(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972380
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】隆起する留め具からシーラントを除去するツール
(51)【国際特許分類】
B23C 5/10 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
B23C5/10 D
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-529652(P2014-529652)
(86)(22)【出願日】2011年9月8日
(65)【公表番号】特表2014-526388(P2014-526388A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】US2011050890
(87)【国際公開番号】WO2013036235
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2014年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン, ジェフリー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】スタヴィグ, ポール エヌ. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】フラー, マーク ディー
【審査官】
長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0061918(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0098509(US,A1)
【文献】
特表2004−508208(JP,A)
【文献】
特開平07−331861(JP,A)
【文献】
特開2011−149167(JP,A)
【文献】
実開平05−060799(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/10−5/12
B26D 1/143
B26D 1/40,1/44−1/45
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隆起する留め具(130)からシーラント(126)を除去するための工具(100)であって、
回転ドライブに接続するシャンク(102)と、
前記シャンク(102)を介して前記回転ドライブに接続している本体(104)であって、前記本体(104)は、上面と底面と側面を有し、前記シャンク(102)は、前記本体(104)の上面に接続されている、本体(104)と、を備え、
前記本体(104)は、前記本体(104)の下面において開いた空洞(106)を含み、
刃(108)が、前記空洞(106)の中心を向くように、前記本体(104)の前記空洞(106)の範囲内に配置され、
当該刃(108)は、当該空洞(106)内に前記隆起する留め具及び前記シーラントが挿入され、前記シャンク(102)が回転ドライブにより回転されるときに、前記隆起する留め具から前記シーラントを除去する、工具(100)。
【請求項2】
交換可能なインサート(124)をさらに備え、前記交換可能なインサート(124)は、前記刃(108)を含み、前記交換可能なインサート(124)は、前記空洞(106)の範囲内に配置される、請求項1に記載の工具(100)。
【請求項3】
当該空洞(106)内に前記隆起する留め具(130)が挿入されるときに前記刃(108)が前記留め具(130)の側面に接するように、前記刃(108)は、前記空洞(106)の範囲内に配置される、請求項1または2に記載の工具(100)。
【請求項4】
前記工具(100)のシャンク(102)は、前記回転ドライブと接続する接続部を備え、当該接続部の断面は、六角形状である、請求項1から3のいずれか一項に記載の工具(100)。
【請求項5】
前記本体(104)は、前記本体(104)の底面に配置される第2の刃(116)をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の工具(100)。
【請求項6】
前記刃(108)は、約60以上かつ約126以下の範囲内に含まれるロックウェルR硬度を有する材料から作られている、請求項1から5のいずれか一項に記載の工具(100)。
【請求項7】
前記刃(108)は、非金属材料を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の工具(100)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の工具(100)を前記隆起する留め具(130)に位置合わせする位置合わせステップと、
前記工具(100)の前記本体(104)の前記空洞(106)内に前記隆起した留め具(130)及び前記シーラント(126)を挿入する挿入ステップと、
前記隆起する留め具(130)から前記シーラント(126)を除去するために、前記刃(108)が前記隆起する留め具(130)の周りを回るように、前記工具(100)を回転させる回転ステップと、を含む、隆起する留め具(130)からシーラント(126)を除去する方法。
【請求項9】
前記回転ステップは、前記刃(108)が前記工具(100)の1回転の範囲内で前記隆起する留め具(130)の周りを回るように、前記工具(100)を回転させることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造をシールし、それらの構造を化学腐食から防御するために、それらの構造に頻繁に適用される、エラストマーのシーラント又はコーティングを除去することに関連する工具に関する。特に、本発明は、そのような構造の中に典型的に見られる隆起する留め具から、シーラントを除去するそのような工具を対象とする。
【背景技術】
【0002】
航空機の燃料タンクの中の隆起する留め具は、それらを流体密封の状態にするために、頻繁にエラストマーのシーラント又はコーティングが塗布される。典型的なエラストマーのシーラントは、ポリサルファイド又はポリチオエーテルの合成物を含む。これらの同じ合成物は、隆起する留め具の予め形成された及び成形されたシールキャップとして適用される。そのようなシールキャップは、ピーピージー・エアロスペース(PPG Aerospace)社のピーアールシー(PRC(登録商標))・デソト(DeSoto)の「カスタマイズされたシーラント溶液、ピーアールシー(PRC(登録商標))、シールキャップス」というタイトルの冊子の中で、説明されている。
【0003】
変更、修理、又は検査の必要性がある場合、これらのエラストマーのシーラント又はコーティングは、必要な保守又は検査の手順のために隆起する留め具にアクセスするために、除去されなければならない。隆起する留め具、周囲、及び下部構造の表面に対する損傷を避けるために、当該除去過程の間は、注意が払われなければならない。
【0004】
エラストマーのシーラントを機械的に除去するために採用される装置のいくつかは、米国特許番号6,475,065の中で説明される硬い高分子繊維の回転式切断ツール、及び郵便番号55144−1000、ミネソタ州セントポール、223−6N−1、スリーエム(3M(トレードマーク))中央ビルの研削材システム組織(Abrasive Systems Organization)から入手が可能な、「表面調整製品、技術的業務社内報、スリーエム(3M(トレードマーク))、エスアール(SR)切断具」というタイトルのスリーエム(3M(トレードマーク))出版物61−5002−8019−5の中で説明されるスリーエム(3M(トレードマーク))、エスアール(SR)切断具、ナンバー3及びナンバー8を含む。
【0005】
使用に際して、従来の切断具は、本質的に環状の動きにおいて、作業者が留め具の周辺の周りで回転する切断具を手動で動かすことにより、留め具からシーラントを除去するために使用される。その後、任意の剰余のシーラントは、非損傷スクレーパー又はパテナイフなどのような、他の手工具を伴って手動で除去される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
留め具からシーラントを除去する工具及び方法に対して、技術的な改良がなされることにおける継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にしたがって、ツールは、回転ドライブに接続するシャンク、及び当該シャンクの上に配置される本体を備える。本体は、空洞であって、当該空洞が留め具の周りに誘導される場合に、シーラントと接触する動く端部(ワーキング・エッジ)を伴った空洞を含む。ツールの利点の1つは、空洞が、内部の切断及び自己調心の特性を提供することである。これらの特性は、作業者が留め具の周りでツールを手動で動かす必要なしに、円周を回るやり方で留め具からシーラントを除去することを容易にする。このことは、ツールが回転するときに、ツールは1回転の範囲内で留め具の周辺の周りを回るため可能になる。
【0008】
有利なことに、ツールは、動く端部を含む交換可能なインサートをさらに備えている。好適なことに、動く端部は、空洞の範囲内に配置されている。有利なことに、動く端部は、留め具の外形に対して近似的に輪郭が合うように形成されている。有利なことに、ツールは、ヘックス・ドライブ(ヘキサロビュラ型の駆動)を伴った使用に対して構成されている。有利なことに、本体は、本体の底面の上に配置される動く端部をさらに備えている。有利なことに、動く端部は、約60以上かつ約126以下の範囲内に含まれるロックウェルR硬度を有する材料から作られる。有利なことに、動く端部は、非金属材料を含む。
【0009】
本開示のさらなる実施形態にしたがって、隆起する留め具からシーラントを除去する方法は、ツールを利用すること、及び有利なことに、ツールが1回転の範囲内で留め具の周辺の周りを回るようにツールを使用することを含み、留め具は、シーラントが除去される場合に実質的に損傷を受けない。有利なことに、ツールの空洞は、留め具のシーラントに対して誘導される。有利なことに、隆起する留め具は、航空機の部品である。
【0010】
本発明の別の態様にしたがって、隆起する留め具からシーラントを除去する方法は、隆起する留め具とのツールの位置合わせを含む。動く端部が留め具の周りを回るようにツールを回転させる一方で、シーラントは、ツールが留め具に向かって位置合わせされる方向に誘導されることにより、除去され又は解放される。言い換えると、ツールを留め具の中央の軸の周りで回転させる一方で、留め具の中央の軸に沿って、線形的にツールを留め具に向かって動かすことにより、シーラントは留め具から除去される。有利なことに、ツールは、1回転の範囲内において動く端部が留め具の周りを回るように、回転される。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を考慮することから、当業者にとって明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、多くの実施形態にしたがって留め具からシーラントを除去するツールの斜視図である。
【
図2】
図2は、回転ドライブに接続される端部を特に示す、多くの実施形態にしたがって留め具からシーラントを除去するツールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2を参照すると、隆起する留め具からシーラントを除去するツール100が、示されている。多くの実施形態において、ツール100は、シャンク102及び本体104を含む。シャンク102は、ツール100に回転を与えるために回転ドライブに接続するように、構成されている。本体104は、シャンク102の上に配置され、空洞106であって、当該空洞が留め具の周りに誘導される場合にシーラントと接触する、1以上の動く端部108を伴った空洞を含む。
【0014】
動く端部108は、設置される状態において、動く端部が隆起する留め具の外形に近似的に合うように、形成され又は輪郭づけられる。さらに、動く端部108は、設置され及びシールされない状態において、留め具の外形に近似的に合うように、形成され又は輪郭づけられる。付加的に、動く端部108は、平削り盤の形又は平削り盤ではない形を有する。例えば、動く端部は、実質的に螺旋型の形を有する。
【0015】
本体104は、適切な方法によって、永久的又は半永久的にシャンク102に結合される。いくつかの実施形態において、本体104は、シャンク102に統合される。他の実施形態において、ツール100は、本体104とシャンク102の間の再接続可能なアタッチメントを含み、それにより本体はシャンクに対して着脱可能である。例えば、再接続可能なアタッチメントは、本体104とシャンク102の間のねじ接続により行われ、又は本体104がナットを伴ってシャンク102に固定される。他の実施例は、戻り止め接続又はしゃち接合を含む。代替的に、本体104をシャンク102と一体に成形する又は鋳造することにより、又は本体104とシャンク102の間の圧入接続を通じて、本体104は、より永久的なやり方でシャンク102に結合される。
【0016】
シャンク102はまた、回転ドライブに接続するためのドライブ・セクション114を含む。ドライブ・セクション114は、円筒形状であるか又はファセットされている。いくつかの実施形態において、ドライブ・セクション114は、ヘックス・ドライブにおける使用のためのヘックス・フラットを含む。他の実施形態において、ドライブ・セクション114は、クイック・チェンジ・カプラー、コレット、又は三爪チャンクにおける使用のための接続対策を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、ツール100の本体はまた、隆起する留め具を接近した状態で取り囲みかつ隆起する留め具に隣接する、表面からのシーラントの除去において助けとなる、底面の上に配置される動く端部116を含む。他の実施形態において、ツール100の本体104はまた、留め具に隣接する表面からのシーラントの除去において助けとなる、外面の上に配置される動く端部を含む。
【0018】
本体104は、任意の適切な材料、金属、又は非金属から成るが、しかしながら、本体104の動く端部108及び116は、好ましくは、留め具及び周囲表面の損傷を緩和するために、隆起する留め具と比較して低いバルク硬度を有する材料から作られる。適切な材料は、主として、ポリマー又はアルミニウム合金のような軟質金属などのような、非金属合成物から成る。いくつかの実施形態において、材料は、約60以上かつ約130以下の範囲内に含まれるバルク・ロックウェルR硬度を有する。いくつかの実施形態において、本体並びに動く端部108及び116は、同じ材料から成る。
【0019】
さらに別の実施形態において、動く端部108及び116は、交換可能なインサート124の部品である。インサート124は、留め具125によって本体104の中に保持される。したがって、本体104は、異なる形、サイズ、及び切断断面のインサートを受け入れる。このやり方において、異なるインサートは、様々な異なる隆起する留め具の形状に一致する。
【0020】
今度は、
図3A、
図3B、及び
図3Cを参照すると、ツール100は、隆起する留め具130及び周囲の領域から、シーラント又はシーラントキャップ126を除去するために使用される。典型的な適用は、航空機、海洋、及び地上輸送ビークルの構造において見られる隆起する留め具から、シーラントを除去することを含む。これらの例の各々において、ツール100は、回転ドライブに装着される。シーラントの除去は、ツール100を隆起する留め具130と位置合わせし、ツール100の空洞を留め具に向かって誘導することにより達成され、それによりツール100の動く端部108及び116はシーラント126に接触し、一方、ツール100は回転ドライブにより中心軸110の周りで回転される。
【0021】
図3Aに示されるように、ツール100は、興味の対象である留め具130に対して、近接して及び一般的な配列において置かれる。回転又は回される一方で、ツール100は、
図3Bに示されるように、留め具130に対して接する若しくは止まる、又は構造134に対して接する若しくは止まるまで、留め具130を封入するシーラント126に対して、誘導され又は繰り返し誘導される。一旦、接することが成し遂げられると、ツール110は、
図3Cに示されるように、引き戻される。
【0022】
加えて、
図3Bにおいて特に示されるように、ツール100が留め具130に対して誘導される場合、留め具130は、本体130の空洞106の範囲内に受け止められる。加えて、いくつかの実施形態において、留め具132に向かい中央の軸に沿うさらなる又は漸進的なツール100の誘導を伴って、空洞106は、留め具130が、ツール100が構造134に対して又は近接して位置決めされる場合に、空洞106に受け止められるように、構成される。加えて、いくつかの実施形態において、軸132に沿うツール100のさらなる誘導を伴って、シーラントは動く端部116により構造134から除去される。
【0023】
以上の本発明の実施形態が、それに対する数多くの代替及び変更のための基礎を提供する、ということを、当業者は理解するだろう。これらの他の変更はまた、本発明の範囲内である。したがって、本発明は、本発明において精密に示され説明されるものに、限定されない。