特許第5972583号(P5972583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972583
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   A45D33/00 615F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-17120(P2012-17120)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-153960(P2013-153960A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165940
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 令子
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘幸
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−055812(JP,U)
【文献】 特表2009−543604(JP,A)
【文献】 実開昭58−154712(JP,U)
【文献】 実開昭59−055909(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0011320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体物を固定する受皿部材と、当該受皿部材を収納する凹所が形成された容器本体と、前記凹所の上端開口を開閉可能な蓋体とを備え、受皿部材と容器本体との間に衝撃吸収部材が配置されたコンパクト容器であって、
前記衝撃吸収部材は、前記凹所の内側に固定される環状部と、この環状部の周方向に間隔を置いて配置されるとともに互いに接近しながら螺旋状に起立する複数のアーム部と、当該アーム部の先端に連結されることで前記凹所の底面よりも上方に空間を設けて配置されるとともに前記受皿部材を収納する受皿収納部とからなり、
前記受皿収納部の周壁の上端に張り出し部が一体に設けられ、
複数の前記アーム部は、それぞれ前記環状部の下端内側から起立するとともに前記受皿収部の周壁の上端側において前記張り出し部の下端に連結されていることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
請求項1において、前記環状部及び前記容器本体にそれぞれ、互いに嵌合する凹部及び凸部からなる回り止め手段を設けたことを特徴とするコンパクト容器。
【請求項3】
請求項1において、前記容器本体に、前記環状部の上端に接触する張り出し部を有し当該張り出し部の内側にアームを覆うカバーを備えた中枠部材を設けたことを特徴とするコンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体物を固定する受皿部材と、当該受皿部材を収納する凹所が形成された容器本体と、前記凹所の上端開口を開閉可能な蓋体とを備え、受皿部材と容器本体との間に衝撃吸収部材が配置されたコンパクト容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクト容器は化粧料容器に用いられることが一般的であるが、受皿部材に固定される固形化粧料は、簡単に塗布できるように崩れ易くできている。このため、従来から、受皿部材と容器本体との間に衝撃吸収部材を配置したものが既知である。こうした衝撃吸収部材としては、容器本体の凹所底面と受皿部材の底部との間に空洞を形成するように中空凸状に形作られたクッション部を有し、受皿部材の側壁をフランジ部で保持して当該側壁との間に隙間を形成するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−178898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したクッション部は、容器本体の凹所底面と受皿部材の底部との間に空洞を形成するにすぎないため、コンパクト容器が落下等によって強い衝撃を受けることで空洞が潰れることがある。また、従来の衝撃吸収部材は、受皿部材の側壁をフランジ部で保持するため、衝撃吸収機能は、衝撃吸収部材の材質に依存するところが大きい。このため、従来のコンパクト容器は結果的として、固形化粧料に亀裂や欠けを生じさせることがあった。
【0005】
本発明の目的とするところは、受皿部材が受ける衝撃を効果的に吸収することで、受皿部材に固定された固体物に亀裂や欠けを生じさせない新規なコンパクト容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固体物を固定する受皿部材と、当該受皿部材を収納する凹所が形成された容器本体と、前記凹所の上端開口を開閉可能な蓋体とを備え、受皿部材と容器本体との間に衝撃吸収部材が配置されたコンパクト容器であって、
前記衝撃吸収部材は、前記凹所の内側に固定される環状部と、この環状部の周方向に間隔を置いて配置されるとともに互いに接近しながら螺旋状に起立する複数のアーム部と、当該アーム部の先端に連結されることで前記凹所の底面よりも上方に空間を設けて配置されるとともに前記受皿部材を収納する受皿収納部とからなり、
前記受皿収納部の周壁の上端に張り出し部が一体に設けられ、
複数の前記アーム部は、それぞれ前記環状部の下端内側から起立するとともに前記受皿収部の周壁の上端側において前記張り出し部の下端に連結されていることを特徴とするものである。
【0007】
なお、本発明において、「環状」とは、横断面形状が円形のものは勿論、横断面形状が矩形等のものも含み、横断面形状が周回して閉じられた形状のものであればよい。また、「螺旋状」とは、「渦巻き状」だけでなく、「弓なり状」等の単純に湾曲した形状のものも含む意味である。更に、衝撃吸収部材の環状部は、例えば、容器本体に設けた凹所の内周面に嵌合させることで、容器本体に対して固定することができるが、その固定手段については限定されない。
【0008】
本発明では、前記環状部及び前記容器本体にそれぞれ、互いに嵌合する凹部及び凸部からなる回り止め手段を設けることができる。なお、本発明において、「凹部」とは、単なる「凹み」だけでなく、「切り欠き部」や「溝」等も含む意味である。
【0009】
また、本発明では、前記容器本体に、前記環状部の上端に接触する張り出し部を有し当該張り出し部の内側にアームを覆うカバーを備えた中枠部材を設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、容器本体の凹所に固定した環状部から複数のアーム部を起立させるとともに、当該アーム部の先端に受皿収納部を連結することで、受皿収納部を凹所の底面に接触させることなく配置することができる。
【0011】
即ち、受皿部材は、衝撃吸収部材によって、凹所の上端開口は勿論、その内側面及び底面に対しても離間した状態に支持される。このため、容器本体からの衝撃は、衝撃吸収部材のアーム部を通して伝わるので、クッションのように空洞が潰れて受皿収納部が凹所の底面に接触することにより、受皿部材が容器本体からの衝撃を直接受けることがない。
【0012】
しかも、アーム部は、互いに接近しながら螺旋状に起立することから、容器本体が前後左右上下のいずれから衝撃を受けても、その衝撃はアーム部の螺旋形状によって吸収し又は分散させることができる。このため、受皿部材がアーム部を通して受ける衝撃も小さく抑えることができる。
【0013】
従って、本発明によれば、受皿部材が受ける衝撃を効果的に吸収することで、受皿部材に固定された固体物に亀裂や欠けを生じさせない新規なコンパクト容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の参考例の形態である、化粧用コンパクト容器を示す縦断面図である。
図2】同形態に係る、衝撃吸収部材を示す平面図である。
図3】同形態にて、衝撃吸収部材を容器本体に固定するための方法を説明するための要部断面斜視図である。
図4】本発明の第2の形態である、化粧用コンパクト容器を示す縦断面図である。
図5】同形態に係る、衝撃吸収部材を示す平面図である。
図6】同形態にて、衝撃吸収部材を容器本体に固定するための方法を説明するための要部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一形態である、化粧用コンパクト容器を詳細に説明する。
【0016】
図1は、参考例の形態である、化粧用コンパクト容器10である。符号11は、受皿部材である。受皿部材11は、横断面が円形の周壁11aの下端に底壁11bを一体に設け、その内側に、固体物たる固形化粧料Sを固定保持する。
【0017】
符号12は、容器本体である。容器本体12は、横断面が円形の周壁12aの下端に底壁12bを一体に設け、その内側には、受皿部材11を収納する凹所C1が形成されている。凹所C1は、周壁12aの内周面12f1から内側に膨出する複数の膨出部12cで形成されている。膨出部12cは、内周面12f1に沿って、その周方向に間隔を置いて配置されている。
【0018】
また図1中、符号13は、凹所C1の上端開口を開閉可能な蓋体である。蓋体13は、容器本体12に対してピンPを介して連結されている。蓋体13は、外蓋体13aと内蓋体13bからなる。内蓋体13bの内側には鏡19が固定されている。
【0019】
符号M1は、衝撃吸収部材である。衝撃吸収部材M1は、凹所C1の内側に固定される環状部14を有する。環状部14は、同図に示すように筒体部14aを有し、この筒体部14aを膨出部12cの内側面12f2に嵌合させることで、容器本体12に対して固定する。環状部14には、図2に示すように、周方向に間隔を置いて複数(本形態では4本)のアーム部15が一体に設けられている。アーム部15はそれぞれ、図1に示すように、筒体部14aの下端内側から互いに接近しながら螺旋状に起立する。アーム部15の先端には、受皿部材11を収納する受皿収納部16が一体に設けられている。
【0020】
受皿収納部16は、横断面が円形の周壁16aの下端に底壁16bを一体に設け、その内側には、図2に示すように、受皿部材11を収納する凹所C2が形成されている。アーム部15は、周壁16aの上端側に連結されている。これにより、受皿部材11は、アーム部15を介して容器本体12に対して弾性的に支持されている。
【0021】
参考例の形態では、図1に示すように、容器本体12の凹所C1に固定した環状部14から複数のアーム部15を起立させるとともに、当該アーム部15の先端に受皿収納部16を連結することで、受皿収納部16を凹所C1の底面12f3に接触させることなく配置することができる。
【0022】
即ち、受皿部材11は、衝撃吸収部材M1によって、凹所C1の上端開口は勿論、膨出部12cの内側面12f2及び底面12f3に対しても離間した状態に支持される。このため、容器本体12からの衝撃は、衝撃吸収部材M1のアーム部15を通して伝わるので、クッションのように空洞が潰れて受皿収納部16が凹所C1の底面12f2に接触することにより、受皿部材11が容器本体12からの衝撃を直接受けることがない。
【0023】
しかも、アーム部15は、互いに接近しながら螺旋状に起立することから、容器本体12が前後左右上下のいずれから衝撃を受けても、その衝撃はアーム部15の螺旋形状によって吸収し又は分散させることができる。このため、受皿部材11がアーム部15を通して受ける衝撃も小さく抑えることができる。
【0024】
従って、本形態によれば、受皿部材11が受ける衝撃を効果的に吸収することで、受皿部材11に固定された固形化粧料Sに亀裂や欠けを生じさせることがないコンパクト容器を提供することができる。
【0025】
ところで、本形態において、筒体部14aの上端には、図2に示すように、全周に亘って張り出し部14bが形成されている。この張り出し部14bには、切り欠き部14nが形成されている。また、張り出し部14bは、図3に示すように、膨出部12cの上端12eに載せ置かれている。
【0026】
一方、同図に示すように、膨出部12cの上端12eには、凸部12pが設けられている。衝撃吸収部材M1は、凸部12pが切り欠き部14nに合わさることで、容器本体12の凹所C1において、内側面12f2に沿って回転することがない。即ち、凸部12p及び切り欠き部14nは、衝撃吸収部材M1を位置決めする回り止め手段として機能する。
【0027】
また、本形態では、図1に示すように、容器本体12に、中枠部材17が設けられている。中枠部材17は、衝撃吸収部材M1の環状部14の上端14eに接触する張り出し部17aを有する。張り出し部17aは、同図に示すように、容器本体12の内周面12f1に嵌合させることで、容器本体12に対して固定する。これにより、衝撃吸収部材M1は、中枠部材17によって更に強固に固定される。
【0028】
また、張り出し部17aの内側には、アーム部15を覆うカバー17bが一体に設けられている。カバー17bは、張り出し部17aから受皿収納部16に向かって縮径しながら延在し、その内側が開口して受皿収納部16の上端開口を開口させる。カバー17bは、張り出し部17aとともに、アーム部15を外部からの接触や粉化した固形化粧料等から保護することで、アーム部15の耐久性を向上させる。
【0029】
また、張り出し部17aからは、筒壁部17cが上方に向かって拡径しながら延在し、その内側が開口して受皿収納部16の上端開口を外界に通じさせる。筒壁部17cには、同図に示すように、カバー17bとともに、その内側にパフ等の化粧道具Tを収納するための空間を形成する。また、筒壁部17cには、同図に示すように、蓋体13に設けたフック13fに引っ掛かって蓋体13の開放を阻止するフック17fとともに、これらフック13f及び17fの引っ掛かりを、その押し込みにより解除するフックピース18を設けることができる。
【0030】
図4は、本発明の形態である、化粧用コンパクト容器20である。なお、参考例の形態と同一又は略同一の部分は、同一符号をもってその説明を省略する。
【0031】
本形態において、凹所C1は、周壁12aの内周面12f1で形成されている。衝撃吸収部材M2の環状部14は筒体部14aのみからなる。衝撃吸収部材M2は、同図に示すように、環状部14(筒体部14a)を内周面12f1に嵌合させることで、容器本体12に対して固定する。受皿収納部16は、周壁16aの上端から周方向に全周に亘って張り出し部16cを一体に備え、この張り出し部16cの下端に3本のアーム部15の先端が連結されている。
【0032】
本形態では、図5に示すように、環状部14の外側面に、凸部14pが設けられている。凸部14pは、図6に示すように、環状部14の縦軸方向に全体に、又は、縦軸方向に局所的に、設けられている。
【0033】
一方、同図に示すように、容器本体12の内周面12f1には、縦溝12nが形成されている。縦溝12nは、凹所C1の縦軸方向に全体に、又は、縦軸方向に局所的に、形成されている。衝撃吸収部材M2は、凸部14pは縦溝12nに合わさることで、容器本体12の凹所C1において、内周面12f1に沿って回転することがない。即ち、縦溝12n及び凸部14pは、衝撃吸収部材M2を位置決めする回り止め手段として機能する。
【0034】
本形態では、参考例の形態に係る、衝撃吸収部材M1において、環状部14に設けた張り出し部14bを省略することで、コンパクト容器の薄肉化を図っている。同様に、本形態では、中枠部材17の筒壁部17cを短縮化することで、コンパクト容器の更なる薄肉化を図っている。また、形態に係る、コンパクト容器20では、蓋体13を外蓋体13aと内蓋体13bの二層構造とすることなく、単層構造とすることで、コンパクト容器の薄肉化を図っている。
【0035】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0036】
例えば、本形態では、図1図4に示すように、容器本体12の底壁12b及び受皿収納部16の底壁16bにそれぞれ、貫通孔A1及びA2が形成されている。貫通孔A1及びA2には、棒材を挿入することができる。棒材で受皿部材11を押圧すれば、受皿収納部16から受皿部材11を取り外すことができる。これにより、本形態に係る、コンパクト容器10及び20はそれぞれ、受皿部材11を受皿収納部16から着脱させることによって、新たな化粧料を収納した受皿部材を付替えるレフィル容器として機能する。
【0037】
特に容器本体12に形成した貫通孔A1は、容器本体12と蓋体13との間に外気を導入するため、容器本体12と蓋体13との間が密閉された場合に、その負圧によって生じる衝撃吸収部材M1,M2の機能低下を防止するのに有効である。また、蓋体13は、例えば、ピンPにねじりばねを設けることで、フックピース18を操作してフックを解除したのちは、自動的に開くように構成することができる。
【0038】
また、上述した各形態に採用された構成要素等は、互いに適宜組み合わせて用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、固体物を固定する受皿部材と、当該受皿部材を収納する凹所が形成された容器本体と、前記凹所の上端開口を開閉可能な蓋体とを備え、受皿部材と凹所との間に衝撃吸収部材が配置されるコンパクト容器であれば、様々なものに適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 コンパクト容器(第1の形態)
11 受皿部材
11a 周壁
11b 底壁
12 容器本体
12a 周壁
12b 底壁
12c 膨出部
12f1 容器本体周壁内周面
12f2 膨出部内側面
12f3 凹所底面
12n 縦溝(第2の回り止め手段)
12p 凸部(第1の回り止め手段)
13 蓋体
13f フック
14 環状部
14a 筒体部
14b 張り出し部
14n 切り欠き部(第1の回り止め手段)
14p 凸部(第2の回り止め手段)
15 アーム部
16 受皿収納部
16a 周壁
16b 底壁
17 中枠部材
17a 張り出し部
17b カバー
17c 筒壁部
17f フック
18 フックピース
19 鏡
20 コンパクト容器(第2の形態)
A1 貫通孔(容器本体)
A2 貫通孔(受皿収納部)
M1 衝撃吸収部材(第1の形態)
M2 衝撃吸収部材(第2の形態)
図1
図2
図3
図4
図5
図6