特許第5972357号(P5972357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972357ダイヤモンドライクカーボンで被覆された表面に対して摩擦性を改善するポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972357
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ダイヤモンドライクカーボンで被覆された表面に対して摩擦性を改善するポリマー
(51)【国際特許分類】
   C10M 149/06 20060101AFI20160804BHJP
   F01L 1/04 20060101ALN20160804BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20160804BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
   C10M149/06
   !F01L1/04 J
   C10N30:06
   C10N40:02
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-510737(P2014-510737)
(86)(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公表番号】特表2014-516097(P2014-516097A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】EP2012058590
(87)【国際公開番号】WO2012156256
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年3月23日
(31)【優先権主張番号】102011075969.7
(32)【優先日】2011年5月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】312017709
【氏名又は名称】エボニック オイル アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oil Additives GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ボリス アイゼンベアク
(72)【発明者】
【氏名】トアステン シュテーア
【審査官】 馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−306938(JP,A)
【文献】 特表2009−531531(JP,A)
【文献】 特開2000−087063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに関連して可動する、少なくとも2個の構成要素を含む構造部材であって、当該構成要素の表面の間には、潤滑油組成物によって形成された薄膜が設けられている前記構造部材において、少なくとも1個の前記の可動する構成要素の表面が少なくとも部分的にダイヤモンドライクカーボン層(DLC層)によって形成されており、前記潤滑油組成物が少なくとも1つの極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含む少なくとも1つのポリマーを含有し、その際に、アミン誘導体が誘導される極性のエチレン性不飽和モノマーは、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸およびメチル無水マレインからなる群から選択されるものであり、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体は、一般式(IIIa)
【化1】
〔式中、R'は水素であり、R''は、互いに独立して、Hまたは1〜9個の炭素原子を有するアルキル基である〕を有する第一級アミンに由来することを特徴とする、前記構造部材。
【請求項2】
前記DLC層がグラファイト構造で存在する炭素(sp混成)を含み、その際にグラファイト構造内に存在する炭素の割合は、全炭素に対して、30〜70モル%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1記載の構造部材。
【請求項3】
前記DLC層がダイヤモンド構造で存在する炭素(sp混成)を含み、その際にダイヤモンド構造で存在する炭素の割合は、全炭素に対して、30〜70モル%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1または2記載の構造部材。
【請求項4】
前記DLC層の厚さが1〜20μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項5】
前記ポリマーがグラフトコポリマーであり、その際に、主鎖は、オレフィンに由来する繰り返し単位を含み、側鎖は、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項6】
アミン誘導体が誘導される極性のエチレン性不飽和モノマーは、無水マレイン酸であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項7】
前記ポリマーが極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を0.1〜10質量%含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項8】
極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含む前記ポリマーがポリオレフィンであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項9】
極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含む前記ポリマーがポリアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項10】
前記ポリマーがグラフトコポリマーであり、ここで、主鎖は、アルコール基中に6〜22個の炭素原子を有する(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位を含み、および側鎖は、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項11】
前記構造部材がエンジンであることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の構造材。
【請求項12】
互いに関連して可動する、少なくとも1個の構成要素がエンジンのカムシャフトまたはバルブであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項13】
極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体がN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンに由来することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに関連して可動する、少なくとも2個の構成要素を含む構造部材であって、当該構成要素の表面の間には、潤滑油組成物によって形成された薄膜が設けられている前記構造部材に関する。
【0002】
現在のギヤボックス、エンジンまたは油圧ポンプの効率は、機械部品の特性の他に使用される潤滑剤の摩擦特性にも著しく依存している。かかる潤滑剤の開発のためには、薄膜形成および摩擦に関連して使用される潤滑剤成分の作用に関する知識を持つことが特に重要であり、その際に適当な添加剤の選択は、例えば車両の平均的燃焼消費量を数パーセントだけ低下させることをまねきうる。ここで、潤滑剤の特に効果の大きい成分として、特に低い粘度およびそれに伴う低い固有摩擦を有する基油ならびに有機摩擦減少剤(摩擦調整剤:Friction Modifiers)が挙げられる。この傾向の例は、SAE分類の5W−20、SAE 5W−30またはSAE OW−20のいわゆる燃料消費をセーブするエンジンオイル(Leichtlauf−Motorenoelen)の最新の世代であり、これは、同様にマニュアルギヤボックスおよびオートマチックギヤボックスのオイルの場合にも見出されうる。
【0003】
燃料を節約する潤滑剤と同時の開発によって、摩擦減少性添加剤の使用は、さらに重要になっている:現在のギヤボックスおよびポンプハウジングの大きさは、明らかにより小型になっており、これらは、より劣悪に冷却され、ギヤホイールならびにベアリングは、より高い負荷に耐えなければならない。
【0004】
最近、摩擦係数を改善する添加剤として、ブロック状構造を有する、(メタ)アクリレートをベースとするコポリマーが記載されている。すなわち、殊に刊行物のWO 2004/087850A1、WO 2006/105926A1およびWO 2009/019065A2には、潤滑油特性の向上をめざす、少なくとも1個の極性セグメントおよび少なくとも1個の非極性セグメントを有するポリマーが記載されている。しかし、前記ポリマーの欠点は、前記添加剤の製造に必要とされる費用が比較的高いことである。
【0005】
さらに、とりわけ、マレイン酸のアミン誘導体に由来するモノマー単位を含有しうる、潤滑油中の煤粒子の分散を生じるポリマーが公知である。この種のポリマーは、とりわけWO2007/070845A2、米国特許第2004/0254080A1号明細書および米国特許第5942471号明細書中に説明されているが、しかし、この場合は、前記ポリマーの摩擦特性の考えられうる改善に合わせたものではない。
【0006】
米国特許第5942471号明細書には、無水マレイン酸(MSA)とグラフトされかつ引き続きアミン、とりわけN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(DPA)と反応されるOCP VI向上剤が記載されている。さらに、煤含有油の場合には、改善された煤分散のために改善された摩耗挙動が記載されている。
【0007】
使用された潤滑剤の摩擦係数を減少させるための、いわゆる摩擦調整剤の使用の他に、構造部材の表面は、当然のことながら同様に極めて重要な役を演じる。これに関して、DLC(ダイヤモンドライクカーボン Diamond Like Carbon)で被覆された表面は、例えばM.Kaiin(J.Mech.Eng.,2008,54(3):189−206;Meccanica,2008,43:623−637)またはA.Morina(J.Tribology,2010,132,032101−1〜032101−13;Surface&Coatings Tech.,2010,204,4001−4011)の学術的刊行物から確認することができる、常に拡大する技術的重要性を達成する。
【0008】
自動車の組立において、DLCで被覆された、スチールからなる構造部材、例えばカムシャフトまたは弁列の別の構造部材、例えばローラーロッカーアームは、通常使用される、スチールからなる純粋な構造部材の代用品として試みられている。
【0009】
摩擦減少のための、DLCで被覆された材料の使用が効果の大きな技術的手段であるとしても、スチールに対して極めて良好な効果を示す、通常使用される製品は、DLCで被覆された表面に対してほとんど有効ではない。
【0010】
摩耗に強い構造部材に対して試験すべき、かかる新規のDLC被覆の使用は、より少ない耐摩耗性添加剤、いわゆるAW成分(耐摩耗性成分:anti−wear component)を含む潤滑剤の使用を可能にする。
【0011】
AW成分は、通常、硫黄、燐および亜鉛をベースとする有機化合物である(亜鉛ジアルキルジチオホスフェート)。
【0012】
実際に、公知技術水準から、AW成分の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)が硫化亜鉛被膜(ZnS)の形成により改善された耐摩耗性を生じることは、公知である。しかし、一定の、一般に流通しているモリブデン化合物、例えばモリブデン二量体(MD)またはモリブデン三量体(MT)をベースとする減摩剤が使用される場合には、エンジンの構造部材、例えばターボチャージャーにおいて望ましくない堆積物が生じうる。
【0013】
モリブデン化合物をベースとする、流通している摩擦減少剤のさらなる欠点は、当該化合物が有効である期間が比較的短いことである。通常、前記添加剤は、潤滑剤と接触する、エンジン構造部材の表面上に被膜を形成する。しかし、前記被覆は、前記時間に亘って分解され、その際に10000kmの走行キロ数の後に摩擦減少作用のかなりの部分は、失われ、その結果、前記の摩擦減少作用を維持するためにオイル交換が必要とされる。
【0014】
それによって、使用される様々な添加剤の互いの相互作用ならびに当該添加剤と潤滑油それ自体との相互作用は、普通の排ガス後処理システム(触媒、煤粒子フィルター)の機能および耐久性に対して欠点をまねく。それゆえに、現在の潤滑油中の前記添加剤の含量をできるだけ十分に減少させることが望ましい。
【0015】
先に説明された構造部材および潤滑油組成物は、既に有用な特性プロフィールを生じる。しかし、前記特性プロフィールを改善するという永続的な要求は存在する。
【0016】
ところで、公知技術水準を考慮して、本発明の課題は、公知技術水準を凌駕する構造部材を提供することである。
【0017】
殊に、本発明による構造部材は、潤滑剤組成物の摩擦減少特性との組合せで、従来のスチール表面と比較して摩擦減少性DLC表面の利点を提供することを可能にする。
【0018】
さらに、本発明の目的は、潤滑油組成物における数多くの望ましい性質を生じさせる、DLCで被覆されたスチール表面に対して摩擦係数を減少させる添加剤を提供することであった。
【0019】
それによって、様々な添加剤の数は、最小化されうる。
【0020】
DLCで被覆された金属部材が被覆されていない部材と比較してより僅かな摩擦係数を有するにもかかわらず、摩擦損失を減少させ、およびそれと関連して、燃料消費量を減少させるさらなる手段が望ましい。
【0021】
本発明のさらなる課題は、簡単で安価に製造することができる、構造部材、潤滑油組成物および摩擦係数を減少させる添加剤を提供することであり、その際に殊に商業的に入手可能な成分を使用することであった。この際、生産は、大工業的に行なうことができ、このために、新規の装置または構造的に費用のかかる装置を必要としない。
【0022】
さらに、前記添加剤は、燃料消費量を改善し、これによって、潤滑油組成物の環境相容性が損なわれることはない。
【0023】
使用される前記添加剤は、必要なオイル交換の間隔を延長することができ、それによって、潤滑油の品質低下をまねくことがないかぎりでは、使用される潤滑油の耐久性を改善する。
【0024】
前記課題ならびにさらなる、明記されていないが、しかし、本明細書中の冒頭で討論した関係から簡単に推論可能であるかまたは推定可能である課題は、請求項1の全ての特徴を持つ構造部材によって解決される。
【0025】
本発明による構造部材の好ましい変形は、従属請求項2〜15において、引用する請求項の保護範囲内に含まれる。
【0026】
それに応じて、本発明の対象は、互いに関連して可動する、少なくとも2個の構成要素を含む構造部材であって、当該構成要素の表面の間に、潤滑油組成物によって形成された薄膜が設けられている前記構造部材であり、前記構造部材は、少なくとも1個の前記の可動する構成要素の表面が少なくとも部分的にダイヤモンドライクカーボン層(DLC層)によって形成されており、前記潤滑油組成物が少なくとも1つの極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含む、少なくとも1つのポリマーを含有することによって特徴付けられている。
【0027】
さらに、本発明による構造部材によって、とりわけ次の利点が達成されうる:
本発明によれば、予測不可能な形式で、改善された特性プロフィールを有する、構造部材および潤滑油組成物を提供することに成功し、その際に前記構造部材のDLC被覆の有利な性質と本発明により使用すべき潤滑油組成物との組合せによって、エンジンの耐久性、燃料消費量およびさらなる望ましい性質が改善されうる。殊に、極めて僅かな摩擦係数および意外にも高い耐摩耗性が達成されうる。
【0028】
ダイヤモンドおよびグラファイトの材料特性に基づいて、DLC層の数多くの有利な性質がもたらされ、前記性質の中でアブレシブ摩耗に対する耐性は最も重要である。
【0029】
少なくとも1つの極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含む分散性ポリマーは、自体公知である。しかし、DLC表面に対する、前記分散性ポリマーの摩擦減少作用は、これまで記載されなかった。
【0030】
さらに、本発明は、簡単に安価に製造されうる、構造部材および潤滑油組成物を提供し、その際に殊に商業的に入手可能な成分を使用することができる。この際、生産は、大工業的に行なうことができ、このために、新規の装置または構造的に費用のかかる装置を必要としない。
【0031】
さらに、本発明による摩擦減少性ポリマーは、潤滑油組成物において数多くの望ましい性質を生じさせうる。それによって、様々な添加剤の数は、最小にされうる。例えば、好ましいポリマーは、レオロジー特性、殊に粘度指数を改善する。
【0032】
さらに、前記構造部材および前記潤滑油組成物は、燃料消費量を改善することができ、その際にこの燃料消費量は、環境相容性に対する不利な作用とは関連していない。
【0033】
使用される前記添加剤は、使用される潤滑油の改善された耐久性を達成し、その結果、必要とされるオイル交換の間隔を延長することができ、それによって、許容し得ない欠点が生じることはない。
【0034】
これに関して、本発明による構造部材は、エンジンおよび/またはエンジンの機械的構造部材であることができる。
【0035】
さらに、本発明による構造部材は、互いに関連して可動する、少なくとも1個の構成要素がエンジンのカムシャフト、バルブ、ギヤボックスまたはポンプであることによって特徴付けられうる。
【0036】
本発明による構造部材の可動する、少なくとも1個の構成要素の表面は、少なくとも部分的にダイヤモンドライクカーボン層(DLC層)によって形成される。
【0037】
DLC層は、基本的にグラファイトおよびダイヤモンドの性質を有する、非晶質または正方晶で構成された炭素層であることができる。前記DLC層は、sp2結合およびsp3結合を含み、その際にsp2結合は、グラファイト構造の特性を示し、およびsp3結合は、ダイヤモンド構造の特性を示す。
【0038】
これによって、DLC層は、結果として2つの結合タイプを持っているので、緻密な非晶質ダイヤモンド様炭素層または緻密な正方晶ダイヤモンド様炭素層についても報告されるが、それによって制限されるものではない。
【0039】
前記DLC層は、高い電気抵抗、極端な硬さおよび光透過性によって優れている。この合成は、物理気相成長(物理蒸着、PVD)により行なうことができるかまたはプラズマを用いる化学気相成長(プラズマ化学気相成長、PECVD)により行なうことができる。その際に、前記材料は、非晶質炭素層として堆積される。
【0040】
こうして形成されたDLC層の性質、例えば層厚、比抵抗、水素含量等は、様々なプロセスパラメータ、例えば処理時間を変動させることにより、要件のプロフィールに対して幅広い範囲内で適合させることができる。
【0041】
次の方法は、例えば形成されたDLC層の様々な性質を試験するために使用されてよく、それによって前記方法の選択において制限が生じることはない。前記層厚は、表面計測プロファイラを用いて測定されることができ、前記硬さは、ナノインデンターを用いて測定されることができ、荒さまたは表面構造は、走査型プローブ顕微鏡(AFM)を用いて測定することができ、DLC層における水素濃度の測定は、核反応分析により測定することができ、ならびに前記厚さは、X線反射率測定(XRR)により測定することができる。
【0042】
さらに、さらなる成分として、水素は、炭素との化合物を生じる被覆工程中に導入されてよい。DLC層は、有利に全層に対して、5〜75原子百分率(at%)、特に10〜65原子百分率(at%)の範囲内で水素を含むことができる。
【0043】
さらに、DLC層は、ドープされていてよいかまたはドープされていなくともよく、その際にドープされた場合には、DLC層は、少なくとも1つの金属および/または非金属の原子を含む。金属原子によるドープの最終的ではない例は、チタン、タングステンおよびモリブデンを含むか、または非金属原子によるドープの最終的ではない例は、ケイ素、窒素およびフッ素を含む。
【0044】
本発明による構造部材は、好ましい実施態様において、DLC層がグラファイト構造で存在する炭素(sp2混成)を含み、その際にグラファイト構造内に存在する炭素の割合は、全炭素に対して、X線構造分析(例えば、DIN 50433第1−4部)により測定した、有利に20〜80モル%の範囲内、特に有利に30〜70モル%の範囲内にある。
【0045】
さらに、本発明のさらなる実施態様において、本発明による構造部材は、DLC層がダイヤモンド構造で存在する炭素(sp3混成)を含むように構成されていることが設けられていてよく、その際にダイヤモンド構造で存在する炭素の割合は、全炭素に対して、X線構造分析(例えば、DIN 50433第1−4部)により測定した、有利に20〜80モル%の範囲内、特に有利に30〜70モル%の範囲内にある。
【0046】
さらに、使用されるDLC層の厚さは、1〜20μmの範囲内、有利に1.5〜15μmの範囲内、特に有利に2〜10μmの範囲内にあることが設けられていてよい。
【0047】
DLC層の厚さは、J.Robertson et al.,Diamond−like amorphous carbon,Materials Science and Engineering,R37(2002)129により測定した、有利に0.90〜2.20g/cm3の範囲内、特に有利に0.92〜2.15g/cm3の範囲内にあってよい。好ましい実施態様によれば、DLC層の硬さは、DIN EN ISO 14577により測定した、特に10GPa〜30GPaの範囲内にある。
【0048】
好ましいダイヤモンドライクカーボン層(DLC層)に関するさらなる情報は、殊に2004年1月付けのGraupnerの表題"Untersuchungen zur Hochrateabscheidung harter DLC−Schichten"の学位論文において、およびA.Grill et.al.,Diamond−like carbon:State of the art,Diamond and Related Matehals (1998)において見い出され、その際に2つの文献の記載内容は、参照のために本明細書において援用される。
【0049】
さらに、少なくとも部分的にDLC層によって形成されている表面を有する、可動する構成要素は、少なくとも部分的に、基本的には金属、特にスチールから構成されていることが設けられていてよい。特別な視点によれば、少なくとも部分的にダイヤモンドライクカーボン層によって形成されている表面を有する、可動する構成要素は、少なくとも80質量%、特に少なくとも90質量%が金属または金属合金、特にスチールからなる。
【0050】
本発明の好ましい実施態様において、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含む本発明によるポリマーは、ポリオレフィンまたはポリアルキル(メタ)アクリレートであることができる。
【0051】
これに関して、本発明による構造部材は、特に、前記ポリマーが極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を0.1〜10質量%含むことによって優れている。
【0052】
この際に、本発明によるポリマーは、ポリオレフィンを基礎とすることができる。この種のポリオレフィンは、久しく公知であり、かつ公知技術水準に記載された刊行物中に説明されている。前記ポリオレフィンには、殊にポリオレフィンコポリマー(OCP)および水素化スチレン−ジエンコポリマー(HSD)が属する。
【0053】
本発明によれば、使用すべきポリオレフィンコポリマー(OCP)は、自体公知である。第1に5〜20個のC原子を有するエチレン、プロピレン、イソプレン、ブチレンおよび/またはさらなるオレフィンから構成されたポリマーにかかわることである。同様に、微少量の酸素含有モノマーまたは窒素含有モノマー(例えば、無水マレイン酸0.05〜5質量%)でグラフトされている系が使用可能である。ジエン成分を含むコポリマーは、一般に、酸化感受性ならびに架橋傾向を減少させるために、水素化されている。
【0054】
分子量Mwは、一般に、10000〜300000Da、特に50000〜150000Daである。この種のオレフィンコポリマーは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第1644941号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第1769834号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第1939037号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第1963039号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第2059981号明細書中に記載されている。
【0055】
エチレン−プロピレンコポリマーが特に良好に使用可能であり、同様に公知の三成分を有する三元ポリマー、例えばエチリデン−ノルボルネン(Macromolecular Reviews,第10巻(1975)参照)も可能であるが、しかし、老化プロセスの際の当該三元ポリマーの架橋傾向を予め考慮に入れるべきである。その際に、前記分布は、実質的にランダムであってよいが、しかし、有利には、エチレンブロックを有するシークエンスポリマーが使用されてもよい。その上、モノマーのエチレン−プロピレンの割合は、或る程度の範囲内で変動可能であり、この範囲は、エチレンに対して約75%およびプロピレンに対して約80%が上限として設定されていてよい。既に、ポリプロピレンは、油中での当該ポリプロピレンの減少された溶解傾向のために、エチレン−プロピレンコポリマーよりも適当ではない。主にアタクチックプロピレンの組込を有するポリマーの他に、顕著なアイソタクチックプロピレンまたはシンジオタクチックプロピレンの組込を有するポリマーが使用されてもよい。この種の製品は、商業的に、例えばDutral(登録商標)CO 034、Dutral(登録商標)CO 038、Dutral(登録商標)CO 043、Dutral(登録商標)CO 058、Buna(登録商標)EPG 2050またはBuna(登録商標)EPG 5050の商品名で入手可能である。
【0056】
水素化スチレン−ジエンコポリマー(HSD)は、同様に公知であり、その際に前記ポリマーは、例えばドイツ連邦共和国特許第2156122号明細書中に記載されている。一般に、水素化イソプレン−スチレンコポリマーまたは水素化ブタジエン−スチレンコポリマーにかかわることである。ジエン対スチレンの比は、有利に2:1 〜1:2の範囲内にあり、特に有利には、約55:45である。分子量Mwは、一般に10000〜300000g/mol、特に50000〜150000g/molである。水素化後の二重結合の割合は、本発明の特別な視点によれば、水素化前の二重結合の数に対して、最大15%、特に有利に最大5%である。
【0057】
水素化スチレン−ジエンコポリマーは、商業的に、(登録商標)SHELLVIS 50、150、200、250または260の商品名で入手可能である。
【0058】
ポリオレフィンは、商業的にポリアルキル(メタ)アクリレートよりも有利であるが、しかし、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、より良好なレオロジー特性、殊に潤滑油組成物のより高い粘度指数を生じる。
【0059】
さらに、これに関して、本発明によるポリマーは、(メタ)アクリレートを基礎とすることができる。ポリアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル(メタ)アクリレートを重合させることによって得ることができるポリマーである。(メタ)アクリレートの表現は、メタクリレートおよびアクリレートならびにこれら双方からなる混合物を含む。前記モノマーは、さらに公知である。
【0060】
ポリアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレート、特にアルキル(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位を、特に少なくとも40質量%、特に有利に少なくとも60質量%、殊に有利に少なくとも80質量%、とりわけ有利に少なくとも90質量%含む。
【0061】
好ましいポリアルキル(メタ)アクリレートは、
a)式(I)
【化1】
〔式中、Rは、水素またはメチルであり、およびR1は、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基である〕の(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位0〜40質量%、殊に1〜25質量%、特に有利に2〜15質量%、
b)式(II)
【化2】
〔式中、Rは、水素またはメチルであり、およびR2は、6〜22個の炭素原子を有するアルキル基である〕の(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位20〜99.9質量%、特に50〜99.9質量%、殊に少なくとも70質量%、特に有利に少なくとも80質量%、
c)式(III)
【化3】
〔式中、Rは、水素またはメチルであり、およびR3は、23〜4000個、特に23〜400個の炭素原子を有するアルキル基である〕の(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位0〜20質量%、特に0.1〜15質量%、有利に0.5〜20質量%、特に有利に1〜10質量%、および
d)極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位0.1〜10質量%、特に1〜8質量%、特に有利に2〜5質量%
を含む。
【0062】
ポリアルキル(メタ)アクリレートは、有利にラジカル重合によって得ることができる。それに応じて、前記ポリマーを有する、それぞれの繰返し単位の質量割合は、前記ポリマーの製造に使用される、相応するモノマーの質量割合からもたらされる。
【0063】
式(I)の(メタ)アクリレートの例は、とりわけ、飽和アルコールに由来する直鎖状(メタ)アクリレートおよび分枝鎖状(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートおよびペンチル(メタ)アクリレート;ならびにシクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレートである。
【0064】
式(II)の(メタ)アクリレートには、殊に飽和アルコールに由来する直鎖状(メタ)アクリレートおよび分枝鎖状(メタ)アクリレート、例えばヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルペンタデシル(メタ)アクリレート、2−エチルテトラデシル(メタ)アクリレート、2−プロピルトリデシル(メタ)アクリレート、2−ブチルドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−ペンチルドデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルウンデシル(メタ)アクリレート、n−ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート;
不飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、例えばオレイル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、2,4,5−トリ−t−ブチル−3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが属し;
式(III)のモノマーの例は、とりわけ、飽和アルコールに由来する直鎖状(メタ)アクリレートおよび分枝鎖状(メタ)アクリレート、例えばセチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレートおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば2,3,4,5−テトラ−t−ヘキシルシクロヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0065】
本発明の特別な実施態様によれば、式(III)のモノマーには、いわゆるポリオレフィンをベースとした、(メタ)アクリレート基を有するマクロモノマーが属し、これは、とりわけ出願番号DE 102007032120.3でドイツ連邦共和国特許庁に2007年7月9日付けで提出されたドイツ連邦共和国特許出願公開第102007032120号明細書A1および出願番号DE 102007046223.0でドイツ連邦共和国特許庁に2007年9月26日付けで提出されたドイツ連邦共和国特許出願公開第102007046223号明細書A1中に記載されており、その際にこれらの刊行物の開示内容、殊にこれらの刊行物中に記載された、基中に少なくとも23個の炭素原子を有する(メタ)アクリレートは、参照のために本明細書において援用される。
【0066】
長鎖状アルコール基を有するアルキル(メタ)アクリレート、殊に成分(II)および(III)は、例えば(メタ)アクリレートおよび/または相応する酸を長鎖状脂肪アルコールと反応させることによって得ることができ、その際に一般にエステルの混合物、例えば様々な長鎖状アルコール基を有する(メタ)アクリレートが生じる。前記脂肪アルコールには、とりわけ、Oxo Alcohol(登録商標)7911、Oxo Alcohol(登録商標)7900、Oxo Alcohol(登録商標)1100;Alfol(登録商標)610、Alfol(登録商標)810,Lial(登録商標)125およびNafol(登録商標)タイプ(Sasol社);C13−C15アルコール(BASF社);Epal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810(Afton社);Linevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびNeodol(登録商標)25(Shell社);Dehydad(登録商標)、Hydrenol(登録商標)タイプおよびLorol(登録商標)タイプ(Cognis社);Acropol(登録商標)35およびExxal(登録商標)10(Exxon Chemicals社);Kalcol(登録商標)2465(Kao Chemicals社)が属する。
【0067】
本発明によれば、使用可能なポリマー、例えばポリアルキル(メタ)アクリレートまたはポリオレフィンは、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含む。「極性のエチレン性不飽和モノマー」の表現は、当該モノマーがラジカル重合されていてよいことを明示する。さらに、極性の概念は、モノマーが例えば、より高度な秩序のアミンへのアミンとの反応後(第一級アミンから第二級アミンへ、または第二級アミンから第三級アミンへ)、アミドへのアミンとの反応後またはイミドへのアミンとの反応後に反応場所の環境において特に極性であることを表わす。前記基に関してこれに属するものには、殊に例えば酸無水物とアミンとの反応の際に形成される、生じるイミド基またはカルボン酸基、またはエポキシドの反応の際に得られるヒドロキシ基が挙げられる。これに関して、カルボン酸基は、遊離酸の形で存在していてよいかまたは塩として存在していてよい。
【0068】
それに応じて、アミン誘導体のアミド基の環境において(無水物との反応の場合)、またはアミン誘導体のアミノ基の環境において(エポキシドとの反応の場合)、さらなる極性基、例えばカルボニル基、酸基またはヒドロキシ基が存在する。特に、それに応じて、アミン誘導体のアミド基は、イミド基である。「反応場所の環境」の概念は、生じる極性基が酸素原子と窒素原子との距離に対して、得られたアミノ基またはアミド基から除去された、最大6個、特に最大5個の共有結合であることを示唆する。
【0069】
本発明の実施態様によれば、アミン誘導体が誘導される極性のエチレン性不飽和モノマーは、マレイン酸またはマレイン酸誘導体、例えばマレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、メチル無水マレインであってよく、その際に無水マレイン酸が特に好ましい。
【0070】
本発明のさらなる視点によれば、アミン誘導体が誘導される極性のエチレン性不飽和モノマーは、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートであってよく、その際にグリシジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0071】
極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体のアミンによって形成される基は、特に、通常一般式R4−NH2〔式中、R4は、2〜40個の炭素原子、特に3〜30個、特に有利に4〜20個の炭素原子を有する、ヘテロ原子を含んでいてもよい基である〕に相当する第一級アミンに由来していてよい。
【0072】
「2〜40個の炭素原子を有する基」の表現は、2〜40個の炭素原子を有する有機化合物の基の特徴を示す。この表現は、芳香族基およびヘテロ芳香族基の他に、脂肪族基およびヘテロ脂肪族基、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基およびアルケニル基を含む。その際に、記載された基は、分枝鎖状であってもよいし、非分枝鎖状であってもよい。
【0073】
本発明によれば、芳香族基は、特に6〜20個、殊に6〜12個のC原子を有する単核または多核の芳香族化合物の基、例えばフェニル、ナフチルまたはビフェニリル、特にフェニルを示す。
【0074】
ヘテロ芳香族基は、アリール基の特徴を示し、そこにおいて少なくとも1個のCH基は、Nによって代用されており、および/または少なくとも2個の隣接したCH基は、S、NHまたはOによって代用されている。前記基には、とりわけ、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンズイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、キノリン、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,'1−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジンまたは4H−キノリジンに由来する基が属する。
【0075】
好ましいアルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、ノニル基、1−デシル基、2−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基およびエイコシル基が属する。
【0076】
好ましいシクロアルキル基には、任意に分枝鎖状アルキル基または非分枝鎖状アルキル基で置換されている、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基が属する。
【0077】
好ましいアルケニル基には、ビニル基、アリル基、2−メチル−2−プロペン基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−デセニル基および2−エイコセニル基が属する。
【0078】
基R4は、置換基を有することができる。好ましい置換基には、とりわけ、ハロゲン、殊にフッ素、塩素、臭素、およびアルコキシ基が属する。
【0079】
記載された極性のエチレン性不飽和モノマーを誘導体化する反応体は、少なくとも2個の窒素原子、特に少なくとも2個のアミノ基を含む。特別な視点によれば、記載された極性のエチレン性不飽和モノマーに対する反応体の窒素原子の数は、2〜6個、特に有利に2〜4個の窒素、特にアミノ基を含むことができる。これに関して、アミノ基の概念は、幅広く解釈することができ、その結果、1個の窒素原子を有する芳香族化合物、例えばピリジンもアミンに含まれる。特に、記載された極性のエチレン性不飽和モノマーを誘導体化する反応体は、少なくとも1個の第一級アミノ基または第二級アミノ基を含み、その際に第一級アミノ基が特に好ましい。極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体が誘導されうる好ましいアミンは、特に少なくとも2個のアミノ基を含み、その際にアミノ基は、第一級アミノ基であり、および少なくとも1個のアミノ基は、第二級アミノ基である。
【0080】
前記アミンは、特に式R5−NH−R6−NH2に相当し、上記式中、R5は、1〜18個、特に1〜10個の炭素原子を有する基であり、およびR6は、2〜18個、特に2〜10個の炭素原子を有する基である。
【0081】
本発明によれば、好ましい実施態様において、基R5またはR6の少なくとも1個は、芳香族基またはヘテロ芳香族基である。
【0082】
特に好ましいアミンには、次の一般式(IIIa)
【化4】
〔式中、R'およびR''は、互いに独立して、Hまたは1〜9個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択されていてよい〕の化合物が属する。
【0083】
極性のエチレン性不飽和モノマーの記載された誘導体が誘導されてよい、特に好ましいアミンには、殊にN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(DPA)、N,N−ジメチルアミノ−プロピルアミン(DMAPA)、N,N−ジメチルアミノ−エチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリドン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、アミノエチルモルホリン、例えば4−(3−アミノエチル)モルホリン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、3,3’−ジアミン−N−メチルジプロピルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−1,2−エタンジイルビス−(1,3−プロパンジアミン)、N−ピリジル−1,4−フェニレンジアミン、4−アミノピリジン、N−ピリジル−1,2−エチレンジアミンおよびN−(2−エチルイミダゾリル)−1,4−フェニレンジアミンが属する。
【0084】
極性のエチレン性不飽和モノマーの記載された誘導体が誘導されうる、さらに好ましいアミンには、殊にN,N−ジメチルアミノ−プロピルアミン(DMAPA)、N,N−ジメチルアミノ−エチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリドン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、アミノエチルモルホリン、例えば4−(3−アミノエチル)モルホリン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、3,3’−ジアミン−N−メチルジプロピルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンおよびN,N’−1,2−エタンジイルビス−(1,3−プロパンジアミン)が属する。
【0085】
極性のエチレン性不飽和モノマーの記載された誘導体が誘導されうる、さらに好ましいアミンには、殊にN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(DPA)、N−ピリジル−1,4−フェニレンジアミン、4−アミノピリジン、N−ピリジル−1,2−エチレンジアミンおよびN−(2−エチルイミダゾリル)−1,4−フェニレンジアミンが属する。
【0086】
記載されたアミンの中で、N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(DPA)、N,N−ジメチルアミノ−プロピルアミン(DMAPA)が好ましく、その際にN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンが特に好ましい。
【0087】
本発明の特別な視点によれば、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位は、本発明により使用すべきポリマー、特にポリアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはポリオレフィンにおいて、最初に反応性の極性繰返し単位を有する、特に無水マレイン酸またはグリシジル(メタ)アクリレートに由来するポリマーが製造されることによって形成される。引続き、前記反応性基は、先に説明されたアミンと反応され、本発明による使用すべきポリマーになる。
【0088】
さらに、本発明により使用すべきポリマー、有利にポリアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはポリオレフィンを製造するためのモノマー混合物は、先に説明されたモノマーと共重合されうるモノマーを含むことができる。これについては、とりわけ、アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジルメタクリレートまたはフェニルメタクリレート、その際にアリール基は、それぞれ非置換であってもよいし、4回まで置換されていてもよく;
スチレンモノマー、例えばスチレン、側鎖中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレンおよびα−エチルスチレン、環にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエンおよびp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン;
イタコン酸およびイタコン酸誘導体、例えばイタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステルおよびイタコン酸無水物;
フマル酸およびフマル酸誘導体、例えばフマル酸モノエステル、フマル酸ジエステルおよびフマル酸無水物;
ビニルエーテルおよびイソプレニルエーテル、例えばアルキルビニルエーテル、殊にメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルおよびドデシルビニルエーテル;
ビニルエステル、例えばビニルアセテート;
1−アルケン、殊に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセンおよび1−ペンタデセンが属する。
【0089】
特別な実施態様によれば、殊に分散性モノマーが使用されてよい。
【0090】
分散性モノマーは、久しく潤滑油中のポリマー添加剤を官能化するために使用され、したがって当業者に公知である(R.M.Mortier,S.T.Orszulik(編):"Chemistry and Technology of Lubricants",Blackie Academic & Professional,London,第2版,1997参照)。好ましくは、殊に式(IV)
【化5】
〔式中、Rは、水素またはメチルであり、Xは、酸素、硫黄または式−NH−または−NRa−(但し、Raは、1〜10個、有利に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表わす)のアミノ基であり、R7は、2〜50個、殊に2〜30個、有利に2〜20個の炭素原子を含む、少なくとも1個、特に少なくとも2個のヘテロ原子を有する基である〕のヘテロ環式ビニル化合物および/またはエチレン性不飽和の極性エステルまたはアミド化合物は、分散性モノマーとして使用されてよい。
【0091】
式(IV)の分散性モノマーの例は、とりわけ、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、ヘテロ環式(メタ)アクリレートおよび/またはカルボニルを含む(メタ)アクリレートである。
【0092】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートには、とりわけ、
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレートおよび
1,10−デカンジオール(メタ)アクリレートが含まれる。
【0093】
カルボニルを含む(メタ)アクリレートは、例えば
2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、
カルボキシメチル(メタ)アクリレート、
N−(メタクリロイルオキシ)ホルムアミド、
アセトニル(メタ)アクリレート、
コハク酸−モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、
N−(メタ)アクリロイルモルホリン、
N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリジノン、
N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、
N−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノン、
N−(2−(メタ)アクリロイルオキシペンタデシル)−2−ピロリジノン、
2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、
N−(3−(メタ)アクリロイルオキシヘプタデシル)−2−ピロリジノンおよび
N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)エチレン尿素を含む。
【0094】
ヘテロ環式(メタ)アクリレートには、とりわけ、
2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、
オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレート、
2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、
1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン、
N−メタクリロイルモルホリン、
N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、
N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、
N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノンが含まれる。
【0095】
アミノアルキル(メタ)アクリレートには、殊に
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、
N,N−ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、
N,N−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0096】
さらに、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドは、分散性モノマーとして使用されてよい。
【0097】
さらに、燐含有(メタ)アクリレート、ホウ素含有(メタ)アクリレートおよび/またはケイ素含有(メタ)アクリレート、例えば
2−(ジメチルホスファト)プロピル(メタ)アクリレート、
2−(エチレンホスフィット)プロピル(メタ)アクリレート、
ジメチルホスフィノメチル(メタ)アクリレート、
ジメチルホスフィノエチル(メタ)アクリレート、
ジエチル(メタ)アクリロイルホスホネート、
ジプロピル(メタ)アクリロイルホスフェート、
2−(ジブチルホスホノ)エチル(メタ)アクリレート、
2,3−ブチレン(メタ)アクリロイルエチルボラート、
メチルジエトキシ(メタ)アクリロイルエトキシシラン、
ジエチルホスファトエチル(メタ)アクリレート
は、分散性モノマーとして使用されてよい。
【0098】
好ましいヘテロ環式ビニル化合物には、とりわけ、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾールおよび水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾールおよび水素化ビニルオキサゾールが含まれる。
【0099】
特に好ましい分散性モノマーには、殊に、少なくとも1個の窒素原子を含む、エチレン性不飽和化合物が含まれ、その際にこのエチレン性不飽和モノマーは、特に有利に先に説明されたヘテロ環式ビニル化合物および/またはアミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよび/またはヘテロ環式(メタ)アクリレートから選択されている。
【0100】
前記されたエチレン性不飽和モノマーは、個別的に使用されてもよいし、混合物として使用されてもよい。さらに、規定された構造、例えばグラフトポリマーを得るために、前記モノマー組成物を主鎖の重合中に変えることも可能である。
【0101】
殊に、グラフトコポリマーは、驚異的な利点を示し、その際に主鎖は、オレフィンに由来する繰返し単位を含み、および側鎖は、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含む。
【0102】
さらに、グラフトコポリマーは、驚異的な利点を示し、その際に主鎖は、アルコール基中に6〜22個の炭素原子を有する(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位を含み、および側鎖は、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含む。
【0103】
有利に、側鎖対主鎖の質量比は、1:2000〜1:5、特に有利に1:1000〜1:10、殊に有利に1:100〜1:20の範囲内にある。
【0104】
好ましい変法によれば、グラフト側鎖は、短鎖状であることができ、その際に前記性質は、グラフト重合を主鎖なしに実施する比較試験によって測定されてよい。特別な実施態様によれば、グラフト側鎖の数平均重合度は、最大10個、特に有利に最大5個、殊に有利に最大3個の繰返し単位であることができる。
【0105】
とりわけ、特に5000〜10000000g/mol、有利に10000〜1000000g/mol、特に有利に10000〜750000g/mol、殊に有利に20000〜500000g/molの範囲内の質量平均分子量Mwを有するポリアルキル(メタ)アクリレートが特に重要である。
【0106】
数平均分子量Mnは、特に1000〜500000g/mol、特に有利に2500〜500000g/mol、殊に有利に5000〜250000g/molの範囲内にあることができる。
【0107】
さらに、その多分散指数Mw/Mnが1.1〜5.0の範囲内、特に有利に1.4〜4.5の範囲内、殊に有利に1.6〜3.0の範囲内にあるポリアルキル(メタ)アクリレートは、好ましい。前記の数平均分子量および質量平均分子量は、公知方法、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、特にPMMA標準を用いて測定されてよい。特に、前記ポリマーの分子量の測定は、アミンでの同一のポリマーの誘導体化前に実施されてよい。
【0108】
前記組成物からのポリアルキル(メタ)アクリレートの製造は、自体公知である。そのように、前記ポリマーは、殊にラジカル重合、ならびに類似の方法、例えばATRP(=Atom Transfer Radical Polymerisation 原子移動ラジカル重合)またはRAFT(=Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer 可逆的付加開裂連鎖移動)によって得ることができる。
【0109】
ATRP法は、自体公知である。この反応操作は、例えばJ−S.Wang,et al.,J.Am.Chem.Soc.,第117巻,第5614−5615頁(1995)によって、またはMatyjaszewski,Macromolecules,第28巻,第7901−7910頁(1995)によって記載されている。さらに、特許出願WO 96/30421、WO 97/47661、WO 97/18247、WO 98/40415およびWO 99/10387には、先に説明されたATRPが開示されている。
【0110】
さらに、本発明によるポリマーは、例えばRAFT法により得られてもよい。前記方法は、例えばWO 98/01478およびWO 2004/083169中に詳述されており、当該文献の記載内容は、参照のために本明細書に援用される。
【0111】
さらに、本発明によるポリマーは、とりわけ米国特許第4581429号明細書中に記載されているNMP法(ニトロキシドを介したラジカル重合)によって得ることができる。
【0112】
前記方法の、殊にさらなる参考例を含む包括的な記載は、とりわけ、K.Matyjaszewski,T.P.Davis,Handbook of Radical Polymerization,Wiley Interscience,Hoboken 2002中に述べられており、当該文献の記載内容は、参照のために本明細書に援用される。
【0113】
エチレン性不飽和化合物は、自体公知の方法でラジカル重合しうる。通常のフリーラジカル重合は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第6版中に述べられている。
【0114】
本発明の範囲内で、重合は、ラジカル重合のための少なくとも1つの重合開始剤を使用して開始される。これについては、とりわけ、当業界で広く知られているアゾ開始剤、例えば2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)および1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、有機過酸化物、例えば過酸化ジクミル、過酸化ジアシル、例えばジラウロイルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、例えばジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ペルエステル、例えばt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートおよび類似物が属する。
【0115】
本発明の目的のために特に適した重合開始剤は、殊に次の化合物:
メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、過酸化ジベンゾイル、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス−(2−エチルヘキサノイル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、過酸化ジクミル、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサノン、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)−ペルオキシジカーボネート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−アミルペルオキシピバレート、ジ−(2,4−ジクロロベンゾイル)−ペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−二塩酸塩、ジ−(3,5,5−トリメチル−ヘキサノイル)−ペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,2’−アゾビス−(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジ(2−メチルベンゾイル)−ペルオキシド、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチラート、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−ヘキサン、4,4’−アゾビス−(シアノペンタン酸)ジ−(4−メチルベンゾイル)−ペルオキシド、過酸化ジベンゾイル、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチラートならびに前記重合開始剤の混合物を含む。
【0116】
本発明によれば、25℃〜200℃の範囲内、特に50℃〜150℃の範囲内、殊に50℃〜120℃の範囲内の温度で1時間の半減期を有する重合開始剤が特に好ましい。さらに、過酸化物の重合開始剤、殊にt−ブチルペルオクトエートは、本発明の目的のために特に適している。
【0117】
本方法は、連鎖移動剤の存在下または不在下で実施されてよい。分子量調整剤とも呼ばれる連鎖移動剤として、当業者に公知である、典型的な、ラジカル重合のために記載された種類が使用されてよい。
【0118】
硫黄不含の分子量調整剤には、例えばそれによって制限されるものではない、二量体α−メチルスチレン(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン)、エノールエーテル脂肪族アルデヒドおよび/または脂環式アルデヒド、テルペン、β−テルピン、テルピノレン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−ジヒドロナフタリン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタリン、2,5−ジヒドロフラン、2,5−ジメチルフランおよび/または3,6−ジヒドロ−2H−ピランが属し、二量体α−メチルスチレンが好ましい。
【0119】
硫黄含有分子量調整剤として、特にメルカプト化合物、ジアルキルスルフィド、ジアルキルジスルフィドおよび/またはジアリールスルフィドが使用されてよい。次の重合調整剤が例示的に挙げられる:ジ−n−ブチルスルフィド、ジ−n−オクチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、チオジグリコール、エチルチオエタノール、ジ−イソプロピルジスルフィド、ジ−n−ブチル−ジスルフィド、ジ−n−ヘキシルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジエタノールスルフィド、ジ−t−ブチルトリスルフィドおよびジメチルスルホキシド。有利に、分子量調整剤として使用される化合物は、メルカプト化合物、ジアルキルスルフィド、ジアルキルジスルフィドおよび/またはジアリールスルフィドである。前記化合物の例は、エチルチオグリコラート、2−エチルヘキシルチオグリコラート、ペンタエリトリットテトラチオグリコラート、システイン、2−メルカプトエタノール、1,3−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパン−1,2−ジオール、1,4−メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、チオ酢酸、チオ尿素およびアルキルメルカプタン、例えばn−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンまたはn−ドデシルメルカプタンである。特に有利に使用される重合調整剤は、メルカプトアルコールおよびメルカプトカルボン酸である。本発明の範囲内で、連鎖移動剤としてのn−ドデシルメルカプタンならびにt−ドデシルメルカプタンの使用は、特に好ましい。
【0120】
特に、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位は、ポリアルキル(メタ)アクリレートにおいて、ポリアルキル(メタ)アクリレートの先に説明した製造によるポリマー類似の反応によって製造される。それに応じて、好ましくは、最初に反応性の極性単位を有するポリマーを製造することができ、その際に反応性単位は、先に説明された種類のアミンと反応される。反応性の極性単位には、殊に無水物単位またはエポキシド単位が含まれる。
【0121】
ポリマー中に含まれる反応性の極性単位、特に無水物基またはエポキシ基とアミンとの反応は、通常、40℃〜180℃、有利に80℃〜180℃、特に有利に100℃〜160℃で行なうことができる。アミンは、特に、反応性の極性基、特に無水物基またはエポキシ基に対して等モル量で添加されうる。過剰量のアミンが添加される場合には、このアミンは、あとで混合物から分離されうる。反応性基が過剰に少ない割合で残留したままの場合には、この反応性基は、任意に少量の水を添加することによってより少ない反応性の基に変換されうる。
【0122】
アミンは、純粋な形で添加されうるか、または適当な溶剤中の反応混合物に添加されうる。極性溶剤、殊にエステル、例えば酢酸ブチルまたはジイソノニルアジペート(Plastomoll DNA)が好ましい。
【0123】
変換された反応性の反応体基の種類に応じて、水が生じうる。すなわち、例えば無水物基を使用する場合には、本発明の特別な視点によれば、可能なかぎり完全に反応混合物から除去されうる水が遊離される。さらに、乾燥剤が使用されてよい。易揮発性溶剤、例えば酢酸ブチルが使用される場合は、当該易揮発性溶剤は、反応後に、特に真空中で留去されうる。
【0124】
本発明によれば、使用すべきポリマーは、特に潤滑油の性質を改善するために使用される。潤滑油には、殊に鉱油、合成油および天然油が属する。
【0125】
一般に、原油または鉱油中のパラフィン系の塩基性留分とナフテン系留分と芳香族系留分とは区別され、その際にパラフィン系の塩基性留分の概念は、長鎖状のイソアルカンを表わすかまたは強く枝分かれしたイソアルカンを表わし、およびナフテン系留分は、シクロアルカンを表わす。
【0126】
合成油は、とりわけ、有機エステル、例えばジエステルおよびポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成炭化水素、殊にポリオレフィン、その中でポリアルファオレフィン(PAO)が好ましく、シリコーン油およびペルフルオロアルキルエーテルを含む。
【0127】
天然油は、動物性油または植物性油、例えば牛脚油またはホホバ油である。
【0128】
潤滑油配合物用基油は、API(American Petroleum Institute)によるグループに分けられる。鉱油は、グループI(水素処理されていない)に分けられ、および飽和度、硫黄含量および粘度指数に依存して、グループIIおよびIII(双方とも水素処理されている)に分けられる。PAOは、グループIVに相当する。別の全ての基油は、グループVにまとめられる。
【0129】
前記潤滑油は、混合物として使用されてもよく、かつ多方面で商業的に入手可能である。
【0130】
前記潤滑油組成物における本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートの濃度は、前記組成物の全質量に対して、0.01〜30質量%の範囲内、特に有利に0.1〜20質量%の範囲内、殊に有利に0.5〜15質量%の範囲内にある。
【0131】
本発明により使用すべき、エステル基を含むポリマーの他に、ここで説明される潤滑油組成物は、さらなる添加剤を含有していてもよい。この添加剤には、とりわけ、VI向上剤、流動点向上剤およびDI添加剤(分散剤、清浄剤、消泡剤、腐食防止剤、酸化防止剤、摩耗防止剤および極圧剤、摩擦低減剤)が属する。
【0132】
好ましい潤滑油組成物は、10〜120mm2/秒の範囲内、特に有利に15〜100mm2/秒の範囲内の、ASTM D 445により40℃で測定された粘度を示す。100℃で測定された動粘度KV100は、特に少なくとも2.0mm2/秒、特に有利に少なくとも3.5mm2/秒、殊に有利に少なくとも4.0mm2/秒である。
【0133】
さらに、本発明によるポリマーは、セグメント状構造によって優れており、その際に極性の油不溶性セグメントは、極性のエチレン性不飽和モノマーのアミン誘導体に由来する繰返し単位を含み、および非極性の可溶性セグメントは、全ポリマーの良好な油可溶性を保証する繰返し単位からなる。
【0134】
特に好ましい実施態様において、本発明によるポリマーは、極性セグメントよりも非極性セグメントを多数含む。
【図面の簡単な説明】
【0135】
図1】グラフによる、摩擦係数測定の評価を示す略図。
【0136】
次に、本発明を実施例につき詳説するが、これによって制限されるものではない。
【実施例】
【0137】
実施例および比較例:
ポリマー合成:
実施例1(本発明によるポリマー):
LMA224g(アルキル基中に12〜14個のC原子を有するアルキルメタクリレート)、SMA0.5g(アルキル基中に16〜18個のC原子を有するアルキルメタクリレート)、DPMA0.5g(アルキル基中に12〜15個のC原子を有するアルキルメタクリレート)、MMA25g(メチルメタクリレート)およびDDM0.75g(n−ドデシルメルカプタン)から反応混合物を調製した。KPE 100 N油97.2gを、内部温度調節器、攪拌機、窒素導入管および冷却器を装備した反応フラスコ中に予め装入し、上記反応混合物10.8gを添加した。
【0138】
引続き、攪拌しながら窒素の導入下に105℃に加熱した。反応温度の達成後に、tBPO0.99g(t−ブチルペルベンゾエート)を供給し、モノマーの供給を開始した。供給されるモノマーは、tBPO8.6gが添加された、残りの反応混合物から成り立っていた。この供給は、一様に3.5時間に亘って行なわれた。供給が終了してから2時間後に、再度、95℃でtBPO0.5gを供給した。このバッチをさらに2時間105℃で維持した。引続き、130℃に加熱し、MSA7.7g(無水マレイン酸)を添加し、tBPB0.64gとのグラフト反応を開始させた。グラフト反応の開始から1時間および2時間の後に、再度tBPB0.32gを供給した。最後の開始剤添加の後に、130℃でさらに3時間、後攪拌した。
【0139】
アミンの誘導体化:
前記ポリマー中に含まれる無水物を、N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(DPA)とのポリマー類似の反応において140℃で反応させた。DPA14.5gをジイソノニルアジペート58.1g中に溶解し、この溶液を均一に1.5時間以内に添加した。生じる水を、乾燥窒素を吹き込むことによって追い出した。本発明による、変換が完結されたポリマーを、反応の終了後に、デプスフィルター層(SEITZ T1000)を介して加圧ろ過し、不純物を除去した。最終製品のポリマー含量は、62%であった。
【0140】
実施例2(本発明によるポリマー):
スクシンイミドアンヒドリド基0.9質量%(EPSA)を含むエチレン−プロピレンコポリマー100g(EPM)を、鉱油400g(SNO−100)中に窒素雰囲気下に攪拌することにより155℃で3時間溶解した。
【0141】
Surfonic L24−7 29g(界面活性剤、エトキシル化直鎖状アルコール)中に溶解されているN−フェニル−p−フェニレンジアミン2.4g(NPPDA)を引き続き添加した。この反応を窒素雰囲気下に165℃でさらに4時間攪拌した。
【0142】
引続き、中性油(SNO−100)を溶剤として添加し、このことから、ポリマー13質量%を含有するポリマー溶液を生じた。
【0143】
比較例1〜3:
比較例として引き合いに出されるブロックポリマーは、WO 2004/087850またはWO 2006/105926の記載と同様に合成された。前記ポリマーの組成は、次のとおりである:
比較例1:
p[LMA−co−SMA−DPMA]−b−MOEMA=92.1−0.2−0.2−7.5質量%。
【0144】
比較例2:
p[LIMA−co−Sty]−b−EUMA=88.9−3.7−7.4質量%。
【0145】
比較例3:
p[LIMA−co−Sty]−b−AcAcOEMA=89.4−3.7−6.9質量%。
【0146】
摩擦減少作用の測定:
全ての試験されるポリマーを、API グループIII 油、Nexbase 3030、中で6.50mm2/秒のKV 100に調節した。全測定に対する参考油として、Viscoplex 0−050でKV 100=6.50mm2/秒に調節されたNexbase 3030を使用した。120℃での摩擦係数の測定は、WO 2004/087850中の記載と同様に行なったが、しかし、スチールからなる通常の試験体の代わりにDLCで被覆されたディスクおよび球体を使用した。2〜3μmの厚さのDLC層は、タイプa−C:H,sp2−DLCタイプに相当し、このタイプの製造の場合には、プラズマに比較的大量の水素が添加され、このことは、表面に炭素のグラファイト様構造(sp2ハイブリッド)を強力に形成させる。このタイプに関するさらなる詳細は、例えば次の参考文献において読み取ることができる:A.Grill et al.,Diamond−like carbon:State of the art,Diamond and Releted Materials(1998)またはBericht VDI2840,Verband Deutscher Ingenieure(2006)。
【0147】
摩擦係数測定の評価は、図1のグラフに示されている。前記摩擦減少を数値で表現することができる、定量化可能な結果は、次のようにして得られる:
滑り速度0.005〜2.5m/秒の範囲内の摩擦係数曲線の積算。この面積は、試験された全速度範囲内の「全摩擦」に相当する。面積が小さければ小さいほど、試験されたポリマーの摩擦減少作用は、ますます大きくなる。
【0148】
算出された面積およびこれから達成される、参考油に対する百分率での摩擦減少は、第1表中にまとめられている。
【0149】
【表1】
【0150】
図1中および第1表中のデータは、本発明によるポリマーが公知技術水準の相応する比較ポリマーよりも、摩擦減少に関連して明らかに良好な作用を有することを明示する。平均的に、本発明によるポリマーの摩擦減少作用は、公知技術水準の2倍良好である。
【0151】
本発明により使用すべき潤滑剤組成物を本発明により使用すべき構成部材と組み合わせて使用する場合には、殊に低速が特に経済的に重要であるので、第2表には、0.01〜0.1m/秒の滑り速度範囲内の摩擦係数曲線の集積データが示されている。
【0152】
算出された面積およびこれから達成される、参考油に対する百分率での摩擦減少は、第1表と同様に、第2表中にまとめられている。
【0153】
【表2】
【0154】
第2表のデータは、本発明によるポリマーが公知技術水準の相応する比較ポリマーよりも、摩擦減少に対する再度の明らかに良好な作用を有することを明示する。
【0155】
第1表中の結果と比較して、本発明による使用すべき潤滑剤組成物の、摩擦を改善する作用は、相応する構成部材と組み合わせてまさに低い滑り速度の範囲内で極めて明らかに顕著であることを示す。本発明によるポリマーの摩擦減少作用は、例えば公知技術水準の3倍を上回り良好であることができる(比較例1と比較した実施例2)。
【0156】
本発明による構造部材および本発明による潤滑油組成物は、特許請求の範囲の請求項の特徴部によって規定されている。
図1