特許第5972574号(P5972574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972574高分子量テールを有するポリエチレンを作製するためのチーグラー・ナッタ触媒組成物、およびそれを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972574
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】高分子量テールを有するポリエチレンを作製するためのチーグラー・ナッタ触媒組成物、およびそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/658 20060101AFI20160804BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C08F4/658
   C08F10/00 510
【請求項の数】16
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2011-522249(P2011-522249)
(86)(22)【出願日】2009年8月6日
(65)【公表番号】特表2011-530626(P2011-530626A)
(43)【公表日】2011年12月22日
(86)【国際出願番号】US2009053008
(87)【国際公開番号】WO2010017393
(87)【国際公開日】20100211
【審査請求日】2012年8月6日
(31)【優先権主張番号】61/086,595
(32)【優先日】2008年8月6日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591123001
【氏名又は名称】ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,バークハード
(72)【発明者】
【氏名】ジョブ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シェブウォルターズ,アン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーゲンセン,ロバート
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−512416(JP,A)
【文献】 特表2003−509338(JP,A)
【文献】 特表2003−503562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/64−4/6592
C08F 10/00−10/14
C08F 110/00−110/14
C08F 210/00−210/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)スラリー化剤中で以下のものを接触させること:
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;および
iii)少なくとも1つのチタン化合物;
b)工程a)のスラリーを噴霧乾燥させて、スラリー化剤を蒸発させて、固体粒子を生成すること、ならびに
c)触媒前駆体を部分的にハロゲン化する条件下で、前記工程b)の固体粒子を少なくとも1つのハロゲン化剤と接触させること、
を包含する触媒成分の調製方法であって、
前記ハロゲン化剤は、SiCl、TiCl、二塩化アルキルアルミニウム、およびアルキルアルミニウムセスキクロリドの少なくとも1つを含み、前記マグネシウムジヒドロカルビルオキシド、および前記チタン化合物は、スラリー中に任意のモル比で存在し、
少なくとも1つのチタン化合物が、一般式Ti(OR3)aX4-a、Ti(OR3)aY4-a、またはそれらの組合せから選択され:
式中、Xはハロゲン;aはそれぞれ独立的に1〜4の整数;Yは独立的に、OR3とは異なる酸素結合アニオン性配位子、または窒素結合アニオン性配位子(いずれも最大20の炭素原子を有する)から選択され;R3はそれぞれ独立的に、1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分岐状の置換または非置換ヒドロカルビル基であり、R3上の任意の置換基は独立的にハロゲンまたはアルコキシドであり、
前記二塩化アルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムセスキクロリドは、前記スラリー中に存在するマグネシウム、チタン、および任意の他の遷移金属成分の組合せ中の酸素結合および窒素結合した合計配位子の1モル当たり合計2モルの塩素を提供できる、方法。
【請求項2】
スラリー化剤中で、成分i)、ii)およびiii)を接触させる工程a)が:
iv)4〜6族金属から選択される、前記チタン化合物とは異なる少なくとも1つの遷移金属化合物
と接触させることをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チタン化合物とは異なる遷移金属化合物が:
a)Zr(OR4)bCl4-b、Hf(OR4)bCl4-b、VOCl3、またはそれらの任意の組合せから選択され
(式中、bは0〜4の整数であり、R4はそれぞれ1〜12の炭素原子を有するアルキル基であ
る);
b)Ti(0R5)cX14-c、またはこの式の化合物の任意の組合せ(式中、X1はCl、Br、またはIであり;cは0〜3の整数であり;およびR5はそれぞれ1〜12の炭素原子を有するアルキル基である);
c)TiX2d(式中、X2はCl、Br、またはIであり、dは0は上回るが4未満の数字である);
あるいは
d)それらの任意の組合せ、
から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
スラリー化剤中で、成分i)、ii)、およびiii)を接触させる工程a)が:
v)無孔フィラー、
と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリー化剤が、最大4炭素原子を有するアルコール、または最大4炭素原子を有するアルコールの任意の組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ルイス酸可溶化剤が二酸化炭素であり、前記スラリー化剤が1〜4の炭素原子を有するアルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マグネシウムジヒドロカルビルオキシドが、式Mg(OR1)2(式中、R1はそれぞれ独立的に、最大で6炭素原子を有するアルキルから選択される)を有し;および
前記ルイス酸性可溶化剤が、二酸化炭素、二酸化硫黄、ホルムアルデヒド、Al(OR2)3、B(OR2)3、またはそれらの任意の組合せから選択される(式中、R2はそれぞれ独立的に、最大で6炭素原子を有するアルキルから選択される)、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程c) が、
前記工程b)の固体粒子を:
i)触媒前駆体を部分的にハロゲン化する条件下で、少なくとも1つの穏やかな第1のハロゲン化剤および連続して少なくとも1つの強力な第2のハロゲン化剤と;または
ii)触媒前駆体を部分的にハロゲン化する条件下で、少なくとも1つの強力なハロゲン化剤と
接触させることを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
a)触媒成分;
b)ハロゲン化剤;および
c)活性化共触媒、
を含み、
前記触媒成分が、
a) 以下のものの噴霧乾燥混合物または反応生成物;
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;および
iii)少なくとも1つのチタン化合物;
b)少なくとも1つのハロゲン化剤、
の接触生成物を含む触媒成分であって、
前記ハロゲン化剤は、SiCl、TiCl、二塩化アルキルアルミニウム、およびアルキルアルミニウムセスキクロリドの少なくとも1つを含み、前記噴霧乾燥混合物または反応生成物を部分的にまたは完全にハロゲン化する条件下で接触させ、
少なくとも1つのチタン化合物が、一般式Ti(OR3)aX4-a、Ti(OR3)aY4-a、またはそれらの組合せから選択され:
式中、Xはハロゲン;aはそれぞれ独立的に1〜4の整数;Yは独立的に、OR3とは異なる酸素結合アニオン性配位子、または窒素結合アニオン性配位子(いずれも最大20の炭素原子を有する)から選択され;R3はそれぞれ独立的に、1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分岐状の置換または非置換ヒドロカルビル基であり、R3上の任意の置換基は独立的にハロゲンまたはアルコキシドであり、
前記二塩化アルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムセスキクロリドは、前記スラリー中に存在するマグネシウム、チタン、および任意の他の遷移金属成分の組合せ中の酸素結合および窒素結合した合計配位子の1モル当たり合計2モルの塩素を提供できる、触媒系。
【請求項10】
前記活性化共触媒が、式AlR103(式中、R10はそれぞれ独立的に、採用される重合反応条件下で不活性である1つ以上の置換基で任意に置換された、1〜14の炭素原子を有する飽和炭化水素基である)の少なくとも1つの化合物から選択される、
請求項9に記載の触媒系。
【請求項11】
a)スラリー化剤中で以下のものを接触させること:
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;
iii)少なくとも1つのチタン化合物;および
iv)少なくとも1つの無孔フィラー;
b)工程a)のスラリーを噴霧乾燥させて、スラリー化剤を蒸発させて、固体粒子を作製すること;ならびに
c)工程b)の固体粒子を、少なくとも1つのハロゲン化剤で処理すること
を包含する触媒成分の調製方法であって、
前記ハロゲン化剤は、SiCl、TiCl、二塩化アルキルアルミニウム、およびアルキルアルミニウムセスキクロリドの少なくとも1つを含み、前記マグネシウムジヒドロカルビルオキシド、および前記チタン化合物は、スラリー中に任意のモル比で存在し、
少なくとも1つのチタン化合物が、一般式Ti(OR3)aX4-a、Ti(OR3)aY4-a、またはそれらの組合せから選択され:
式中、Xはハロゲン;aはそれぞれ独立的に1〜4の整数;Yは独立的に、OR3とは異なる酸素結合アニオン性配位子、または窒素結合アニオン性配位子(いずれも最大20の炭素原子を有する)から選択され;R3はそれぞれ独立的に、1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分岐状の置換または非置換ヒドロカルビル基であり、R3上の任意の置換基は独立的にハロゲンまたはアルコキシドであり、
前記二塩化アルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムセスキクロリドは、前記スラリー中に存在するマグネシウム、チタン、および任意の他の遷移金属成分の組合せ中の酸素結合および窒素結合した合計配位子の1モル当たり合計2モルの塩素を提供できる、方法。
【請求項12】
スラリー化剤中で、成分i)、ii)、iii)およびiv)を接触させる工程a)が:
v)4〜6族金属から選択される、前記チタン化合物とは異なる少なくとも1つの遷移金属化合物
と接触させることをさらに包含し、該マグネシウムジヒドロカルビルオキシド、該チタン化合物、および該チタン化合物とは異なる任意の遷移金属化合物は、スラリー中に任意のモル比で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
a)触媒成分;および
b)式AlR103(式中、R10はそれぞれ独立的に、採用される重合反応条件下では不活性である1つ以上の置換基で任意に置換された、1〜14の炭素原子を有する飽和炭化水素基である)の少なくとも1つの化合物から選択される活性化共触媒、
を含み、
前記触媒成分が、
a) 以下のものの噴霧乾燥混合物または反応生成物;
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;
iii)少なくとも1つのチタン化合物;および
iv)少なくとも1つの無孔フィラー;
b)少なくとも1つのハロゲン化剤、
の接触生成物を含む触媒成分であって、
前記ハロゲン化剤は、SiCl、TiCl、二塩化アルキルアルミニウム、およびアルキルアルミニウムセスキクロリドの少なくとも1つを含み、前記噴霧乾燥混合物または反応生成物を部分的にまたは完全にハロゲン化する条件下で接触させ、
少なくとも1つのチタン化合物が、一般式Ti(OR3)aX4-a、Ti(OR3)aY4-a、またはそれらの組合せから選択され:
式中、Xはハロゲン;aはそれぞれ独立的に1〜4の整数;Yは独立的に、OR3とは異なる酸素結合アニオン性配位子、または窒素結合アニオン性配位子(いずれも最大20の炭素原子を有する)から選択され;R3はそれぞれ独立的に、1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分岐状の置換または非置換ヒドロカルビル基であり、R3上の任意の置換基は独立的にハロゲンまたはアルコキシドであり、
前記二塩化アルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムセスキクロリドは、前記スラリー中に存在するマグネシウム、チタン、および任意の他の遷移金属成分の組合せ中の酸素結合および窒素結合した合計配位子の1モル当たり合計2モルの塩素を提供できる触媒系。
【請求項14】
a) 以下のものの噴霧乾燥混合物または反応生成物;
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;
iii)少なくとも1つのチタン化合物;
iv)4〜6族金属から選択される、前記チタン化合物とは異なる少なくとも1つの遷移金属化合物;および
v)少なくとも1つの無孔フィラー、
b)少なくとも1つのハロゲン化剤、
の接触生成物を含む触媒成分であって、
前記ハロゲン化剤は、SiCl、TiCl、二塩化アルキルアルミニウム、およびアルキルアルミニウムセスキクロリドの少なくとも1つを含み、前記噴霧乾燥混合物または反応生成物を部分的にまたは完全にハロゲン化する条件下で接触させ、
少なくとも1つのチタン化合物が、一般式Ti(OR3)aX4-a、Ti(OR3)aY4-a、またはそれらの組合せから選択され:
式中、Xはハロゲン;aはそれぞれ独立的に1〜4の整数;Yは独立的に、OR3とは異なる酸素結合アニオン性配位子、または窒素結合アニオン性配位子(いずれも最大20の炭素原子を有する)から選択され;R3はそれぞれ独立的に、1〜20の炭素原子を有する、直鎖状または分岐状の置換または非置換ヒドロカルビル基であり、R3上の任意の置換基は独立的にハロゲンまたはアルコキシドであり、
前記二塩化アルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムセスキクロリドは、前記スラリー中に存在するマグネシウム、チタン、および任意の他の遷移金属成分の組合せ中の酸素結合および窒素結合した合計配位子の1モル当たり合計2モルの塩素を提供できる、触媒成分。
【請求項15】
前記接触生成物が、成分a)およびb)と:
c)少なくとも1つの穏やかな第1のハロゲン化剤、
との接触生成物をさらに含む、請求項14に記載の触媒成分。
【請求項16】
前記噴霧乾燥混合物または反応生成物を部分的にハロゲン化する条件下で接触させる、請求項14に記載の触媒成分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2008年8月6日に出願され、「高分子量テールを有するポリエチレンを作製するためのチーグラー・ナッタ触媒組成物、およびそれを作るための方法」という名称の米国特許仮出願第61/086,595号(この教示は、参照により、以下に完全に再現されるのと等しく、本明細書に援用される)に基づいて優先権を主張する本出願である。
発明の分野
本開示は、チーグラー・ナッタ触媒前駆体および組成物、それらの製造プロセス、ならびにチーグラー・ナッタ触媒組成物を用いたポリオレフィンの作製に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリマーの特性は、それらの調製に使用される触媒の特性に依存する。従って、触媒の組成、活性化条件、サイズ、サイズ分布、形状等は全て、最終的な生成物の特徴に組み込まれ、特に気相およびスラリー重合において、触媒の良好な商業的加工性を確実にする助けになる。例えば、約500μmのサイズのオレフィンコポリマーを作製する場合、一般的に約15μm〜約50μmの触媒粒径が重合のために好ましい。触媒構造全体にわたり十分に展開した細孔系(system of pores)、および重合プロセスの間の磨耗に耐える良好な機械的特性等の他の物理的特性も有利となり、後者は、得られるポリマーの良好なかさ密度を確実にする助けとなり得る。共触媒または活性剤に対する重合活性金属の比率等の化学的な特徴は、活性部位構造に作用し、これは、ポリマーに様々な特性を授けることができる。
【0003】
重合触媒を開発する際の一つの局面は、触媒粒子の組成、構造、サイズ、およびサイズ分布のある程度の制御および調節を可能にするような新規の触媒、ならびにそれらの製造方法の探すことである。重合触媒を調製および成形する1つの単純な技術は噴霧乾燥であり、これは、溶解もしくは懸濁された物質、または両方を含む液滴をフライホイールまたはノズルから排出させ、溶解または懸濁溶剤を蒸発させて固形触媒粒子を形成するプロセスである。噴霧乾燥させた固形触媒粒子の特性は、前駆体溶液または懸濁液の組成、噴霧乾燥パラメーター、および後続の加工工程を変えることで調節され得ることが多い。
【0004】
重合触媒を開発する際の別の局面は、触媒および得られるポリマーの組成および構造についての柔軟性を提供する、新規触媒、およびそれらの製造方法を探すことである。
【発明の概要】
【0005】
発明の簡単な概要
重合触媒を開発するにあたって、一般的に、触媒および得られるポリマーの組成および構造についての柔軟性を提供することを目的として、新規の重合触媒、ならびに該触媒を調製および活性化する方法を開発する必要がある。本開示は、触媒前駆体、触媒、ならびに該触媒前駆体および該触媒の調製方法を提供し、該方法においては、フィラーと共にまたはフィラー無しで、粒子成分を任意の所望の組合せおよび量でスラリー中で組み合わせた後、噴霧乾燥させて任意の所望の比率の成分物質を取り込んだ触媒前駆体を得る。例えば、フィラーと共にまたはフィラー無しで、マグネシウムジヒドロカルビルオキシド(magnesium dihydrocarbyl oxide)をチタンアルコキシド成分と任意のモル比で同時噴霧して、任意の所望のMg:Tiモル比を有する粒子状触媒前駆体を生成することができる。従って、本開示の方法は、明確に定義された原子比率の成分を有する個別の化合物を採用することに頼るよりも、所望のポリオレフィンの所望の特性に応じて触媒をあつらえるための柔軟性を得るものである。
【0006】
一態様では、本開示は、モノフィラメントまたは延伸テープ等の品物を製造するのに有用な、各種分子量分布のLLPDEまたはHDPE等のPE樹脂を作るのに使用できる、触媒前駆体、触媒、および方法を記載する。典型的に、本開示に従って作製したポリエチレンは、PE樹脂の分子量分布が高分子量テールの最大約10%を占める高分子量を有する一部樹脂を特徴とする。開示するように、本開示の触媒前駆体粒子は、所望である任意の組合せおよび濃度の非水性スラリーから前駆体成分を噴霧乾燥することで調製される。その後、これらの粒子は、任意に遷移金属成分等の追加成分で処理された後、ハロゲン化、および活性化されて活性触媒を形成する。
【0007】
触媒前駆体成分の噴霧乾燥は、望ましい任意のフィラーまたは添加剤も含み得る非水性スラリーを使用して行うことができる。典型的に、高分子量テールを提供するMg/Ti触媒は、沈殿技術を使用して作製されてきた。この技術は、触媒中のTi対Mg比が概して沈殿した化合物の化学量論に限定されることによって、触媒から製造される樹脂の特性を制限する。本開示の噴霧乾燥プロセスは、スラリーおよび得られる粒子中の触媒前駆体成分を望ましい任意の濃度および任意の比率で組み合わせる助けになり、必要に応じて触媒および樹脂特性をあつらえるための柔軟性を得ることができる。
【0008】
別の態様では、触媒前駆体粒子はマグネシウムジヒドロカルビルオキシドを含み、噴霧乾燥させた触媒前駆体は穏やかな条件下でハロゲン化された後で、共触媒活性化されて、高分子量テールを特徴とするPE樹脂を調製するための触媒が得られる。理論に縛られることを意図するものではないが、前駆体のハロゲン化の条件は、樹脂の分子量分布および高分子量テールの形成に影響を及ぼし得ると考えられている。
【0009】
従って、スラリーから触媒前駆体成分を噴霧乾燥することは、金属および添加剤の所望の組成および濃度を有するだけではなく、所望の粒径、サイズ分布、形状、および空隙率も有する触媒前駆体粒子を形成する手段も提供する。沈殿プロセスと比べて、噴霧乾燥方法は、比較的安価で、規模を拡大し易く、作製できる物質の種類についてかなり柔軟に対応できる。
【0010】
多数のチーグラー・ナッタ触媒系および支持体(support)が記載されており、それらの例が米国特許第5,124,298号(Job);同第6,248,831号(Maheshwariら);同第5,604,172号(Wagnerら);同第5,034,361号(Jobら);同第5,550,094号(Aliら);同第5,514,634号(Hagertyら);同第6,187,866号(Jorgensenら);同第6,441,309号(Jowら);および同第7,348,383号(Zoecklerら);ならびにEP 0855401(Sherryら)(これらは各々、参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】塩素化の前の、噴霧乾燥させたMg/Ti触媒前駆体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、本開示に従って得た粒子が実質的に球状形態であることを示している。画像の右下に示すように、最初と最後の点の間の距離は30.0μmである。
【0012】
図2】本開示の触媒を使用して85℃にて重合させた気相樹脂の分子量分布のプロットである。A.実施例20-Comp(比較)のポリマー;B.実施例27-Comp(比較)のポリマー;およびC.同時噴霧されたMg/Tiを使用した実施例13のポリマー。
【0013】
図3】粒径(ミクロン)の対数に対する、実施例35の第1および第2の重合反応器で得た粒子の累積重量パーセントのプロットであり、触媒粒子の堅固な性質、およびそれらが実施例35の二重反応器での重合プロセスの間も構造的な統一性を維持する能力を実証している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
開示の方法は、高分子テールの取り込みが制御可能であることが望ましいオレフィンを含む、オレフィンを重合するのに有用な粒子状触媒支持体および触媒前駆体の作製を提供する。開示の方法で採用する噴霧乾燥プロセスは非水性性質であるために、加水分解的に不安定な組成物が容易に調製できる。金属濃度が制御され、2つ以上の金属の比率が制御された、組成が規定された触媒前駆体は、実質的に球状形態、典型的に、通常約10ミクロンから約100ミクロンの大きさの多孔質粒子として調製できる。さらに、触媒前駆体粒子の金属含有成分は、固体多孔質マトリックス中で油等の非固体形態で存在し得る。
【0015】
本開示によれば、触媒前駆体はまた、典型的に約10ミクロンから約100ミクロンの大きさの多孔質粒子として実質的に球状形態で調製され得る。ナノ単位から最終的な粒子自体の約25%の大きさにわたる、フィラー、試薬、および添加剤等の微粒子状固体物質を、噴霧乾燥するスラリーに単純に添加することで、触媒前駆体または支持体粒子に均質に取り込むことができる。
【0016】
具体的に、一態様において、本開示は、新規のチーグラー・ナッタ触媒前駆体、触媒、および支持体;該チーグラー・ナッタ前駆体、触媒、および支持体の製造方法;ならびに該触媒を使用してα-オレフィンを重合する方法を提供する。約1%〜約10%重量の高分子量(MW)テール(典型的に、少なくとも約1,000,000のMw)を含むポリエチレン(PE)樹脂は、溶融強度が高く、より剛性な樹脂が必要とされる様々な用途のために有用である。理論に縛られることを意図していないが、このような樹脂中に存在する少ない割合の高分子量長鎖は、特定の状況において、他のPE樹脂の長鎖分岐が果たすのと同様の機能を果たすと思われる。本開示の一態様では、これらの樹脂は、少なくとも2種類の活性部位を含むMg/Tiチーグラー・ナッタ(Z/N)触媒を使用して作製できる。同じく、理論に縛られることを意図していないが、活性部位の小部分が高MWテールに関与する一方で、活性部位の大部分は低MWを有する標準Z/N樹脂を作製すると考えられている。
【0017】
以前のこのようなタイプのMg/Tiチーグラー・ナッタ(Z/N)触媒前駆体は、典型的に沈殿方法を用いて作られており、これにより、沈殿速度論に基づいて単離され、かなり明確に定義された化学量論の触媒前駆体が作製されるため、Mg/Ti比はどちらかというと柔軟性がなかった。その結果、沈殿方法は、一般的に、より低いTi荷重を得たり、またはMg/Ti比を多様化したりするための柔軟性を実現せず、粒子形態(形状、サイズ、サイズ分布、空隙率)は容易に調節できず、フィラーまたは添加剤を固体状態構造に取り込むのは一般的に困難である。
【0018】
本開示の一態様は、触媒前駆体の組成および前駆体の形態(サイズおよび形状)を制御する方法、ならびに高分子量テールおよび触媒重合速度論についてある程度の制御が可能な触媒前駆体自体を提供する。この態様において、この制御は、触媒前駆体中のTi荷重およびTi/Mg比を、気相またはスラリープロセスの要件をうまく満たすように調節することにより実現することができ、これは本開示の方法により可能になった。
【0019】
本開示の一態様では:
a)スラリー化剤中で以下のものを接触させること:
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;
iii)少なくとも1つのチタン化合物;
iv)任意に、4〜6族金属から選択される、該チタン化合物とは異なる少なくとも1つの遷移金属化合物;および
v)任意に、少なくとも1つのフィラー;ならびに
b)工程a)のスラリーを噴霧乾燥させて、スラリー化剤を蒸発させて、固体粒子を作製すること、
を包含する、触媒成分の調製方法であって、該マグネシウムジヒドロカルビルオキシド、該チタン化合物、および該任意の遷移金属化合物は、スラリー中に任意のモル比で存在する、方法が提供される。
【0020】
本開示において、触媒成分の調製方法は、その後のハロゲン化手順、すなわち前記触媒前駆体を部分的にハロゲン化するような条件下で工程b)の固体粒子を少なくとも1つのハロゲン化剤と接触させる工程c)をさらに包含し得る。ハロゲン化手順は、特定の試薬に限定されたり、それが行われる手法ついて制約されたりはせず、触媒前駆体の完全ではなく部分的なハロゲン化をもたらす1つ以上の任意の試薬を用いた任意のハロゲン化手順を含む。一態様において、ハロゲン化は塩素化であり得る。例えば、ハロゲン化は、工程b)の固体粒子を、塩化アルキルアルミニウム(alkyl aluminum chloride)、つまり塩素を含有するアルミニウムアルキル等の塩素化剤と接触させる一段階ハロゲン化工程から構成され得る。あるいはまた、ハロゲン化工程は、直前の工程b)の固体粒子を、少なくとも1つの比較的穏やかな第1のハロゲン化剤と、そして少なくとも1つのより強力な第2のハロゲン化剤と連続して接触させる、後続する多段階ハロゲン化工程から構成され得る。これらの一段階および多段階ハロゲン化は、例示として提供するものであり、限定することを意図したものではなく、ハロゲン化には、触媒前駆体の完全ではなく部分的なハロゲン化をもたらすあらゆるハロゲン化手順を含まれる。
【0021】
本開示の別の態様において、チタン化合物とは異なる遷移金属化合物は、ジルコニウムまたはハフニウム化合物であり得る。
【0022】
一態様において、得られる噴霧乾燥粒子が非固体成分を固体マトリックス中で保持、支持または保留するのに十分に固体である限り、噴霧乾燥するスラリーの成分は、噴霧乾燥工程の前または途中で互いと化学反応を起こす必要はない。従って、噴霧乾燥方法により、粘性液体または油の形態であり得る一部の触媒前駆体成分の使用が可能になる。あるいはまた、混合凝集体またはガラスの形態の固化を起こして、成分のほとんどまたは全てが固体状態で存在する粒子を得ることもできる。一態様において、噴霧乾燥するスラリーは、MgおよびTi成分を含むことができる;しかし、V、Zr、またはHf等のチタン化合物とは異なる遷移金属化合物の噴霧乾燥スラリーへの添加により、多金属チーグラー触媒が得られ、作製される樹脂においてさらに広範囲な分子量分布が得られる。
【0023】
本開示によれば、触媒成分は、以下のものを噴霧乾燥させた接触生成物または混合物を含むことができる:
a)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
b)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;
c)少なくとも1つのチタン化合物;
d)任意に、4〜6族金属から選択される、該チタン化合物とは異なる少なくとも1つの遷移金属化合物;および
e)任意に、少なくとも1つのフィラー。
別の態様において、本開示は:
a)以下のものを噴霧乾燥させた接触生成物または混合物:
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;
iii)少なくとも1つのチタン化合物;
iv)任意に、4〜6族金属から選択される、該チタン化合物とは異なる少なくとも1つの遷移金属化合物;および
v)任意に、少なくとも1つのフィラー;ならびに
b)少なくとも1つのハロゲン化剤.
の接触生成物を含むことができる触媒成分を提供する。
【0024】
この態様において、前記少なくとも1つのハロゲン化剤は、典型的に、塩化アルキルアルミニウム等の塩素化剤を含む。類似する塩化ホウ素剤も使用できる。適切な塩化アルキルアルミニウムは、二塩化アルキルアルミニウム(RAlCl2)、塩化ジアルキルアルミニウム(dialkyl aluminum chloride)(R2AlCl)、またはアルキルアルミニウムセスキクロリド(alkyl aluminum sesquichloride)(R3Al2Cl3)等の任意の混合配位子塩化アルキルアルミニウムを含む。これらの塩化アルキルアルミニウム化合物のいずれのアルキル基も、典型的に、1〜12の炭素原子を有し、直線状または分岐状アルキルであり得る。従って、適切な塩化アルキルアルミニウムの例として、MeAlCl2、Me2AlCl、EtAlCl2、Et2AlCl、n-PrAlCl2、n-Pr2AlCl、i-PrAlCl2、i-Pr2AlCl、n-BuAlCl2、n-Bu2AlCl、i-BuAlCl2、i- Bu2AlCl、Me3Al2Cl3、Et3Al2Cl3、n-Pr3Al2Cl3、i-Pr3Al2Cl3、n-Bu3Al2Cl3、1-Pr3Al2Cl3等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0025】
さらなる態様では、噴霧乾燥させた接触生成物または混合物と少なくとも1つのハロゲン化剤との接触は、触媒前駆体を部分的にハロゲン化する条件下で、例えば、マグネシウム、チタン、および任意の他の遷移金属に対するハロゲン化剤の化学量論を限定することにより、ハロゲン化プロセスが行われる温度を制御することにより、ハロゲン化に供する特定の噴霧乾燥接触生成物もしくは混合物と配位子交換を生じる相対的な傾向に応じてハロゲン化剤を選択することにより、またはそれらの任意の組合せにより行うことができる。一例として、EtAlCl2等の塩化アルキルアルミニウム、またはEtAlCl2もしくはEt2AlCl(エチルアルミニウムセスキクロリドもしくはEASC)の等モル混合物を採用する場合、噴霧乾燥生成物は、マグネシウム、チタン、および任意の他の遷移金属成分の組合せ中の酸素結合および窒素結合した合計配位子の1モル当たり約2モルの合計塩化物含有量を得る量のハロゲン化剤と接触され得る。従って、噴霧乾燥生成物が1モル当量のTi(OEt)4および2モル当量のMg(OEt)2を含む場合、およそ10.7モル当量(典型的に、約9.7〜11.7モル)のエチルアルミニウムセスキクロリド(Et1.5AlCl1.5として計算)、またはおよそ8モル当量(典型的に、約7〜9モル)のEtAlCl2を、噴霧乾燥生成物と接触させる。
【0026】
一態様において、噴霧乾燥接触生成物または混合物と少なくとも1つのハロゲン化剤との接触工程は、触媒前駆体を部分的にハロゲン化するために、表示量の塩化アルキルアルミニウムを使用して、約70℃以下の温度で行うことができる。別の態様において、部分的なハロゲン化を達成するために、固形触媒前駆体粒子を1つ以上のハロゲン化剤と、例えば、約90℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、または約50℃以下の温度で接触させてもよい。このハロゲン化が起こることが見とめられる実際の最低温度は約35℃であるため、この態様においては、部分的なハロゲン化を得るために、約35℃〜約90℃、約35℃〜約80℃、約35℃〜約70℃、約35℃〜約60℃、または約35℃〜約50℃の温度で固形触媒前駆体粒子を1つ以上のハロゲン化剤と接触させてもよい。ハロゲン化は、典型的に、約35℃〜約70℃で行われる。
【0027】
触媒前駆体の部分的ハロゲン化の証拠は、前駆体を活性化して、オレフィンを重合するのに使用した際に得られるポリマーの特性を検査することで得られる。例えば、部分的ハロゲン化は、完全にハロゲン化された触媒から作製される分子量分布の範囲がより狭いポリマーと比較して、本明細書に開示するように高分子量テールを有する比較的広範囲な分子量分布をもたらす触媒を提供する。
【0028】
本開示において、ハロゲン化には、塩素化、臭素化、またはヨウ素化が含まれる;従って、本開示において全般的に参照する前駆体の塩素化とは、ハロゲン化の一例であり、本開示は例示であることが理解されよう。一般的に、噴霧乾燥前駆体の塩素化は、一段階または二段階プロセスのいずれかによりもたらされ得る。一段階プロセスにおいては、塩化アルキルアルミニウム等の塩素化剤を、完全ではなく部分的なハロゲン化をもたらす条件下で噴霧乾燥させた前駆体粒子と接触させる。また、噴霧乾燥前駆体のハロゲン化は、多段階プロセス、例えば、二段階プロセスによって行ってもよい。ハロゲン化プロセスの例としてこの場合も塩素化を用いるが、二段階塩素化プロセスの一例は、部分的ハロゲン化を生じる条件下で、SiCl4等の比較的穏やかな試薬で前駆体を塩素化し、その後にRAlCl2または同様の相対的により強い塩素化剤で塩素化することである。ハロゲン化剤をどのように採用するかとは無関係に、ハロゲン化工程は、触媒前駆体を部分的にハロゲン化するような化学量論、試薬選択、および温度条件下で行う。
【0029】
とりわけ, 「穏やかな条件」下でハロゲン化または塩素化された触媒前駆体は、より「強制的な条件」下でハロゲン化または塩素化された触媒前駆体と比べて、より広範囲な分子量分布(MWD)、および典型的に高分子量テールを有するポリマーを生じる。例えば、約1%〜約3%重量の高分子量(MW)テール(典型的に、約1,000,000のMW)を有するポリエチレン(PE)樹脂は、溶融強度が高くかつより剛性な樹脂が必要となる様々な用途に有用である。さらに、高分子量(MW)テールにおける樹脂の重量パーセントは、固形触媒前駆体粒子のハロゲン化の程度に基づいて、連続した数値に沿ってあつらえることができるかまたは調節できる。従って、約0.2%、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%重量の、約1,000,000以上のMwを有する高MWテールを含むPE樹脂は、触媒前駆体のハロゲン化の度合いまたは程度の関数として得られる。さらに、本開示の触媒が唯一の遷移金属成分としてチタン化合物を含み、チタン化合物とは異なる4〜6族の遷移金属化合物を含まない場合でも、この高MWテールを該触媒から得ることができる。理論に縛られるわけではないが、塩素化反応温度および時間、ならびに塩素化剤の有効性等の条件により決定される塩素化の度合いは全て、高分子量テールをもたらす活性部位の数および割合を決定するのを助けると考えられる。例えば、より強い塩素化剤の使用、およびより過酷な塩素化条件によって、大部分の部位が、標準的なチーグラー触媒から得られる樹脂に特有の狭い範囲の分子量分布をもたらす高活性な重合触媒に変換される。
【0030】
本開示により提供されるさらなる態様としては、少なくとも以下が挙げられる。まず、開示の方法は、噴霧乾燥方法によって液体または油性成分を粒子状触媒前駆体に取り込まむことができるプロセス、およびそこから誘導される活性触媒において使用されるこれらの成分を実証する。本開示の方法および触媒は、Mgに対する活性金属(Ti、Hf、またはそれらの組合せ等)の特定の比率を必要とせずに触媒が上手く調製および使用できることを実証し、実際、本触媒は、採用される具体的な重合条件にとって最適とされる幅広い範囲の金属モル比および金属濃度にわたり使用できる。高MWテールを有するPE樹脂を作るための以前の沈殿型触媒は、本発明とは違って、典型的に、前駆体物質の制御された沈殿により調製される特定のMg/Ti製剤を必要とした。本開示の方法および触媒により得られる柔軟性は、重合反応をあつらえて、過度または不十分な反応率を抑えるかまたは妨げることを可能にする。
【0031】
別の態様では、噴霧乾燥方法は、出発粒子の凝集性質によって作製され得る凝集性の、細粒を含まない(fines-free)樹脂も提供する。例えば、図1は、本開示に従って調製した噴霧乾燥Mg/Ti触媒前駆体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を提供し、本方法により得られる実質的に球状形態の粒子を示している。
【0032】
触媒成分または前駆体の調製プロセス
マグネシウムジヒドロカルビルオキシド.触媒成分の調製において採用されるジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物(dihydrocarbyl oxide magnesium compound)は、一般的に式Mg(OR')(OR")で表すことができる(式中、R'およびR"は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立的に、同じまたは異なる、最大10の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基から選択される)。一般的に、採用されるジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物は、マグネシウムジアルコキシドまたはマグネシウムジアリールオキシドであり得るが、1つのアルコキシドおよび1つのアリールオキシド基を含むマグネシウム化合物も有用である。ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物の1つ以上の典型的なアルコキシド基は、存在する場合には、1〜8の炭素原子、通常2〜6の炭素原子を有するアルコキシドから選択される。1つ以上の典型的なアリールオキシド基は、存在する場合には、通常6〜10の炭素原子を有する。さらなる態様においては、本発明に適したマグネシウムジヒドロカルビルオキシド化合物としては、式Mg(OR1)2(式中、R1はそれぞれ独立的に、1〜8の炭素原子、あるいはまた1〜6の炭素原子を有するアルキルから選択される)を有する化合物が挙げられる。
【0033】
採用できるマグネシウムジアルコキシドおよびマグネシウムジアリールオキシドの例としては、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジイソプロポキシド、マグネシウムジ-n-ブトキシド、エトキシマグネシウムイソブトキシド、マグネシウムジフェノキシド、およびマグネシウムジナフトキシドが挙げられるがこれらに限定されない。マグネシウムジエトキシドがよく使用される。1つのアルコキシドおよび1つのアリールオキシド基を含む採用され得るマグネシウム化合物の例としては、エトキシマグネシウムフェノキシド(ethoxy magnesium phenoxide)、およびナフトキシマグネシウムイソアミロキシド(naphthoxy magnesium isoamyloxide)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
マグネシウムジアルコキシドおよびジアリールオキシドは市販されており、本開示における触媒前駆体または支持体の調製のように使用できる。あるいはまた、マグネシウムジヒドロカルビルオキシドは、マグネシウム金属およびアルコールを反応物質として、ならびにマグネシウムヒドロカルビルオキシド(典型的に、アルコキシド)基のソースを用いて、in-situで調製できる。従って、マグネシウム化合物の所望のヒドロカルビルオキシド基を得るようにアルコールを選択する。
【0035】
スラリー化剤においてジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物を可溶化または部分的に可溶化するために、マグネシウム化合物を、二酸化炭素のようなルイス酸性可溶化剤等の可溶化剤と接触させる。この態様において、「スラリー化剤」という用語は、本開示において、特定の剤中でのジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物の溶解度とは無関係に、可溶性であっても、部分的に可溶性であっても、または不溶性であっても使用される。例えば、ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物のカルボキシル化は、ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物および任意にフィラーを、適切なスラリー化剤に懸濁し、スラリーを二酸化炭素と接触させることによりもたらされる(ただし、添加の順番は重大ではない)。通常、スラリー化剤は、ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物を可溶化剤と接触させて生成されたカルボキシル化ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物を少なくとも部分的に溶解することが可能なものとして選択される。二酸化炭素が可溶化剤である場合、ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物とCO2との反応により、マグネシウムヒドロカルビルカルボネート(magnesium hydrocarbyl carbonate)が生成され、これは、通常、その前駆体よりもスラリー化剤中においてより可溶性である。エタノール等の一価(一塩基)アルコール、またはエチレングリコール等の多価(多塩基)アルコールが、スラリー化剤として採用され得るが、それらの任意の組合せも適切である。一態様において、ルイス酸性可溶化剤は、二酸化炭素、二酸化硫黄、ホルムアルデヒド、Al(OR2)3、B(OR2)3、またはそれらの任意の組合せから選択できる(式中、R2はそれぞれ独立的に、最大で6の炭素原子を有するアルキルから選択される)。別の態様においては、Al(OEt)3、B(OEt)3、またはそれらの組合せは有用なルイス酸性可溶化剤である。
【0036】
アルコールをスラリー化剤として使用する場合、このようなアルコールは典型的に1〜4の炭素原子を含む。この点において、アルコールは典型的に1〜3の炭素原子を含む。従って、適切なアルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、およびイソプロパノールが挙げられる。アルコールがスラリー化剤である場合、アルコールを、マグネシウム化合物と同じヒドロカルビルオキシ(アルコキシド)基を有するものに限定する必要はない。むしろ、より高いヒドロカルビル基のアルコールHORに入ったルイス酸可溶化剤の存在下で、Mg(OEt)2等のマグネシウムヒドロカルビルオキシドをスラリー化する際に起こるエステル交換反応は、所望であるより高いマグネシウムジヒドロカルビルオキシドであるMg(OR)2を得るために有用となり得る。しかし、マグネシウム化合物のヒドロカルビルオキシ基と同じヒドロカルビルオキシ基を有するアルコールも使用できる。例えば、マグネシウム化合物はマグネシウムジエトキシドであり得、アルコールはエタノールであり得る。
【0037】
本開示の一態様は、単純に、アルコールまたは他の極性スラリー化剤に入ったジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物および任意にフィラーのスラリーを二酸化炭素ガスで泡立たせることにより、ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物のカルボキシル化を提供する。あるいはまた、ドライアイスを二酸化炭素のソースとしてスラリーに添加してもよい。二酸化炭素のソースが何であれ、無水であるか、または乾燥させて、ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物の加水分解を減らすべきである。二酸化炭素を添加している間にスラリーを連続的に攪拌することは、二酸化炭素とジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物とを接触させ、ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物がスラリーで沈殿するのを防ぐ助けになる。
【0038】
二酸化炭素とジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物との反応は発熱性であるため、混合物の温度は、二酸化炭素がスラリーに添加されると上昇し始める。スラリーが温まり、反応が進むと、通常、混濁した粘性溶液が生じる。所望であれば、二酸化炭素の添加を、発熱の終了で示される反応の完了まで続けてもよい。いずれにしても、通常、0.5モル〜2.0モルの二酸化炭素/グラムマグネシウム原子を含むマグネシウムヒドロカルビルカルボネートが産生されるまで、反応は続けられるべきである。このようにして生成されたマグネシウムヒドロカルビルカルボネートは、一般式Mg(0R')(0R")・xC02で表され得る(式中、R'およびR"は同じであっても異なってもよく、それぞれ独立的に、最大10の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基から選択され、xは約0.5〜約2.0の値を有する)。理論に縛られることを意図しないが、この物質は、2つ、可能であればそれ以上の成分で構成された混合物であると考えられている。これらの2つの成分は、CO2部分がマグネシウムジヒドロカルビルオキシドの一方(モノカルボキシル化成分)または両方(ジカルボキシル化成分)のMg-O結合に挿入されているマグネシウムヒドロカルビルカルボネート等のカルボキシル化化合物を含むと考えられている。この態様において、典型的に、本開示で提供する固体粒子状粒子の調製において、追加の脱カルボキシル化工程は必要ではない。
【0039】
さらに別の態様では、触媒組成物を噴霧乾燥するためのスラリー中でジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物を使用することによって、チタンまたは他の遷移金属ハロゲン化物とアルコールスラリー化剤との接触の際に放出されるHClまたはあらゆる酸が、ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物、またはCO2をルイス酸溶化剤として使用した場合にはマグネシウムアルキルカルボネートにより反応または吸収(take up)され得る。後者の場合、HClとの反応の際に、混合されたマグネシウムヒドロカルビルカルボネート塩化物塩が形成される。その結果、米国特許第7,348,383号(Zoecklerら)に開示されるように塩化マグネシウムを使用する場合とは異なり、スラリーは酸性にならない。
【0040】
別の態様において、マグネシウムヒドロカルビルカルボネートの使用によって、塩化マグネシウム溶液の噴霧乾燥に特有の不都合も回避できるかもしれない。従って、表5の実施例に例示されているように、ガラス質マグネシウムヒドロカルビルカルボネート基質は、塩化マグネシウム類似体によって形成されるような100℃付近では油を形成しない。マグネシウムヒドロカルビルカルボネートを使用するこれらの実施例では、噴霧乾燥器の目詰まりもなく、そして得られる噴霧乾燥物質の収率が低くなることもなく、より濃度の高いマグネシウムを噴霧乾燥することができた。
【0041】
さらなる態様において、マグネシウムヒドロカルビルカルボネート前駆体は、粒子乾燥の間に硬い剛性の殻(shell)を形成する前駆体粒子をもたらさないことを見とめた。その結果、塩化マグネシウムを使用して形成される前駆体粒子とは異なり、全般的に大きい「卵殻」粒子および粉砕した殻片を避けることができる。
【0042】
さらに別の態様において、本開示の方法および組成物は、大掛かりなまたはどのような化学反応も行うことなく、もともと液体である他の金属化合物を比較的高い重量比でマグネシウムヒドロカルビルカルボネートのガラス様マトリックスに取り込むことを可能にする。この特徴により、成分の固体または液体性質に関わらず、成分の所望の任意のモル比に応じて触媒前駆体をあつらえることができる柔軟性が得られる。
【0043】
フィラー.本開示の噴霧乾燥させた触媒前駆体または触媒支持体は、固体組成物にバルクを与えることで、得られる粒子の形状を制御するのを助けることができる不活性フィラーを含むことができる。任意のフィラーは、噴霧乾燥工程の前にスラリー化剤に添加または混合することができる。典型的に、少なくとも1つのフィラー物質を採用するが、フィラー物質を添加せずに粒子状触媒前駆体を調製することも可能である。
【0044】
適切なフィラーは、触媒組成物の他の成分との反応、および反応系の他の活性成分に対して不活性である。他の触媒系成分との反応に対して不活性で、重合に対して有害な影響を及ぼさないあらゆる固体粒子状組成物が採用できる。そのような化合物は、有機でも無機でもよく、フュームドシリカ等のシリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、マグネシウムカルボネート、酸化マグネシウム、炭素、炭酸カルシウム、またはそれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。一部の態様において、フィラーは、スラリーに比較的高い粘性、そして噴霧乾燥粒子に好ましい強度を授ける疎水性フュームドシリカであり得る。他の実施形態では、2つ以上のフィラーが使用され得る。
【0045】
一態様において、フィラーは、ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム、ヒドロカルビルカルボネート、およびスラリー化剤に対して不活性で、触媒調製の後続段階および使用の間も不活性のままでであるという前提で、任意の無孔の固体粒子状物質であり得る。一態様では、噴霧乾燥粒子は、それらの形成後に脱カルボキシル化され、脱カルボキシル化、ハロゲン化、共触媒との接触および後続の重合、ならびに固形触媒を調製および使用するための任意の他の工程に必要な加熱または他の条件に耐えられる任意のフィラーが選択される。
【0046】
適切なフィラーの例としては、フュームドシリカ等のシリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、マグネシウムカルボネート、酸化マグネシウム、炭素、炭酸カルシウム、およびそれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。スラリーに高い粘性を授け、触媒系中の他の成分と化学反応しないことから疎水性フュームドシリカが典型的に採用される。例えば、Cab-O-Sil(登録商標)TS-610(Cabot Corporation)は、使用できる典型的なフュームドシリカである。この態様において、フュームドシリカ等の低空隙率シリカは、特に有用であるが、ただし適切なシリカはそれに限定されない。
【0047】
本開示によれば、フィラー物質の粒子は、噴霧乾燥される所望の粒子のサイズよりも有意に小さい。例えば、フィラー物質粒径は、噴霧乾燥される粒子の直径の最大約25%であり得る。別の態様では、フィラー物質粒径は、噴霧乾燥される粒子の直径の最大約20%、最大約15%、または最大約10%であり得る。より大きいサイズのフィラー粒子でさえも、典型的に、噴霧乾燥される触媒粒子1つあたりのフィラー粒子は1つを上回る。例えば、100μmの触媒粒子では、有用なフィラー粒子は典型的に約25μm以下のサイズである。
【0048】
相対的に大きいフィラーは望ましくない量の非常に小さい触媒粒子を形成し得るため、典型的に、噴霧された小滴または噴霧乾燥粒子の寸法よりも小さいフィラー物質が使用される。小さ過ぎる触媒粒子は、ゲル形成を生じる粒子状残渣で樹脂を汚染し得る。小さいフィラーは、ゲル形成に関連する問題を少なくできるが、より大きい触媒粒子に形成される際に、その後の活性化および重合プロセスの間に拡散に関連する問題が生じ得る。例えば、比較的大きく高密度の粒子は、共触媒が粒子の内部領域に浸透できないために、粒子の表面近くの浅い領域しか共触媒活性化しない可能性がある。また、大きく高密度の粒子は、重合プロセスの間に、モノマーが触媒粒子の内部領域に拡散するのを阻害し得る。
【0049】
本開示において、粒子状フィラー物質は、約10μm以下、約5μm以下、約2μm以下、約1μm以下、約0.9μm以下、約0.8μm以下、約0.7μm以下、約0.6μm以下、約0.5μm以下、約0.4μm以下、約0.3μm以下、約0.2μm以下、約0.1μm以下、約0.08μm以下、約0.05μm以下、約0.02μm以下、または約0.01μm以下の平均粒径、つまりD50粒径を有し得る。粒子状物質のサイズの実際的な下限は、約0.005〜約0.01μmの平均粒径、つまりD50粒径である。例えば、粒子状フィラー物質は、典型的に、約1μm以下、または約0.1μm以下の平均粒径(D50)を有し得る。さらに、粒子状フィラー物質の平均粒径(D50)は、約0.01μm〜約1μm、約0.02μm〜約0.9μm、約0.05μm〜約0.7μm、約0.08μm〜約0.5μm、約0.1μm〜約0.4μm、または約0.2μm〜約0.3μmにわたり得る。また、フィラー物質は吸収水分を実質的に含まないようにして、フィラー物質と、その中で接触させる水感受性成分とのあらゆる有害な反応を低減するか、最小限にするか、または無くすべきである。例えば、未処理のフュームドシリカをフィラーとして採用する場合、それらを任意に化学的に処理して、表面ヒドロキシル基を不動態化できる。
【0050】
本開示のこの態様において、重量パーセントでのフィラーの量は重大ではない。しかし、より高レベルのフィラーは、噴霧乾燥するスラリーの粘性を高めるため、フィラーの最も有用な量は、混合物を噴霧乾燥するのが可能な限りの最大粘性によって示され得る。
【0051】
一態様では、十分なフィラーをマグネシウムヒドロカルビルカルボネートおよびスラリー化剤の溶液と混ぜて、スラリー中で約10重量パーセント〜約40重量パーセントのマグネシウムヒドロカルビルカルボネート、または約2重量パーセント〜約10重量パーセントのフィラーを含むスラリーを作製できる。噴霧乾燥から得られる固体に基づいて、特に有用な量のフィラーは、スラリー中で約4%〜約7%重量のフィラーである。しかし、所望である場合には、これらの範囲外の量も使用できる。
【0052】
カルボキシル化ジヒドロカルビルオキシドマグネシウム化合物、フィラー、スラリー化剤、およびチタン化合物を、任意にチタン化合物とは異なる任意の遷移金属化合物と共に含むスラリーを噴霧乾燥させる。噴霧乾燥は、適切な微粒子化デバイスを用いてスラリーを微粒子化(atomize)することにより達成し得る。微粒子化は、不活性乾燥ガス、つまり、採用される微粒子化条件下で反応しない窒素またはアルゴン等のガス、と共にスラリーをアトマイザーに通すことで達成される。微粒子化ノズルまたは高速遠心分離ディスクを採用して微粒子化を達成できる。スラリーを微粒子化し、過剰なスラリー化剤を除去するためには、乾燥ガスの体積流量がスラリーの体積流量をかなり上回らなければならない。任意に、乾燥ガスを、マグネシウムヒドロカルビルカルボネートが溶解されるスラリー化剤の沸点付近以上の温度、例えば、約200℃の高温まで加熱して、溶剤を除去し易くできる。しかし、乾燥ガスの体積流量を非常に高いレベルで維持する場合には、スラリー化剤の沸点未満の温度を採用することも可能である。所望であれば、スラリーは、乾燥ガスと混合する前に最高でスラリー化剤の沸点の温度まで予熱されてもよい。この態様において、約1psig〜約200psigの微粒子化圧が適切である。この場合も、典型的に、噴霧乾燥工程の後の追加の脱カルボキシル化工程はない。
【0053】
噴霧乾燥前のスラリーへのフィラーの添加は、典型的に、充実(full)しており、凝集性があり、空洞の殻や壊れた殻をほとんど含まない個別の固体噴霧乾燥粒子を形成する。理論に縛られることを意図しないが、フィラーの添加により液滴の凝集性が改善されるため、噴霧乾燥の間にそれらにかかる変形させるようなせん断力に耐えることができる。また、フィラーの存在により、噴霧される粒子の構造中に、噴霧乾燥作業の間に中に存在する溶剤が抜けられる通路として作用できる空隙が得られると思われる。この特徴により、噴霧乾燥の間に粉砕し易く、触媒系およびそこから産生されるポリマーに不規則な形状の粒子が導入される可能性があることから望ましくない空洞の粒子の形成が最小限になる見込みがある。この態様において、フィラーは骨材として機能し、沈殿/結晶化した固体はセメントとして作用して、砂がモルタルの形態のセメントの強度を上げるのとほぼ同じように、複合粒子の全体の強度または硬度を上げる。
【0054】
チタン化合物、およびチタン化合物とは異なる任意の遷移金属化合物.本開示で使用する場合、チタン化合物、およびチタン化合物とは異なる遷移金属化合物とは、オレフィンの重合について重合活性であるか、または重合活性にすることができる化合物を指し、例として、Ti、Zr、Hf、およびV等の化合物が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、チタン化合物とは異なる任意の遷移金属化合物は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、およびWを含む4〜6族の遷移金属の化合物から選択される。従って、チタン化合物とは異なる任意の遷移金属化合物は、任意ではないチタン化合物とは異なるチタンの化合物であり得る。従って、開示したいずれのチタンの化合物も、いわゆる「チタン化合物」、またはチタン化合物とは異なる任意の遷移金属化合物のいずれかとして使用できる。どちらの用語も、触媒前駆体粒子の基礎支持構造を構成する、マグネシウムジヒドロカルビルオキシドまたはマグネシウムジヒドロカルビルカルボキシレート(magnesium dihydrocarbyl carboxylate)物質等のマグネシウム成分は指さない。
【0055】
有用な触媒前駆体は、噴霧乾燥するスラリー中で、マグネシウムジヒドロカルビルオキシドを、チタン化合物およびチタン化合物とは異なる遷移金属化合物と接触させること、次いで、該スラリーを噴霧乾燥することを包含するプロセスにより形成され得る。例えば、Ti(OC2H5)2Cl2とZrCl4との組合せは、マグネシウム成分と同時噴霧され得る。
【0056】
チタン化合物、および(チタン化合物とは異なる)遷移金属化合物は、様々な組成で供給され得る。本開示において提供するどのチタン化合物も、いわゆるチタン化合物、またはチタン化合物とは異なる遷移金属化合物のいずれかとして使用するために選択できる。この態様において、触媒成分を調製するのに有用な適切なチタン化合物としては、一般式Ti(OR3)aX4-a、Ti(OR3)aY4-aにそれぞれ対応するチタンハロゲン化物およびハロアルコラート、またはそれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない:
式中、Xはハロゲン化物;aはそれぞれ独立的に0〜4の整数;Yは独立的に、OR3とは異なる酸素結合アニオン性配位子、または窒素結合アニオン性配位子(いずれも最大20の炭素原子を有する)から選択され;R3はそれぞれ独立的に、1〜20の炭素原子を有する、直線状または分岐状の置換または非置換ヒドロカルビル基であり、R3上の任意の置換基は独立的にハロゲン化物またはアルコキシドである。
【0057】
一態様において、典型的に、R3は独立的に、1〜20の炭素原子を有する直線状または分岐状のアルキル基である。さらに、R3は、非置換型、ハロゲン化物置換型、またはアルコキシド置換型のメチル、エチル、ブチル、ヘキシル、フェニル、デシル、ナフチル、またはドデシル等の置換または非置換ヒドロカルビル基であり得る。さらに、aは整数である必要はなく、これは、様々な比率のTi(OR3)4およびTiX4等の前駆体化合物の組合せによって、整数でない値のaになり得るからである。従って、所望であれば、チタン化合物の任意の組合せまたは混合物が採用できる。
【0058】
式Ti(OR3)aY4-aのチタン化合物において、Yは独立的に、OR3とは異なる酸素結合アニオン性配位子、または窒素結合アニオン性配位子(いずれも最大20の炭素原子を有する)から選択され;aは0〜4の整数;およびR3はそれぞれ独立的に、非置換、ハロゲン化物置換、またはアルコキシド置換された、1〜20の炭素原子を有する直線状または分岐状のアルキル基である。酸素結合アニオン性配位子Yの例としては、アリールオキシド、アルコキシアミン、カルボキシルアセトネート、ジオレート、カルボキシレート等(いずれも最大20の炭素原子を有する)が挙げられるがこれらに限定されない。酸素結合配位子の具体的な例としては、フェノキシド、2,6-ジメチルフェノキシド、アセチルアセトネート、エチルアセトアセテート、酢酸塩、および2-エチルヘキサン-l,3-ジオレートが挙げられるがこれらに限定されない。窒素結合アニオン性配位子の例としては、アミノ(NH2)、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルイミン、アリールイミン等が挙げられるがこれらに限定されない。窒素結合アニオン性配位子の具体的な例としては、NHMe、NMe2、NHEt、NEt2、およびNHPhが挙げられるがこれらに限定されない。
【0059】
さらなる態様において、チタン化合物および(チタン化合物とは異なる)遷移金属化合物は、ビス(アセチルアセトネート)ジイソプロポキシドチタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラキス(2-エチルヘキソキシド)、チタンテトラ-n-プロポキシド、ビス(アセチルアセトネート)エトキシドイソプロポキシドチタン、ビス(アセチルアセトネート)イソブトキシドイソプロポキシドチタン、ジイソプロポキシ-ビスエチルアセトアセテートチタネート、ジイソブトキシ-ビスエチルアセトアセテートチタネート、テトラキス(2-エチルヘキサン-l,3-ジオレート)チタン、またはそれらの任意の組合せから選択され得る。
【0060】
また、本開示は、触媒組成物中の成分として、チタン化合物とは異なる遷移金属化合物を任意に使用することも提供する。本態様において、チタン化合物とは異なる遷移金属化合物は、Zr(OR4)bCl4-b、Hf(OR4)bCl4-b、VOCl3、またはそれらの任意の組合せから選択できる(式中、bは0〜4の整数であり、R4はそれぞれ1〜12の炭素原子を有するアルキル基である)。典型的に、遷移金属化合物は、これらのジルコニウム、ハフニウム、またはバナジウム化合物から選択されるが、これは必須ではない。
【0061】
本開示の別の態様によれば、チタン化合物および(チタン化合物とは異なる)遷移金属化合物は、ハロゲン化物およびアルコキシド配位子の両方を有し、アルコラート(アルコキシド)基1つあたり1〜10の炭素原子を有するチタンハロアルコラートから選択され得る。例として、このような化合物としては、Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(OC4H9)Cl3、Ti(OC6H5)Cl3、Ti(OC6H13)Br3、Ti(OC8H17)Cl3、Ti(OCH3)2Br2、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(OC6H13)2Cl2、Ti(OC8H17)2Br2、Ti(OCH3)3Br、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(OC4H9)3Cl、Ti(OC6H13)3Br、Ti(OC8H17)3Cl、およびそれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。この態様において、チタンハロゲン化物アルコキシド化合物(ハロアルコラート)を形成するための出発物質は、チタンハロゲン化物化合物、例えば、TiCl4orまたはTiBr4であり得、これをアルコールと接触させ、少なくとも1つのハロゲン化物配位子をアルコラート配位子と置換させる。さらなる態様におて、本開示で提供するチタン化合物は、後続のハロゲン化工程において、ハロゲン化、典型的に塩素化されることが可能である。従って、本明細書で特定するチタン化合物とは異なる遷移金属化合物は、式Ti(OR5)cX14-cを有するチタン化合物、またはこの式の化合物の任意の組合せから選択される(式中、X1はCl、Br、またはI;cは0〜3の整数;およびR5はそれぞれ1〜12の炭素原子を有するアルキル基である)。
【0062】
他の態様において、チタン化合物またはチタン化合物とは異なる遷移金属化合物に関わらず、どのチタン含有化合物も、還元チタンハロゲン化物等の還元チタン化合物であり得る。有用な還元チタンハロゲン化物は、概して、式TiX2d(式中、X2はハロゲン化物、典型的に、Cl、Br、またはIであり、dは0を上回るが4未満である)に従う。この態様において、還元チタン含有化合物は、+3のホルマール酸化状態のチタンを有し、例えば、TiCl3、TiBr3、TiI3、またはそれらの組合せから選択される化合物が挙げられる。
【0063】
触媒前駆体を調製するのに使用される遷移金属化合物、つまり、チタン化合物とチタン化合物とは異なる遷移金属化合物との組合せ、の量は、所望の触媒の種類に応じて大きく異なり得る。一態様において、例えば、1つ以上の遷移金属化合物の全モルに対するマグネシウムのモル比は、最大約60、最大約30、最大約20、最大約15、または最大約10であり得る。さらなる態様において、例えば、1つ以上の遷移金属化合物の全モルに対するマグネシウムのモル比は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、またはそれらの中間の範囲の低さであり得る。一般的に、1つ以上の遷移金属化合物の全モルに対するマグネシウムのモル比は、約1〜約10、約2〜約8、または約3〜約6であり得る。
【0064】
さらなる態様において、触媒前駆体を調製する際に使用する、チタン化合物とは異なる遷移金属化合物に対するチタン化合物のモル比も、大きく異なり得る。例えば、チタン化合物とは異なる遷移金属化合物に対するチタン化合物のモル比は、約10:1〜約0.5:1、約7:1〜約0.75:1、または約5:1〜約1:1にわたり得る。
【0065】
噴霧乾燥.触媒成分を調製するために使用される噴霧乾燥方法は、粒径分布の範囲が比較的狭い個別の、実質的に球状の耐摩耗性粒子を作製する。噴霧乾燥の間に使用するアトマイザーホイールの速度、またはアトマイザーノズルの開口部のサイズを調節することで、約2μm〜約200μm、典型的に、約5μm〜約50μm、または約10μm〜約30μmの平均粒径を有する粒子を得ることが可能である。
【0066】
本方法により作製される最終的な固体噴霧乾燥粒子は、固体構造を保持しつつそれ自体は油または液体である成分を含み得る。理論に縛られることを意図しないが、この特徴は、微粒子状フィラー、およびマグネシウム成分の存在に支援されるものと考えられている。得られる集合体は、固体成分および結合剤として作用し、固体構造としてまとまるのに十分な構造的な一体性を有している多孔質固体粒子を形成する。得られる触媒組成物のBET表面積は、実施例1〜4で報告する。さらに、金属化合物の数、量、およびモル比も同様に、スラリー組成を通じて調節でき、噴霧乾燥プロセス、乾燥粒子の固化、または所望の最終用途のための物質の有用性を妨げ得る、スラリー中の溶剤または他の成分と任意の成分とのあらゆる望ましくない反応を回避するか、最小限にするか、または制御するように成分を選択する。例えば、望ましくない反応としては、触媒被毒;粒子の過剰な軟化、または粒子の脆化が挙げられ得る。
【0067】
ハロゲン化剤.本開示に提供するように、後にトリアルキルアルミニウム化合物等の活性化共触媒と接触させるプレ触媒を形成するために、固体粒子状触媒前駆体は部分的にハロゲン化されて活性触媒を形成する。従って、本開示の触媒前駆体の塩素化を含むハロゲン化はどのような方法でも行ってもよいが、より強制的な条件下でのハロゲン化は、典型的に、高分子量テールのより小さい、分子量分布の範囲がより狭いポリマーを作製する触媒を生じ、より強制的でない条件下でのハロゲン化は、高分子量テールをより大きく含む、分子量分布の範囲がより広いポリマーを産生する触媒を生じる。強制的な条件としては、ハロゲン化剤がハロゲン化する固有の傾向または強度(具体的には、アルコキシドをハロゲン化物/塩化物配位子と交換する傾向)を増すこと、ハロゲン化剤の相対的な量または濃度を増すこと、またはハロゲン化反応において採用する反応温度を上げることが挙げられる。この態様においては、例えば、EtAlCl2等の比較的強い塩素化剤を用いるか、塩素化剤と使用する反応温度を上げるかすることで、狭い範囲の高分子量テールのより小さい、分子量分布の範囲がより狭いポリマーを形成する触媒部位がより多く得られると期待される。
【0068】
塩素化および他のハロゲン化は、一段階、または2段階以上で行うことができる。一態様では、塩素化の影響を受けやすい利用可能な部位の合計数の部分的塩素化(またはその他のハロゲン化)が望ましいため、塩素化反応は、典型的に、本開示に定義するような比較的穏やかな条件下で行われる。一態様において、一段階ハロゲン化を行う際に、触媒部位の部分的ハロゲン化が望ましい場合、固体粒子状触媒前駆体を以下と接触させることができる:
i)触媒前駆体を部分的にハロゲン化する条件下で、少なくとも1つの穏やかな第1のハロゲン化剤、および連続して少なくとも1つの強力な第2のハロゲン化剤;または
ii)触媒前駆体を部分的にハロゲン化する条件下で、少なくとも1つの強力なハロゲン化剤。
【0069】
ハロゲン化としては、塩素化、臭素化、またはヨウ素化が挙げられ、本開示では典型的に塩素化をハロゲン化の一例として記載する。開示のように、「穏やかな」条件とは、触媒前駆体の完全ではなく部分的なハロゲン化をもたらす条件下で、前駆体をハロゲン化剤と接触させることを指す。すなわち、穏やかな条件は、塩素化の影響を受けやすい利用可能な部位の合計数の部分的な塩素化(または他のハロゲン化)をもたらす。逆に、「強制的な」または「強力な」条件とは、触媒前駆体の部分的ではなく完全なハロゲン化をもたらす条件下で、前駆体をハロゲン化剤と接触させることを指す。すなわち、強制的な条件は、塩素化の影響を受けやすい利用可能な部位の合計数の完全な塩素化(または他のハロゲン化)をもたらす。例えば、本開示の一態様では、部分的ハロゲン化工程は、約35℃〜約90℃、約35℃〜約80℃、約35℃〜約70℃、約35℃〜約60℃、または約35℃〜約50℃の温度で、触媒前駆体の固体粒子を1つ以上のハロゲン化剤と接触させることを含む。ハロゲン化は、典型的に、約35℃〜約70℃で行う。
【0070】
本開示の1つの特徴では、穏やかなおよび強力なハロゲン化剤または塩素化剤という言葉は、ハロゲン化剤または塩素化剤が、ハロゲン化に供する特定の噴霧乾燥接触生成物または混合物とのハロゲン化物配位子交換をもたらす相対的な固有の傾向を説明するために使用する。例えば、穏やかな塩素化剤は、式X3eER6f、X3eE(OR6)fを有する化合物、またはそれらの任意の組合せから選択でき、式中:
X3はCl、Br、またはI;
Eは、C、Si、Ge、Sn、Ti、B、Al、Ga、またはIn;
R6はそれぞれ独立的に1〜12の炭素原子を有するアルキル基;
eは1以上の数字;および
e + fはEの原子価である。
【0071】
式X3eER6fおよび式X3eE(OR6)fの穏やかな塩素化剤は、塩化物をヒドロカルビル配位子と交換可能な非還元好酸性化合物であり得る。典型的に、式X3eER6fおよび式X3eE(OR6)fにおいて、aは1または2、およびbはE-aの原子価である。
【0072】
本開示の別の態様は、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない、穏やかな第1のハロゲン化剤の具体的な例を提供する:
a)(CH3)2SiCl2、(CH3)3SiCl、(CH3O)3SiCl(C2H5O)3SiCl、TiCl3、TiCl4、(C2H5O)3TiCl、(C2H5O)2TiBr2、(C3H7O)3TiCl、(C3H7O)2TiCl2、(C4H9O)3TiCl、(C4H9O)2TiCl2、(C6H13O)3TiCl、(C6H13O)2TiCl2、(C6H13O)2TiBr2、(CH3)2AlC1、(C2H5)2AlCl、もしくはそれらの任意の組合せ;
b)CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4、SiCl4、C6H5Cl、もしくはそれらの任意の組合せ;
c)公称式Ti(OR7)gX44-g(式中、R7はそれぞれ1〜12の炭素原子を有するアルキル基であり、X4はハロゲン化物であり、gは約0.2〜約3.8の数字である)を有する試薬を提供するような、Ti(OR7)4とTiX44との任意の比率の混合物;または
d)それらの任意の組合せ。
従って、これらの穏やかな第1のハロゲン化剤のどの組合せも採用できる。
【0073】
本開示のさらに別の態様は、穏やかな条件下で、穏やかな第1のハロゲン化剤と同時に、穏やかな第1のハロゲン化剤の後に、または穏やかな第1のハロゲン化剤無しで使用できる、少なくとも1つの比較的強力な第2のハロゲン化剤を提供する。強力な第2のハロゲン化剤の具体的な例としては、AlCl3、BCl3、R8AlCl2、R8BCl2、R83Al2Cl3、TiCl4、C6H5Cl、またはそれらのに任意の組合せ(式中、R8はそれぞれ独立的に1〜12の炭素原子を有するアルキル基である)が挙げられるがこれらに限定されない。次いで、TiCl4を第2段階の塩素化に採用し、チタン対マグネシウムのモル比は約0:1〜約3:1、または約0.5:1〜約2:1であり得るが、これらの比率は重大ではない。
【0074】
先に例示したように、一部の態様では、ハロゲン化剤、チタン化合物、およびチタン化合物とは異なる任意の遷移金属化合物はそれぞれ、チタン化合物の同じ一般式で表される化合物から選択され得る。例えば、それぞれの目的を果たし得る適切なチタン化合物としては、一般式TiX5h(OR9)4-h(式中、hは0〜4の整数であり、X5は塩化物または臭化物であり、R9はそれぞれ最大10の炭素原子を有するヒドロカルビル配位子である)を有する化合物が挙げられるがこれらに限定されない。典型的に、hは1〜4の整数である。チタン化合物およびチタン化合物とは異なる任意の遷移金属化合物の両方として、ならびにハロゲン化剤として機能し得るハロゲン化チタン化合物の例としては、TiCl4、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(OC3H7)2Cl2、Ti(OC3H7)3Cl、Ti(OC4H9)3Cl、Ti(OC3H7)2Cl2、またはそれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。従って、TiCl4等の遷移金属成分は、条件、および粒子前駆体中の特定のマグネシウムジヒドロカルビルオキシドに応じて、比較的強力か、またはより穏やかなハロゲン化剤として機能を果たすことができる。
【0075】
噴霧乾燥により一緒にされるMg/Ti/金属組成物をハロゲン化してハロゲン化触媒前駆体を得て、その後、これを共触媒と活性化させて活性触媒を得る。一態様において、活性触媒前駆体は、少なくとも約3のMg/Tiのモル(原子)比を有する。1つの態様において、触媒前駆体中でのMg/Tiのモル(原子)比は、約3〜約7、約3〜約6、または約3〜約6であり得る。本開示のこの態様を実施例で例示する。
【0076】
理論に縛られるわけではないが、「穏やか過ぎない」および「強力過ぎない」塩素化手順の使用は、活性部位に対して混合した環境を作る、つまりポリマー生成物をもたらす触媒中または上に2種類以上の活性部位を存在させる助けになると考えられている。典型的に、完全な塩素化が生じないように、穏やかな条件下で、金属原子価に必要とされる量を超える量の塩化物での塩素化が適用される。この場合も、理論に縛られるわけではないが、この態様において、塩素化剤での特定の塩素化は、金属酸化物またはアルコキシド格子に結合したチタンを取り入れる。
【0077】
触媒の調製および使用
マグネシウムジヒドロカルビルオキシドおよび少なくとも1つの遷移金属化合物を含む本開示のどの粒子状触媒前駆体も、以下のように活性触媒を生成するために使用され得る。本開示に従って調製される触媒前駆体は、典型的に、活性化共触媒で処理されて、活性触媒を生成する。ハロゲン化された触媒前駆体は、噴霧乾燥作業の後の任意の時点で活性化共触媒で処理され得る。例えば、ハロゲン化された触媒前駆体は、ハロゲン化された触媒前駆体を反応器に供給するラインにおいて、活性化共触媒で処理され得る。さらに、前駆体は、ルイス酸またはアルキル化剤で任意に処理される前に活性化され得る。または、別の態様においては、前駆体は、任意のルイス酸またはアルキル化剤処理の後に共触媒で処理され得る。典型的な活性化共触媒としては、一般式AlR1O3(式中、R10はそれぞれ独立的に、1〜14の炭素原子を有し、採用する重合反応条件下では不活性な1つ以上の置換基で任意に置換されている飽和炭化水素基である)を有する有機アルミニウム化合物が挙げられる。共触媒の例としては、例えば、Al (CH3)3、Al (C2H5)3、Al(i-C4H9)3、Al (C6H13)3、Al(C8H17)3、またはそれらの任意の組合せもしくは混合物が挙げられる。
【0078】
本開示の一態様では、共触媒を重合反応器に加えて、触媒前駆体を活性化させる。この態様において、触媒前駆体組成物および共触媒は、別々の供給ラインから反応器に供給され得る。他の態様では、触媒および共触媒の鉱油懸濁液が1つの供給ラインから反応器に供給される。あるいはまた、前駆体組成物の鉱油スラリーを共触媒で処理し、得られたスラリーを反応器に供給してもよい。共触媒はまた、純粋成分として、またはイソペンタン、ヘキサン、もしくは鉱油等の炭化水素溶剤に入った溶液形態で、反応器に噴霧されてもよい。この溶液は、通常、約2〜約30重量パーセントの共触媒組成物を含むことができる。共触媒はまた、支持体に吸収されることによって、固体形態で反応器に添加され得る。この態様において、例えば、支持体は、この目的のために、約10〜約50重量パーセントの活性剤を含み得る。反応器中のAl/Tiの全モル比が、約10、約15、約25、約35、約45、約60、約100、または約200対1となる量で、追加の共触媒を反応器に添加してもよい。さらなる態様において、この比は約250または約400対1であり得る。反応器に添加する活性剤化合物の追加量は、支持された触媒をさらに活性化させる。共触媒を活性化することによる触媒形成のさらなる態様は、PCT公報第WO 2001/05845号(Jorgensen)(その全体が、参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0079】
先に記載した触媒の様々な例または実施形態が、溶液、スラリー、または気相重合において使用できる。触媒は、任意の適切な技術に従って、スラリー重合における使用のために調製され得る。例えば、一部の態様において、このような触媒は、気相重合で使用されるものと同じように調製される。スラリー重合条件としては、支持された触媒の存在下でポリマーが溶解し易い温度未満の温度における、脂肪族溶剤中での、C2〜C20オレフィン、ジオレフィン、シクロオレフィン、またはそれらの任意の混合物もしくは組合せの重合または共重合が挙げられる。エチレン単独重合、ならびに例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-l-ペンテン、および1-オクテン等のC3〜C8α-オレフィンとのエチレン共重合に適したスラリー相プロセスも、本発明の触媒を用いて行ってもよい。
【0080】
重合反応は、典型的に、以下に記載する流動床プロセス等の気相プロセスにおいて、重合反応を開始するのに十分な温度および圧力で、エチレンの流れを触媒的に有効量の完全に活性化された前駆体組成物(触媒)と接触させることにより行う。重合は、典型的に、水分(moisture)、酸素、CO、CO 2、およびアセチレン等の検出可能な量の触媒毒を最小限にするかまたは無くすような条件下で行う。本明細書に開示する触媒は、1-ブテン、1-ヘキセン、および4-メチル-l-ペンテン等のα-オレフィン、または1,3-ブタジエン等のジエンモノマーを用いた、エチレンのホモポリマーおよびコポリマーを含むC2-C8オレフィンの重合に適している。一般的に、反応は、スラリーまたは気相条件下で行うチーグラー・ナッタ型重合に適した任意の条件において行うことができる。このようなプロセスは、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、および直線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の作製のために、商業的に使用される。一般的に、ポリエチレン密度は約0.87〜約0.975g/cm3にわたり得る。
【0081】
流動床反応系を、開示の触媒を用いた気相重合において使用できる。流動床反応系は、米国特許第4,302,565号;同第4,379,759号;および同第7,160,833号(これらは各々、参照によりその全体が本明細書に援用される)において詳細に検討されている。
【0082】
触媒を用いて生成されるポリエチレン樹脂
一般式MgCl2/TiCi3または4の多くのチーグラー・ナッタ触媒から調製されるポリエチレン樹脂は、典型的に、約3.2〜約4.5の分子量分布Mw/Mnを特徴とする。同様に、これらの樹脂は、約25〜約32の溶融流量比(melt flow ratio)I21/I2を特徴とする。しかし、これらの触媒は、得られるポリエチレン樹脂の分子量分布において高分子量テールを生じない。本開示の触媒および方法は、図1および2、ならびに記載の実施例に例示するようなポリマーを提供する。
【0083】
さらに、本開示の方法によれば、高分子量テールおよびテール中のMW 分布の調節が可能である。この態様において、マグネシウムヒドロカルビルカルボネートとチタン化合物との混合物の単工程噴霧乾燥は、塩素化の後に、100万分子量付近を中心とする高分子量テールを有する樹脂を作製するチーグラー・ナッタ触媒を形成するために使用できる固体で丸い触媒前駆体を生じる。この態様では、本開示で提供する一部の樹脂は、米国特許第5,124,298号(Job)(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されるものに類似している。所望であれば、追加の重合活性金属成分を、チタン成分と共に、またはチタン成分の代替物として、噴霧乾燥するスラリーに添加して、非常に特定かつ計画的な分子構造を有する高分子量テールを得てもよい。
【0084】
さらに、噴霧乾燥させるスラリーの適切な組成を選ぶことで、触媒組成物を調整して、金属およびフィラーの望ましい荷重を得ることができる。この態様において、噴霧乾燥させるスラリーは、連続的に調節可能である。添加される重合活性成分の量は、重合プロセスの要求に適合した触媒活性を得られるように選択でき、粒子を増大させ、空隙率を得るために不活性フィラーを添加してもよい。噴霧乾燥粒子中の金属成分の固体溶液のマトリックスを形成するマグネシウムヒドロカルビルカルボネート成分のガラス質で非晶質な性質によって、マグネシウムマトリックス成分とチタンまたは他の遷移金属成分との化学反応が不在であっても、固体または液体の両方の遷移金属成分の包埋が可能になる。
【0085】
本開示で提供する触媒を用いて生成されるポリエチレン樹脂は、幅広い有用性を有する。例えば、本発明のポリエチレン樹脂から作られる加工品は、あらゆる従来のポリオレフィンプロセス技術を使用して調製され得る。有用な品物としては、フィルム(例えば、キャストフィルム(cast)、インフレーションフィルム(blown)および押出しコーティングフィルム)、繊維(例えば、繊維の表面の少なくとも一部を構成する少なくとも1つの成分として本明細書に開示するオレフィンポリマーの使用を含むスフ(staple fibers))、スパンボンド繊維またはメルトブロー繊維(例えば、米国特許第4,663,220号(Wisneskiら)、同第4,668,566号(Braun)、または同第4,322,027号(Reba)(これらは全て、参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示されるような系を使用)、およびゲルスパン繊維(例えば、米国特許第4,413,110号(Kaveshら)(参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示されるような系)、織物および不織布の両方(例えば、米国特許第3,485,706号(Evans)(参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示されるようなスパンレースファブリック(spunlaced fabrics))、そのような繊維から作られる構造(例えば、これらの繊維とPETまたは綿等の他の繊維とのブレンドを含む)、ならびに成形品(例えば、射出成形プロセス、ブロー成形プロセス、または回転成形プロセスを使用して作製)が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に記載するポリマーは、ワイヤーおよびケーブルコーティング作業のためにも、ならびに真空成形作業のためのシート押出成形においても有用である
【0086】
本開示はさらに、本開示に記載するいずれの発明の範囲も限定すると解釈されるべきではない以下の実施例により例示される。一方、本開示を読んだ後に、本発明の精神、または添付の請求の範囲から逸脱することなく、それらの様々な他の態様、実施形態、改変、および等価物が当業者には示唆されることが理解されよう。従って、本発明の他の態様は、本明細書に開示する発明の詳述および実施を考慮すれば、当業者には明らかである。
【0087】
特に明記しない限り、全ての操作は、乾燥二窒素等の不活性雰囲気の下で行われ、使用される全ての溶剤は、標準技術によって使用前に乾燥される。試薬は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee、Wisconsin)等の商業的提供元から得ることができ、取得した状態のままか、または必要に応じて標準的技術を用いて精製してから使用する。特定の混合ハロゲン化物-アルコキシド金属化合物を調製において使用する場合、化合物は商業的提供元から得て、文献に記載の技術に従って調製されるか、または対応する二元金属ハロゲン化物(例えば、HfCl4)、および対応するホモレプティック金属アルコキシド(例えば、Hf(OEt)4)を適切なモル比で適切な溶剤中で、組み合わせるとにより調製することができる。
【0088】
特に明記しない限り、例えば、重量パーセント、粒径、および時間の期間等のどのような種類の範囲が開示または請求された場合も、それぞれが、それらの範囲内に含まれるあらゆる部分的範囲も含めて、それらの範囲内に確実にある、可能性のある数字をそれぞれ開示または請求することを意図する。例えば、本出願人が開示または請求する重量パーセントが約30%〜約40%にある場合、それぞれが、本明細書の開示に合致し、そのような範囲が含み得る可能性のある全ての数字を開示または請求することを出願人は意図する。従って、重量パーセントが約30%〜約40%であり得ると開示する場合、出願人は、開示されている値の間にある、あらゆる範囲、部分的範囲、またはそれらの組合せを含めて、重量パーセントが約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、または約40%であり得ると列挙することを意図する。従って、出願人は、グループ内にあるあらゆる部分的範囲、または部分的範囲の組合せを含めて、このようなグループ内のいずれの個別メンバーを除外または排除することを条件とする権利を有し、これは、何らかの理由により、例えば、出願時には出願人が気づいていなかった参考資料を考慮して、出願人が開示されている完全な数量よりも小さい数量を請求したい場合、範囲等を請求できる。
【0089】
「実質的に球状」の形態(morphology or form)という用語は、1〜1.5、または1〜1.25の範囲の縦横比(その長軸対短軸の比率)を有する三次元体を指す。
【0090】
「吸収水分を実質的に含まない」という用語は、フィラー物質に関して用いる場合、フィラー物質と感水性成分とが接触する際のそれらの間のあらゆる有害な反応を、低減する、最小限にする、または無くすのに十分な程度にフィラー物質が乾燥していることを示す。従って、この特徴は、フィラーが接触する成分の感湿の程度に依存する。一態様において、「吸収水分を実質的に含まない」とは、1%重量未満、0.1%重量未満、0.01%重量未満、または0.001%重量未満の水を言う。
【0091】
遷移金属試薬は、商業的提供元から得ることができるか、または標準的な研究室手順に従って調製される。例として、商業的提供元から入手し易い、本開示による式Ti(OR3)2Y2を有する化合物としては、チタンテトライソプロポキシド(546-68-9)、チタンテトラキス(2-エチルヘキソキシド)(1070-10-6)、チタンテトラ-n-プロポキシド(3087-37-4)、ビス(アセチルアセトネート)エトキシドイソプロポキシドチタン(445-398-76-5)、ビス(アセチルアセトネート)イソブトキシドイソプロポキシドチタン(97281-09-9)、ジイソプロポキシ-ビスエチルアセトアセテートチタネート(27858-32-8)、ジイソブトキシ-ビスエチルアセトアセテート チタネート(83877-91-2)、およびテトラキス(2-エチルヘキサン-l,3-ジオレート)チタン(5575-43-9)から選択されるビス(アセチルアセトネート)ジイソプロポキシドチタン(17927-72-9)が挙げられる。
【0092】
本明細書に開示する触媒前駆体粒子を調製するために採用される噴霧乾燥方法は、米国特許第6,982,237号(Wagnerら);同第6,806,221号(Wagnerら);および同第7,160,833号(Wagnerら)(参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)に開示されている。使用される具体的な噴霧乾燥機器は、米国特許第5,672,669号(Wassermanら)(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載のようなBuchiモデル190噴霧乾燥器である。
【0093】
実施例に従って産生されるポリマーの特性は、以下のテスト法により決定される。
【0094】
メルトインデックス(MIまたはI2)は、ASTM D-1238、条件Eに従って決定され、2.16キログラム(kg)の荷重で190℃にて測定し、グラム/10分として表す。
【0095】
高荷重メルトインデックス(HLMIまたはI21)は、ASTM D-1238、条件Fに従って決定され、21.6キログラム(kg)重量で190℃にて測定し、グラム/10分として表す。
【0096】
メルトフロー比(MFR)は、メルトインデックス(MIまたはI2)に対する高荷重メルトインデックス(HLMIまたはI21)の比率である。この値は、一般的に、生成物ポリマーの分子量分布との相互関連を示し、より低いMFRは、より狭い範囲の分子量分布を示す。
【0097】
一部のポリマーは、I2を測定した際の2.16kgの荷重ではなく5.0 kgの荷重を用いてI5を測定したこと以外は、I2と同様に、ASTM D-1238に従い、190℃にて測定したI5によって特徴付けられる。I5はグラム/10 分として表す。
【0098】
触媒生成率(catalyst productivity)は、樹脂生成物のサンプルを灰化し、得られた灰の重量パーセントを決定することにより測定できる。灰中のTiの量は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析によって決定できる。生成率は、ポリマー中の100万のTiあたりの部として表すことができる。あるいはまた、樹脂中の残渣Tiの量は蛍光X線を用いて測定できる。樹脂プラークを調製し、測定値を標準曲線と比較する。標準曲線は、ICP法を使用して残渣Tiについて分析された樹脂を用いて作成する。
【0099】
細粒を測定し、120メッシュ米国標準スクリーン(120 mesh U.S. Standard screen)を通過したポリマー粒子の重量パーセントとして報告する。
【0100】
平均樹脂粒径は、500gサンプルを用いて、ASTM D-1921、方法Aに従って、ふるい分析データから計算される。計算は、スクリーン上で保持された重量分率に基づく。
【0101】
かさ密度は、ASTM D-1895、方法Bに従って測定される。
【0102】
支持体または触媒の粒径は、以下のように決定および報告する。本明細書で使用するDlO、D50およびD90という用語は、ヘキサン溶剤を使用し、Malvern Mastersizer(登録商標)2000粒径分析器を用いて決定された、粒径対数正規分布のそれぞれのパーセンタイルを示す。従って、例えば、25μmのD50を有する触媒粒子は、25μmの粒径中央値を有する。45μmのD90は粒子の90%が45μm未満の粒径を有することを示し、8μmのDlOは粒子の10%が8μm未満の粒径を有することを示す。粒径分布の幅または狭さは、(D90-D10)/(D50)として規定されるスパンとして求めることができる。
【0103】
フィラーとして使用するフュームドシリカは、0.2〜0.3μmの公称平均粒子長(骨材)を有するCab-O-Sil(登録商標)TS-610(Cabot Corporation)である。フィラーとして使用されるTiO2は、約1μmの平均粒径を有し、Aldrich Chemical Company(Aldrich No.224,227;ルチル)から得る。この物質の公称粒径は5μm未満である。
【0104】
比較例は、実施例の番号の前に「Comp」を使用して示す。
【0105】
本発明の開示で言及する全ての文献および特許は、例えば、本発明に関連して使用されるかもしれない文献に記載の構成および方法論を説明および開示する目的で、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。原本全体について論じられる文献は、本願の出願時前の開示についてのみ提供するものである。本明細書におけるいかなる記載も、本発明者らが、先行発明に基づいてそのような開示に先行する権利が無いことを了承するものではない。参照により援用されるいずれかの参考文献における使用法または専門用語が、本開示で使用する使用法または専門用語と食い違う場合には、本開示の使用法または専門用語が優先される。本開示の要約は、米国特許法施行規則第1.72節の要件、および米国特許法施行規則第1.72節(b)に記載の目的を満たし、「米国特許商標庁および一般公衆が、一瞥して、技術的開示の性質および主旨をすぐに断定できる」ために提供される。要約は、添付の請求の範囲を解釈したり、または本明細書に開示する主題の範囲を限定するために使用することを意図しない。場合によっては推定的または先見的に記載されている実施例を説明するための過去形の使用は、推定的または先見的な実施例が実際に行われたと思案されることを意図しない。
【0106】
実施例
実施例1〜4
噴霧乾燥粒子状触媒前駆体の調製(同時噴霧)
以下の一般的な調製方法は、表1に示す実施例1〜4の噴霧乾燥粒子状触媒前駆体を調製するために使用され、これは、本開示の全ての噴霧乾燥粒子状触媒前駆体に全般的に適用できる。
【0107】
実施例1〜4については、以下の成分を採用する:マグネシウム成分、CO2で飽和状態まで処理されたマグネシウムエトキシド;チタン化合物、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)(Aldrich Chemical Co.);チタン化合物とは異なる遷移金属化合物、四塩化ハフニウム;フィラー、Cab-O-Sil(登録商標)TS-610(Cabot Corporation)。実施例1〜4は、米国特許第7,160,833号(Wagnerら)の記載の噴霧乾燥機器を使用して調製する。
【0108】
スラリーは、表1に示すように、エタノール、マグネシウム源、チタン源、および任意に第2の金属源を組み合わせることで調製される。この混合物は、成分を約1〜約3時間攪拌することで調製される。マグネシウム源が、実施例1〜4のようにマグネシウムエトキシドである場合、Mg(OEt)2をまず可溶化すると、Mg(OEt)2スラリーを飽和状態までCO2で処理した際にマグネシウムエチルカルボネートに変換される。あるいはまた、米国特許第5,604,172号(Wagnerら)、および同第5,034,361号(Jobら)に記載されるような他の可溶化剤も使用できる。フュームドシリカフィラーCab-O-Sil(登録商標)TS-610(Cabot Corporation)をスラリーに添加し、その後、スラリーを、回転ホイール噴霧乾燥器中で、約15kg/時間〜約20kg/時間のスラリー供給量で、表1に示すプロセス条件下で噴霧乾燥させる。このプロセスから、比較的狭い範囲の粒径分布を有するフリーフロー球状粒子が得られる。このように調製された前駆体粒子の典型的な顕微鏡写真を図1に示す。これらの実施例で利用されるアトマイザーホイールは、120mmの直径、およびスラリー排出用の4つの等間隔に空けられたのノズルを有する。100%の速度は24,000 RPMである。
【0109】
【表1】
【0110】
表1に示すように、成分の比率、成分の濃度、および噴霧乾燥固体粒子のフィラー含有量は、噴霧乾燥するスラリーの処方を調節することで制御できる。
【0111】
このように調製した噴霧乾燥粒子状触媒前駆体は、規模を大きくしたり、炭化水素スラリーにて塩素化することもできる。得られたスラリー(任意に鉱油でさらに希釈される)は、一旦塩素化されると、直接、重合プロセスで使用できる。炭化水素スラリーのアリコートを、ヘキサンで数回洗浄し、乾燥させる。走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、前駆体粒子の球状形態が塩素化の間ずっと維持されることを示す。実施例1〜4の触媒前駆体を使用した場合、得られた触媒組成物のBET表面積は3m2/g〜150m2/gにわたり、一点法BET細孔容積は0.05cm3/g〜0.4cm3/gにわたる。
【0112】
実施例5〜8
噴霧乾燥粒子状触媒前駆体の調製
実施例1〜4で使用する一般的な調製方法は、表2に示す実施例5〜8に例示するような噴霧乾燥粒子状触媒前駆体を調製するためにも使用できる。例示のように、成分の比率、成分の濃度、および噴霧乾燥固体粒子中のフィラー含有量、ならびに同様の変数は、噴霧乾燥するスラリーの処方を調節することで制御できる。
【表2】
【0113】
実施例9
塩素化されたMg/Ti同時噴霧粒子状触媒前駆体の調製
約5.3:1のMg/Ti比(3.85mmol Mg/g前駆体;0.73 mmol Ti/g前駆体)を含むMg/Ti触媒前駆体を、実施例5〜8に記載するように噴霧乾燥させる。噴霧乾燥前駆体の24gサンプルを100mLのヘキサン中でスラリー化し、88mLのトルエン、100mmolのSiCl4、および任意に23mmolのTiCl4を含むトルエン溶液を添加する。スラリーを室温にて30分間かき混ぜた後、17.8gの固体を濾過により分離する。次いで、固体を、250mL 枝付きフラスコに入った100 mLのヘキサンに窒素下で添加し、59.2mLの1.8M EtAlCl2(106mmol)を30分かけて添加する。フラスコを氷浴中で冷却して温度を60℃未満に維持する。スラリーをさらに30分間かき混ぜ、固体を濾過除去し、ヘキサンで3回洗浄し、乾燥させる。元素分析:10.4% Mg、1.0% Ti、および5.35% Al。
【0114】
この塩素化手順の他の改変版も実現可能であり、異なる活性および重合特性の触媒を産生する(実施例12〜19のスラリー重合を参照)。調節できるパラメーターとしては、例えば、触媒前駆体中のTiに対するMgモル比が挙げられ、Tiのパーセントが上がると、前駆体中により多いチタン、および典型的により低い触媒活性が得られると予想される。より強い塩素化剤EtAlCl2で使用される相対的な量、濃度、または反応温度の上昇によって、高分子量テールが小さい分子量分布の範囲がより狭いポリマーを生じる触媒部位がより多く得られると予想される。
【0115】
実施例10
強力なハロゲン化剤によりin situで塩素化された塩素化Mg/Ti/Hf同時噴霧触媒前駆体の調製
実施例4に記載されるように調製され、23.8mmol Mg、5mmol Ti、および5.5mmol Hfを含むMg/Ti/Hf同時噴霧触媒前駆体の11gサンプルを、ヘラ型攪拌器および温度計を備えた250mL枝付きフラスコ中で35gの鉱油を用いてスラリー化される。反応容器を窒素下に保ち、気泡器(bubbler)を用いてガス発生の排気およびモニタリングの両方を可能にする。フラスコを氷浴中で室温にてかき回して、反応温度を約40℃未満に維持する。このスラリーに、43.1gの30%EASC(エチル-アルミニウムセスキクロリド)含有鉱油(180 mmol塩化物、カチオンが必要とする1当量あたりおよそ2当量の塩化物)を1時間かけて滴下する。従って、1当量のMgあたり約2当量の塩化物を送達するのに十分なEASC、および1当量のTiまたはHfあたり約4当量の塩化物を採用する。最初の0.5当量のEASCを添加した時に10℃の発熱に気が付き、最初の1当量の塩化物の添加の間にガス発生が観察された。得られた均質の赤茶色のスラリーを4時間かき回した後、スラリーをこの形態で重合調査のために使用する。スラリー分析:モル組成Mg4.52Ti1Hf0.9;鉱油中でおよそ13.3%重量の固体。
【0116】
実施例11
比較用の沈殿型前駆体およびその塩素化生成物の調製
Mg/Ti触媒前駆体を、米国特許第5,124,298号(Job)の例示の実施形態IIに従って、Mg(OEt)2、Ti(OEt)4、およびTiCl4から調製する。沈殿させたMg/Ti前駆体を、米国特許第6,248,831号(Maheshwariら)に記載されているように、SiCl4/TiCl4およびBCI3/EtAlCl2を用いて二段階で塩素化する。低空隙率の高密度微粒子物質を得て、比較調査に使用する。
【0117】
実施例12〜19および20comp〜22comp
スラリー重合調査
スラリー重合調査の結果を表3に示す。
【表3】
【0118】
これらの調査は、とりわけ、触媒特性および得られるポリマーに対する触媒の調製の際の変数の影響を実証している。重合は、85℃にて、1Lスラリー反応器において、30分間、30〜75のTNHAL(トリ-n-ヘキシルアルミニウム)/Ti共触媒モル比で行い、この際、水素/エチレン(H2/C2)比およびヘキセン/エチレン(C6/C2)比の両方が、所望のメルトインデックスおよび樹脂密度(約0.95g/cm3)の樹脂を得るように調節される。表3の実施例において、H2/C2比は、100〜150psiの圧力で維持される0.25H2/C2である。
【0119】
実施例12〜19は、本開示の触媒が、標準的なチーグラー・ナッタ(Z/N)触媒で実現可能な分子量分布(これらの結果は比較例20および21に示す)よりも広い範囲の分子量分布を有する樹脂を作製することを実証する。理論に縛られることは意図しないが、高活性かつ広範囲化された分子量分布のための要件は、MgおよびTiアルコキシドを金属塩化物に変換する(または一般的にハロゲン化物)ことが知られている試薬の使用、ならびにいくらかの塩素化剤の粒子構造への取り込みにより満たされると思われ、金属ハロゲン化物と共に混合酸化物またはアルコキシドを生じる。ここでも、理論に縛られるわけではないが、この仮説は広範囲な分子量分布を有する樹脂をもたらす塩素化触媒の分析と合致する。
【0120】
さらに、異なる塩素化方法によって、分子量分布における高分子量テールの量または度合いの制御が可能である。例えば、実施例21-Compに例示するような活発過ぎる塩素化反応の使用は、従来のZ/N樹脂に典型的な、比較的狭い範囲の分子量分布を有する高度に活性なZ/N触媒を生じる。塩素化が不十分であると、実施例22-Compに例示するような、低活性かつ分子量分布の範囲が狭い標準的なZ/N触媒が生じる。対照的に、約3.5〜4.5のMw/Mnに対応する比較(対照)例の約27〜30のHLMI/MI比に対して、本発明の実施例の約40〜約60の測定されたHLMI/MI比(メルトフロー比)は約6〜8のMw/Mnmに対応する。
【0121】
図2は、本開示による触媒を用いて85℃で重合させた気相樹脂の分子量分布(MWD)のプロットを示し、曲線Cは、同時噴霧Mg/Tiを使用した実施例13のポリマーのMWD を表す。比較例20および27のポリマーのMWDは、それぞれ曲線AおよびBで示される。とりわけ、図2は、広範囲な分子量分布が、各種量の高分子量テールを有する樹脂成分の形成から得られ、低分子量テールを比較的含まないことを実証している。
【0122】
実施例23〜26、27-Compおよび28-Comp
気相重合調査
気相重合調査の結果を表4および図2に示す。
【0123】
所望の分子量および密度の樹脂を作製するようにモノマー、コモノマー、および水素濃度を同様に調節して、連続的な流動床において気相重合を行う。5〜7lb/時間の速度、300 psiの圧力でオレフィンを重合することが可能な50Lの反応容積の8インチ気相流動床反応器を使用する。Al/Ti比は約30:1、H2/C2(水素:エチレン)比は約0.3〜0.5、およびC6/C2比は約0.01で、表4に示す結果が得られる。
【0124】
表4の実施例23〜26の気相は、本開示の触媒が高度に活性で、所望の分子量、密度、および所望の広範囲な分子量分布の樹脂を産業的に採用される気相重合条件下でもたらすことを示す。樹脂粒子の形態は、触媒粒子の形態に従う。本発明の樹脂は、米国特許第6,248,831号(Maheshwariら)に開示される沈殿型触媒で得られる樹脂(実施例27-Comp)に似ているが、ただし、噴霧乾燥触媒粒子は沈殿型触媒粒子と比べてより有利な物理的形態を有することによってより高いかさ密度が得られる。実施例28-Compは、前駆体の過度に活発な塩素化が、気相重合において、通常の分子量分布の範囲が比較的狭い樹脂を生じることを実証する。
【表4】
【0125】
図2は、85℃で重合させた気相樹脂の分子量分布を示す。数字は、各種量の高分子量テールを有する樹脂成分の形成から広範囲な分子量分布が得られ、低分子量テールを比較的含まないことを実証している。
【0126】
実施例29および30-Comp、31および32-Comp、ならびに33および34-Comp
噴霧乾燥実験の比較
Ti成分の量を一定に維持し、Mg試薬の量を増加して所望のMg/Ti比を得て、公称で5:1、12:1、および20:1のMg/Ti比のMg/Ti触媒スラリーをエタノール中で調製する。Cab-O-Sil(登録商標)TS-610を不活性フィラーとして使用する。各比較組についてのCab-O-Sil(登録商標)の量を調節して、全ての実験組についてTi荷重定数を維持する。
【0127】
実施例29、31、および33の「本発明」組は、マグネシウムエチルカルボネート(固体)、およびチタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)(液体、Aldrich 325252)を使用した。マグネシウム試薬は、エタノール溶液中で、マグネシウムエトキシド(固体、Aldrich 291846)を、物質全体が溶液に含有され、CO2取込みが停止するまでCO2ガスで徹底的に処理することにより調製する。
【0128】
実施例Comp-30、Comp-32、およびComp-24の「比較」組は、塩化マグネシウム(固体、無水、Aldrich 208337)、および三塩化チタン(TiCl3 AA、固体、Aldrich 456411)を使用した。
【0129】
噴霧乾燥は、Buchi 190噴霧乾燥器の乾燥ボックスにおいて、窒素下で行う。マグネシウムおよびチタン成分をエタノールに溶解し、必要量のTS-610(登録商標)Cab-O-Silでスラリー化する。噴霧乾燥を、105℃のノズル温度で行う。受取りフラスコ中に得られる粉末状物質の重さを量り、分析した。
【表5】
【0130】
表5は、スラリー中のマグネシウム濃度が上昇すればするほど、MgCl2/EtOHを出発物質として採用する比較用Mg/Tiサンプルの噴霧乾燥生成物の収率が低くなっていくことを実証する。その代わりに、粘着性油の形成により、より多くの物質が噴霧乾燥器の壁および表面にくっつく。噴霧乾燥器は、系から油を洗い出すためにエタノールを流さなければならなかった。マグネシウムエチルカルボネートを出発物質として採用する本発明のMg/Tiサンプルは、Mg荷重が高くても粘着性を帯びず、内部表面上に沈着することなく、正常に噴霧乾燥される。
【0131】
粒子形態.実施例33および34-Compは、粒子の内部構造を提供し、より良好な溶剤蒸発を可能にすると期待されるフィラーの不在下で行う。実施例33および34-Compの触媒前駆体から得た噴霧乾燥固体粒子の顕微鏡検査は、固体粒子の形態を違いを示した。実施例34-Compにおいて噴霧されるより大きい液滴は、乾燥工程の間中、大きい剛性の結晶性の空洞の殻を形成して、壊れた卵殻構造へと分解し得る大きい空洞の粒子を生じた。
【0132】
対照的に、本発明の実施例33で噴霧されるより大きい液滴は、最初に、大きい軟性の非晶質殻を形成し、これは、粒子乾燥の間、内部溶剤が蒸発すると共に収縮した。得られた粒子は、これらの大きい内部空隙のない充実した固体粒子の形態を取っていた。
【0133】
実施例35
噴霧乾燥粒子状触媒前駆体の調製、およびそれを使用した高分子量テールを有するポリエチレンの作製
この実施例は、米国特許第6,187,866号(Jorgensenら)に開示されるようにin situでのポリマー配合を包含し、低密度エチレンコポリマーが低メルトインデックス反応器で調製され、高密度エチレンコポリマーが高メルトインデックス反応器で調製される。このプロセスは、典型的に、直列に接続された2つの気相流動床反応器において、エチレンおよび1つ以上のα-オレフィンの混合物と触媒系とを、重合条件下で連続的に接触させることを含む。典型的に、直接接続された第1の反応器で形成されたエチレンコポリマーマトリックスおよび活性触媒の混合物を、直接接続された第2の反応器に移す。第1の反応器から第2の反応器に移された活性触媒以外は、追加の遷移金属触媒を第2の反応器に導入しない;もっと正確に言えば、第1の反応器から移される触媒の活性レベルを、第1の反応器における初期活性レベルぐらいまで復元させるのに十分な量の追加のヒドロカルビルアルミニウム共触媒を第2の反応器に導入する。本実施例の上記およびその他の態様は、米国特許第6,187,866号(Jorgensenら)(その全体を参照により本明細書に援用する)に開示されている。
【0134】
本実施例では、実施例10に従うが、調製手順を以下のように改変して、噴霧乾燥粒子状触媒前駆体を調製する。
【0135】
塩素化反応.触媒前駆体の塩素化は、EASC含有ヘキサンを用いて、50℃の塩素化温度で攪拌しながら行う。得られるスラリーをこの温度で1時間維持し、その後、攪拌を停止し、得られた固体を安定させる。次いで、上澄み液を静かに移し出し(decanted off)、イソペンタン溶剤を反応容器に添加して、固体を洗浄し、温度を25℃に調整した状態で攪拌を再開し15分間続ける。この後、攪拌を停止し、再度上澄みを静かに移す。この手順を、イソペンタンを用いて繰り返す。最後に、Crompton HB-380鉱油を固体に添加し、鉱油スラリーを形成し、これを重合反応に使用する。
【0136】
連続添加混合物(coninuity additive mixture).連続添加混合物(CAM)は、Crompton HB-380鉱油中で、ジステアリン酸アルミニウム(10%重量)およびAS990(市販されているエトキシ化ステアリルアミン-同じく10%重量)を混合して調製する。このCAMを反応器に直接注入する。
【0137】
重合.気相重合を、以下の改良を加えた、米国特許第6,187,866号(Jorgensenら)の実施例3〜8に記載されているものと同じ段階的反応器系を用いて行う。まず、CAM混合物を、配給プレートのおよそ1フット上にある第1の反応器に直接注入する。触媒を、配給プレートのおよそ2フィート上の位置にあるイソペンタンキャリアを用いて注入する。重合条件および樹脂特性を表6に示す。
【表6】
【0138】
表6の反応条件は、9時間の定常状態作業にわたる平均値である。水素およびヘキセン濃度は、反応器中のエチレンに対するモル比として表す。静電気は、静電プローブを用いて測定し、30分間または90分間のいずれかの期間にわたり平均化する。第1の反応器における生成率は、反応器周辺(around)のエネルギー平衡を使用して計算する。最終生成率は、1時間あたりに反応器から取り出される樹脂の質量、つまり、実際の重量によって決定する。連続添加混合物(CAM)は、第1の反応器においてシート/塊(sheet/chunk)の形成を無くすのに十分な速度で供給する。粒径の詳細を表7に示す。
【0139】
【表7】
【0140】
表7のデータから、第1の反応器から第2の反応器での粒子の成長、および第1から第2の反応器での細粒の絶対的な低減が明らかである。この特徴は、本発明の触媒前駆体の堅固な性質を実証し、これは図3においてグラフを使ってさらに実証されている。従って、図3は、第1および第2の重合反応器で得られた粒子の累積重量パーセント、対、粒径(ミクロン)の対数のプロットであり、触媒粒子の堅固な性質、およびそれらが本実施例の二重反応器重合プロセスの間、構造的な統一性を保つ能力を実証している。
また、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
(1)a)スラリー化剤中で以下のものを接触させること:
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;および
iii)少なくとも1つのチタン化合物;ならびに
b)工程a)のスラリーを噴霧乾燥させて、スラリー化剤を蒸発させて、固体粒子を生成すること、
を包含する触媒成分の調製方法であって、該マグネシウムジヒドロカルビルオキシド、および該チタン化合物は、スラリー中に任意のモル比で存在する、方法。
(2)スラリー化剤中で、成分i)、ii)およびiii)を接触させる工程a)が:
iv)4〜6族金属から選択される、前記チタン化合物とは異なる少なくとも1つの遷移金属化合物
と接触させることをさらに包含する、上記(1)に記載の方法。
(3)前記チタン化合物とは異なる遷移金属化合物が:
a)Zr(OR4)bCl4-b、Hf(OR4)bCl4-b、VOCl3、またはそれらの任意の組合せから選択され(式中、bは0〜4の整数であり、R4はそれぞれ1〜12の炭素原子を有するアルキル基である);
b)Ti(0R5)cX14-c、またはこの式の化合物の任意の組合せ(式中、X1はCl、Br、またはIであり;cは0〜3の整数であり;およびR5はそれぞれ1〜12の炭素原子を有するアルキル基である);
c)TiX2d(式中、X2はCl、Br、またはIであり、dは0は上回るが4未満の数字である);あるいは
d)それらの任意の組合せ、
から選択される、上記(2)に記載の方法。
(4)スラリー化剤中で、成分i)、ii)、およびiii)を接触させる工程a)が:
v)無孔フィラー、
と接触させることをさらに含む、上記(1)に記載の方法。
(5)前記スラリー化剤が、最大4炭素原子を有するアルコール、または最大4炭素原子を有するアルコールの任意の組合せから選択される、上記(1)に記載の方法。
(6)前記ルイス酸可溶化剤が二酸化炭素であり、前記スラリー化剤が1〜4の炭素原子を有するアルコールである、上記(1)に記載の方法。
(7)前記マグネシウムジヒドロカルビルオキシドが、式Mg(OR1)2(式中、R1はそれぞれ独立的に、最大で6炭素原子を有するアルキルから選択される)を有し;および
前記ルイス酸性可溶化剤が、二酸化炭素、二酸化硫黄、ホルムアルデヒド、A1(OR2)3、B(OR2)3、またはそれらの任意の組合せから選択される(式中、R2はそれぞれ独立的に、最大で6炭素原子を有するアルキルから選択される)、
上記(1)に記載の方法。
(8)c)触媒前駆体を部分的にハロゲン化する条件下で、前記工程b)の固体粒子を少なくとも1つのハロゲン化剤と接触させること、
という工程c)をさらに包含する、上記(1)に記載の方法。
(9)c)前記工程b)の固体粒子を:
i)触媒前駆体を部分的にハロゲン化する条件下で、少なくとも1つの穏やかな第1のハロゲン化剤および連続して少なくとも1つの強力な第2のハロゲン化剤と;または
ii)触媒前駆体を部分的にハロゲン化する条件下で、少なくとも1つの強力なハロゲン化剤と
接触させるという工程c)をさらに包含する、上記(1)に記載の方法。
(10)a)上記(1)に記載するように調製した触媒成分;
b)ハロゲン化剤;および
c)活性化共触媒、
を含む、触媒系。
(11)前記活性化共触媒が、式A1R1O3(式中、R10はそれぞれ独立的に、採用される重合反応条件下で不活性である1つ以上の置換基で任意に置換された、1〜14の炭素原子を有する飽和炭化水素基である)の少なくとも1つの化合物から選択される、
上記(10)に記載の触媒系。
(12)a)スラリー化剤中で以下のものを接触させること:
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;
iii)少なくとも1つのチタン化合物;および
iv)少なくとも1つの無孔フィラー;
b)工程a)のスラリーを噴霧乾燥させて、スラリー化剤を蒸発させて、固体粒子を作製すること;ならびに
c)工程b)の固体粒子を、少なくとも1つのハロゲン化剤で処理すること
を包含する触媒成分の調製方法であって、該マグネシウムジヒドロカルビルオキシド、該チタン化合物、および該チタン化合物とは異なる任意の遷移金属化合物は、スラリー中に任意のモル比で存在する、方法。
(13)スラリー化剤中で、成分i)、ii)、iii)およびiv)を接触させる工程a)が:
v)4〜6族金属から選択される、前記チタン化合物とは異なる少なくとも1つの遷移金属化合物
と接触させることをさらに包含する、上記(12)に記載の方法。
(14)a)上記(12)に記載するように調製した触媒成分;および
b)式A1R1O3(式中、R10はそれぞれ独立的に、採用される重合反応条件下では不活性である1つ以上の置換基で任意に置換された、1〜14の炭素原子を有する飽和炭化水素基である)の少なくとも1つの化合物から選択される活性化共触媒、
を含む触媒系。
(15)a) 以下のものの噴霧乾燥混合物または反応生成物;
i)少なくとも1つのマグネシウムジヒドロカルビルオキシド;
ii)少なくとも1つのルイス酸性可溶化剤;
iii)少なくとも1つのチタン化合物;
iv)4〜6族金属から選択される、チタン化合物とは異なる少なくとも1つの遷移金属化合物;および
v)少なくとも1つの無孔フィラー、
b)少なくとも1つの強力な第2のハロゲン化剤、
の接触生成物を含む触媒成分であって、該噴霧乾燥混合物または反応生成物を部分的にまたは完全にハロゲン化する条件下で接触させる、触媒成分。
(16)前記接触生成物が、成分a)およびb)と:
c)少なくとも1つの穏やかな第1のハロゲン化剤、
との接触生成物をさらに含む、上記(15)に記載の触媒成分。
(17)前記噴霧乾燥混合物または反応生成物を部分的にハロゲン化する条件下で接触させる、上記(14)に記載の触媒成分。
図1
図2
図3