特許第5972395号(P5972395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972395タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972395
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/20 20060101AFI20160804BHJP
   B21B 37/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B21B37/20 110B
   B21B37/20 120A
   B21B37/00BBM
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-549352(P2014-549352)
(86)(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公表番号】特表2015-503449(P2015-503449A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】CN2013075316
(87)【国際公開番号】WO2013174213
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】201210161787.0
(32)【優先日】2012年5月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】徐 江華
(72)【発明者】
【氏名】李 山青
(72)【発明者】
【氏名】黄 佩杰
(72)【発明者】
【氏名】姜 正連
(72)【発明者】
【氏名】王 康健
(72)【発明者】
【氏名】王 欣
(72)【発明者】
【氏名】李 紅梅
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−146414(JP,A)
【文献】 特開平06−114428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00−37/78
G05B 11/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法であって、

工程1:ストリップの変形抵抗の測定器として1つ以上のフレームを選択する工程であって、フレームSはストリップの変形抵抗の測定器でなければならず、Sの入口に厚さ計(1)を備える工程と;

工程2:供給された材料の変形抵抗の変動の値を計算する工程:ストリップの変形抵抗の測定器として選択されたフレームにロードセル(2)を備え、フレームSの変形抵抗の変動によって生じる圧延力の偏差ΔPを、ロードセル(2)を用いて測定し、次にフレームSに供給された材料の変形抵抗の変動の値Δkを、以下の式(1)に従って計算する工程と;

Δk=ΔP/Q (1)
ここで、QはフレームSの圧延力に対する変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。

工程3:各フレームに対するフィードフォワード調整量を計算する工程:各フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の選択に従って計算する工程であって;

サブ工程1):フレームSがストリップの変形抵抗の測定器として選択される場合、すなわち、フレームSにロードセル(2)が備わっている場合、フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(2)に従って計算すること;

Δy=(Δh×F)/Cpi (2)
ここでΔhは、厚さ計(1)により測定された、フレームS入口におけるストリップの厚さの偏差であり、フレームS入口に厚さ計(1)が備えられない場合、フレームSに対するフィードフォワード調整量は計算されず;
piはフレームSの長手方向の剛性であり;
は、フレームS入口におけるストリップの厚さの、フレームSの圧延力に対する影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。

サブ工程2):フレームSがストリップの変形抵抗の測定器として選択されない場合、すなわち、フレームSにロードセル(2)が備わっていない場合、このフレームの変形抵抗の変動の値は、前の最も近いフレームの変形抵抗の変動の値であり、すなわち、Δk=Δki−1であり、フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(3)に従って計算すること;を含むフィードフォワード厚さ制御方法。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cpi (3)
ここでΔhは、厚さ計(1)により測定された、フレームSの入口におけるストリップの厚さの偏差であり、フレームSの入口に厚さ計(1)が備えられない場合、Δh=0であり;
piは、フレームSの長手方向の剛性であり;
は、フレームSの入口におけるストリップの厚さの、フレームSの圧延力に対する影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
【請求項2】
工程3のサブ工程2)において、フレームSがストリップの変形抵抗の測定器として選択されない場合、すなわち、フレームSがロードセル(2)を備えないが、その入口に厚さ計(1)を備える場合、フレームのフィードフォワード調整量を計算する際、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する、変形抵抗の影響係数aが付加され、次にフレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(4)および(5)に従って計算することを特徴とする、請求項1に記載のタンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法。

Δy=(b×Δk×Q+Δh×F)/Cpi (4)
ここで、bはフレームSのフィードフォワード加重係数である。

=a×(Cpi/Q) (5)
ここで、aは、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する、フレームSの変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
【請求項3】
ストリップの変形抵抗の測定器としてフレームSおよびSを選択し、フレームSおよびSのそれぞれにロードセル(2)を備え、フレームSおよびSのそれぞれの入口に厚さ計(1)を備え;
フレームSに供給された材料の変形抵抗の変動を式(1):Δk=ΔP/Q、Δk=ΔP/Qに従って計算し;
最終的に、フレームS、SよびSのフィードフォワード調整量のそれぞれを以下のように計算すること;を特徴とする請求項1に記載のタンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法。

)フレームSのフィードフォワード調整量Δyを式(2)、Δy=(Δh×F)/Cp1、に従って計算する。

)フレームSのフィードフォワード調整量Δyを式(3)、Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp2、に従って計算し、ここで、Δk=Δkであり、Δhは、厚さ計(1)によって測定された、フレームSの入口におけるストリップの厚さの偏差である。

フレームSのフィードフォワード調整量Δyを式(3)、Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp3、に従って計算し、ここで、Δk=Δkであり、フレームSはその入口に厚さ計を備えていないので、Δh=0であり、従ってΔy=(Δk×Q)/Cp3である。

)フレームSはその入口に厚さ計を備えないので、フレームSのフィードフォワード調整量は計算されない。

フレームSのフィードフォワード調整量Δyを式(3)、Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp5、に従って計算し、ここで、Δk=Δkであり、Δhは厚さ計(1)によって測定された、フレームSの入口におけるストリップの厚さの偏差である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリップの冷間圧延の分野、とりわけタンデム冷間圧延機における厚さ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
厚さの精度は、冷間圧延ストリップにとっての最も重要な品質指標の1つである。自動車、航空機、家庭用品、精密機械、民間用の建築および食料缶のような産業の進歩および発達とともに、冷間圧延ストリップの厚さの精度については厳しい要件が存在する。
【0003】
タンデム冷間圧延機は、最も高度なオートメーションを備え、冶金産業における精度についての最も厳しい要件を満たす、最も複雑な設備の1つであり、ある程度において、鉄鋼業における技術開発の水準を表している。冷間圧延ストリップの最終製品の厚さの精度を確保するのに、タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御は、重要な役割を果たしている。供給された材料の厚さの偏差は、冷間圧延ストリップの最終製品の厚さの偏差に関して大きな影響を与える要因の1つであり、それ故に、タンデム冷間圧延機における従来の厚さのフィードフォワード制御は、フレームの前で直接的に測定された、供給された材料の厚さの偏差により行われる。
【0004】
熱間圧延プロセスの複雑さは、それ故に、供給された材料、すなわち熱間圧延製品の性能の変動(performance fluctuation)をもたらす可能性がある。その変動は、ある程度の規則性を示す。前記性能の変動を有するストリップの一部分がタンデム冷間圧延機のそれぞれのフレームに入る時、新しい厚さの偏差が生じる可能性がある。それ故に、ストリップに性能の変動がある場合における、厚さのフィードフォワード制御方法の研究をすることは、厚さの精度の制御を改善するのに非常に重要である。
【0005】
現在のタンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御では、フレームS、SおよびSの前に直接的に測定された供給された材料の厚さの偏差が、フィードフォワード制御に利用される。フィードフォワード制御に利用される調整機構は、フレームS、SおよびSの油圧式制御システムのそれぞれであり、その原理は図1に示される。フィードフォワード制御は主として、瞬時偏差を除去するのに利用され、すなわち、フレームの入口において供給された材料に大きな変化が起こる場合、フレームの油圧式制御システムはそれに応じて作動し始め、フレームを抜ける前に厚さの偏差を実質的に除去する。
【0006】
熱間圧延の複雑さだけでなく、冷間圧延製品の厚さの精度に対するユーザーからのより高度な要求に起因して、最終製品の厚さの偏差に対する、供給された材料の性能の変動の効果を考慮することが必要である。タンデム冷間圧延機より前の、供給された材料の性能の直接的な測定は、測定器を加える必要がある。しかし、現在の測定器は低い精度を有する。さらにこの方法は、機器の費用およびそれに応じる製造工程中の保守管理員を増加させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法を提供することであり、間接的に測定された供給された材料の変形抵抗力により、厚さのフィードフォワード制御を行う。当該方法は、冷間圧延工程の際の厚さ制御の正確さに対する、供給された熱間圧延製品の性能の変動による影響を防ぎ、スチールコイルの全体の長さ方向におけるストリップの最終製品の厚さの精度を保証し、ストリップの最終製品の厚さの変動を低減し、安定した圧延を確実にするのに有益な重要性がある。
【0008】
本発明の目的は、タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法が、以下の工程を含むように達成される。
【0009】
・工程1
ストリップの性能の仮想の(virtual)間接的な測定器として1つ以上のフレームを選択する工程であって、フレームSはストリップの性能の仮想の間接的な測定器でなければならず、Sの入口に厚さ計を備えている工程。
【0010】
・工程2
供給された材料の変形抵抗の変動の値を計算する工程、すなわち、
ストリップの性能の間接的な測定器として選択されたフレームにロードセルを備える工程と、
フレームSの変形抵抗の変動によって生じる圧延力の偏差ΔPを、ロードセルを用いて測定する工程と、
次にフレームSに供給された材料の変形抵抗の変動の値Δkを、以下の式(1)に従って計算する工程。

Δk=ΔP/Q (1)
ここで、Qは、フレームSの圧延力に対する変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
【0011】
・工程3
各フレームに対するフィードフォワード調整量を計算する工程、すなわち、各フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の選択に従って計算する工程である。

1)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択される場合、すなわち、フレームSにロードセルが備わっている場合に、フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(2)に従って計算すること。

Δy=(Δh×F)/Cpi (2)
ここで、Δhは、フレームS入口における、厚さ計により測定されたストリップの厚さの偏差である。フレームS入口に厚さ計が備えられない場合、フレームSに対するフィードフォワード調整量は計算されない。CpiはフレームSの長手方向の剛性である。Fは、フレームSの圧延力に対する、フレームS入口におけるストリップの厚さの影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。

2)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、フレームSにロードセルが備わっていない場合、このフレームの変形抵抗の変動の値は、前の(previous)最も近いフレームの変形抵抗の変動の値であり、すなわち、Δk=Δki−1であり、フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(3)に従って計算すること。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cpi (3)
ここで、Δhは、厚さ計により測定された、フレームSの入口におけるストリップの厚さの偏差である。フレームSの入口に厚さ計が備えられない場合、Δh=0である。Cpiは、フレームSの長手方向の剛性である。Fは、フレームSの圧延力に対する、フレームSの入口におけるストリップの厚さの影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
【0012】
工程3のサブ工程2)において、フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、フレームSがロードセルを備えないが、その入口に厚さ計(1)を備える場合、フレームのフィードフォワード調整量を計算する際、厚さのフィードフォワードパラメータ補償(compensation)に対する、変形抵抗の影響係数aが付加されてもよく、各フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(4)および式(5)に従って計算する。

Δy=(b×Δk×Q+Δh×F)/Cpi (4)
ここで、bは、フレームSの性能のフィードフォワード加重係数である。

=a×(Cpi/Q) (5)
ここで、aは、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する、フレームSの変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
【0013】
ストリップの性能の仮想の間接的な測定器としてフレームSおよびSを選択し、フレームSおよびSのそれぞれにロードセルを備え、フレームS、SおよびSのそれぞれの入口に厚さ計を備え、
フレームSの供給された材料の変形抵抗の変動を式(1)、すなわち、Δk=ΔP/Q、Δk=ΔP/Qに従って計算し、
最終的には、フレームS、S、S、SおよびSのフィードフォワード調整量のそれぞれを以下のように計算する。

1)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択される場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを式(2)、すなわち、Δy=(Δh×F)/Cp1、に従って計算する。

2)フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δkである場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを式(3)、すなわち、Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp2、に従って計算する。ここで、Δhは、厚さ計によって測定された、フレームSの入口におけるストリップの厚さの偏差である。

3)フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δkである場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを式(3)、すなわち、Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp3、に従って計算する。ここで、フレームSはその入口に厚さ計を備えていないので、Δh=0であり、従ってΔy=(Δk×Q)/Cp3である。

4)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択される場合、フレームSはその入口に厚さ計を備えないので、フレームSのフィードフォワード調整量は計算されない。

5)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δkである場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを式(3)、すなわち、Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp5、に従って計算する。ここで、Δhは、厚さ計によって測定された、フレームSの入口におけるストリップの厚さの偏差である。
【0014】
本発明では、タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法が、間接的に測定された供給された材料の変形抵抗力を介して、フィードフォワード厚さ制御を行い、選択されたフレームを介して供給されたストリップの各部分の変形抵抗力の測定を行い、下流方向にあるフレームにおいてストリップが圧延される際、供給された材料の厚さおよび変形抵抗を総合的に考慮して、ストリップの厚さを制御する。当該方法は、冷間圧延工程の際の厚さの精度に対する、供給された熱間圧延製品の性能の変動による影響を防ぎ、かつ厚さ制御の精度を改善する。これは、スチールコイル全体の長手方向のストリップの最終製品の厚さの精度を確実にし、ストリップの最終製品の厚さの変動を低減させ、安定した圧延を確実にするのに有益な重要性がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、先行技術におけるタンデム冷間圧延機の厚さのフィードフォワード制御方法のブロックフローチャートである。
図2図2は、本発明のタンデム冷間圧延機における、厚さのフィードフォワード制御方法の第1の実施形態のブロックフローチャートである。
図3図3は、本発明のタンデム冷間圧延機における、厚さのフィードフォワード制御方法の第2の実施形態のブロックフローチャートである。
図4図4は、本発明のタンデム冷間圧延機における、厚さのフィードフォワード制御方法の第3の実施形態のブロックフローチャートである。
図5図5は、本発明のタンデム冷間圧延機における、厚さのフィードフォワード制御方法の第4の実施形態のブロックフローチャートである。 図面において、符号1は厚さ計を表し、符号2は圧力測定器を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明を、詳細な実施形態と併せて、以下に詳述する。これらの実施形態は、本発明を説明するためにのみ用いられ、その請求の範囲を限定するために用いられるものではないことを理解されたい。さらに、本発明の詳細な説明を検討するのに際し、当業者は本発明に対して任意の変更または改良を行うことが出来、これらの同等のものは、本願に添付した特許請求の範囲によって規定される範囲内に、同様に入ることを理解されたい。
【0017】
・第1の実施形態
タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法は、以下の工程を含む。
【0018】
・工程1
ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として1つ以上のフレームを選択する工程であって、フレームSはストリップの性能の仮想の間接的な測定器でなければならず、Sの入口に厚さ計1を備える工程。
【0019】
・工程2
供給された材料の変形抵抗の変動の値を計算する工程、すなわち、
ストリップの性能の間接的な測定器として選択されたフレームにロードセル2を備える工程と、
フレームSの変形抵抗の変動により生じる圧延力の偏差ΔPを、ロードセル2を用いて測定する工程と、
次にフレームSに供給された材料の変形抵抗の変動の値Δkを、以下の式(1)に従って計算する工程。

Δk=ΔP/Q (1)
ここで、Qは、フレームSの圧延力に対する変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
【0020】
・工程3
各フレームに対する、フィードフォワード調整量を計算する工程、すなわち、各フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の選択に従って計算する工程である。

1)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択される場合、すなわち、フレームSにロードセル2が備わっている場合に、フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(2)に従って計算すること。

Δy=(Δh×F)/Cpi (2)
ここで、Δhは、厚さ計1により測定された、フレームS入口におけるストリップの厚さの偏差である。フレームS入口に厚さ計1が備えられない場合、フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyは計算されない。Cpiは、フレームSの長手方向の剛性である。Fは、フレームSの圧延力に対する、フレームS入口におけるストリップの厚さの影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。

2)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、フレームSにロードセル2が備わっていない場合、このフレームの変形抵抗の変動の値は、前の最も近いフレームの変形抵抗の変動の値であり、すなわち、Δk=Δki−1であり、フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(3)に従って計算すること。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cpi (3)
ここで、Δhは、厚さ計1により測定された、フレームSの入口におけるストリップの厚さの偏差である。フレームSの入口に厚さ計1が備えられない場合、Δh=0である。Cpiは、フレームSの長手方向の剛性である。Fは、フレームSの圧延力に対する、フレームSの入口におけるストリップの厚さの影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
【0021】
本発明のタンデム冷間圧延機の厚さに対するフィードフォワード制御方法において、ストリップの厚さ制御の精度をさらに改善するように、
工程3のサブ工程2)において、フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、フレームSがロードセル2を備えないが、その入口に厚さ計1を備える場合、フレームのフィードフォワード調整量を計算する際、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する、変形抵抗の影響係数aが付加されてもよく、各フレームSに対するフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(4)および式(5)に従って計算する。

Δy=(b×Δk×Q+Δh×F)/Cpi (4)
ここで、bは、フレームSの性能に対するフィードフォワード加重係数である。

=a×(Cpi/Q) (5)
ここで、aは、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する、フレームSの変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
【0022】
図2に示すように、当該実施形態は、5つのフレームを有する6つのローラーの圧延機の厚さ制御システムを介した、厚さのフィードフォワード制御方法を示している。工業用途において、PLCコントローラーが動作している時は、システムはプログラム実行領域(area)とデータ保存領域に分けられる。厚さ制御アルゴリズムに関するパラメータとストリップの情報テーブルは、データ保存領域に保存される。フレームS〜Sのフィードフォワード制御の出力のために、フレームSをストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択し、フレームSにロードセル2を備え、フレームS、SおよびSのそれぞれの入口に厚さ計1を備え、
フレームSの供給された材料の変形抵抗の変動を、式(1)、すなわち、Δk=ΔP/Qに従って計算し、フレームS〜Sのフィードフォワード調整量を以下のように計算する。

1)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択される場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(2)に従って計算する。

Δy=(Δh×F)/Cp1

2)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δkである場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(3)に従って計算する。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp2

3)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δkである場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを以下の式(3)に従って計算する。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp3
ここで、フレームSはその入口に厚さ計を備えていないので、Δh=0であり、従って、Δy=(Δk×Q)/Cp3である。

4)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δkである場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(3)に従って計算する。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp4
ここで、フレームSはその入口に厚さ計を備えていないので、Δh=0であり、従ってΔy=(Δk×Q)/Cp4である。

5)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δkである場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを以下の式(3)に従って計算する。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp5
【0023】
・第2の実施形態
タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法が図3に示され、第2の実施形態と第1の実施形態との差異は、実施形態2では、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器としてフレームSとSを選択し、フレームSとSのそれぞれにロードセル2を備え、フレームS、SおよびSのそれぞれの入口に厚さ計1を備え、フレームSの供給された材料の変形抵抗の変動を式(1)、すなわち、Δk=ΔP/Q、Δk=ΔP/Q、に従って計算し、最終的に、フレームS、S、S、SおよびSのフィードフォワード調整量のそれぞれを以下のように計算することである。

1)フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択される場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを式(2)、Δy=(Δh×F)/Cp1、に従って計算する。

2)フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δk、である場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(3)に従って計算する。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp2
ここで、Δhは、厚さ計1によって測定された、フレームSの入口におけるストリップの厚さの偏差である。

3)フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δkである場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(3)に従って計算する。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp3
ここで、フレームSはその入口に厚さ計を設けられないので、Δh=0であり、従ってΔy=(Δk×Q)/Cp3である。

4)フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択される場合、フレームSはその入口に厚さ計を設けられないので、フレームSのフィードフォワード調整量は計算されない。

5)フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されない場合、すなわち、Δk=Δkである場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(3)に従って計算する。

Δy=(Δk×Q+Δh×F)/Cp5
ここで、Δhは、厚さ計1によって測定された、フレームSの入口におけるストリップの厚さの偏差である。
【0024】
・第3の実施形態
タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法が図4に示される。第3の実施形態と第1の実施形態との差異は、第3の実施形態では、フレームのフィードフォワード調整量を計算する際、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する変形抵抗の影響係数が付加されることである。

1)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されず、厚さ計1がフレームSの入口において構成される場合、すなわち、Δk=Δk、である場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(4)および(5)に従って計算する。

Δy=(b×Δk×Q+Δh×F)/Cp2
ここでbは、フレームSの性能のフィードフォワード加重係数、すなわち、

=a×(Cp2/Q
であり、ここでaは、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する、フレームSの変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。

2)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されず、厚さ計1がフレームSの入口において構成される場合、すなわち、Δk=Δk、である場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(4)に従って計算する。

Δy=(b×Δk×Q+Δh×F)/Cp5
ここでbは、フレームSの性能のフィードフォワード加重係数、すなわち、

=a×(Cp5/Q
であり、ここでaは、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する、フレームSの変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
【0025】
・第4の実施形態
タンデム冷間圧延機における厚さのフィードフォワード制御方法が図5に示される。第4の実施形態と第2の実施形態との差異は、第4の実施形態では、フレームのフィードフォワード調整量を計算する際、厚さのフィードフォワードのパラメータ補償に対する変形抵抗の影響係数が付加されることである。

1)フレームSが、ストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されず、すなわち、Δk=Δk、であり、厚さ計1がフレームSの入口において構成される場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(4)に従って計算する。

Δy=(b×Δk×Q+Δh×F)/Cp2
ここでbは、フレームSの性能のフィードフォワード加重係数、すなわち、

=a×(Cp2/Q
であり、ここでaは、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する、フレームSの変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。

2)フレームSがストリップの性能の仮想の間接的な測定器として選択されず、すなわち、Δk=Δk、であり、厚さ計1がフレームSの入口において構成される場合、フレームSのフィードフォワード調整量Δyを、以下の式(4)に従って計算する。

Δy=(b×Δk×Q+Δh×F)/Cp5
ここで、bは、フレームSの性能のフィードフォワード加重係数、すなわち、

=a×(Cp5/Q
であり、ここでaは、厚さのフィードフォワードパラメータ補償に対する、フレームSの変形抵抗の影響係数であり、実験によって得られる実験係数である。
図1
図2
図3
図4
図5