特許第5972392号(P5972392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972392エレベータの適正作動性を試験する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972392
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】エレベータの適正作動性を試験する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20160804BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 R
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-546334(P2014-546334)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2015-501773(P2015-501773A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2011072961
(87)【国際公開番号】WO2013087115
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】514136680
【氏名又は名称】デクラ エー ファオ
【氏名又は名称原語表記】DEKRA e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティアス、ゲールケ
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02221268(EP,A1)
【文献】 特開2010−190634(JP,A)
【文献】 特開2006−125885(JP,A)
【文献】 特開平09−216736(JP,A)
【文献】 特開2009−286525(JP,A)
【文献】 特開2009−120370(JP,A)
【文献】 特開2003−212448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00 − 5/28
G01S 17/00 − 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご(3)が昇降路窪み空間を有する昇降路内で移動可能とされ、かつ適正作動性を決定するための特性値(Vf,T,T’,T”)が所定の試験条件下で確認されるエレベータの適正作動性を試験する方法であって、
前記特性値(Vf,T,T’,T”)を確認するために、かご(3)と前記昇降路窪み空間(5)内の固定測点間の距離(A)の変化が光学距離測定装置(7)により測定され、
前記光学距離測定装置(7)の送信光ビーム(8)は、所定アルゴリズムに従って前記送信光ビーム(8)を移動させながら前記送信光ビーム(8)が反射体(15)で反射されるか否かを検出する閉ループ制御により、前記反射体(15)と自動的に整列状態に保持され、
前記送信光ビーム(8)は、前記所定のアルゴリズムでは、
第1の直線に沿って移動させられた後に前記第1の直線と直交する第2の直線に沿って移動させられ、
反射された場合に、追尾方向にさらに移動させられ、
該追尾方向の移動中に反射体(15)で反射されなくなった場合に、さらに、円周に沿って移動させられることを特徴とする、エレベータの適正作動性を試験する方法。
【請求項2】
前記送信光ビーム(8)を反射する反射体(15)が前記かご下面に取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送信光ビーム(8)による前記反射体(15)の追尾は、前記かご下面と前記光学距離測定装置(7)間の前記距離(A)に依存して行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記距離(A)は、前記送信光ビームが前記反射体(15)でもはや反射されないことが検出される前に測定された最後の距離値である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
かご(3)が昇降路窪み空間を有する昇降路内で移動可能とされたエレベータの適正作動性を試験する装置であって、
前記昇降路内の固定測点に対するかご(3)の距離(A)の変化を請求項1〜3のいずれかに記載の方法で測定する光学距離測定装置(7)が前記昇降路内に配置され、
前記光学距離測定装置(7)は、送信光ビームが反射体(15)で反射されないことが検出されるや否や、前記送信光ビームが前記反射体(15)で反射されるまで、前記送信光ビームを所定アルゴリズムに従って閉ループ制御により移動させるように、前記送信光ビーム(8)を前記反射体(15)と自動的に整列状態に保持するユニット、
を備え、
前記送信光ビーム(8)は、前記所定のアルゴリズムでは、
第1の直線に沿って移動させられた後に前記第1の直線と直交する第2の直線に沿って移動させられ、
反射された場合に、追尾方向にさらに移動させられ、
該追尾方向の移動中に反射体(15)で反射されなくなった場合に、さらに、円周に沿って移動させられる、ことを特徴とする、エレベータの適正作動性を試験する装置。
【請求項6】
前記送信光ビーム(8)を反射する前記反射体が前記かご下面に取り付けられる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ユニットは、前記かご下面と前記光学距離測定装置(7)間の前記距離(A)に依存して、前記送信光ビーム(8)の追尾経路を算出する、
請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記距離(A)は、前記送信光ビームが前記反射体(15)でもはや反射されないことが検出される前に測定された最後の距離値である、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇降路窪み空間を有する昇降路内でかごが移動可能であるエレベータの適正な作動性、特に牽引容量、過牽引容量、安全装置等における適切な作動性、を試験する方法および装置、並びにエレベータの適正な作動性を決定するための、既定の試験条件下で確認される特性値に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ公開特許公報 DE 10150 284 A1は、エレベータ設備を診断する方法を開示する。かごは、加速度センサを備える。加速度センサを使用して測定される加速度値は、かごの外側に配置された分析ユニットに送信される。
【0003】
ドイツ公開特許公報 DE 102006 011 395A1 は、エレベータシステムの牽引容量を測定する測定装置を開示する。測定装置は、多重支持ケーブル上に位置決めする締結装置を有する。更に、測定装置は、支持ケーブルの少なくとも1本への取付け装置を有する。
【0004】
ドイツ特許公報 DE 3911 391 C1は、牽引容量を試験する方法および装置を記載する。牽引ケーブルの少なくとも1本のケーブルと定点間で、牽引ケーブルを介して定点に伝達される力が、ケーブルが駆動プーリ上で滑り始めるまで、力測定信号符号化器によって確認される。この目的のために、第1の距離センサをさらに牽引ケーブルの1本のケーブルに接続し、また第2の距離センサを駆動プーリに接続することができる。
【0005】
欧州公開特許公報EP 2 221 268A1は、エレベータの適正作動性を試験する方法および装置を開示し、そこでは、エレベータの技術特性である特性値を分析するために光学距離測定装置が使用される。
【0006】
公開特許公報 JP2001 171929 Aは、かご内に内蔵カメラを有するエレベータシステムを教示し、そこでは、カメラの電子情報データが、光データ伝送ビームにより、かごと固定機関室間を転送される。データ伝送ビームの放射に使用されるLEDは、かごの振動中のデータ伝送を安定させる抑制手段を備えたかごの上面の整列装置の上に配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら公知の方法を行うために必要な装置は、センサを設置するのに比較的高レベルの努力を必要とする。これら代表的な方法の実施は、高い工数費用につながる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、従来技術にかかる不利益を除去することである。特に、エレベータの適正作動性の試験を、できるだけ単純で効率的に行う方法を述べる。本発明の他の目的によれば、エレベータの適正作動性が迅速に、簡単に、かつ効率的に試験することを使用する装置を述べる。
【0009】
この目的は、独立請求項の特徴により達成される。本発明の好適な実施態様は、従属請求項の特徴に由来する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により提供される、エレベータの適正作動性を試験する方法においては、特性値の確認のために、かごと昇降路内の固定測点間の距離の変化を光学距離測定装置により測定することが提案される。このため、驚くほど単純な仕方で、エレベータの適正作動性を試験する方法を迅速で効率的に行うことができる。提案される方法によれば、特に、複雑で時間のかかるケーブルや駆動プーリへの測定装置の取付けや、昇降路の外側のセンサへのケーブルの布設を省くことができる。加えて、昇降路の実施態様は標準により確立されているため、提案される方法は特に普遍的なものである。その結果、エレベータの実施態様が異なる場合でも、昇降路は殆ど異ならない。これにより、エレベータの適正作動性の試験は更に単純化される。
【0011】
本発明によれば、光ビームを自動的に反射体に整列させることが提案される。提案される自動整列は、距離値がかごの移動の全行路に沿って支障なく、またはわずかな支障で測定可能なことを保証する。また、光ビーム、特にレーザビームを放射する光学距離センサがかごの移動方向に対して正確に直角に配置されない場合でも、距離値の測定を行うことができる。
【0012】
放射される光ビームの自動追尾を保証するために、閉ループ制御が提供される。それによって、放射される光ビームが反射体で反射されるか否かが検出される。かかる検出は、受信器により行われる場合がある。
【0013】
放射される光ビームが反射体で反射されないことが検出されるや否や、放射される光ビームは所定アルゴリズムに従って移動させられる。そのアルゴリズムによれば、放射される光ビームは、第1の直線に沿って移動され、その後、第1の直線に直角な第2の直線に沿って移動される場合がある。放射される光ビームは、円の経路に沿って移動させられる場合もある。移動の程度は、光学距離センサからの反射体の距離に依存して、都合よく算出される。距離の算出には、放射される光ビームが反射体でもはや反射されないことが検出される前に測定された最後の距離値が使用される。放射される光ビームの移動の程度を最後の距離値に依存して算出することにより、放射された光ビームの移動の軌跡が、光学距離センサからのかごの距離にかかわらず、それぞれ常に同一の程度または寸法を有するようにすることができる。これにより、放射される光ビームの迅速な追尾および反射体との整列が保証される。
【0014】
有利な実施態様によれば、固定測点は昇降路窪み空間内にあり、その場合、かごのかご下面までの距離が測定される。昇降路窪み空間へは、試験技師が容易に接近できる。その中に、距離の変化を測定できる距離測定装置を、大した努力なしに配置できる。
【0015】
距離の変化は、光学距離測定装置により測定される。距離測定装置は、望ましくはクロック発生器を含み、それは、例えば固定測点に対するかごの距離の時間分解測定を可能にする。クロック発生器は、例えばコンピュータの1構成要素であり、これには距離測定装置が接続されて、これが測定した測定値を伝達し、コンピュータがこれを分析するようにできる。
【0016】
距離測定装置を使用し、1秒につき少なくとも500、好ましくは700〜2500個の距離値を測定し、記録するのが好適であると判明している。下流の分析電子機器を使用して、1秒につき800〜1200個の距離値が好適に測定され、分析される。提案される測定値の記録頻度を使用すれば、適正作動性の試験のために規定される試験手順で、かごの動特性を記録することができる。達成される結果は、代表的な試験手順を使用して達成できる結果よりも大幅により正確である。この方法は、同時に、より容易でコスト効率よく行われる場合がある。また、望ましくは1秒につき900〜1100個の距離値を、力測定装置が提供する測定値の関数として記録することもできる。この場合にも、上述の測定頻度が使用できる。
【0017】
距離測定装置は、望ましくは固定測点を構成する。これにより、方法は単純化される。例えば、鏡として実施される固定測点に対する複雑な整列作業や、多分必要とされるコンピュータへのケーブル布設作業が省かれる。
【0018】
実際、距離測定装置は、昇降路窪み空間内に設置されるのが特に有利であると判明しているが、その窪み空間とは、昇降路の床と、四方の壁と、床上に支持された緩衝物の上面に載っている仮想面と、により境界が定められるものである。昇降路窪み空間へは、比較的容易に接近できる。距離測定装置は、緩衝物の上面に載っている仮想面の下方に安全に収容することができる。かごまたはカウンタウエイトが緩衝物上に載せられた場合でも、距離測定装置への損傷の心配はない。特に単純な実施態様によれば、距離測定装置は、昇降路窪み空間の床上に支持される。
【0019】
本発明の他の特に有利な実施態様によれば、距離測定装置として光学距離センサが使用され、その光学距離センサは、光軸に沿って送信光ビームを放射する少なくとも1つのセンサと、送信光ビームを変調する少なくとも1つの発振器と、受信光ビームを受信し、かご下面から反射された受信光ビームの実行時を決定する手段を有する受信器と、を備える。提案される光学距離センサを使用して、送信光ビームと受信光ビーム間の位相差から、特に、かごの距離の経時的変化を決定することができる。送信光ビームおよび受信光ビームは、この実施態様においてはパルス化されない。距離測定は、周波数測定により行われる。かかる周波数測定は、わずかな回路費用で実施できる。それ故に、かご下面と固定測点間の距離の経時的変化を、特に正確に、そして高解像度で測定することができる。
【0020】
本発明の他の実施態様によれば、実行時を決定する手段は、電気信号経路を介して受信器に接続される位相差検出器を備える。電気信号経路には、それを使用して送信光ビームと受信光ビーム間の位相差を既定の値に設定しまたは調節可能とされた電子信号遅延ユニットを接続することができる。位相シフトを決定するために、望ましくは送信光ビームと受信光ビーム間の同期整流器を少なくとも1つ備える。送信器は、一定周波数を有する上流の発振器により変調可能とされ、従ってクロック発振器の出力は同期整流器に導かれ、クロック発信器の周波数は同期整流器の出力信号のフィードバックにより調節可能とされる。発振器およびクロック発振器の両信号間の位相差は、位相検出器内で決定可能とされ、距離の測度として、分析ユニット内で分析可能とされる。同期整流器の積分出力信号が送信器の上流の発振器にフィードバックされ、発振器内で設定される変調周波数が距離の測度として分析ユニット内で分析されるという点で、送信光ビームの変調周波数も、送信光ビームと受信光ビーム間の位相シフトを決定するために調節可能とされている。上述の特徴を有する距離測定装置は、特に固定測点に対するかごの距離を測定するのに十分に適している。このようにして達成可能とされる測定周波数は、ミリセカンド範囲内で距離の時間的変化の測定を可能にする。減速度や加速度は、例えば非常停止等の場合に安全装置のトリガーで発生するが、これにより記録される場合がある。提案される距離測定装置は、従って、エレベータの適正作動性の試験中の、全ての速度-依存や加速度-依存の特性値を確認するのに、普遍的に適している。
【0021】
光学距離センサは昇降路窪み空間の床上に都合よく支持され、また反射体はかご下面に取り付けられる。昇降路の床上での光学距離センサの支持は、特に簡単に実施される場合がある。煩わしい据付作業は不要である。
【0022】
他の実施態様によれば、受信器の出力端で入手できる受信信号を分析する分析ユニットが備えられる。受信器は、その法線ベクトルが光軸に対して既定の傾斜角だけ傾斜した受光面を有することができる。それ故、光が受信器から光軸領域内へと反射されて測定結果を破壊する結果にもなり得ることを、防止することができる。傾斜角は、望ましくは10〜30°の範囲内にある。
【0023】
測定値を分析するために、低域通過フィルタ、好ましくはSG−FIRローパスフィルタを使用し、それにより測定値をフィルタするのが特に有利であると判明している。光学距離センサと提案されるフィルタの組合せは、特に信頼性の高い結果をもたらす。
【0024】
特性値を確認するために、距離は特に時間の関数として測定することができ、またそこからかごの加速度を確認することができる。加速度は、時間にわたり測定された距離値の2次導関数により、容易かつ正確に確認することができる。このように確認される加速度に基づいて、エレベータの適正作動性を表す複数の特性値を確認することができる。
【0025】
特性値は、安全装置や牽引容量の作動性を表す値である場合がある。また、特性値は、エレベータの過牽引容量や最小牽引容量を表す値である場合がある。
【0026】
本発明の他の実施態様によれば、送信光ビームを反射する反射体は、かご下面に取り付けられる
【0027】
射される光ビームの整列は、例えば1以上のアクチュエータにより傾斜可能とされた1以上の鏡により行うことができる。更に、光学距離センサを調整することにより、放射される光ビームの追尾を反射体で行うことができる。この目的のために、例えば光学距離センサをその上に支持するステントの長さが、例えばサーボモータにより調整される場合がある
【0028】
の有利な実施態様によれば、反射体との放射された光ビームの正しい整列は、距離に依存して電子的に保存される。これにより、昇降路内でかごが次の移動をするあいだ、自動的に光ビームが整列しているようにできる。
【0029】
方法の他の有利な実施態様によれば、試験されるエレベータにおいて、かごは、安全装置を備え、かつ駆動プーリに架け渡されて案内される少なくとも1つのケーブルを介してカウンタウエイトに連結されており、安全装置の作動性を表す特性値を確認するために次の各ステップが行われる:
かごを下方へ移動させること;
安全装置をトリガーすること;
固定測点に対するかごの距離を時間に関して測定すること;および、
測定値から、安全装置のトリガーにより生じるかごの減速度Vfを確認すること。
【0030】
固定測点に対するかごの距離の変化が時間にわたり直接測定されるという点で、安全装置のトリガー時のかごの減速度を特に正確に確認することができる。方法は、驚くほど容易に行われる場合がある。特に、測定装置をケーブルまたは駆動プーリ等に取付ける必要はない。
【0031】
有利な実施態様によれば、下方への移動は、無負荷のかごを使用して行われる。これにより、本発明にかかる方法は単純化される。安全装置は、望ましくはかごの行路の下半分、好ましくは下3分の1、特に好ましくは下4分の1の区間内でトリガーされる。このように増加する駆動プーリとかご間のケーブル長のため、安全装置には、行路の下部区間内で、特に強く応力が加えられる。安全装置の作動性にとって特に有益な値は、行路の下部区間で得られる。
【0032】
本発明の他の有利な実施態様によれば、下方への移動は、公称速度で行われる。これにより、提案される方法は更に単純化される。
【0033】
公称荷重が積載されたかごの減速度Vfは、次の公式によって確認することができる:
【数1】
【0034】
ここで、
NL = かご内に指定された公称負荷
g = 重力の加速度
s¨ = 時間に関して測定された距離の2次導関数、および、
mFK = かごの質量
方法の他の実施態様によれば、試験されるエレベータにおいて、かごは駆動プーリに架け渡されて案内される少なくとも1つのケーブルを介してカウンタウエイトに連結されており、駆動プーリを制動するブレーキ装置が備えられ、駆動プーリの牽引容量Tを表す特性値を確認するために次の各ステップが行われる:
かごを移動させること;
ブレーキ装置をトリガーすること;
固定測点に対するかごの距離を時間にわたり測定すること;および、
測定値から駆動プーリの牽引容量Tを確認すること。
【0035】
本発明によってかご下面の距離が測定されるという点で、提案される方法は驚くほど簡単で確実に行われる場合がある。特に、ケーブルや駆動プーリ等への測定値の検出器の時間のかかる設置を省くことができる。それにも関わらず、ブレーキ装置のトリガー時の駆動プーリの牽引容量を、固定測点に対するかごの距離の変化の測定から、より高い精度で確認することができる。
【0036】
本発明において定義される、用語「ブレーキ装置」は、駆動プーリに直接作用する駆動プーリ・ブレーキ、あるいは駆動プーリに間接的に作用するトランスミッションまたはモーター・ブレーキ、であると普通に理解されるべきである。用語「昇降路」も、本発明において定義されるように、普通に理解されるべきである。昇降路は、完全なレーリングと部分的なレーリングのいずれであれ有するものを含むと理解されるべきである。本発明において定義される、「距離」は、かごの移動方向に本質的に測定される距離である。「エレベータ」は、垂直方向に移動可能なかごを有するエレベータ、およびかごが水平に対して少なくとも15°斜めに移動可能な傾斜エレベータ、の両方として理解される。
【0037】
ドイツ工業標準規格 DIN EN81−1において定義される非常停止の場合の牽引容量は、特に提案される方法を使用して確認することができる。この目的のために、時間にわたるかごの距離は、かごの移動中とブレーキ装置がトリガーされるときに直接測定される。ブレーキ装置がトリガーされた後の移動の減速度は、測定された距離から、時間による2次導関数により確認される場合がある。従来技術とは対照的に、ここでの算出に積分定数を使用する必要はない。積分定数の使用は、算出に不正確さを導入することになる。
【0038】
移動は、無負荷のかごを使用して都合よく行われる。これにより、提案される方法の効率は更に増す。もちろん、かごに、例えば公称負荷を載せることも可能である。
【0039】
本発明の他の有利な実施態様によれば、かごの移動は公称速度で行われる。これにより、提案される方法は更に単純化される。
【0040】
かごは、牽引容量Tを確認するために、望ましくは上方へ移動させられる。しかしながら、本発明にかかる方法を使用して、かごの下方への移動の牽引容量を高精度で決定することも可能である。
【0041】
牽引容量Tは、望ましくは次の公式によって確認される:
【数2】
【0042】
ここで、
s¨ = a(t)= 時刻 t に確認された減速度
A = 昇降路窪み空間からかごの床までの測定された距離
FH = 測定されたコンベヤ高さ
AH = 駆動装置の床位置の入力後の駆動装置の算出高さ
mFK = かごの質量
mGG = カウンタウエイトの質量
V = 懸架比、1:1または2:1
n = ケーブルの数
sg = ケーブル比重(Kg/m)
g = 重力の加速度
mA = (FH - A)*sg*n
mB = (FH - AH)*sg*n
mC = (FH - AH)*sg*n
mD = A*sg*n
エレベータの適正作動性を試験するには、非常停止の場合における牽引容量を試験する説明した方法に加えて、他の特性値も確認する必要がある。この目的のために、試験手順を構成する本発明にかかる方法は、他の試験手順と組合せることができる。この目的のために、第1の力測定装置をカウンタウエイトに対応する少なくとも1つの第1緩衝物上で支持し、そして第2の力測定装置をかごに対応する少なくとも1つの第2緩衝物上で支持することが好適であると判明している。それ故、力測定装置もまた、昇降路窪み空間内に導入され、従って距離測定装置の近くに置かれる。これにより、距離測定装置や力測定装置の測定値を、これらに接続され、かつ好ましくは昇降路窪み空間内に置かれたコンピュータによって都合よく記録し分析することが可能となる。力測定装置、距離測定装置およびコンピュータを含む測定装置の昇降路窪み空間内へのセットアップは、迅速で容易に行われる場合がある。かかる測定装置を使用し、エレベータの適正作動性の試験に必要な全ての特性値を確認することができる。
【0043】
エレベータの過牽引容量は、さらなる他の試験手順において測定することができる。試験されるエレベータにおいて、かごは駆動プーリに架け渡されて案内される少なくとも1つのケーブルを介してカウンタウエイトに連結されており、エレベータの過牽引容量を表す特性値を確認するために次の各ステップを行うことができる:
カウンタウエイトを第1の力測定装置上に載せること;
ケーブル滑りが発生するまでかごを上昇させる方向に駆動プーリを運転すること;
第1の力測定装置に作用する力を時間にわたり測定すること;および、
測定値から過牽引容量を確認すること。
【0044】
上記の測定装置を使用して、提案される第2の試験手順を容易で迅速に行うことができる。過牽引容量T’は、次の公式により確認することができる:
【数3】
【0045】
ここで、
mGG = カウンタウエイトの質量
Fm’ = ケーブル滑り時に測定された力
mFK = かごの質量
A = 昇降路窪み空間からかごの床までの測定された距離
FH = 測定されたコンベヤ高さ
AH = 駆動装置の床位置の入力後の駆動装置の算出高さ
V = 懸架比、1:1または2:1
n = ケーブルの数
sg = ケーブル比重(Kg/m)
g = 重力の加速度
mA = (FH - A)*sg*n
mB = (FH - AH)*sg*n
mC = (FH - AH)*sg*n
mD = A*sg*n
更に、本発明にかかる方法は、他の試験手順と組合せることができる。試験されるエレベータにおいて、かごは駆動プーリに架け渡されて案内される少なくとも1つのケーブルを介してカウンタウエイトに連結されており、エレベータの最小牽引容量を表す特性値を確認するために次の各ステップを行うことができる:
かごを第2の力測定装置上に載せること;
ケーブル滑りが発生するまでカウンタウエイトを上昇させる方向に駆動プーリを運転すること;
第2の力測定装置に作用する力を時間にわたり測定すること;および、
測定値から最小牽引容量を確認すること。
【0046】
上記の測定装置を使用して、提案される他の試験手順も容易で迅速に行うことができる。最小牽引容量T”は、次の公式により確認することができる:
【数4】
【0047】
ここで、
mGG = カウンタウエイトの質量
Fm" = ケーブル滑り時に測定された力
mFK = かごの質量
A = 昇降路窪み空間からかごの床までの測定された距離
FH = 測定されたコンベヤ高さ
AH = 駆動装置の床位置の入力後の駆動装置の算出高さ
V = 懸架比、1:1または2:1
n = ケーブルの数
sg = ケーブル比重(Kg/m)
g = 重力の加速度
mA = (FH - A)*sg*n
mB = (FH - AH)*sg*n
mC = (FH - AH)*sg*n
mD = A*sg*n.
かごの重量は、次の公式により確認することができる:
【数5】
【0048】
ここで、
g = 重力の加速度
Fm1 = 時刻 t1 に測定された力
s¨ = 時刻 t1 における減速度
mFK = かごの質量
また、かごの重量は、次の公式により確認することもできる:
【数6】
【0049】
ここで、
mFK = かごの質量
Fm1 = 時刻 t1 に力測定装置上で測定された第1力
Fm2 = 力測定装置上で測定された第2力
g = 重力の加速度
a1 = 時刻 t1 における減速度
更に、本発明によって提供される距離測定装置を使用し、カウンタウエイト側およびかご側のそれぞれの比例ケーブル重量を算出し、特性値を決定するときにそれらを考慮に入れることは、特に簡単で都合よく行えることである。
【0050】
また、本発明にかかる方法は、他の試験手順と組合せることができる。試験されるエレベータにおいて、かごは駆動プーリに架け渡されて案内される少なくとも1つのケーブルを介してカウンタウエイトに連結されており、緩衝物の特性曲線を測定するために、次のステップを行うことができる:
かごまたはカウンタウエイトを、それぞれの緩衝物上に受けられた力測定装置上で支持すること;
支持されるカウンタウエイトまたはかごに向かう方向に、ケーブル滑りが発生するまで駆動プーリを運転すること;
緩衝物上で支持されるカウンタウエイトまたはかごと固定測点間の距離を介して力測定装置に作用する力を測定すること;および、
測定値から緩衝物の特性曲線を確認すること。
【0051】
上記の測定装置を使用して、提案される他の試験手順も迅速で容易に行うことができる。他の試験手順は、無負荷のかごを使用して、都合よく行うこともできる。これにより、提案される方法を更に単純化し、増進することができる。
【0052】
本発明の他の態様によれば、エレベータの適正作動性を試験する装置が提供され、その装置は、かごが昇降路内で移動可能とされ、昇降路内の固定測点に対するかごの距離の変化を測定するために、光学距離測定装置が昇降路内に配置されることを特徴とする。
【0053】
提案される装置は、容易で迅速に作り出される場合がある。そのためには、例えば、距離測定装置を昇降路窪み空間の床上に置き、それをかご下面に対して一直線に整列させる必要があるだけである。ケーブルや駆動プーリ等に対するセンサの、時間のかかる、煩わしく複雑な取付けは、本発明にかかる装置では不要である。
【0054】
距離測定装置の有利な実施態様に関する本発明にかかる方法の前述の説明、特に光学距離センサの使用、および光学距離センサの実施態様、が参照される。そこで開示された距離測定装置の実施態様の特徴は、また本発明にかかる装置の実施態様の特徴をも構成する。
【0055】
本発明にかかる装置は、光学距離センサと記録された測定値を記録し分析するコンピュータとが、ケース内にキットのように収容または組合された測定装置を使用して、特に簡単に作り出すことができる。また、反射体と少なくとも1つの力測定装置とを、そのケース内に収容することができる。本発明にかかる装置を作り出すには、試験技師は、単に、ケースを昇降路窪み空間の床上に置き、磁気フィルム付きで提供可能な反射体をかご下面に取付け、そして例えば、かご下面に取り付けられた反射体に対して、ケース内に収容された光学距離センサを、そこから放射されるレーザビームによって整列させなければならないだけである。距離測定装置は、この目的のために、調整ユニットを備えることができる。それは、距離測定装置の下面に取り付けられた3つの支持体とすることができ、それらの長さは、例えば調整ねじのように、可変である。
【0056】
更に、緩衝物上に1以上の力測定装置を支持し、ケーブル接続を介してそれらを測定装置に接続することができる。続いて、試験技師は、かごの既定の移動シーケンスを開始することができる。測定装置を使用し、エレベータの適正作動性の試験に必要な全ての特性値を、記録される測定値から自動的または半自動的に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】測定装置を有するエレベータの第1の部分斜視図である。
図2】時間にわたり測定された距離、および測定された曲線の導関数である。
図3】エレベータおよび測定装置の第2の部分斜視図である。
図4】エレベータおよび測定装置の第3の部分斜視図である。
図5】時間にわたり測定された垂直距離、および測定された曲線の導関数である。
図6】力にわたり測定された距離である。
図7】ケーブル配置の略図である。
図8】試験手順の距離/時間グラフである。
図9図8による点M2における距離/時間グラフである。
図10図8による点M4における距離/時間グラフである。
図11】他の測定装置の断面図である。
図12図11の平面図である。
図13】送信レーザビームの追尾経路である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、エレベータの牽引容量を試験するための、本発明にかかる測定装置の概略部分斜視図である。図1において、多重ケーブル2は、駆動プーリ1に架け渡されて案内される。各ケーブル2は、一端がかご3に、他端がカウンタウエイト4に取り付けられる。駆動プーリ1を駆動し、制動する駆動・ブレーキ装置は、参照番号5により特定される。光学距離センサ7は、昇降路(ここではより詳細に示されない)の床6上に置かれる。距離を測定するためにそこから放射される送信光ビーム8は、例えばかご3の下面の反射体により反射され、光学距離センサ7の受信器により受信光ビームとして受信される。光学距離センサ7は、このように時間にわたり測定される距離値を記録するコンピュータ9に接続される。カウンタウエイト4の下方への移動を減衰させるための第1緩衝物は、参照番号10により特定される。第2緩衝物11は、かご3の下方への移動を減衰させるために使用される。第1緩衝物10と第2緩衝物11は、昇降路の床6上に支持される。第1の力測定装置12は第1緩衝物10上に配置され、第2の力測定装置13は第2緩衝物11上に配置される。力測定装置12、13は、代表的な力トランスデューサとすることができる。力測定装置12、13はコンピュータ9に接続可能である。コンピュータ9と光学距離センサ7は、昇降路の床6と、昇降路の床6に略平行に延びると同時に第1緩衝物10および第2緩衝物11の上部に載っている仮想面と、の間に位置する昇降路窪み空間内に配置される。
【0059】
図2は、コンピュータ9を使用して記録された時間にわたる光学距離センサ7とかご3間の距離の測定例、およびその時間に関する1次導関数−Vを示す。減速度aは、ブレーキ装置5のトリガー後の時間間隔t〜t内のグラフの1次導関数の傾斜から確認することができる。カウンタウエイト側の重力、即ちカウンタウエイト4の重力およびカウンタウエイト側に存在するケーブル2の比例重力と、かご側の重力、即ちかご3の重力およびかご側のケーブル2の比例重力とにおける、非常停止の場合の牽引容量Tを、ドイツ工業標準規格DIN EN 81−1に従い、次の公式により確認することができる:
【数2】
【0060】
ここで、
s¨ = 時刻 t に確認された減速度
A = 昇降路窪み空間からかごの床までの測定された距離
FH = 測定されたコンベヤ高さ
AH = 駆動装置の床位置の入力後の駆動装置の算出高さ
mFK = かごの質量
mGG = カウンタウエイトの質量
V = 懸架比、1:1または2:1
n = ケーブルの数
sg = ケーブル比重(Kg/m)
g = 重力の加速度
mA = (FH - A)*sg*n
mB = (FH - AH)*sg*n
mC = (FH - AH)*sg*n
mD = A*sg*n
図3は、測定装置を用いた過牽引容量の測定中のエレベータの部分斜視図である。この目的のために、カウンタウエイト4は、第1の力測定装置12を介して第1緩衝物10上に支持される。第1緩衝物10に作用する力は、第1の力測定装置12により時間にわたり測定される。同時に、光学距離センサ7を使用して、かご3の距離を力にわたり測定することができる。測定中、駆動プーリ1は、ケーブル滑りが発生するまで、かご3を上昇させる方向に回転される。いわゆる過牽引容量T2’/T1’は、ケーブル滑り時に第1の力測定装置12を使用して測定される力から、公式(2)により確認することができる。
【0061】
光学距離センサ7に対するかご3の距離は、カウンタウエイト4が第1緩衝物10上に載せられたときに、そしてまた駆動プーリ1がかご3を上昇させる方向に運転されたときに、変化する。第1緩衝物10の特性曲線は、力にわたり測定されたかご3の距離の変化の記録から確認することができる。
【0062】
図4は、エレベータおよび測定装置の第3の部分斜視図である。かご3のかご床下面は、ここでは第2緩衝物11上に収まった第2の力測定装置13上に置かれる。第2緩衝物11にかかる力は、第2の力測定装置13(ここでは見えない)を使用して測定される。また、かご床下面までの距離は、光学距離センサ7を使用して測定される。測定中、駆動プーリ1は、ケーブル滑りが発生するまで、カウンタウエイト4を上昇させる方向に運転される。
【0063】
最小牽引容量T2”/T1”は、ケーブル滑り時に第2の力測定装置13を使用して測定される力から、公式(3)により確認することができる。
【0064】
また、第2緩衝物11の特性曲線は、力にわたり測定されるかご3の距離の変化から確認することができる。
【0065】
図5は、コンピュータ9を使用して記録された光学距離センサ7とかご3間の時間にわたる距離の測定例、およびその時間による1次導関数−Vを示す。かご3の減速度s¨は、安全装置のトリガー後の時間間隔t〜t内のグラフの1次導関数の傾斜から確認することができる。かご側の所与の重力、即ちかご3と所与の公称負荷とにおいて、公称負荷が搭載されたかご3の自由落下における減速度Vfは、公式(1)により特性値として確認することができる。
【0066】
図6は、コンピュータ9を使用して記録された緩衝物の特性曲線の一例である。昇降路の床6に対するかご3の下面の距離の測定は、特にケーブル重量の考慮をも可能にする。
【0067】
図7は、ケーブル配置の略図である。ケーブル重量は、1:1または1:2で懸架されるエレベータに対し、公式(4)により考慮に入れることができる。光学距離センサ(7)からの全ての距離は、自動的に記録することができる。
【0068】
ケーブル重量mA,mB,mC,mDの自動算入のために必要なことは、ケーブル比重を入力することだけである。ケーブル比重は、ケーブル径毎にリストされた表から取得可能である。
【0069】
特に、送信光ビーム8と受信光ビーム間の位相シフトから昇降路窪み空間とかご3の下面間の距離の時間的変化を確認する光学距離センサ7を使用すると、エレベータの適正作動性の試験を、特に迅速に、かつ効率的で容易に行うことができる。光学距離センサ7を力測定装置12,13と組合せた場合、提案された方法の効率を更に高めることができる。
【0070】
それぞれ関係するケーブル重量は、経路測定を使用して自動的に確認することができる。ケーブルの数とケーブルの直径だけは、手動で入力する必要がある。
【0071】
半負荷等化は、第1の力測定装置12を有する第1緩衝物10上へカウンタウエイト4がブレーキ開放で降下させられるという点で、自動的に確認することができる。そのとき第1の力測定装置12は、以下を測定する:
【数7】
【0072】
【数8】
【0073】
半負荷等化の場合、測定値は指定された公称負荷の50%でなければならない。負荷等化は、パーセントでは:
【数9】
【0074】
ここで、
Fp = カウンタウエイトの緩衝物上で測定された力
Fm = ケーブル重量なしで緩衝物上で確認された力
mFK = かごの質量
mGG = カウンタウエイトの質量
La = パーセントで表した負荷等化
NL = かご内で指定された公称負荷
V = 懸架比、1:1または1:2
g = 重力の加速度
mA = (FH - A)*sg*n
mB = (FH - AH)*sg*n
mC = (FH - AH)*sg*n
mD = A*sg*n.
かごの重量は、次の方法により自動的に確認することができる:
方法1:
かご3を第2緩衝物11上へ移動させる、よって減速度> 1g となる。
【0075】
【数5】
【0076】
ここで、
g = 重力の加速度
Fm1 = 時刻 t1 に測定された力
s¨ = 時刻 t1 における減速度
mFk = かごの質量
方法2:
カウンタウエイト4は、第1緩衝物10の近くまで、例えばかご3が一番上の停止位置に移動されるまで、移動される。そして、駆動装置のブレーキが開放される。カウンタウエイト4は、第1緩衝物10上にある第1の力測定装置12により制動される。その結果、時刻tにおける減速度aが生じる。加えて、tにおいて、第1の力測定装置12上で発生する第1力Fm1が測定される。aの減速度< 1g の場合、次の方程式が適合する(単純化のため、ここでケーブル重量を無視、かつ1:1の懸架とする):
【数10】
【0077】
【数11】
【0078】
かご3が静止し、かつカウンタウエイト4が第1緩衝物10上の第1の力測定装置12上に載っている場合、第2力Fm2を測定することができ、そして次の方程式が適合する:
【数12】
【0079】
置換により、次の方程式となる:
【数6】
【0080】
ここで、
mGG = カウンタウエイトの質量
mFK = かごの質量
Fm1 = 時刻 t1 に力測定装置上で測定された第1力
Fm2 = 力測定装置上で測定された第2力
g = 重力の加速度
a1 = 時刻 t1 における減速度
減速度aはまた、測定された距離の時間による2次導関数により確認することができる。
【0081】
もちろん、上記の2方法は、カウンタウエイトを確認することもできる。例えばカウンタウエイト、かごの重量、比例ケーブル重量、速度およびコンベヤ高さ等の確認された値は、動的な牽引容量、かご3の負荷時の牽引容量、過牽引容量および緩衝物特性曲線の算出のために自動的に提供される。技術員は、もはや試験履歴記録帳内のデータを探す必要はない。
【0082】
図8〜10は、光学距離センサを有する距離測定装置を用いた試験エレベータについて得られた距離/時間グラフである。試験エレベータにおいて、かご3は、駆動プーリ1に架け渡されて案内される多重ケーブル2を介してカウンタウエイト4に連結されている。かご3は、安全装置を有する。駆動プーリ1を駆動する駆動装置は、ブレーキ装置を備える。かご下面に対する距離Aの変化は、光学距離センサを使用することで、時間分解により測定されている。測定値は、コンピュータ9に格納され、続いて分析されている。
【0083】
図8は、完全な試験手順の距離/時間グラフである。ここで、かご3は、最初にキャリブレーションの目的で第1の階S1から、次のより高い階S2,S3,S4へと移動させられている。ケーブル質量mA,mB,mC,mDは、このようにして確認することができる。点S5は、カウンタウエイトが対応する緩衝物上に載っている、いわゆる「オーバー・トラベル」を表している。
【0084】
ブレーキ装置は点M1ではずされ、安全装置は点M2でトリガーされている。ブレーキ装置は点M3で再びはずされ、そしてブレーキ装置は点M4で作動させられている。点S6で、かご3は、昇降路窪み空間内のこれに対応する緩衝物上に載っている。
【0085】
図9は、図8による距離/時間グラフの点M2領域をより高分解能で示す。更に、微分により得られる速度/時間曲線が算出され、また距離/時間曲線に対して示されている。およそ237.2秒時に観察されるかご3の距離の増加は、カウンタウエイト4の戻りに起因する。これは、カウンタウエイト4が、規則によれば、減速度s¨の測定に影響を有しないことを暗に示す。減速度Vfは、速度/時間グラフにおける本質的に直線となる領域の傾斜を確かめることにより確認することができる。
【0086】
図10は、図8による距離/時間グラフの点M4領域をより高分解能で示す。距離/時間曲線の1次導関数もここに示されている。ここで、速度/時間グラフの直線領域に図10中に示される正接Tgを適用するとともにその傾斜を確認することにより、点M4における減速度も決定することができる。牽引容量Tは、公式(2)により確認される減速度S2から確認することができる。
【0087】
図10および11は、他の測定装置を示す。光学距離センサ7は、支持板14上に取付けられる。光学距離センサ7は、レーザビーム8または光ビームを放射する送信器と、反射されたレーザビーム8’を受信する受信器とを備える。参照番号15は、かご3の下面に取付けられる反射板または箔を表わす。
【0088】
図11および12からわかるように、支持板14は直角三角形の形状を有する場合がある。支持板14は、三角形の角部においてベースプレート16に対して一定の距離で支持板14を保持する接合部17により、ベースプレート16に対して支持される。三角形の他の角部では、支持板14は、アクチュエータ18によりベースプレート16に対して支持される。各アクチュエータ18は、電動モータ19により駆動される場合がある。電動モータ19は、コンピュータ9である場合がある制御部により制御される。制御部は、光学距離センサ7の受信器から入力信号を受信する。
【0089】
ここで、他の測定装置の機能について、図13を参照して説明する。
【0090】
制御部またはコンピュータ9は、それぞれ、測定サイクル中、反射されたレーザビーム8’を受信器が受信するか否かを連続的に検出する。受信器が反射されたレーザビーム8’を検出しなくなるや否や、距離値を算出することはできなくなる。この時、反射板15を再び見つけるために、かご3の下面の所定の追尾経路を描くように送信レーザビーム8を移動させるアルゴリズムが開始される。
【0091】
アクチュエータ18の制御により、支持板14が傾けられ、それにより送信レーザビーム8はかご下面上の追尾経路を描くように移動させられる。かご下面上の送信レーザビーム8の追尾経路が常に同じであるように、アクチュエータ18の動作が制御される。これは、反射されたレーザビーム8’がもはや受信器により検出されなくなる直前に測定された距離値により、アクチュエータ18への制御信号を作り出すための値を補正することにより達成される。
【0092】
反射板15を追尾する第1段階では、図13からわかるように、送信レーザビーム8は、x,−x,yおよび−y方向に移動させられる。送信レーザビーム8が再び反射された場合は、送信レーザビーム8を反射板15の中心付近に配置するために、送信レーザビーム8はそれぞれの追尾方向に更に数センチメートル移動させられる。この移動中に、送信レーザビーム8が再び反射板15の外側に移動された場合には、第2段階において、送信レーザビーム8は、その直径が先の直線移動方向の一部となる円形状に移動させられる。その時再び反射が起きた場合は、反射板15の位置を算出できるとともに、送信レーザビーム8が反射板15で再び反射されるように調整できる。
【0093】
円の経路に沿った送信レーザビーム8の移動の間、反射が検出されなかった場合には、第3段階において、反射板15が見つかるまで、送信レーザビーム8は螺旋形状に移動させられる。次に、反射板15に対する送信レーザビーム8の新しい位置を精密に合わせるために第1および/または第2段階が行われる場合がある。
【0094】
提案された追尾方式は、その上に光学距離センサ7が取付けられた支持板14を傾斜させることに関して開示されたものであるが、送信レーザビーム8の追尾は、少なくとも1つの鏡の移動による等のように、他の技術により実施される場合もあると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0095】
1 駆動プーリ
2 ケーブル
3 かご
4 カウンタウエイト
5 駆動・ブレーキ装置
6 昇降路の床
7 光学距離センサ
8 送信光ビーム
8’ 反射されたレーザビーム
9 コンピュータ
10 第1緩衝物
11 第2緩衝物
12 第1の力測定装置
13 第2の力測定装置
14 支持板
15 反射板
16 ベースプレート
17 接合部
18 アクチュエータ
19 電動モータ
A 距離
S1,S2,S3,S4 階
Tg 正接
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13