特許第5972593号(P5972593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972593
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】半導体電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20160804BHJP
   H02M 7/49 20070101ALI20160804BHJP
【FI】
   H02M7/48 F
   H02M7/49
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-26632(P2012-26632)
(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公開番号】特開2013-165555(P2013-165555A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】吉野 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】石塚 智嗣
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−146657(JP,A)
【文献】 特開2010−088162(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0026461(US,A1)
【文献】 特開平8−140267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力系統と交流電力系統の間に接続され、直流電力を交流電力、又は交流電力を直流電力に変換する半導体電力変換器を複数個電気的に接続し、前記各半導体電力変換器毎に、各々設けられる電圧指令値発生器からの電圧指令値に基づき得られるゲート信号を、前記各半導体電力変換器に与えるゲート制御器を備えた半導体電力変換装置において、
前記各電力変換器における交流電流信号又は交流電圧信号の合成値或いは前記各ゲート信号の合成値を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出し、この高調波成分を最小値とする共通の高調波補償制御器と、
を具備したことを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項2】
直流電力系統と交流電力系統の間に接続され、直流電力を交流電力、又は交流電力を直流電力に変換する半導体電力変換器を複数個電気的に直列接続し、前記各半導体電力変換器毎に、各々設けられる電圧指令値発生器からの電圧指令値に基づき得られるゲート信号を、前記各半導体電力変換器に与えるゲート制御器を備えた半導体電力変換装置において、
前記各電力変換器における交流電流信号又は交流電圧信号の合成値或いは前記各ゲート信号の合成値を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出し、この高調波成分を最小値とする共通の高調波補償制御器と、
を具備したことを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項3】
直流電力系統と交流電力系統の間に接続され、直流電力を交流電力、又は交流電力を直流電力に変換する半導体電力変換器を複数個電気的に並列接続し、前記各半導体電力変換器毎に、各々設けられる電圧指令値発生器からの電圧指令値に基づき得られるゲート信号を、前記各半導体電力変換器に与えるゲート制御器を備えた半導体電力変換装置において、
前記各電力変換器における交流電流信号又は交流電圧信号の合成値或いは前記各ゲート信号の合成値を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出し、この高調波成分を最小値とする共通の高調波補償制御器と、
を具備したことを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項4】
前記共通の高調波補償制御器は、
前記各電力変換器における交流電流信号又は交流電圧信号の合成値或いは前記各ゲート信号の合成値を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出する共通の高調波成分抽出器と、
前記高調波成分抽出器で抽出した高調波成分を最小にするための補正用電圧指令値を求める共通の補償器と、
前記電圧指令値発生器からの電圧指令値に、前記共通の補償器で求めた補正用電圧指令値をそれぞれ加算した加算値を前記ゲート制御器の電圧指令値とする複数の加算器と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の半導体電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体電力変換器を直列接続又は並列接続した多重半導体電力変換装置及び単数の半導体電力変換器を接続した半導体電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、出力側に絶縁変圧器が接続されていない第1のインバータの出力電圧に、少なくとも1台以上の第2インバータの出力電圧を絶縁変圧器を介して加算し、前記第1及び第2のインバータの各出力電圧を合成して得られた交流電力を負荷に供給するための多重インバータ制御装置において、前記第1のインバータ(例えば高調波を多く発生するもの)の出力電圧を検出する電圧検出器と、前記第1のインバータの出力電圧に含まれるリップル電圧に基づいて前記第2のインバータに対する電圧基準値を補正する補正手段を設け、前記第2のインバータの出力電圧により、前記第1のインバータの出力電圧に含まれるリップル電圧を相殺するようにした点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−70472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に記載の発明にあっては、次の問題点が挙げられる。
【0005】
(1)直列多重接続構成において、全段のインバータの中で特定のインバータから発生する高調波のみを抑制するための制御方式であり、全段のインバータを合成した出力を補償するものではない。
【0006】
(2)インバータ1台あるいはインバータの並列多重接続の構成における高調波抑制方式については触れられていない。
【0007】
本発明は、交流電流に含まれる高調波の抑制を図ることができる半導体電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、直流電力系統と交流電力系統の間に接続され、直流電力を交流電力、又は交流電力を直流電力に変換する半導体電力変換器を複数個電気的に接続し、前記各半導体電力変換器毎に、各々設けられる電圧指令値発生器からの電圧指令値に基づき得られるゲート信号を、前記各半導体電力変換器に与えるゲート制御器を備えた半導体電力変換装置において、前記各電力変換器における交流電流信号又は交流電圧信号の合成値或いは前記各ゲート信号の合成値を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出し、この高調波成分を最小値とする共通の高調波補償制御器と、
を具備した半導体電力変換装置である。
【0009】
前記目的を達成するため、請求項2に対応する発明は、直流電力系統と交流電力系統の間に接続され、直流電力を交流電力、又は交流電力を直流電力に変換する半導体電力変換器を複数個電気的に直列接続し、前記各半導体電力変換器毎に、各々設けられる電圧指令値発生器からの電圧指令値に基づき得られるゲート信号を、前記各半導体電力変換器に与えるゲート制御器を備えた半導体電力変換装置において、前記各電力変換器における交流電流信号又は交流電圧信号の合成値或いは前記各ゲート信号の合成値を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出し、この高調波成分を最小値とする共通の高調波補償制御器と、を具備した半導体電力変換装置である。
【0010】
前記目的を達成するため、請求項3に対応する発明は、直流電力系統と交流電力系統の間に接続され、直流電力を交流電力、又は交流電力を直流電力に変換する半導体電力変換器を複数個電気的に並列接続し、前記各半導体電力変換器毎に、各々設けられる電圧指令値発生器からの電圧指令値に基づき得られるゲート信号を、前記各半導体電力変換器に与えるゲート制御器を備えた半導体電力変換装置において、前記各電力変換器における交流電流信号又は交流電圧信号の合成値或いは前記各ゲート信号の合成値を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出し、この高調波成分を最小値とする共通の高調波補償制御器と、を具備した半導体電力変換装置である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の多重半導体電力変換装置の第1の実施形態の概略を示す回路図。
図2】本発明の多重半導体電力変換装置の第2の実施形態の概略を示す回路図。
図3】本発明の多重半導体電力変換装置の第3の実施形態の概略を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の多重半導体電力変換装置の第1の実施形態を示す回路図で、直流電力系統例えばバッテリ1と交流電力系統又は負荷2の間に接続され、直流電力を交流電力に変換する半導体電力変換器(例えば4個の半導体素子がブリッジ接続されたもの)31、32…3Nを複数個電気的に直列接続し、各半導体電力変換器31、32…3N毎に、電圧指令値発生器41、42…4Nからの電圧指令値に基づき得られるゲート信号を与えるゲート制御器(例えばPWM制御器)51、52…5Nを備え、半導体電力変換器31、32…3Nと交流電力系統又は負荷2の間に絶縁変圧器61、62…6Nが接続された多重半導体電力変換装置において、以下の構成を具備したものである。
【0013】
各電力変換器31、32…3Nにおける交流電流信号又は交流電圧信号の合成値或いは各ゲート信号の合成値を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出し、この高調波成分を最小値とする高調波補償制御器7を具備したものである。
【0014】
高調波補償制御器7は、具体的には各電力変換器31、32…3Nにおける交流電流信号を検出する電流検出器11又は交流電圧信号を検出する電圧検出器12或いは各ゲート信号を検出するゲート信号検出器131、132…13Nと、前記電流検出器11又は前記電圧検出器12或いは前記ゲート信号検出器131、132…13Nの検出値に含まれる高調波成分を抽出する高調波成分抽出器8と、高調波成分抽出器8で抽出した高調波成分を最小にするための補正用電圧指令値を求める補償器9と、電圧指令値発生器41、42…4Nからの電圧指令値に、前記補償器で求めた補正用電圧指令値を加算した加算値をゲート制御器51、52…5Nの電圧指令値とする加算器101、102…10Nとを備えたものである。
【0015】
以上述べた本発明の多重半導体電力変換装置の実施形態によれば、各電力変換器31、32…3Nの出力合成値、具体的には交流電流(出力電流)、交流電圧(出力電圧)、ゲート信号に含まれる高調波成分を高調波成分抽出器8により抽出し、この抽出した高調波成分が補償器9に入力され、ここで抽出した高調波成分を最小値とする補正用電圧指令値を出力し、この補正用電圧指令値を加算器101、102…10Nにより電圧指令値発生器41、42…4Nからの電圧指令値にそれぞれ加算され、この加算された電圧指令値がゲート制御器(例えばPWM制御器)51、52…5Nに与えられる。この結果、高調波補償が可能となる。
【0016】
図2は本発明の多重半導体電力変換装置の第2の実施形態を示す回路図で、直流電力系統例えばバッテリ1と交流電力系統又は負荷2の間に接続され、直流電力を交流電力に変換する半導体電力変換器(例えば4個の半導体素子がブリッジ接続されたもの)31、32…3Nを複数個電気的に並列接続し、各半導体電力変換器31、32…3N毎に、電圧指令値発生器41、42…4Nからの電圧指令値に基づき得られるゲート信号を与えるゲート制御器(例えばPWM制御器)51、52…5Nを備え、半導体電力変換器31、32…3Nと交流電力系統又は負荷2の間にリアクトル141、142…14Nが接続された多重半導体電力変換装置において、前述の図1の実施形態と同様に、各電力変換器31、32…3Nにおける交流電流信号又は交流電圧信号の合成値或いは各ゲート信号の合成値を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出し、この高調波成分を最小値とする高調波補償制御器7を具備したものである。
【0017】
高調波補償制御器7は、具体的には各電力変換器31、32…3Nにおける交流電流信号を検出する電流検出器11又は交流電圧信号を検出する電圧検出器12或いは各ゲート信号を検出するゲート信号検出器131、132…13Nと、前記電流検出器11又は前記電圧検出器12或いは前記ゲート信号検出器131、132…13Nの検出値に含まれる高調波成分を抽出する高調波成分抽出器8と、高調波成分抽出器8で抽出した高調波成分を最小にするための補正用電圧指令値を求める補償器9と、電圧指令値発生器41、42…4Nからの電圧指令値に、前記補償器で求めた補正用電圧指令値を加算した加算値をゲート制御器51、52…5Nの電圧指令値とする加算器101、102…10Nとを備えたものである。
【0018】
以上述べた本発明の多重半導体電力変換装置の実施形態によれば、各電力変換器31、32…3Nの出力合成値、具体的には交流電流(出力電流)、交流電圧(出力電圧)、ゲート信号に含まれる高調波成分を高調波成分抽出器8により抽出し、この抽出した高調波成分が補償器9に入力され、ここで抽出した高調波成分を最小値とする補正用電圧指令値を出力し、この補正用電圧指令値を加算器101、102…10Nにより電圧指令値発生器41、42…4Nからの電圧指令値にそれぞれ加算され、この加算された電圧指令値がゲート制御器(例えばPWM制御器)51、52…5Nに与えられる。この結果、図2の実施形態によれば高調波補償が可能となる。図1及び図2の実施形態によれば、各電力変換器の回路構成に依存せず、直列多重接続と並列多重接続方式の両方で高調波補償が可能である。
【0019】
図3は本発明の多重半導体電力変換装置の第3の実施形態を示す回路図で、直流電力系統例えばバッテリ1と交流電力系統又は負荷2の間に接続され、直流電力を交流電力に変換する例えば三相半導体電力変換器3を接続し、半導体電力変換器3、電圧指令値発生器4からの電圧指令値に基づき得られるゲート信号を与えるゲート制御器(例えばPWM制御器)5を備え、半導体電力変換器3と交流電力系統又は負荷2の間にリアクトル14が接続された半導体電力変換装置において、以下の構成を具備したものである。
【0020】
電力変換器3における交流電流信号又は交流電圧信号或いはゲート信号を検出し、この検出値に含まれる高調波成分を抽出し、この高調波成分に対して高い補償ゲインを持つ高調波補償制御器7を具備したものである。
【0021】
高調波補償制御器7は、具体的には電力変換器3における交流電流信号を検出する電流検出器11又は交流電圧信号を検出する電圧検出器12或いはゲート信号を検出するゲート信号検出器13と、前記電流検出器11又は前記電圧検出器12或いは前記ゲート信号検出器13の検出値に含まれる高調波成分を抽出する高調波成分抽出器8と、高調波成分抽出器8で抽出した高調波成分を打消す高い補償ゲインを持つ補償器9と、電圧指令値発生器4からの電圧指令値に、前記補償器の高い補償ゲインで求めた補正用電圧指令値を加算した加算値をゲート制御器5の電圧指令値とする加算器10とを備えたものである。
【0022】
以上述べた本発明の第3の実施形態によれば、高調波補償器9で演算した高調波補償電圧指令値を、加算器10により従来のゲート制御器5の電圧指令値に加算したので、電流検出器11又は電圧検出器12或いはゲート信号検出器13の検出値に含まれる高調波成分を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
前述の図1の実施形態の電力変換装置は複数個の単相ブリッジを直列多重化した単相電力変換装置であるが、これを複数の単相ブリッジを三相結線した三相電力変換装置及び三相ブリッジを複数個直列多重化した三相電力変換装置であってもよい。
【0024】
前述の図2の実施形態の電力変換装置は複数個の単相ブリッジを並列多重化した単相電力変換装置であるが、これを複数の単相ブリッジを三相結線した三相電力変換装置及び三相ブリッジを複数個並列多重化した三相電力変換装置であってもよい。
【0025】
前述の実施形態では、各電力変換器はインバータの場合について説明したが、コンバータの場合であっても前述の実施形態と同様に実施できる。
【符号の説明】
【0026】
1…バッテリ、2…交流電力系統又は負荷、3、31、32…3N…半導体電力変換器、4、41、42…4N…電圧指令値発生器、5、51、52…5N…ゲート制御器例えばPWM制御器、61、62…6N…絶縁変圧器、7…高調波補償制御器、8…高調波成分抽出器、9…高調波補償器、10、101、102…10N…加算器、11…電流検出器、12…電圧検出器、13、131.132…13N…ゲート信号検出器、14、141、142…14N…リアクトル。
図1
図2
図3