(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972511
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/05 20060101AFI20160804BHJP
C08G 77/22 20060101ALI20160804BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
C08L83/05
C08G77/22
C08L83/07
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2008-91549(P2008-91549)
(22)【出願日】2008年3月31日
(65)【公開番号】特開2009-242627(P2009-242627A)
(43)【公開日】2009年10月22日
【審査請求日】2011年3月10日
【審判番号】不服2014-23635(P2014-23635/J1)
【審判請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】東レ・ダウコーニング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森田 好次
(72)【発明者】
【氏名】須藤 通孝
【合議体】
【審判長】
加藤 友也
【審判官】
西山 義之
【審判官】
小野寺 務
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−84766(JP,A)
【文献】
特開2002−88155(JP,A)
【文献】
特開2007−182549(JP,A)
【文献】
特開2007−63538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C09D183/00-183/16
C09J183/00-183/16
C08G 77/00- 77/62
H01L 23/00- 23/66
H01L 33/00- 33/64
CA(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(i)平均組成式:
R1aSiO(4−a)/2
(式中、R1は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、但し、全R1の0.1〜40モル%がアルケニル基であり、aは1≦a<2を満たす正数である。)
で表される、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと(ii)一般式:
HR22SiO(R22SiO)nR22SiH
(式中、R2は同じか又は異なるアルキル基であり、nは0〜1,000の整数である。)
で表されるジオルガノポリシロキサン{(i)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1モル未満となる量}を、(iii)ヒドロシリル化反応用触媒の存在下、ヒドロシリル化反応してなる溶剤可溶性のオルガノポリシロキサン、
(B)平均組成式:
R2bHcSiO(4−b−c)/2
(式中、R2は脂肪族不飽和結合を有さない置換若しくは非置換の一価炭化水素基であり、b及びcは0.7≦b≦2.1、0.001≦c≦1.0、かつ、0.8≦b+c≦2.6を満たす正数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルとなる量}、および
(C)ヒドロシリル化反応用触媒 触媒量
から少なくともなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(i)成分中の全R1の少なくとも10モル%がアリール基である、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(ii)成分中のR2がメチル基である、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(ii)成分を、(i)成分中のアルケニル基1モルに対して、(ii)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.05〜0.95モルとなる量を反応させることを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物、およびそれを硬化してなる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する分岐鎖状又は三次元網状のオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、およびヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物が開示されている。このような硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化して高硬度の硬化物を形成することから、フォトカプラー、発光ダイオード、固体撮像素子等の光学用半導体装置における半導体素子の保護コーティング剤として使用できる。
【0003】
しかし、このような硬化物は弾性率が高いため、耐熱衝撃性や接着性が乏しいという問題があり、特許文献3〜5では、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する分岐鎖状又は三次元網状のオルガノポリシロキサン中にジオルガノポリシロキサンの直鎖状セグメントを導入して、硬化物の弾性率を低下させることが提案されている。特許文献3〜5では、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する分岐鎖状又は三次元網状のオルガノポリシロキサン中にジオルガノポリシロキサンの直鎖状セグメントを導入するため、分子鎖両末端ケイ素原子結合水素原子で封鎖されたジオルガノポリシロキサンとビニルジオルガノクロロシランをヒドロシリル化反応して分子鎖両末端ジオルガノクロロシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンを調製し、これをオルガノトリクロロシランやトリオルガノクロロシラン等のクロロシラン類とアルカリ触媒の存在下で共加水分解縮合反応するが、得られるオルガノポリシロキサン中に塩素イオンが残留したり、また、アルカリ触媒により、直鎖状セグメントの再配列が生じ、硬化物の弾性率を十分に低下できないという問題がある。
【0004】
なお、特許文献6には、一分子中に少なくと1個のアルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する分岐鎖状又は三次元網状のオルガノポリシロキサンと分子鎖両末端ケイ素原子結合水素原子で封鎖されたジオルガノポリシロキンをヒドロシリル化反応してなる、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合アルコキシシラン、および縮合反応用触媒からなる縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物が提案されているが、ヒドロシリル化反応により硬化する硬化性オルガノポリシロキサン組成物については開示がない。
【特許文献1】特開2004−186168号公報
【特許文献2】特開2005−327777号公報
【特許文献3】特開2007−063538号公報
【特許文献4】特開2007−084766号公報
【特許文献5】特開2007−182549号公報
【特許文献6】特開2002−088155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、適度な弾性率を有する硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物、および適度な弾性率を有する硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)(i)平均組成式:
R
1aSiO
(4−a)/2
(式中、R
1は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、但し、全R
1の0.1〜40モル%がアルケニル基であり、aは1≦a<2を満たす正数である。)
で表される、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと(ii)一般式:
HR
22Si
O(R
22SiO)
nR
22SiH
(式中、R
2は同じか又は異なり、脂肪族不飽和結合を有さない置換若しくは非置換の一価炭化水素基であり、nは0〜1,000の整数である。)
で表されるジオルガノポリシロキサン{(i)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1モル未満となる量}を、(iii)ヒドロシリル化反応用触媒の存在下、ヒドロシリル化反応してなる溶剤可溶性のオルガノポリシロキサン、
(B)平均組成式:
R
2bH
cSiO
(4−b−c)/2
(式中、R
2は上記のとおりであり、b及びcは0.7≦b≦2.1、0.001≦c≦1.0、かつ、0.8≦b+c≦2.6を満たす正数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルとなる量}、および
(C)ヒドロシリル化反応用触媒 触媒量
から少なくともなる。
【0007】
(i)成分中の全R
1の少なくとも10モル%がアリール基であることが好ましく、(ii)成分中のR
2がメチル基であることが好ましい。
【0008】
また、(ii)成分を、(i)成分中のアルケニル基1モルに対して、(ii)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.05〜0.95モルとなる量を反応させることがこのましい。
【0009】
さらに、本発明の硬化物は、上記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、適度な弾性率を有する硬化物を与えるという特徴があり、また、本発明の硬化物は、適度な弾性率を有するという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは本組成物の主剤であり、(i)平均組成式:
R
1aSiO
(4−a)/2
(式中、R
1は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、但し、全R
1の0.1〜40モル%がアルケニル基であり、aは1≦a<2を満たす正数である。)
で表される、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと(ii)一般式:
HR
22Si
O(R
22SiO)
nR
22SiH
(式中、R
2は同じか又は異なる脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、nは0〜1,000の整数である。)
で表されるジオルガノポリシロキサン{(i)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1モル未満となる量}を、(iii)ヒドロシリル化反応用触媒の存在下、ヒドロシリル化反応してなるものである。
【0012】
(i)成分のオルガノポリシロキサンは、平均組成式:
R
1aSiO
(4−a)/2
で表される。式中、R
1は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、炭素数1〜12、好ましくは1〜8のものが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換した、具体的には、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基が例示される。
【0013】
一分子中、少なくとも2個のR
1はアルケニル基であり、その含有量は、全R
1の0.1〜40モル%、好ましくは0.5〜40モル%、特に好ましくは1〜30モル%の範囲内である。このアルケニル基としては、ビニル基、アリル基が好ましい。また、本組成物を硬化して得られる硬化物の光透過率を向上させるため、全R
1の少なくとも10モル%がアリール基であることが好ましい。このアリール基としてはフェニル基が好ましい。
【0014】
また、式中、aは1≦a<2、好ましくは1≦a≦1.8、特に好ましくは1≦a≦1.5を満たす正数である。このような(i)成分の分子構造は分岐状又は三次元網状であり、その25℃における性状は特に限定されないが、固体状、あるいは粘度が10mPa・s以上の液状であることが好ましい。
【0015】
(ii)成分のジオルガノポリシロキサンは、一般式:
HR
22Si
O(R
22SiO)
nR
22SiH
で表される。式中、R
2は同じか又は異なり、脂肪族不飽和結合を有さない置換若しくは非置換の一価炭化水素基であり、炭素数1〜12、好ましくは1〜8のものが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換した、具体的には、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基が例示される。R
2はアルキル基が好ましく、特に、メチル基が好ましい。
【0016】
また、式中、nは0〜1,000、好ましくは3〜1,000、さらに好ましくは3〜500、より好ましくは3〜100、特に好ましくは3〜50の範囲内の整数である。これは、nが上記範囲の下限未満であると、得られる硬化物の弾性率を低下させることが難しいからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られるオルガノポリシロキサンの取扱作業性が著しく低下したり、得られる硬化物の機械的強度が低下するようになるからである。このような(ii)成分の25℃における粘度は特に限定されないが、好ましくは0.1〜10,000mPa・sの範囲内である。
【0017】
(ii)成分は、(i)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1モル未満、好ましくは0.05〜0.95モル、より好ましくは0.1〜0.95モル、特に好ましくは0.2〜0.8モルの範囲内となる量を反応させる。これは、得られるオルガノポリシロキサンのゲル化を抑制し、アルケニル基を残存させるためである。
【0018】
(iii)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(i)成分と(ii)成分のヒドロシリル化反応を行なうための触媒である。(iii)成分としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、ヒドロシリル化反応を著しく促進できることから白金系触媒であることが好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体が例示され、特に、白金−アルケニルシロキサン錯体であることが好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等の基で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等の基で置換したアルケニルシロキサンが例示される。
【0019】
(iii)成分は、(i)成分と(ii)成分の合計量に対して、本成分中の触媒金属が重量単位で0.01〜1,000ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特に、0.1〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(iii)成分の添加量が上記範囲の下限未満であると、ヒドロシリル化反応が十分に進行しにくくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られるオルガノポリシロキサンに着色等の問題を生じるおそれがあるからである。
【0020】
このヒドロシリル化反応の条件は特に限定されず、加熱により反応を促進することができる。反応系において、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族系溶剤等の溶剤を用いた場合には、反応温度は溶剤の還流温度であることが好ましく、有機溶媒を用いない場合には、200℃以下であることが好ましい。なお、この反応において、有機溶剤を用いることにより、反応系の粘度を低下させると共に、反応系から水を共沸等により脱水することができる。
【0021】
このようにして得られる(A)成分のオルガノポリシロキサンは、分岐鎖状又は三次元網状のオルガノポリシロキサン中にジオルガノポリシロキサンからなる直鎖状セグメントを再配列を伴うことなく導入することができる。このような(A)成分は、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族系溶剤等の溶剤に可溶であり、その25℃における性状は特に限定されず、液状、粘稠な液状、固体状が例示される。これは、(i)成分と(ii)成分の相溶性の違いや、(i)成分と(ii)成分の比率によって、得られる(A)成分の外観は異なり、(i)成分が低分子量の場合や、(i)成分の量が少ない場合には、透明あるいは半透明な固体状となり、(i)成分が高分子、あるいは(i)成分の量が多い場合は、半透明あるいは白濁のガム状となる。(A)成分の分子量は特に限定されないが、取り扱い性や溶剤可溶性の点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフでの標準ポリスチレン換算による重量平均分子量が500〜100,000の範囲内であることが好ましく、特に、1,000〜50,000の範囲内であることが好ましい。
【0022】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、本組成物の架橋剤として作用するものであり、平均組成式:
R
2bH
cSiO
(4−b−c)/2
で表される。式中、R
2は脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、上記と同様の基が例示される。また、式中、b及びcは0.7≦b≦2.1、0.001≦c≦1.0、かつ0.8≦b+c≦2.6、好ましくは0.8≦b≦2、0.01≦c≦1、1≦b+c≦2.4を満たす正数である。
【0023】
(B)成分の分子構造は特に限定されず、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、三次元網状構造が例示され、好ましくは、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、三次元網状構造である。このような(B)成分の25℃における性状は固体状又は液状であり、好ましくは、25℃における粘度が10,000mPa・s以下、より好ましくは0.1〜5,000mPa・sの範囲内、特に好ましくは0.5〜1,000mPa・sの範囲内である。
【0024】
このような(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体が例示される。
【0025】
本組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モル、好ましくは0.1〜5モル、特に好ましくは0.5〜5モルの範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が、上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に硬化しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物の機械的特性が低下する恐れがあるからである。
【0026】
(C)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(A)成分と(B)成分のヒドロシリル化反応による架橋反応を促進するための触媒であり、前記(iii)成分と同様のものが例示される。本組成物において、(C)成分の含有量は触媒量であり、具体的には、(A)成分と(B)成分の合計量に対して、本成分中の触媒金属が重量単位で0.01〜1000ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特に、0.1〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、本組成物が十分に硬化しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物に着色等の問題を生じるおそれがあるからである。
【0027】
本組成物には、その他任意の成分として、前記(i)成分のような一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有してもよい。このオルガノポリシロキサンの含有量は特に限定されないが、好ましくは、(A)成分100重量部に対して0.1〜100重量部の範囲内である。
【0028】
また、本組成物には、その他任意の成分として、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等の反応抑制剤を含有してもよい。この反応抑制剤の含有量は限定されないが、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.0001〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
【0029】
さらに、本組成物には、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有していてもよい。この接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であることが好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基であることが好ましい。また、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アラルキル基、前記ハロゲン化アルキル基等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基等のエポキシ基含有一価有機基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は(A)成分又は(B)成分と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、アルケニル基またはケイ素原子結合水素原子を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。
【0030】
このような有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマーが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にアルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とアルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、式:
【化1】
(式中、k、m、およびpは正数である。)
で示されるシロキサン化合物、式:
【化2】
(式中、k、m、p、およびqは正数である。)
で示されるシロキサン化合物が例示される。
【0031】
この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、本組成物において、この接着付与剤の含有量は限定されないが、本組成物の合計100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲内であることが好ましい。
【0032】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、溶剤等を含有してもよい。
【0033】
本組成物は室温もしくは加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度としては、50〜250℃の範囲内であることが好ましい。このようにして得られる硬化物はゴム状、特には、硬質のゴム状、あるいは可撓性を有するレジン状である。
【0034】
硬化物の可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上であることが好ましい。また、硬化物の光透過率(25℃)が80%以上であることが好ましい。これは、硬化物の屈折率が1.5未満であったり、光透過率が80%未満であるような硬化物により被覆された半導体素子を有する半導体装置に十分な信頼性を付与することができなくなるおそれがあるからである。このような屈折率が大きく、光透過性率が高い硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得るためには、配合される各成分の屈折率がほぼ同じであることが好ましい。なお、この屈折率は、例えば、アッベ式屈折率計により測定することができる。この際、アッベ式屈折率計における光源の波長を変えることにより任意の波長における屈折率を測定することができる。
【0035】
また、硬化物の光透過率は、例えば、光路長1.0mmの硬化物を分光光度計により測定することにより求めることができる。また、硬化物の200nm〜250nmの波長における紫外線透過率(25℃)が10%以下であることが好ましい。これは、本組成物の硬化物により半導体素子を被覆してなる半導体装置が、200nm〜250nmの短波長の紫外線を受けた場合に、その半導体装置を構成する材料の劣化を防止することができなくなるおそれがあるからである。この紫外線透過率は、例えば、光路長1.0mmの硬化物を分光光度計により測定することにより求めることができる。
【実施例】
【0036】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびその硬化物を実施例、比較例により詳細に説明する。なお、実施例中、粘度は25℃における値であり、また、重量平均分子量は、THFを溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0037】
[硬化物の貯蔵弾性率およびガラス転移点(Tg)]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を脱泡し、幅10mm、長さ50mm、深さ2mmのキャビティを有する金型に充填し、150℃、2.5MPaの条件で60分間プレス成型した後、180℃のオーブン中で2時間2次加熱して硬化物試験片を作製した。この硬化物試験片をARES粘弾性測定装置(Reometric Scientific社製のRDA700)を使用して、ねじれ0.05%、振動数1Hzの条件で、約−150℃〜250℃までの温度範囲で毎分3℃昇温して貯蔵弾性率とtanδを求めた。また、tanδの値から硬化物のガラス転移点(Tg)を求めた。
【0038】
[硬化物の外観]
上記と同様にして作製した硬化物の外観を目視で観察した。
【0039】
[硬化物の光透過率]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を150℃の熱風循環式オーブンで1時間加熱することにより硬化させて硬化物を作製した。この硬化物(光路長1.0mm)の25℃における光透過率を測定した。
【0040】
[参考例1]
25℃において固体状である、平均単位式:
(C
6H
5SiO
3/2)
0.75[(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2]
0.25
で表されるオルガノポリシロキサン(重量平均分子量=1,600、ビニル基含有量=5.6重量%)の54.4重量%トルエン溶液183.69重量部に、式:
H(CH
3)
2SiO[(CH
3)
2SiO]
20Si(CH
3)
2H
で表されるジメチルポリシロキサン13.68重量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.08モルとなる量)を混合した後、加熱してトルエンと水の共沸として系内から水分を除去した。室温まで冷却した後、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で5ppmとなる量)を混合した。ゆっくり加熱して103℃〜107℃で1時間加熱攪拌した。溶液は透明からやや白色半透明になった。1mmHgから5mmHg、130℃で加熱減圧してトルエンを除去した後、冷却し、25℃で半透明固体状であるオルガノポリシロキサン(重量平均分子量=2,600、ビニル基含有量=4.8重量%)を収率98%で得た。
【0041】
[参考例2]
25℃において固体状である、平均単位式:
(C
6H
5SiO
3/2)
0.75[(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2]
0.25
で表されるオルガノポリシロキサン(重量平均分子量=1,600、ビニル基含有量=5.6重量%)の54.4重量%トルエン溶液187.81重量部に、式:
H(CH
3)
2SiO[(CH
3)
2SiO]
20Si(CH
3)
2H
で表されるジメチルポリシロキサン27.55重量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.16モルとなる量)を混合した後、加熱してトルエンと水の共沸として系内から水分を除去した。室温まで冷却した後、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で5ppmとなる量)を混合した。ゆっくり加熱して103℃〜107℃で1時間加熱攪拌した。溶液は透明からやや白色半透明になった。1mmHg〜5mmHg、130℃で加熱減圧してトルエンを除去した後、冷却し、半透明で粘稠なオルガノポリシロキサン{重量平均分子量=8,400と1,550(GPCの面積比で16:68)、ビニル基含有量=4.4重量%}を収率99%で得た。
【0042】
[参考例3]
25℃において固体状である、平均単位式:
(C
6H
5SiO
3/2)
0.75[(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2]
0.25
で表されるオルガノポリシロキサン(重量平均分子量=1,600、ビニル基含有量=5.6重量%)の54.4重量%−トルエン溶液181.90重量部に、式:
H(CH
3)
2SiO[(CH
3)
2SiO]
20Si(CH
3)
2H
で表されるジメチルポリシロキサン47.89重量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.28モルとなる量)を混合した後、加熱してトルエンと水の共沸として系内から水分を除去した。室温まで冷却した後、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で5ppmとなる量)を混合した。ゆっくり加熱して103℃〜107℃で1時間加熱攪拌した。溶液は透明からやや白色半透明になった。1mmHg〜5mmHg、130℃で加熱減圧してトルエンを除去した後、冷却し、半透明で粘稠なガム状であるオルガノポリシロキサン{重量平均分子量=11,000と1,400(GPCの面積比で43:48)、ビニル基含有量=3.9重量%}を収率99%で得た。
【0043】
[実施例1]
参考例1で調製したオルガノポリシロキサン77.4重量部、粘度が950mPa・sである、平均単位式:
(C
6H
5SiO
3/2)
0.40[(CH
3)
2HSiO
1/2]
0.60
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン22.6重量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.1モルとなる量)、および白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2ppmとなる量)を均一に混合して硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。次に、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を所定の条件で硬化して硬化物を作製した。得られた硬化物の特性を表1に示した。
【0044】
[実施例2]
参考例2で調製したオルガノポリシロキサン80.9重量部、粘度が950mPa・sである、平均単位式:
(C
6H
5SiO
3/2)
0.40[(CH
3)
2HSiO
1/2]
0.60
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン19.1重量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量)、および白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2ppmとなる量)を均一に混合して硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。次に、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を所定の条件で硬化して硬化物を作製した。得られた硬化物の特性を表1に示した。
【0045】
[実施例3]
参考例3で調製したオルガノポリシロキサン85.2重量部、粘度が950mPa・sである、平均単位式:
(C
6H
5SiO
3/2)
0.40[(CH
3)
2HSiO
1/2]
0.60
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン19.1重量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.8モルとなる量)、および白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2ppmとなる量)を均一に混合して硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。次に、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を所定の条件で硬化して硬化物を作製した。得られた硬化物の特性を表1に示した。
【0046】
[比較例1]
25℃において固体状である、平均単位式:
(C
6H
5SiO
3/2)
0.75[(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2]
0.25
で表されるオルガノポリシロキサン(重量平均分子量=1,600)73.5重量部、粘度が950mPa・sである、平均単位式:
(C
6H
5SiO
3/2)
0.40[(CH
3)
2HSiO
1/2]
0.60
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン26.5重量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.1モルとなる量)、および白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2ppmとなる量)を均一に混合して硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。次に、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を所定の条件で硬化して硬化物を作製した。得られた硬化物の特性を表1に示した。
【0047】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、室温もしくは加熱により硬化して、適度な弾性率を有する硬化物を形成できるので、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤として使用することができ、特に、硬化物の光透過率が高いことから、光学用途の半導体素子の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤として好適である。