を有するように設計されたファイバに書き込まれる。例えば、そのような低い感受性は、ボロン(B)、およびゲルマニウム(Ge)のドーピングによって達成することができる。B−Geのドーピングのため、Bのドーピングによって導入される材料の屈折率の負の温度係数に起因して、有効屈折率における温度変化がより小さいガラスが生成される。このドーピングにより、波長および位相ノイズを含む種々のレーザパラメータに対して、非常に低い温度感受性が実現される。そのようなドーピングは、温度変化およびノイズを低減するためにラマン利得、あるいはREI利得のいずれかとともに用いられてよいということに留意すべきである。
【0072】
一般に、屈折率の温度依存性は、導波路を作製するために用いられるドーパントの関数として変化することになる。それらのドーパントには、例えば、Ge、B、P、F、Al、La、Ta、および種々の希土類イオン、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。一般に、種々のドーパントのレベルで所望の導波路設計を達成することが可能である。これらのドーパントのレベルが温度に対してモード屈折率の変化が最小になるように調整されると、この導波路を組み込むレーザは、最も低いノイズ特性を有することが期待されることになる。これはどのようなファイバレーザにも用いることができ、その利点はそれぞれの場合においてより低いノイズであろうことに留意すべきである。
【0073】
我々は、この発明の原理および例をより詳細に説明する。最初に、我々は、ブラッグ導波路の温度依存性を基本的な温度周波数ノイズと関連付ける。次いで、我々は、基本的な温度周波数ノイズがドーパントの適切な選択によって低減されてよいことを示す。
【0074】
ファイバブラッグ回折格子のブラッグ波長は、以下のように表わされてよい。
【数7】
ここで、λ
Braggはブラッグ波長、nは回折格子のモード共振の有効屈折率、かつΛ
gratingは回折格子の周期である。回折格子のブラッグ波長の温度微分係数は、以下のように表わされてよい。
【数8】
【0075】
カッコの中の第1の項は熱光学係数であり、第2の項はファイバの熱膨張係数である。典型的には、第1の項はシリカの光ファイバでより大きい。温度によって誘起されるファイバ半径の変化による小さな追加的な変化は、この式において無視される。
【0076】
温度によるブラッグ波長の変化は、空洞共振器としてその回折格子を用いるDFBレーザが備えるであろう基本的な熱周波数ノイズの量と関連付けることができる。静止状態において、周波数ノイズは、レーザのE場ψ(t)の位相の時間微分係数と関連付けられる。したがって、周波数ノイズは、ファイバの体積全体にわたる積分に比例する。
【数9】
ここで、e(r)はE場の半径依存性であり、ΔTは対空間および対時間の温度変動、であり、温度によるブラッグ波長の変化の式におけると同様に、カッコ内の項は、熱光学および熱膨張係数の和である。したがって、温度によるブラッグ波長の変化の低減は、低減された熱ノイズを与えることが期待される。
【0077】
B−Geをドープされたコアを有するファイバ内に書き込まれたファイバ回折格子のブラッグ共振波長の温度感受性は、Ge単独、またはGeおよびErでドープされたコアのそれよりも小さいことが知られている。B−Geをドープされたファイバブラッグ回折格子におけるブラッグ波長の温度依存性は10.69pm/Cであるのに対して、Ge−Erファイバブラッグ回折格子においては、ブラッグ波長の温度依存性は14.45pm/Cであることが示されている。したがって、B−Geをドープされたファイバの熱変動がファイバの回折格子のブラッグ波長における小さな変化をもたらすであろう。上記の議論から、そのような低減された温度依存性は、そのような回折格子を用いるレーザの基本的なノイズを低減するであろう。この例は、B−GeおよびGe−Erがドープされたファイバを比較したが、例えばB−Ge−Erをドープされたファイバも、Ge−Erをドープしたファイバより温度によるブラッグ波長の変化がより小さいと考えられている。したがって、そのようなファイバ回折格子を組み込んだB−Ge−Erをドープしたファイバレーザは、Ge−Erをドープしたファイバを用いる同様のファイバレーザより、より低い位相ノイズを有するであろう。他のドーパントの例の組み合わせも可能である。さらに、B−Geをドープしたファイバを用いるラマンファイバDFBレーザは、Er−GeをドープしたファイバのEr利得に基づく類似のレーザよりもより低い基本的な熱ノイズを有するであろう。本発明の態様により、ここに説明されるドーピングは、ここに説明される任意のブラッグ回折格子で用いることができる。
【0078】
本発明の一実施形態において、ラマンレーザは、ラマン利得媒体において回折格子構造を用いることによって提供される。本発明の他の実施形態において、ラマンレーザは、活性媒体がラマン利得媒体であり、かつ20cmより短い長さを有するDFBファイバ回折格子を用いて提供される。本発明の他の実施形態は、DFBファイバ回折格子を用いるラマンレーザを示しており、そのラマンレーザにおいて、活性媒体はラマン利得媒体であり、DFBファイバ回折格子は19.5cmより短い長さを有する。更なる実施形態は、18cmより短い、15cmより短い、または14cmより短い長さを有するDFB回折格子を含む。更なる実施形態は、約14cmの長さ、または約12cmの長さを有するDFBファイバ回折格子を含む。
【0079】
ここで、本発明を詳細に調べるために用いられる実験用の構成が説明される。DFBファイバ回折格子構造が、NA=0.22、(1550nmにおける)有効断面積18.7μm
2、カットオフ波長<1050nm、かつ無偏光に対するラマン利得効率が2.5/W/kmであるラマンファイバ(25 Schoolhouse Road, Somerset, New Jersey 08873に事務所を有するOFS Fitel, LLCによって製造されたものである)に書き込まれた。ファイバは、その光感受性を増加するため重水素が付加された。CW244nmの書き込み波長を有する直書きシステムを用いて、ピッチΛ
grating=547.30nmである長さ124mmの回折格子が書き込まれた。ラマン利得ファイバの長さは、回折格子のいずれかの側におおよそ21cmのシングルモードファイバを有して14cmであった。その結果得られるブラッグ波長は1583nmであった。回折格子のプロファイルは均一で、位相πのずれ(または等価的にΛ
grating/2)は71.92mmに8%中心から外れて配された。
【0080】
回折格子の伝送スペクトルが
図2に示される。均一な124mmの、位相がずれた回折格子に対する回折格子のスペクトル(透過幅、および深さ)の視覚による当てはめにより、〜3.5×10
−5の屈折率変調が得られた。対応する回折格子の結合定数はκ=69(l/m)であった。
【0081】
ラマンDFBレーザにおける単一周波数動作を実証するために用いられた構成が
図3に示される。用いられたポンプレーザは、1480nmにおいて最大81Wを生じるハイパワーのカスケード接続されたラマンファイバレーザであった。SSMF(標準シングルモードファイバ)のポンプ出力が1480/1550 WDM301にスプライス接続され、次いでそれがDBファイバ302にスプライス接続された。光経路内のアイソレータは後方向からのDFB空洞共振器への低い帰還を確かなものとし、一方、前方向におけるDFBファイバのピグテールは角度をもって割られた。
【0082】
回折格子は、金属の棒の上に配置され、熱変動を低減するために熱伝導性ペーストで取り囲まれた。回折格子は、位相のずれが、1)ファイバ302において(ポンプに向かう)内側に、および2)ファイバ303において(ポンプから離れる)外側に向くように試験された。後方へのレーザの光出力304は、
図3に示されるいくつかの測定器306の1つに結合された。これらの測定器は、パワー、スペクトル(OSA)、線幅(遅延自己ホモダイン干渉計+RFスペクトルアナライザ)、偏光、およびRFスペクトルアナライザ、および偏光計であった。動作の間に、ごくわずかのポンプパワーが吸収され、レーザ出力でのポンプパワーをレーザ信号の出力に比較して非常に大きくする。本発明の更なる実施形態において、DFBラマンレーザは外側の光出力305を有する外側に向いて位相がずれたファイバ303と共に動作した。
【0083】
実験結果
WDM、およびアイソレータを通して測定された出力スペクトルが
図4aおよび4bに示され、それぞれ位相のずれが内側および外側に向いていた。1584nmの同じ波長での発振が両方向について観察された。
【0084】
ポンプパワーに対する後方向への信号パワーが
図5aに示され、
図5bでは位相のずれが(ポンプに向かう)内側に向いていた。しきい値ポンプパワーは38.7Wであり、最大の出力パワーは65mWであった。小さなヒステレシスがしきい値の近くで観察された。レーザは38.7Wのポンプパワーで起動し、36.3Wのパワーで停止した。ポンプパワーに対する信号パワーの曲線は非線形である。スロープ効率は、0.3%から0.07%まで変化した。
図5aは伝送されたポンプパワーをも示す。最大のポンプパワーにおいて、伝送されたポンプは、レーザの入力および出力として検知器を比較することによって測定されるように4W未満だけ減少している。損失の大部分は、SMFファイバとDFBが書き込まれたラマンファイバとの間のスプライス損失、およびUVによる書き込み処理の結果回折格子内にUVによって誘起される損失に起因している。
【0085】
図5bは、位相のずれが外側に向いたときの、ポンプパワーに対する後方向への信号パワーを示す。最大のポンプ80Wに対して、約50mWの出力パワーが得られた。
図5aおよび
図5bを比較することにより、より大きなパワーはπ位相ずれのオフセットの方向から得られることが明らかである。
【0086】
図6は、しきい値に近いポンプパワー、および最大のポンプパワーに近いポンプパワーで遅延自己ホモダイン干渉計を用いて測定された線幅を示す。いずれの場合においても、光の帯域幅の半値全幅は、RFスペクトルの3dB幅から6MHzであると推定された。偏光アナライザを用いて偏光の程度(DOP)が測定され、ほぼ直線的に偏光している、すなわち,DOP≒100%であることがわかった。
【0087】
RFスペクトルは大きな尺度で測定された。
図7は、100MHzにおけるビートノートを示し、おそらく二重偏光におけるレーザ発振による第2のレーザ発振モードが存在していることを示している。ファイバDFBは、2つの偏光においてレーザ発振することが示されている。ビートノートが追加的な偏光モードによるということを立証するために、我々は、RFスペクトルアナライザの前に、偏光子を伴う1組のパドルを配置した。
図7は、パドルを調整することによりビートノートをゼロにできることを示す。出力のDOPも測定され、ほぼ100%であることがわかった。これらの測定は、レーザが単一の長手方向のモードの2つの偏光で動作していることを強く示す。
【0088】
本発明の一態様により、DFBによって生成されるラマン放射の帯域幅は約6MHzである。帯域幅は、光のパワーがそのピークパワーの50%(3dB)である周波数で規定される。本発明の一態様により、DFBレーザによって生成されるラマン放射の帯域幅は、6MHz以上、100MHz未満である。本発明の一態様により、DFBレーザによって生成されるラマン放射の帯域幅は、約1GHz以下であるが、100MHzよりは大きい。
【0089】
先に説明されるように、ここにいうラマン放射は、ラマン散乱から生じる放射として定義される。当業者に知られているように、ラマン利得から生じる放射を含むラマン放射を特性づける他の方法が存在している。以下において、ラマンDFBを用いる別のハイパワーレーザシステムが示される。
【0090】
図8aは、狭帯域ラマン放射を提供する光出力802を有する主発振器およびパワー増幅器の構成におけるラマンDFBレーザの概略図を示す。DFB回折格子を通して伝送される大量の残りのポンプパワーは、狭帯域ラマン放射のための増幅器を形成するために追加的なラマンファイバに結合され、光出力802を備えることが可能である。したがって、レーザの全効率は、DFBレーザのスロープ効率が示すよりも実質的により高くなるであろう。増幅器ファイバは、さらに高いSBSしきい値を備えるように設計することができよう。このことは、反導波音響コアの設計、ファイバに沿う熱または歪勾配の利用、異なるSBS周波数応答特性を有するファイバ連結の利用、あるいは他の公知の方法などの既知の方法を用いて行うことができる。
【0091】
図8bに示されるように、何らかの後方に伝搬する信号光からDFB回折格子を分離するため、DFB回折格子の後方に、光分離手段を配することも一般的なやり方である。そのような光分離は、ポンプが増幅用ファイバへ通り抜けることを可能にするであろう。このことは、ポンプがより狭帯域のアイソレータをバイパスできるように、広帯域アイソレータを用いて、または波長分割多重器(WDM)を用いて達成することができるであろう。この発明のすべてのMOPAの構成において、そのような分離は、適切なレーザ動作を確実にするために必要に応じて存在すると考えられてよい。
【0092】
一般に、
図8aおよび
図8bに示されるポンプなど、本発明の実施形態で用いられるポンプは、Q−スイッチレーザのように、連続波またはパルス化されたもののいずれかであることができる。パルス化された場合、パルスの持続時間は2nL/cよりも大きくあるべきであり、ここで、nは屈折率、cは光速、およびLはQ値により増加される空洞共振器の有効長さである。
【0093】
一般に、例えば、変調された種となる光源のラマン増幅を用いるポンプを構築することなどによって、ポンプパワーを変調することが可能である。カーの非線形性が十分に高ければ、パワーの変化が波長および位相の変化に変換されるであろう。したがって、ラマンDFBは、ポンプパワーによって位相変調されるであろう。他のパラメータの中で、回折格子空洞共振器、ラマン利得、ポンプレベル、およびポンプの変調レベルは、出力のパワー変化を低減するために調整されなければならないであろう。それに対して、カー効果が十分に小さい場合、ポンプパワーの変調が信号の振幅変調を提供することができるであろう。
【0094】
一般に、ラマンDFBレーザは、出力パワーおよび偏光特性のいずれにおいても、実質的なヒステリシスを示すことができる。このヒステリシスを克服するため、その後により低パワーのCWポンプが続く大きな初期ポンプパルスが用いられるであろう。したがって、より低いポンプパワーは、より低い出力パワーにアクセスできよう。
【0095】
ヒステリシスは、熱的、歪、電気的、またはポンプによらない放射など、他の初期摂動によって克服することもできよう。そのような初期摂動が、レーザに所望のレーザ発振状態を達成させるであろう。次いで、これらの初期摂動が除去され、望むようにレーザが出射を継続するであろう。ラマンDFBの非線形の性質のため、所望の入力ポンプパワーおよびポンプ時間依存性について、1つ以上の定常状態のレーザ発振の解決方法があってよい。熱的、歪、電気的、またはポンプによらない放射を含む種々の摂動、およびポンプの変動により、レーザが1つの状態から他へ遷移することが可能になるであろう。
【0096】
レーザの最もノイズが少ない動作状態は、位相と振幅との間の結合が最小の状態であろう。これは、レーザが最低パワーで動作する場合、および空洞共振器内のパワーが可能な限り低いが、なおレーザ発振が可能である場合に達成される。理想的には、カーに誘起される回折格子のプロファイルのゆがみが最小化されるであろう。この場合、ポンプまたは信号パワーのばらつきは、レーザの位相ノイズにわずかな影響を及ぼすであろう。これはレーザの疑似線形動作であろう。疑似線形動作は、しきい値のわずかに上で生じるであろう。一般に、そのような状態は、レーザをより高いポンプパワーのパルスで開始させ、次いで、より低い信号パワーの状態を達成するようにポンプパワーを低くすることによって利用することができよう。
【0097】
ラマンDFBレーザは、単一および二重偏光レーザ発振の間で切り替えるようにすることができる。そのような光源は検知用途に有用である。十分な非線形偏光の回転および線形複屈折により、適切な偏光特性、ヒステリシス、および動力学が確保されるであろう。
【0098】
ポンプ放射は、WDMカプラを通してラマン利得ファイバの他の端から加えることもできる。これにより、所望のストークス波のパワーをさらに強められるであろう。
【0099】
ラマンレーザ発振の波長は、回折格子に沿って金属質の被覆を塗布し、被覆に電流を流すことなどによってファイバの温度を変化させることにより変化させることができる。波長を制御する他の方法をラマンDFB空洞共振器に適用することができる。例えば、空洞共振器は、ヒーターまたはクーラーの中に配することができよう。それは、長さに沿って変化するまたは不均一な温度分布の下にさらすことができよう。それは、歪、伸長もしくは圧縮、または曲げの下におくことができよう。具体的には、空洞共振器がV溝の中に配され、基板が曲げられるときに波長が変化するように基板に接着することができよう。
【0100】
また、空洞共振器の増幅器部分における誘導ブリリュアン散乱を抑制するため、いくつかの手段をとることができる。数十MHzの繰り返し率でラマンDFBレーザに加えられるポンプ波の位相ディザリング(変調)を用いることができる。長さに沿ってブリリュアンシフトを変化させ、したがってブリリュアンのしきい値を増加させるラマン利得ファイバの長さに沿って分布歪または温度変動を加えることも可能である。
【0101】
一般に、ラマンDFBレーザは、カスケード接続されたラマンレーザ空洞共振器の中に配することができる。カスケード接続されたラマンレーザは、典型的には、ポンプレーザと、互いに1つのラマンオーダーである周波数で共振する1つ以上のファイバレーザ空洞共振器とを有している。カスケード接続されたラマンファイバレーザの例が、G.Grubbその他著、「1.3μm Cascaded Raman Amplifier in Germanosilicate Fibers(ゲルマノケイ酸塩ファイバの1.3ミクロンのカスケード接続されたラマン増幅器(ゲルマノケイ酸塩ファイバの1.3ミクロンのカスケード接続されたラマン増幅器)」、Optical Amplifier and their Applications Conference、1994年、PD3に示されており、参照のため、ここに引用される。例えば、カスケード接続されたラマンファイバレーザへのファイバDFB回折格子の配置方法のいくつかの例が
図9から
図13に示される。なお、1つ以上のラマンDFBレーザをカスケード接続することも可能であることに留意すべきである。
【0102】
図9は、ハイパワーの狭い線幅(<1GHz)のレーザ発振を生成するために外部のDFB回折格子およびMOPAを用いた構成を示す。ここで、HR1、HR2、およびHR3は、それぞれ波長1、2、および3(例えば、1175nm、1239nm、および1310nm)で高い反射を提供するファイバブラッグ回折格子であり、OC1は波長1における弱い出力カプラである。ファイバDFB回折格子の波長は、すべての他の波長よりも大きく、例えばストークスシフト(例えば、典型的にはシリカファイバで13.2THz)に名目上等しい量だけ大きく、1390nm付近である。BR4は、4番目の波長における帯域阻止フィルタである。これは、DFBからの後方散乱放射の影響を軽減するために含まれてよい。もっと多くの波長がカスケード接続に加えることができよう。ラマン放射は光出力902に提供される。
【0103】
図10において、ラマンDFBレーザは、ポンプの再利用によってポンプの効率的な利用を可能にするカスケード接続されたラマンレーザシステムの最も内側の(2つのHR2 FBGからなる)共振器の中に配置される。ここで、波長λ
1、およびλ
2<DFB回折格子の波長λ
3であり、好ましくはラマンシフトだけオフセットされる。さらに多くの波長がカスケード接続に加えることができよう。明確にするために2つだけが示される。ラマン放射は光出力1002に提供される。
【0104】
図11は、多くのDFB回折格子、および単一のポンプ光源によってポンプされるラマン利得ファイバからなるハイパワーのレーザ/増幅器システムを示す。一実施形態において、DFBの波長は、ポンプ波のラマン利得スペクトル内にある。システムの出力は、複数の単一周波数のハイパワーレーザ振動からなるであろう。ここで、それぞれのDFB回折格子は、ラマンファイバレーザの例であると称することができる。それぞれの例は、一条のラマン利得ファイバを含んでよい。この実施形態において、それぞれの波長に対して異なるパワーを提供するため、利得ファイバの長さは、短くても長くてもよいが、20cmより短ければよい。この実施形態の他の型において、1つ、あるいはすべての回折格子が同じ長さのファイバに書き込まれている。回折格子は、同じ長さのファイバに重ね合わせられてもよい。この場合、最も右にあるラマン利得ファイバの最後の条だけが必要であろう。ラマン放射は光出力1102に提供される。
【0105】
第2の実施形態において、各DFBは、おおよそ周波数が1ラマンオーダー低い順に並ぶ、すなわちλ
1<λ
2<λ
3であって、λ
1はDFB1のブラッグ波長、λ
2はDFB2のブラッグ波長、かつλ
3はDFB3のブラッグ波長である。最大のパワーはλ
3に存在するであろう。さらに、実質的にすべてのパワーはλ
3に存在し、かつポンプ光源は、すべての順の低ノイズポンピングから恩恵を受けるであろう。この光源は、波長に敏感であることに加えて、低ノイズおよび狭い線幅を有するであろう。
【0106】
図12に示されるシステムにおいて、光が後方に伝搬することを妨げるため、帯域阻止フィルタ(BR1、BR2、BR3など)を組み込むことができる。これは多重波長レーザ、および低ノイズハイパワーの単一周波数レーザの両方に適用できる。ラマン放射は光出力1202に提供される。
【0107】
本発明の一態様は、DFB3の波長λ
3の第2高調波を生成するため、周波数倍増結晶(FDX)によって
図12に示される構成を終端することを含む。これが
図13に示されている。(バルクまたは周期的に分極された)非線形結晶、パラメータ増幅器、高次高調波発生器、和/差周波数発生器など、他の非線形光学要素がこのレーザの出力の先に配されることもできる。そのような装置は、そのような非線形の光学システムに結合されるハイパワーを伴う敏感な狭帯域波長の強化された機能をカバーするであろう。そのようなシステムの出力は、より高次の高調波、和周波数、THz放射、およびその他の非線形に生成される放射であることができよう。ラマン放射は光出力1302に提供される。
【0108】
2次の非線形性(または他の次数の非線形性)が十分に大きければ、空洞共振器内のより高い高調波の生成によってDFB回折格子が高調波出力を生成できるであろうということが可能である。例えば、ファイバ導波路が、例えば熱的にまたはUVポリング(UV poling)によって誘起される2次の非線形性を有する場合、それにより、空洞共振器内に第2高調波を生成することができよう。位相整合が不可能である場合、DFB回折格子または追加の回折格子が、より高い高調波光の生成を可能にするために十分な位相整合を提供するであろう。非線形結晶の疑似位相整合も、位相整合による十分な波長変換を達成するために用いることができるであろう。本発明の実施形態は、疑似位相整合を可能にするため、PPLN、PPLT、またはPPKTPのような2次非線形性および周期的に分極された構造を有する非線形結晶の上に書き込まれた導波路を用いることも含む。
【0109】
そのようなレーザの実施形態は、ポンプの下に1つのストークスシフトでレーザ発振することを必要とするが、十分なポンプパワーで反ストークス線上にレーザ発振し、ファイバ導波路内に光フォノン放射を導入することが可能である。そのような効果を強めるため、光損失は、ストークス波長範囲で大きく、SRSの増加を抑制するであろう。このことは、フィルタファイバの設計、または個別のフィルタ、吸収体のような他の損失機構の組み込みによって達成が可能である。したがって、SRSから生成される光フォノンは、反ストークス波長範囲で用いることができる。十分に高いQ値を有するこの範囲のDFBは、反ストークス光をとらえてレーザ発振するであろう。
【0110】
図14は、ラマンDFBが、REI(例えば、Er、Yb、またはEr/Yb)をドープされたファイバレーザ空洞共振器内に配され、かつ好ましくはDFBが1ストークスシフトだけオフセットされた波長を有する構成を示す。REI部分は、カプラを通してポンプレーザによってポンプされる。ラマン放射は光出力1402に提供される。
【0111】
レーザの内側の空洞共振器内の信号は出力信号よりも高くできるため、より高い波長変換効率が期待される。
図14の実施形態は、FBG2、FBG3などを含むことにより、多数のラマン次数に拡張することができる。
【0112】
図15に示される構成において、ラマン利得ファイバは、希土類ファイバレーザの内側にMOPAとして作用するように組み込むこともできる。ラマン放射は光出力1502に提供される。ラマンDFBを出るラマン放射は、ラマンDFBに続くラマン利得ファイバで増幅されている。ラマンDFBおよびラマンファイバの両方は、希土類(RE)ファイバおよびファイバブラッグ回折格子(2つのFBG1)から生じる共振レーザ発振の場によってポンプされる。
【0113】
本発明の一実施形態により、ラマンDFBレーザは、装置に沿って均一なブラッグ波長を有することができる。前方向および後方向における空洞共振器内部の信号のシミュレーションが
図16に示される。シミュレーションには、ラマン利得およびカー非線形性と非線形に結合された公知のモード方程式が用いられる。大きな強度の空洞共振器内部の信号は、顕著な自己/交差位相変調を引き起こし、ラマンDFBのスロープ効率を低下させるという悪影響を有している。
【0114】
カー非線形係数γ、および前方および後方に伝搬するストークス波ならびにポンプ波のパワーP
f、P
b、およびP
Pのそれぞれにより、前方に伝搬するストークス信号について単位メートル当たりの非線形の位相のずれは、以下のように近似することができる。
【数10】
【0115】
後方向への波に対して、非線形の位相変化は以下のように記述することができる。
【数11】
【0116】
強度が大きい領域においては、前方および後方の場についての非線形の位相変化は、回折格子の中心からの不連続な位相のずれにおける位置にオフセットがあっても、ほぼ同じである。
図16のDFB空洞共振器に沿うカー非線形性による非線形の位相のずれが
図17に示される。この非線形の位相のずれは、装置に沿ってプリチャープを与えることによって補償することが可能である。有効屈折率nでブラッグ波長の必要なプリチャープは、以下のように1次のオーダーで表わすことができる。
【数12】
【0117】
非線形の影響を補償するために
図16の空洞共振器に与えられるプリチャープの典型的なプロファイルが
図18に示される。
【0118】
回折格子の位相(上に定義されるように、複素数値モード結合係数q(z)の位相)において対応して必要とされるプリチャープは、以下のとおりである。
【数13】
被積分関数の中でカーに誘起される位相は、例えば非線形結合されたモード方程式を解くことによって見出すことができる。
【0119】
ラマンDFBレーザの効率よい動作に悪影響をもたらすその他の影響は、空洞共振器内におけるストークス波およびポンプ波の吸収によるDFB空洞共振器の長さに沿う温度の変化である。適用しうる光ファイバの半径がわずか数10から数100ミクロンで非常に小さいため、半径方向の温度勾配が支配的であって、長手方向の熱の流れは無視することができる。したがって、ストークス、およびポンプ波長のそれぞれにおける吸収係数α
sおよびα
pによって、加熱によって誘起される単位メートルあたりの位相の変化は、以下のように近似できる。
【数14】
【0120】
係数C
heatingは、熱方程式を解くことによって計算できる。それはファイバおよびその周囲の幾何学的形状および熱伝導率、ならびにファイバ内部の案内モードの横断面構造に依存する。明らかに、φ
heatingは、以前の式からφ
nonlinearと同様の構造を有する(両方の場合において、我々は、表記を簡単にするため、γおよびC
heatingの小さな依存性を無視する)。
図27は、再度、ポンプパワー70W(ただし、
図5から測定された回折格子と同様に、わずかに増加した強度|q|=69/mを有する)について、
図16−18の装置のφ
heatingおよびφ
nonlinearを示す。明らかに、すでに仮定されたわずか0.01dB/mの低い損失に対して、φ
heating(破線)がφ
nonlinear(実線)より上で支配的である。強度が大きいπ位相のずれに近い領域(
図16を参照)において、前方および後方へのストークス強度がほぼ等しく、ポンプ強度全般にわたって支配的であるため、両方が同じ形状を有している。
【0121】
ブラッグ波長、および回折格子の位相のそれぞれの項で表わされる必要なプリチャープは、
【数15】
であり、かつ
【数16】
である。
図27の場合について、このプリチャープが
図28に示される。
【0122】
一実施形態において、回折格子(すなわち、空間依存する複素数値モード結合関数)は、非線形の位相変化を補償するためにこの位相でプリチャープされる。
【0123】
本発明の他の実施形態において、固定された入力ポンプパワーに対する出力パワーを最大にする回折格子を見出すため、数値アルゴリズムが採用される。いくつかの可能性がある例は、既知の劣勾配法、切除平面法、近接点法、または束ね法であり、適当なペナルティ関数を用いて回折格子の強度が抑制され、または単純な試行錯誤の手法が採られて、非線形結合モード方程式に適用される。したがって、すべての関連する効果(例えば、カー効果、ラマン効果、ポンプの減少、線形損失、非線形損失(2光子吸収))を含むことができる。
【0124】
例として、
図19は、入力パワー70W、71.92mm(58%の長さ)における不連続なπずれ、線形損失1dB/m、無視できる非線形損失、および無限大の熱伝導率という制約のもとで最大の出力パワーとするために最適化されている長さ124mmの回折格子の位相を示す。
図20に示すように、このプリチャープ(黒の円で囲ったデータ点)は、プリチャープしない均一な回折格子(最も右側のデータ点)よりも著しく高い出力パワーをもたらす。この形式のアルゴリズムは、固定されたポンプパワーおよび最大の回折格子屈折率変化のような制約のもとで最大の出力パワーを得るために用いることができる。
図20は比較的簡単な最適化の手順を示すが、一般に、回折格子を規定する多くのパラメータの多重パラメータ空間に適用される任意の適当な数値法または解析的方法が、最大の出力パワーを得るために実行することができよう。
【0125】
我々が取り組む本発明の他の態様の中には、非線形結合モード関するにおける高いUV(または他の化学作用があるもの)に誘起され非線形損失および/または2光子吸収による損失、ファイバが結合される熱浴に沿う位置の関数としてのファイバの熱伝導率プロファイル、カーおよびTPA対ラマン利得の両方に対する性能指数、ファイバの有効断面積、およびGe濃度が含められる。ラマンファイバDFBの過去のシミュレーションは、そのような影響を含んでいなかった。
【0126】
(無次元の)非線形性能指数の標準的な定義は、FOM=n
2/(βλ)であって、n
2は非線形屈折率であり、βはTPA係数、かつλは波長である。ここに述べられる本発明の回折格子の設計は、局部的なブラッグ条件に対する非線形性の影響を軽減することができる。
【0127】
ポンプパワーのしきい値を低減するためには、以下の特性を有するファイバが要求される:すなわち、低損失(回折格子の書き込みの前後、すなわち、特に低いUV誘起の損失)、小さい有効断面積、および高いラマン利得係数である。カー非線形性の影響を低減するために、非線形偏光への遅延ラマン応答の小部分の寄与f
Rは、可能なかぎり大きくあるべきである。それに対して、パルス化された動作および光スイッチを可能にするためには、比較的小さなf
Rを有するものを用いることが有益である。
【0128】
空洞共振器内の損失を低減する1つの手法は、位相がずれた領域を(UV、IR、フェムト秒など)化学線作用のあるビームに照射されることを防止する、または少なくともこの領域での照射を最小にすることである。したがって、DFB回折格子は、位相のずれを有し(または有さずに)、その位相のずれに照射されない(またはわずかに照射された)領域を有して製造することができよう。必要であれば、この照射されない(あるいはわずかに照射された)領域は、利得を増加させるために長さを増すことができよう。ある長さにおいて、レーザはもはやシングルモードではなく、したがって、線幅を確実に最小にするために、長さはこのカットオフ未満のままであるべきである。この領域における有効屈折率の小さな変化が効果的な位相のずれをもたらすため、UV照射の正確な較正は、照射されない領域が位相のずれを構成することを確実にすることができるであろう。この位相のずれは、照射されない(またはわずかに照射される)領域全体にわたる屈折率の差の積分に単純に比例する。
【0129】
または、この領域は正味ゼロの位相のずれを備えるように設計することができ、したがって位相のずれは、回折格子の縁の配置によって決定することができよう。そのような非照射領域は、非常に狭い書き込みビームによって最もよく製造することができよう。例として、ファイバに沿う15ミクロンのビーム寸法が、非照射領域から生じる位相のずれ全般にわたる正確な制御を可能にするであろう。
【0130】
UVに誘起される損失を減少させるための他の態様には、ファイバ回折格子の一部、またはすべてを金属または誘電体膜などの他の反射体と置き換えることが含まれるであろう。別の実施形態には、最小レベルのUV、あるいは他の化学線作用のある放射によって回折格子を書き込むことによって、UV(または他の化学線作用のあるものによる)損失を低減することが含まれる。したがって、直接書き込みためには、ビームの非常に効率のよい変調が最良であろう。そのようなビームは、ファイバへの最小のDC平均背景照射を有するであろう。UVに誘起される損失を低減する既知の任意の他の方法も用いることができよう。これは、書き込み波長を最適な波長に変えることを含んでよい。最終的に、UVに誘起される損失は、コアのドーパントを少なくすることによって、およびより高い純度のガラスを用いることによって低減することができよう。
【0131】
損失の低減は、ストークスの場と関係する2光子吸収(TPA)も低減させるであろう。一般に、TPAを低減させるためには、高いTPA性能指数を有する材料が必要とされる。したがって、ラマンファイバレーザのための最もよい材料は、高いTPA性能指数、および高いラマン部分f
Rの両方を有するであろう。
【0132】
他の実施形態において、本発明の一実施形態による空洞共振器は、ブリリュアンシフトによって分離される2つの波長で動作するように設計される。したがって、ラマンポンピングは、両方の動作波長にレーザ出射させることができよう。しかし、一旦レーザ発振すると、誘導ブリリュアン散乱(SBS)がエネルギーをより高い波長に移し、それによってこのモードのパワーを増加させるであろう。他の実施形態において、高いSBSのしきい値を有するファイバが用いられる。
【0133】
本発明は、改良されたラマンDFBレーザを提供するために他の実施例を意図する。
【0134】
非線形位相のずれをゼロにするために必要とされるDFB回折格子のプリチャープは、あらかじめ決められた関数r(z)に従う長さに沿って変化する半径を有する抵抗性の金属構造の内側に回折格子を配し、かつそれを通して電流を流すことによって提供することができる。単位長さあたりの抵抗は、R=ρ/(πr
2)であって、ρは単位オーム/メートルでの抵抗である。抵抗による加熱および温度は、I
2*R(z)に比例するであろう。例示的な概略図が
図21に示される。出力を最大にするため、電流をゼロからある適当な値まで徐々に変化させることができる。
【0135】
先に説明したように、温度制御要素が、ブラッグ回折格子の長さの少なくとも一部に沿う温度の偏位を制御するために提供され、光場の強度、およびカー効果または吸収に誘起される屈折率の変化による関連する屈折率の変化がブラッグ回折格子の異なる部分に関して大きく、かつ温度の偏位が最も大きな位置が位相のずれの位置と一致する。温度制御要素は、上述したようにヒーター、または後述するようなペルチェ要素などの冷却装置であることができる。
【0136】
DFB回折格子に沿う波長、温度、または歪の偏位を与える目的は、カー効果によって誘起される、または吸収によって誘起される屈折率の変化を補償するためである。補償は、光場の強度、およびカー効果または吸収によって誘起される加熱による関連する屈折率の変化が最も大きく、回折格子に沿う位置をカバーすべきである。好ましくは、空洞共振器内部の光パワーに比例またはほぼ比例する負の(または補償する)ブラッグ波長の偏位を発生させる。
【0137】
したがって、一実施形態において、ブラッグ波長の偏位は、位相がずれている要素の位置と一致する最大の負のブラッグ波長の偏位の位置を有して提供される。この負の偏位に関係する量は、空洞共振器内部のまたは入力光パワーにおおよそ比例してよい。本発明の種々の実施形態において、用語「おおよそ」は、マージンが10%、25%、または45%の1つ内であることを意味する。本発明のさらなる実施形態において、ブラッグ波長の偏位は、動作条件に応じて、つまり異なるポンプパワーで、任意に制御できる。本発明のさらなる実施形態は、波長よりも温度または歪を利用してよい。
【0138】
上述の方法は、ラマンDFBレーザに関連して説明されているが、希土類、またはブリリュアンなどのハイパワーで動作する他の形式のDFBレーザもまた、そのような方法を組み入れることによって利益を受けることができる。
【0139】
本発明の種々の実施例において、用語「一致する」、および「一致した」は、最大のまたは最も高い偏位が、位相のずれの部分であるとして定義される領域のどこかで生じるような重なりを意味する。
【0140】
非線形の位相のずれの影響をゼロにするために(室温における)プリチャープを有するように設計されるDFB構造は、所望の安定状態での強度分布に到達するために必要とされる、十分なレーザ発振において問題がある可能性がある。
図22に示されるような構造が、プリチャープを無効にするためにラマンDFBレーザに温度分布を与えるために用いることができる。出力を最大にするために電流をゼロ、またはある適当な値に徐々に変化させることができる。
【0141】
図21は、端部における波長と比較してラマンファイバの中心部でのブラッグ波長を増加させるために有用であるが、
図22に示される構造について逆のことが生じるであろう。
【0142】
回折格子の長さに沿って分布する熱を加えることと同様に、例えば、多数のペルチェ冷却器を用いい、または冷却された表面、例えば、ファイバと表面との間の距離が長さに沿って変化するように曲がっている金属の表面の近傍にDFBを持ってくることによって、分布する冷却を用いることができる。適切に表面を曲げることにより、所望の温度分布が達成できる。曲がった表面の曲率は、温度分布プロファイルを調整するように曲げることができる。
【0143】
したがって、
図16および
図17に示すように、空洞共振器内部の場、および非線形の影響は、長手方向の位置の関数として非常に強く減衰する。空洞共振器内部の場は、空洞共振器の長さの約25%の領域で、その最大の値の約10%である。したがって、空洞共振器の長さの約1/4、あるいはそれ以上の領域でのDFB回折格子の温度を制御することにより、より大きな出力を生成する助けになるはずである。
【0144】
図21および
図22に示される構造において、DFB回折格子は、例えば導電性材料で被覆されたものとすることができ、または被覆されないものとすることができる。図示されるように、温度勾配の生成を助けるために、電流Iを金属構造に加えることができる。(図示されない)第2の電流I2を導電性の被覆に加えることができ、それは回折格子全体の温度を上昇させることを助ける。IおよびI2を制御することにより、温度勾配を与えることと同様に、回折格子全体の温度を上昇させるための柔軟性得られるであろう。導電性の細管、または細管の内部に配されるファイバについて他の形式の包装を用いることができる。さらに、温度プロファイルのより大きな変化を得るために、個々のヒーターのより一般的な組み合わせが適用できよう。
【0145】
回折格子は、全長に沿って、あるいは微小曲げクランプを用いて、より短い尺度の長さのいずれかに沿って曲げられてもよい。この方法で、プロファイルを回折格子に与えることができよう。そのようなプロファイルがレーザ発振をより起こりやすくすることができよう。
【0146】
一般に、ファイバは外部の揺らぎに対して敏感であろう。空洞共振器に沿う摂氏の変化でさえも、レーザ出射出力パワーに著しい影響を備えることができよう。したがって、ファイバは、熱消費を可能にするために貯熱槽にしっかりと結合されねばならない。
【0147】
本発明の一態様により、ラマンファイバレーザはf
R>0.18を、あるいは本発明の更なる態様によりf
R>0.15を有する。また、それは2光子FOM>1を有することもできる。
【0148】
ファイバDFBレーザを作動させる方法も、本発明の一態様により提供される。そのステップは、(1)温度、歪、または他の方法によって回折格子のプロファイルに起動の摂動を与えるステップ、(2)所定の起動の時間周期のための所定の起動パワーレベルにポンプを作動させるステップ、および(3)加えられる回折格子プロファイルの摂動およびポンプパワーを定常状態でのレーザ動作のために適したものに変換するステップを含む。
【0149】
本発明の基本的で新しい特徴が、好ましい実施形態に適用されるとして示され、説明され、指摘されているが、説明される方法およびシステムの形態、詳細、およびその動作における種々の省略および置換、ならびに変更が、本発明の精神から逸脱することなく当業者によりなされてよいことが理解されるであろう。したがって、請求の範囲によって示されることのみに制限されるものであることを意図するものである。