(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項4記載の方法において、前記ポンプ移送する工程は、少なくとも1つの同じポンプにより前記塩水および前記淡水の双方を同時にポンプ移送する工程を有するものである方法。
請求項4記載の方法において、前記ポンプ移送する工程は、複数のバネ式ポンプにより前記塩水および前記淡水の双方を同時にポンプ移送する工程を有するものである方法。
請求項2記載の方法において、前記液体塩水を蒸発させる工程は、摩擦バルブを開閉して前記塩水流を制御することにより前記液体塩水の蒸発を促進する工程を含むものである方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の種々の態様および原理とその有利な詳細事項について、添付の図面で説明し、および/または示し、以降で詳述する非限定的な例を参照してさらに完全に説明する。なお、図面で示す特徴は、必ずしも縮尺どおり描かれておらず、一実施形態の特徴は、当業者であれば理解されるように、本明細書で明示的な断りがなくとも他の実施形態で使用できることに注意すべきである。周知の構成要素および処理技術に関する説明は、本発明の種々の態様を不要に曖昧にしないよう省略する場合もある。本明細書で使用する例は、単に本発明を実施できる方法を理解しやすくし、さらに当業者が本発明の種々の実施形態を実施できるようにするためのものである。そのため、本明細書の実施形態は、添付の請求項および適用法令だけにより定義される本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。さらに、図面のいくつかの図にわたり同様な参照番号は同様な部分を表すことに注意すべきである。
【0010】
図1Aは、本発明の原理に基づいて構成され、全体として参照番号100で示された水圧式脱塩システムの塩水から淡水への構成要素例を示したもので、本発明の原理に係る海水から淡水への行程全体の単純化した工程も示している。
【0011】
図1Bは、本発明の原理に基づいて構成され、全体として参照番号101で示された水圧式脱塩システムの塩水からブライン水への構成要素例を示したもので、本発明の原理に係るブラインから淡水への行程全体の単純化した工程も示している。
【0012】
図1Aおよび1Bとの関連で示すように、一般化した例示的な水圧式脱塩装置および方法は、配管および付属インフラストラクチャを通じて流れを生成することにより液体塩水の圧力を気化点(蒸発点)まで低減する工程と、その蒸気を捕捉する工程と、周辺環境により供給されるより高い圧力を使って前記蒸気を液化(凝縮)させ、淡水を生成する工程と、周囲温度を蒸気温度より高く維持することにより、前記液化中に放出された熱を回収する工程と、その後、前記回収された熱を使って循環的に蒸発を促進し存続させる工程とを含む。
【0013】
以下さらに詳しく説明するように、
図1Aおよび1Bは、水蒸発タンク120を収容するポンプステーションの一例を示しており、前記水蒸発タンク120は、格納容器と、前記脱塩システム100を通じて塩水および淡水を含む水をポンプ移送するポンプシステム125と、仕切り130により分離された複数の漏斗とを有する。この
図1Aおよび1Bでは、前記ポンプステーションのインフラストラクチャ例を、地面の標高および塩水源に関連付けて示している。また、前記淡水側に空気を注入するように構成された空気ノズル174も示されている。
図1Aでは、前記塩水から淡水への態様をより明瞭に例示している一方、
図1Bでは、前記塩水からブラインへの態様をより明瞭に例示している。
【0014】
また本発明の原理に基づき、
図1Aは、海水から淡水への行程全体の工程を単純化して示している一方、
図1Bは、海水からブラインへの行程全体の工程を単純化して示している。これら
図1Aおよび1Bの一般化した工程については、以下で他の図面を参照してより詳しく説明する。
【0015】
図1Aを参照すると、工程S1は、海水の流れを海水源、例えば海などから脱塩システム100に搬送する圧送管を例示している。工程S2において、海水は圧送管の摩擦バルブを通過する。工程S3では、前記海水が漏斗135bに流れ込む(
図2A)。工程S4では、仕切り130により前記海水が水蒸発タンク120に収容され上流格納セクションが生成される。工程F5では、前記海水が蒸発し、以下さらに詳しく説明するように、前記蒸発タンク120内に蒸気部分が生じる。工程F6では、前記蒸気部分が前記水蒸発タンク120内で液化し液体淡水として捕捉され、下流格納セクションを生成される。工程F7では、漏斗135bおよび仕切り130により前記下流格納セクションが収容される。工程F8では、摩擦バルブ、例えば設定済み摩擦バルブにより前記淡水が吸引管を通過する。前記淡水は、注入された空気を約2%含む可能性がある。工程F9では、前記淡水はポンプに進入し(例えば、
図3Aおよび3Bの165a〜165e)、淡水貯蔵領域へ排出される。
【0016】
図1Bを参照すると、工程S1〜S4は、
図1Aを参照して上述したものと同じである。工程B5において、前記漏斗135aの上流格納セクションで回収されたブラインは、吸引管の第1の部分に流れる(例えば、
図3Bを参照)。工程B6では、前記ブラインが引き続き前記吸引管の第2の部分の中を進む。工程B7では、前記ブラインが前記吸引管の第3の部分の中を移動する。工程B8では、前記ブラインがポンプに入り(例えば、
図3Aおよび3Bの165a〜165e)、ブライン格納領域へ排出される。各前記ポンプ(例えば、
図3Aおよび3Bの165a〜165e)は、以下でより詳しく説明するように、淡水および塩水の双方を同時にポンプ移送するように構成できる。
【0017】
図2Aおよび2Bは、
図1Aおよび1Bの構成に含めることのできる一定の構成要素をより詳細に示したものである。示したように、ポンプステーション115は、蒸気空間122と、仕切り130により分離された複数の漏斗135aおよび135bと、熱源145および蒸発タンク120に連結されて前記蒸発タンク120内部の加熱を可能にする1若しくはそれ以上の熱導管140とを含む収容湾曲構造として示されている水蒸発タンク120を含むように構成されている。前記仕切り130は、本明細書で説明する脱塩工程により生成および捕捉される塩水(左側に示す)を淡水(右側に示す)から分離するように構成できる。タンクキャップ160は、前記蒸発タンクへのアクセス、例えば前記蒸発タンク120を空にし、または前記蒸発タンク120を洗浄する際使用されるアクセスを可能にする。漏斗135aは、塩水保持構造を有し、圧送管コネクタ150とともに構成されており、この圧送管コネクタ150は、前記圧送管1(
図3B)を接続し、吸引管12(
図3B)に連結してこれを受容するように構成されている。漏斗135bは、淡水保持構造を有し、吸引管コネクタ155とともに構成されており、この吸引管コネクタ155は、吸引管5(
図3Aおよび3B)に連結される。前記蒸発タンク120は、格納容器を有することができ、この格納容器は、上流格納セクションおよび下流格納セクションを実質的に収容し、かつ以下で詳述するように、液化させる蒸気を含むように構成できる。
図2Bに示すように、前記タンク仕切り130は、熱交換器131を収容するように構成することもでき、この熱交換器131は、液化中に放出される熱について、前記下流の淡水側から前記上流の海水側への熱流路を提供する。
【0018】
図3Aは、本発明の原理に基づいて構成されたポンプシステムの複数の水圧式脱塩ポンプ装置の例を順次上部から見下ろした図を示したものである。
図3Bは、
図3Aの前記複数の水圧式脱塩ポンプ装置の横断面図のほか、その動作の例示的なシーケンスと、
図2Aおよび2Bの前記漏斗135a、135bに接続する例示的な弁および配管とを示したものである。
【0019】
表1は、
図3Aおよび3Bの前記複数の水圧式脱塩ポンプ装置に含めることのできる一定の各種構成要素の例を相互参照したもので、参照番号(1〜28)、量の例(用途に応じて異なる)、および各構成要素の例示的な説明を示している。
【0021】
前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eは、本明細書で説明する水圧式脱塩システムおよび工程用の水原動機として機能することが可能である。本発明の原理によれば、前記水圧式脱塩システムおよび工程では、水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eを使用でき、これは
図3Bに示したようにバネ式ポンプを弁および配管170(前記インフラストラクチャの一部)と併用するものであっても、
図1Aおよび1Bに示したように空気ノズル、蒸発タンクその他の設備を使用するものであってもよい。これらの要素を組み合わせると、熱サイフォンができ(
図5に一例を示す)、従来の脱塩工程では通常は対処できない蒸発工程時の熱を効果的に回避することにより、全体的なエネルギー要件を著しく軽減する。
【0022】
水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eの各々は、従来のポンプ内に大きな摩擦損失を生じる複雑な内部構成要素、小寸法の管、および狭い経路を全体的に伴わない単純な構成を有する。前記構成には、比較的大きな円筒形のポンプ空洞164を含めることができ、このポンプ空洞164は、同様な直径および/または同様な外周の圧縮バネ163により拡張することができる。
図3Aに例示したように、各前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eは、2つの管入口(5および19)および2つの管出口(11および24)とともに構成される。4つの管入口および出口は、すべて各前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eの上部に配置できる。入口(5)および出口(11)の単一ペアは、淡水および空気の混合物の吸引または排出に使用できる。別の入口(19)および出口(24)ペアは、ブラインの吸引または排出に使用できる。前記淡水および空気の混合流は、前記ポンプ空洞164(およびバネ)内の仕切りにより前記ブライン流から分離されて保たれる。前記ポンプの仕切りは、例えば
図8に例示するように、各前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eに吸引された流れの約90%が前記淡水および空気の混合流を含み、残りの約10%がブラインを含むよう配置できる。この比により、一般的な海水または他の塩水源の脱塩における効率を最大限に伸ばしながら、前記ブライン溶液中の塩を維持することができる。必要に応じ、他の比および仕切り位置を選択すると、塩分濃度の異なる塩水または比較的小さい脱塩ユニットにも対応できる。
【0023】
図3Bも本発明の原理に係る前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eの動作シーケンスを例示している。前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eに流れが入るに伴い、前記バネ163は、比較的低速で前記ポンプ空洞164を下方へ拡張させる。前記ポンプ空洞164の拡張が完了すると(ほぼその最大の度合いまで)、前記ポンプの底部にある電気機械プレス166(または他の同様な動力プレス機構)が起動されて、前記空洞をその元の非拡張位置へと圧縮し始めようにできる。圧縮中、ブラインおよび淡水・空気は、各々の出口(11および24)を通じて排出され、それぞれの貯蔵領域に送られる。次に、前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165dの動作について、より詳細に説明する。
【0024】
前記動作中の4つの水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165dは、各動作において、以下の表2に示す工程を通じて周期的に、ただし非同期的に回転でき、表2では前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165dの動作と関連してフローバルブの動作も示している。(
図3Bに示すように、「ポンプ位置1」は160aに対応する。「ポンプ位置2」は160bに対応する。「ポンプ位置3」は160cに対応する。)
【表2】
【0025】
一定流(小型)ユニットの場合、稼働ポンプは2つだけ必要とされる。そのため、小型ユニット構成では工程P1から工程P2への移行に比較的時間がかかることから、工程P2、P3、およびP4は単一の工程として扱われる。
【0026】
前記脱塩工程を長期維持するには、通常、連続した流れが必要とされ、それなしでは水圧式脱塩ポンプ装置が水を排出している間に蒸発が停止してしまう。
図3Bに例示したように、連続流を保つには、複数の(例えば、2つ、3つ、4つ、または5つの)水圧式脱塩ポンプ装置を並列に設置し、フローバルブ(例えば、フローバルブ22)を各ポンプの吸引および/または排出管に取り付けることができる。前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165dは、一度に1つの水圧ポンプだけが流れを吸引するよう周期的に動作できる。前記水圧式脱塩ポンプ装置の1つは、冗長スペアポンプ165eとして作用可能である。その他の稼働ポンプ装置の1つに障害が生じた場合は、前記スペアポンプ装置165eが始動して連続流が維持される。
【0027】
すべての前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eは、特定の特徴を有し、または各々が流量をもたらし圧力(すなわちヘッドまたは水頭圧)を生じる能力について特定の関係を有する。ただし一般に、ポンプは、低い流量での流体ポンプ移送中、比較的高い圧力をその周囲に及ぼす。逆に、ポンプは、高い流量での流体ポンプ移送中、比較的低い圧力をその周囲に及ぼす。この関係は、流量がどのように周囲に影響するかに関係なくポンプ装置自体の内部に存在し、ポンプ曲線として知られている。一般的なポンプ曲線を
図6に示す
従来のポンプは内部機構、配管、経路などを有し、それらはポンプがその周囲に圧力を及ぼす能力が流量の増加とともに低下することにより、前記ポンプ内の流量に影響される。この能力低下は、ポンプ内の流量のほか、より重要な因子として、流速の増加に伴うポンプ内の摩擦損失によるものである。摩擦損失は、流速に大きく依存し、流速がわずかに増加しただけでも摩擦損失は比較的大きな増加を示す。
【0028】
最終的には、ポンプ内の流量が増加するに伴い、ポンプはもはや適切に機能できない状態に達する。その状態とは、ポンプの必要有効吸込ヘッド(Net Positive Suction Head Required:NPSHR)が有効吸込ヘッド(Net Positive Suction Head Available:NPSHA)に等しく、またはそれを超えた場合である。NPSHRは、前述したポンプ内の摩擦損失に関係し、ポンプ内の流量が増加するに伴い増加する。この直接的な関係は、NPSHR曲線と呼ばれている。
図6は、一般的なNPSHR曲線も示している。NPSHAは、基本的にポンプの吸引側に周囲から供給される総圧力である。厳密に言うと、ポンプは流体を引き入れることができない。ポンプに流体を押し入れるには、吸引側に何らかの圧力が存在しなければならない。圧力NPSHAの定義は、周囲大気圧に、吸引側流体源のポンプを基準とした高さによる圧力を加え、外部吸引管における流体流量による摩擦損失を差し引いたものである(NPSHA=大気圧+流体高さによる圧力−摩擦損失)。
【0029】
流体が液体でNPSHRがNPSHAに等しいと、蒸発(気化)が起こる。ポンプ内の摩擦損失は、液体中に蒸気泡が形成されるレベルまで当該液体の圧力を低下させる可能性がある。その場合、本質的に沸騰形態が生じる。この沸騰はキャビテーションと呼ばれ、通常の状況ではポンプに問題を生じるおそれがある。第1に、キャビテーションが起こると、ポンプは意図された液体だけでなく液体および蒸気の混合物もポンプ移送しなければならないため、ポンプにより送達される液体の流量が低下する。第2に、前記蒸気泡は、ポンプ内の部品に抗して繰り返し膨張および破裂し、ポンプを損傷するおそれがある。これらの理由から、技術者は、ポンプのNPSHRがNPSHAに等しくなり若しくはそれを超える状況を回避するよう努力する。
【0030】
ただし、適切な環境では、摩擦損失を使って意図的に蒸発を起こすと有益な場合がある。蒸発が周囲の温度および圧力で生じることから、エネルギー要件は比較的低いはずであるため、場合によっては脱塩に理想的でさえある。そのため、このような脱塩工程には、費用効果を高める大きな可能性がある。本発明は、この可能性を活用して水圧式脱塩を提供する。
【0031】
本開示の原理に基づき、水圧式脱塩では、摩擦損失がNPSHAに等しく若しくはそれを超える場合、ポンプが蒸発を生じる能力を活用する。ただし、いかなるポンプ内の蒸発も問題を生じ、特に従来のポンプでそれが著しい。また、蒸発(キャビテーション)は、配管内の摩擦損失がNPSHAと一致し若しくはそれを超えると、ポンプ外部にある吸引管内でも生じる。ただし、ポンプ内の部品に生じる損傷と同様、配管内での蒸発も、パイプ内の限られた閉鎖空間で蒸気泡が膨張および破裂して管壁が損傷するため、推奨されない。
【0032】
ポンプの吸引側で蒸発を安全かつ有効に活用するため、本発明の原理に係る水圧式脱塩工程およびシステムは、以下の設備および特徴を含むが、これに限定されるものではない。
【0033】
・配管を通じ、望ましい流量および速度で水を吸引し(例えば、
0.61〜2.44メートル毎秒(m/s)(2〜8フィート/秒(feet−per−second:fps)
)で)、同時にブライン(濃縮された海水)流および淡水・空気混合流の双方を扱う水圧式脱塩ポンプ装置
・水圧式脱塩ポンプ装置の吸引側にかかる摩擦を制御して蒸発タンク内で蒸発を起こす摩擦バルブ
・前記蒸発タンクの上流にあり、比較的口径の小さい圧送管とそれより口径の大きい蒸発タンクとの間の移行をもたらし、ブラインを吸引できる開口部を提供する漏斗
・周囲の損傷を最低限に抑えながら沸騰を起こせる蒸発タンク
・熱交換器を収容し、上流側の海水と下流側の淡水とに前記蒸発タンクを分割する仕切り
・前記蒸発タンクの下流にあり、前記比較的口径の大きい蒸発タンクとそれより口径の小さい吸引管との間の移行をもたらす漏斗
・空気を導入して、前記タンクの下流側を強制的に液化させるとともに、前記上流側に気化熱を提供する空気ノズル
【0034】
従来のポンプは、1つの位置から別の位置へ流体を移動させる能力は非常に優れているが、大規模な蒸発を安全に起こす能力は優れていない。本発明の原理に基づいて構成された前記水圧式脱塩ポンプ装置(例えば、165a〜165e)は、特に小型(例えば、
37.85リットル毎分(L/min)(10ガロン/分(gallons per minute:gpm)
)未満)〜大型(例えば、
3,785L/min(10
00gpm
)を超える)範囲の規模の水圧式脱塩用に設計されている。
【0035】
全体として、前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eは、従来のポンプ内に大きな摩擦損失を生じる複雑な内部構成要素、小寸法の管、および狭い経路を実質的に伴わず構成される。上記のとおり、この構成は、比較的大きな円筒形のポンプ空洞164を含み、このポンプ空洞164は、同様な直径の圧縮バネ163により拡張できる。各前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eは、2つの入口および2つの出口を有することができ、その4本のパイプは、すべて当該水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eの上部に配置される。上述のように
図3Aに関し、一対の入口および出口は、淡水および空気の混合物の吸引または排出に使用できる。他方の入口および出口ペアは、ブラインの吸引または排出に使用できる。前記淡水および空気の混合流は、
図8に示すように、前記ポンプ空洞(およびバネ)内の仕切りにより前記ブライン流から分離されて保たれる。前記ポンプ空洞内の前記仕切りは、
図8に示すように、前記ポンプに吸引された流れの約90%が前記淡水および空気の混合流を含み、残りの約10%がブラインを含むよう配置できる。その比により、一般的な海水の脱塩における効率を最大限に伸ばしながら、前記ブライン溶液中の塩が維持される。必要に応じ、他の比および仕切り位置を選択すると、効率は犠牲になるが、塩分濃度の異なる塩水または比較的小さい脱塩ユニットにも対応できる。前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eに流れが入るに伴い、前記バネ163は、比較的低速で前記ポンプ空洞164を下方へ拡張させることができる。拡張が完了すると、各前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eの底部にある電気機械プレスを作動させて前記空洞を元の位置に戻すよう圧縮を開始できる。圧縮中、ブラインおよび淡水・空気は、各々の出口を通じて排出され、それぞれの貯蔵領域に送られる。
【0036】
一般に、前記脱塩工程を長期維持するには、連続した水流が必要とされ、それなしでは前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eが水を排出している間に蒸発が停止してしまう。連続流を保つには、複数の(例えば、2つ〜5つ、若しくはそれ以上の)バネ式水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eを並列に設置し、フローバルブを各ポンプ装置の吸引および排出管に取り付けることができる。前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eは、一度に水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eのうち1つだけが流れを吸引するよう周期的に動作する。前記ポンプの1つ(例えば、165e)は、冗長スペアポンプとして作用可能である。その他の稼働ポンプの1つに障害が生じた場合は、前記スペアポンプを始動させて連続流を維持できる。
【0037】
前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eの単純設計の他の利点は、ポンプが機能する能力が、空気および水の混合物により損なわれないことである。液体または気体どちらかのポンプ移送を目的とした従来のポンプは、しばしば、液体および気体の混合物に伴う異なる速度および密度を扱う能力が劣る。バネ式ポンプ内の流速は、密度の異なる物質が含まれていても深刻な問題を生じない程度に低いはずである。
【0038】
前記圧縮バネの寸法およびサイズ決定は、バネに関するいくつかの一般指針のほか、前記ポンプに伴う前記フローバルブを開閉するのにかかる時間に左右される。それらの指針には、次のものなどがある。
・バネの自由長(力がまったくかかっていないときのバネ(すなわちバネ163)の長さ)は、例えば当該バネの全径の10倍を超えてはならない。
・圧縮の動作範囲は、例えば最大圧縮(バネが完全に圧縮されたときの長さをバネの自由長から差し引いたもの)の約80%から、例えば最大圧縮の約20%の間に含まれなければならない。
・バネ(例えば、バネ163)のワイヤー直径は、例えば当該バネの全径の約12分の1未満であってはならない。
・バネの拡張容積は、拡張の開始から終了までに少なくとも、例えば約15秒かかり、それによりポンプのフローバルブ開閉に十分な時間が与えられるように、十分大きくなければならない。
【0039】
また、前記バネ163を伸ばすために必要な力は、単純な線型方程式F=kxに従う。ここで、Fは、前記バネを伸ばすために必要な力、kは、おおむねバネの材料特性に基づく定数、xは伸びの長さである。この単純な線型関係から前記バネ163のサイズは決定しやすく、その結果得られる水圧式脱塩原理により望ましい率で確実に淡水をもたらす一助となる。
【0040】
設計上、バネ式のポンプ(すなわち、前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165e)は、ポンプ内の流量から独立したポンプ曲線およびNPSHR曲線を有する。バネ式のポンプには大きな摩擦損失を生じる複雑な内部構成要素、小寸法の管、または狭い経路がないため、そのポンプ曲線およびNPSHR曲線は、
図7と関連して示すように完全に水平になる。前記ポンプが周囲に水頭圧(すなわち圧力)を及ぼす能力に影響する唯一の要因は、前記バネが伸びているときの前面の位置である。流体が液体の状態でポンプに達すると、その液体にキャビテーションを起こさせるものはポンプ内にない。そのため、バネ式ポンプのNPSHR曲線は、完全に水平であるだけでなく、実質的にすべての流量についてゼロに等しい。
図7は、バネ式ポンプ、例えば前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eのポンプ曲線およびNPSHR曲線の例を示したものである。NPSHRがないことの重要な利点は、NPSHAの低い水圧式脱塩環境で、ポンプを非常に安全かつ効率的に使用できることである。
【0041】
図4は、本発明の原理に基づいて構成された前記水圧式脱塩ポンプ装置に伴う前記摩擦バルブおよび前記フローバルブの例を順次上部から見下ろした図で、その例示的な動作シーケンスも示している。フローバルブ(例えば、フローバルブ22、70)には、前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eの流れの出入りを制御するように構成された弁を含めることができる。これらは、また前記調整用摩擦バルブ(例えば、摩擦バルブ25、75)を出る流れも制御できる。フローバルブは、例えば、停止弁、ねじ締め逆止弁、逆止弁、ピンチ弁、または同様に機能する他の任意の弁を含んでよい。フローバルブは、水圧式または電気的に作動され、ポンプの動作シーケンス(および調整用摩擦バルブの動作シーケンス)に基づき稼動する。
【0042】
摩擦バルブ(例えば、摩擦バルブ25、75)は、前記蒸発タンク120の上流にある配管の流れを制限するように構成された弁を含む。摩擦バルブを使用することの目的は、前記塩水流に摩擦水頭圧をかけて、前記蒸発タンク120内の望ましい箇所で蒸発が生じるようにすることである。摩擦バルブ25、75は、設定済みでも調整用でもよい。設定済み摩擦バルブは、水圧式脱塩中に変わることのない、部分的に閉鎖された1つの位置に設定される。調整用摩擦バルブは、水圧式脱塩中、部分的に閉鎖された1つの位置から、より完全に閉鎖された位置まで調整できる。フローバルブ22、70を調整用摩擦バルブと併用することにより、前記より完全に閉鎖された位置から前記部分的に閉鎖された位置に再設定する時間が前記調整用摩擦バルブに提供される。前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eと同様に、調整用摩擦バルブは、連続流を保つように周期的に並行して動作する。稼働している他の1若しくはそれ以上の調整用摩擦バルブに障害が発生した場合の冗長性のため、スペアの調整用摩擦バルブを少なくとも1つ含めることが提案される。フローバルブ22、70および摩擦バルブ25、75同様、は、水圧式または電気的に作動され、対応する調整用摩擦バルブの動作シーケンスに基づき稼動する。サイクル停止弁(cycle stop valve:CSV)などのバルブは、水圧式脱塩において設定済みまたは調整用摩擦バルブのどちらか一方として動作するために必要な性能特性を有する。調整用摩擦バルブの動作シーケンスについては、次に
図4と関連付けて説明する。
【0043】
この例では、以下の表3の工程に基づき、周期的だが非同期的なローテーションが摩擦バルブの動作に含まれる。
【0045】
上述のように、前記蒸発タンク120は、水圧式脱塩の工程中、安全に蒸発を起こせる場所である。前記蒸発タンク120は、蒸気流速を、例えば一般に蒸気の流速限界値として受け入れられている
60.96m/s(200フィート/秒(fps)
)未満に制限するようサイズ調整できる。前記蒸発タンク120は、その中心線に沿って、前記上流側の海水を前記下流側の淡水から分離する仕切り130を有することができる。前記タンク仕切り130は、前記熱交換器131を収容するように構成することもでき、この熱交換器131は、液化中に放出される熱について、前記淡水側から前記海水側への熱流路を提供できる。前記蒸発タンク120は、通常、前記水圧式脱塩工程における設備中、最大の一体成形体である。
【0046】
一定レベルの非凝縮性(非液化)気体、例えば酸素および窒素は、水圧式脱塩中、蒸発タンクに回収できる。このレベルは一定に保たれるはずであり、また前記脱塩工程の性能または効率を有意に妨げないはずである。ただし、前記蒸発タンク内の非凝縮性気体が許容範囲外レベルまで蓄積されてしまう場合は、前記タンク内に真空ポンプを設置して過剰な非凝縮性気体を排出することができる。
【0047】
水圧式脱塩では、2つの漏斗135a、135bを使用できる。その1つ、漏斗135aは、前記蒸発タンク120の上流側に構成でき、他方の漏斗135bは、前記蒸発タンク120の下流側に構成できる。どちらの漏斗も配管(当該配管中、業界基準では、液体水が例えば
約0.61〜約2.44m/s(約2〜約8fps
)範囲の速度で流れる)と前記蒸発タンク120(当該蒸発タンク中、水蒸気が例えば最高
約60.96m/s(約200fps
)の速度で流れる)との間の移行をもたらす。
【0048】
海水(例えば、約3.5%の塩分を仮定する)は前記蒸発タンク120内で蒸発し、その後に残された水の塩分はより濃縮される。塩含有量がより高い(例えば、塩分約35%)この残留水が、前記ブラインである。前記上流の漏斗にはその底面において開口部も提供され、そこからブライン流がブライン吸引管へと吸引され、最終的に前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eに到達する。前記下流漏斗135bにおける前記淡水および空気の混合物は、約0%の塩分を有する。
【0049】
前記空気ノズルは、小さいが、水圧式脱塩の重要な一部である。この空気ノズルは、前記下流漏斗の直後で前記淡水流に空気を導入する。この工程の重要な点は、この空気が、周囲の空気ではあるが、前記蒸発タンク中の水蒸気より高い圧力および温度を有することである。周囲の空気圧および温度は、例えば、それぞれ
約101,352.9Pa(約14.7psi
)および
摂氏22.22度(華氏72度
)である。前記水蒸気の圧力は、例えば
約2,068.43Pa(約0.3psi
)で、その温度は、例えば
摂氏約20度(華氏約68度
)である。蒸発は、厳密に摩擦損失による圧力低下で生じることに注意すべきである。前記海水または塩水の温度を上昇させる熱は加えられず、前記海水または塩水は、一般に
摂氏約20度(華氏約68度
)と考慮されるが場合により異なる。
【0050】
周囲の空気が前記タンク中の水蒸気より高い圧力および温度を有することの重要性には、以下の2つがある。
・前記水蒸気は、導入された空気から比較的高い圧力がかかると液化を余儀なくされ、液体淡水になる。
・前記導入された周囲空気は、比較的温度が高いため、液化中、前記水蒸気から熱を強制的に放出させ、蒸発を起こすために熱が必要とされる前記蒸発タンクの上流側へ前記熱を戻す。
【0051】
外部から周囲源を超える圧力も熱も加えることなく液化および蒸発を実現するこの能力は、他のすべての脱塩工程に勝る明確な利点を、水圧式脱塩にもたらしている。何回かの反復計算により、例えば約2体積%の空気を一貫して前記水蒸気に導入するのが、前記蒸発タンク下流側の望ましい箇所で液体水位を確保する上で適切な量と考えられることが認められている。
【0052】
水圧式脱塩の例示的概要
一般に、水圧式脱塩に伴う技術は、配管および付属物内に流れを生成することにより液体塩水の圧力を気化点(蒸発点)まで低減する工程と、その蒸気を捕捉する工程と、周辺環境により供給される比較的高い圧力を使って前記蒸気を液化させる工程と、周囲温度を蒸気温度より高く維持することにより、前記液化中に放出された熱を回収する工程とを含む。回収された熱を使用すると、循環的な態様で蒸発を促進および存続させることができる。
【0053】
水圧式脱塩工程の例示的概要
水圧式脱塩では、塩水を2つの最終生成物、すなわち淡水およびブラインに変換することができる。以下に提供する工程は、水圧式脱塩において塩水が通る例示的な経路を、開始から、2つの最終生成物に変換される終了まで時間的に順を追って示したものである。
【0054】
塩水から淡水への時間的経路
塩水から淡水への時間的経路では、工程に以下を含めることができる。
・塩水が前記圧送管に入り、前記脱塩ポンプステーション115へ向かって移動する。前記圧送管の第1の部分は、塩水源から、前記ステーションの前記摩擦バルブ25へと配管される。設計上、前記圧送管内の流速は、例えば約
0.61〜約2.44m/s(約2〜約8fps
)の間に保つべきである。前記塩水内の圧力は、前記圧送管を通過することに起因する摩擦損失により低減される。
・塩水が前記ステーション115内に入ると、その流れが一定か可変かに応じて設定済み摩擦バルブまたは調整用摩擦バルブを通過する。前記摩擦バルブは、前記塩水に水頭圧をかける。前記摩擦バルブ通過後、前記塩水は、前記摩擦バルブから前記上流漏斗135aにつながる前記圧送管の第2の部分を通過する。前記塩水内の圧力は、前記摩擦バルブおよび前記圧送管を通過することに起因する摩擦損失でさらに低減される。
・塩水が前記上流漏斗135aに入り、前記蒸発タンク120へ向かって上方へ移動する。上方への動きにより、前記塩水内の圧力がさらに低下する。前記漏斗135aは、蒸発時に生じる高速化に備え、流れの断面を拡大する。
・塩水が前記蒸発タンク120に入り、引き続き上方へ移動して、前記塩水内の圧力を低減し続ける。最終的に、前記圧力は気化点(蒸発点)まで低下する。
・一定の割合の前記塩水が蒸発し、前記蒸気122が上方の前記蒸発タンク上部へと脱出して、前記タンク仕切りを超える。設計上、前記蒸気122の流速は、例えば
約60.96m/s(約200fps
)未満に保たれる。前記タンク仕切り130は、前記蒸発タンク120の中心を通る壁を有することができ、この壁は、前記液体塩水を前記液体淡水から分離する。前記壁は前記蒸発タンク120の上部まで延長しないため、蒸気はこの壁を越えることができる。前記タンク仕切りの塩水が蒸発する側は、前記蒸発タンク120の上流側と呼ばれる。前記タンク仕切りの水蒸気122が液化して淡水になる側は、前記蒸発タンク120の下流側と呼ばれる。
・さらに下流での大気圧空気の導入により、前記蒸発タンク120の前記下流側の前記タンク仕切り130頂部より下で前記蒸気122の液化が強制される。淡水は、前記下流漏斗135bへ向かって下方へ移動する。
・淡水が前記下流漏斗135bに入り、前記淡水吸引管5へ向かって下方へ移動する。前記漏斗135bは、流れの断面を縮小して、前記下流の淡水吸引管5内で理想的な流速を実現する。
・淡水が前記吸引管5に入り、前記ポンプ(例えば、165a〜165e)へ向かって移動する。前記淡水吸引管は、その淡水吸引管内で水頭圧をかけることが必要になり若しくは望ましくなった場合に動作上の柔軟性を提供するよう、設定済み摩擦バルブ75を含む。設計上、前記吸引管内の流速は、例えば
約0.61〜約2.44m/s(約2〜約8fps
)の間に保つべきである。前記淡水吸引管は、前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eで終端する。前記摩擦バルブ75のすぐ上流では、例えば、大気圧空気の約2体積%が前記吸引管5に導入され、前記蒸発タンク120の下流側における液化を強制するため前記淡水内の圧力を十分上昇させる。液化で放出された熱は、前記熱交換器131内で前記蒸発タンク120の上流側へと伝達され、そこで蒸発を促進するため使用される。環境への熱損失は、前記蒸発タンク外の周囲温度を、前記収容された水および蒸気の温度より高く保つことにより実質的に回避される。
・前記ポンプ空洞164が拡張するに伴い、淡水が前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eに入る。前記ポンプ空洞164が圧縮されると、前記淡水は前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eを出て、淡水排出管11へ送られる。前記排出管11は、前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eから貯蔵領域へ淡水を送り、淡水はそこでさらに別の処理または分配が行われるまで待機する。前記ポンプ空洞164内のポンプ仕切りと呼ばれる壁は、淡水とそれに対応する淡水配管を、ブラインとそれに対応するブライン配管から分離する。
【0055】
塩水からブラインへの例示的な時間的経路
塩水からブラインへの時間的経路では、工程に以下を含めることができる。
・塩水が前記圧送管1に入り、前記脱塩ポンプステーション115へ向かって移動する。前記圧送管1の第1の部分は、塩水源から、前記ステーションの前記摩擦バルブ25へと配管される。設計上、前記圧送管1内の流速は、例えば
約0.61〜約2.44m/s(約2〜約8fps
)の間に保つべきである。前記塩水内の圧力は、前記圧送管1を通過することに起因する摩擦損失により低減される。
・塩水が前記ステーション115内に入ると、その流れが一定か可変かに応じて設定済み摩擦バルブまたは調整用摩擦バルブ25を通過する。前記摩擦バルブ25は、前記塩水に水頭圧をかける。前記摩擦バルブ25を通過後、前記塩水は、前記摩擦バルブ25から前記上流漏斗135aにつながる前記圧送管の第2の部分を通過する。前記塩水内の圧力は、前記摩擦バルブおよび前記圧送管を通過することに起因する摩擦損失でさらに低減される。
・塩水が前記上流漏斗135aに入り、前記蒸発タンク120へ向かって上方へ移動する。上方への動きにより、前記塩水内の圧力がさらに低下する。前記漏斗135aは、蒸発時に生じる高速化に備え、流れの断面を拡大する。
・塩水が前記蒸発タンク120に入り、引き続き上方へ移動して、前記塩水内の圧力を低減し続ける。最終的に、前記圧力は気化点(蒸発点)まで低下する。
・一定の割合の前記塩水は蒸発せず、例えば前記上流漏斗135a底部にある前記ブライン吸引管12の入口である4つの開口部へ向かって下方へ吸引される。ブラインは、塩その他の化合物が濃縮された残留塩水であり、蒸気とともに逃げることができない。このブラインは、前記上流漏斗135aの底部から開始しTee(T字型配管)またはTrue Wye(対称Y字型配管)で終了する前記ブライン吸引管12の第1の部分に入る。可能な場合、前記吸引管の前記第1の部分におけるブラインの流速は、例えば
約0.61〜約2.44m/s(約2〜約8fps
)の間に保つべきである。
・ブラインは、Tee(T字型配管)またはTrue Wye(対称Y字型配管)から開始しTrue Wye(対称Y字型配管)で終了する前記ブライン吸引管の第2の部分に入る。この吸引管開始点の前記Tee(T字型配管)またはTrue Wye(対称Y字型配管)は、第1の部分のブライン吸引管2本が合流する箇所である。前記ブライン吸引管の前記第2の部分の流量は、前記第1の部分の流量の2倍である。設計上、前記吸引管の前記第2の部分におけるブラインの流速は、例えば
約0.61〜約2.44m/s(約2〜約8fps
)の間に保つべきである。
・ブラインは、True Wye(対称Y字型配管)から開始し前記ポンプで終了する前記ブライン吸引管の第3かつ最終の部分に入る。この吸引管開始点の前記True Wye(対称Y字型配管)は、第2の部分のブライン吸引管2本が合流する箇所である。前記ブライン吸引管の前記第3かつ最終の部分の流量は、前記第2の部分の流量の2倍である。設計上、前記吸引管の前記第3かつ最終の部分におけるブラインの流速は、例えば
約0.61〜約2.44m/s(約2〜約8fps
)の間に保つべきである。
・前記ポンプ空洞が拡張するに伴い、ブラインが前記ポンプに入る。前記ポンプ空洞164が圧縮されると、前記ブラインは前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eを出て、ブライン排出管24へ送られる。前記排出管24は、前記水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eから貯蔵領域へブラインを送り、ブラインはそこでさらに別の処理が行われ、または前記水源に戻されるまで待機する。
【0056】
水圧式脱塩の動作上の利点
本開示の原理に係る水圧式脱塩は、従来の脱塩工程を困難にする他のいくつかの問題の影響を受けない。例えば、現在、高温に頼る脱塩工程で利用されている熱的工程は、塩が溶液から析出して配管および設備に付着し、目詰まりを生じ、またはこれを腐食するスケーリングの問題に悩まされることが多い。膜ベースの技術も、半透過性膜の開口部が非常に微細なため、スケーリングの影響を受けやすい。これらの膜では、わずかなスケーリングでさえ性能に大きな悪影響を及ぼす。膜ベースの技術では、通常、スケーリング問題に対処し、膜を目詰まりさせる破片を除去するための前処理が必要とされる。水圧式脱塩は、スケーリングを助長する比較的高い温度で動作しないため、スケーリングの問題に左右されず、わずかなスケーリングに強く影響される設備を伴わない。さらに、膜ベースの工程と異なり、水圧式脱塩は特殊な前処理が不要である。
【0057】
脱塩に必要なエネルギー
蒸発または気化を生じるにはエネルギーが必要である。通常、そのエネルギーは熱の形態をとる。水に熱を加えて蒸発を開始する従来の方法は、その温度を沸点まで上昇させることである。次に、より多くの熱を加えて水を液体から蒸気に変換する必要があり、この変換は同じ沸点で起こる。この加えられる熱は蒸発熱(気化熱)と呼ばれ、これが熱脱塩工程を外部エネルギーに大きく依存させている。実際、蒸発を起こす上で必要なエネルギーの90%超は、沸点に達した後、この最後の変換工程中に消費される。これと対照的に、本開示で説明する水圧式脱塩では、もう1つのよく知られた水圧現象であるサイフォン現象をシミュレートすることにより、この最後の高エネルギー工程を効果的に迂回する。
【0058】
典型的なサイフォンでは、水の流れが上流のタンクまたは水源から引き上げられ、垂直な障害物を超えたのち、前記上流源より低い位置にある下流のタンクまたはシンクへ移動する。前記水源と前記シンクとの間に前記垂直な障害物があるにもかかわらず、典型的なサイフォン中の水流は、外部エネルギーを加えなくとも、自然かつ無期限に持続する。このサイフォン作用を起こす上で必要な唯一実際の作業は、その準備中に行われる。典型的なサイフォンを準備する、すなわちこれに呼び水を入れるには、まず水が貫流する管を水で満たす必要がある。これは、前記水源およびシンクから離れた箇所で行える。一度満たした管の両端には、キャップが装着される。次に、前記管の一端を前記上流源に配置し、他端は前記下流シンクに配置する。次いで前記管の両端からキャップをはずすと、前記水源およびシンクのレベルが実質的に一定であると仮定した場合、エネルギーをさらに加えることなく流れが自然かつ永続的に生じて、中間にある垂直な障害物を効果的に迂回する。
【0059】
図5に関連付けて例示するように、水圧式脱塩は、一種のサイフォン、すなわち典型的なサイフォンを多数の方法でシミュレートする一種の熱サイフォンを伴う。この熱サイフォンにおいて、エネルギーは蒸発熱を超えて高められたのち、それより著しく較的低いレベルへと引き下げられる。前記脱塩工程は、比較的低出力の水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eから供給されるエネルギーだけで持続する。
【0060】
前記典型的なサイフォン同様、必要とされる実際の作業は、その準備中に行われる。典型的な熱サイフォンに呼び水を入れるには、前記下流の空気ノズルを閉じ、蒸発タンクを水で満たす。次に、前記上流の仕切り弁を閉じて、前記タンク120を単離する。次いで前記加熱器および水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eをオンにして、前記タンクを空にし始める。水位が望ましい高さまで下がった時点で、前記仕切り弁および前記空気ノズルの双方を開ける。次に前記加熱器をオフにし、前記バネ式ポンプは動作したまま保つ。すると、水圧式脱塩が自然かつ永続的に生じ、この工程の持続に必要な熱またはエネルギーを外部から加える必要はない。
【0061】
前記熱サイフォンに呼び水を入れる際、前記バネ式ポンプでは前記蒸発タンクを満たせない場合もある。ポンプは液体を引き入れることができない。その代わり、前記バネ式ポンプは、摩擦を使って流れの片側にかかる圧力を低下させ、反対側から大気圧が流れを押せるようにする。前記蒸発タンクが十分高い場合、大気圧だけでは当該タンクの上部まで流れを押し上げることはできない。この場合は、水中ポンプを海水源の中に配置し、または消火栓を使って前記タンクの上部まで水を押し上げることができる。
【0062】
上述のように、前記空気ノズルは、水圧式脱塩を成功させる上で重要である。本質的に、前記空気ノズル174は、水圧式脱塩を駆動する熱サイフォンである。前記空気ノズル174で導入される空気は、液化を強制し、蒸発が起こっている場所へ向かう熱の流れも強制する。空気がこれらの事象を強制するのは、周囲の空気ではあっても、前記水蒸気より高い圧力および温度を有するためである。前記空気ノズル174に入る空気の影響を受けると、前記水蒸気は、液化して抵抗が最も小さい経路へ向かい熱を放出せざるを得なくなるが、その経路とは蒸発が生じている前記タンク120の上流側へ前記熱交換器131経由で向かう熱流路である。ここで特筆すべき重要な点は、液化中に放出される凝縮熱(液化熱)と呼ばれる熱が、蒸発熱(気化熱)の大きさに等しいことである。この態様による熱リサイクルは、障害物、蒸発熱が水圧式脱塩中、効果的に迂回されることを意味する。
【0063】
前記水圧式脱塩の熱サイフォン効果により、前記加熱器145は、初期前記タンクを空にする間だけ必要とされるはずである。ただし必要に応じて、前記加熱器145は、環境大気が確実に前記タンク内の前記水蒸気122より高い温度を保つよう、周辺環境を加熱するため使用することもできる。それなしでは、周囲の空気温度が低いと、液化中に周辺環境への熱損失が生じ、前記水圧式脱塩工程の効率が低下するおそれがある。
【0064】
エネルギー勾配線
エネルギー勾配線とは、流体の流れに伴うエネルギーの計算に使用されるものである。これら計算の目的は、水圧式脱塩ポンプ装置のための動作点(operating point)を決定することである。動作点とは、ポンプ曲線がシステム性能曲線と交差する点である。システム性能曲線はTDH(Total Dynamic Head)曲線とも呼ばれ、水圧式脱塩ポンプ装置の配管またはその外部にある設備に存在する流れに対する抵抗である。前記動作点は、通常、特定の圧力または水頭圧における特定の流量として説明される。動作点およびシステム性能曲線の一例を
図6に示す。
【0065】
最小分離エネルギー
水に溶けた塩を除去する上で必要な最小エネルギーは、一般に、例えば約0.7キロワット時/立方メートル(kWh/m
3)が受け入れられている。この最小エネルギーは、溶解した塩に関する溶液の熱(エンタルピー)データまたは海水と淡水間の平衡蒸気圧差のどちらか一方により決定される。最小エネルギーを計算する溶液の熱方法は、膜ベースの技術に適用される。異なる平衡蒸気圧方法は、熱脱塩技術に関係する。水圧式脱塩は、熱脱塩の一形態であるが、他の熱脱塩の形態とは異なり、海水の平衡蒸気圧を淡水の平衡蒸気圧に合致させて液化(凝縮)を起こす上で人工の圧縮機を必要としない。その圧縮は、比較的高圧の大気圧空気を前記システムに導入することにより、自動的に行われる。前記空気は、前記蒸気を液体水に変換するだけでなく、必要とされる予備的な蒸気圧縮も生じる。蒸気の圧縮は、導入される周囲空気により行われるため、それに対応する、例えば約0.7kWh/m
3のエネルギーを供給する必要はない。供給する必要がある唯一のエネルギーは、ポンプおよびバルブ用のもので、これは0.7kWh/m
3よりはるかに小さい。そのため、脱塩で一般に受け入れられている最小エネルギー要件は、水圧式脱塩の場合、他の工程と同様に適用されない。水圧式脱塩が蒸発に必要な熱をリサイクルする方法と非常に類似した方法で、分離に必要な最小エネルギーは、工程自体から得られる。
【0066】
水圧式脱塩の適用例
水圧式脱塩を小規模および大規模な事業の双方でいかに適用できるか示すため、4つの例を説明する。それらは以下のとおりである。
【0067】
・一定流−例えば、
約4,542L/min(約1,200gpm
)を一定の率で吸引するようサイズ調整されたバネ式のポンプ
・一定流(小型)−例えば、
約30.28L/min(約8gpm
)を一定の率で吸引するようサイズ調整されたバネ式のポンプ
・可変流−例えば、平均
約4,542L/min(約1,200gpm
)を吸引するようサイズ調整されたバネ式のポンプ
・可変流(小型)−例えば、平均
約30.28L/min(約8gpm
)を吸引するようサイズ調整されたバネ式のポンプ
以下、これらの4つの例について説明および比較する。どの例についても配管または設備用の材料は指定していないが、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)、高密度ポリエチレン(high−density polyethylene:HDPE)、ガラス繊維、および各種ステンレス鋼(630 SS、AL6XN、Sea−Cure)は、すべて塩水を含む海水中での使用に適していることが知られている。
【0068】
一定流−
4,542L/min(1,200gpm
)ステーション
これには、現場に構築されるポンプステーションが含まれる。その設置面積は、
約17.07メートル×17.68メートル(約56フィート×58フィート)、垂直方向の全長は
約20.42メートル(約67フィート
)とできる。その垂直方向の全長のうち、
約11.58メートル(約38フィート
)は地上に(A字型フレームの屋根を含む)、
約8.84メートル(約29フィート
)は地下とすることができる。
【0069】
地上の構造は、天井の高さが
約6.4メートル(約21フィート
)で1階建ての建築物とできる。その建築物115の地上部分には、前記蒸発タンク120、加熱器145(初期、前記タンクを空にするための)、および任意の制御パネルを設置できる。地下の配管およびポンプへのアクセスを提供するには、階段およびハッチ(扉口)を設置できる。
【0070】
前記建築物115は、地下に2つのレベルを含むことができる。その第1の地下レベルは、前記配管の大半を収容できる。第2の地下レベルには、前記ポンプを配置できる。ポンプは5つ設置可能である。4つのポンプは、連続的な流れを保つよう、ともに動作できる一方、最後のポンプは、スペアとして利用できる。前記水圧式脱塩ポンプ装置内のバネは、直径
137.16cm(54インチ
)でバネ定数κ(バネの伸びやすさの指標)は
約1453.94キログラム毎メートル(kg/m)(約977ポンド/フット(lbs/ft)
)とできる。前記水圧式脱塩ポンプ装置は、例えば
約4,542L/min(約1,200gpm
)の一定率で吸引可能である。
【0071】
前記ステーション115には、仕切り弁160(初期、前記タンクを空にするための)および設定済み摩擦バルブを備えることができ、どちらも前記蒸発タンク120の上流となる。このステーションは、設定済み摩擦バルブを1つだけ有することができるが、前記蒸発タンク内の海水レベルは、前記ポンプが動作すると一定流が生成されるため、高さ
2.44メートル(8フィート
)の前記タンク仕切りに沿って実質的に一定に保たれる。
【0072】
前記ステーションに流れ込む全流量の約90%は淡水に変換でき、これは当該ステーションが、例えば
約4,088L/min(約1,080gpm
)の率で淡水を生成できることを意味する。前記ステーションが必要とする総電力(動力)は、すべての電力消費量を考慮すると、保守的に例えば約40馬力、すなわち30キロワットと推定できる。実際に必要な電力は、これより少ない可能性がある。この電力の大半は、前記ポンプ空洞を圧縮し流れを排出する前記電気機械プレスを駆動し、またはこれに給電するため使用される可能性がある。残りの電力消費量は、前記バルブ、制御パネル、照明、および必要に応じて周辺環境の加熱へと分けられる。このステーションに関する電力:水の比は、例えば約0.02メガワット/百万英ガロン(megawatts per million imperial gallons:MIGD)すなわち
1日当り約0.005メガワット/千立方メートル
(1日当りMW/千立方メート
ル)と決定できる。
【0073】
一定流(小型)−
30.28L/min(8gpm
)ユニット
この例としては、現場への配達前または配達後に組み立てることのできるパッケージ化されたユニットなどがある。このパッケージ化されたユニットは、内部への作業者アクセスを可能にする着脱可能なパネルを含むことのできる外壁を含む。その設置面積は、
約3.35メートル×4.27メートル(約11フィート×14フィート
)、垂直方向の全長は
約6.71メートル(約22フィート
)とできる。
【0074】
垂直方向の全長は、すべて地上または建築物床面または船舶デッキの上にあってよく、例えば、3つのレベルを含むことができる。その頂部レベルには、前記蒸発タンクおよび加熱器(初期、前記タンクを空にするための)を設置できる。前記配管の大半は、第2のレベルに設置できる。前記水圧式脱塩ポンプ装置は底部レベルに配置でき、前記制御スイッチは、大半の作業者が目のレベルで制御を行えるよう、前記頂部レベルまたは第2のレベルに配置できる。ポンプは3つ設置可能である。2つのポンプは、連続的な流れを保つよう、ともに動作できる一方、最後のポンプは、スペアとして利用できる。前記ポンプ内のバネは、例えば直径
約106.68cm(約42インチ
)でバネ定数κは
約894.387kg/m(約601 lbs/ft
)とできる。前記水圧式脱塩ポンプ装置は、例えば
約30.28L/min(約8gpm
)の一定率で吸引可能である。
【0075】
前記ユニットには、仕切り弁(初期、前記タンクを空にするための)と、設定済み摩擦バルブ1つとを備えることができ、どちらも前記蒸発タンク120の上流となる。このユニットは、設定済み摩擦バルブを1つだけ有することができるが、前記蒸発タンク内の海水レベルは、前記ポンプが動作すると一定流が生成されるため、高さ
0.61メートル(2フィート
)の前記タンク仕切りに沿って実質的に一定に保たれる。
【0076】
前記ユニットに流れ込む全流量の約90%は淡水に変換でき、これは当該ユニットが、例えば
約27.25L/min(約7.2gpm
)の率で淡水を生成できることを意味する。前記ユニットが必要とする総電力(動力)は、すべての電力消費量を考慮すると、保守的に例えば約0.25馬力、すなわち0.19キロワットと推定される。実際に必要な電力は、これより少ない可能性がある。この電力の大半は、前記ポンプ空洞を圧縮し流れを排出する前記電気機械プレスを駆動し、またはこれに給電する役割を果たす可能性がある。残りの電力消費量は、前記バルブ、制御スイッチ、照明、および必要に応じて周辺環境の加熱へと分けられる。このユニットに関する電力:水の比は、例えば約0.02メガワット/百万英ガロン(megawatts per million imperial gallons:MIGD)すなわち
1日当り約0.005メガワット/千立方メートル
(1日当りMW/千立方メート
ル)と推定できる。
【0077】
可変流−
4,542L/min(1,200gpm
)ステーション
この例には、現場に構築されるポンプステーションが含まれる。その設置面積は、
約17.07メートル×17.68メートル(約56フィート×58フィート
)、垂直方向の全長は
約19.2メートル(約63フィート
)とできる。その垂直方向の全長のうち、
約11.58メートル(約38フィート
)は地上に(A字型フレームの屋根を含む)、
約7.62メートル(約25フィート
)は地下とすることができる。
【0078】
地上の構造は、天井の高さが
約6.4メートル(約21フィート
)で1階建ての建築物とできる。その建築物の地上部分には、前記蒸発タンク120、加熱器145(初期、前記タンクを空にするための)、および制御パネルを設置できる。地下の配管およびポンプへのアクセスを提供するには、階段およびハッチ(扉口)を設置できる。
【0079】
前記建築物は、地下に2つのレベルを含むことができる。その第1の地下レベルは、前記配管の大半を収容できる。第2の地下レベルには、前記ポンプを配置できる。ポンプは5つ設置可能である。4つのポンプは、連続的な流れを保つよう、ともに動作できる一方、最後のポンプは、スペアとして利用できる。前記ポンプ内のバネは、例えば直径
約137.16cm(約54インチ
)でバネ定数κは
約5,238.34kg/m(約3,520 lbs/ft
)とできる。前記ポンプは、例えば
約3,763〜約5,277L/min(約994〜約1,394gpm
)の範囲、平均
約4,542L/min(約1,200gpm
)の率で吸引できる。
【0080】
前記ステーションには、仕切り弁(初期、前記タンクを空にするための)と、調整用摩擦バルブ4つとを備えることができ、すべて前記蒸発タンクの上流となる。このステーションは、シーケンスに従って動作するいくつかの調整用摩擦バルブを有するため、前記蒸発タンク内の海水レベルは、前記ポンプが動作すると、高さ
2.44メートル(8フィート
)の前記タンク仕切りに沿って実質的に不変に保たれる。
【0081】
前記ステーションに流れ込む全流量の約90%は淡水に変換でき、これは当該ステーションが、例えば
約4,088L/min(約1,080gpm
)の率で淡水を生成できることを意味する。前記ステーションが必要とする総電力(動力)は、すべての電力消費量を考慮すると、保守的に例えば約40馬力、すなわち30キロワットと推定される。実際に必要な電力は、これより少ない可能性がある。この電力の大半は、前記ポンプ空洞を圧縮し流れを排出する前記電気機械プレスを駆動し、またはこれに給電する役割を果たす可能性がある。残りの電力消費量は、前記バルブ、制御パネル、照明、および必要に応じて周辺環境の加熱へと分けられる。このステーションに関する電力:水の比は、例えば約0.02メガワット/百万英ガロン(megawatts per million imperial gallons:MIGD)すなわち
1日当り約0.005メガワット/千立方メートル
(1日当りMW/千立方メート
ル)と決定できる。
【0082】
可変流(小型)−
30.28L/min(8gpmユニット
)
この例としては、現場への配達前または配達後に組み立てることのできるパッケージ化されたユニットなどがある。このパッケージ化されたユニットは、内部への作業者アクセスを可能にする着脱可能なパネルを含むことのできる外壁を含む。その設置面積は、例えば
約2.13メートル×2.13メートル(約7フィート×7フィート
)、垂直方向の全長は
約3.96メートル(約13フィート
)とできる。
【0083】
垂直方向の全長は、すべて地上または建築物床面または船舶デッキの上にあってよく、3つのレベルを含むことになる。その頂部レベルには、前記蒸発タンク120および加熱器145(初期、前記タンクを空にするための)を設置できる。前記配管の大半は、第2のレベルに設置できる。前記制御スイッチも、大半の作業者が目のレベルで制御を行えるよう、前記頂部または前記第2のレベルに配置できる。前記ポンプは、前記底部レベルに配置できる。ポンプは5つ設置可能である。4つのポンプは、連続的な流れを保つよう、ともに動作できる一方、最後のポンプは、スペアとして利用できる。前記ポンプ内のバネは、例えば直径
約25.4cm(約10インチ
)でバネ定数κは
約314kg/m(約211 lbs/ft
)とできる。前記ポンプは、例えば
約26.23〜約34.18L/min(約6.93〜約9.03gpm
)の範囲、平均
約30.28L/min(約8gpm
)の率で吸引できる。
【0084】
前記ユニットには、仕切り弁(初期、前記タンクを空にするための)と、調整用摩擦バルブ4つとを備えることができ、すべて前記蒸発タンク120の上流となる。このステーションは、シーケンスに従って動作するいくつかの調整用摩擦バルブを有するため、前記蒸発タンク内の海水レベルは、前記ポンプが動作すると、高さ
0.61メートル(2フィート
)の前記タンク仕切りに沿って実質的に不変に保たれる。
【0085】
前記ユニットに流れ込む全流量の約90%は淡水に変換でき、これは当該ユニットが、例えば
約27.25L/min(約7.2gpm
)の率で淡水を生成できることを意味する。前記ユニットが必要とする総電力(動力)は、すべての電力消費量を考慮すると、保守的に例えば約0.25馬力、すなわち0.19キロワットと推定できる。実際に必要な電力は、これより少ない可能性がある。この電力の大半は、前記ポンプ空洞を圧縮し流れを排出する前記電気機械プレスを駆動し、またはこれに給電する役割を果たす可能性がある。残りの電力消費量は、前記バルブ、制御スイッチ、照明、および必要に応じて周辺環境の加熱へと分けられる。このユニットに関する電力:水の比は、例えば約0.02メガワット/百万英ガロン(megawatts per million imperial gallons:MIGD)すなわち
1日当り約0.005メガワット/千立方メートル
(1日当りMW/千立方メートル
)と決定できる。
【0086】
適用例の比較
上記の例は、それぞれ互いに比較して、一定の長所および一定の短所を有する。それらの長短は、大部分がサイズおよび複雑さに関するものとなる。前記一定流の例は前記可変流の例より大きいが、各々のサイズは、設計および動作を単純化することでオフセットできる。前記一定流の例では、前記蒸発タンクの上流に設定済み摩擦バルブを1つだけ有することができる一方、前記可変流の例では、4つの調整用摩擦バルブがシーケンスに従って動作する。
【0087】
なお、本明細書で説明する種々の例では、1より多くの設定済み摩擦バルブを使用できることに注意すべきである。
【0088】
前記大規模な(
約4,542L/min(約1,200gpm
))例の場合、垂直方向の全長サイズの違いは
約1.23メートル(約4フィート
)である。前記一定流、
4,542L/min(1,200gpm
)の例では、垂直方向の全長が、地下部分
8.84メートル(29フィート
)を含めて
20.42メートル(67フィート
)である一方、前記可変流バージョンでは、垂直方向の全長が、地下部分
7.62メートル(25フィート
)を含めて
19.2メートル(63フィート
)であり、前記一定流の例は、対応する前記可変流例より地下部分が約16%深くなっている。
【0089】
前記小規模な(
約30.28L/min(約8gpm
))例の場合、設置面積および垂直方向の全長サイズの違いは極めて著しい。前記一定流、
30.28L/min(8gpm
)の例では、設置面積が
3.35メートル×4.27メートル(11フィート×14フィート
)、垂直方向の全長は
約6.71メートル(約22フィート
)である。前記可変流、
30.28L/min(8gpm
)の例では、設置面積が
約2.13メートル×2.13メートル(7フィート×7フィート
)、垂直方向の全長は
約3.96メートル(約13フィート
)である。そのため、前記一定流の例の方が、設置面積が約3倍大きく(
14.31m2〜4.55m2(154平方フィート対49平方フィート
))、約69%高い。このサイズの違いは、対応する前記一定流の設計および動作が比較的単純な場合でも、可変流構成を使用する上で説得力のある理由と見られる可能性が高い。
【0090】
現時点で存在する他種のポンプも理論的には水圧式脱塩に使用できるが、本明細書で説明した新たなバネ式ポンプは、明確な利点をいくつか有する。このバネ式ポンプがもたらすいくつかの独自の利点には、以下のものなどがある。
・実質的にNPSHRがない。
・液体水および空気の混合物を扱える。
・淡水および空気の流れと、ブライン流とを双方同時に扱うよう設計されている。
・(ポンプ仕切りを移動させて)設計を修正することにより、種々の海水塩分濃度を扱えるようになり、またはより小規模で比較的非効率的な脱塩ユニットを製造できる。
・バネを伸ばすために必要な力を単純な線型方程式で表せるため、前記バネのサイズ決定およびポンプ曲線の開発が容易になり、望ましい率(動作点)で確実に淡水が生成されるよう水圧式脱塩を設計する一助となる。
【0091】
水圧式脱塩は、新しい画期的な水脱塩工程であり、他の脱塩工程より少なくとも20倍効率が高く、望ましい水生産流量のほぼすべてで実現可能であると見られる。また、小規模用途(
37.85L/min(10gpm
)未満)の例でも大規模用途(
3,785L/min(1,000gpm
)を超える)の例でも同様に実現可能で、すべての用途で水圧式脱塩を駆動する熱サイフォン効果を享受できることが実証されている。他の工程と異なり、水圧式脱塩の設備はスケーリングの影響を受けず、スケーリングを防ぐための特殊な前処理も不要である。この新たな工程の運用に必要な一部の設備(例えば、弁、空気ノズル)は他の非脱塩産業でもすでに存在し、使用されている。他の設備(例えば、蒸発タンク、漏斗、熱交換器)は、特に水圧式脱塩用に構成され、前記バネ式の水圧式脱塩ポンプ装置165a〜165eは、その全体が新たな製品または装置となる可能性がある。
【0092】
以上、例をとって本発明を説明したが、当業者であれば、添付の請求項の要旨を逸脱しない範囲で、本発明に修正を加えて実施できることが理解されるであろう。以上に提供したこれらの例は、単に例示的なものであり、本発明に考えられるすべての設計、実施形態、適用、または変更形態を網羅的にリストすることを意図したものではない。