(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の絶縁性接着剤組成物に導電性粒子が含まれる導電性粒子含有層と、該第1の絶縁性接着剤組成物よりも最低溶融粘度が低い第2の絶縁性接着剤組成物に絶縁性粒子が含まれる絶縁性接着剤層とが積層されてなる異方性導電フィルムにおいて、
前記絶縁性接着剤層は、該絶縁性接着剤層の表面から前記絶縁性粒子が突出しており、
前記絶縁性粒子の平均粒径に対する、該絶縁性粒子の絶縁性接着剤層表面から突出する長さの割合は、30〜60%であり、
前記絶縁性粒子の融点は、105〜165℃であって、
前記絶縁性粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)は、4000N/mm2以下である異方性導電フィルム。
第1の絶縁性接着剤組成物に導電性粒子が含まれる導電性粒子含有層と、該第1の絶縁性接着剤組成物よりも最低溶融粘度が低い第2の絶縁性の接着剤組成物に絶縁性粒子が含まれる絶縁性接着剤層とが積層されてなる異方性導電フィルムの製造方法において、
剥離フィルム上に、前記導電性粒子が含まれる第1の絶縁性接着剤組成物を塗布し、乾燥させることで前記導電性粒子含有層を成膜し、
前記導電性粒子含有層上に、前記絶縁性粒子が含まれる第1の絶縁性接着剤組成物を塗布して乾燥させて前記絶縁性接着剤層を成膜し、
前記絶縁性粒子を、前記絶縁性接着剤層の表面に散布し、
ラミネートにより、前記絶縁性粒子を前記絶縁性接着剤層の表面から突出させ、
前記絶縁性粒子の平均粒径に対する、該絶縁性粒子の絶縁性接着剤層表面から突出する長さの割合は、30〜60%であり、
前記絶縁性粒子の融点は、仮貼り時の加熱温度よりも高く、異方性導電接続時の加熱温度よりも低く設定され、
前記絶縁性粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)は、4000N/mm2以下である異方性導電フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本発明の実施の形態では、導電性粒子を含有する導電性粒子含有層と絶縁性接着剤層とを備える2層構造の異方性導電フィルムを介してLCD(Liquid Crystal Display)パネルを構成するガラス基板と電子部品の一種であるIC(Integrated Circuit)チップとを圧着接続する接続方法を提供する。ガラス基板には、配線電極がファインピッチに形成されている。また、ICチップには、配線電極の配線パターンに応じてバンプ(端子電極)が形成されている。そして、この接続方法によって、ガラス基板の配線電極とICチップのバンプとを異方性導電接続することにより、接続構造体を得る。
【0022】
図1は、本実施の形態に適用される異方性導電フィルム1の短手方向(幅方向)の模式断面図である。異方性導電フィルム1は、剥離フィルム(セパレータ)11上に、絶縁性接着剤組成物12aに導電性粒子12bが単層に配列される導電性粒子含有層12が成膜され、導電性粒子含有層12上に、絶縁性接着剤組成物12aよりも硬化開始前に溶融するときの粘度(最低溶融粘度)が低い絶縁性接着剤組成物13aに導電性粒子が含まれない絶縁性接着剤層13が成膜されることで2層積層構造をなしている。
【0023】
導電性粒子含有層12においては、最低溶融粘度が高い絶縁性接着剤組成物12aによって多数の導電性粒子12bがしっかりと固定されている。これにより、配線電極とバンプとのファインピッチ接続を容易に行うことができる。また、絶縁性接着剤層13においては、最低溶融粘度が低い絶縁性接着剤組成物13aが、異方性導電フィルム1の仮貼り時、加熱温度が低くても高い接着力を発揮することができるため、接続時の熱圧着によって容易に溶融し、高い接続信頼性を発揮することができる。
【0024】
絶縁性接着剤層13には、絶縁性粒子13bが含まれる。絶縁性粒子13bは、絶縁性接着剤層13の導電性粒子含有層12に接しない側の面からその一部が突出するように絶縁性接着剤層13に埋設されている。
【0025】
絶縁性粒子13bの平均粒径をr、絶縁性粒子13bの絶縁性接着剤層13表面からの突出している長さをr
aとし、絶縁性粒子13bの絶縁性接着剤層13表面からの突出率tをr
a/r×100(%)で表す。突出率tは、30〜60%とすることが好ましく、45〜55%とすることがより好ましい。突出率tが30%未満であると、絶縁性粒子13bの突出部分とガラス基板の表面との間に隙間が十分に形成されないため、リペア性が悪くなる。一方、60%を超えると、絶縁性粒子13bが絶縁性接着剤層13表面から剥離して、脱落するおそれがある。
【0026】
絶縁性粒子13bの硬さ(絶縁性粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率:10%K値)は、4000N/mm
2以下が好ましい。圧縮弾性率(10%K値が4000N/mm
2以下であることにより、加圧によって絶縁性粒子13bを容易に押し潰すことができる。
【0027】
従来、溶融粘度が高い導電性粒子含有層を基板に対して十分な接着力で仮貼するためには、仮貼り時であるにもかかわらず、比較的高温で熱圧着を行わなければならなかった。仮貼り時に加熱温度を高くすると、異方性導電フィルムの絶縁性接着剤組成物の流動性が増大し、これにより、基板と電子部品との間の絶縁性接着剤組成物の充填量が低下して接続信頼性が低下する。
【0028】
また、仮貼り時に加熱温度を高くすると、その時点で絶縁性接着剤組成物の硬化反応が開始してしまう。そのため、硬化した絶縁性接着剤組成物が残存することで、リペア処理における作業性が低下するとともに、硬化した接着剤組成物が排除できないことにより、接続信頼性が低下する。
【0029】
そこで、本実施の形態では、異方性導電フィルム1を、絶縁性接着剤層13をガラス基板の表面と対峙させて貼付する。これにより、最低溶融粘度が低い絶縁性接着剤層13の接着力によってガラス基板に対してしっかりと接着することができる。これとともに、絶縁性粒子13bの突出部分とガラス基板の表面との間に隙間が形成された状態で、異方性導電フィルム1を貼付することができるため、異方性導電フィルム1をガラス基板の表面から容易に剥離することができる。このように、異方性導電フィルム1は、絶縁性粒子13bを突出させた絶縁性接着剤層13によって、高い接着性を確保しながら、優れたリペア性を発揮することができる。
【0030】
本実施の形態では、このような2層積層構造の異方性導電フィルム1を介してガラス基板と電子部品とを接続する。具体的には、
図2に示すように、ガラス基板14上の配線電極15が形成されている面上に、絶縁性粒子13bが突出する絶縁性接着剤層13の面をガラス基板14に接触させるようにして異方性導電フィルム1を仮貼りする(仮貼工程)。そして、異方性導電フィルム1の位置合わせ状態を確認し、位置ずれ等の不具合が生じている場合には、異方性導電フィルム1を剥離し、再度、異方性導電フィルム1を正しい位置で仮貼りするリペア処理を行う(リペア工程)。次いで、
図3に示すように、異方性導電フィルム1の導電性粒子含有層12上にICチップ16を配置する(配置工程)。そして、
図4に示すように、熱加圧により、ガラス基板14とICチップ16とを圧着接続させ、接続構造体を得る(接続工程)。なお、この接続方法の詳細については、後述する。
【0031】
絶縁性粒子13bの融点は、仮貼工程での低温及び短時間での熱加圧の加熱温度よりも高く設定され、接続工程での熱加圧の加熱温度よりも低く設定することができる。これにより、仮貼工程では、絶縁性粒子13bの形状を維持して貼付することができるとともに、接続工程では、容易に溶融して高い接着力により接続することができる。このような融点としては、105〜165℃とすることができる。
【0032】
導電性粒子含有層12の絶縁性接着剤組成物12aは、最低溶融粘度が絶縁性接着剤層13の絶縁性接着剤組成物13aの最低溶融粘度の10倍以上に調整されていることが好ましい。導電性粒子含有層12の絶縁性接着剤組成物12aの最低溶融粘度は10000〜16000Pa・sとすることが好ましい。10000Pa・s未満であると、多数の導電性粒子13bを固定することができない。一方、16000Pa・sを超えると、接続工程での熱加圧においても容易に溶融することができない。絶縁性接着剤層13の絶縁性接着剤組成物13aの最低溶融粘度は700〜1100Pa・sとすることが好ましい。700Pa・s未満であると、仮貼工程での熱圧着においてもガラス基板14に強固に接着してしまい、リペア処理が不可能になってしまう。一方、1100Pa・sを超えると、仮貼工程でガラス基板14に対して優れた付着力(タック力)を発揮することができない。
【0033】
導電性粒子含有層12及び絶縁性接着剤層13の最低溶融粘度をこのように調整することにより、仮貼工程では、最低溶融粘度の低い絶縁性接着剤層13が、付着力を生じさせてガラス基板14に対して十分な接着性を確保することができる。これとともに、絶縁性粒子13bの突出部分とガラス基板14との間に隙間を有した状態で絶縁性接着剤層13がガラス基板14に貼付されることにより、リペア工程では、異方性導電フィルム1をガラス基板14から容易に剥離することができる。このように、異方性導電フィルム1は、絶縁性粒子13bを突出させた絶縁性接着剤層13によって、高い接着性を確保しながら、優れたリペア性を発揮することができる。
【0034】
接続工程では、熱加圧が開始されると、最低溶融粘度の低い絶縁性接着剤層13の絶縁性接着剤組成物13aが溶融してガラス基板14に対して接着性を生じさせる。また、接続工程では、バンプ17と配線電極15との間にある絶縁性粒子13bは、加圧によってバンプ17に押し潰され、加熱されることで容易に溶融し、迅速に粒子形状が崩れる。そして、バンプ17と配線電極15との間において、導電性粒子13bは、しっかりと挟持されて固定される。これにより、高い粒子捕捉率を得ることができる。このように、接続構造体において、優れた接続信頼性及び導通信頼性を発揮することができる。
【0035】
導電性粒子含有層12内において、導電性粒子12bは、例えば単層に配列されて固定されている。これにより、仮貼工程では、導電性粒子12bの移動を抑制することができる。接続工程において、隣接する配線電極15間にある絶縁性粒子13bは、溶融するものの、バンプ17によって押し潰されないことから、バンプ17と配線電極15との間にある絶縁性粒子13bが溶融した時点では、その粒子形状は、未だ維持されている。これにより、導電性粒子含有層12内において単層に配列されていた導電性粒子12bは、接続工程での熱加圧によって、絶縁性粒子13b上又は絶縁性粒子13bの隙間に存在するように分散されて移動する。このようにして、接続工程では、導電性粒子12bが凝集することによるショートの発生が抑制され、絶縁信頼性を良好に維持することができる。なお、導電性粒子含有層12において、導電性粒子12bは、単層に配列される場合に限定されず、例えば
図5の他の実施の形態に示すように、ランダムに配列されてもよい(導電性粒子含有層12’)。
【0036】
絶縁性粒子13bは、結晶性を有する樹脂粒子である。絶縁性粒子13bの平均粒径は、3.0μm〜8.0μmが好ましく、4.0μm〜7.0μmであることがより好ましい。絶縁性粒子13bの融点は、仮貼工程での加熱温度よりも高く設定され、接続工程での加熱温度よりも低く設定されることが好ましく、例えば100〜170℃とすることができる。
【0037】
絶縁性粒子13bを構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ナイロン、シリコーン、特殊エチレン系コポリマー(EMMA)、ポリウレタン等を挙げることができる。
【0038】
導電性粒子含有層12の絶縁性接着剤組成物12aは、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物とを含有するバインダ成分からなる。
【0039】
膜形成樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、EVA等の熱可塑性エラストマー等を使用することができる。中でも、耐熱性、接着性のために、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、特にフェノキシ樹脂、例えばビスA型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂を挙げることができる。
【0040】
膜形成樹脂は、少なすぎるとフィルムを形成せず、多すぎると電気接続を得るための樹脂の排除性が低くなる傾向があるので、樹脂固形分(重合性アクリル系化合物と膜形成樹脂との合計)100質量部に対し、30〜80質量部、より好ましくは40〜70質量部である。
【0041】
重合性アクリル系化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、リン酸エステル型アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、o−フタル酸ジグリシジルエーテルアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等、及びこれらに相当する(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0042】
重合性アクリル系化合物は、高い接着強度と導通信頼性とを得る点から、2官能アクリレート5〜40質量部と、ウレタンアクリレート10〜40質量部と、リン酸エステル型アクリレート0.5〜5質量部とを併用することが好ましい。ここで、2官能アクリレートは硬化物の凝集力を向上させ、導通信頼性を向上させるために配合され、ウレタンアクリレートはポリイミドに対する接着性向上のために配合され、そしてリン酸エステル型アクリレートは金属に対する接着性向上のために配合される。
【0043】
重合性アクリル系化合物の使用量は、少なすぎると導通信頼性が低くなり、多すぎると接着強度が低くなる傾向があるので、好ましくは樹脂固形分(重合性アクリル系化合物と膜形成樹脂との合計)100質量部に対し、20〜70質量部、より好ましくは30〜60質量部である。
【0044】
有機過酸化物としては、例えば、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド(1分間半減期温度128.2℃)、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド(1分間半減期温度131.1℃)、ジベンゾイル パーオキサイド(1分間半減期温度 130.0℃)、t−ヘキシル パーオキシベンゾエート(1分間半減期温度 160.3℃)、t−ブチル パーオキシベンゾエート(1分間半減期温度 166.8℃)、ジイソブチリル パーオキサイド(1分間半減期温度 85.1℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度 124.3℃)、ジラウロイル パーオキサイド(1分間半減期温度 116.4℃)、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(1分間半減期温度 112.6℃)、t−ブチル パーオキシピバレート(1分間半減期温度 110.3℃)、t−ヘキシル パーオキシピバレート(1分間半減期温度 109.1℃)、t−ブチル パーオキシネオヘプタノエート(1分間半減期温度 104.6℃)、t−ブチル パーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度 103.5℃)、t−ヘキシル パーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度 100.9℃)、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度 90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度 92.1℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度 92.1℃)、ジ−sec−ブチル パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度 85.1℃)、ジ−n−プロピル パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度 85.1℃)、クミル パーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度 85.1℃)等を挙げることができる。これらは、2種以上を併用することができる。
【0045】
有機過酸化物は、少なすぎると反応性が無くなり、多すぎると異方性導電フィルムの凝集力が低下する傾向があるため、重合性アクリル系化合物100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは3〜7質量部である。
【0046】
導電性粒子含有層12の導電性粒子12bとしては、従来の異方性導電フィルムで用いられている導電性粒子を使用することができ、例えば、金粒子、銀粒子、ニッケル粒子等の金属粒子、ベンゾグアナミン樹脂やスチレン樹脂等の樹脂粒子の表面を金、ニッケル、亜鉛等の金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を挙げることができる。導電性粒子12bの平均粒径としては、接続信頼性の観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。
【0047】
導電性粒子含有層12において、導電性粒子12bの平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは500〜50000個/mm
2、より好ましくは1000〜30000個/mm
2である。
【0048】
また、導電性粒子含有層12には、他の添加組成物、例えば各種アクリルモノマー等の希釈用モノマー、充填剤、軟化剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、シランカップリング剤、シリカ微粒子等を含有させることができる。
【0049】
シランカップリング剤を含有させることにより、有機材料と無機材料との界面における接着性が向上される。シリカ微粒子を含有させることにより、貯蔵弾性率、線膨張係数等を調整して接続信頼性を向上させることができる。
【0050】
絶縁性接着剤層13の絶縁性接着剤組成物13aは、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物とを含有するバインダ成分からなり、導電性粒子含有層12の絶縁性接着剤組成物12aと同様の成分からなる。
【0051】
そして、絶縁性接着剤組成物12a,13aは、導電性粒子含有層12の最低溶融粘度が絶縁性接着剤層13の最低溶融粘度の10倍以上となるように調整される。
【0052】
剥離フィルム11としては、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布してなり、異方性導電フィルム1の乾燥を防ぐとともに、異方性導電フィルム1の形状を維持する。
【0053】
異方性導電フィルム1は、何れの方法で作製するようにしてもよいが、例えば以下の方法によって作製することができる。
【0054】
膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物とを含有する絶縁性接着剤組成物12aを調整する。絶縁性接着剤組成物12aをバーコーターによって剥離フィルム11上に塗布する。この塗布物の表面近傍の所定の位置に、導電性粒子12bを単層配列させる。導電性粒子12bを単層配列させた塗布物をオーブンで加熱することによって乾燥させ、導電性粒子含有層12を得る。
【0055】
ここで、導電性粒子含有層12において、導電性粒子12bを単層に配列させる方法としては、例えば次のような方法を挙げることができる。すなわち、剥離フィルム11上に形成された絶縁性接着剤組成物12a上に噴霧方式により導電性粒子12bを単層配列させる方法や、絶縁性接着剤組成物12a上にスキージ等を用いて導電性粒子12bを単層に配列する方法等を適宜使用することができる。また、例えば、絶縁性接着剤組成物12a上に単層配列させた導電性粒子12bを、ラミネータを用いて絶縁性接着剤組成物12a内に押し込むようにしてもよい。
【0056】
なお、導電性粒子含有層12に代えて、導電性粒子12bがランダムに分散されている導電性粒子含有層12’とする場合には、絶縁性接着剤組成物12aに導電性粒子12bを分散させる。これにより得られた導電性粒子含有組成物をバーコーターによって剥離フィルム11上に塗布する。そして、塗布物をオーブンで加熱することによって乾燥させ、導電性粒子含有層12’を得ることができる。
【0057】
次に、膜形成樹脂と、重合性アクリル系化合物と、有機過酸化物とを含有する絶縁性接着剤組成物13aを調整する。絶縁性接着剤組成物13aをバーコーターによって導電性粒子含有層12上に塗布する。この絶縁性の塗布物からなる層をオーブンで加熱することによって乾燥させて、導電性粒子含有層12上に絶縁性接着剤層13を得る。
【0058】
絶縁性粒子13bをトルエン、ヘキサン、イソプロピルアルコール(IPA)等の分散媒に分散させることにより、絶縁性粒子13bのスラリー溶液を調整する。絶縁性接着剤層13の表面に対し、絶縁性粒子13bのスラリー溶液を噴霧器により噴霧することで、絶縁性接着剤層13の表面に絶縁性粒子13bを散布する。その後、この導電性粒子含有層12上に絶縁性接着剤層13が積層された2層のフィルム積層体をラミネータによってラミネートする。これにより、絶縁性粒子13bの頂部のみが絶縁性接着剤層13から突出するように、絶縁性粒子13bを絶縁性接着剤層13に埋設させる。以上の処理により、異方性導電フィルム1を作製することができる。
【0059】
次に、本実施の形態の接続構造体の製造方法、接続構造体及び接続方法について詳細に説明する。先ず、
図2に示すように、ガラス基板14上の配線電極15が形成されている面と、絶縁性接着剤層13の絶縁性粒子13bが突出する面とを対峙させて異方性導電フィルム1をガラス基板14上に仮貼りする(仮貼工程)。この仮貼りにおいては、加圧ボンダーの低温に加熱したヘッド部の加圧面(図示せず)を導電性粒子含有層12上面に軽く押し当てて低圧で加圧する。加熱温度は、絶縁性粒子13bが溶解せず、絶縁性接着剤組成物12a,13aが流動するが硬化しない程度の低温(例えば60〜80℃のうちの所定の値)である。また、仮貼工程での加圧圧力は、例えば0.5MPa〜2MPaのうちの所定の値である。また、仮貼工程での熱加圧時間は、例えば1〜3秒(sec)のうちの所定の時間である。
【0060】
仮貼工程で異方性導電フィルム1を仮貼りした後、異方性導電フィルム1の位置合わせ状態を確認し、位置ずれ等の不具合が生じている場合には、この仮貼工程の後に、異方性導電フィルム1を剥離して再度異方性導電フィルム1を正しい位置で仮貼りするリペア処理を行う(リペア工程)。
【0061】
仮貼工程において、ガラス基板14に仮貼りする異方性導電フィルム1は、絶縁性接着剤層13の表面から絶縁性粒子13bが突出している。これにより、絶縁性粒子13bの突出部分とガラス基板14との間に隙間ができた状態で、この突出部分がガラス基板14に付着することになる。このため、リペア工程では、異方性導電フィルム1をガラス基板14から容易に剥離することができ、高いリペア性を発揮することができる。
【0062】
次いで、
図3に示すように、バンプ17と配線電極15とを対峙させるようにしてICチップ16を異方性導電フィルム1の導電性粒子含有層12上に配置する(配置工程)。
【0063】
そして、加圧ボンダーの加熱したヘッド部の加圧面(図示せず)をICチップ16の上面に押し当て、
図4に示すように、ガラス基板14とICチップ16とを圧着接続させる(接続工程)。
【0064】
接続工程での加圧圧力は、例えば1.0MPa〜5.0MPaのうちの所定の値である。また、接続工程での加熱温度は、絶縁性粒子13bを溶融させるとともに絶縁性接着剤組成物12a,13aを硬化させる温度(例えば温度170〜190℃のうちの所定の値)である。また、接続工程での熱加圧時間は、例えば3〜20秒のうちの所定の時間である。
【0065】
このようにして、配線電極15とバンプ17との間に導電性粒子12bを挟持させ、絶縁性接着剤組成物12a,13aを硬化させる。これにより、ガラス基板14とICチップ16とを電気的及び機械的に接続する。そして、ガラス基板14とICチップ16とが異方性導電接続されてなる接続構造体を得る。得られた接続構造体は、上述したように、絶縁信頼性を良好に維持しながら、優れた接続信頼性及び導通信頼性を発揮することができる。
【0066】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明が前述の実施の形態に限定されるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0067】
また、上述の実施の形態では、ガラス基板として、LCD(Liquid Crystal Display)パネルを構成するガラス基板1を使用する場合について説明したが、ガラス基板は、これに限定されず、例えばPDP基板(PDPパネル)、有機EL基板(有機ELパネル)等を構成するガラス基板であってもよい。
【0068】
上述の実施の形態では、基板としてガラス基板を用いる場合について説明したが、リジット基板、フレキシブル基板等の他の基板であってもよい。また、上述の実施の形態では、電子部品としてICチップを用いる場合について説明したが、COF、TAB等の他の電子部品であってもよい。
【0069】
また、上述の実施の形態では、本発明をCOG(Chip On Glass)に適用する場合について説明したが、本発明は、FOG(Film On Glass)、FOB(Film On Board)等の他の実装方法にも適用できる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。
【0071】
<実施例1>
フェノキシ樹脂(YP−50、新日鐵化学株式会社製)50質量部、2官能アクリレートモノマー(DCP、新中村化学工業株式会社製)12質量部、単官能アクリレートモノマー(A−SA、新中村化学工業株式会社製)5質量部、ウレタンアクリレート(U−2PPA、新中村化学工業株式会社製)15質量部、シリカ微粒子(アエロジルRY200、日本アエロジル株式会社製)10質量部、リン酸エステル型アクリレート(PM−2、日本化薬株式会社製)3質量部、シランカップリング剤(KBM−503、信越化学株式会社製)1質量部、及び有機過酸化物(パーオクタ
O、日油株式会社製)4質量部に、固形物濃度が50%になるようにトルエンを加えて樹脂組成物を調整した。この樹脂組成物をバーコーターによって剥離フィルムであるPETフィルム上に塗布した。この塗布物内に、平均粒径3μm、樹脂コア、Ni/Auメッキの導電性粒子(AUL703、積水化学工業株式会社製)4.0質量部を単層に配列させた。なお、導電性粒子は、特開2009−134914号公報の実施例1の噴霧方法に従い、単層に配列させた。この導電性粒子を配置させた塗布物をオーブンで加熱することによって乾燥させ、厚さ5μmの導電性粒子含有層を得た。導電性粒子含有層は、導電性粒子の平均粒子密度が15000個/mm
2、最低溶融粘度が13000Pa・sであった。
【0072】
フェノキシ樹脂(YP−50、新日鐵化学株式会社製)25質量部、フェノキシ樹脂(jER4004、三菱化学株式会社)30質量部、2官能アクリレートモノマー(DCP、新中村化学工業株式会社製)12質量部、単官能アクリレートモノマー(A−SA、新中村化学工業株式会社製)5質量部、ウレタンアクリレート(U−2PPA、新中村化学工業株式会社製)20質量部、リン酸エステル型アクリレート(PM−2、日本化薬株式会社製)3質量部、シランカップリング剤(KBM−503、信越化学株式会社製)1質量部、及び有機過酸化物(パーオクタ
O、日油株式会社製)4質量部に、固形物濃度が50%になるようにトルエンを加えて樹脂組成物を調整した。この樹脂組成物をバーコーターによって導電性粒子含有層上に塗布し、これをオーブンで加熱することによって乾燥させ、厚さ9μm、最低溶融粘度800Pa・sの絶縁性接着剤層を得た。
【0073】
平均粒径6.0μm、硬さ(圧縮弾性率:10%K値)1500N/mm
2、融点105℃のポリエチレン製の絶縁性粒子(低密度ポリエチレン粒子LE−1080、住友精化株式会社製)を分散媒(イソプロピルアルコール)に分散させることにより、絶縁性粒子のスラリー液を調整した。絶縁性接着剤層の表面に対し、絶縁性粒子のスラリー液を噴霧器により噴霧することで、絶縁性接着剤層の表面に絶縁性粒子を散布した。
【0074】
その後、この2層のフィルム積層体をラミネータによってラミネートし、絶縁性粒子の頂部のみが絶縁性接着剤層から突出するように、絶縁性粒子を絶縁性接着剤層に埋設させた(配置A)。このような処理により、異方性導電フィルムを作製した。絶縁性粒子の平均粒径r(=6.0μm)に対する、絶縁性粒子の絶縁性接着剤層表面から突出する長さr
aの割合である突出率t(r
a/r×100(%))は、50%とした。
【0075】
次に、作製した異方性導電フィルムを介してガラス基板とICチップとを接続する処理を行った。先ず、ガラス基板上の配線電極が形成されている面と、絶縁性接着剤層の絶縁性粒子が突出する面とを対峙させて異方性導電フィルムをガラス基板上に仮貼りした(仮貼工程)。この仮貼りにおいては、加圧ボンダーの低温に加熱したヘッド部の加圧面を導電性粒子含有層上面に軽く押し当てて低圧で加圧した。加熱温度は、絶縁性粒子が溶解せず、絶縁性接着剤組成物が流動するが硬化しない程度の低温である70℃とした。また、仮貼工程での加圧圧力は、1MPaとした。また、仮貼工程での熱加圧時間は、2秒とした。
【0076】
仮貼工程後、異方性導電フィルムを剥離して再度異方性導電フィルムを正しい位置で仮貼りするリペア処理を行った(リペア工程)。
【0077】
次いで、ICチップのバンプとガラス基板の配線電極とを対峙させるようにしてICチップを異方性導電フィルムの導電性粒子含有層上に配置した(配置工程)。
【0078】
そして、加圧ボンダーの加熱したヘッド部の加圧面をICチップの上面に押し当ててガラス基板とICチップとを圧着接続させた(接続工程)。
【0079】
接続工程での加圧圧力は、1MPaとした。また、接続工程での加熱温度は、190℃とした。また、接続工程での熱加圧時間は、10秒とした。
【0080】
このようにして、配線電極とバンプとの間に導電性粒子を挟持させ、絶縁性接着剤組成物を硬化させてガラス基板とICチップとを電気的及び機械的に接続し、接続構造体を得た。
【0081】
<実施例2>
実施例1の絶縁性粒子に代え、平均粒径5.9μm、硬さ(圧縮弾性率:10%K値)2000N/mm
2、融点165℃のナイロン製の絶縁性粒子(SP−500、東レ株式会社製)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0082】
<参考例1>
実施例1の絶縁性粒子に代え、平均粒径2.0μm、硬さ(圧縮弾性率:10%K値)1500N/mm
2、融点105℃のポリエチレン製の絶縁性粒子(低密度ポリエチレン粒子LE−1080、住友精化株式会社製)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0083】
<参考例2>
実施例1の絶縁性粒子に代え、平均粒径10.0μm、硬さ(圧縮弾性率:10%K値)1500N/mm
2、融点105℃のポリエチレン製の絶縁性粒子(低密度ポリエチレン粒子LE−1080、住友精化株式会社製)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0084】
<実施例3>
実施例1の導電性粒子含有層に代え、導電性粒子を樹脂組成物内に分散させ、導電性粒子をランダムに配列させた導電性粒子含有層(厚さ6μm、導電性粒子密度20000個/mm
2、最低溶融粘度13000Pa・s)を作製した。また、実施例1の絶縁性粒子に代え、平均粒径4.5μm、硬さ(圧縮弾性率:10%K値)2500N/mm
2のシリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)を用いた。
【0085】
実施例1の絶縁性接着剤層におけるフェノキシ樹脂の配合量に代え、フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成株式会社製)30質量部、フェノキシ樹脂(jER4004、三菱化学株式会社)25質量部とした。そして、厚さ10μm、最低溶融粘度1000Pa・sの絶縁性接着剤層を得た。そして、接続工程での加圧圧力は、3MPaとした。また、接続工程での加熱温度は、170℃とした。また、接続工程での熱加圧時間は、5秒とした。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0086】
<実施例4>
実施例3の絶縁性粒子に代え、EMMA樹脂粒子(ソフトビーズA、平均粒径10.0μm、住友精化株式会社製)を湿式ふるい振とう機(筒井理化学器械株式会社製)にて振動させ、平均粒径6.2μm、硬さ(圧縮弾性率:10%K値)400N/mm
2、融点100℃の粒子とした。この粒子を分散媒(イソプロピルアルコール)に分散させることにより調整したスラリー液の状態で、噴霧器により噴霧することで、絶縁性接着剤層に絶縁性粒子を埋設させた。それ以外は、実施例3と同様にして接続処理を行った。
【0087】
<実施例5>
実施例3のシリコーン樹脂粒子に代え、硬さ(圧縮弾性率:10%K値)4000N/mm
2、平均粒径6.4μmのPMMA樹脂粒子(マイクロスフェアー−M−100、松本油脂製薬株式会社製)を用いた以外は、実施例3と同様にして接続処理を行った。
【0088】
<実施例6>
絶縁性接着剤層の表面から絶縁性粒子を突出率t=60%で突出させた以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0089】
<実施例7>
絶縁性接着剤層の表面から絶縁性粒子を突出率t=30%で突出させた以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0090】
<比較例1>
絶縁性接着剤層に絶縁性粒子を埋設させずに絶縁性接着剤層を作製した。そして、剥離フィルム上に、絶縁性接着剤層と、導電性粒子含有層とがこの順に積層されてなる2層積層構造の異方性導電フィルムを作製した。そして、ガラス基板上の配線電極が形成されている面と、導電性粒子含有層とを対峙させて異方性導電フィルムをガラス基板上に仮貼りした。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0091】
<比較例2>
絶縁性接着剤層に絶縁性粒子を埋設させずに絶縁性接着剤層を作製した。そして、剥離フィルム上に、導電性粒子含有層と、絶縁性接着剤層とがこの順に積層されてなる2層積層構造の異方性導電フィルムを作製した。そして、ガラス基板上の配線電極が形成されている面と、絶縁性接着剤層とを対峙させて異方性導電フィルムをガラス基板上に仮貼りした。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0092】
<比較例3>
ガラス基板上の配線電極が形成されている面と、導電性粒子含有層とを対峙させて異方性導電フィルムをガラス基板上に仮貼りした。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0093】
<比較例4>
絶縁性接着剤層の表面から絶縁性粒子を突出率t=20%で突出させた以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0094】
<比較例5>
絶縁性接着剤層内に絶縁性粒子をランダムな状態で埋設させた。これにより、絶縁性接着剤層内に絶縁性粒子を完全に埋め込んだ。すなわち、層表面からは、絶縁性粒子を突出させなかった(配置B)。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0095】
<比較例6>
膜乳化法により、疎水性モノマーである1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(A−HD−N、新中村化学工業株式会社製)と、疎水性モノマーであるウレタンアクリレート(AH600、共栄社化学株式会社製)と、重合開始剤であるラウロリルパーオキサイド(パーロイルL、日油株式会社製)を乳化重合し、硬さ(圧縮弾性率:10%K値)6400N/mm
2、平均粒径6.2μmのアクリル系樹脂粒子を作製した。このアクリル系樹脂粒子を分散媒(イソプロピルアルコール)に分散させることにより調整したスラリー液の状態で、噴霧器により噴霧することで、絶縁性接着剤層に絶縁性粒子を埋設させた。この噴霧により、絶縁性粒子は、絶縁性接着剤層の表面からその頂部が突出(露出)するように配置された(配置A)。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0096】
<比較例7>
実施例1の絶縁性粒子に代え、絶縁性粒子として、平均粒径6.0μm、硬さ(圧縮弾性率:10%K値)7000N/mm
2のベンゾグアナミン系樹脂粒子(エポスターGPH60、日本触媒株式会社製)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして接続処理を行った。
【0097】
<比較例8>
絶縁性接着剤層に絶縁性粒子を埋設させずに絶縁性接着剤層を作製した。そして、剥離フィルム上に、絶縁性接着剤層と、導電性粒子含有層とがこの順に積層されてなる2層積層構造の異方性導電フィルムを作製した。そして、ガラス基板上の配線電極が形成されている面と、導電性粒子含有層とを対峙させて異方性導電フィルムをガラス基板上に仮貼りした。それ以外は、実施例3と同様にして接続処理を行った。
【0098】
<比較例9>
絶縁性接着剤層に絶縁性粒子を埋設させずに絶縁性接着剤層を作製した。そして、剥離フィルム上に、導電性粒子含有層と、絶縁性接着剤層とがこの順に積層されてなる2層積層構造の異方性導電フィルムを作製した。そして、ガラス基板上の配線電極が形成されている面と、絶縁性接着剤層とを対峙させて異方性導電フィルムをガラス基板上に仮貼りした。それ以外は、実施例3と同様にして接続処理を行った。
【0099】
<比較例10>
膜乳化法により、疎水性モノマーである1,6−ヘキサンジオールジアクリレートA−HD−N、新中村化学工業株式会社製)と、疎水性モノマーであるウレタンアクリレート(AH600、共栄社化学株式会社製)と、重合開始剤であるラウロリルパーオキサイド(パーロイルL、日油株式会社製)を乳化重合し、圧縮弾性率:10%K値6400N/mm
2、平均粒径6.2μmのアクリル系樹脂粒子を作製した。このアクリル系樹脂粒子を溶剤に分散させることにより調整したスラリー溶液の状態で、噴霧器により噴霧することで、絶縁性接着剤層に絶縁性粒子を埋設させた。この噴霧により、絶縁性粒子は、絶縁性接着剤層の表面からその頂部が突出(露出)するように配置された(配置A)。それ以外は、実施例3と同様にして接続処理を行った。
【0100】
[仮圧着力測定]
実施例1〜7、比較例1〜10、参考例1、2において、異方性導電フィルムをガラス基板に仮貼り後、引張強度5cm/minで90℃方向に異方性導電フィルムを剥離し、その剥離強度(mN/cm)を、仮圧着力(ガラス基板に対する接着力)として、剥離強度試験機(テンシロン、オリエンテック社製)を用いて測定した。
【0101】
[リペア性評価]
仮貼り後の異方性導電フィルムを剥離した。このリペア作業では、仮貼りした異方性導電フィルムを、引張試験機(テンシロン、オリエンテック株式会社製)を用いて室温(25℃)にて90度方向に機械的に引き剥がした。ガラス基板上の異方性導電フィルムの仮貼り面積に対する、引き剥がし後のガラス基板上における異方性導電フィルムの残渣面積の割合(%)を測定した。異方性導電フィルムの残渣面積の割合が10%未満を○、10%以上を×としてリペア性を評価した。
【0102】
[仮貼り評価]
異方性導電フィルムの仮貼り時での総合評価として、仮圧着力(接着力)が高いとともにリペア処理を良好に行うことができる異方性導電フィルムを仮貼り状態が良好である(○)とし、仮圧着力が低い、リペア性が悪い(×)の少なくとも1つに当てはまる異方性導電フィルムを仮貼り状態が不良である(×)として評価した。
【0103】
[導通抵抗値評価]
実施例1〜7、比較例1〜10、参考例1、2で作製した接続構造体について、初期(Initial)の抵抗と、温度60℃、湿度95%RH、250時間のTHテスト(Thermal Humidity Test)後の抵抗を測定した。測定は、デジタルマルチメーター(デジタルマルチメーター7561、横河電機社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの接続抵抗を測定した。導通抵抗値が2.0Ω未満のものを○、接続抵抗が2.0Ω以上2.5Ω未満のものを△、接続抵抗が2.5Ω以上のものを×として評価した。
【0104】
[粒子捕捉率評価]
実施例1〜7、比較例1〜10、参考例1、2の各接続構造体について、接続前にガラス基板の配線電極上にある導電性粒子の数(接続前粒子数)を次の式(1)により算出した。
接続前粒子数=導電性粒子含有層における導電性粒子の粒子(面)密度(個/mm
2)×端子の面積(mm
2) ・・(1)
【0105】
また、接続後に配線電極上にある導電性粒子の数(接続後粒子数)を金属顕微鏡にてカウントすることにより測定した。そして、次の式(2)により、導電性粒子の粒子捕捉率を算出した。
粒子捕捉率=(接続後粒子数/接続前粒子数)×100 ・・(2)
【0106】
実施例1〜7、比較例1〜10、参考例1、2の条件及び各評価試験の結果をまとめたものを[表1]に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
実施例1〜7では、仮貼工程において、絶縁性粒子を含有させた絶縁性接着剤層をガラス基板側に配置して異方性導電フィルムを仮貼りした。そして、実施例1〜5では、絶縁性接着剤層において、絶縁性粒子の突出率tを50%とし、実施例6では突出率tを60%、実施例7では突出率tを30%とした。これにより、実施例1〜7では、ガラス基板に対して付着力が得られるとともに、絶縁性粒子の突出部分とガラス基板との間に隙間ができることで、高い接着力が得られるとともにリペア性も良好であったと考えられる。また、実施例1〜7の接続工程においては、絶縁性粒子の10%K値が4000N/mm
2以下であることから、熱加圧により、バンプと配線電極との間において、絶縁性粒子がスムーズに潰れて排除されるため、優れた接続信頼性を発揮することができたと考えられる。
【0109】
参考例1では、絶縁性粒子の平均粒径が小さすぎることから、リペア性が悪化した。また、参考例2では、絶縁性粒子の平均粒径が大きすぎることから、接続工程での熱圧着においてもバンプと配線電極との間において容易に潰れず排除されないことから、接続信頼性が良好でなかったと考えられる。
【0110】
一方、比較例1、3、8では、導電性粒子含有層をガラス基板側に配置して異方性導電フィルムを仮貼りした。導電性粒子含有層は、高粘度であることから、ガラス基板に対する付着性が低いため、リペア性及び接続信頼性は良好であったものの、仮圧着力(接着力)は、小さかった。
【0111】
比較例2、9では、絶縁性粒子を含有しない絶縁性接着剤層をガラス基板側に配置して異方性導電フィルムを仮貼りした。そのため、仮圧着力は高かったもののリペア性は悪化した。
【0112】
比較例4では、絶縁性接着剤層における絶縁性粒子の突出率tが低く、また、比較例5では、絶縁性粒子を突出させなかったことから、何れもリペア性が良好でなかった。
【0113】
比較例6、7、10では、絶縁性粒子の圧縮弾性率(10%K値)が高すぎるため、接続工程での熱加圧によっても、絶縁性粒子がバンプと配線電極との間において十分に潰れずに排除されないため、接続信頼性が悪かったと考えられる。