特許第5972435号(P5972435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972435コーティング液組成物、コーティング液組成物の製造方法、及び、コーティング液組成物調製用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5972435
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】コーティング液組成物、コーティング液組成物の製造方法、及び、コーティング液組成物調製用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20160804BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/12
【請求項の数】20
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-149902(P2015-149902)
(22)【出願日】2015年7月29日
【審査請求日】2015年9月29日
【審判番号】不服2016-2716(P2016-2716/J1)
【審判請求日】2016年2月23日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592115836
【氏名又は名称】加美電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】光本 政敬
(72)【発明者】
【氏名】早坂 宜晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 善之
(72)【発明者】
【氏名】猪股 宏
【合議体】
【審判長】 冨士 良宏
【審判官】 國島 明弘
【審判官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−252449(JP,A)
【文献】 特開平7−96154(JP,A)
【文献】 特表2002−511907(JP,A)
【文献】 特開2012−86175(JP,A)
【文献】 特開平1−258770(JP,A)
【文献】 特開2013−103151(JP,A)
【文献】 特表2002−529230(JP,A)
【文献】 特表平9−508851(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113489(WO,A1)
【文献】 特開2003−268218(JP,A)
【文献】 特許第5923677(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00〜C09D201/10
B05D1/00〜B05D7/26
B01F3/00〜B01F3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
17〜25(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する樹脂成分、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤、二酸化炭素、及び、23.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤を含み、
前記第一の溶剤のSP値SP第一の溶剤[(MPa)0.5]が、前記樹脂成分のSP値SP[(MPa)0.5]に対して、SP−7≦SP第一の溶剤≦SP+4である、コーティング液組成物。
【請求項2】
さらに、顔料を含む、請求項1に記載のコーティング液組成物。
【請求項3】
触媒又は触媒前駆体を含むものを除く、請求項1又は2に記載のコーティング液組成物。
【請求項4】
樹脂成分の溶解度パラメータSP[(MPa)0.5]、及び、二酸化炭素及び第二の溶剤の混合物の溶解度パラメータSPMIX[(MPa)0.5]が、SP−6<SPMIX<SP+10を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング液組成物。
【請求項5】
前記第二の溶剤は、ホルムアミド、ヒドラジン、グリセリン、N−メチルホルムアミド、1,4−ジホルミルピペラジン、エチレンシアノヒドリン、マロノニトリル、2−ピロリジン、エチレンカーボネート、メチルアセトアミド、エチレングリコール、メタノール、ジメチルスルホキシド、フェノール、1,4−ジアセチルピペラジン、無水マレイン酸、2−ピペリドン、ギ酸、メチルエチルスルホン、ピロン、テトラメチレンスルホン、プロピオラクトン、炭酸プロピレン、N−ニトロソジメチルアミン、N−ホルミルモルホリン、3−メチルスルホラン、ニトロメタン、エタノール、ε−カプロラクタム、プロピレングリコール、ブチロラクトン、クロロアセトニトリル、メチルプロピルスルホン、フルフリルアルコール、フェニルヒドラジン、亜リン酸ジメチル、2−メトキシエタノール、ジエチルスルホン、エチレンジアミン、エチルアセトアミド、2−クロロエタノール、ベンジルアルコール、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロ−2,4−ジメチルチオフェン1,1−ジオキシド、アクリル酸、1−プロパノール、アセトニトリル、アリルアルコール、4−アセチルモルホリン、1,3−ブタンジオール、ホルミルピペリジン、ペンタンジオール、イソプロパノール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチルセロソルブからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング液組成物。
【請求項6】
二酸化炭素を5〜95質量%含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング液組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載のコーティング液組成物をノズルから対象物に噴霧して液膜を形成する工程と、前記液膜を固化してコーティング膜を形成する工程と、を備える、コーティング膜の形成方法。
【請求項8】
17〜25(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する樹脂成分と、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、二酸化炭素と、23.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を混合してコーティング液組成物を得る工程を備え
前記第一の溶剤のSP値SP第一の溶剤[(MPa)0.5]が、前記樹脂成分のSP値SP[(MPa)0.5]に対して、SP−7≦SP第一の溶剤≦SP+4である、コーティング液組成物の製造方法。
【請求項9】
前記混合する工程では、さらに顔料を混合して前記コーティング液組成物を得る、請求項に記載のコーティング液組成物の製造方法。
【請求項10】
前記コーティング液組成物は触媒又は触媒前駆体を含まない、請求項又はに記載のコーティング液組成物の製造方法。
【請求項11】
前記二酸化炭素及び前記第二の溶剤の混合比は、前記樹脂成分の溶解度パラメータSP[(MPa)0.5]、及び、前記二酸化炭素及び前記第二の溶剤の混合物の溶解度パラメータSPMIX[(MPa)0.5]が、SP−6<SPMIX<SP+10を満たすように定められた、請求項10のいずれか一項に記載のコーティング液組成物の製造方法。
【請求項12】
前記混合する工程が、
前記二酸化炭素と前記第二の溶剤とを混合する工程と、
前記二酸化炭素と前記第二の溶剤との混合物に、前記樹脂成分と前記第一の溶剤との混合物を混合する工程と、を備える請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記混合する工程が、前記樹脂成分と、前記第一の溶剤と、前記第二の溶剤との混合物に、前記二酸化炭素を混合する工程を備える、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記混合する工程の後に、さらに、前記樹脂成分と、前記第一の溶剤と、前記第二の溶剤と、前記二酸化炭素との混合物を、60〜300秒滞留させる工程を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
17〜25(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する樹脂成分と、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有し、前記樹脂成分を溶解する第一の溶剤と、二酸化炭素と、23.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を混合してコーティング液組成物を得る混合部を備え
前記第一の溶剤のSP値SP第一の溶剤[(MPa)0.5]が、前記樹脂成分のSP値SP[(MPa)0.5]に対して、SP−7≦SP第一の溶剤≦SP+4である、コーティング液組成物の製造装置。
【請求項16】
前記混合部は、さらに顔料を混合して前記コーティング液組成物を得る、請求項15に記載のコーティング液組成物の製造装置。
【請求項17】
前記コーティング液組成物は触媒又は触媒前駆体を含まない、請求項15又は16に記載のコーティング液組成物の製造装置。
【請求項18】
17〜25(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する樹脂成分、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤、及び、23.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤を含有し、
前記第一の溶剤のSP値SP第一の溶剤[(MPa)0.5]が、前記樹脂成分のSP値SP[(MPa)0.5]に対して、SP−7≦SP第一の溶剤≦SP+4である、二酸化炭素含有コーティング液組成物調製用組成物。
【請求項19】
さらに、顔料を含む、請求項18に記載の二酸化炭素含有コーティング液組成物調製用組成物。
【請求項20】
触媒又は触媒前駆体を含むものを除く、請求項18又は19に記載の二酸化炭素含有コーティング液組成物調製用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含むコーティング液組成物等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インキ又は塗料を対象物にコーティングする方法として、インキ又は塗料に二酸化炭素を混合してコーティング液組成物を調製し、得られたコーティング液組成物を対象物に噴霧する方法が知られている。この方法では、二酸化炭素が希釈剤として機能し、インキ又は塗料の粘度が噴霧可能なレベルまで低下され、好適に噴霧が行える。
【0003】
このような二酸化炭素を用いたコーティングに関する技術は、例えば、特許文献1〜6のように数々開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4538625号
【特許文献2】特許第5429928号
【特許文献3】特許第5429929号
【特許文献4】特許第5660605号
【特許文献5】特許第5568801号
【特許文献6】特許第5608864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、コーティング液組成物の十分な検討はなされていなかった。このため、コーティング液組成物内で樹脂成分が析出し、しばしば、コーティング液組成物が通るラインの閉塞を引き起こしていた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素を希釈剤として用いた場合でも樹脂の析出を軽減できるコーティング液組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果以下のことを見出した。二酸化炭素は10MPa、20℃で約15(MPa)0.5程度のSP値(溶解度パラメータ)を有する一方、樹脂成分は例えば17〜25(MPa)0.5程度の、真溶剤は例えば16〜23.3(MPa)0.5程度のSP値を有する。そして、樹脂及び真溶剤の混合物に、二酸化炭素を混合した際に、混合溶剤のSP値が樹脂よりも下がる傾向にあり、樹脂が析出する傾向があることを見出した。
【0008】
本発明に係るコーティング液組成物は、樹脂成分、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤、二酸化炭素、及び、23.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤を含む。
【0009】
本発明にかかるコーティング液組成物によれば、第一の溶剤に加えて、15程度のSP値を有する二酸化炭素に比べてSP値の高い第二の溶剤を含むので、SP値の低い二酸化炭素が混合されていても液中での樹脂の析出を抑制できて、好適な噴霧が行える。
【0010】
ここで、樹脂成分の溶解度パラメータSP[(MPa)0.5]、及び、二酸化炭素及び第二の溶剤の混合物の溶解度パラメータSPMIX[(MPa)0.5]が、SP−6<SPMIX<SP+10を満たすことができる。
【0011】
これによれば、二酸化炭素に対する第二の溶剤の比率が、SPMIXが特にSPに近くなるように設定されるので、液中での樹脂の析出をより好適に抑制できる。
【0012】
ここで、前記第二の溶剤は、ホルムアミド、ヒドラジン、グリセリン、N−メチルホルムアミド、1,4−ジホルミルピペラジン、エチレンシアノヒドリン、マロノニトリル、2−ピロリジン、エチレンカーボネート、メチルアセトアミド、エチレングリコール、メタノール、ジメチルスルホキシド、フェノール、1,4−ジアセチルピペラジン、無水マレイン酸、2−ピペリドン、ギ酸、メチルエチルスルホン、ピロン、テトラメチレンスルホン、プロピオラクトン、炭酸プロピレン、N−ニトロソジメチルアミン、N−ホルミルモルホリン、3−メチルスルホラン、ニトロメタン、エタノール、ε−カプロラクタム、プロピレングリコール、ブチロラクトン、クロロアセトニトリル、メチルプロピルスルホン、フルフリルアルコール、フェニルヒドラジン、亜リン酸ジメチル、2−メトキシエタノール、ジエチルスルホン、エチレンジアミン、エチルアセトアミド、2−クロロエタノール、ベンジルアルコール、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロ−2,4−ジメチルチオフェン1,1−ジオキシド、アクリル酸、1−プロパノール、アセトニトリル、アリルアルコール、4−アセチルモルホリン、1,3−ブタンジオール、ホルミルピペリジン、ペンタンジオール、イソプロパノール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチルセロソルブからなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
【0013】
また、上記コーティング液組成物は、二酸化炭素を5〜95質量%含むことができる。
【0014】
また、前記樹脂成分の溶解度パラメータは17〜25(MPa)0.5であることができる。
【0015】
本発明に係るコーティング膜の形成方法は、上述のコーティング液組成物をノズルから対象物に噴霧して液膜を形成する工程と、前記液膜を固化してコーティング膜を形成する工程と、を備える。
【0016】
本発明に係るコーティング液組成物の製造方法は、樹脂成分と、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、二酸化炭素と、23.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を混合してコーティング液組成物を得る工程を備える。
【0017】
ここで、前記二酸化炭素及び前記第二の溶剤の混合比は、前記樹脂成分の溶解度パラメータSP[(MPa)0.5]、及び、前記二酸化炭素及び前記第二の溶剤の混合物の溶解度パラメータSPMIX[(MPa)0.5]が、SP−6<SPMIX<SP+10を満たすように定められることができる。
【0018】
また、前記混合する工程が、
前記二酸化炭素と前記第二の溶剤とを混合する工程と、
前記二酸化炭素と前記第二の溶剤との混合物に、前記樹脂成分と前記第一の溶剤との混合物を混合する工程と、を備えることができる。
【0019】
また、前記混合する工程が、前記樹脂成分と、前記第一の溶剤と、前記第二の溶剤との混合物に、前記二酸化炭素を混合する工程を備えることもできる。
【0020】
本発明に係るコーティング液組成物の製造装置は、樹脂成分と、前記樹脂成分を溶解する第一の溶剤と、二酸化炭素と、23.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を混合してコーティング液組成物を得る混合部を備える。
【0021】
本発明に係るコーティング液組成物調製用組成物は、樹脂成分、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤、及び、23.5(MPa)0.5以上の溶解度パラメータを有する第二の溶剤を含有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コーティング液組成物における樹脂の析出を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】連続式二酸化炭素塗装装置の実施形態の一例を示す。
図2】連続式二酸化炭素塗装装置の実施形態の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るコーティング液組成物は、樹脂成分、第一の溶剤、二酸化炭素、及び、第二の溶剤を有する。以下、各成分について説明する。
【0025】
<樹脂成分>
樹脂成分としては、通常用いられる樹脂であれば特に制限はないが、例えば、エポキシ樹脂(約22)、アクリル樹脂(約19)、アクリルウレタン樹脂(約17〜22)、ポリエステル樹脂(約22)、アクリルシリコン樹脂(約17〜22)、アルキッド樹脂(約17〜25)、UV硬化樹脂(約17〜23)、塩酢ビ樹脂(約19〜22)、スチレンブタジエンゴム(約17〜18)、ポリエステルウレタン樹脂(約19〜21)、スチレンアクリル樹脂(約19〜21)、アミノ樹脂(約19〜21)、ポリウレタン樹脂(約21)、フェノール樹脂(約23)、塩化ビニル樹脂(約19〜22)、ニトロセルロース樹脂(約22〜24)、セルロースアセテテートブチレート樹脂(約20)、スチレン樹脂(約17〜21)、メラミン尿素樹脂(約19〜21)等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を混合して使用してもよい。樹脂成分は、1液硬化型樹脂であっても、2液硬化型樹脂であってもよく、UVなどの活性エネルギー線硬化型樹脂であってもよい。括弧内の数値は各樹脂の典型的な溶解度パラメータであり、単位は(MPa)0.5である。
【0026】
溶解度パラメータとは、Hildebrandの溶解度パラメータである。溶解度パラメータ(以下、SP値とする。)とは、物質間の親和性の尺度を表す熱力学的なパラメータであり、類似したSP値を有する物質同士は溶解しやすい傾向にあることが知られている。
【0027】
樹脂成分は、17(MPa)0.5以上、18(MPa)0.5以上、19(MPa)0.5以上のSP値を有することができ、25(MPa)0.5以下、24(MPa)0.5以下、23.5(MPa)0.5以下のSP値を有することができる。
【0028】
樹脂成分のSP値は以下のようにして求めることができる。すなわち、樹脂を良溶媒Aに溶かしておき、良溶媒よりもSP値の高い貧溶媒H、及び、良溶媒よりもSP値の低い貧溶媒Lを別々に滴下して樹脂が析出し白濁するまでに要したそれぞれの貧溶媒の量を記録する。良溶媒AのSP値δ、貧溶媒HのSP値をδ、貧溶媒LのSP値をδとし、白濁した点での良溶媒A、貧溶媒H,貧溶媒Lの体積分率を、φ、φ、φとしたときに、2つの濁点における混合溶媒のSP値δ良溶媒A+貧溶媒H、δ良溶媒A+貧溶媒Lは、それぞれ、SP値の体積平均で表すことができ、下式が成立する。
δ良溶媒A+貧溶媒H=(φ・δ+φ・δ0.5
δ良溶媒A+貧溶媒L=(φ・δ+φ・δ0.5
したがって、樹脂のSP値SPは、
SP=((V良溶媒A+貧溶媒H・δ良溶媒A+貧溶媒H+V良溶媒A+貧溶媒L・δ良溶媒A+貧溶媒L)/(V良溶媒A+貧溶媒H+V良溶媒A+貧溶媒L))0.5
ここで、V良溶媒A+貧溶媒H、良溶媒A+貧溶媒Lは、混合溶媒の濁点における平均モル体積であり、例えば、前者は、次式により求められる。
1/V良溶媒A+貧溶媒H=φ/V+φ/V
ここで、V、Vはそれぞれ良溶媒A,及び、貧溶媒Hのモル体積である。
【0029】
<第一の溶剤>
第一の溶剤はSP値が23.5未満の溶剤であり、樹脂成分を溶解することができる真溶剤である。第一の溶剤は、樹脂成分のSP値SPに対してSP−7≦SP第一の溶剤≦SP+4であることができる。第一の溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン(17.2)、酢酸3−メトキシブチル(20.5)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(18.7)、ソルベッソ100(東燃ゼネラル石油社製、商品名)(17.6)、ソルベッソ150(東燃ゼネラル石油社製、商品名)(17.4)、エチルジグリコールアセテート(18.5)、n−ブタノール(23.3)、ジイソブチルケトン(16)、酢酸エチル(18.6)、酢酸ブチル(17.0)、等が挙げられる。なお、上記の括弧内の数値はSP値であり単位は(MPa)0.5である。第一の溶剤は、SP値が23.5未満の溶剤の混合物であってもよい。第一の溶剤の配合量は樹脂成分を溶解できる範囲であれば特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対して、25〜10000質量部であることができ、25〜1000質量部であることが好ましく、87〜461質量部であることがより好ましい。
【0030】
<二酸化炭素>
二酸化炭素は、噴霧前には、通常、コーティング液組成物中において液体又は超臨界液体として存在する。噴霧時など圧力が低くなると、気体となることができる。
【0031】
二酸化炭素の配合量は、コーティング液組成物に対して、5〜95質量%であることができ、5〜60質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0032】
<第二の溶剤>
第二の溶剤は、23.5〜40(MPa)0.5のSP値を有する。
第二の溶剤の例は、ホルムアミド(39.3)、ヒドラジン(37.3)、グリセリン(33.8)、N−メチルホルムアミド(32.9)、1,4−ジホルミルピペラジン(31.5)、エチレンシアノヒドリン(31.1)、マロノニトリル(30.9)、2−ピロリジン(30.1)、エチレンカーボネート(30.1)、メチルアセトアミド(29.9)、エチレングリコール(29.9)、メタノール(29.7)、ジメチルスルホキシド(29.7)、フェノール(29.3)、1,4−ジアセチルピペラジン(28.0)、無水マレイン酸(27.8)、2−ピペリドン(27.8)、ギ酸(27.6)、メチルエチルスルホン(27.4)、ピロン(27.4)、テトラメチレンスルホン(27.4)、プロピオラクトン(27.2)、炭酸プロピレン(27.2)、N−ニトロソジメチルアミン(26.8)、N−ホルミルモルホリン(26.6)、3−メチルスルホラン(26.4)、ニトロメタン(26.0)、エタノール(26.0)、ε−カプロラクタム(26.0)、プロピレングリコール(25.8)、ブチロラクトン(25.8)、クロロアセトニトリル(25.8)、メチルプロピルスルホン(25.6)、フルフリルアルコール(25.6)、フェニルヒドラジン(25.6)、亜リン酸ジメチル(25.6)、2−メトキシエタノール(25.4)、ジエチルスルホン(25.4)、エチレンジアミン(25.2)、エチルアセトアミド(25.2)、2−クロロエタノール(25.0)、ベンジルアルコール(24.8)、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(24.8)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル) (24.8)、ジメチルホルムアミド(24.8)、ジエチレングリコール(24.8)、1,4−ブタンジオール(24.8)、テトラヒドロ−2,4−ジメチルチオフェン1,1−ジオキシド(24.6)、アクリル酸(24.6)、1−プロパノール(24.3)、アセトニトリル(24.3)、アリルアルコール(24.1)、4−アセチルモルホリン(23.7)、1,3−ブタンジオール(23.7)、ホルミルピペリジン(23.5)、ペンタンジオール(23.5)、イソプロパノール(23.5)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(23.5)、エチルセロソルブ(23.5)である。括弧内の数値はSP値であり、単位は(MPa)0.5である。第二の溶剤は、23.5〜40(MPa)0.5のSP値を有する溶剤の混合物であってもよい。第二の溶剤のSP値は、24(MPa)0.5以上であることができ、25(MPa)0.5以上であることができる。
【0033】
中でも、ホルムアミド、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノール、プロピレングリコール、ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、アセトニトリル、及び、これらのうちの任意の組み合わせの混合物であることが好ましい。
【0034】
樹脂成分として2液硬化型樹脂を用いる場合は、樹脂との反応を抑制する観点から非プロトン性溶剤を用いることが好ましい。非プロトン性溶剤の例は、1,4−ジホルミルピペラジン、マロノニトリル、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、1,4−ジアセチルピペラジン、メチルエチルスルホン、ピロン、テトラメチレンスルホン、プロピオラクトン、炭酸プロピレン、N−ニトロソジメチルアミン、N−ホルミルモルホリン、3−メチルスルホラン、ニトロメタン、ブチロラクトン、クロロアセトニトリル、メチルプロピルスルホン、ジエチルスルホン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロ−2,4−ジメチルチオフェン1,1−ジオキシド、アセトニトリル、4−アセチルモルホリン、ホルミルピペリジン、からなる群から選択される少なくとも1種である。中でも、ジメチルスルホキシド、ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、及び、これらのうちの任意の組み合わせの混合物であることが好ましい。
【0035】
また、樹脂成分のSP値SPと、二酸化炭素及び第二の溶剤の混合物のSP値SPMIXが、SP−6<SPMIXを満たすことができ、SP−5<SPMIXを満たすことが好ましく、SP−4<SPMIXを満たすことができる。また、SPMIX<SP+10を満たすことができ、SPMIX<SP+9を満たすことができ、SPMIX<SP+8を満たすことができ、SPMIX<SP+7を満たすことができ、SPMIX<SP+6を満たすことができ、SPMIX<SP+5を満たすことができ、SPMIX<SP+4を満たすことができる。SPMIXは、コーティング液組成物における第二の溶剤と二酸化炭素との混合比に応じて変わる。
【0036】
二酸化炭素及び第二の溶剤の混合物のSP値SPMIXは、上述のように各成分のSP値の体積平均として求めることができる。
【0037】
また、第二の溶剤のコーティング液組成物中の配合量としては、二酸化炭素と第二の溶剤との合計100質量部に対して、通常、5〜95質量部であり、6〜84質量部であることができ、20〜80質量部であることができる。
【0038】
コーティング液組成物は、上記以外に種々の添加剤を含むことが出来る。例えば、助溶剤、希釈剤、顔料、顔料分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、密着性付与剤、レオロジーコントロール剤、重合開始剤等、塗料やインキに通常添加される添加剤を含有していてもよい。樹脂成分として2液硬化型樹脂を用いた場合、添加剤として硬化剤を含んでいてもよい。2液硬化型樹脂の硬化剤としては、特に限定されないが、イソシアネートなど、2液硬化型樹脂の硬化剤として一般に使用される硬化剤を用いることができる。
【0039】
このようなコーティング液組成物によれば、樹脂成分の析出が抑制される。すなわち、20℃で15(MPa)0.5程度のSP値を有する二酸化炭素は、樹脂及び第一の溶剤と比べて相対的に低いSP値を有するため、第一の溶剤に溶解した樹脂成分を二酸化炭素と混合すると、樹脂成分が析出する恐れがある。そこで、樹脂成分に比べて高いSP値を有する第二の溶剤を加えて、二酸化炭素と第二の溶剤を有する混合溶剤のSP値を、引き上げることで、樹脂成分の析出を抑えることができる。
【0040】
続いて、このようなコーティング液組成物の製造方法を説明する。
このようなコーティング液は、樹脂成分、第一の溶剤、二酸化炭素、及び、第二の溶剤を混合することにより得られる。混合方法の例はインラインミキサーを使用したラインブレンド法である。混合の順番は特に限定されないが、以下の例が好ましい。
【0041】
<3液連続混合方法>
本方法は、二酸化炭素と第二の溶剤とを混合して混合物を得る工程と、当該混合物に、樹脂成分及び第一の溶剤の混合物を混合する工程と、を備える。
【0042】
本実施形態では、図1に示すような3液連続混合式二酸化炭素塗装装置を用いることができる。COボンベ4に貯蔵された二酸化炭素はCO冷却器5によって冷却されて液化し、CO高圧ポンプ6によって所定の圧力まで加圧され、CO加熱器7によって所定の温度まで加温されてから、第一混合器12へと供給される。溶剤タンク10に貯蔵された第二の溶剤は、溶剤高圧ポンプ11によって所定の圧力まで加圧されてから、第一混合器12へと供給される。第一混合器12としては、例えば、インラインミキサーを使用できる。通常、混合される二酸化炭素は、液体、又は、超臨界流体であるが、気体であってもよい。
【0043】
さらに、塗料タンク1に貯蔵された樹脂成分と第一の溶剤との混合物は、塗料高圧ポンプ2によって所定の圧力まで加圧され、塗料加熱器3によって所定の温度まで加温されてから、第二混合器8へと供給される。第二混合器8としては、例えば、インラインミキサーを使用できる。塗料タンク1に貯留された混合物には、上述した添加剤を含有することができる。
【0044】
すなわち、二酸化炭素と第二の溶剤は第一混合器12内で混合され、次いで、この混合物が第二混合器8内で樹脂成分と第一の溶剤との混合物と混合され、コーティング液組成物ができる。本実施形態では、二酸化炭素とSP値の高い第二の溶剤とを先に混合しておくので、樹脂成分と二酸化炭素とを混合する際の樹脂成分の析出を抑制しやすい。
【0045】
続いて、第二混合器8により得られたコーティング液組成物は加圧状態にあり、ノズル又はオリフィスを有する噴霧ガン9を通じて大気中にミストとして放出させることができ、このミストを被塗布物に接触させることにより、コーティング液組成物の液膜が形成される。その後、液膜を、乾燥、加熱、UV等の活性エネルギー線による硬化等により固化させることにより、コーティング膜ができる。このような方法により、被塗布物に対する塗装、印刷等が可能である。
【0046】
噴霧させるコーティング液組成物の温度としては、0〜60℃が好ましく、10〜30℃であることがより好ましい。2液硬化型樹脂の場合は、温度が60℃より高いと、コーティング液組成物の使用可能時間(ポットライフ)が短くなる傾向がある。コーティング液組成物の温度を調整する熱交換器は、第二混合器8よりも下流に設けても良いが、第二混合器8より下流には設けず、第二混合器8、又は、第二混合器8よりも上流に設けることが好ましい。即ち、樹脂成分に対して二酸化炭素を混合する前のラインに熱交換器を設けることにより、熱交換器に樹脂が析出することを抑制できる。コーティング液組成物の温度が10℃〜30℃の場合は、CO加熱器7や塗料加熱器3はなくてもよく、コーティング液組成物の温度を調整する熱交換器もなくてもよい。
【0047】
噴霧させるコーティング液組成物の圧力としては、2MPa以上であることが好ましく、2〜15MPaであることがより好ましい。
【0048】
樹脂成分と二酸化炭素とが混合されてから、噴霧するまでのコーティング液組成物の滞留時間は60秒以下であることが好ましく、5秒以下であることが好ましい。コーティング液組成物の調製から塗装までの液の滞留時間は、第二混合器8と噴霧ガン9とを接続する配管の容量を変えることによって調整してもよい。
【0049】
本実施形態によれば、連続式二酸化炭素塗装装置内における樹脂の析出を抑制して、噴霧ガン9内部のノズルを詰まらせることなくコーティング液組成物を用いたコーティング膜の形成を行うことができる。
【0050】
<2液連続混合方法>
続いて、別の混合方法について説明する。第二の実施形態に係る方法は、樹脂成分と、第一の溶剤と、第二の溶剤との混合物に、二酸化炭素を混合する工程を備える。
【0051】
本実施形態では図2に示すような、2液連続混合式二酸化炭素塗装装置を用いることができる。塗料タンク1に貯蔵された、樹脂成分と、第一の溶剤と、第二の溶剤との混合物(コーティング液組成物調製用組成物)は、塗料高圧ポンプ2によって所定の圧力まで加圧され、塗料加熱器3によって所定の温度まで加温されてから、第二混合器8へと供給される。一方、COボンベ4に貯蔵された二酸化炭素は、CO冷却器5によって冷却されて液化し、CO高圧ポンプ6によって所定の圧力まで加圧され、CO加熱器7によって所定の温度まで加温されてから、第二混合器8へと供給される。塗料タンク1内の混合物は、上述の添加剤を含むことができる。
【0052】
第二混合器8内で樹脂成分、第一の溶剤、二酸化炭素、及び、第二の溶剤が混合され、コーティング液組成物となる。コーティング液組成物は、前述と同様に噴霧ガン9によって被塗装物へ噴霧される。上記以外の条件等は、3液連続混合方法と同様にすることができる。
樹脂成分と二酸化炭素とが混合されてから、噴霧するまでのコーティング液組成物の滞留時間は600秒以下であることが好ましい。コーティング液組成物の調製から塗装までの液の滞留時間は、第二混合器8と噴霧ガン9とを接続する配管の容量を変えることによって調整してもよい。本方法では、滞留時間を多くすることにより、樹脂が析出したとしても噴霧ガン9のノズルに到達するまでに再溶解することにより、析出による閉塞が起こりにくい傾向がある。
【0053】
本実施形態においても、連続式二酸化炭素塗装装置内における樹脂の析出を軽減してコーティング液組成物の塗装を行うことができる。本実施形態では、予め、樹脂成分、第一の溶剤、及び、第二の溶剤の混合物を作り、これに対して二酸化炭素を混合するので、樹脂成分と二酸化炭素とを混合する際の樹脂成分の析出を抑制可能である。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、上記の3液連続混合方法では、塗料タンク1内には第二の溶剤は含まれていないが、予め一部の第二の溶剤が塗料タンク内に混合されていても良い。
【実施例】
【0055】
以下、実施例に基づき発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜92)
表5〜13に示すような割合で、樹脂組成物、溶剤(溶剤A、溶剤Bを含む)、二酸化炭素、及び、添加剤を混合した。なお、本実施例及び比較例で用いる樹脂組成物を表1に、添加剤を表2に、溶剤を表3に、COのSP値を表4に示す。表1におけるNVは、樹脂組成物の非揮発成分(すなわち、樹脂成分)質量割合を意味し、NVが100%でない場合には、樹脂を溶解する酢酸ブチルなどの第一の溶剤成分が含まれる。ただし、実施例17及び18の場合、樹脂組成物にはさらに第二の溶剤成分も含まれる。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】
【表9】
【0065】
【表10】
【0066】
【表11】
【0067】
【表12】
【0068】
【表13】
【0069】
<3液連続混合方法>
図1に示すような3液連続混合式二酸化炭素塗装装置において、塗料タンク1にあらかじめ表5〜13の各実施例にしたがって調製しておいた樹脂組成物、添加剤、及び、溶剤A(第一の溶剤)の混合物1を仕込んだ。塗料高圧ポンプ2の流量を50g/分に設定した。溶剤タンク10に溶剤B(第二の溶剤)を仕込み、溶剤高圧ポンプ11の流量を表5〜13の混合比となるように設定した。CO高圧ポンプ6の流量を、表5〜13の混合比となるように設定した。なお、各表の各成分の比率の単位は質量%である。そして、第一混合器12内で、表5〜13に示す温度及び圧力条件下、二酸化炭素と、第二の溶剤とを混合して混合物2を得た。その後、第二混合器8内で、表5〜13に示す温度及び圧力条件下、この混合物2と混合物1とを混合し、コーティング液組成物を得た。コーティング液組成物の調製から噴霧塗装までの液の滞留時間は5秒となるように設定し、3回ずつ塗装試験を行った。
【0070】
<2液連続混合式二酸化炭素塗装>
図2に示すような2液連続混合式二酸化炭素塗装装置において、塗料タンク1にあらかじめ表5〜13の各実施例にしたがって調製しておいた樹脂組成物、添加剤、溶剤A、及び、溶剤Bの混合物3を仕込んだ。塗料高圧ポンプ2の流量を60g/分に設定した。CO高圧ポンプ6の流量を、表5〜13の割合となるように設定した。第二混合器8内で、表5〜13に示す温度及び圧力条件下、混合物3と二酸化炭素とを混合し、コーティング液組成物を得た。コーティング液組成物の調製から噴霧塗装までの滞留時間が5秒、60秒、及び、300秒となるように設定し、各3回ずつ塗装試験を行った。
【0071】
(比較例1〜19)
表14及び15に示すような組成比とする以外は、実施例1〜92と同様な操作で、塗装試験を行った。比較例では、第二の溶剤を使用しなかった。
【0072】
【表14】
【0073】
【表15】
【0074】
(評価)
各塗装試験を3回ずつ行った結果を表5〜15に示す。表中の記号は次のように対応する。◎は3回成功、○は2回成功、△は1回成功、×は成功なし、−は未実施を意味する。成功とは、5分間の塗布を閉塞なく完了できたことを意味する。
第二の溶剤を含有するコーティング液組成物を用いた実施例1〜92では、実施した3液連続混合式二酸化炭素塗装試験の3回中少なくとも1回はノズルが詰まることなく塗装することができ、2液連続混合式二酸化炭素塗装試験においても、コーティング液組成物の調製から塗装までの時間を300秒設けることで、多くの場合、少なくとも1回はノズルが詰まることなく塗装することができた。これに対し、第二の溶剤を含有しないコーティング液組成物を用いた比較例1〜19では、3液連続混合式二酸化炭素塗装及び2液連続混合式二酸化炭素塗装のいずれにおいても、ノズルの詰まりなく塗装することはできなかった。以上の結果から、第二の溶剤を含有するコーティング液組成物を用いることで、ノズルの詰まりを軽減することができた。
【符号の説明】
【0075】
1…塗料タンク、2…塗料高圧ポンプ、3…塗料加熱器、4…COボンベ、5…CO冷却器、6…CO高圧ポンプ、7…CO加熱器、8…第二混合器、9…噴霧ガン、10…溶剤タンク、11…溶剤高圧ポンプ、12…第一混合器。
【要約】
【課題】二酸化炭素を希釈剤として用いた場合でも樹脂の析出を軽減できるコーティング液組成物等を提供する。
【解決手段】本発明に係るコーティング液組成物は、樹脂成分、樹脂成分を溶解する第一の溶剤、二酸化炭素、及び、23.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤を含む。
【選択図】図1
図1
図2