特許第5972499号(P5972499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5972499
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】FRP成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/12 20060101AFI20160804BHJP
   B29C 43/32 20060101ALI20160804BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
   B29C43/12
   B29C43/32
   B29K105:08
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-510338(P2016-510338)
(86)(22)【出願日】2015年11月25日
(86)【国際出願番号】JP2015083101
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-254522(P2014-254522)
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508266317
【氏名又は名称】栗栖 熈
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 熈
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−162017(JP,A)
【文献】 特開2013−199016(JP,A)
【文献】 特開2013−208726(JP,A)
【文献】 特開2004−204211(JP,A)
【文献】 特開2009−298660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 39/00−39/44
B29K 105/08
B29C 70/06
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルテンを含む密封用パテを用いて型を密封し、内部を吸引して樹脂を注入するFRP成形方法であって、
前記密封用パテは、前記型の密封代の外縁及び内縁を囲み、更にその間を吸引する
ことを特徴とするFRP成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載のFRP成形方法であって、
前記型内部に、隙間を備える管状の樹脂導入通路を設ける
ことを特徴とするFRP成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載のFRP成形方法であって、
前記樹脂導入通路を、樹脂注入口を中心に放射状に複数配置する
ことを特徴とするFRP成形方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のFRP成形方法であって、
パテ材を筋状に塗布した繊維シートを、隙間確保材として、前記型の内部に設置する
ことを特徴とするFRP成形方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のFRP成形方法であって、
前記密封用パテは、小麦粉、水、油およびタルクを含む
ことを特徴とするFRP成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP成形法に関する。本発明は2014年11月28日に出願された日本国特許の出願番号2014-254522の優先権を主張し、文献の参照による織り込みが認められる指定国については、その出願に記載された内容は参照により本出願に織り込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、真空吸引FRP成形方法として、大きな型の場合は本体型と上部フィルムとを両面テープを用いて密封する方法や、小型の型の場合は上部カバーにゴムを使って密封する方法があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これまでの真空FRP成形方法には欠点が多かった。例えば、フィルムを使って大型のものを作るにはセットに時間が掛かり、また大量のゴミが出る。一方で、カバーを用いるような小型のものでは精度が必要であり、割型等を作成することはできなかった。
【0004】
そこで本発明は、高精度なFRP成形を行うことが可能なFRP成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のFRP成形方法は、グルテンを含む密封用パテを用いて型を密封し、内部を吸引して樹脂を注入する方法であって、前記密封用パテは、前記型の密封代の外縁及び内縁を囲み、更にその間を吸引することを特徴とする。
【0007】
また、前記密封用パテは、小麦粉、水、油およびタルクを含んでいてもよい。
【0008】
また、前記型内部に、隙間を備える管状の樹脂導入通路を設けてもよい。
【0009】
また、前記樹脂導入通路を、樹脂注入口を中心に放射状に複数配置してもよい。
【0010】
また、パテ材を筋状に塗布した繊維シートを、隙間確保材として、前記型の内部に設置してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高精度なFRP成形を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のFRP成形方法に係る割り型の本体1の上面図である。
図2】本体1のA−A′線における断面図である。
図3】本発明のFRP成形方法に係る割り型11の分解斜視図である。
図4】割り型11のB−B′線における断面図である。
図5】隙間確保材17の説明図である。
図6】(A)(B)樹脂導入通路材18の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態の例について、以下、図に基づいて説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明のFRP成形方法に係る割り型の本体1の上面図、図2は、本体1のA−A′線における断面図である。図1に示すように、割り型の本体1は、通常は厚さ8〜10mm程度であり、通常のFRPの型と同様の精度強度で良い。
【0015】
まず、この本体1に離型剤を塗り適量のガラス繊維2を敷く。次に、図2に示すように、離型剤を塗った割り型のカバー3をかぶせる。割り型のカバー3の端部に空気通路4、空気吸引金属金具5を取り付けパイプで真空ポンプ6につなぐ。割り型のカバー3の中央部には、樹脂注入金属金具7を取り付けておく。
【0016】
すべてのセットが終わったら、割り型の本体1、割り型のカバー3の接合部をグルテン入りパテ8で密封する。
【0017】
その後、空気吸引金属金具5より真空ポンプ6にて空気を吸引し、樹脂注入金属金具7より熱硬化樹脂を注入し硬化させる。
【0018】
グルテン入りパテ8は、小麦粉に水を加え練りグルテンを発生させた後に、離型剤として且つ流動性をあげるために油を、増量剤として且つ流動性を下げるためにタルクを入れ使いよい粘土にして使用する。
【0019】
すなわち、密封用のパテ8は、水、小麦粉、タルク、油を適量で混ぜて調製することができる。小麦粉としては、グルテンを多く発生させるため、たんぱく質成分が多い(10〜14質量%)市販の強力粉を用いることができる。油は、市販のサラダ油を使用することができる。
【0020】
パテ全体のうち、小麦粉は30〜40質量%、タルクは、25〜35質量%である。
【0021】
このように、両面テープをグルテン入りパテに変える事で、セットが容易となると共に、ゴミを減少させ量産することが可能である。また、このようなパテは、再利用可能で、かつ無害で廃棄しやすいという利点がある。
【0022】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、上述の実施形態と同様の構成を有するものについては同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0023】
図3は、本発明のFRP成形方法に係る割り型11の分解斜視図、図4は、割り型11のB−B′線における断面図である。図に示すように、本発明のFRP成形方法に係る割り型11は、本体11Aと、上部カバー11Bと、を備えている。
【0024】
本体11Aは、実際の成形型13Aの縁にフランジ状の密封代(シロ)12Aを備えている。この密封代12Aの外縁及び内縁には、パテ8が塗布されている。具体的に、密封代12Aを取り囲む外縁には、外側パテ部121が設けられている。また、その内側には、成形型13Aを取り囲むように、内側パテ部122が設けられている。また、本体11Aの成形型13Aの内部には、樹脂注入管14に接続された樹脂注入口14Aが形成されている。
【0025】
上部カバー11Bも同様に、成形型13Bの縁にフランジ状の密封代(シロ)12Bを備えている。この密封代12Bには、密封代12Aに形成される外側パテ部121と内側パテ部122との間に生じる空間を吸引可能な位置、すなわち外縁及び内縁の間の位置に、強真空吸引口15が設けられている。また、上部カバー11Bの成形型13Bには、型内部を吸引可能な位置に弱真空吸引口16が設けられている。両吸引口は、それぞれ強吸引又は弱吸引が可能な、図示しない真空ポンプに接続されている。
【0026】
図4に、このような割り型の使用例を示す。まず、成形型13A及び13B内部に、強度強化用の繊維を兼ねた隙間確保材17を配置するのが好ましい。隙間確保材17は、例えば、樹脂パテ付のガラス繊維シート(ガラスマット、ロービングクロス、ガラスクロス等)である。図5に、目の粗いガラス繊維のロービングクロスに、ポリエステルとタルクからなるパテ材を筋状の縞模様となるようにスクリーン印刷により塗布することで得られた隙間確保材17を示す。このように、パテ材を縞模様に塗布することで、成形型内部で重ねた場合でも隙間が確保される。この隙間が注入された樹脂が通る通路の役目を果たし、途中で止まることなく、樹脂を全体に行き渡らせることが容易となる。
【0027】
なお、成形型13A及び13B内部には、さらに樹脂導入通路を設けておくのが望ましい。樹脂導入通路材18は例えば、隙間のある管状の部材である。このような樹脂導入通路材18は、図6(A)に示すように、棒部材に、熱硬化性の樹脂を浸み込ませたガラス繊維を、隙間を作りながら巻きつけ、熱硬化させる。これにより、図6(B)に示すような、隙間を備えた樹脂導入通路材18を作成することができる。なお、樹脂導入通路材18は、その一端を樹脂注入口14A付近に配置し、他端を弱真空吸引口16付近に配置するのが望ましい。
【0028】
このように準備された本体11Aに上部カバー11Bをかぶせた後、まず、強真空吸引口15から強真空吸引を開始する。なお、強真空吸引は、樹脂の注入が終了するまで絶えず行うものとする。これにより、外側パテ部121と内側パテ部122との間が吸引され、成形型空間の密封を確実なものとすることができる。
【0029】
次に、弱真空吸引口16から弱真空吸引を開始する。これにより、成形型空間は減圧され、樹脂注入口14Aから徐々に樹脂が内部へと流れ込む。注入された樹脂は、樹脂導入通路材18を、その隙間から漏れ出しながら進む。これにより、注入した樹脂を全体に行き渡らせることが容易となる。なお、注入された樹脂の行き渡り状況に応じて、弱真空吸引の吸引力を調整するのが望ましい。
【0030】
以上、本発明の実施形態の例について説明した。
【0031】
このように本発明によれば、密封用パテに、小麦粉を用いたグルテン入りのパテを使用することで、安価かつ再利用可能で、無害な上に廃棄も容易なFRP成形が可能となる。
【0032】
また、樹脂導入通路材18および隙間確保材17を用いることで、樹脂を行き渡らせることがより確実となり、型の大きさや形状の自由度が増す。
【0033】
さらに、強真空吸引により密封代を、弱吸引部分により成形型内部を別々に吸引することで、より確実に、精緻な成形を行うことが可能となる。
【0034】
なお、本発明に係るFRP成形方法は上記に限らず、さらに多くの代替物、修正および変形例が当業者にとって明らかである。また、上記各実施形態や変形例における各特徴をそれぞれ組み合わせて用いることもできる。
【0035】
例えば、樹脂導入通路は、複数配置してもよい。かかる場合、例えば樹脂注入口14Aを、成形型13Aの中央付近に形成し、その樹脂注入口14Aを中心にして放射状に樹脂導入通路材18を配置する。これにより、更に偏りなく樹脂を行きわたらせることが出来る。
【符号の説明】
【0036】
1・11A:本体、2:ガラス繊維、3:カバー、4:空気通路、5:空気吸引金属金具、6:真空ポンプ、7:樹脂注入金属金具、8:パテ、11:割り型、11B:上部カバー、121:外側パテ部、122:内側パテ部、12A:密封代、12B:密封代、13A:成形型、13B:成形型、14:樹脂注入管、14A:樹脂注入口、15:強真空吸引口、16:弱真空吸引口、17:隙間確保材、18:樹脂導入通路材。
【要約】
高精度なFRP成形を行うことが可能なFRP成形方法を提供する。
本発明に係るFRP成形方法は、グルテンを含む密封用パテを用いて型を密封し、内部を吸引して樹脂を注入する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6