特許第5972403号(P5972403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972403TDMおよびWDMベースのFBGセンサアレイシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972403
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】TDMおよびWDMベースのFBGセンサアレイシステム
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/32 20060101AFI20160804BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G01K11/32 D
   G01B11/06 G
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-560127(P2014-560127)
(86)(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公表番号】特表2015-508907(P2015-508907A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2013028871
(87)【国際公開番号】WO2013131085
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】61/605,902
(32)【優先日】2012年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】オランド,ウィリアム,アール.
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヤオウェン
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン,ジェフリー,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】サン,インシ
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ベンユアン
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−508535(JP,A)
【文献】 特開2007−139482(JP,A)
【文献】 特開2010−054366(JP,A)
【文献】 特開2005−030890(JP,A)
【文献】 特表2001−516011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 11/32
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された波長範囲をカバーする光を放射するための光源と、前記放射された光を増幅するための希土類がドープされたファイバ増幅器と、一連の光パルスを生成するために前記放射された光を変調するための変調器とを有する入力生成器と;
入力として前記一連の光パルスを受け、かつ光の経路に沿って位置付けられるセンサ回折格子のアレイを経て前記光パルスを伝送するために前記入力生成器に結合されるセンサ段であって、前記センサアレイを経るパルスの伝播が時間領域多重化された出力をもたらし、前記時間領域多重化された出力がそれぞれの出力パルスが前記センサアレイのそれぞれの回折格子における前記入力パルスの反射からなる一連の出力パルスからなり、前記センサアレイへの入力、および前記センサアレイから出る前記時間領域多重化された出力の両方を増幅するためのラマン増幅手段を有するセンサ段と;
前記センサアレイからの出力を検知し、かつ前記センサアレイのそれぞれの回折格子の波長出力を再構成するための出力処理段と;
前記システム段を動作させるための制御モジュールと
を有し、
前記センサアレイが、2つ以上の群に属する回折格子を有し、前記センサアレイの出力が時間および波長領域の両方において多重化されるようにそれぞれの群がそれぞれのブラッグ波長により特徴づけられ、
同一の波長を有する少なくともいくつかの回折格子の間の間隔が隣接する検知点の間の必要とされる間隔を上回ることができるように、異なる群の個々の回折格子が重なり合う構成に配列される、
光ファイバセンサシステム。
【請求項2】
前記センサ段がさらに、前記センサアレイのそれぞれの回折格子の出力を再構成するときの基準時間として前記制御モジュールによる使用のための時間基準信号を提供するように構成される前記センサアレイの上流に接続される時間基準回折格子を有する、請求項1に記載の光ファイバシステム。
【請求項3】
前記センサ段が、前記センサアレイの出力を較正するために前記時間基準回折格子と前記センサアレイとの間に接続される波長基準デバイスを有する、請求項2に記載の光ファイバシステム。
【請求項4】
前記波長基準デバイスが、異なる波長を有する複数の温度安定化された回折格子を有し、前記センサ回折格子の波長範囲をカバーする、請求項3に記載の光ファイバシステム。
【請求項5】
前記出力処理段が、前記センサ段からの前記出力の波長成分を広げて離すための波長拡張手段と、波長拡張後の前記出力をデジタル化するための検知器とを有する、請求項1に記載の光ファイバシステム。
【請求項6】
前記出力処理段が、前記センサ出力のために波長データを正確に導き出すための較正されたスキャン台をさらに含む、請求項に記載の光ファイバシステム。
【請求項7】
前記光源が調整可能なレーザからなり、前記出力処理段が、前記調整可能なレーザの瞬間的な波長に関連する前記センサ出力からの波長データを導き出すように構成される、請求項1に記載の光ファイバシステム。
【請求項8】
前記光源が、波長可変レーザからなり、前記入力生成段が、前記センサアレイ出力からの波長データを導き出す出力処理段による使用のために前記波長可変レーザの前記瞬間的な波長を測定するための波長測定モジュールを有する、請求項1に記載の光ファイバシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、本出願の譲受人によって保有される以下の米国仮特許出願の優先権の利益を主張し、そのすべてが参照によって本明細書に組み込まれる。
2012年3月2日に出願された、米国仮特許出願第.61/605,902号
【0002】
本発明は、一般に光ファイバの分野に関し、具体的にはFBGセンサアレイシステムに基づく改良された時間領域多重方式(Time Domain Multiplexing、TDM)、および波長分割多重方式(Wavelength Division Multiplexing、WDM)に関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な光ファイバセンサは、それぞれの検知点に配され、それぞれが温度および/または歪の変化に応じて変化するそれぞれの光出力を生じるように、検知要素のアレイを有することができる。光ファイバセンサの一般的なタイプのひとつは、検知要素としてファイバブラッグ回折格子(FBG)を用いる。FBGは、温度および/または歪の変化に応じてシフトする既知の波長(すなわち、“ブラッグ波長”)で光を反射するファイバ内光デバイスである。FBGセンサシステムにおいては、広帯域入力レーザビームがFBGアレイに結合される。次いで、センサアレイの出力(すなわち、FBGから後方に反射される光)は出力処理段に結合され、それは正確な測定データを導き出すためにセンサ出力を用いる。
【0004】
検知要素としてFBGを用いることのひとつの特筆すべき利点は、それらがそれ自身を多重化することに役立つということである。センサアレイの全てのFBGからの出力は、単一の光ファイバ経路を経て出力処理段に伝送されうる。次いで、出力処理段は、センサアレイにおけるそれぞれ個々のFBGの出力を再構成する。次いで、それぞれの回折格子の波長変化が温度および/または歪など、測定される物理的なパラメータを計算するために使われる。出力データは異なる方法で多重化することができる。
【0005】
波長分割多重方式(WDM)は、波長領域において光信号を多重化するために用いることができる。WDMベースのセンサシステムにおいては、FBGセンサアレイは、それぞれ個々のFBGが固有の重複がない波長範囲内の出力を提供するように構成される。したがって、多重信号に対するそれぞれのFBGのそれぞれの寄与は、波長によって特定可能である。WDMベースの設計は、数多くの理由によって幅広く用いられ、それは技術が十分に確立され、複雑でなく、実施することが容易であるという事実を含む。
【0006】
それに対して、時間領域多重方式(TDM)技術は、時間領域で光信号を多重化するために用いることができる。TDMベースのセンサシステムにおいては、センサアレイへの入力は、一連の不連続なパルスから構成される。アレイ内の個々のFBGは、入力パルスに対するそれぞれ連続するFBGの応答が、入力パルスの持続時間よりも長い時間の持続時間だけ遅れるように、離れて間隔をあけられる。したがって、入力パルスがセンサアレイを経て伝播するときに、一連のパルスからなる出力信号が生成され、(一連のパルスの)それぞれは、個々のFBGによる入力パルスの部分的な反射によって生成される。次いで、出力処理段は、センサアレイのどのFBGがその特定のパルスの源であったかを決定するために出力パルスの到着時間を用いることができる。
【0007】
従来型の多重化技術は、今日の求められる用途の大部分に対して不十分になっている。土木工学など、いくつかの分野において、その用途は、長い長い距離にわたって検知点の数を増やすことを求めている。例えば、土木工学用途は、10km径間にわたって数千の検知点を求めることがある。
【0008】
従来型のWDMベースのセンサシステムは、そのような多数の検知点を提供することは不可能である。上で説明したように、WDMベースのセンサは、センサアレイのそれぞれ個々のFBGが固有の、重複しない波長範囲で動作することを必要とする。したがって、数千の検知点を求める用途は、現行のシステムの最大容量を超える波長範囲を必要とするであろう。
【0009】
従来型のTDMベースのシステムもまた問題があるが、異なる理由による。上述したように、TDMベースのシステムにおいて、個々のFBG出力は、それらに波長によってよりも、それらの到着時間によって特定される。したがって、波長範囲は問題ではない。しかし、数千のセンサ回折格子を有するセンサシステムにおいては、出力処理段は、10Hzのオーダー、またはより速い周波数を有する受信したセンサ出力からセンサアレイ内のそれぞれのFBGに対応する短パルス、および波長を確実に、かつ正確に再構成できなければならない。したがって、そのような要求に対応可能であるセンサおよび/またはセンサシステムを有することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点は、TDMおよびWDMベースのセンサアレイシステムに向けられ、それにおいて、光源は選択された波長範囲をカバーする光を放射する。光は増幅され、次いでセンサ回折格子のアレイ内に入力される一連のパルスを生成するために用いられる。センサアレイを経るパルスの伝播は、それぞれの出力パルスがセンサアレイの個々の回折格子における入力パルスの反射からなる一連の出力パルスからなる時間領域多重化出力をもたらす。ラマン増幅が、センサアレイへのパルス入力、およびセンサアレイからの時間領域多重化出力の両方を増幅するために用いられる。次いで、TDM出力が、センサ出力を受け、かつセンサアレイのそれぞれの回折格子の波長出力を再構成するために出力処理段に結合される。次いで、それぞれの回折格子についての波長変化が、温度および/または歪などの、測定されるべき物理的なパラメータを計算するために用いられる。
【0011】
本発明の更なる観点により、センサアレイは、二つまたはそれ以上の群に属する回折格子を有し、それぞれの群は、センサアレイの出力が時間および波長領域の両方で多重化されるようにそれぞれのブラッグ波長により特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、従来技術によるTDMベースの(光学)監視(interrogation)システムを図解する図である。
図2図2は、センサアレイにおけるそれぞれのFBGに対する回折格子の反射の計算を図解する図である。
図3図3は、図2に図解する計算の結果をまとめた表である。
図4図4は、本発明の観点による例示的な光ファイバセンサシステムの図である。
図5図5は、本発明の観点による例示的な光ファイバセンサシステムの図である。
図6図6は、本発明の観点による例示的な光ファイバセンサシステムの図である。
図7図7は、本発明の観点による例示的な光ファイバセンサシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、数万または数十万の検知点を有する、正確な歪および/または温度測定のための堅牢なTDMおよびWDMベースのFBGセンサアレイシステムに向けられている。
【0014】
図1は、従来技術によるTDMベースの(光学)監視システム10を図解する図であって、本議論のための背景を提供するために大まかに記述されている。システム10は、入力生成段11、センサ段12、および出力処理段13の3つの段を有している。3つの段は光サーキュレータ14によって共に接続され、第1段11によって生成される入力光を第2段12に結合し、第2段12からのセンサ出力を第3段13に結合する。
【0015】
入力生成段11は、光パルス生成器112によって一連のパルスに変換される広帯域レーザ光を放射するレーザ源111を有している。次いで、生成されたパルスは、サーキュレータ14を経てセンサ段12に結合される。
【0016】
センサ段12は、光ファイバ122内に書き込まれるセンサ回折格子121のアレイを有している。センサ回折格子121は、入力パルスがセンサアレイを経て進行するとき、個々のパルスの連続した繋がり(chain)からなる出力信号が生成されるように離れて間隔をあけられる。それぞれの出力パルスは、それぞれのセンサ回折格子による入力パルスの部分的な反射からなる。出力パルスは、サーキュレータ14に向かって後方に進行し、サーキュレータ14は出力信号を出力処理段13に結合する。
【0017】
出力処理段13は、線形光フィルタ131、高速度検知器132、および出力信号から波長データを導き出すための関連する電子機器133を有している。線形光フィルタ131の目的は、センサアレイのそれぞれの回折格子における波長のシフトを光パワーの変化に変換することである。フィルタ131については、それへの入力が一定の振幅であるが、変化する波長を有するのであれば、伝送振幅と波長との間の関係は線形である。したがって、生成される出力信号のそれぞれのパルスは、較正を経てそれぞれの波長に関連付けができる固有の振幅を有している。
【0018】
光源におけるどのような振幅の変動であっても測定の誤差を引き起こすので、システム10は時間および波長に関して両方とも振幅変動のない広帯域光源111を必要とすることがわかる。さらに、例えばファイバの曲げなど、他の外部要因によるリンクの挿入損失の変動の結果として生じ得る振幅の変動もまた測定の誤差を生じるであろう。
【0019】
多数の回折格子を備えるセンサアレイの挙動をよりよく理解するために一連の計算が実行された。
【0020】
図2は、個々の回折格子21のすべてが同一のブラッグ波長、同一の反射係数r、および同一の伝送係数tを備えるセンサアレイ20それぞれのFBGについて回折格子の反射を計算する方法を図解する図である。この場合、所与のセンサ回折格子に対する反射光の量tは以下の式に等しい。
2(i−1)
【0021】
図3は、0.002から0.0001の範囲にわたる回折格子の反射率、0.998から0.9999の範囲にわたる伝送定数、および300から5,000の範囲にわたる回折格子の数iについての計算結果をまとめた表30を示す。同一の波長を有する1,000個の回折格子について、0dBの入力、回折格子の反射率0.005、かつ伝送定数0.9995と仮定すると、センサアレイの最後の回折格子からの信号(すなわち、入力点に到達する最後のパルス)はおおよそ−37.3dBであることがわかる。同一の波長を有する5,000個の回折格子について、0dBの入力、回折格子の反射率0.0001、かつ伝送定数0.9999と仮定すると、センサアレイの最後の回折格子からの信号はおおよそ−45dBである。したがって、表30に説明される反射率の計算結果は、注意深く増幅の仕組みを設計し、適切な検知器、および電子装置を選択し、いくつかのノイズ低減アルゴリズムを組み立てることによって1,000個の個々のFBGからなるアレイにおける反射が弱い回折格子からの信号を良好な光信号対ノイズ比(OSNR)で、かつ5,000個の回折格子からなるアレイにおいてさえもおそらく検知することが可能であるということを示唆している。
【0022】
本発明の更なる観点により、センサアレイのFBGの数を増やすために、WDMはTDMと連結して用いられる。二つの群の波長が重なり合わない限り、第一の群の回折格子の波長と異なる波長を備える1,000、または5,000の追加の回折格子の第二の群を追加することが可能である。反射率は波長依存性であるので、一つの群の回折格子が他の群の回折格子への光入力に著しい影響を及ぼすことはないであろう。
【0023】
波長を規定された複数の回折格子の群を有するセンサアレイは、数多くの異なる方法で構成することができることが注目される。例えば、群は、重なり合わない並び順で配列することができる。その代わりに、異なる群の個々の回折格子は、交互に並ぶパターンで、または他のある種類の重なり合う構成で配列することができる。このような方法で、同一の波長を有する少なくともいくつかの隣接する回折格子の間の間隔は、隣接する検知点の間で必要とされる間隔を超えることができる。すると、この増加する間隔が、より広い入力パルスの使用を可能とし、したがってシステムの電子機器への負担を軽減する。
【0024】
したがって、本発明による光ファイバシステムにおいて、回折格子の数は数1,000まで拡張することができる。特定の用途が第一および第二の群とは異なる更なる波長での追加の回折格子の使用を許容するなら、検知点の数は数万または数十万にまで拡張できる可能性を秘めているであろう。
【0025】
図4、5、および6は、堅牢かつ正確な性能を保持しながら、大量のセンサ回折格子(すなわち、数100、数1,000、およびそれ以上)に対応が可能である本発明による例示的なシステム40、50、60の図である。これらのシステムの根底にあるアルゴリズムは、入力生成段のそれぞれのタイプの光源に基づいており、増幅された自然放出(ASE)源(図4)、調整可能なレーザ(tunable laser)(図5)、および波長可変レーザ(swept laser)(図6)である。3つのシステムのすべては、多数の検知FBG点を達成するためにラマン増幅方式と連結されるエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)を採用する。同じ目標を達成するために、異なる信号の場所において他の増幅方式または増幅を用いることができる。
【0026】
図4は、本発明の一観点によるASE光源ベースのシステム40の図を示す。システム40は、入力生成段41、センサ段42、および出力処理段43の3つの段を有している。3つの段は、処理ユニットおよび制御関連の電子機器を含む制御モジュール44によって動作させられる。3つの段は、光サーキュレータ45を用いて共に接続される。入力生成段41からの光はセンサ段42に結合される。センサ段42の光出力は出力処理段43に結合される。
【0027】
入力生成段41は、広帯域増幅された自然放出(ASE)光源411を有している。ASE411により放出された光は、帯域フィルタ412およびインライン偏光子413によってフィルタされ、次いで偏光保持エルビウムドープファイバ増幅器(PM−EDFA)414または他の希土類ドープファイバ増幅器によって増幅される。次いで、サーキュレータ45を用いてセンサ段42に結合される一連の光パルスを生成するために、電気―光変調器(EOM)415が増幅されたASE光を変調する。
【0028】
センサ段42は、単一の光ファイバ経路422の長さ方向に沿って指定された位置の数100(または、数1,000)の個々のFBGからなるセンサアレイ421を有している。センサアレイ421の隣接する回折格子の間の間隔は、それぞれ個々の回折格子のそれぞれの出力の間であらかじめ定められた量の遅延となるように構成される。入力生成段で生成されるパルスは、この出力の遅延よりも短い持続時間を備えるように構成され、かつパルスの周期は、最後の回折格子が光を反射する(ための)時間によって決定される。したがって、センサアレイを経る入力パルスの伝播は一連のパルスからなる出力をもたらし、それぞれのパルスは回折格子のブラッグ波長でそれぞれ個々の回折格子により、入力パルスの部分的な反射によって生成される。
【0029】
反射が弱い広帯域回折格子423が、センサアレイ421の上流のセンサ段光経路に沿って配される。広帯域回折格子423から後方に反射される光は、出力データの流れの中のそれぞれのパルスの到着時間を確定するために用いられる基準となる時間基準を提供するために用いられる。センサアレイが2つまたはそれ以上の波長が規定されたセンサ回折格子の群を含むように構成されるならば、この時間基準となる回折格子はセンサ回折格子の全ての群をカバーするように設計することができる。
【0030】
ラマンポンプ424および波長分割多重器(WDM)425は、回折格子アレイの中に導入される光、およびセンサアレイによって後方に反射される光に対して、平坦で低雑音のラマン増幅を提供する。ここにラマン増幅を用いることは、(1)低デューティサイクル光パルス信号の改善された増幅、(2)双方向であり、したがって、前方向および後方向への信号の両方が増幅される、(3)検知ファイバそのものがラマン増幅処理の一部であり得るという利点を含む多くの利点を備える。入力光を増幅するためのPM−EDFA414、およびセンサアレイの入力および出力を増幅するためのラマン増幅を結合した使い方によって、センサ回折格子の数が数100、数1,000、またはもっと多い場合であっても、センサアレイ421から良好な光信号対雑音比を得ることが可能である。さらに、特定の用途の必要性に応じて、追加のラマン増幅を提供するためにセンサファイバの経路422の一部または全長についてラマン活性ファイバを用いることが可能であろう。センサ出力はサーキュレータ45に供給され、サーキュレータ45は出力を出力処理段43に結合する。
【0031】
出力処理段43は、センサアレイ421のそれぞれの回折格子の波長の堅牢で正確な測定を提供する検知の仕組みを有している。センサ出力は最初に波長の拡張を受け、それは出力パルスの繋がりをブレーズド回折格子431に、かつプリズム組立体432を通して送ることによって達成される。技術的に知られた他の方法が検知の前に光を拡張するために用いることが出来るであろうことが注目される。述べられたシステムの主たる利点は、堅牢で費用がかからないということである。
【0032】
次いで、波長を拡張されたパルスは、スキャン台434に取り付けられ、データ取得モジュール435に接続される光検知器433に入力される。スキャン台は、スキャン台の上における拡張されたパルスの位置決めから、および適切なアナログからデジタル(A/D)への変換電子機器を有するデータ取得モジュール435を提供することにより、出力パルスの波長データが正確に導き出されるように較正される。高周波パルスの繋がりの検知における正確さは、光検知器433およびそれに続くA/D変換の速度に依存する。
【0033】
出力処理段43に必要な検知器のタイプ、および電子機器に関する一般的な概念を提供するために、ここで1mの間隔だけ互いに分離され、同一の波長を有する1,000個の回折格子を有するセンサアレイを備える例示的なセンサを考える。その間隔において、それぞれ連続する回折格子によって反射される光の間の時間差はおおよそ10nsである。
【0034】
例示的なセンサでは、センサアレイを経て伝播する単一の入力パルスは、10マイクロ秒以上にわたって広がる1,000個のパルスからなる出力を生成するであろう。それぞれのパルスはそれぞれ個々のセンサ回折格子に対応する。
【0035】
重なりを避けるために、入力パルスは10nsよりも小さいパルス幅(すなわち、持続時間)を備えなければならない。考慮中の例示的なセンサシステムにおいて、入力パルス幅は8nsであると仮定され、それは125MHzの検知周波数に対応する。したがって、この場合、光検知器433は125MHz、またはより大きい容量を備えねばならない。パルス信号をデジタル化するために用いられるアナログ−デジタル(A−D)変換器は、検知される信号の最大周波数の少なくとも2倍、すなわち250MHz、またはそれより大きい最大周波数の容量を備えなければならない。
【0036】
上に説明される、システム40と従来技術のシステム10(図1)との間の一つの注目すべき違いは、システム40の入力生成段41は、時間および波長範囲の両方について振幅安定性の要求が著しく緩和されているということである。システム10は強度ベースである。したがって、振幅安定性は正確な測定データを得るために決定的に重要な構成要素である。それに対して、システム40においては、測定は波長ベースである。したがって、図1のシステムに要求されるように振幅の変動を小さく保持することはそれほど重要ではない。
【0037】
図5は、本発明の更なる実施によるシステム50の図を示し、そこにおいて光源は波長が正確に設定された調整可能なレーザ511である。システム50は、入力生成段51、出力段52、および出力処理段53の3つの段を有している。3つの段は、処理ユニットおよび制御関連の電子機器を含む制御モジュール54によって動作させられる。3つの段は、サーキュレータ55を用いて互いに接続される。入力生成段51からの光はセンサ段52に結合される。センサ段52の光出力は出力処理段53に結合される。
【0038】
入力生成段51は、調整可能なレーザ511、PM−EDFA512、およびEOM513を有している。センサ段52は、センサ段42(図4)と同様の構成からなり、センサアレイ521、ラマンファイバ522、時間基準回折格子523、ラマンポンプ524、およびWDM526を含む。出力処理段53は、データ取得モジュール532にデータを入力する高速度検知器531を有している。
【0039】
システム50の構成要素は、システム40のそれに対応し、異なる広帯域光源の使用から生じる修正を伴う。一つの相違点は、システム50において、センサ出力からの波長データは調整可能なレーザ511の出力の瞬間的な波長と関連付けながら導き出すことができ、それはレーザの設定から直接的に取ることができる。したがって、センサ段52からの出力は、図4に示されるように波長の拡張を経るのとは対照的に、出力処理段53の検知器531への直接入力として提供することができる。調整可能なレーザは、図4に示されるシステム40に比較してシステム50により高額のコストを課すが、システム50は必要な構成要素がより少ない。
【0040】
図6は、本発明の更なる実施によるシステム60の図を示し、そこにおいて広帯域光源は正確な波長出力および制御のない波長可変レーザ611を用いて実行される。システム60は、入力生成段61、センサ段62、および出力処理段63の3つの段を有している。3つの段は、処理ユニットおよび制御関連の電子機器を含む制御モジュール64によって動作させられる。3つの段は、サーキュレータ65の方法によって互いに接続される。入力生成段61からの光はセンサ段62に結合される。センサ段62の光出力は出力処理段63に結合される。
【0041】
入力生成段61は、波長可変レーザ611、PM−EDFA612、およびEOM613を有している。波長可変レーザ611は、要求される波長の正確さおよび一貫性がない場合があるため、入力生成段61は、波長の計算において制御モジュール64による使用のために波長可変レーザ出力の瞬間的な波長を測定するために用いられる波長測定モジュール614をさらに含む。
【0042】
システム60の残りの構成要素は、図5に示されるシステム50の対応する構成要素と同じである。センサ段62は、ラマンファイバ622内に書き込まれる多数の回折格子を有するセンサアレイ621を有している。時間基準回折格子623は、センサアレイ621の上流に提供される。センサ回折格子の出力は、ラマンポンプWDM625(ラマンポンプ624によってポンプされる)によって増幅され、次いで出力を出力処理段63に結合するサーキュレータに入力される。出力処理段63は、高速度検知器631を有し、高速度検知器631はデータをデータ取得モジュール632に入力する。
【0043】
図7は、図6に示されるシステム60の変形を具体化するシステム70の図を示す。入力生成段71、センサ段72、出力処理段73、制御モジュール74、およびサーキュレータ75は、波長測定モジュール614を除いて、システム60の対応するものと同じである。システム70において、波長可変レーザの直後で波長測定を行う代わりに、時間基準回折格子723の後に波長基準デバイス720を挿入することにより、波長基準/較正機能がセンサ段72において実行される。本発明の実施により、波長基準デバイス720は、センサ回折格子の波長範囲をカバーして異なる波長を有する複数の温度安定化回折格子を有している。
【0044】
センサ回折格子に関して、多数の適切な回折格子は、ライトスルー・コーティングファイバ回折格子製造方法によって作製することができる。この方法において、回折格子ファイバの機械的な強度は、元の状態のファイバの機械的強度に近づけることができる。したがって、そのようなやり方は、高い機械的強度を有する回折格子を必要とする用途に非常に適している。さらに、ライトスルー・コーティングファイバ回折格子製造技術を採用することは、回折格子製造工程を自動化し、その結果、著しくコストを低減することを可能にする。さらに、センサシステムは、すべての回折格子についてのそれらの元の波長に対する波長のシフトを測定するという事実によって、自動化がさらに高められるであろう。したがって、すべての回折格子について最初の波長の許容差は非常に緩くすることができる。
【0045】
これらの回折格子は反射率が弱いので、線引き塔の単一のUVパルス回折格子製法は、このタイプのシステムのためのFBGを製造するためにも非常に適している。歪および温度の両方の測定が必要とされるのであれば、ツインコアのライトスルー・コーティング回折格子アレイがこの目的のために製造され、配列することができる。ツインコアファイバの2つの回折格子は、歪係数はほぼ同一であるが、まったく異なる温度係数を備える。この方法により、正確に歪および温度測定の結果を得るために2つの測定式を解くことができる。
【0046】
先の記述は、当業者が本発明を実施することを可能にするであろう詳細を含むが、実際は、前記記述は例示的なものであり、多くのそれらの修正および変形は、これらが教えるところの利益を有する当業者には明らかであろうということが認識されるべきである。したがって、本明細書における本発明は、ここに添付される特許請求の範囲によってのみ規定され、かつ特許請求の範囲は従来技術によって許容される限り広く解釈されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7