(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散媒としてシリコーン系オイルを含み、前記中性極性基及び疎水性基を有する化合物が前記疎水性基としてシロキサン結合を含む基を有する請求項1又は請求項2に記載の電気泳動表示用分散液。
前記分散媒として炭化水素系オイルを含み、前記中性極性基及び疎水性基を有する化合物が前記疎水性基としてアルキル基を有する請求項1又は請求項2に記載の電気泳動表示用分散液。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る電気泳動表示用分散液並びにそれを用いた表示媒体及び表示装置の一例について説明する。
【0014】
<電気泳動表示用分散液>
本実施形態に係る電気泳動表示用分散液(適宜「表示用分散液」と記す。)は、分散媒と、前記分散媒中に分散し、電界に応じて前記分散媒中を泳動する有色の泳動粒子群と、前記分散媒中で泳動せずに分散し、前記泳動粒子群とは異なる色を有する非泳動粒子群と、前記分散媒中に分散液全体に対して0.01質量%以上1質量%以下で含まれ、中性極性基及び疎水性基を有する化合物と、を含んで構成される。
【0015】
本発明者らは、中性極性基及び疎水性基を有する化合物が、分散液全体に対して0.01質量%以上1質量%以下の割合で分散媒に含まれる表示用分散液であれば、非泳動粒子群の非泳動性が保たれたまま逆極性の泳動粒子の比率が低下することを見出した。
その理由は定かでないが、以下のように推測される。
【0016】
電気泳動式の表示装置で用いる表示用分散液は、一種以上の有色の泳動粒子群を含み、同じ色の泳動粒子群には同じ極性を持たせて電圧の印加により表示側又は背面側に移動させることで表示を行う。ところが、通常、同じ色の泳動粒子群の一部は本来有すべき極性とは逆の極性を有する粒子が存在してしまう。このような本来とは逆の極性を有する泳動粒子の比率が高くなるほど、明表示時の反射率の低下や、コントラストが低下するなど表示性能の悪化を招くことになる。
【0017】
しかし、中性極性基及び疎水性基を有する化合物が表示用分散液中に一定の割合で含まれていることで、非泳動粒子群の非泳動性にはほとんど影響を与えず、中性極性基及び疎水性基を有する化合物が逆極性の泳動粒子に電荷を与えて本来有するべき極性に整えるものと推測される。
【0018】
図1は、本実施形態に係る電気泳動表示用分散液を用いた表示装置の一例を示している。
図1に示す表示装置10は、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加し表示媒体12の表示基板20と背面基板22との間に電界を形成する電圧印加部16と、を備えて構成されている。なお、
図1では、表示媒体12の一部(1つのセル)を拡大して示している。
【0019】
表示媒体12は、表示側支持基板38と、背面側支持基板44と、表示側電極40と、背面側電極48と、間隔部材24と、を備え、表示側支持基板38と表示側電極40が表示基板20を構成し、背面側支持基板44と背面側電極48とが背面基板22を構成する。
そして、一対の基板20,22及び間隔部材24で囲まれた閉空間であるセル内(一対の電極40,48間の領域内)に、分散媒50と、泳動粒子群34と、非泳動粒子群36と、中性極性基を有し、分散液全体に対して0.01質量%以上1質量%以下の割合で分散媒に溶解した化合物と、を含む本実施形態の電気泳動表示用分散液が充填されて構成されている。
【0020】
表示側支持基板38は、画像表示面とされ、透光性(具体的一例として、可視光の透過率が70%以上)を有している。
非表示面とされる背面側支持基板44は、表示側支持基板38と対向して間隙をもって配置されている。なお、背面側支持基板44は必ずしも透光性を有する必要はない。
【0021】
表示側支持基板38及び背面側支持基板44を構成する材料としては、例えば、ガラスや、プラスチック、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0022】
表示側支持基板38及び背面側支持基板44の内側(対向する側)には、それぞれ表示側電極40及び背面側電極48が設けられている。
表示側電極40及び背面側電極48を構成する材料としては、例えば、インジウム・スズ・カドミウム・アンチモン等の酸化物、ITO等の複合酸化物、金・銀・銅・ニッケル等の金属、ポリピロールやポリチオフェン等の有機材料等が挙げられる。これらの材料は、例えば、単層膜、混合膜あるいは複合膜として電極40,48を構成する。
【0023】
表示側電極40及び背面側電極48の厚さは、例えば、10nm以上500nm以下である。
表示側電極40及び背面側電極48は、例えば、マトリックス状、又はストライプ状に形成されていてもよい。
【0024】
表示側電極40及び背面側電極48は、電圧印加部16に電気的に接続されている。
また、電圧印加部16は、制御部18に信号授受されるように接続されている。
【0025】
制御部18は、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、装置全体を制御する制御プログラム等の各種プログラムが予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、を含むマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。
【0026】
電圧印加部16は、制御部18の制御に応じた電圧を表示側電極40及び背面側電極48に印加するためのするための機能を有する。電圧印加部16によって電圧を表示側電極40及び背面側電極48間に印加することにより、表示側電極40及び背面側電極48との間に電界が形成される。
【0027】
表示装置10の電圧印加部16は、表示媒体12(表示側電極40及び背面側電極48)と切り離し可能に接続されていてもよい。この場合では、例えば、表示媒体12の書き換えや表示が必要な時に、表示媒体12を電圧印加部16に接続して画像情報の表示を行い、保存時は互いに切り離しておいて表示媒体12の可搬性をよくするように構成される。
【0028】
なお、本実施形態の表示媒体12は、表示側電極40及び背面側電極48を備え、両者共が電圧印加部16に接続されている構成としているが、これに限らず、例えば、表示側電極40及び背面側電極48の一方が接地され、他方が電圧印加部16に接続されるように構成してもよい。
【0029】
また、表示側電極40及び背面側電極48を保護するため、フッ素樹脂等により各電極40,48を覆う表面層を設けてもよい。
【0030】
表示基板20と背面基板22との間(表示側電極40と背面側電極48との間)は、間隔部材24により、複数の閉空間(セル)に区画されている。間隔部材24は、表示基板20と背面基板22との基板間の間隔を保持する機能と、表示基板20と背面基板22との基板間の間隙を複数に区画する機能とを有している。
【0031】
間隔部材24の構成材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化樹脂、ゴム、金属等が挙げられる。
【0032】
間隔部材24は、有色でも無色でもよいが、表示媒体12に表示される表示画像に悪影響を及ぼさないように無色透明であることが望ましく、その場合には、例えば、ポリスチレンやポリエステルやアクリルなどの透明樹脂等が使用される。なお、ここで「透明」とは、可視光に対して50%以上の透過率を有することを指している。
【0033】
−分散媒−
分散媒50としては、例えば、絶縁性液体が挙げられる。本実施形態で絶縁性とは、具体的一例として、体積抵抗値が10
7Ω・cm以上である場合を指している。
【0034】
分散媒としては、シリコーン系オイル、炭化水素系オイルが挙げられ、具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどのシリコーン系オイルや、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのパークロロアルカン類、パーフルオロヘキサン、パーフルオクタン、パーフルオロデカンなどのパーフルオロアルカン類、高純度石油、などの炭化水素系オイルなどや、それらの混合物が好適に挙げられる。
【0035】
分散媒50の体積抵抗値としては、例えば、10
7Ω・cm以上であることがよく、望ましくは10
7Ω・cm以上10
19Ω・cm以下であり、より望ましくは10
10Ω・cm以上10
19Ω・cm以下である。この範囲の体積抵抗値とすることで、泳動粒子群34に電界が印加され、かつ、電極反応に起因する分散媒50の電気分解による気泡の発生が抑制される。
【0036】
−泳動粒子群−
泳動粒子群34は、複数の泳動粒子から構成され、それぞれ正又は負に帯電されており、分散媒50中で、電気泳動性を有し、非泳動粒子群36と異なる色を有する固体粒子群である。すなわち、分散媒50中で正または負の大きい電荷を有し、表示側電極40と背面側電極48との間に(すなわち、表示基板20と背面基板22との基板間に)発生した電界の向き及び強度に応じて分散媒50中を移動する移動距離が非泳動粒子群36に比べて非常に大きい粒子である。
なお、泳動粒子群34の色は非泳動粒子群36と異なる色であればよく、その色は特には限定されない。
表示媒体12における表示色の変化は、この泳動粒子群34を構成する各泳動粒子の分散媒50中の移動によって生じる。
【0037】
泳動粒子群34の各泳動粒子としては、ガラスビーズ、アルミナ、酸化チタン等の絶縁性の金属酸化物粒子等、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂粒子、これらの樹脂粒子の表面に着色剤を固定したもの、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂中に着色剤を含有する粒子、及びプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子等が挙げられる。
【0038】
泳動粒子の製造に使用される熱可塑性樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体あるいは共重合体が例示される。
【0039】
また、泳動粒子の製造に使用される熱硬化性樹脂としては、ジビニルベンゼンを主成分とする架橋共重合体や架橋ポリメチルメタクリレート等の架橋樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0040】
着色剤としては、有機若しくは無機の顔料や、油溶性染料等を使用することができ、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして例示される。
【0041】
泳動粒子の樹脂には、必要に応じて、帯電制御剤を混合してもよい。帯電制御剤としては、電子写真用トナー材料に使用される公知のものが使用でき、例えば、セチルピリジルクロライド、BONTRON P−51、BONTRON P−53、BONTRON E−84、BONTRON E−81(以上、オリエント化学工業社製)等の第4級アンモニウム塩、サリチル酸系金属錯体、フェノール系縮合物、テトラフェニル系化合物、酸化金属粒子、各種カップリング剤により表面処理された酸化金属粒子が挙げられる。
【0042】
泳動粒子の表面には、必要に応じて、外添剤を付着させてもよい。外添剤の色は、泳動粒子の色に影響を与えないように、透明であることが望ましい。
【0043】
外添剤としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物等の無機粒子が用いられる。粒子の帯電性、流動性、及び環境依存性等を調整するために、これらをカップリング剤やシリコーンオイルで表面処理してもよい。
【0044】
カップリング剤には、アミノシラン系カップリング剤、アミノチタン系カップリング剤、ニトリル系カップリング剤等の正帯電性のものと、窒素原子を含まない(窒素以外の原子で構成される)シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、エポキシシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤等の負帯電性のものがある。また、シリコーンオイルには、アミノ変性シリコーンオイル等の正帯電性のものと、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α−メチルスルホン変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等の負帯電性のものが挙げられる。これらは外添剤の所望の抵抗に応じて選択される。
【0045】
上記外添剤の中では、よく知られている疎水性シリカや疎水性酸化チタンが望ましく、特に特開平10−3177記載のTiO(OH)
2と、シランカップリング剤等のシラン化合物との反応で得られるチタン化合物が好適である。シラン化合物としては、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤のいずれのタイプが挙げられる。このチタン化合物は、湿式工程の中で作製されるTiO(OH)
2にシラン化合物あるいはシリコーンオイルを反応、乾燥させて作製される。数百度という焼成工程を通らないため、Ti同士の強い結合が形成されず、凝集が全くなく、泳動粒子は一次粒子の状態である。さらに、TiO(OH)
2にシラン化合物あるいはシリコーンオイルを直接反応させるため、シラン化合物やシリコーンオイルの処理量を多くすることができて、シラン化合物の処理量等を調整することにより帯電特性を制御でき、且つ付与される帯電能も従来の酸化チタンのそれより顕著に改善される。
【0046】
外添剤の一次粒子は、一般的には1nm以上100nm以下であり、5nm以上50nm以下であることがより良いが、これに限定されない。
【0047】
外添剤と泳動粒子の配合比は泳動粒子の粒径と外添剤の粒径の兼ね合いから調整される。外添剤の添加量が多すぎると泳動粒子表面から該外添剤の少なくとも一部が遊離し、これが他方の泳動粒子の表面に付着して、所望の帯電特性が得られなくなる。一般的には、外添剤の量は、泳動粒子100質量部に対して、0.01質量部以上3質量部以下、また0.05質量部以上1質量部以下であることがより望ましい。
【0048】
色が異なる複数種類の泳動粒子を用いる場合、外添剤は、複数種類の泳動粒子のいずれか1種にだけ添加してもよいし、複数種又は全種類の泳動粒子へ添加してもよい。
全泳動粒子の表面に外添剤を添加する場合は、泳動粒子表面に外添剤を衝撃力で打込んだり、泳動粒子表面を加熱して外添剤を泳動粒子表面に固着したりすることが望ましい。これにより、外添剤が泳動粒子から遊離し、異極性の外添剤が強固に凝集して、電界で解離させることが困難な外添剤の凝集体を形成することが防止され、ひいては画質劣化が防止される。
【0049】
泳動粒子群34は、形成する画像に応じた色の粒子群であればよい。泳動粒子群34は、例えば、一種類(一色)であってもよいし、複数種類(複数色、例えば、Y:イエロー、C:シアン、M:マゼンタ)であってもよい。
【0050】
泳動粒子群34としては、例えば、ガラスビーズ、アルミナ、酸化チタン等の絶縁性の金属酸化物粒子等、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂粒子、これらの樹脂粒子の表面に着色剤を固定したもの、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂中に絶縁性の着色剤を含有する粒子、及びプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子等が挙げられる。
【0051】
泳動粒子群34を構成する樹脂には、例えば、必要に応じて、帯電性を制御する帯電制御剤を混合してもよい。また、泳動粒子群34の内部や表面には、必要に応じて、磁性材料を混合してもよい。また、泳動粒子群34の表面には、必要に応じて、外添剤を付着させてもよい。
【0052】
泳動粒子群34を作製する方法としては、従来公知の方法が挙げられる。
例えば、特開平7−325434公報記載のように、樹脂、顔料及び帯電制御剤を目的とする混合比になるように計量し、樹脂を加熱溶融させた後に顔料を添加して混合、分散させ、冷却した後、ジェットミル、ハンマーミル、ターボミル等の粉砕機を用いて粒子を調製し、得られた粒子をその後分散媒に分散する方法が使用される。
また、懸濁重合、乳化重合、分散重合等の重合法やコアセルベーション、メルトディスパージョン、エマルジョン凝集法で帯電制御剤を粒子中に含有させた粒子を調製し、その後分散媒に分散して粒子分散媒を作製してもよい。
さらにまた、樹脂が可塑性を有しており、分散媒が沸騰せず、かつ、樹脂、帯電制御剤及び着色剤の少なくとも一方の分解点よりも低温で、前記の樹脂、着色剤、帯電制御剤及び分散媒の原材料を分散及び混錬する適当な装置を用いる方法がある。具体的には、流星型ミキサー、ニーダー等で顔料と樹脂、帯電制御剤を分散媒中で加熱溶融し、樹脂の溶媒溶解度の温度依存性を利用して、溶融混合物を撹拌しながら冷却し、凝固/析出させて粒子を作製する。
【0053】
さらにまた、分散及び混練のための粒状メデイアを装備した適当な容器、例えばアトライター、加熱したボールミル等の加熱された振動ミル中に上記の原材料を投入し、この容器を望ましい温度範囲、例えば80℃以上160℃以下で分散及び混練する方法を使用してもよい。粒状メデイアとしては、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼、アルミナ、ジルコニア、シリカ等が望ましく用いられる。この方法によって泳動粒子を作製するには、あらかじめ流動状態にした原材料をさらに粒状メデイアによって容器内に分散させた後、分散媒を冷却して分散媒から着色剤を含む樹脂を沈殿させる。粒状メデイアは冷却中及び冷却後にも引き続き運動状態を保ちながら、剪断及び/又は、衝撃を発生させ粒子径を小さくする。
【0054】
泳動粒子群34の含有量(セル中の全質量に対する含有量(質量%))は、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、セルの厚さ(すなわち、表示基板20と背面基板22との基板間の距離)により含有量を調整することが、表示媒体12としては有効である。即ち、所望の色相を得るために、セルが厚くなるほど含有量は少なくなり、セルが薄くなるほど含有量は多くなる。一般的には、0.01質量%以上50質量%以下である。
【0055】
泳動粒子群34の各粒子の体積平均粒径としては、例えば、0.1μm以上20μm以下が挙げられる。ここで、各泳動粒子の体積平均粒径は、SEMまたはTEM画像によって測定される値である。
なお、色が異なる泳動粒子群34を2種以上含む場合は、各粒子群の泳動粒子の粒径は異なってもよいし、同じでもよい。
【0056】
−非泳動粒子群−
非泳動粒子群36は泳動粒子群34とは異なる色を有し、分散媒50中で電気泳動性を有しない固体粒子群である。すなわち、非泳動粒子群36は、分散媒50中で電荷を有しないか、あるいは正または負の小さい電荷を有するが、表示側電極40と背面側電極48との間に発生した電界により分散媒50中を移動しないか、あるいは移動した場合でも、平均的な移動距離が泳動粒子群34に比べて非常に小さいため泳動(移動)していないとみなせる粒子群である。
【0057】
表示基板20と背面基板22(表示側電極40と背面側電極48)との間に発生した電界により、泳動粒子群34の各粒子が非泳動粒子群36の間隙を通って、背面基板22側から表示基板20側、又は表示基板20側から背面基板22側へ泳動(移動)することにより表示が行われる。
【0058】
非泳動粒子群36を構成する各非泳動粒子の色は、泳動粒子群34の各泳動粒子の色とは異なる色であればよい。例えば、背景色となるように白色又は黒色を選択することがよいが、その他の色であってもよい。また、非泳動粒子群36は分散媒50中で移動しないか、あるいは移動した場合でも、平均的な移動距離が泳動粒子群34に比べて非常に小さいため泳動(移動)していないとみなせる粒子固体粒子群であればよく、分散媒50中で電荷を有しない粒子群(つまり電界に応じて移動しない粒子群)であってもよいし、正または負の小さい電荷を有する粒子群(電界に応じてわずかに移動する粒子群)であってもよい。
【0059】
非泳動粒子群36を白色の粒子で構成する場合、構成材料としては、例えば、白色顔料(例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)を、樹脂(例えばポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド縮合物等)に分散した粒子や、ポリスチレン、ポリエチレン、ビニルナフタレン等の樹脂粒子等が挙げられる。
また、非泳動粒子群36の粒子として、白色以外の粒子を適用する場合、例えば、所望の色の顔料、あるいは染料を内包した前記した樹脂粒子を使用してもよい。顔料や染料は、例えばRGBやYMC色であれば、印刷インキやカラートナーに使用されている一般的な顔料又は染料が挙げられる。
【0060】
非泳動粒子群36の各粒子の体積平均粒径としては、例えば、0.1μm以上20μm以下が挙げられる。各非泳動粒子の体積平均粒径は、SEMまたはTEM画像によって測定される値である。
【0061】
画像を形成する場合は、電圧印加部16が表示側電極40及び背面側電極48に形成する画像に応じて電圧を印加し、これによりセル内に発生した電界に応じて画像を形成する位置に応じた表示基板20側に泳動粒子群34が位置されることにより画像が形成される。一方、泳動粒子群34が背面基板22側に位置される部分(非画像形成部分)では、非泳動粒子群36により白色の背景が表示された状態となる。
【0062】
−中性極性基及び疎水性基を有する化合物−
本実施形態に係る電気泳動表示用分散液に含まれる中性極性基及び疎水性基を有する化合物は、分散媒に溶解し、分散液全体に対して、0.01質量%以上1質量%以下の割合で添加することで、泳動粒子群のうち、本来の極性とは逆極性を有する泳動粒子の比率を低下させるとともに、非泳動粒子を泳動粒子に変化させないものであれば特に限定されない。
なお、本実施形態における中性極性基とは、非酸性かつ非塩基性極性基を意味する。中性極性基として、具体的には、水酸基、アルキルエーテル基、弱塩基で中和された弱酸基、又は弱酸基で中和された弱塩基性基が挙げられる。
【0063】
表示用分散液中の上記中性極性基及び疎水性基を有する化合物の含有量が、0.01質量%未満では泳動電子の極性を整える効果が得られず、1.0質量%を超えると極性の悪化や粘度上昇を招き、表示特性を低下させることになる。
【0064】
本実施形態で用いられる中性極性基及び疎水性基を有する化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
(水酸基を有する化合物)
水酸基を有する化合物としては、例えば、疎水性基がシリコーンを含む基である例としては、直鎖型シリコーンオイルの片末端に水酸基を有するカルビノール変性シリコーンX−22−170DX(信越シリコーン社製)、両末端に水酸基を有するカルビノール変性シリコーンX−22−160AS(信越シリコーン社製),側鎖に水酸基を有するカルビノール変性シリコーンX−22−4039(信越シリコーン社製)などが挙げられる。また、疎水性基がアルキル基の例として、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノールなどの高級アルコールなどが挙げられる。
【0066】
(アルキルエーテル基を有する化合物)
アルキルエーテル基を有する化合物としては、例えば、直鎖型シリコーンオイルの側鎖にポリエーテル鎖を有するポリエーテル変性シリコーンKF−6017(信越シリコーン社製)、分岐型シリコーンオイルの側鎖にポリエーテル鎖を有するKF−6028(信越シリコーン社製)、分岐型シリコーンオイルの側鎖にポリエーテル鎖とアルキル鎖を有するKF−6038(信越シリコーン社製)などが挙げられる。
また、疎水性基がアルキル基の例として、
ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル類、
ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンエーテル等のポリオキシアルキレンエーテル類、
モノオールタイプのポリオキシアルキレングリコール、ジオールタイプのポリオキシアルキレングリコール、トリオールタイプのポリオキシアルキレングリコール等のグリコール類、
オクチルフェノールエトキシレート等の第1級直鎖アルコールエトキシレート及び、第2級直鎖アルコールエトキシレート等のアルキルアルコールエーテル類、
ポリオキシエチレンラウリルエステル等のポリオキシアルキレンアルキルエステル類、
ソルビタンモノラウレイト、ソルビタンジラウレイト、ソルビタンセスキパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル類、
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレイト、ポリオキシエチレンソルビタンジラウレイト、ポリオキシエチレンソルビタンセスキラウレイト等のポリオキシエチレンソルビタンエステル類、
などが挙げられる。
【0067】
(弱塩基で中和された弱酸基を有する化合物)
弱塩基で中和された弱酸基を有する化合物としては、例えば、カルボキシル基を含有するポリシロキサンをアミンで中和して得られる塩が挙げられる。
上記カルボキシル基含有ポリシロキサンとしては、例えば、下記式(I)で示される構造を有するものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0069】
式(I)中、R
1はHまたはMeを示し、R
2は、(CH
2)
m(ただし、mはゼロ以上20以下の整数)を示し、nは1以上100以下の整数を示す。
【0070】
また、上記アミンとしては以下の式(II−1)乃至(II−5)で示されるものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
より具体的には、直鎖型シリコーンオイルの片末端にカルボン酸基を有する、カルボン酸変性シリコーンX−22−3710(信越シリコーン社製)のトリエチルアミン塩、カルボン酸変性シリコーンX−22−3710の上記式(II−3)で示されるアミン塩が挙げられる。直鎖型シリコーンオイルの側鎖にカルボン酸基を有する、カルボン酸変性シリコーンX−22−3701(信越シリコーン社製)のトリエチルアミン塩、直鎖型シリコーンオイルの両末端にカルボン酸基を有する、カルボン酸変性シリコーンX−22−162C(信越シリコーン社製)のトリエチルアミン塩、などが挙げられる。
また、シリコーン系以外のものとして、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸などの長鎖脂肪酸の、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩やトリブチルアミン塩などのトリアルキルアミン塩トリエタノールアミン塩などのトリアルカノールアミン塩などが挙げられる。
【0073】
(弱酸基で中和された弱塩基性基を有する化合物)
弱酸基で中和された弱塩基性基を有する化合物としては、例えば、アミノ変性シリコーンKF−868(信越シリコーン社製)の酢酸塩、ギ酸塩などのカルボン酸塩などが挙げられる。
中性極性基及び疎水性基を有する化合物の、疎水性基としては、アルキル基、フルオロアルキル基などのハロゲン化アルキル基、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンなどのシリコーン鎖を有するシリコーン基などが挙げられる。
【0074】
表示用分散液全体に対する中性極性基及び疎水性基を有する化合物の含有量は、当該化合物、分散媒、泳動粒子、非泳動粒子のそれぞれの種類にもよるが、0.01質量%以上1質量%以下が望ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がさらに望ましい。
【0075】
なお、粒子の凝集を抑制する観点から、分散媒50としてシリコーン系オイルを用いる場合は、中性極性基及び疎水性基を有する化合物は疎水性基としてシロキサン結合を含む基を有するものが望ましい。一方、分散媒50として炭化水素系オイルを用いる場合は、中性極性基及び疎水性基を有する化合物は疎水性基としてアルキル基を有するものが望ましい。
【0076】
本実施形態の表示媒体12及び表示装置10は、画像の保存及び書き換えの可能な掲示板、回覧板、電子黒板、広告、看板、点滅標識、電子ペーパー、電子新聞、電子書籍、及び複写機等と共用されるドキュメントシート等に使用される。
【0077】
なお、本実施形態で説明した表示装置10及び表示媒体12の構成、分散媒50、泳動粒子群34、及び非泳動粒子群36の構成材料等は一例であり、用途等に応じて設定すればよい。
【0078】
また、上記本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、主に、泳動粒子群34として1種類(1色)の粒子群を適用した形態を説明したが、2種類(2色)以上の泳動粒子群を適用した形態であってもよい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」、「%」はそれぞれ「質量部」、「質量%」を意味する。
また、以下の説明において、実施例1、2、6、11は、それぞれ参考例1、2、6、11に該当する。
【0080】
<実施例1>
(シアン粒子の作製)
1)コア粒子の作製
−分散相の調製−
下記成分を60℃に加温しながら混合し、樹脂と顔料を合せた固形分濃度が15質量%、乾燥後の顔料濃度が50質量%となるように分散相を調製した。
スチレンアクリル系ポリマーX345(星光PMC社製):7.2g
シアン顔料PB15:3の水分散液Emacol SF Blue H524F(山陽色素社製、固形分26質量%):18.8g
蒸留水:24.1g
【0081】
−連続相の調製−
下記成分を混合して連続相を準備した。
界面活性剤KF−6028(信越シリコン社製):3.5g
シリコーンオイルKF−96−2cs(信越シリコン社製):346.5g
【0082】
−粒子作製−
上記分散相50gと、上記連続相350gとを混合し、内歯式卓上分散機ROBOMICS(特殊機化工業社製)を用い回転数10,000rpm、温度30℃で10分間乳化を行った。その結果、乳化液滴径が約2μmの乳化液を得た。これをロータリーエバポレーターを用いて真空度20mbar、水浴温度40℃で18時間乾燥を行った。
得られた粒子懸濁液を6,000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、シリコーンオイルKF−96−2CSを用いて再分散させる洗浄工程を3回繰り返した。このようにしてコア粒子6gを得た。SEM画像解析した結果、平均粒径は0.6μmであった。
【0083】
2)シェルの形成(コアセルベーション法)
−シェル形成用樹脂の合成−
下記成分を混合し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。
サイラプレーンFM−0721(チッソ社製):50g
ヒドロキシエチルメタクリレート(アルドリッチ社製):32g
フェノキシ基を含むモノマーAMP−10G(新中村化学社製):18g
ブロックイソシアネート基を含むモノマー・カレンズMOI−BP(昭和電工社製):2g
イソプロピルアルコール(関東化学社製):200g
重合開始剤AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アルドリッチ社製):0.2g
【0084】
生成物をシクロヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し、シェル形成用の樹脂を得た。このシェル形成用の樹脂2gをt−ブタノール溶媒20gに溶解し、シェル形成用の樹脂溶液を作製した。ここで、シェル形成用の樹脂成分中のフェノキシ基が正帯電基であり、その導入量によって粒子の電荷量を制御可能である。
【0085】
−シェル形成用の樹脂による粒子被覆−
上記コア粒子1gを200mLのナスフラスコに取り、シリコンオイルKF−96−2csを15g加え、超音波を加えながら撹拌分散した。これに、t−ブタノールを7.5g、上記シェル形成用樹脂溶液を22g、シリコンオイルKF−96−2csを12.5g順次加えた。投入速度は全て2mL/sとした。
上記ナスフラスコをロータリーエバポレーターに接続し、真空度20mbar、水浴温度50℃で1時間、t−ブタノール除去を行った。
【0086】
これをさらに撹拌しながらオイルバス中で加温した。まず100℃で1時間加温し、残留水分と残留するt−ブタノールを除いた後、続けて130℃で1.5時間の加熱を行い、ブロックイソシアネート基のブロック基を脱離させ、シェル形成用材料の架橋反応を行った。
冷却後、得られた粒子懸濁液を6,000rpmで15分間遠心分離し,上澄み液を除去した後、シリコーンオイルKF−96−2CSを用いて再分散させる洗浄工程を3回繰り返した。このようにして正帯電性のシアン粒子0.6gを得た。
得られたシアン粒子の体積平均粒径は550nmであった。
【0087】
(白色粒子の作製)
還流冷却管を取り付けた500ml三口フラスコに、2−ビニルナフタレン(新日鐵化学社製)を45g、サイラプレーンFM−0721(チッソ社製)を45g、シリコーンオイルKF−96L−1CS(信越シリコーン社製)を240g加えた。65℃に昇温した後,窒素ガスによるバブリングを15分間行い,開始剤として過酸化ラウロイル(アルドリッチ社製)を2.3gを投入した。窒素雰囲気下にて65℃、24時間の重合を行った。
【0088】
得られた粒子懸濁液を8,000rpmで10分間遠心分離し,上澄み液を除去した後、シリコーンオイルKF−96−2CS(信越シリコーン社製)を用いて再分散させる洗浄工程を3回繰り返した。最後にシリコーンオイルにて粒子固形分濃度40質量%に調整して、白色粒子の分散液を得た。体積平均粒子径は450nmであった。20質量%に希釈して、面積1平方cm、セルギャップ50μmのセルに封入して測定した時の電荷量は1nC以下と低く、ほぼ無帯電であった。また、後述するインプレーン評価用セルを用いて、粒子の泳動を顕微鏡観察したが、泳動は観察されなかった。
【0089】
(シアン・白色粒子混合分散液の調製)
上記シアン粒子と白色粒子とを、固形分でシアン粒子が0.1g、白色粒子が2.5g、中性極性基として水酸基を含む化合物として、カルビノール変性シリコーンX−22−170DX(信越シリコーン社製)が0.01gとなるように秤量・混合し、液量が10gとなるようにシリコーンオイルKF−96L−2cs(信越シリコーン社製)を加え、超音波撹拌してシアン・白色粒子混合分散液(表示用分散液)として使用した。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.1質量%である。
【0090】
(白色粒子分散液の調製)
上記白色粒子を2.5g、カルビノール変性シリコーンX−22−170DX(信越シリコーン社製)が0.01gとなるように秤量・混合し、液量が50gとなるようにシリコーンオイルKF−96L−2cs(信越シリコーン社製)を加え、超音波撹拌して白色粒子分散液として使用した。
【0091】
(評価用セルの作製)
−評価用表示媒体セルの作製−
電極として厚さ50nmのITO(酸化スズインジウム)を成膜したガラス基板(ITO基板)上に、フッ素樹脂Cytop(旭硝子社製)の溶液をスピンコートして、130℃で1時間乾燥させて、膜厚が80nmの表面層を形成した。
【0092】
このようにして作製した表面層付きITO基板を2枚用意し、表示基板、及び背面基板とした。厚さ50μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとして、互いの表面層を対向させて背面基板上に表示基板を重ね合わせて、クリップにて固定した。このようにして作製した評価用の空セルに上記シアン・白色粒子混合分散液を注入して評価用セルとして使用した。
【0093】
(反射率の評価)
前記作製した評価用セルを用いて、表示側電極がマイナスとなるように電極間に15Vの電位差を5秒間印加した。分散された正帯電のシアン粒子はマイナス側電極、すなわち、表示側電極側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。この時の光学濃度Dcを分光測色計(X−Rite社製X−Rite939)を用いて測定した。
【0094】
次に、表示側電極がプラスとなるように電極間に15Vの電位差を5秒間印加したところ、正帯電のシアン粒子はマイナス側電極、すなわち、背面側電極側へ移動し、表示基板側から観察すると白色が観察された。この時の光学濃度Dwを、分光測色計(X−Rite社製X−Rite939)を用いて測定した。
【0095】
また、同濃度の白色粒子だけを封止した評価用セルの光学濃度Dw0を同様に測定した。光学濃度Dw0と、光学濃度DcおよびDwとの差分が、粒子数に比例すると仮定して、以下の式から逆極粒子数比Xを算出した。
X=(Dw−Dw0)/(Dc+Dw−2Dw0)
【0096】
(白色粒子泳動の観察)
図2に示すように、電極として厚さ50nmのITO(酸化スズインジウム)を成膜したガラス基板44をフォト・エッチングして、500μmの距離をおいて並行に配置されたストライプ状の電極48A、48Bをパターニングした。その上にフッ素樹脂Cytop(旭硝子社製)の溶液をスピンコートして、130℃で1時間乾燥させて、膜厚が80nmの表面層46を形成して基板22を作製した。
【0097】
一方、ガラス基板38上にフッ素樹脂Cytop(旭硝子社製)の溶液をスピンコートして、130℃で1時間乾燥させて、膜厚が80nmの表面層42を形成して、基板20を作製した。
基板20と基板22とを、50μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサー24として、重ね合わせて、クリップにて固定した。このようにして作製したインプレーン評価用セル12Aに、上記白色粒子分散液を注入して評価を行った。顕微鏡観察下で、上記2つのストライプ状電極48A、48B間に直流電圧150Vを5秒間印加して、白色粒子の泳動の有無を観察した。
【0098】
<実施例2>
0.01gのカルビノール(n−アルキルアルコール)変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、0.1gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXを用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は1質量%である。
【0099】
<実施例3>
カルボン酸変性シリコーンX−22−3710を1g、2−プロパノール(関東化学社製)を9g混合し、これにトリエチルアミン(和光純薬社製)を0.1g添加して1時間撹拌した。この溶液を100gの水中に投入し、カルボン酸変性シリコーンX−22−3710を水面上に単離した。同様にして、2−プロパノールへの溶解と、水中への投入単離を3回繰返し、最後に60℃で2時間、減圧乾燥して、カルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩を合成した。
実施例1において、0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、0.01gの上記カルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩を用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.1質量%である。
【0100】
<実施例4>
0.01gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩の代わりに、0.1gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩を用いた以外は、実施例3と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は1質量%である。
【0101】
<実施例5>
トリエチルアミンの代わりに、以下の式(II−3)で示されるアミノ化合物を用いた以外は、実施例3と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.1質量%である。
【化3】
【0102】
<実施例6>
0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、0.01gのポリエーテル変性シリコーンKF−6017(信越シリコーン社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.1質量%である。
【0103】
<実施例7>
アミノ変性シリコーンKF−868(信越シリコーン社製)を1g、2−プロパノール(関東化学社製)を9g混合し、これに酢酸(和光純薬社製)を0.1g添加して1時間撹拌した。この溶液を100gの水中に投入し、アミノ変性シリコーンKF−868を水面上に単離した。同様にして、2−プロパノールへの溶解と、水中への投入単離を3回繰返し、最後に60℃で2時間、減圧乾燥して、アミノ変性シリコーン・酢酸塩を合成した。実施例1において、0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、0.01gの合成したアミノ変性シリコーン・酢酸塩を用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.1質量%である。
【0104】
<実施例8>
実施例1において、シアン・白色混合粒子分散液、および白色粒子分散液の調製に用いるシリコーンオイルKF−96L−2cs(信越シリコーン社製)の代わりに、炭化水素系溶媒アイソパーM(エクソンモービル社製)を用いた以外は同様にして、サンプルを作製して評価を行った。
【0105】
<実施例9>
ステアリン酸(アルドリッチ社製)を1g、2−プロパノール(関東化学社製)を9g混合し、これにトリエチルアミン(和光純薬社製)を0.1g添加して1時間撹拌した。この溶液を100gの水中に投入し、ステアリン酸を水面上に単離した。同様にして、2−プロパノールへの溶解と、水中への投入単離を3回繰返し、最後に60℃で2時間、減圧乾燥して、ステアリン酸トリエチルアミン塩を合成した。実施例1において、0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、0.01gのステアリン酸トリエチルアミン塩を用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.1質量%である。
【0106】
<実施例10>
実施例9において、シアン・白色混合粒子分散液、および白色粒子分散液の調製に用いるシリコーンオイルKF−96L−2cs(信越シリコーン社製)の代わりに、炭化水素系溶媒アイソパーM(エクソンモービル社製)を用いた以外は同様にして、サンプルを作製して評価を行った。
【0107】
<実施例11>
0.01gのカルビノール(n−アルキルアルコール)変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、0.001gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXを用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.01質量%である。
【0108】
<実施例12>
0.01gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩の代わりに、0.001gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩を用いた以外は、実施例3と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.01質量%である。
【0109】
<比較例1>
0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXを添加しない以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。
【0110】
<比較例2>
カルボン酸変性シリコーンX−22−3710を1g、2−プロパノール(関東化学社製)を9g混合し、これにp−トルエンスルホン酸ナトリウム(和光純薬社製)を0.1g添加して1時間撹拌した。この溶液を100gの水中に投入し、カルボン酸変性シリコーンX−22−3710を水面上に単離した。同様にして、2−プロパノールへの溶解と、水中への投入単離を3回繰返し、最後に60℃で2時間、減圧乾燥して、カルボン酸変性シリコーン・ナトリウム塩を合成した。
【0111】
実施例1において、0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、弱酸の強塩基塩として、上記カルボン酸変性シリコーン・ナトリウム塩を0.01g用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.1質量%である。
【0112】
<比較例3>
0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、強酸の強塩基塩であるビス−(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(通称AOT、アルドリッチ社製)を0.01g用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.1質量%である。
【0113】
<比較例4>
アミノ変性シリコーンKF−868(信越シリコーン社製)を1g、2−プロパノール(関東化学社製)を9g混合し、これにp−トルエンスルホン酸(和光純薬社製)を0.1g添加して1時間撹拌した。この溶液を100gの水中に投入し、アミノ変性シリコーンKF−868を水面上に単離した。同様にして、2−プロパノールへの溶解と、水中への投入単離を3回繰返し、最後に60℃で2時間、減圧乾燥して、アミノ変性シリコーン・トルエンスルホン酸塩を合成した。
【0114】
実施例1において、0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、弱塩基の強酸塩として、合成したアミノ変性シリコーン・トルエンスルホン酸塩を0.01g用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.1質量%である。
【0115】
<比較例5>
0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、0.0005gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXを用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.005質量%である。
【0116】
<比較例6>
0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、1gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXを用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は10質量%である。
【0117】
<比較例7>
実施例3において、0.01gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩の代わりに、0.0005gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩を用いた以外は、同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は0.005質量%である。
【0118】
<比較例8>
実施例3において、0.01gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩の代わりに、1gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩を用いた以外は、同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は10質量%である。
【0119】
<比較例9>
0.01gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXの代わりに、0.2gのカルビノール変性シリコーンX−22−170DXを用いた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は2質量%である。
【0120】
<比較例10>
実施例3において、0.01gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩の代わりに、0.2gのカルボン酸変性シリコーン・トリエチルアミン塩を用いた以外は、同様にしてサンプルを作製して評価を行った。中性極性基及び疎水性基を含む化合物の濃度は2質量%である。
【0121】
上記実施例及び比較例における表示用分散媒の組成及び評価結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
中性極性基及び疎水性基を有する化合物を添加した実施例1から実施例12はいずれも、化合物を未添加の比較例1よりも、逆極粒子数比が減少し、かつ白色粒子の泳動は観察されなかった。
一方、弱酸の強塩基塩を用いた比較例2と、弱酸の強塩基塩を用いた比較例4は、いずれも逆極粒子数比が比較例1と比べて増加し、かつ白色粒子の泳動が見られた。強酸の強塩基塩を用いた比較例3は、逆極粒子数比は比較例1より低下したが、白色粒子の泳動が観察された。
中性極性基及び疎水性基を有する化合物が0.005質量%と少ない比較例5と比較例7は、いずれも逆極粒子数比に比較例1からの改善が見られなかった。
また、中性極性基及び疎水性基を有する化合物が2質量%と多い比較例9と比較例10、および、10質量%と多い比較例6と比較例8は、いずれも逆極粒子数比が比較例1より増加し、かつ白色粒子の泳動が観察された。