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特許5972451エレベータシーブ上へ基材を貼付するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972451
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】エレベータシーブ上へ基材を貼付するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20160804BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20160804BHJP
   B66B 7/06 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B66B5/00 D
   B66B11/08 M
   B66B11/08 H
   B66B7/06 L
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-510239(P2015-510239)
(86)(22)【出願日】2012年5月4日
(65)【公表番号】特表2015-521143(P2015-521143A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】US2012036580
(87)【国際公開番号】WO2013165438
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シャオユアン
(72)【発明者】
【氏名】トーレイ,デーヴィッド アール.
(72)【発明者】
【氏名】キーヨ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェンダー,ランス エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ホン
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/110729(WO,A1)
【文献】 特開平06−032521(JP,A)
【文献】 実開昭61−178767(JP,U)
【文献】 特表2009−522186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 7/06
B66B 11/08
B65H 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ引張部材と接触するエレベータシーブの表面仕上げをする、エレベータ保守キットであって、
接着性バッキングを含む基材と、
前記シーブを回転させたときに該シーブに前記基材を貼付するように機能する、基材アプリケーターであって、前記接着性バッキングは、前記シーブの回転中に、前記基材を前記シーブに取り付けるように機能する、基材アプリケーターと、を備え、
前記基材アプリケーターは、前記基材が取り付けられる柔軟な基材キャリアシートを備え、
前記キャリアシートは、前記基材とともにシーブ−引張部材境界面を進み、前記シーブが回転するときに前記基材を前記シーブに押し付けるように機能する、保守キット。
【請求項2】
前記基材はさらに、前記接着性バッキングによって前記シーブに取り付けられるように設けられた、ポリマーフィルムを含む、請求項1に記載の保守キット。
【請求項3】
前記ポリマーフィルムは、超高分子量ポリエチレンを含む、請求項に記載の保守キット。
【請求項4】
前記基材は、接着剤によって前記キャリアシートに除去可能に取り付けられる、請求項に記載の保守キット。
【請求項5】
前記キャリアシートを前記引張部材に除去可能に取り付けるように機能する、接着剤をさらに備える、請求項に記載の保守キット。
【請求項6】
前記基材は、基材幅および基材長を有し、
前記キャリアシートは、シート幅およびシート長を有し、
前記シート幅は、前記基材幅以上のものであり、前記シート長は、前記基材長以上のものである、請求項に記載の保守キット。
【請求項7】
エレベータ引張部材と接触するエレベータシーブの表面仕上げをする、エレベータ保守キットであって、
接着性バッキングを含む基材と、
前記シーブを回転させたときに該シーブに前記基材を貼付するように機能する、基材アプリケーターであって、前記接着性バッキングは、前記シーブの回転中に、前記基材を前記シーブに取り付けるように機能する、基材アプリケーターと、を備え、
前記基材アプリケーターは、前記基材が巻き付けられる円筒アプリケーター本体を備え、
前記円筒アプリケーター本体は、その軸を中心に回転し、前記シーブが回転するときに、シーブ−引張部材境界面の中へ前記基材を送給するように機能する、保守キット。
【請求項8】
前記円筒アプリケーター本体は、1つ以上の環状整列溝を含み、
前記1つ以上の整列溝のそれぞれは、前記シーブのそれぞれの環状フランジと一致するように設けられる、請求項に記載の保守キット。
【請求項9】
前記円筒アプリケーター本体は、第1および第2の整列フランジの間に延在し、
前記整列フランジは、前記シーブの引張部材接触溝内に配設されるように設けられ、
前記基材は、前記整列フランジの間に配設される、請求項に記載の保守キット。
【請求項10】
前記円筒アプリケーター本体が回転可能に接続され、支持される、アプリケーター基部をさらに備える、請求項に記載の保守キット。
【請求項11】
第2の接着性バッキングを含む第2の基材をさらに備え、
前記第2の基材は、前記円筒アプリケーター本体に巻き付けられ、
前記基材アプリケーターはさらに、前記シーブを回転させたときに該シーブに前記第2の基材を貼付するように機能し、前記第2の接着性バッキングは、前記シーブの回転中に、前記第2の基材を前記シーブに取り付けるように機能し、前記円筒アプリケーター本体は、前記シーブが回転するときに、第2のシーブ−引張部材境界面の中へ前記第2の基材を供給するように機能する、請求項に記載の保守キット。
【請求項12】
エレベータ引張部材と接触するエレベータシーブ上へ基材を貼付するための方法であって、
基材アプリケーターを前記シーブに隣接して位置付け、前記基材は、前記基材アプリケーターと係合するとともに接着性バッキングを含み、
前記基材の端部を、シーブ−引張部材境界面の第1の端部で、前記シーブと前記引張部材との間に配置し、
前記シーブを回転させるとともに、前記シーブの前記回転中に前記接着性バッキングにより前記基材を前記シーブに取り付けることによって、前記基材を前記シーブに貼付することを含む、方法。
【請求項13】
前記シーブは、シーブ外周を有し、前記引張部材は、部材幅を有し、前記基材は、基材長および基材幅を有し、
前記基材長は、前記シーブ外周以上のものであり、前記基材幅は、前記部材幅以上のものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基材アプリケーターは、前記基材が取り付けられる柔軟な基材キャリアシートを備え、
前記配置は、前記キャリアシートおよび前記基材の前記端部を前記シーブと前記引張部材との間に配置することを含み、前記キャリアシートは、前記基材と前記引張部材との間に配設され、
前記貼付はさらに、前記シーブ−引張部材境界面の第2の端部から延在する前記基材の一部分から、前記キャリアシートを除去することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記キャリアシートを、接着剤によって、前記シーブ−引張部材境界面の前記第1の端部に近接する前記引張部材に除去可能に取り付け、
前記シーブ−引張部材境界面の前記第2の端部に近接する前記引張部材から前記キャリアシートを除去することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基材アプリケーターは、前記基材が巻き付けられる円筒アプリケーター本体を備え、
前記貼付はさらに、前記シーブの回転中に、前記円筒アプリケーター本体をその軸を中心に回転させることによって、前記円筒アプリケーター本体から前記シーブ−引張部材境界面の中へ前記基材を送給することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記引張部材は、前記シーブの溝の中に配設され、前記溝は、第1および第2の環状シーブフランジの間に延在し、
前記円筒アプリケーター本体は、1つ以上の環状整列溝を含み、
前記位置付けはさらに、前記1つ以上の整列溝のそれぞれと、前記シーブフランジの対応する1つとを一致させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記引張部材は、前記シーブの溝の中に配設され、前記溝は、第1および第2の環状シーブフランジの間に延在し、
前記円筒アプリケーター本体は、1対の環状整列フランジの間で軸方向に延在し、
前記位置付けはさらに、前記シーブフランジ間の前記溝内に前記整列フランジを位置付けることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第2の基材が、前記基材アプリケーターと係合するとともに第2の接着性バッキングを含み、
前記配置はさらに、前記第2の基材の端部を、第2のシーブ−引張部材境界面の第1の端部で、前記シーブと第2の引張部材との間に配置することを含み、
前記貼付はさらに、前記シーブの前記回転中に前記第2の接着性バッキングにより前記第2の基材を前記シーブに取り付けることによって、前記第2の基材を前記シーブに貼付することを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、エレベータに関し、より具体的には、エレベータシーブ上へ基材を貼付するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なトラクションエレベータかご駆動システムは、複数のシーブ(「プーリー」とも称される)の周囲を蛇行し、モータをエレベータかごおよび釣合錘に接続する、複数の引張部材を含む。動作中に、モータは、シーブを中心に引張部材を移動させて、エレベータ昇降路内でエレベータかごを上昇または下降させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ある条件下で、引張部材の1つ以上は、シーブの1つ以上に対して滑り得る。引張部材とシーブとの間に比較的高い剪断力が蓄積すると、例えば、引張部材の1つに、シーブの1つによるトラクションを瞬間的に失わせ得る。トラクションの損失およびその後の回復は、引張部材において振動を誘発させ得、該振動は、昇降路内の空気伝播騒音および/または駆動システム内の構造伝播騒音を生じさせる可能性がある。そのような騒音を低減させるための1つの手法は、例えばワックス等の調整剤によって引張部材を調整することである。しかしながら、そのような手法は、時間がかかる可能性があり、一般的に、頻繁に繰り返さなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、エレベータ引張部材と接触するエレベータシーブの表面仕上げ(surfacing)をするための、エレベータ保守キットが提供される。本キットは、接着性バッキングを有する基材と、シーブを回転させたときにシーブに基材を貼付するように機能する、基材アプリケーターとを含む。接着性バッキングは、シーブの回転中に、基材をシーブに取り付けるように機能する。
【0005】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、基材はまた、接着性バッキングによってシーブに取り付けられるように設けられる、ポリマーフィルムも含む。いくつかの実施形態において、ポリマー膜は、超高分子量ポリエチレンを含む。
【0006】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、基材アプリケーターは、基材が取り付けられる柔軟な基材キャリアシートを備える。キャリアシートは、基材とともにシーブ−部材境界面を進み、シーブが回転するときに基材をシーブに押し付けるように機能する。
【0007】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、基材は、接着剤によってキャリアシートに除去可能に取り付けられる。
【0008】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、本保守キットはまた、キャリアシートを引張部材に除去可能に取り付けるように機能する、接着剤も含む。
【0009】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、基材は、基材幅および基材長を有し、キャリアシートは、シート幅およびシート長を有する。シート幅は、基材幅以上であり、また、シート長は、基材長以上である。
【0010】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、基材アプリケーターは、基材が巻き付けられる円筒アプリケーター本体を含む。アプリケーター本体は、その軸を中心に回転し、シーブが回転するときに、シーブ−部材境界面の中へ基材を送給するように機能する。
【0011】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、アプリケーター本体は、1つ以上の環状整列溝を含む。1つ以上の整列溝のそれぞれは、シーブの対応する環状フランジと一致するように設けられる。
【0012】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、アプリケーター本体は、第1および第2の整列フランジの間に延在する。整列フランジは、シーブの引張部材接触溝内に配設されるように機能する。基材は、整列フランジの間に配設される。
【0013】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、保守キットはまた、アプリケーター本体が回転可能に接続され、支持される、アプリケーター基部も含む。
【0014】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、保守キットはまた、第2の接着性バッキングを含む第2の基材も含む。第2の基材は、アプリケーター本体の周囲に巻き付けられる。アプリケーターはさらに、シーブがその軸を中心に回転するときに、第2の基材をシーブに貼付するように機能する。第2の接着性バッキングは、シーブの回転中に、第2の基材がシーブと第2のエレベータ引張部材との間で円周方向に延在する第2のシーブ−部材境界面を進むときに、第2の基材をシーブに取り付けるように機能する。
【0015】
本発明の別の態様によれば、エレベータ引張部材と接触するエレベータシーブ上へ基材を貼付するための方法が提供される。本方法は、(a)基材アプリケーターをシーブに隣接して位置付けるステップであって、基材は、アプリケーターと係合し、接着性バッキングを含む、位置付けるステップと、(b)基材の端部を、シーブ−部材境界面の第1の端部で、シーブと引張部材との間に配置するステップと、(c)シーブを回転させることによって、およびシーブの回転中に接着性バッキングによって基材をシーブに取り付けることによって、基材をシーブに貼付するステップと、を含む。
【0016】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、シーブは、シーブ外周を有し、引張部材は、部材幅を有し、基材は、基材長および基材幅を有する。基材長は、シーブ外周以上であり、基材幅は、部材幅以上である。
【0017】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、アプリケーターは、基材が取り付けられる柔軟な基材キャリアシートを備える。配置するステップは、キャリアシートおよび基材の端部をシーブと引張部材との間に配置することを含み、キャリアシートは、基材と引張部材との間に配設される。貼付するステップはさらに、シーブ−部材境界面の第2の端部から延在する基材の一部分から、キャリアシートを除去することを含む。
【0018】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、本方法はまた、キャリアシートを、接着剤によって、シーブ−部材境界面の第1の端部に近接する引張部材に除去可能に取り付けるステップ、およびシーブ−部材境界面の第2の端部に近接する引張部材からキャリアシートを除去するステップも含む。
【0019】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、アプリケーターは、基材が巻き付けられる円筒アプリケーター本体を含む。貼付するステップは、シーブの回転中に、アプリケーター本体をその軸を中心に回転させることによって、アプリケーター本体からシーブ−部材境界面の中へ基材を送給することを含む。
【0020】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、引張部材は、シーブの溝の中に配設され、該溝は、第1および第2の環状シーブフランジの間に延在する。アプリケーター本体は、1つ以上の環状整列溝を含む。位置付けるステップは、1つ以上の整列溝のそれぞれと、シーブフランジの対応する1つとを一致させることを含む。
【0021】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、引張部材は、シーブの溝の中に配設され、該溝は、第1および第2の環状シーブフランジの間に延在する。アプリケーター本体は、1対の環状整列フランジの間で軸方向に延在する。位置付けるステップは、シーブフランジ間の溝内に整列フランジを位置付けることを含む。
【0022】
本発明の本態様もしくは他の態様の代替として、またはそれに加えて、第2の基材は、アプリケーターと係合し、第2の接着性バッキングを含む。配置するステップは、シーブと第2の引張部材との間で円周方向に延在する第2のシーブ−部材境界面の第1の端部で、シーブと第2の引張部材との間に第2の基材の端部を配置することを含む。貼付するステップは、シーブをその軸を中心に回転させることによって、第2の基材をシーブに貼付することと、シーブの回転中に、第2の基材が第2のシーブ−部材境界面を進むときに、第2の接着性バッキングによって、第2の基材をシーブに取り付けることと、を含む。
【0023】
本発明の上述の特徴および動作は、以下の説明および添付図面を考慮してより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】建造物の昇降路の中に配設されるエレベータシステムの概略図である。
図2】エレベータシーブとエレベータ引張部材との間の騒音を低減させるおよび/または防止するための基材の概略断面図である。
図3】エレベータの引張部材と接触するエレベータシーブ上へ基材を貼付するための基材アプリケーターの概略側断面図である。
図4図3の基材アプリケーターの概略正面図である。
図5図3の基材アプリケーターの別の概略側断面図である。
図6図3の基材アプリケーターの別の概略正面図である。
図7図3の基材アプリケーターのさらに別の概略側断面図である。
図8図3の基材アプリケーターのさらに別の概略正面図である。
図9図3の基材アプリケーターを利用して、基材をシーブの接触表面上へ貼付するための方法のフロー図である。
図10】エレベータ引張部材と接触するエレベータシーブ上へ基材を貼付するための別の基材アプリケーターの概略側断面図である。
図11図10の基材アプリケーターの部分概略正面図である。
図12図10の基材アプリケーターの別の概略側断面図である。
図13図10の基材アプリケーターのさらに別の概略側断面図である。
図14図10の基材アプリケーターを利用して、シーブの接触表面上へ基材を貼付するための方法のフロー図である。
図15】エレベータ引張部材と接触するエレベータシーブ上へ基材を貼付するためのさらに別の基材アプリケーターの概略側断面図である。
図16】エレベータ引張部材と接触するエレベータシーブ上へ基材を貼付するためのさらに別の基材アプリケーターの概略正面図である。
図17】複数のエレベータ引張部材と接触するエレベータシーブ上へ複数の基材を貼付するための基材アプリケーターの概略正面図である。
図18】エレベータ引張部材と接触するエレベータシーブ上へ基材を貼付するためのさらに別の基材アプリケーターの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、建造物の昇降路26の中に配設される(例えば、トラクション)エレベータシステム20を例示する。エレベータシステム20は、例えば複数のエレベータ乗場28の間で、エレベータかご24を昇降路26内で垂直に移動させる、エレベータかご駆動システム22を含む。
【0026】
駆動システム22は、モータ30を含む。エレベータシステム20はまた、釣合錘32、複数のエレベータシーブ34、36、38、および40、ならびに1つ以上の(例えば、固定された)エレベータ引張部材42(例えば、ロープ、ベルト等)を含む。エレベータシステム20は、1つ以上のシーブを含む。第1のシーブ34(例えば、駆動シーブ)は、モータ30に回転可能に接続される。エレベータシステム20は、釣合錘32に回転可能に接続される1つ以上のシーブ38(例えば、アイドラシーブ)を含むことができる。エレベータシステム20は、エレベータかご24に回転可能に接続される1つ以上のシーブ36および40(例えば、アイドラおよび/またはダイバータシーブ)を含むことができる。引張部材42は、(例えば、周囲を蛇行して)エレベータシーブと接触し、モータ30をエレベータかご24および釣合錘32に接続する。しかしながら、本発明は、いかなる特定の駆動システムの構成要素および/または構成にも限定されない。
【0027】
エレベータシステムの動作中に、モータ30は、第1のシーブ34を選択的に回転させて、シーブ36、38、および40を中心に引張部材42を移動させる。引張部材42の移動は、次に、エレベータかご24および釣合錘32をそれぞれ昇降路26内で垂直に移動させる(例えば、上昇または下降させる)。
【0028】
ある条件下で、引張部材42の1つ以上は、引張部材の移動中に、シーブ(例えば、シーブ36、38、および40)の1つ以上に対して、瞬間的または周期的に滑り得る。引張部材とシーブとの間に比較的高い剪断力が蓄積すると、例えば、それぞれの引張部材で対応するシーブとのトラクションが瞬間的に失われ得る。トラクションの損失およびその後の回復は、引張部材において振動を誘発させ得、該振動は、昇降路26内の空気伝播騒音および/または駆動システム22内の構造伝播騒音を生じさせる可能性がある。
【0029】
図2は、引張部材42の1つ以上と、シーブ(例えば、シーブ36、38、および40)の1つ以上との間の滑りによって誘発される騒音を低減させる、および/または防止するように構成される、基材44(例えば、テープ)を例示する。基材44は、例えば、引張部材の1つと対応するシーブとの間の局所的な表面滑りを可能にし得る(例えば、摩擦を低減させ得る)。局所的な表面滑りを可能にすることで、引張部材とシーブとの間に蓄積することができる剪断力の大きさを低減させ、騒音を発生させる振動を低減させ得る。
【0030】
基材44は、基材外面46と基材内面48との間に延在する。基材44は、騒音低減低摩擦ポリマーフィルム50と、接着性バッキング52とを含むことができる。ポリマーフィルム50は、基材外面46から接着性バッキング52まで延在する。接着性バッキング52は、ポリマーフィルム50から基材内面48まで延在する。
【0031】
ポリマーフィルム50は、例えば、超高分子量(UHMW)ポリエチレン等のポリエチレン(PE)ポリマーから構成され得る。別の例において、ポリマーフィルム50は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフルオロポリマーから構成され得る。しかしながら、UHMWポリエチレンが、PTFE等の他のポリマーと比較して、向上した摩耗特性を有し得ることは、注目に値するものであり、例えば、UHMWポリエチレンは、比較的低い材料移動速度を呈する。従って、UHMWポリエチレンを利用することで、引張部材上へのフィルム材料移動を低減させることができ、それによって、引張部材と第1のシーブ34(例えば、駆動シーブ)との間で材料移動によって誘発される滑りの可能性を低減させることができる。しかしながら、本発明は、いかなる特定のフィルム材料にも限定されない。
【0032】
接着性バッキング52は、例えば、過酷な環境条件(例えば、高温と低温との間の変動)ならびに経年変化に対して耐性のあるアクリル接着剤から構成され得る。しかしながら、本発明は、いかなる特定の接着材にも限定されない。
【0033】
UHMWポリエチレンフィルムおよびアクリルの接着性バッキングを有する基材テープの一例は、ミネソタ州、セントポール(St.Paul、MN)のスリーエム コーポレイション(3M(登録商標)Corporation)によって製造される、スクイーク レダクション テープ 5430(Squeak Reduction Tape 5430)である。基材テープの別の例は、複数の窪みおよび/または突起がその上に配設されるPTFEテープである。窪みおよび/または突起は、引張部材(複数可)とシーブ(複数可)との間に蓄積する剪断力をさらに低減させるように適合させることができる。窪み/突起の形状の例としては、円形、楕円形、三角形、長方形、六角形、台形、直線、および/または波線が挙げられるが、それらに限定されない。そのような窪みおよび/または突起はまた、例えばUHMWポリエチレン等の種々の他の種類の材料から構成される基材上に含めることもできる。
【0034】
図3図8は、基材44を、シーブ56(例えば、図1のシーブ36)上へ、具体的には、引張部材接触面58上へ基材44を貼付するための基材アプリケーター54の実施形態を例示する。簡潔には、図3および図4を参照すると、接触面58は、円周方向に延在するシーブ−部材境界面62に沿って、引張部材60(例えば、図1の引張部材42)と接触する。接触面58は、環状引張部材溝64内に設けられる。接触面58は、第1の環状フランジ68と第2の環状フランジ70との間で軸方向に延在する、表面幅66を有する。接触面58はまた、シーブ56の周囲で円周方向に延在する表面外周も有し、該表面外周は、基材44の長さ72以下である。
【0035】
図3および図4の実施形態において、基材アプリケーター54は、基材外面46が除去可能に取り付けられ得る柔軟な基材キャリアシート74として構成される。キャリアシート74は、第1のシート端部78と第2のシート端部80との間で長手方向に延在するシート長76を有し、長さ76は、基材長72以上である。キャリアシート74は、第1のシート側部84と第2のシート側部86との間で横方向(例えば、軸方向)に延在するシート幅82を有する。シート幅82は、表面幅66以下で、かつ基材44の幅88以上である。基材幅88は、引張部材60の幅90以上である。キャリアシート74はまた、シート内面92とシート外面94との間に延在するシート厚も有する。
【0036】
キャリアシート74は、基材44の材料剛性よりも大きい材料剛性を有する柔軟な材料から構成される。そのような柔軟な材料の例としては、シートプラスチック、シートメタル等が挙げられるが、それらに限定されない。概して、シート厚は、その相対的な剛性をさらに高めるために、基材44のシート厚よりも大きい。
【0037】
図9は、キャリアシート74を利用して基材44を接触面58上へ貼付するための方法のフロー図である。図3図4、および図9を参照すると、ステップ900で、基材外面46が、光接着剤によって、シート内面92に除去可能に取り付けられる。基材外面46は、例えば比較的低い粘着性を有する両面テープ(または、折り畳まれたテープ)によって、シート内面92に除去可能に取り付けられる。ステップ902で、キャリアシート74が、シーブ56に隣接して位置付けられる。シート外面94は、例えば、シーブ56に隣接して、光接着剤によって、引張部材60に除去可能に取り付けられる。
【0038】
ステップ904で、第1のシート端部78および基材44の対応する端部96が、シーブ−部材境界面62の第1の端部98で、シーブ56と引張部材60との間に配置される。このステップは、例えば、ステップ902中に、キャリアシート74および基材44を上述した場所に位置付けることによって行うことができる。あるいは、このステップは、例えば反時計回り方向に、引張部材60を移動させ、シーブ56をその軸を中心に回転させることによって行うことができる。
【0039】
図5図9を参照すると、ステップ906で、例えば反時計回り方向に、引張部材60を移動させ、シーブ56を回転させることによって、基材44が接触面58に貼付される。接着性バッキング52は、例えば、基材44が進み、シーブ−部材境界面62においてキャリアシート74によって押し付けられるときに、ポリマーフィルム50を接触面58に取り付ける。シーブ56は、基材44をシーブ56に完全に貼付するために、基材長に応じて、1回転以上回転され得る。
【0040】
図7および図9を参照すると、ステップ908で、引張部材60から、またはシーブ−部材境界面62の第2の端部98に近接する基材44から、キャリアシート74が除去される(例えば、剥がされる)。キャリアシート74は、例えば、基材44が接触面58に貼付された後に、キャリアシート74が引張部材60に取り付けられたままである引張部材60から剥がすことができる。あるいは、キャリアシート74は、基材44が接触面58に貼付された後に、キャリアシート74が基材44に取り付けられたままである基材44から剥がすことができる(図示せず)。
【0041】
図10図13は、シーブ56(例えば、図1のシーブ40)上へ基材44を貼付するための基材アプリケーター54の別の実施形態を例示する。図10および図11の実施形態において、基材アプリケーター54は、基材44が巻き付けられ得る円筒(例えば、管状)アプリケーター本体100を含む。
【0042】
アプリケーター本体100は、第1の本体端部102と第2の本体端部104との間で軸方向に延在する。アプリケーター本体100は、基部セグメント106と、1つ以上のブリッジセグメント108および110と、1つ以上の環状整列フランジ112および114とを含む。基部セグメント106は、第1の基部端部118と第2の基部端部120との間で軸方向に延在する、外側半径方向基材接触面116を有する。第1のブリッジセグメント108は、第1の基部端部118と第1の整列フランジ112との間で軸方向に延在し、それによって、それらの間に第1の外側半径方向環状整列溝122を形成する。第2のブリッジセグメント110は、第2の基部端部120と第2の整列フランジ114との間で軸方向に延在し、それによって、それらの間に第2の外側半径方向環状整列溝124を形成する。第1の整列フランジ112は、第1の本体端部102に隣接して配設される。第2の整列フランジ114は、第2の本体端部104に隣接して配設される。
【0043】
図14は、アプリケーター本体100を利用して接触面58上へ基材44を貼付するための方法のフロー図である。図10図11、および図14を参照すると、ステップ1400で、例えば基材内面48が基材接触面116に面するように、基材44が、基部セグメント106の周囲に巻き付けられる。
【0044】
ステップ1402で、アプリケーター本体100が、シーブ56に隣接して位置付けられる。アプリケーター本体100は、例えば、引張部材60の対向部分の間に配置することができ、整列溝122および124のそれぞれは、シーブフランジ68および70のそれぞれ1つと一致する。
【0045】
ステップ1404で、基材44の端部96が、シーブ−部材境界面62の第1の端部98で、シーブ56と引張部材60との間に配置される。基材44の一部分は、例えば、アプリケーター本体100から解いて、適所に配置することができる。
【0046】
図12図14を参照すると、ステップ1406で、例えば反時計回り方向に、引張部材60を移動させ、シーブ56を回転させることによって、基材44が接触面58に貼付される。接着性バッキング52は、例えば、基材44が進み、シーブ−部材境界面62において引張部材60によって押し付けられるときに、ポリマーフィルム50を接触面58に取り付ける。アプリケーター本体100は、シーブ56と同時に回転し、それによって、シーブ56上へ取り付けるために、シーブ−部材境界面62の中へ基材44を送給する。シーブ56は、基材44をシーブ56に完全に貼付するために、基材長に応じて、1回転以上回転され得る。いくつかの実施形態において、アプリケーター本体100とシーブ56との間に延在する基材44の一部分は、例えば、基材44がまだ固定長に事前分割されていない場合に切断され得る。
【0047】
代替の実施形態では、例えば図15で例示されるように、例えば基材外面46が基材接触面116に面するように、基材44を、基部セグメント106の周囲に巻き付けることができる。そのような実施形態において、基材44は、アプリケーター本体100とシーブ56との間で交差し得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、例えば図16で例示されるように、アプリケーター本体100は、アプリケーター基部126に回転可能に接続し、該アプリケーター基部によって支持することができる。アプリケーター基部126は、貼付プロセス中に技術者によって保持されるように構成することができ、または代替として、エレベータシステムの構成要素128(例えば、エレベータかご24、釣合錘32等)に載置することができる。
【0049】
図17は、円筒アプリケーター本体130の代替の実施形態を例示する。図11のアプリケーター本体100とは対照的に、アプリケーター本体130は、1つ以上の追加的な基部セグメント132を含む。追加的な基部セグメント132は、対応する引張部材接触面58に複数の基材44を同時に貼付するために、上で説明されるような様式で、動作中に利用することができる。いくつかの実施形態において、アプリケーター本体130は、図17で示されるように単一の本体として構成することができる。代替の実施形態において、アプリケーター本体130は、複数のモジュールセクションとして構成することができる。
【0050】
図18は、円筒アプリケーター本体134の別の代替の実施形態を例示する。図11のアプリケーター本体100とは対照的に、アプリケーター本体134は、整列溝122および124(図11を参照されたい)を伴わずに構成される。加えて、アプリケーター本体134は、整列フランジ112および114がシーブフランジ68と70との間で引張部材溝64内に位置付けられ得るようにサイズ設定される。
【0051】
いくつかの実施形態において、例えば図18で例示されるように、基材44が接触面58に貼付された後に、シーブ56上での急峻な隆起線の形成を防止するために、基材44の1つ以上の端部96が先細にされ得る。
【0052】
種々の本発明の実施形態を開示したが、当業者には、本発明の範囲内のさらに多くの実施形態および実現形態が可能であることが明らかになるであろう。例えば、本明細書で説明される本発明は、特定の特徴を含む複数の態様および実施形態を含む。これらの特徴は、個々に説明され得るが、これらの特徴の一部または全部が、態様のいずれか1つに組み合わせられ得、本発明の範囲内にとどまり得ることは、本発明の範囲内である。故に、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物に照らすことを除いて、制限されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18