(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
軸流流体機械の一つである軸流タービン(詳細には、例えば蒸気タービンやガスタービン等)は、一般的に、ケーシングと、このケーシング内に回転可能に設けられたロータと、ケーシングの内周側に設けられた静翼列と、ロータの外周側に設けられ、静翼列に対してロータ軸方向下流側に配置された動翼列とを備えている。そして、作動流体(詳細には、例えば蒸気やガス等)が静翼列、動翼列の順に流れて、作動流体の内部エネルギーがロータの回転エネルギーに変換される。すなわち、作動流体が動翼に作用してロータを回転させるようになっている。
【0003】
軸流タービンにおいては、動翼列の外周部に環状のカバー(シュラウド)が接続され、このカバーを収納する環状の凹み部がケーシングの内周面に設けられたものがある。このような構造では、カバーの外周面とこれに対向する凹み部の底面との間に隙間流路が形成され、カバーの上流側側面とこれに対向する凹み部の上流側側面との間に隙間入口流路が形成され、カバーの下流側側面とこれに対向する凹み部の下流側側面との間に隙間出口流路が形成されている。そして、作動流体の大部分は、主流路を流れて動翼に作用するものの、作動流体の一部は、主流路から漏れて隙間入口流路、隙間流路、隙間出口流路の順に流れて動翼に作用せず、ロータの回転に寄与しない可能性がある。この漏れ流れを抑えてタービン効率を向上させるため、一般的に、隙間流路にラビリンスシールが設けられている。
【0004】
しかし、熱膨張やスラスト荷重による部材の変形や変位を吸収する等の観点から、ラビリンスシールのシール間隔(詳細には、フィンとこれに対向する部分との間隔)には制約がある。そのため、隙間流路にラビリンスシールを設けた場合でも、主流路から隙間流路への漏れ流れが生じ、この漏れ流れを起因とした不安定振動が発生する。この不安定振動を引き起こす流体力成分を、
図10を用いて説明する。
【0005】
図10は、回転体100の外周面101(上述したカバーの外周面に相当)と静止体102の内周面103(上述した凹み部の底面に相当)との間に形成された隙間流路104を模式的に表す回転体径方向の断面図である。この
図10において、回転体100は、例えば製造上の公差、重力、又は回転中の振動などの理由により、静止体102に対し、図中点線で示す同心位置になく、図中実線で示す偏心位置にある。そのため、隙間流路104の幅寸法Hが周方向に不均一となる。また、隙間流路104には、主流路からの漏れ流れ(回転体軸方向の流れ)があるとともに、図中矢印Eで示す回転体100の回転に伴い旋回流(周方向の流れ)が発生する。そして、前述した隙間流路104の幅寸法Hの偏りと旋回流によって、隙間流路
104には周方向に不均一な圧力分布Pが発生する。この圧力分布Pが回転体100に作用する力は、偏心方向とは反対方向(
図10中上方向)の力Fxと、偏心方向に対して垂直な方向(
図10中右方向)の力Fy(以降、不安定流体力と称す)に分解できる。そして、不安定流体力Fyが回転体100の振れ回りを発生させ、この不安定流体力Fyが回転体100の減衰力より大きい場合に回転体100の不安定振動が発生する。特に、軸流タービンにおいては、静翼列にて作動流体の旋回流成分が増加しており、この旋回流成分をもつ作動流体の一部が隙間流路に流入するため、不安定流体力Fyが大きくなる。
【0006】
そこで、例えば、隙間流路に流入する流体の旋回流成分が不安定流体力に大きな影響を与えていることに着目し、この旋回流成分を低減する技術が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の従来技術では、隙間入口流路を形成する凹み部の上流側側面(ダイアフラムの側面)に、周方向に離間して、複数の案内羽根又は複数の溝を設けている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を蒸気タービンに適用した場合の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態における蒸気タービンの部分構造(段落構造)を模式的に表すロータ軸方向の断面図である。
図2は、
図1中II部の部分拡大断面図であり、ケーシングの凹み部の詳細構造を表す。
【0016】
これら
図1及び
図2において、蒸気タービンは、略円筒形状のケーシング(静止体)1と、このケーシング1内に回転可能に設けられたロータ(回転軸)2とを備えている。ケーシング1の内周側には静翼列3(詳細には、周方向に配列された複数の静翼)が設けられ、ロータ2の外周側には動翼列4(詳細には、周方向に配列された複数の動翼)が設けられている。静翼列3の内周部(言い換えれば、複数の静翼の先端部)には環状のエンドウォール5が接続され、動翼列4の外周部(言い換えれば、複数の動翼の先端部)には環状のカバー6が接続されている。蒸気(作動流体)の主流路7は、ケーシング1の内周面8とエンドウォール
5の外周面9との間(詳細には、静翼間)に形成された流路や、カバー6の内周面10とロータ2の外周面11との間(詳細には、動翼間)に形成された流路等で構成されている。そして、例えばボイラ等で生成された蒸気が蒸気タービンの主流路7に導入されて、
図1中矢印C
1で示す方向に流れている。
【0017】
動翼列4は、静翼列3に対してロータ軸方向下流側(
図1中右側)に配置されており、静翼列3と動翼列4の組合せが1つの段落を構成している。なお、
図1では、便宜上、1段しか示されていないが、一般的には、蒸気の内部エネルギーを効率よく回収するために、ロータ軸方向に複数段設けられている。そして、静翼列3にて蒸気の内部エネルギー(言い換えれば、圧力エネルギー等)が運動エネルギー(言い換えれば、速度エネルギー)に変換され、動翼列4にて蒸気の運動エネルギーがロータ2の回転エネルギーに変換される。すなわち、蒸気が動翼に作用してロータ2を中心軸O周りに回転させるようになっている。
【0018】
ケーシング1の内周面8には、カバー6を収納する環状の凹み部12が形成されている。そのため、カバー6の外周面13とこれに対向する凹み部12の底面14との間には隙間流路15が形成されている。また、カバー6の上流側側面16とこれに対向する凹み部12の上流側側面17との間には隙間入口流路18が形成されている。また、カバー6の下流側側面19とこれに対向する凹み部12の下流側側面20との間には隙間出口流路21が形成されている。そして、蒸気の大部分は、主流路7(詳細には、カバー6の内周面10とロータ2の外周面11との間)を流れて動翼に作用するものの、蒸気の一部は、
図2中矢印C
2で示すように主流路7(詳細には、静翼列3の下流側かつ動翼列4の上流側)から漏れて、隙間入口流路18、隙間流路15、及び隙間出口流路21の順に流れて動翼に作用せず、ロータ2の回転に寄与しない可能性がある。この漏れ流れを抑えてタービン効率を向上させるため、隙間流路15にはラビリンスシールが設けられている。本実施形態のラビリンスシールでは、カバー6の外周面13におけるロータ軸方向中央に環状の凸部22が設けられ、カバー6の外周面13及び凸部22にそれぞれ対応して3列のフィン23が凹み部12の底面14に設けられている。なお、凸部22及びフィン23の配置や数は、これに限定されない。
【0019】
しかし、熱膨張やスラスト荷重による部材の変形や変位を吸収する等の観点から、ラビリンスシールのシール間隔(詳細には、フィン23とこれに対向する部分との間隔)には制約がある。そのため、隙間流路15にラビリンスシールを設けた場合でも、主流路7から隙間流路15等への漏れ流れが生じ、この漏れ流れを起因とした不安定振動が発生する。そこで、本願発明者らは、不安定振動を引き起こす流体力成分(すなわち、上述の
図10を用いて説明した不安定流体力)について流体解析を行った。以下、詳述する。
【0020】
本願発明者らは、
図3で示すように、回転体100の外周面101(上述したカバー6の外周面13に相当)と静止体102の内周面103(上述した凹み部12の底面14に相当)との間に形成された隙間流路104のモデルを用いて、流体解析を行った。このモデルでは、回転体100の断面中心O
1は、静止体102の断面中心O
2に対し偏心している。そのため、隙間流路104の幅寸法Hが周方向に不均一となっている。具体的には、偏心側(
図3中下側)の位置における隙間流路104の幅寸法H
1が比較的小さく、偏心方向とは反対側(
図3中上側)の位置における隙間流路104の幅寸法H
2が比較的大きくなっている。また、隙間流路104における静止体102の断面中心線Lより偏心側の断面Aは比較的小さく、反対側の断面Bは比較的大きくなっている。そこで、隙間流路104の断面全体に流入する流体の総流量Q
Tのうち、偏心側の断面Aに流入する流体の流量をQ
A、反対側の断面Bに流入する流体の流量をQ
B(但し、Q
B=Q
T−Q
A)とし、解析条件として、下記の式(1)で定義された入口偏流度を変えて、流体解析を行った。例えば流量Q
Bと流量Q
Aが等しい場合に、入口偏流度はゼロとなり、例えば流量Q
Bが流量Q
Aより大きいほど、入口偏流度は大きくなる。
【0021】
入口偏流度[%]={Qb×2÷(Qa+Qb)−1}×100・・・(1)
なお、他の条件として、例えば入口旋回速度(詳細には、隙間流路104に流入する流体の周方向速度)をV1又はV2(但し、V
2=V
1÷2)に変えて、流体解析を行った。また、隙間流路104のモデルには、2つのパターンを用意した。第1モデルでは、本実施形態(上述の
図2参照)と同様、ラビリンスシールとして、静止体102側にフィン(図示せず)を設けた。第2モデルでは、ラビリンスシールとして、回転体100側にフィン(図示せず)を設けた。
【0022】
図4は、上述した流体解析の結果を表す図であり、入口偏流度と不安定流体力の関係を示す。この
図4で示すように、入口偏流度が増加するに従い、すなわち、反対側の断面Bと偏心側の断面Aの大小関係に対応するように、流量Q
Bが流量Q
Aより大きくなるに従い、不安定流体力が減少するという解析結果を得た。なお、ラビリンスシールの構造や入口旋回速度を変更した場合も、同様の傾向を得た。したがって、本願発明者らは、隙間流路に流入する流体の流量分布(周方向分布)が不安定流体力に大きな影響を与えることを見出した。本発明は、この新たな知見に基づいてなされたものである。
【0023】
上述の
図1及び
図2に戻り、静翼列3から流出した蒸気は、静翼間毎にみれば流量分布があるものの、周方向全体でみれば比較的均一な流量分布である。そのため、隙間入口流路18に流入する蒸気も、周方向全体でみれば比較的均一な流量分布である。そして、例えば
図5で示す従来技術(すなわち、後述する隙間入口拡大流路24を設けない場合)では、隙間流路15の上流側における実質的な流路長さが比較的短いため、隙間流路15に流入する蒸気も、周方向全体でみれば比較的均一な流量分布となる(すなわち、隙間流路15における入口偏流度が小さくなる)。そのため、ケーシング1に対しロータ2が偏心して隙間流路15の幅寸法Hが周方向に不均一となる場合に、不安定流体力が高くなりやすい。
【0024】
そこで、本実施形態では、隙間流路15の上流側における実質的な流路長さが比較的長くなるように、隙間入口流路18と隙間流路15との間に隙間入口拡大流路24を設けている。この隙間入口拡大流路24は、周方向全体にわたってほぼ一様に、隙間流路15を形成する凹み部12の底面14より外周側に且つ隙間入口流路18を形成する凹み部12の上流側側面17よりロータ軸方向上流側に拡大するように形成されている。
【0025】
詳しく説明すると、隙間入口拡大流路24は、流路壁面25a,25b,25c,25dで形成されている。流路壁面(外周側側面)25aは、凹み部12の底面14より外周側に位置してロータ軸方向に対し略平行に延在している。流路壁面(下流側側面)25bは、凹み部12の底面14と流路壁面25aとの間で連続するように形成されてロータ径方向に対し略平行に延在している。流路壁面(上流側側面)25cは、凹み部12の上流側面17よりロータ軸方向上流側に位置してロータ径方向に対し略平行に延在している。流路壁面(内周側側面)25dは、凹み部12の上流側側面17と流路壁面25cとの間で連続するように形成されてロータ軸方向に対し若干傾斜するように延在している。
【0026】
また、隙間入口拡大流路24のロータ径方向の拡大寸法Da(詳細には、凹み部12の底面14から流路壁面25aまでのロータ径方向の寸法)及びロータ軸方向の拡大寸法Db(詳細には、凹み部12の上流側側面17から流路壁面25cまでのロータ軸方向の寸法)は、隙間流路15の幅寸法H(詳細には、カバー6の外周面13から凹み部12の底面14までのロータ径方向の寸法)より大きくなっている。また、隙間入口拡大流路24のロータ径方向拡大寸法Daは、ロータ軸方向拡大寸法Dbより大きくなっている。
【0027】
このような本実施形態では、上述した隙間入口拡大流路24を設けることにより、隙間入口拡大流路24を設けない場合と比べ、隙間流路15の上流側における実質的な流路長さの延長作用を得ることができる。すなわち、隙間入口拡大流路24を設けない場合は、
図5中矢印C
3で示すような流れとなるのに対し、隙間入口拡大流路24を設けた場合は、
図2中矢印C
4で示すような迂回流れとなるので、実質的な流路長さの延長作用を得ることができる。
【0028】
第1の比較例として、隙間入口拡大流路が凹み部12の底面14より外周側のみに拡大するように形成された場合(言い換えれば、ロータ軸方向拡大寸法Db=0とする場合)を想定する。この第1の比較例では、ロータ径方向拡大寸法Daを大きくしても、十分に迂回した流れを発生させることができず、実質的な流路長さの延長作用が得られない。第2の比較例として、隙間入口拡大流路が凹み部12の上流側側面17よりロータ軸方向上流側のみに拡大するように形成された場合(言い換えれば、ロータ径方向拡大寸法Da=0とする場合)を想定する。この第2の比較例では、ロータ軸向拡大寸法Dbを大きくしても、十分に迂回した流れを発生させることができず、実質的な流路長さの延長作用が得られない。また、これらの比較例では、ケーシング1の強度上の問題も考慮する必要がある。これに対し、本実施形態では、隙間入口拡大流路24は、凹み部12の底面14より外周側に且つ凹み部12の上流側側面17よりロータ軸方向上流側に拡大するように形成されているので、十分に迂回した流れを発生させることができ、実質的な流路長さの延長作用を得ることができる。また、隙間入口拡大流路24は、周方向全体にほぼ一様に形成しているので、特許文献1に記載の案内羽根や溝のように周方向に離間して設けている場合とは異なり、流れに乱れを生じさせることがない。
【0029】
また、本実施形態では、特に、隙間入口拡大流路24のロータ径方向拡大寸法Da及びロータ軸方向拡大寸法Dbが隙間流路15の幅寸法Hより大きくなっている。そのため、十分に迂回した流れを発生させることができ、実質的な流路長さの延長作用が得られやすくなっている。また、隙間入口拡大流路24のロータ径方向拡大寸法Daがロータ軸方向拡大寸法Dbより大きくなっているので、迂回流れを効果的に発生させることができる。詳しく説明すると、静翼列3から流出して隙間入口流路18に流入した蒸気は、旋回流成分を持ち、遠心力の効果によってロータ径方向外側に流れやすくなっている。そのため、ロータ軸方向拡大寸法D
bを大きくするよりも、ロータ
径方向拡大寸法D
aを大きくしたほうが、迂回流れを効果的に発生させることができる。
【0030】
また、本実施形態では、カバー6の上流側側面17に突出部26を設けている。これにより、隙間入口流路18に流入した蒸気をロータ軸方向上流側に転向させるので、上述した迂回流れを促進させることができる。また、本実施形態では、突出部26の先端面は、そのロータ軸方向位置が隙間入口拡大流路24のロータ軸方向位置と重なるように位置している。すなわち、隙間入口拡大流路24を形成する流路壁面25bや、隙間流路15を形成する底面14は、突出部26の先端面よりロータ軸方向下流側に位置している。これにより、隙間入口流路18からの蒸気がロータ径方向外側に流れて凹み部12の底面14に衝突して隙間流路15に流入するのを抑制し(言い換えれば、隙間入口流路18から隙間流路15に直行する流れを抑制し)、隙間入口拡大流路24における迂回流れを促進させることができる。
【0031】
以上のように本実施形態では、隙間入口拡大流路24にて迂回流れを発生させることができ、隙間流路15の上流側における実質的な流路長さの延長作用を得ることができる。そして、この作用により、隙間流路15の幅寸法Hの偏りの影響を受けて、隙間流路15に流入する蒸気の流量分布に偏りを生じさせることができる。すなわち、隙間入口流路18に流入した蒸気の流量分布が均一であっても、隙間流路15に流入するまでの間に隙間流路15の幅寸法Hの偏り(言い換えれば、流路抵抗の偏り)の影響を受けて、流量分布に偏りを生じさせることができる(言い換えれば、隙間流路15における入口偏流度を大きくすることができる)。したがって、不安定流体力を効果的に低減することができ、不安定振動を抑制することができる。
【0032】
このような本実施形態の効果を、流体解析の結果を用いて説明する。本願発明者らは、本実施形態のように隙間入口拡大流路24を設けた場合のモデルと、従来技術のように隙間入口拡大流路24を設けない場合のモデルを用いて流体解析を行った。なお、解析条件として、隙間入口流路18の入口における流体条件は、2つのパターンを用意した。条件1では、隙間入口流路18に流入する流体の流量分布の偏りが比較的小さく、条件2では、隙間入口流路18に流入する流体の流量分布の偏りが比較的大きくなっている。
【0033】
図6は、上述した流体解析の結果である隙間流路における入口偏流度及び不安定流体力を表す図である。この
図6で示すように、条件1では、隙間入口拡大流路24を設けない場合に入口偏流度が1.6%、不安定流体力がF1であるのに対し、隙間入口拡大流路24を設けた場合に入口偏流度が2.4%まで増加し、不安定流体力がF2まで減少する(詳細には、F1の約17%減少する)。条件2では、隙間入口拡大流路24を設けない場合に入口偏流度が3.9%、不安定流体力がF3であるのに対し、隙間入口拡大流路24を設けた場合に入口偏流度が4.0%まで増加し、不安定流体力がF4まで減少する(詳細には、F3の約30%減少する)。このような解析結果からも、隙間入口拡大流路24を設けることにより、隙間流路15における入口偏流度を増加させることができ、不安定流体力を効果的に低減することができるとわかる。
【0034】
本発明の第2の実施形態を、
図7により説明する。
図7は、本実施形態におけるケーシングの凹み部の詳細構造を表す部分拡大断面図である。なお、本実施形態において、上記第1の実施形態と同等の部分は、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、隙間入口拡大流路24Aを形成する流路壁面(外周側側面)25aは、ロータ軸方向下流側に向かって外周側に傾斜するように(言い換えれば、径寸法が拡大するように)形成されている。これにより、
図7中矢印C
5で示す迂回流れを促進させることができる。詳しく説明すると、静翼列3から流出して隙間入口流路18に流入した蒸気は、旋回流成分を持ち、遠心力の効果によってロータ径方向外側に流れやすくなっている。そして、隙間入口流路18からの蒸気が流路壁面25aに衝突して、ロータ軸方向下流側に転向される。この作用により、迂回流れを促進させることができる。
【0036】
このように構成された本実施形態においては、流路壁面25aの傾斜により、上記第1の実施形態と比べ、隙間入口拡大流路24Aにおける迂回流れをさらに促進させることができ、隙間流路15の上流側における実質的な流路長さの延長作用を高めることができる。これにより、隙間流路15における入口偏流度を増加させることができ、不安定流体力をさらに低減することができる。したがって、不安定振動を抑制することができる。
【0037】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、ラビリンスシールとして、カバー6の外周面13に凸部22を設け、カバー6の外周面13及び凸部22にそれぞれ対応して複数列のフィン23を凹み部12の底面14に設けた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で様々な変形が可能である。すなわち、例えば凹み部12の底面14に凸部22を設け、凹み部12の底面14及び凸部22にそれぞれ対応して複数列のフィン23をカバー6の外周面13に設けてもよい。また、例えばカバー6の外周面13又は凹み部12の底面14に凸部22を設けなくともよい。また、例えば凹み部12の底面14とカバー6の外周面13の両方にフィンを設けてもよい。これらの変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、隙間入口拡大流路24における迂回流れを促進するために、カバー6の上流側側面16に突出部26を設け、この突出部26の先端面のロータ軸方向位置と隙間入口拡大流路24のロータ軸方向位置が重なる場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で様々な変形が可能である。すなわち、実質的な流路長さの延長作用が若干減少するものの、例えば突出部26の先端面は隙間入口拡大流路24よりロータ軸方向下流側に位置してもよい。また、例えばカバー6の上流側側面16に突出部26を設けなくともよい。なお、カバー6の上流側側面16に突出部26を設けない場合、カバー6の上流側側面26は、好ましくは、そのロータ軸方向位置が隙間入口拡大流路24のロータ軸方向位置と重なるように位置するほうがよいものの、隙間入口拡大流路24よりロータ軸方向下流側に位置してもよい。これらの変形例においても、漏れ流れを起因とした不安定流体力を低減することができ、不安定振動を抑制することができる。
【0039】
本発明の第3の実施形態を、
図8及び
図9により説明する。
図8は、本実施形態におけるケーシングの凹み部の詳細構造を表す部分拡大断面図である。
図9は、本実施形態における迂回部材及び支持部材の全体構造を表す斜視図である。なお、本実施形態において、上記第1の実施形態と同等の部分は、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0040】
本実施形態では、
隙間入口拡大流路24に環状の迂回部材27を配置している。迂回部材27は、円錐台状の筒体であって、ロータ軸方向上流側に向かって外周側に傾斜するように形成されている。そして、迂回部材27の外周面には周方向に離間して複数の支持部材(略棒状の部材)28が設けられ、これら支持部材28を介して迂回部材27がケーシング1に取付けられている。これにより、
図8中矢印C
6で示す迂回流れを促進させることができる。詳しく説明すると、静翼列3から流出して隙間入口流路18に流入した蒸気は、旋回流成分を持ち、遠心力の効果によってロータ径方向外側に流れやすくなっている。そして、迂回部材27の内周面に衝突すると、ロータ軸方向上流側に転向される。そして、迂回部材27の内周面と流路壁面25dとの間をロータ軸方向上流側に流れた後、迂回部材27の外周面と流路壁面25bとの間をロータ軸方向下流側に流れるようになっている(迂回流れ)。
【0041】
また、本実施形態では、カバー6の上流側側面17に突出部26を設けている。これにより、隙間入口流路18に流入した蒸気をロータ軸方向上流側に転向させるので、上述した迂回流れを促進させることができる。また、本実施形態では、突出部26の先端面は、そのロータ軸方向位置が隙間入口拡大流路24のロータ軸方向位置と重なるように位置し、かつ迂回部材27のロータ軸方向下流側の端部よりロータ軸方向上流側に位置している。これにより、隙間入口流路18から隙間流路15に直行する流れを抑制し、隙間入口拡大流路における迂回流れを促進させることができる。
【0042】
なお、迂回部材27は、一部材であってもよいし、若しくは、周方向に分割された複数の部材で構成されてもよい。また、迂回部材27、支持部材28、及びケーシング1間は、例えば溶接やボルト等によって連結されているものの、連結方法は、これに限定されない。
【0043】
また、本実施形態では、ラビリンスシールとして、凹み部12の底面14に凸部22が設けられ、凹み部12の底面14及び凸部22にそれぞれ対応して3列のフィン23がカバー6の外周面13に設けられている。なお、凸部22及びフィン23の配置や数は、これに限定されない。また、迂回部材27と最上流側のフィン23との間の間隔は、熱膨張やスラスト荷重による部材の変形や変位を考慮して、隙間流路15の幅寸法Hと同程度若しくはそれ以上とすることが望ましい。
【0044】
以上のように構成された本実施形態においては、迂回部材27を設けることにより、上記第1の実施形態と比べ、隙間入口拡大流路24Aにおける迂回流れをさらに促進させることができ、隙間流路15の上流側における実質的な流路長さの延長作用を高めることができる。これにより、隙間流路15における入口偏流度を増加させることができ、不安定流体力をさらに低減することができる。したがって、不安定振動を抑制することができる。
【0045】
なお、上記第3の実施形態においては、ラビリンスシールとして、凹み部12の底面14に凸部22を設け、凹み部12の底面14及び凸部22にそれぞれ対応して複数列のフィン23をカバー6の外周面13に設けた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で様々な変形が可能である。すなわち、例えばカバー6の外周面13に凸部22を設け、カバー6の外周面13及び凸部22にそれぞれ対応して複数列のフィン23を凹み部12の底面14に設けてもよい。また、例えばカバー6の外周面13又は凹み部12の底面14に凸部22を設けなくともよい。また、例えば凹み部12の底面14とカバー6の外周面13の両方にフィンを設けてもよい。これらの変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、上記第3の実施形態においては、隙間入口拡大流路24における迂回流れを促進するために、カバー6の上流側側面16に突出部26を設け、この突出部26の先端面のロータ軸方向位置と隙間入口拡大流路24のロータ軸方向位置が重なり、さらに突出部26の先端面が迂回部材27のロータ軸方向下流側の端部よりロータ軸方向上流側に位置する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で様々な変形が可能である。すなわち、実質的な流路長さの延長作用が若干減少するものの、例えば突出部26の先端面は隙間入口拡大流路24よりロータ軸方向下流側に位置してもよい。また、例えば突出部26の先端面が迂回部材27のロータ軸方向下流側の端部よりロータ軸方向下流側に位置してもよい。また、例えばカバー6の上流側側面16に突出部26を設けなくともよい。なお、カバー6の上流側側面16に突出部26を設けない場合、カバー6の上流側側面26は、好ましくは、そのロータ軸方向位置が隙間入口拡大流路24のロータ軸方向位置と重なるように位置し、かつ迂回部材27のロータ軸方向下流側の端部よりロータ軸方向上流側に位置するほうがよい。しかし、カバー6の上流側側面26は、隙間入口拡大流路24よりロータ軸方向下流側に位置してもよいし、迂回部材27のロータ軸方向下流側の端部よりロータ軸方向下流側に位置してもよい。これらの変形例においても、漏れ流れを起因とした不安定流体力を低減することができ、不安定振動を抑制することができる。
【0047】
なお、以上においては、本発明の適用対象として、軸流タービンの一つである蒸気タービンを例にとって説明したが、これに限られず、ガスタービン等に適用してもよい。また、軸流圧縮機に適用してもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。