(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1フレームの走査範囲を形成する複数の走査線で超音波送受信を行なうことにより収集された複数フレーム分の2次元又は3次元の反射波データをフレーム間で比較することで、前記走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報を取得する処理部と、
前記走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報から時系列に沿ったパワー画像を生成する画像生成部と、
前記時系列に沿ったパワー画像の間で、予め設定された2次元又は3次元の関心領域内の複数点それぞれのスペックルの時系列に沿った速度ベクトルを検出する検出部と、
前記複数点それぞれのスペックルの時系列に沿った速度ベクトルの代表値を時系列に沿ってプロットした時間変化曲線、又は、前記時間変化曲線を画像化した時間変化画像を、移動情報データとして前記画像生成部に生成させ、所定の表示部に表示させる制御部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
前記処理部は、自己相関法により前記複数フレーム分の2次元又は3次元の反射波データをフレーム間で比較することで、前記走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
前記処理部は、前記1フレームの走査範囲を形成する各走査線で1回ずつ超音波送受信を行なうことにより収集された複数フレーム分の2次元又は3次元の反射波データをフレーム間で比較することで、前記走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
前記制御部は、前記パワー画像の関心領域内に前記複数点それぞれの速度ベクトルを示す所定の図形を重畳した重畳画像を、前記移動情報データとして前記画像生成部に生成させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
前記制御部は、前記代表値及び当該代表値の算出元となる前記複数点それぞれの速度ベクトルのスカラー量の分布を示すヒストグラムの少なくとも1つが、前記重畳画像の所定位置に重畳された画像を、前記移動情報データとして前記画像生成部に生成させることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
前記制御部は、前記時間変化曲線又は前記時間変化画像と並列して前記重畳画像を動画表示させる場合、表示されている重畳画像の時相に対応する位置を前記時間変化曲線又は前記時間変化画像において表示させることを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
前記処理部は、前記関心領域に含まれる走査線にて別途行なわれた超音波送受信により収集された反射波データに対して、周波数解析を行なうことで前記走査線の時系列に沿った血流情報又は当該走査線上のサンプルボリュームにおける時系列に沿った血流情報を取得し、
前記画像生成部は、前記周波数解析により取得された時系列に沿った血流情報から時系列に沿ったドプラ波形を生成し、
前記制御部は、前記ドプラ波形と、前記移動情報データとを、両者のデータの同一時相が明示される形態で前記所定の表示部に表示させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
前記処理部は、前記関心領域に含まれる走査線にて別途行なわれた超音波送受信により収集された反射波データに対して、周波数解析を行なうことで前記走査線の時系列に沿った血流情報又は当該走査線上のサンプルボリュームにおける時系列に沿った血流情報を取得し、
前記画像生成部は、前記周波数解析により取得された時系列に沿った血流情報から時系列に沿ったドプラ波形を生成し、
前記制御部は、前記ドプラ波形と、前記移動情報データとを、両者のデータの同一時相が明示される形態で前記所定の表示部に表示させることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
前記制御部は、前記ドプラ波形と並列して前記重畳画像を動画表示させる場合、表示されている重畳画像の時相に対応する位置を前記ドプラ波形において表示させることを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置。
1フレームの走査範囲を形成する複数の走査線で超音波送受信を行なうことにより収集された複数フレーム分の2次元又は3次元の反射波データをフレーム間で比較することで取得された前記走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報から生成された時系列に沿ったパワー画像の間で、予め設定された2次元又は3次元の関心領域内の複数点それぞれのスペックルの時系列に沿った速度ベクトルを検出する検出部と、
前記複数点それぞれのスペックルの時系列に沿った速度ベクトルの代表値を時系列に沿ってプロットした時間変化曲線、又は、前記時間変化曲線を画像化した時間変化画像を、移動情報データとして生成させ、所定の表示部に表示させる制御部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
1フレームの走査範囲を形成する複数の走査線で超音波送受信を行なうことにより収集された複数フレーム分の2次元又は3次元の反射波データをフレーム間で比較することで取得された前記走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報から生成された時系列に沿ったパワー画像の間で、予め設定された2次元又は3次元の関心領域内の複数点それぞれのスペックルの時系列に沿った速度ベクトルを検出する検出手順と、
前記複数点それぞれのスペックルの時系列に沿った速度ベクトルの代表値を時系列に沿ってプロットした時間変化曲線、又は、前記時間変化曲線を画像化した時間変化画像を、移動情報データとして生成させ、所定の表示部に表示させる制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を説明するための図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
【0013】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層及び音響レンズと、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材と等を有する。超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
【0014】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移(ドプラ偏移)を受ける。
【0015】
なお、第1の実施形態は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ1により、被検体Pを2次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ1や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ1により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、適用可能である。ここで、1次元超音波プローブは、1本の走査線により、被検体Pを1次元で走査することも可能である。また、2次元超音波プローブは、超音波を集束して送信することで、被検体Pを2次元で走査することも可能である。
【0016】
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、後述するように、カラードプラ画像の撮像を行なうことができる。また、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、後述するように、Bモード画像やカラードプラ画像、Bモード画像の一部にカラードプラ画像が重畳された画像に設定されたサンプルボリュームにおけるドプラ波形の収集を行なうことができる。このため、超音波プローブ1は、収集する画像の種別に応じて、例えば、カラーフローマッピング(CFM:Color Flow Mapping)法を行なうための超音波プローブ1から、連続波(CW:Continuous Wave)ドプラ法やパルス波(PW:Pulsed Wave)ドプラ法を行なうための超音波プローブ1に取り替えられる場合もある。なお、上記のサンプルボリュームは、レンジゲートとも呼ばれる場合もある。
【0017】
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0018】
例えば、入力装置3は、後述する画像処理部15が画像処理を行なうための関心領域(ROI:Region Of Interest)の設定を、操作者から受け付ける。なお、第1の実施形態において、入力装置3が受け付ける関心領域については、後に詳述する。
【0019】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像等を表示したりする。
【0020】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体10は、
図1に示すように、送受信部11と、フレームバッファ12と、Bモード処理部13と、ドプラ処理部14と、画像処理部15と、画像メモリ16と、制御部17と、内部記憶部18とを有する。
【0021】
送受信部11は、トリガ発生回路、送信遅延回路及びパルサ回路等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定の繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。なお、PRFは、レート周波数とも呼ばれる。また、送信遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0022】
なお、送受信部11は、後述する制御部17の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0023】
また、送受信部11は、アンプ回路、A/D変換器、受信遅延回路、加算器、直交検波回路等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、デジタルデータに対して、受信指向性を決定するために必要な受信遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路によって処理された反射波信号の加算処理を行なう。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。そして、直交検波回路は、加算器の出力信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-pahse)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(以下、I/Q信号と記載する)を反射波データとして後段のフレームバッファ12に格納する。このように、送受信部11は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。
【0024】
フレームバッファ12は、送受信部11が生成した反射波データ(I/Q信号)を一時的に記憶するバッファである。具体的には、フレームバッファ12は、記憶容量に応じたデータ量のI/Q信号を保持する。例えば、フレームバッファ12は、FIFO(First-In/First-Out)メモリであり、所定フレーム分のI/Q信号を記憶し、新たに1フレーム分のI/Q信号が送受信部11にて生成された場合、生成時間が最も古い1フレーム分のI/Q信号を破棄して、新たに生成された1フレーム分のI/Q信号を記憶する。
【0025】
なお、1フレーム分のI/Q信号とは、例えば、1枚の超音波画像を生成するための反射波データのことであり、送受信部11は、複数の走査線(スキャンライン)で形成される走査範囲にて超音波送受信を超音波プローブ1に行なわせることで、1フレーム分のI/Q信号を生成する。
【0026】
Bモード処理部13は、フレームバッファ12から送受信部11が生成した反射波データ(I/Q信号)を読み出し、読み出した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理、対数圧縮等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0027】
ドプラ処理部14は、フレームバッファ12から送受信部11が生成した反射波データ(I/Q信号)を読み出し、読み出した反射波データを周波数解析することで、ドプラ偏移(ドプラシフト周波数)を抽出し、ドプラ偏移を用いることで、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点又は1点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0028】
具体的には、ドプラ処理部14は、
図1に示すように、CFM処理部14aとPWD処理部14bとを有する。CFM処理部14aは、カラードプラ画像を生成するためのドプラデータをCFM法により生成する処理部である。CFM処理部14aは、走査範囲内にある血流の移動体情報(血流情報)を、自己相関法で取得する。
【0029】
また、PWD処理部14bは、ドプラ波形を生成するためのドプラデータをPWD法により生成する処理部である。PWD処理部14bは、サンプルボリューム内にある血流の移動体情報(血流情報)を、周波数解析を行なうことで取得する。例えば、PWD処理部14bは、サンプルボリューム内にある血流の移動体情報(血流情報)を、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)法による周波数解析を行なうことで取得する。なお、PWD処理部14bは、ドプラ波形を生成するためのドプラデータをCWD法により生成する処理部として機能することが可能である。また、ドプラ波形を生成できるドプラデータが取得できるのであれば、PWD処理部14bが行なう周波数解析は、高速フーリエ変換法以外の方法であっても良い。
【0030】
なお、CFM処理部14aが行なう処理やPWD処理部14bが行なう処理については、後に詳述する。また、ドプラ処理部14は、組織ドプラ法を行なうための処理部を有する場合であっても良い。
【0031】
画像処理部15は、Bモード処理部13及びドプラ処理部14が生成したデータを用いて表示用の画像データを生成し、生成した画像データに対して画像処理を行なう処理部である。
図1に示す画像処理部15は、画像生成部15a及び検出部15bを有する。
【0032】
画像生成部15aは、Bモード処理部13及びCFM処理部14aが生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部15aは、Bモード処理部13が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。また、画像生成部15aは、CFM処理部14aが生成したドプラデータから移動体情報(血流情報)を表す速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。例えば、画像生成部15aは、パワーの値に応じて色調を赤色系で変化させたパワー画像を生成する。なお、画像生成部15aは、カラー表示用のカラードプラ画像以外にも、例えば、パワーの値に応じて輝度をグレースケールで変化させたグレースケールのパワー画像を生成することも可能である。
【0033】
以下では、CFM処理部14aが生成したデータから画像生成部15aが生成するカラードプラ画像等の画像を「血流画像」と記載する。
【0034】
更に、画像生成部15aは、PWD処理部14bが生成したドプラデータから、血流の速度情報を時系列に沿ってプロットしたドプラ波形を生成する。具体的には、画像生成部15aは、サンプルボリューム内の血流の速度を縦軸とし、時間を横軸とする時間変化曲線を生成する。そして、画像生成部15aは、サンプルボリューム内の血流の分散値に応じて縦軸方向の幅を設定し、サンプルボリューム内の血流のパワー値に応じて輝度値を設定することで、ドプラ波形を生成する。
【0035】
ここで、画像生成部15aは、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像としての超音波画像(Bモード画像や血流画像)を生成する。具体的には、画像生成部15aは、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じた座標変換を行なうことで、表示用画像としての超音波画像を生成する。また、画像生成部15aは、スキャンコンバート以外にも、種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。
【0036】
なお、画像生成部15aは、2次元で超音波送受信が行なわれた場合、座標変換を行なうことで、表示用画像としての2次元Bモード画像や2次元血流画像を生成する。また、画像生成部15aは、3次元で超音波送受信が行なわれた場合、ボリュームデータ(3次元Bモード画像や3次元血流画像)を生成し、各種レンダリング処理により、ボリュームデータからモニタ2に表示するための2次元画像を生成する。
【0037】
また、画像生成部15aは、各種画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成した合成画像を生成する。また、画像生成部15aは、Bモード画像とカラードプラ画像との重畳画像等、各種画像を重畳した重畳画像を生成したり、各種画像を並列表示するための画像を生成したりする。
【0038】
図1に示す検出部15bは、画像生成部15aが生成した画像データに対して画像処理を行なう処理部である。具体的には、検出部15bは、画像内のスペックルを追跡するスペックルトラッキング(Speckle Tracking)を行なう。なお、第1の実施形態で、検出部15bが行なう処理内容については、後に詳述する。
【0039】
画像メモリ16は、画像生成部15aが生成した各種データを記憶するメモリである。また、画像メモリ16は、Bモード処理部13やドプラ処理部14が生成したデータ(生データ)を記憶することも可能である。また、画像メモリ16は、必要に応じて、フレームバッファ12が保持するデータを記憶することも可能である。
【0040】
内部記憶部18は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部18は、必要に応じて、画像メモリ16が記憶するデータの保管等にも使用される。また、内部記憶部18が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部の周辺装置へ転送することができる。
【0041】
制御部17は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部17は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部18から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部13、ドプラ処理部14、画像処理部15の処理を制御する。また、制御部17は、画像メモリ16が記憶するデータや、操作者が各種処理を指定するためのGUI等をモニタ2にて表示するように制御する。なお、PWD法やDWD法でドプラ波形を表示することは、「FFT表示」とも呼ばれる。また、CFM法で血流画像(カラードプラ画像)を表示することを、以下、カラードプラ表示と記載する。
【0042】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、CFM法により血流画像を生成する。ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、
図2に例示する様々な走査形態により様々なCFM法を実行することができる。
図2は、第1の実施形態に係る超音波診断装置が実行する各種カラーフローマッピング法の走査形態を説明するための図である。
【0043】
従来のカラードプラ表示では、1本の走査線(スキャンライン)に対して、2回以上に渡って超音波の送受信が行なわれる。以下、従来のカラードプラ表示で行なわれるCFM法を「従来のCFM法」と記載する。従来のCFM法では、同一方向で超音波の送受信を複数回繰り返し、これら複数回のデータ(反射波データ)を一塊のパケットとし、パケット内で閉じた処理を行なって、1パケットにつき1つのデータ(ドプラデータ)を出力する。1フレーム内の走査線数を「M」、1本の走査線当たりで行なわれる送受信回数に対応するパケットサイズを「N」、繰り返し周波数を「PRF」とすると、Bモード用のスキャンを行なわない場合であっても、従来のCFM法では、フレームレート「Fr」は、以下の式(1)で示される。
【0045】
「PRF=5000(Hz)、M=50、N=10」とすると、式(1)により、フレームレートは、10fps(frame per second)となる。すなわち、従来のCFM法では、パケットサイズ「N」が増加するにつれ、フレームレートが遅くなる。
【0046】
図2の(A)は、「M=13、N=8」として、従来のCFM法で行なわれる走査形態を示した図である。なお、以下では、
図2に示す13本の走査線を右から左に向かってL1〜L13とする。
図2の(A)に示す一例では、L1で「1回目、2回目、・・・、8回目」の超音波送受信が行なわれ、L2で「9回目、10回目、・・・、16回目」の超音波送受信が行なわれ、L3で「17回目、18回目、・・・、24回目」の超音波送受信が行なわれ、L4で「25回目、26回目、・・・、32回目」の超音波送受信が行なわれる。そして、
図2の(A)に示す一例では、L5で「33回目、34回目、・・・、40回目」の超音波送受信が行なわれ、L6で「41回目、42回目、・・・、48回目」の超音波送受信が行なわれ、L7で「49回目、50回目、・・・、56回目」の超音波送受信が行なわれ、L8で「57回目、58回目、・・・、64回目」の超音波送受信が行なわれる。同様に、L9〜L13の超音波送受信が行なわれる。
【0047】
一方、従来のCFM法より低流速検出能を向上させるCFM法として、交互スキャンと呼ばれる方法が実用化されている。ここで、超音波の音速を「C」、受信中心周波数を「f
0」とすると、折り返しを起こさない最大検出可能流速(折り返し速度)である「V
max」は、以下の式(2)で示される。
【0049】
同じ特性のMTI(Moving Target Indicator)フィルタを使用する場合には、折り返し速度が小さい方が、低流速検出能が上がる。交互スキャン法では、複数の走査線を1つのブロックとし、ブロック内で交互に超音波送受信が行なわれる。ブロック内の走査線数(ラスタ数)を「L」とすると、ブロック内の全パケットのデータが出力されるための時間は、従来のCFM法より「L」倍となる。このため、ラスタ数「L」の交互スキャン法では、「V
max」は、以下の式(3)で示される。
【0051】
図2の(B)は、「M=13、N=8、L=4」として、交互スキャン法で行なわれる走査形態を示した図である。「N=8、L=4」の場合の交互スキャン法では、4本の走査線それぞれに対する1回の超音波送受信が、4本の走査線の中で交互に8回繰り返されることで、1ブロック当たり合計32回の超音波送受信が行なわれる。例えば、「L1〜L4」を「Block1」とし、「L5〜L8」を「Block2」として説明する。かかる場合、「Block1」では、1回目から4回目の超音波送受信が「L1、L2、L3、L4」の順に行なわれ、5回目から8回目の超音波送受信が「L1、L2、L3、L4」の順に行なわれ、最後に29回目から32回目の超音波送受信が「L1、L2、L3、L4」の順に行なわれる。また、「Block2」では、33回目から36回目の超音波送受信が「L5、L6、L7、L8」の順に行なわれ、37回目から40回目の超音波送受信が「L5、L6、L7、L8」の順に行なわれ、最後に61回目から64回目の超音波送受信が「L5、L6、L7、L8」の順に行なわれる。
【0052】
ただし、フレームレートは、「PRF、M、N」の値が同じであるならば、従来のCFM法と交互スキャン法とでは同じである。
【0053】
以下、改めて、上述した従来のCFM法や交互スキャン法で実際に行われる処理を説明して、フレームレートが式(1)となる理由を説明する。CFM法では、組織の動きに由来する周波数成分をMTIフィルタによって除去することで反射波データから血流成分のデータを抽出する。そして、CFM法では、抽出したデータから自己相関法により「速度・分散・パワー」を演算して、演算結果の2次元分布を表示する。従来のCFM法や交互スキャン法では、同一のラスタに対して複数回の送受信を行う。
【0054】
同一のラスタ上の同一地点の受信データ(反射波データ)の集まりをパケットと呼び、このパケットに対して、CFM処理部14aは、MTIフィルタ処理、自己相関演算、「速度・分散・パワー推定」といった処理を行う。ここで、パケットのサイズは、通常、「6〜20」とされる。CFM処理部14aは、最終的に、パケット内で1組の「速度・分散・パワー」のデータを生成する。CFM処理部14aは、かかる処理を2次元空間に渡って行なうことで、2次元のドプラデータを生成する。また、例えば、メカニカルスキャンプローブにより3次元走査が行なわれる場合、CFM処理部14aは、かかる2次元空間の処理を複数枚に渡って行なうことで、3次元のドプラデータを生成する。これにより、血流画像の表示が行なわれる。
【0055】
このように、従来のCFM法や交互スキャン法では、パケット単位で1組のデータを生成する。更に、CFM法が行なわれる際、超音波プローブ1は、Bモード画像に血流画像を重畳するためのBモード用のスキャンも行なう。これら2つの理由により、血流のフレームレートは、5〜30fpsのように、遅いフレームレートとなる。従来のCFM法や交互スキャン法では、このような時間分解能の制約のために、瞬時の血流動態が描出された血流画像の生成表示が困難であった。
【0056】
そこで、フレームレートを向上させるためのCFM法が開発されている。以下では、かかるCFM法を「高フレームレート法」と記載する。高フレームレート法では、パケット単位でMTIフィルタ処理、自己相関演算処理、「速度・分散・パワー推定」処理を行うのではなく、Bモード用のスキャンと同様の超音波走査が行なわれる。高フレームレート法では、例えば、
図2の(C)に示すように、1フレームの走査範囲を形成する13本の走査線(L1〜L13)それぞれで、1回ずつ超音波送受信を行なう。そして、高フレームレート法では、各フレームの同じ位置のデータ列に対してフレーム方向で処理を行なう。これにより、高フレームレート法では、MTIフィルタ処理を、パケットという有限長のデータ処理から無限長のデータに対する処理とすることができ、MTIフィルタの性能を上げることができると同時に、スキャンフレームレートと同じフレームレートで血流情報を表示することが可能になる。すなわち、高フレームレート法では、MTIフィルタ処理を、無限インパルス応答型フィルタ(IIRフィルタ、IIR:Infinite Impulse Response)処理とすることができる。これにより、高フレームレート法では、式(1)に対して「N」倍のフレームレートとすることができる。
【0057】
このように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、様々な走査形態でCFM法を実行することができる。例えば、高フレームレート法により、カラードプラ表示を行なうことで、操作者は、瞬時の血流動態を正確に時間分解能良く観測することができる。
【0058】
これに対し、FFT表示では、走査線が1本であることから、カラードプラ表示より、時間分解能が高い。また、FFTによる周波数解析は、FFT処理であり、自己相関法による周波数解析より高精度である。よって、瞬時の血流動態を正確に時間分解能良く観測するためには、カラードプラ表示より、FFT表示の方が適している。ただし、超音波ビームと血流の方向がなす角度を「θ」とすると、観測されるドプラシフト周波数は、真のドプラシフト周波数を「cosθ」倍した値となることから、CWD法やPWD法では、「θ」を与えることで計測速度に補正(角度補正)を加える。
【0059】
しかし、FFT表示は、スキャンライン上や、例えば1点のサンプルボリュームといったように、1次元の血流動態しか表示できない。すなわち、FFT表示で観察できる血流動態は、1次元の関心領域における血流動態となる。
【0060】
一方、カラードプラ表示では、2次元空間で血流動態を表示できる。また、3次元走査が行なわれる場合、カラードプラ表示では、3次元空間で血流動態を表示できる。しかし、カラードプラ表示では、上述したように、FFT表示と比較して、フレームレートが十分に速くはない。また、2次元や3次元で角度補正を行なう場合、操作者が「θ」を場所ごとに設定しなければならないので、カラードプラ表示では、角度補正は一般には行われていない。
【0061】
これらの理由により、カラードプラ表示は、2次元や3次元の関心領域の血流動態を観察するために用いられており、FFT表示の代用とはならない。しかし、上述したように、FFT表示で観察できる血流動態は、1次元の関心領域における血流動態であり、2次元や3次元の関心領域の血流動態を観察するためには、例えば、2次元空間や3次元空間でサンプルボリュームを複数設定し、複数のサンプルボリュームごとに、
PWD法によるドプラ波形の収集を行なう必要がある。
【0062】
そこで、第1の実施形態では、2次元又は3次元の関心領域における血流動態を正確に時間分解能良く観測するために、以下の処理が行なわれる。すなわち、CFM処理部14aは、複数の走査線で形成される走査範囲にて行なわれた超音波送受信により収集された2次元又は3次元の反射波データに対して、自己相関法で走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報を取得する。画像生成部15aは、走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報から時系列に沿った血流画像を生成する。検出部15bは、時系列に沿った血流画像の間で、予め設定された2次元又は3次元の関心領域内のスペックルの時系列に沿った移動情報を検出する。制御部17は、時系列に沿った移動情報に基づくデータである移動情報データをモニタ2に表示させる。
【0063】
以下、上述した処理の一例について詳細に説明する。なお、以下では、送受信部11が高フレームレート法の走査形態により、超音波送受信を実行させ、CFM処理部14aが高フレームレート法に基づくにより、血流情報を取得する場合について説明する。ただし、第1の実施形態は、走査範囲の大きさにより、例えば、フレームレートを60fps以上の高速とすることができるならば、上述した従来のCFM法や交互スキャン法が実行される場合であっても良い。
【0064】
まず、CFM処理部14aは、複数の走査線で形成される走査範囲にて行なわれた超音波送受信により収集された2次元又は3次元の反射波データをフレームバッファ12から読み出す。そして、CFM処理部14aは、2次元又は3次元の反射波データに対して、自己相関法を行なうことで走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報を取得する。例えば、制御部17が指定したスキャンシーケンスに基づいて、送受信部11は、2次元の走査範囲における超音波送受信を各走査線で1回として1フレーム分の反射波信号を受信する高フレームレート法の走査形態を超音波プローブ1に実行させる。これにより、送受信部11は、2次元の反射波データを生成し、フレームバッファ12に格納する。CFM処理部14aは、2次元の反射波データに対して、自己相関法を行なうことで走査範囲の2次元の血流情報を時系列に沿って取得する。ここで、血流情報は、血流の速度、分散及びパワーとなる。
図3は、第1の実施形態に係るCFM処理部及び画像生成部の処理の一例を説明するための図である。
【0065】
図3に示すように、CFM処理部14aの処理は、「MTIフィルタ処理」、「自己相関演算処理」及び「速度・分散・パワー推定処理」の3つのブロックからなる。
図3に示す「MTIフィルタ処理」ブロックでは、例えば、MTIフィルタとして4次のIIRフィルタが用いられる。
【0066】
ここで、現在のフレーム「第nフレーム」における「ある位置」の反射波データを「x(n)」とし、同じ位置の1つ前のフレーム「第(n−1)フレーム」の反射波データを「x(n−1)」とし、同じ位置の2つ前のフレーム「第(n−2)フレーム」の反射波データを「x(n−2)」とする。また、同じ位置の3つ前のフレーム「第(n−3)フレーム」の反射波データを「x(n−3)」とし、同じ位置の4つ前のフレーム「第(n−4)フレーム」の反射波データを「x(n−4)」とする。また、MTIフィルタのフィルタ係数を、「a
k」及び「b
k」とする。かかる場合、「MTIフィルタ処理」ブロックから出力される「x(n)」の血流成分である「y(n)」は、以下の式(4)で示される。
【0068】
「MTIフィルタ処理」ブロックの出力結果は、
図3に示す「自己相関演算処理」ブロックに入力される。「自己相関演算処理」ブロックでは、ラグ0及びラグ1の自己相関値の演算が行なわれる。ラグ0を「C0(n)」とし、ラグ1を「C1(n)」とすると、「C0(n)」は、以下の式(5)により算出され、「C1(n)」は、以下の式(6)により算出される。
【0071】
なお、式(5)及び式(6)において、上付きのアスタリスク「*」は、複素共役を示し、「N」は、自己相関演算で設定されるフレーム方向の加算幅を示す。「C0(n)」は、パワーと等価である。なお、
図3には示していないが、式(5)及び式(6)で得られたラグ0及びラグ1に対して、超音波のビーム方向に移動平均等の平滑化を行うことで、距離分解能を犠牲にして信号雑音比(S/N)を上げることができる。
【0072】
「自己相関演算処理」ブロックの出力結果は、
図3に示す「速度・分散・パワー推定処理」ブロックに入力される。「速度・分散・パワー推定処理」ブロックでは、「C0(n)」及び「C1(n)」から、以下に示す式(7)により、「第nフレーム」の「ある位置」における血流の速度「V」と血流の速度の分散「T」と血流のパワー「P」とが算出される。
【0074】
なお、式(7)の第1式において、「atan2」は、「−π〜+π」までの角度を出力する「アークタンジェント関数」であり、「image」は、複素数から虚数部のみを出力する関数であり、「real」は、複素数から実数部のみを出力する関数である。すなわち、式(7)の第1式では、「C1(n)」の虚数部と実数部との位相の変化が血流の速度「V」として算出される。このように、パワーは、自己相関演算によりラグ0として求められ、速度及び分散は、自己相関演算の結果を周波数解析することで求められる。
【0075】
上述した処理により、CFM処理部14aは、走査範囲の各走査線上で設定された複数の点それぞれの血流情報を1フレームごとに取得し、画像生成部15aに出力する。画像生成部15aは、走査範囲の時系列に沿った2次元又は3次元の血流情報から時系列に沿った血流画像を生成する。第1の実施形態では、画像生成部15aは、2次元の血流情報から時系列に沿った血流画像を生成する。具体的には、画像生成部15aは、
図3に示すように、「座標変換処理」を行なうことで、時系列に沿った2次元の血流情報から時系列に沿った2次元血流画像を生成する。
【0076】
例えば、画像生成部15aは、パワー値がグレースケールで描出されたグレースケールのパワー画像を生成する。或いは、画像生成部15aは、速度の符号だけを方向として使って、例えば、符号がプラスである位置ではパワー値に応じて赤色系の明度を変化させ、符号がマイナスの位置ではパワー値に応じて青色系の明度とを変化させたカラーのパワー画像を生成する。或いは、画像生成部15aは、速度とパワーを2次元マップで変換したカラーのパワー画像を生成する。なお、画像生成部15aは、パワー表示用の血流画像だけでなく、速度表示用の血流画像や、速度―分散表示用の血流画像を生成する場合であっても良い。ただし、以下で説明する検出部15bの処理に用いられる血流画像としては、パワー表示用の血流画像であることが望ましいことから、第1の実施形態に係る画像生成部15aは、速度表示や速度―分散表示の要求のみが行なわれている場合であっても、パワー表示用の血流画像を生成する。
【0077】
図1に示す検出部15bは、時系列に沿った血流画像の間で、予め設定された2次元又は3次元の関心領域内のスペックルの時系列に沿った移動情報を検出する。具体的には、検出部15bは、関心領域内の複数点それぞれの時系列に沿った移動情報を検出する。まず、関心領域の設定例について説明する。
【0078】
例えば、制御部17は、操作者のROI設定要求に基づいて、画像生成部15aが生成した血流画像の1つをモニタ2に表示させる。操作者は、モニタ2を参照し、血流動態を観察したい関心領域を、入力装置3を用いて設定する。2次元血流画像が生成表示されている場合、操作者は、2次元の関心領域を設定する。また、3次元血流画像が生成され、3次元血流画像の一断面が表示されている場合、操作者は、2次元の関心領域を設定する。或いは、3次元血流画像が生成され、例えば3次元血流画像の直交3断面が表示されている場合、操作者は、各断面で2次元の関心領域を設定することで、3次元の関心領域を設定する。第1の実施形態では、操作者は、2次元血流画像に対して2次元の関心領域を設定する場合について説明する。
図4〜6は、第1の実施形態に係る検出部の処理の一例を説明するための図である。
【0079】
例えば、操作者は、
図4に示すように、グレースケールのパワー画像に対して矩形のROIを設定する。なお、第1の実施形態は、ROIの形状は任意に設定可能である。また、第1の実施形態は、カラードプラ表示用の走査範囲を含む走査範囲におけるBモード画像上で、検出部15bの処理に用いられるROIが設定される場合であっても良い。
【0080】
そして、検出部15bは、
図5に例示するように、「スペックルトラッキング処理」と「速度ベクトル算出処理」との2つの処理を主に行なう。「スペックルトラッキング処理」ブロックにおいて、検出部15bは、連続するフレーム間、或いは、数フレーム離れたフレーム間で相互相関法によりスペックルの追跡(tracking)を行なうことで、ROI内の複数点における動きベクトルを計算する。そして、検出部15bは、「速度ベクトル算出処理」ブロックでは、フレーム間時間差を用いて、動きベクトルを速度ベクトルに変換する。
【0081】
例えば、
図6の(A)に示すように、ROI内で35個の追跡点が設定されるとする。検出部15bは、「第(n−1)フレーム」の追跡点におけるスペックルが「第nフレーム」ではどの位置に移動したかを追跡することで、動きベクトルを計算する。そして、検出部15bは、
図5に示す「速度ベクトル算出処理」において、相互相関処理の対象であった2つのフレームのフレーム間時間差を用いて、動きベクトルから速度ベクトルを算出する。例えば、検出部15bは、
図6の(B)に示すように、「第nフレーム」のROI内の35点それぞれの速度ベクトルを算出する。かかる処理を血流画像間で繰り返して行なうことで、検出部15bは、ROI内の複数点それぞれの速度ベクトルを時系列に沿って算出する。
【0082】
ここで、送信超音波の波長に比べ遥かに小さな反射体が密集している場合、反射波信号は、互いに干渉する。干渉の強弱は、反射波信号の振幅の強弱となり、かかる振幅情報に基づく超音波画像内には、点状のアーチファクトであるスペックルが生じる。パワー画像は、反射体である血液の量の度合いを示すパワー値を画像化した血流画像である。このため、パワー画像のスペックルの移動ベクトルから変換される速度ベクトルは、血流の速度ベクトルに対応する情報となる。すなわち、第1の実施形態では、パワー情報を有する血流画像のROI内の複数点それぞれにおけるスペックルに基づく速度ベクトルが、血流動態を示す「移動情報」となる。
【0083】
制御部17は、時系列に沿った移動情報に基づくデータである移動情報データをモニタ2に表示させる。以下、第1の実施形態に係る制御部17の制御により表示される移動情報データについて、
図7〜
図10等を用いて、具体的に説明する。
図7〜
図10は、第1の実施形態に係る制御部により表示される移動情報データの具体例を説明するための図である。
【0084】
具体的には、制御部17は、複数点それぞれの時系列に沿った移動情報の代表値を時系列に沿ってプロットした時間変化曲線を、移動情報データとして画像生成部15aに生成させる。そして、制御部17は、時間変化曲線をモニタ2に表示させる。移動情報の代表値は、平均速度である。ここで、代表値である平均速度は、例えば、複数点それぞれの速度ベクトルのスカラー量の平均値である。
図7の(A)は、画像生成部15aが、フレーム番号(frame number)を横軸とし、平均速度(単位:cm/s)を縦軸とする平均速度時間変化曲線を生成した場合の一例を示す。また、
図7の(B)は、画像生成部15aが、フレーム間時間差を用いてフレーム番号から換算される時間(単位:sec(秒))を横軸とし、平均速度(単位:cm/s)を縦軸とする平均速度時間変化曲線を生成した場合の一例を示す。横軸に用いられる情報は、操作者により任意の変更可能なパラメータである。
【0085】
なお、代表値としての平均速度は、検出部15bにより算出される場合であっても、制御部17により算出される場合であっても良い。また、第1の実施形態は、代表値としての平均速度を、複数点それぞれの速度ベクトルの設定方向成分のスカラー量の平均値とする場合であっても良い。なお、設定方向成分は、例えば、方位方向や、深さ方向、血管の走行方向等である。
【0086】
また、代表値としての平均速度は、平均速度ベクトルのスカラー量や、平均速度ベクトルの設定方向成分のスカラー量である場合であっても良い。なお、設定方向成分は、例えば、方位方向や、深さ方向、血管の走行方向等である。
【0087】
また、代表値は、最大流速であっても良い。代表値としての最大流速は、速度ベクトルのスカラー量の最大値や、速度ベクトルの設定方向成分のスカラー量の最大値である。なお、設定方向成分は、例えば、方位方向や、深さ方向、血管の走行方向等である。
【0088】
また、代表値は、流速の中央値であっても良い。代表値としての中央値は、速度ベクトルのスカラー量の中央値や、速度ベクトルの設定方向成分のスカラー量の中央値である。なお、設定方向成分は、例えば、方位方向や、深さ方向、血管の走行方向等である。
【0089】
また、代表値は、分散値であっても良い。代表値としての分散値は、速度ベクトルのスカラー量の分散値や、速度ベクトルの設定方向成分のスカラー量の分散値である。なお、設定方向成分は、例えば、方位方向や、深さ方向、血管の走行方向等である。
【0090】
また、代表値は、複数点それぞれの速度ベクトルのスカラー量のヒストグラムで最大頻度や「n番目に高頻度」となる区間の値であっても良い。例えば、「50cm/s〜60cm/s」の区間が最大頻度である場合、代表値は、「55cm/s」としても良い。或いは、ノイズにより最大頻度となった区間から代表値が算出されることを回避するため、「3番目に高頻度」最大頻度となった区間から代表値を算出しても良い。ヒストグラムから代表値を算出する場合、複数点それぞれの速度ベクトルの設定方向成分のスカラー量のヒストグラムが用いられる場合であっても良い。なお、設定方向成分は、例えば、方位方向や、深さ方向、血管の走行方向等である。
【0091】
なお、制御部17は、上述した各種代表値から複数の代表値が選択された場合、選択された複数の代表値ごとの時間変化曲線を画像生成部15aに生成させ、モニタ2に表示させる。
【0092】
ここで、
図7の(A)や(B)に示す平均速度の時間変化曲線は、ドプラ波形に類似していることから、FFT表示の代わりに用いることができる。そこで、制御部17は、時間変化曲線を画像化した時間変化画像を、移動情報データとして画像生成部15aに生成させる場合であっても良い。すなわち、画像生成部15aは、
図8の(A)に示すように、速度ベクトルから算出されるROI内の速度の平均値をプロットした時間変化曲線(図中の実線を参照)を生成し、ROI内の速度の分散値に応じて縦軸方向の幅を設定する(図中の点線を参照)。そして、画像生成部15aは、
図8の(A)に示すように、速度の平均値を中心とし縦軸方向の長さが速度の分散値となる線分の輝度を、ROI内のパワーの平均値に応じて設定することで、時間変化画像を生成する。
【0093】
これにより、画像生成部15aは、
図8の(B)に例示する時間変化画像を生成し、制御部17は、時間変化画像をモニタ2に表示させる。
図8の(B)に示す平均速度の時間変化画像は、平均速度の時間変化曲線より更にドプラ波形の類似した画像となる。
【0094】
或いは、制御部17は、血流画像の関心領域内に複数点それぞれの移動情報を示す所定の図形を重畳した重畳画像を、移動情報データとして画像生成部15aに生成させる。例えば、画像生成部15aは、
図9に示すように、パワー画像のROI内に、複数点それぞれの速度ベクトルを示す矢印を重畳した重畳画像を生成する。
【0095】
或いは、制御部17は、更に、代表値及び当該代表値の算出元となる複数点それぞれの移動情報の値の分布を示すヒストグラムの少なくとも1つが、重畳画像の所定位置に重畳された画像を、移動情報データとして画像生成部15aに生成させても良い。例えば、画像生成部15aは、
図9に示すように、代表値である平均速度「67cm/s」を重畳画像内のROIの上に合成する。更に、例えば、画像生成部15aは、
図9に示すように、平均速度の算出元となった35個の追跡点それぞれの速度ベクトルのスカラー量の分布を示すヒストグラムを代表値の左側に合成する。なお、代表値やヒストグラムが合成される位置は、重畳画像上以外に、重畳画像の上であっても良い。
【0096】
ここで、血流画像は、時系列に沿って複数生成されていることから動画表示が可能である。また、パワー画像のROI内に重畳される矢印は、当該パワー画像において算出された複数点それぞれの速度ベクトルを示す矢印である。また、重畳画像に更に重畳される代表値やヒストグラムは、当該重畳画像に対応するパワー画像のROI内における代表値とヒストグラムである。すなわち、重畳画像や、代表値やヒストグラムが重畳された重畳画像も、時系列に沿って複数生成されていることから動画表示が可能である。
【0097】
そこで、制御部17は、時間変化曲線又は時間変化画像と並列して重畳画像を動画表示させる場合、表示されている重畳画像の時相に対応する位置を時間変化曲線又は時間変化画像において表示させる。例えば、制御部17は、
図7の(A)に示す平均速度の時間変化曲線と並列して、代表値及びヒストグラムが重畳された重畳画像を動画表示する場合、
図10に例示する表示制御を行なう。
【0098】
すなわち、制御部17は、
図10に示すように、モニタ2に表示されている重畳画像の平均速度が算出された時点の位置を示すラインマーカーaを平均速度の時間変化曲線上に合成させて表示させる。ここで、
図10に示すラインマーカーaの位置は、表示されている血流画像のフレームに応じて、左から右に向かって移動することとなる。なお、第1の実施形態は、制御部17は、時間変化曲線又は時間変化画像と並列して速度表示や速度−分散表示のカラードプラ画像を動画表示させる場合に、表示されている血流画像の時相に対応する位置を時間変化曲線又は時間変化画像において表示させても良い。
【0099】
上述した一例では、2次元のROIにおいて検出された移動情報に基づく各種移動情報データが表示される場合について説明したが、第1の実施形態は、3次元のROIにおいて検出された移動情報に基づく各種移動情報データが表示される場合であっても良い。
【0100】
また、血流画像は、2次元画像であることから、操作者は、2次元のROIを任意の位置に設定することができる。また、血流画像の撮像が3次元で行なわれる場合、血流画像は、撮像空間における任意の断面で2次元表示されることから、操作者は、2次元や3次元のROIを任意の位置に設定することができる。従って、第1の実施形態では、ROIが複数設定される場合であって良い。ROIが複数設定された場合、検出部15b及び画像生成部17は、複数のROIそれぞれに対する処理を、制御部17の制御により、並行して行なう。
図11は、第1の実施形態において複数の関心領域が設定される場合に表示される移動情報データの一例を説明するための図である。
【0101】
例えば、
図5に例示したROI内の血流動態をより細かく観察したい場合、操作者は、
図11に示すように、
図5に例示したROIを2つに分割したROI−A及びROI−Bを設定する。かかる場合、検出部15bは、ROI−A内の複数点それぞれの速度ベクトルと、ROI−B内の複数点それぞれの速度ベクトルとを算出する。そして、例えば、画像生成部15aは、
図11に示すように、ROI−A及びROI−Bそれぞれの平均速度の時間変化曲線を生成する。なお、
図11に例示するROI−A及びROI−Bの時間変化曲線は、横軸が「時間(単位:sec(秒))」となっている。
【0102】
そして、画像生成部15aは、
図11に示すように、ROI−A内の複数点それぞれの速度ベクトルを示す矢印と、ROI−B内の複数点それぞれの速度ベクトルを示す矢印とをパワー画像に重畳する。更に、画像生成部15aは、
図11に示すように、ROI−A内の平均速度と速度のヒストグラムと、ROI−B内の平均速度と速度のヒストグラムとを重畳する。そして、画像生成部15aは、
図11に示すように、2つのROIの情報が同一のパワー画像に重畳された重畳画像と、2つの時間変化曲線とを合成した合成画像を生成する。かかる合成画像は、制御部17によりモニタ2に表示される。なお、
図11には示していないが、重畳画像が動画表示される場合、表示される重畳画像の時相に対応する位置を示すラインマーカーが2つの時間変化曲線それぞれに合成されても良い。
【0103】
なお、移動情報データの種別設定や、複数種別の移動情報データが設定された場合の表示形態は、操作者により事前に設定される場合であっても良く、初期設定される場合であっても良い。
【0104】
次に、
図12を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。
図12は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、
図12では、ROI設定が、血流画像の収集後に行なわれ、上述した検出部15b及び制御部17の処理が血流画像の収集後に、血流画像のシネ再生中に並行して行なわれる場合について説明する。
【0105】
図12に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置の制御部17は、操作者から関心領域の設定を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、関心領域の設定を受け付けない場合(ステップS101否定)、制御部17は、関心領域の設定を受け付けるまで待機する。
【0106】
一方、関心領域の設定を受け付けた場合(ステップS101肯定)、制御部17は、関心領域の位置情報を検出部15bに通知し、検出部15bは、血流画像の各フレームにて、関心領域内の複数点の運度ベクトルを算出し(ステップS102)、算出した運動ベクトルを速度ベクトルに換算する(ステップS103)。
【0107】
そして、制御部17の制御により、画像生成部15aは、ラインマーカー付きの時間変化曲線、ラインマーカー付きの時間変化画像、重畳画像等、移動情報データを生成する(ステップS104)。そして、制御部17の制御により、モニタ2は、移動情報データを表示し(ステップS105)、処理を終了する。
【0108】
なお、第1の実施形態では、ROI設定が、血流画像の収集後に行なわれ、上述した検出部15b及び制御部17の処理が血流画像の収集後、血流画像のシネ再生中に行なわれる場合について説明した。しかし、第1の実施形態は、ROI設定が、血流画像の収集前に行なわれ、上述した検出部15b及び制御部17の処理が血流画像の収集と並行してリアルタイムで行なわれる場合であっても良い。
【0109】
上述してきたように、第1の実施形態では、血流画像で設定されたROI内の速度ベクトルを検出し、検出した速度ベクトルの情報を、時間変化曲線や時間変化画像、重畳画像等の形態で表示する。すなわち、第1の実施形態では、血流画像で任意の位置に任意の形状のROIを設定することで、ドプラ表示で観察される1次元の血流動態に関する情報と同様の情報を、2次元又は3次元で表示することができる。従って、第1の実施形態では、2次元又は3次元の関心領域における血流動態を正確に時間分解能良く観測することができる。また、第1の実施形態では、関心領域を複数設定することができる。従って、第1の実施形態では、2次元又は3次元の複数の関心領域における血流動態を、同時に観測することができる。なお、移動情報の検出は、パワー画像を対象にして行なわれることが好適であることから、血流情報は、自己相互演算によりラグ0として求められるパワーのみである場合であっても良い。すなわち、第1の実施形態は、CFM処理部14aが自己相関法でパワーのみを取得し、画像生成部15aが時系列に沿ったパワー画像のみを生成する場合であっても良い。
【0110】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した移動情報データとともに、別途、ドプラ表示用のスキャンにより生成されたドプラ波形を表示する場合について説明する。
【0111】
すなわち、第2の実施形態では、
PWD処理部14bは、第1の実施形態で説明した関心領域に含まれる走査線にて別途行なわれた超音波送受信により収集された1次元の反射波データに対して、例えば、高速フーリエ変換法による周波数解析を行なうことで走査線上のサンプルボリュームにおける時系列に沿った1次元の血流情報を取得する。そして、第2の実施形態では、画像生成部15aは、時系列に沿った1次元の血流情報からドプラ波形を生成する。
【0112】
まず、
PWD処理部14bは、フレームバッファ12からパルス波送受信により生成された1次元反射波データのうち、走査線上のサンプルボリュームの位置に対応する1次元反射波データを読み出す。或いは、送受信部11が短い時間ゲートを用いて走査線上のサンプルボリュームの位置に対応する1次元反射波データのみをフレームバッファ12に格納し、
PWD処理部14bが、走査線上のサンプルボリュームの位置に対応する1次元反射波データを読み出す場合であっても良い。
図13は、ドプラ画像生成における
PWD処理部及び画像生成部の処理を説明するための図である。
【0113】
まず、
PWD処理部14bは、
図13に示す「HPF処理」ブロックで、1次元反射波データに対して、MTIフィルタと同様の特性を有するHPF(High Pass Filter)処理を行なうことで、低周波成分(クラッタ:clutter)を除去し、血流成分を抽出する。そして、
PWD処理部14bは、
図13に示す「FFT処理」ブロックで、高速フーリエ変換法により、血流成分から血流情報(速度・分散・パワー)の演算を行なう。なお、
図13に示す「FFT処理」ブロックでは、上述した角度補正も行なう。そして、画像生成部15aは、
図13に示す「ドプラ波形生成処理」ブロックで、ドプラ波形を生成する。
【0114】
図14〜
図17は、第2の実施形態に係る画像処理部が実行する処理手順の一例を説明するための図である。例えば、第1の実施形態と同様に、第2の実施形態では、
図14に示すように、パワー画像にROIが設定される。そして、第2の実施形態では、画像生成部15aは、検出部15bの処理結果を用いて、
図14に示すように、例えば、平均速度の時間変化曲線等の移動情報データを生成する。
【0115】
更に、第2の実施形態では、例えば、
図15の右図に示すBモード画像上に、ROI内に含まれるサンプルボリュームが設定される(図中の点線内を参照)。そして、第2の実施形態では、サンプルボリューム上の走査線において、血流画像の撮像とは異なる時期に、ドプラ表示用のスキャンが行なわれる。これにより、画像生成部15aは、
図15の左図に例示するドプラ波形を生成する。
【0116】
そして、第2の実施形態に係る制御部17は、ドプラ波形と、移動情報データとを、両者のデータの同一時相が明示される形態でモニタ2に表示させる。例えば、ドプラ波形と時間変化曲線とを並列表示する場合、制御部17は、
図16に示すように、ドプラ波形で波形がピークとなる時期と、時間変化曲線で代表値がピークとなる時期とが、略同一時相に対応すると判定する。制御部17は、両者のピークとなる時相を操作者が容易に視認できるように、例えば、
図16に示すように、両者のピークを結ぶ矢印を表示させる。或いは、制御部17は、ピークとなる時相が横軸方向で略一致するように、例えば、ドプラ波形の横軸の表示スケールを変更したり、時間変化曲線の横軸の表示スケールを変更したりする。
【0117】
また、第2の実施形態に係る制御部17は、ドプラ波形と並列して重畳画像を動画表示させる場合、表示されている重畳画像の時相に対応する位置をドプラ波形において表示させる。また、第2の実施形態に係る制御部17は、ドプラ波形及び時間変化曲線と並列して重畳画像を動画表示させる場合、表示されている重畳画像の時相に対応する位置をドプラ波形及び時間変化曲線において表示させる。
【0118】
例えば、制御部17は、
図17に示すように、ドプラ波形及び平均速度の時間変化曲線と並列して、代表値である平均速度及びヒストグラムが重畳された重畳画像を動画表示する場合、第1の実施形態と同様に、モニタ2に表示されている重畳画像の平均速度が算出された時点の位置を示すラインマーカーaを平均速度の時間変化曲線上に合成させる。更に、制御部17は、
図17に示すように、モニタ2に表示されている重畳画像の平均速度が算出された時点の位置を示すラインマーカーbをドプラ波形上に合成させる。ラインマーカーa及びラインマーカーbは、重畳画像の再生が進むと同時に、移動する。
【0119】
なお、ラインマーカーが合成される移動情報データは、時間変化画像である場合であっても良い。また、時相を合わせる処理は、上述したように、ピークを用いて行なわれる場合であっても良いし、例えば、データ収集と並行してECG(electrocardiograph)が収集されているならば、ECGの情報を用いて行なわれる場合であっても良い。
【0120】
なお、第2の実施形態は、連続波が送信される走査線全体を略含む関心領域が移動情報の検出対象として設定されるならば、CWD法を適用して、上述した処理が行なわれても良い。かかる場合、連続波送受信により生成された1次元の反射波データに対し、CDW処理部としての
PWD処理部14bは、走査線の時系列に沿った1次元の血流情報を取得し、画像生成部15aは、ドプラ波形を生成する。そして、CWD法により生成されたドプラ波形は、移動情報データとともに表示される。
【0121】
次に、
図18を用いて、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。
図18は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、
図18では、移動情報データが生成された後に、ドプラ表示用のスキャンが開始され、ドプラ表示用のスキャンと並行して、ドプラ波形と移動情報データとの並列表示がリアルタイムで実行される場合について説明する。
【0122】
図18に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置の制御部17は、操作者から、移動情報データ表示用の関心領域に含まれる走査線上において、ドプラ表示用のサンプルボリュームの設定を受け付けたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、サンプルボリュームの設定を受け付けない場合(ステップS201否定)、制御部17は、サンプルボリュームの設定を受け付けるまで待機する。
【0123】
一方、サンプルボリュームの設定を受け付けた場合(ステップS201肯定)、超音波プローブ1は、送受信部11の制御により、サンプルボリュームを含む走査線上で超音波送受信を行ない、送受信部11は、超音波プローブ1が受信した反射波信号から、走査線上の反射波データを生成し、フレームバッファ12に格納する。そして、PWD処理部14bは、フレームバッファ12からサンプルボリュームの反射波データを読み出し(ステップS202)、HPF処理及びFFT処理を行なって、サンプルボリュームの血流情報を取得する(ステップS203)。そして、画像生成部15aは、ドプラ波形を生成する(ステップS204)。そして、制御部17の制御により、モニタ2は、ドプラ波形と移動情報データと時相を合わせて表示し(ステップS205)、処理を終了する。
【0124】
なお、第2の実施形態は、ドプラ波形の収集後に、ドプラ波形と移動情報データとの並列表示が行なわれる場合であっても良い。また、第2の実施形態では、ドプラ波形の収集は、血流画像の収集前に行なわれる場合であっても良い。また、第2の実施形態においても、移動情報データ表示用のROIが複数設定される場合であっても良い。かかる場合、ドプラ表示用のスキャンは、複数のROIごとに行なわれる。また、第2の実施形態においても、移動情報データ表示用のROIが3次元である場合であっても良い。
【0125】
上述してきたように、第2の実施形態では、移動情報データ表示とともにドプラ表示を行なう。また、PWD法では、CFM法より折り返し速度を高く設定できる。このため、高流速の血流については、PWD法のFFT表示の方が、CFM法より信頼性が高い。そこで、第2の実施形態のように、PWD法によるドプラ波形を、高フレームレートの血流画像や、当該血流画像から生成された移動情報データと並列表示することで、操作者は、血流画像や、移動情報データで観察される血流動態に関する情報の信頼性を確認することができる。
【0126】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、高速フーリエ変換法により移動情報データが生成表示される場合について
図19及び
図20を用いて説明する。
図19及び
図20は、第3の実施形態を説明するための図である。
【0127】
第2の実施形態では、ドプラ波形と、高フレームレート血流画像を別々に収集したが、高フレームレート血流画像を生成するためのI/Q信号は、例えば、フレームバッファ12にて保持されている。このため、PWD処理部14bは、高フレームレート血流画像の断面上の任意の位置のI/Q信号を取得することができる。
【0128】
そこで、第3の実施形態では、PWD処理部14bは、フレームバッファ12から取得した関心領域内の反射波データに対して、
図13を用いて説明したように、例えば、高速フーリエ変換法による周波数解析を行なうことで関心領域の時系列に沿った血流情報を取得する。すなわち、PWD処理部14bは、
図19に示すように、高フレームレート血流画像において任意の位置で設定されたROI内の時系列に沿ったI/Q信号を取得し、取得したI/Q信号をフレーム方向にてHPF処理してFTT処理する。これにより、PWD処理部14bは、従来のドプラ表示に用いられているドプラ波形と同様のドプラ波形を生成するための血流情報を取得することができる。換言すると、第3の実施形態では、第1の実施形態で説明したROI、又は、当該ROI内で設定されたROIをサンプルボリュームとする。
【0129】
制御部17は、関心領域の時系列に沿った血流情報に基づく時系列に沿ったデータをモニタ2に表示させる。例えば、第3の実施形態では、制御部17は、FFT処理により取得されたROI内の血流情報から、ドプラ波形を生成表示させたり、時間変化曲線を生成表示させたり、重畳画像を生成表示させたりすることができる。
【0130】
ここで、PWD処理部14bは、ROI内において、高フレームレート血流画像を生成するために設定された複数点それぞれの「速度、分散及びパワー」を血流情報として取得することができる。或いは、PWD処理部14bは、ROI内の複数点それぞれの「速度、分散及びパワー」から、ROI内の複数点それぞれの「平均速度、平均分散及び平均パワー」を平均血流情報として取得することができる。或いは、PWD処理部14bは、ROIを複数のROIに分割することで、複数のROIそれぞれにおける平均血流情報を取得することができる。
【0131】
従って、第3の実施形態では、制御部17は、ドプラ波形として、ROIのドプラ波形、ROI内の複数点それぞれのドプラ波形、又は、ROI内で設定された複数ROIそれぞれのドプラ波形を生成表示させることができる。また、第3の実施形態では、制御部17は、時間変化曲線として、ROIの時間変化曲線、ROI内の複数点それぞれの時間変化曲線、又は、ROI内で設定された複数ROIそれぞれの時間変化曲線を生成表示させることができる。また、第3の実施形態では、制御部17は、重畳画像として、ROIの平均血流情報を1つの矢印で示す重畳画像、ROI内の複数点それぞれの血流情報を複数の矢印で示す重畳画像、ROI内で設定された複数ROIそれぞれの血流情報を1つの矢印で示す重畳画像、又は、ROI内で設定された複数ROIそれぞれの血流情報を複数の矢印で示す重畳画像を生成表示させることができる。
【0132】
なお、第3の実施形態では、PWD処理部14bとCFM処理部14a及び検出部15bとが同一の反射波データに対して処理を行なう場合であっても良い。すなわち、制御部17は、
図20に示すように、ROI内の血流情報をCFM処理部14a及びPWD処理部14bそれぞれで取得させても良い。仮に、CFM処理部14aの出力データを第1血流情報とし、PWD処理部14bの出力データを第2血流情報とすると、制御部17は、第1血流情報に基づく移動情報データとして、時間変化曲線や、時間変化画像、重畳画像等を表示させる。また、制御部17は、第2血流情報に基づく移動情報データとして、上述したように、ドプラ波形や、時間変化曲線、重畳画像を表示させる。
【0133】
なお、第2血流情報のROIは、第1血流情報のROIと同じ領域である場合であっても、第1血流情報のROI内に設定される場合であっても良い。また、第2血流情報のROIは、第1血流情報のROI内に複数設定される場合であっても良い。また、第3の実施形態においても、FFT表示用のスキャンが更に行なわれる場合であっても良い。また、第3の実施形態でも、連続波が送信される走査線全体を略含む関心領域が移動情報の検出対象として設定されるならば、CWD法を適用して上述した処理が行なわれても良い。
【0134】
なお、第3の実施形態においても、重畳画像が動画表示される場合、時間変化曲線等において同一時相を示すラインマーカー表示が行なわれる。
【0135】
次に、
図21を用いて、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。
図21は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、
図21では、ROI設定が、血流画像の収集後に行なわれ、上述したPWD処理部14b及び制御部17の処理が血流画像の収集後に行なわれる場合について説明する。
【0136】
図21に示すように、第3の実施形態に係る超音波診断装置の制御部17は、操作者から、サンプルボリュームとしての関心領域の設定を受け付けたか否かを判定する(ステップS301)。ここで、サンプルボリュームの設定を受け付けない場合(ステップS301否定)、制御部17は、サンプルボリュームの設定を受け付けるまで待機する。
【0137】
一方、サンプルボリュームの設定を受け付けた場合(ステップS301肯定)、PWD処理部14bは、血流画像用に保持されている反射波データからサンプルボリュームの反射波データを取得し(ステップS302)、HPF処理及びFFT処理を行なって、サンプルボリュームの血流情報を取得する(ステップS303)。そして、画像生成部15aは、ドプラ波形を生成する(ステップS304)。そして、制御部17の制御により、モニタ2は、ドプラ波形を表示、又は、ドプラ波形と移動情報データと時相を合わせて表示し(ステップS305)、処理を終了する。なお、第3の実施形態は、ROI設定が反射波データの収集前に行なわれ、血流画像の撮像中に、血流画像用に保持されている反射波データからFFT処理により取得された血流情報に基づくドプラ波形等のデータがリアルタイムで表示される場合であっても良い。
【0138】
上述してきたように、第3の実施形態では、高フレームレート血流像と同一の信号を使用して、FFT表示するので、第2の実施形態と比較して、より正確な位置と時相で血流動態を観察することができる。ただし、第2の実施形態のように、PWD法等で反射波データを別途収集する場合と比較して、第3の実施形態では、PRFが低くならざるを得ないので折り返し速度が低くなる。すなわち、折り返し速度の観点から、心臓や頚動脈のような流速が速い部位では、FFT表示を行なうのであれば、第2の実施形態で説明した方法の方が、信頼線が高い。このため、高フレームレート血流像と同一の信号を使用してFFT表示を行なう第3の実施形態の方法は、比較的遅い速度の血流を観察する場合に用いられることが望ましい。比較的遅い速度の血流を観察する場合は、第3の実施形態の方法を用いることで、別途、
PWD用のスキャンを行なう必要が無いことから、検査方法を簡便にし、検査時間を短縮することができる。
【0139】
なお、上述した第1の実施形態〜第3の実施形態で説明した画像処理は、医用画像診断装置とは独立に設置された画像処理装置により実行される場合であっても良い。具体的には、各種の医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication Systems)のデータベースや、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベース等が、フレームバッファ12に保持されたデータを記憶しておき、ドプラ処理部14や画像処理部15、制御部17等の機能を有する画像処理装置が、これらのデータベースから反射波データを受信して、上述した画像処理を行なう場合であってもよい。また、第1の実施形態で説明した画像処理を行なう場合、かかる画像処理装置は、例えば、60fps以上のフレームレートで生成された血流画像をデータベースから受信して、上述した画像処理を行なう場合であってもよい。
【0140】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0141】
また、第1の実施形態〜第3の実施形態で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0142】
以上、説明したとおり、第1の実施形態〜第3の実施形態によれば、2次元又は3次元の関心領域における血流動態を正確に時間分解能良く観測することができる。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。