特許第5972571号(P5972571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972571
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】光半導体装置および照明装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20160804BHJP
   H01L 33/52 20100101ALI20160804BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H01L33/50
   H01L33/52
   F21V9/16 100
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-288201(P2011-288201)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138106(P2013-138106A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】河野 広希
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】新堀 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】脇家 慎介
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−231785(JP,A)
【文献】 特開2010−123802(JP,A)
【文献】 特開2011−258676(JP,A)
【文献】 特開2008−235824(JP,A)
【文献】 特開2010−159411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子と、
蛍光体を含有し、前記光半導体素子に対して間隔を隔てて対向配置される第1蛍光層と、
蛍光体を含有し、前記光半導体素子と前記第1蛍光層との間に介在され、前記光半導体素子を封止する第2蛍光層と
を備え、
前記光半導体素子は、複数、設けられ、前記光半導体素子と前記第1蛍光層との対向方向と直交する方向において並んでおり、
前記第1蛍光層中の前記蛍光体の体積と、前記第2蛍光層中の前記蛍光体の体積との比率が、87:13〜61:39であり、
記対向方向における前記第1蛍光層の表面と、前記光半導体素子との距離は、前記対向方向と直交する方向における前記第2蛍光層の表面と、前記対向方向と直交する方向において前記第2蛍光層の表面に最も近接して配置される前記光半導体素子との距離よりも短いことを特徴とする、光半導体装置。
【請求項2】
前記第1蛍光層および前記第2蛍光層は、シリコーン樹脂を含有することを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記第1蛍光層に含有される前記蛍光体、および、前記第2蛍光層に含有される前記蛍光体は、(Sr,Ba)SiO:Euであることを特徴とする、請求項1または2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記第1蛍光体層に含有される前記蛍光体と、前記第2蛍光体層に含有される前記蛍光体との総量は、全光束測定におけるCIE−yが0.32〜0.37となるように調整されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光半導体装置を備えることを特徴とする、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード(LED)などの光半導体素子を、樹脂で封止することが知られている。
【0003】
例えば、蛍光体を含有する第1樹脂層と、光半導体素子を封止する第2樹脂層とを備える光半導体封止用シートを用いて、光半導体素子を封止し、光半導体装置を得ることが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
この光半導体装置において、例えば、蛍光体をYAG系蛍光体から構成し、光半導体素子を青色発光ダイオードから構成すれば、青色発光ダイオードからの青色光と、YAG系蛍光体からの黄色光とを混色させて白色光を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−123802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、上記した特許文献1に記載の光半導体封止用シートでは、第1樹脂層と第2樹脂層との積層方向に沿って進む青色光は、YAG系蛍光体からの黄色光と適切に混色されて白色光となる一方、積層方向と異なる方向に進む青色光は、YAG系蛍光体からの黄色光との混色バランスが崩れて白色光とならない場合がある。
【0007】
例えば、第2樹脂層に蛍光体が含有されない場合には、青色発光ダイオードからの青色光が、第1樹脂層を通過せずに、第2樹脂層の側面(積層方向と直交する方向の側面)から漏れる場合がある。
【0008】
つまり、この場合には、光半導体装置を積層方向と直交する方向から視認すると、光半導体装置が青色に発光しているように見える。
【0009】
また、第2樹脂層に少量の蛍光体が含有されていると、光半導体装置を積層方向と直交する方向から視認したときに、YAG系蛍光体からの黄色光よりも青色発光ダイオードからの青色光が強くなり、光半導体装置が青色発光しているように見える。
【0010】
また、第2樹脂層中に多量の蛍光体が含有されていると、半導体装置を積層方向と直交する方向から視認したときに、青色発光ダイオードからの青色光よりもYAG系蛍光体からの黄色光が強くなり、光半導体装置が黄色に発光しているように見える。
【0011】
このように、光半導体装置を視認する角度(視野角)によって、光半導体装置からの光の色度が変動する。
【0012】
そこで、本発明の目的は、光半導体装置からの光の色度が視野角に応じて変動することを低減できる光半導体装置および照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子と、蛍光体を含有し、前記光半導体素子に対して間隔を隔てて対向配置される第1蛍光層と、蛍光体を含有し、前記光半導体素子と前記第1蛍光層との間に介在され、前記光半導体素子を封止する第2蛍光層とを備え、前記光半導体素子は、複数、設けられ、前記光半導体素子と前記第1蛍光層との対向方向と直交する方向において並んでおり、前記第1蛍光層中の前記蛍光体の体積と、前記第2蛍光層中の前記蛍光体の体積との比率が、87:13〜61:39であり、前記対向方向における前記第1蛍光層の表面と、前記光半導体素子との距離は、前記対向方向と直交する方向における前記第2蛍光層の表面と、前記対向方向と直交する方向において前記第2蛍光層の表面に最も近接して配置される前記光半導体素子との距離よりも短いことを特徴としている。
【0019】
また、本発明の光半導体装置では、前記第1蛍光層および前記第2蛍光層が、シリコーン樹脂を含有することが好適である。
【0021】
また、本発明の光半導体装置では、前記第1蛍光層に含有される前記蛍光体、および、前記第2蛍光層に含有される前記蛍光体は、(Sr,Ba)SiO:Euであることが好適である。
【0022】
また、本発明の光半導体装置では、前記第1蛍光層に含有される前記蛍光体と、前記第2蛍光層に含有される前記蛍光体との総量が、全光束測定におけるCIE−yが0.32〜0.37となるように調整されていることが好適である。
【0023】
また、本発明の照明装置は、上記の光半導体装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
発明の光半導体装置によれば、第1蛍光層中の蛍光体の体積と、第2蛍光層中の蛍光体の体積との比率を、容易に、90:10〜55:45に調整することができる。
【0026】
その結果、光半導体装置や照明装置からの光の色度が視野角に応じて変動することを、容易に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1、封止シートの断面図である。
図2図2は、図1に示す封止シートの製造方法を説明する説明図であって、(a)は、剥離フィルムの上に蛍光体層を形成する工程を示し、(b)は、蛍光体層の上に封止樹脂層を形成する工程を示す。
図3図3は、本発明の光半導体装置の製造方法を説明する説明図であって、(a)は、封止シートを光半導体素子と対向させる工程を示し、(b)は、光半導体素子を封止する工程を示す。
図4図4は、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図5図5は、各実施例および各比較例の光半導体装置において、視野角度による色度変化を示すグラフである。
図6図6は、本発明の照明装置の平面図である。
図7図7は、図6に示す照明装置のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1、封止シートの断面図である。図2は、図1に示す封止シートの製造方法を説明する説明図である。
【0029】
封止シート1は、図1に示すように、長尺な平帯形状の剥離フィルム2と、剥離フィルム2の上に積層される第1層としての蛍光体層3と、蛍光体層3の上に積層される第2層としての封止樹脂層4とを備えている。封止シート1は、例えば、発光ダイオード(LED)などの光半導体素子を封止するために用いられる。本実施形態では、光半導体素子として、青色発光ダイオードを封止する場合を説明する。
【0030】
封止シート1を製造するには、図2(a)に示すように、まず、剥離フィルム2の上に蛍光体層3を形成する。
【0031】
剥離フィルム2は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、シリコーン樹脂フィルム、スチレン樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルムなどの樹脂フィルムから形成されている。なお、剥離フィルム2の表面は、離型処理が施されていてもよい。
【0032】
剥離フィルム2の厚みは、例えば、20〜100μm、好ましくは、30〜50μmである。剥離フィルム2の厚みが上記の範囲内であれば、コストの増大を抑制しながら、良好なハンドリング性(剥離フィルム2を封止シート1から剥離させるときのハンドリング性)を実現することができる。
【0033】
蛍光体層3は、必須成分として、蛍光体と成形樹脂とを含有している。
【0034】
蛍光体としては、例えば、青色光を黄色光に変換することができる黄色蛍光体や、青色光を赤色光に変換することができる赤色蛍光体などが挙げられる。
【0035】
黄色蛍光体としては、例えば、(Sr,Ba)SiO:Eu(バリウムオルソシリケート(BOS))などのシリケート蛍光体、例えば、Ca−α−SiAlON:Euなどのα−サイアロン蛍光体、例えば、YAl12:Ce(YAG:Ce)、TbAl12:Ce(TAG:Ce)などのガーネット型蛍光体が挙げられる。
【0036】
赤色蛍光体としては、例えば、CaAlSiN:Euなどの窒化物蛍光体が挙げられる。
【0037】
蛍光体としては、好ましくは、黄色蛍光体、より好ましくは、シリケート蛍光体、より一層好ましくは、(Sr,Ba)SiO:Eu(バリウムオルソシリケート(BOS))が挙げられる。蛍光体が(Sr,Ba)SiO:Eu(バリウムオルソシリケート(BOS))であると、種々の発光波長を有する蛍光体を容易に得ることができ、ひいては、光半導体装置10(後述)において、青色光を黄色光に変換する発光波長バリエーションを豊富に実現できるという効果がある。
【0038】
蛍光体は、例えば、粒子状であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算50%の粒子径(いわゆるメジアン径(D50))は、例えば、0.1〜100μm、好ましくは、1〜30μmである。
【0039】
成形樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの光を透過する樹脂が挙げられ、好ましくは、シリコーン樹脂が挙げられる。これらの成形樹脂は、単独(1種類のみ)で用いることもでき、2種以上併用することもできる。成形樹脂がシリコーン樹脂を含有すると、物理特性と電気的特性とから、幅広い温度・湿度条件や過酷な環境に耐えることができるという効果がある。
【0040】
また、成形樹脂は、シリコーン樹脂を、好ましくは、70質量%、より好ましくは、90質量%、より一層好ましくは、100質量%(すなわち、シリコーン樹脂のみ)含有する。
【0041】
シリコーン樹脂は、市販されており、例えば、ERASTOSIL LR7665などのERASTOSILシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン製)などのシリコーンエラストマーが挙げられる。
【0042】
なお、成形樹脂中にシリコーン樹脂を含有している場合には、シリコーン樹脂の架橋密度を調整することにより、蛍光体層3の弾性を、外力や封止時の圧力によっても一定の厚みを維持可能な弾性に調整することができる。
【0043】
また、蛍光体層3には、任意成分として、硬化剤、硬化促進剤、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を配合することができる。
【0044】
また、蛍光体層3には、任意成分として、例えば、シリコーン樹脂微粒子などの有機粒子、例えば、シリカ微粒子、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウムなどの無機粒子を配合することができる。これらの有機粒子および無機粒子は、単独(1種類のみ)で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0045】
蛍光体層3を形成するには、まず、成形樹脂、もしくは、成形樹脂の溶液に、蛍光体を配合して、混合し、成形樹脂組成物を調製する。
【0046】
成形樹脂組成物中の蛍光体の質量基準の含有割合(固形分換算、以下、質量割合とする。)は、目的とする蛍光体層3に含まれる蛍光体の体積基準の含有割合(以下、体積割合とする。)から、逆算して設定すればよい。
【0047】
なお、成形樹脂組成物中の蛍光体の体積割合は、下記式(1)により算定することができる。
【0048】
式(1):
蛍光体の体積割合=(蛍光体の質量割合/蛍光体の比重)÷{(蛍光体の質量割合/蛍光体の比重)+(成形樹脂の質量割合/成形樹脂の比重)}
次いで、得られた成形樹脂組成物を、剥離フィルム2の上に塗布し、乾燥して、蛍光体層3を得る。
【0049】
成形樹脂組成物を剥離フィルム2上に塗布する方法としては、例えば、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法が挙げられる。
【0050】
また、剥離フィルム2上に塗布された成形樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、80〜150℃、好ましくは、90〜150℃で、例えば、5〜60分加熱されることにより、乾燥される。
【0051】
得られた蛍光体層3の厚みは、例えば、30〜1000μm、好ましくは、100〜700μm、さらに好ましくは、300〜600μmである。
【0052】
また、得られた蛍光体層3中の蛍光体の体積割合は、蛍光体の種類にもよるが、蛍光体が(Sr,Ba)SiO:Euである場合には、例えば、0.1〜99.9体積%、好ましくは、1〜99体積%、さらに好ましくは、2〜15体積%である。
【0053】
次いで、封止シート1を製造するには、図2(b)に示すように、蛍光体層3の上に封止樹脂層4を形成する。
【0054】
封止樹脂層4は、必須成分として、蛍光体と封止樹脂とを含有している。
【0055】
蛍光体としては、例えば、上記した蛍光体層3で例示される蛍光体と同様の蛍光体が挙げられる。
【0056】
封止樹脂としては、上記した蛍光体層3で例示される成形樹脂と同様の樹脂が挙げられ、好ましくは、シリコーン樹脂が挙げられる。これらの封止樹脂は、単独(1種類のみ)で用いることもでき、2種以上併用することもできる。封止樹脂がシリコーン樹脂を含有すると、物理特性と電気的特性とから、幅広い温度・湿度条件や過酷な環境に耐えることができるという効果がある。
【0057】
シリコーン樹脂としては、好ましくは、2つの反応系(硬化反応における反応系)を有するシリコーン樹脂、および、変性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0058】
2つの反応系を有するシリコーン樹脂としては、例えば、シラノール縮合とヒドロシリル化反応との2つの反応系を有するシリコーン樹脂(例えば、後述する実施例において調製される封止樹脂など)が挙げられる。
【0059】
変性シリコーン樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂のシロキサン骨格中の一部のSi原子が置換されたヘテロシロキサン骨格(例えば、Si原子がB原子に置換されたボロシロキサン、Si原子がAl原子に置換されたアルミノシロキサン、Si原子がP原子に置換されたホスファーシロキサン、Si原子がTi原子に置換されたチタナーシロキサンなど)を有するシリコーン樹脂が挙げられる。
【0060】
また、封止樹脂層4には、任意成分として、例えば、シリコーン樹脂微粒子などの有機粒子、例えば、シリカ微粒子、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウムなどの無機粒子を配合することができる。これらの有機粒子および無機粒子は、単独(1種類のみ)で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0061】
封止樹脂層4を形成するには、まず、封止樹脂、もしくは、封止樹脂の溶液に、蛍光体を配合して、混合し、封止樹脂組成物を調製する。
【0062】
封止樹脂組成物中の蛍光体の質量割合(固形分換算)は、上記した成形樹脂組成物中の蛍光体の質量割合と同様に、目的とする封止樹脂層4に含まれる蛍光体の体積割合から、逆算して設定すればよい。
【0063】
なお、封止樹脂組成物中の蛍光体の体積割合は、下記式(2)により算定することができる。
【0064】
式(2):
蛍光体の体積割合=(蛍光体の質量割合/蛍光体の比重)÷{(蛍光体の質量割合/蛍光体の比重)+(封止樹脂の質量割合/封止樹脂の比重)}
次いで、得られた封止樹脂組成物を、蛍光体層3の上に塗布し、乾燥して、封止樹脂層4を得る。
【0065】
封止樹脂組成物を蛍光体層3の上に塗布する方法としては、例えば、上記した成形樹脂組成物を剥離フィルム2の上に塗布する方法と同様の方法を用いることができる。
【0066】
また、蛍光体層3上に塗布された封止樹脂組成物は、例えば、50〜160℃、好ましくは、80〜150℃で、例えば、5〜300分加熱されることにより、乾燥される。
【0067】
得られた封止樹脂層4の厚みは、光半導体素子の封止性や作業性、光半導体素子の白色化の観点から、例えば、30〜2000μm、好ましくは、200〜1000μm、さらに好ましくは、400〜800μmである。
【0068】
また、封止樹脂層4の厚みと、蛍光体層3の厚みとの比率は、例えば、5:5〜9:1、好ましくは、5.5:4.5〜7:3である。
【0069】
また、得られた封止樹脂層4中の蛍光体の体積割合は、蛍光体の種類にもよるが、蛍光体が(Sr,Ba)SiO:Euである場合には、例えば、0.1〜99.9体積%、好ましくは、0.1〜4体積%である。
【0070】
また、蛍光体層3中の蛍光体の含有割合と、封止樹脂層4中の蛍光体の含有割合とは、封止した発光ダイオード11(後述)を発光させたときに白色光となるように、全光束測定におけるCIE−yが0.32〜0.37となるように調整されていることが好ましい。全光束測定におけるCIE−yは、例えば、瞬間マルチ測光システム(MCPD−9800、大塚電子社製)などを用いて、積分球方式で測定される。
【0071】
なお、封止樹脂層4は、単一層として形成することもでき、また、複数の層を積層することにより、上記の厚みに形成することもできる。
【0072】
これにより、封止シート1を得る。なお、封止シート1の形状およびサイズは、封止対象(発光ダイオード11)の形状およびサイズに応じて適宜調節可能である。
【0073】
得られた封止シート1において、蛍光体層3中の蛍光体の体積と、封止樹脂層4中の蛍光体の体積との比率は、例えば、90:10〜55:45、好ましくは、80:20〜60:40に調整されている。
【0074】
図3は、本発明の光半導体装置の製造方法を説明する説明図である。図4は、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0075】
次に、得られた封止シート1を用いて発光ダイオード11を封止して、光半導体装置を製造する方法について説明する。
【0076】
図3(a)に示すように、発光ダイオード11を封止するには、まず、互いに間隔を隔てて配置される複数の発光ダイオード11が実装されている基板12を、略平板形状のプレス装置のベース板13上に載置し、基板12の上方に、封止樹脂層4と発光ダイオード11とが上下方向に対向されるように、封止シート1を配置する。
【0077】
次いで、ベース板13との間で封止シート1を挟むように、プレス板14をベース板13に向かって近接させて、封止シート1を基板12に向かって押圧し、その後、プレス板14を加熱する。
【0078】
プレス板14の温度は、例えば、120〜200℃、好ましくは、140〜180℃である。
【0079】
プレス板14の封止シート1に対する押圧力は、例えば、0.01〜10MPa、好ましくは、0.1〜4MPaである。
【0080】
すると、図3(b)に示すように、発光ダイオード11が、封止樹脂層4内に埋没される。
【0081】
そして、引き続き蛍光体層3および封止樹脂層4を加熱することにより、蛍光体層3を硬化させて第1蛍光層としての蛍光層15を形成するとともに、封止樹脂層4を硬化させて第2蛍光層としての封止層16を形成する。
【0082】
最後に、剥離フィルム2を剥離して、図4に示すように、光半導体装置10を得る。
【0083】
得られた光半導体装置10では、発光ダイオード11と蛍光層15との対向方向(図4における紙面上下方向)における蛍光層15の表面と、発光ダイオード11との距離Xは、例えば、500〜2000μm、好ましくは、600〜1000μmである。
【0084】
また、対向方向と直交する方向(図4における紙面左右方向)における封止層16の表面と、発光ダイオード11(封止層16の表面に最も近接する発光ダイオード11)との距離Yは、例えば、500〜5000μm、好ましくは、1000〜3000μmである。
【0085】
また、距離Xと距離Yとの比率は、例えば、1:10〜4:1、好ましくは、1:5〜2:1である。
【0086】
上記の封止シート1によれば、蛍光体層3中の蛍光体の体積と、封止樹脂層4中の蛍光体の体積との比率が、90:10〜55:45に調整されている。
【0087】
そのため、この光半導体装置10によれば、蛍光層15中の蛍光体の体積と、封止層16中の蛍光体の体積との比率が、90:10〜55:45に調整されている。
【0088】
その結果、光半導体装置10からの光の色度が視野角に応じて変動することを低減することができる。
【0089】
なお、蛍光体層3中の蛍光体の含有割合が上記範囲(90)を超過すると、光半導体装置10を視認する角度(視野角)によって、光半導体装置10からの光の色度が大きく変動するという不具合がある。また、封止樹脂層4中の蛍光体の含有割合が上記範囲(45)を超過すると、光半導体装置10を視認する角度(視野角)によって、光半導体装置10からの光の色度が大きく変動するという不具合がある。
【0090】
また、この光半導体装置10によれば、図4に示すように、封止層16の側面と、発光ダイオード11との距離Yは、蛍光層15の表面と、発光ダイオード11との距離Xよりも長い。
【0091】
そのため、蛍光層15を通過せずに封止層16の側面を通過する光を、封止層中16の蛍光体により白色化することができる。
【0092】
図6は、本発明の照明装置の平面図である。図7は、図6に示す照明装置のA−A断面図である。
【0093】
この光半導体装置10は、例えば、照明装置20に実装される。
【0094】
図6および図7に示すように、照明装置20は、光半導体装置10を収容する筐体21を備えている。
【0095】
筐体21は、所定方向に長手の略ボックス形状に形成され、ベースフレーム23と、蓋部材24と、電源ケーブル25とを備えている。
【0096】
ベースフレーム23は、筐体21の長手方向に延び、上側(所定方向と直交する方向の一方側、以下同じ。)に向かって開放される平面視略矩形枠形状に形成されている。ベースフレーム23は、筐体21の下側(所定方向と直交する方向の一方側、以下同じ。)半分を構成する。
【0097】
蓋部材24は、ベースフレーム23を上側から被覆するように、筐体21の長手方向に延びる略コの字形状に形成されている。蓋部材24には、長手方向に延びる窓部27が貫通形成されている。窓部27内には、ガラス板26が嵌合されている。
【0098】
電源ケーブル25は、ベースフレーム23の長手方向一端部において、ベースフレーム23の内外を連絡するように支持されている。電源ケーブル25は、ベースフレーム23内において、光半導体装置10の基板12に電気的に接続されている。
【0099】
光半導体装置10は、筐体21の長手方向に延びる平面視略矩形の平板形状に形成されている。なお、この光半導体装置10には、1つの基板12の上に長手方向に間隔を隔てて複数の発光ダイオード11が並列配置されている。また、光半導体装置10は、複数のレンズ22を備えている。
【0100】
複数のレンズ22のそれぞれは、複数の発光ダイオード11に対してそれぞれ設けられている。レンズ22は、凸レンズ形状に形成され、光半導体装置10の蛍光層15の上に設けられている。レンズ22は、発光ダイオード11から出射された光を配向する。
【0101】
この照明装置20によれば、上記した光半導体装置10を備えているため、照明装置20からの光の色度が視野角に応じて変動することを、容易に低減することができる。
【0102】
なお、上記した実施形態では、剥離フィルム2の上に蛍光体層3および封止樹脂層4を順次積層したが、例えば、蛍光体層3と封止樹脂層4とを、それぞれ別のフィルムに形成し、その後、蛍光体層3と封止樹脂層4とを熱圧着などの方法により貼り合わせてもよい。
【0103】
また、上記した実施形態では、発光ダイオード11を封止シート1で封止した後に剥離フィルム2を剥離したが、封止シート1から剥離フィルム2を剥離した後に、発光ダイオード11を封止してもよい。
【0104】
また、上記した実施形態では、略平板形状のプレス板14で、封止シート1を基板12に対して加圧したが、プレス板14に代えて、所定形状の成形金型を用いて加圧することもできる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を各実施例および各比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら限定されるものではない。
1.成形樹脂の調製
ERASTOSIL LR7665(旭化成ワッカー社製、ジメチルシロキサン骨格誘導体)のA液とB液とを1:1の比率で混合して、成形樹脂を調製した。得られた成形樹脂の比重は、1.0g/cmであった。
2.封止樹脂の調製
40℃に加温したシラノール基両末端ポリシロキサン(下記式(1)中、Rがすべてメチル、nの平均が155、数平均分子量11,500、シラノール基当量0.174mmol/g)2031g(0.177モル)に対して、ビニルトリメトキシシラン15.76g(0.106モル)、および、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン2.80g(0.0118モル)とを配合して、撹拌混合した。
【0106】
なお、ビニルトリメトキシシランおよび(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランのメトキシシリル基(SiOCH)に対する、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサンのシラノール基(SiOH)のモル比(シラノール基のモル数/メトキシシリル基の総モル数)は、1/1であった。
【0107】
撹拌混合後、水酸化テトラメチルアンモニウムのメタノール溶液(縮合触媒、濃度10質量%)0.97mL(触媒含量:0.88ミリモル、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサン100モルに対して0.50モルに相当)を加え、40℃で1時間撹拌した。得られた混合物(オイル)を40℃の減圧下(10mmHg)で、1時間撹拌しながら、揮発分(メタノールなど)を除去した。
【0108】
その後、系を常圧に戻した後、反応物に、オルガノハイドロジェンシロキサン(信越化学工業社製、数平均分子量2,000、ヒドロシリル基当量7.14mmol/g)44.5g(0.022モル)を加え、40℃で1時間撹拌した。
【0109】
なお、オルガノハイドロジェンシロキサンのヒドロシリル基(SiH基)に対する、ビニルトリメトキシシランのビニル基(CH=CH−)のモル比(CH=CH−/SiH)は、1/3であった。
【0110】
その後、系に、白金−カルボニル錯体のシロキサン溶液(付加触媒、白金濃度2質量%)0.13mL(白金として、オルガノハイドロジェンシロキサン100質量部に対して5.8×10−3質量部に相当)を加えて、40℃で10分間攪拌して、封止樹脂を得た。
【0111】
得られた封止樹脂の比重は、1.0g/cmであった。
【0112】
【化1】
【0113】
3.各実施例および各比較例
実施例1
(封止シートの作成)
成形樹脂85gに蛍光体((Sr,Ba)SiO:Eu(バリウムオルソシリケート)比重:4.8g/cm)15gを配合し、1時間、撹拌混合して、蛍光体を15質量%含有した成形樹脂組成物を調製した。
【0114】
得られた成形樹脂組成物を剥離フィルム(ポリエステルフィルム:SS4C、ニッパ社製、厚み50μm)上に400μmの厚みで塗工し、100℃で10分間乾燥して、剥離フィルム上に積層された蛍光体層を形成した(図2(a)参照)。
【0115】
次いで、封止樹脂93gに蛍光体((Sr,Ba)SiO:Eu(バリウムオルソシリケート))7gを配合し、混合して、蛍光体を7質量%含有した封止樹脂組成物を調製した。
【0116】
得られた封止樹脂組成物を蛍光体層の上に600μmの厚みで塗工し、135℃で5分乾燥した。これにより、封止樹脂組成物を半硬化させて、封止樹脂層を形成した(図2(b)参照)。
【0117】
これにより、封止シートを得た。
【0118】
蛍光体層に含まれる蛍光体の体積と、封止樹脂層に含まれる蛍光体の体積との比率を、表1に示す。
(半導体装置の作成)
LEDアレイ基板(外寸22mm×15mmのメタル基板に、12mmφ、深さ150μmの凹部が形成され、凹部内に3mm間隔で、9つ(3つ(縦)×3つ(横))の青色発光ダイオードチップが搭載されたLEDアレイ基板)に対して、封止シートを、封止樹脂層が青色発光ダイオードチップに対向されるように配置した(図3(a)参照)。
【0119】
金属製のプレス板を用いて、封止シートを、160℃で加熱しながら、青色発光ダイオードチップに向かって0.1MPaの圧力で5分間押圧し、青色発光ダイオードチップを封止した。
【0120】
最後に、剥離フィルムを剥離して、光半導体装置を得た。
【0121】
実施例2
(封止シートの作成)
成形樹脂組成物に蛍光体を16.5質量%含有させ、封止樹脂組成物に蛍光体を6質量%含有させた以外は、上記した実施例1と同様にして、封止シートを得た。
【0122】
蛍光体層に含まれる蛍光体の体積と、封止樹脂層に含まれる蛍光体の体積との比率を、表1に示す。
(光半導体装置の作成)
上記した実施例1と同様にして、得られた封止シートを用いて青色発光ダイオードチップを封止し、光半導体装置を得た。
【0123】
実施例3
(封止シートの作成)
成形樹脂83gに蛍光体((Sr,Ba)SiO:Eu(バリウムオルソシリケート))17gを配合し、1時間、撹拌混合して、蛍光体を17質量%含有した成形樹脂組成物を調製した。
【0124】
得られた成形樹脂組成物を剥離フィルム(ポリエステルフィルム:SS4C、ニッパ社製、厚み50μm)上に500μmの厚みで塗工し、100℃で10分間乾燥して、剥離フィルム上に積層された蛍光体層を形成した(図2(a)参照)。
【0125】
次いで、封止樹脂95gに蛍光体((Sr,Ba)SiO:Eu(バリウムオルソシリケート))5gを配合し、混合して、蛍光体を5質量%含有した封止樹脂組成物を調製した。
【0126】
得られた封止樹脂組成物を蛍光体層の上に600μmの厚みで塗工し、135℃で5分乾燥した。これにより、封止樹脂組成物を半硬化させて、封止樹脂層を形成した(図2(b)参照)。
【0127】
これにより、封止シートを得た。
【0128】
蛍光体層に含まれる蛍光体の体積と、封止樹脂層に含まれる蛍光体の体積との比率を、表1に示す。
【0129】
実施例4
(封止シートの作成)
成形樹脂組成物に蛍光体を20質量%含有させ、封止樹脂組成物に蛍光体を3質量%含有させた以外は、上記した実施例3と同様にして、封止シートを得た。
【0130】
蛍光体層に含まれる蛍光体の体積と、封止樹脂層に含まれる蛍光体の体積との比率を、表1に示す。
(光半導体装置の作成)
上記した実施例1と同様にして、得られた封止シートを用いて青色発光ダイオードチップを封止し、光半導体装置を得た。
【0131】
比較例1
(封止シートの作成)
成形樹脂組成物に蛍光体を23質量%含有させ、封止樹脂組成物に蛍光体を1質量%含有させた以外は、上記した実施例3と同様にして、封止シートを得た。
【0132】
蛍光体層に含まれる蛍光体の体積と、封止樹脂層に含まれる蛍光体の体積との比率を、表1に示す。
(光半導体装置の作成)
上記した実施例1と同様にして、得られた封止シートを用いて青色発光ダイオードチップを封止し、光半導体装置を得た。
【0133】
比較例2
(封止シートの作成)
成形樹脂組成物に蛍光体を63質量%含有させ、封止樹脂組成物に蛍光体を含有させなかった以外は、上記した実施例1と同様にして、封止シートを得た。
【0134】
蛍光体層に含まれる蛍光体の体積と、封止樹脂層に含まれる蛍光体の体積との比率を、表1に示す。
(光半導体装置の作成)
上記した実施例1と同様にして、得られた封止シートを用いて青色発光ダイオードチップを封止し、光半導体装置を得た。
【0135】
比較例3
(封止シートの作成)
封止樹脂組成物に蛍光体を13.5質量%含有させ、蛍光体層を形成せずに剥離シートの上に封止樹脂層を形成した以外は、上記した実施例1と同様にして、封止シートを得た。
【0136】
蛍光体層に含まれる蛍光体の体積と、封止樹脂層に含まれる蛍光体の体積との比率を、表1に示す。
(光半導体装置の作成)
上記した実施例1と同様にして、得られた封止シートを用いて青色発光ダイオードチップを封止し、光半導体装置を得た。
4.光半導体装置の発光測定評価
(1)配光特性評価
各実施例および各比較例で得られた光半導体装置を270mAで点灯し、LED配光測定システム(GP−1000、大塚電子社製)により、0°(蛍光層と発光ダイオードとの対向方向)から85°(対向方向と直交する方向)の範囲で、視野角度を変更しながら色度(CIE−y)を測定した。結果を図5に示す。
【0137】
また、測定された最大色度と最小色度との差(最大色度差)を表1に示す。最大色度差が小さいほど視野角度による色度変化が小さく、配光特性が優れている。
【0138】
また、光半導体装置の側面(対向方向と直交する方向の面)から出射される光の色を目視により、下記の基準に従って評価した。結果を表1に示す。
(目視評価の評価基準)
○:光が白色に見える。
×:光が青色または黄色に見える。
(2)全光束測定
各実施例および各比較例で得られた光半導体装置を270mAで点灯し、瞬間マルチ測光システム(MCPD−9800、大塚電子社製)により、積分球方式で色度(CIE−y)を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
【符号の説明】
【0140】
1 封止シート
3 蛍光体層
4 封止樹脂層
10 光半導体装置
11 発光ダイオード
15 蛍光層
16 封止層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7