特許第5972637号(P5972637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972637
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ステッピングモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 37/14 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   H02K37/14 535B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-79592(P2012-79592)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-211967(P2013-211967A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】大屋敷 剛敏
(72)【発明者】
【氏名】木下 真
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−014517(JP,A)
【文献】 特開2011−182600(JP,A)
【文献】 特開平11−046474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコイルが巻回されたボビンと、
軸方向で対向する対向面を有し、該対向面の間に前記ボビンを挟んで保持する第1のステータ部と
を備え、
前記ボビンの前記対向面の一方と接触する接触面には、傾斜面を有する凸部が設けられ、
前記対向面の前記一方には、前記凸部が嵌る凹部が設けられ、
前記凹部の縁と前記凸部の前記傾斜面とが接触することで、前記対向面の一方と前記ボビンの前記接触面との間に隙間が形成されていることを特徴とするステッピングモータ。
【請求項2】
前記対向面の少なくとも一方は、前記ボビンの方向への付勢力を生じる弾性変形が生じていることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ。
【請求項3】
前記第1のステータ部と同様の構造を有する第2のステータ部を備え、
前記第1のステータ部と前記第2のステータ部とは、それぞれの前記対向面の他方を構成する部材同士を接触させた状態で軸方向において結合しており、
前記接触する2つの部材は、前記接触がない状態において軸方向に対して傾いており、前記接触した状態で結合することで、前記軸方向に対する傾きが矯正され、前記付勢力が生じていることを特徴とする請求項2に記載のステッピングモータ。
【請求項4】
前記傾きは、軸中心から離れる方向に対するなす角度で捉えて1°〜3°の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載のステッピングモータ。
【請求項5】
前記接触する2つの部材の接触面の一方に先端が斜めにカットされた凸部が設けられ、他方に前記凸部に嵌合する凹部が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載のステッピングモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコイルが巻回されたボビンを保持する構造に特徴のあるステッピングモータに関する。
【背景技術】
【0002】
クローポール型の構造を有したPM(パーマネントマグネット)型のステッピングモータが知られている。このステッピングモータは、ボビンにコイルが巻回され、ボビンの外側に外側ステータが位置し、内側に内側ステータが位置し、第1のステータ部が構成されている。そして同様の構造を有する第2のステータ部と先の第1のステータ部とが軸方向で結合することで、ステータが構成されている。ステータは、全体として略筒構造を有し、その内側の略円柱状の空間に、外周に多極着磁されたマグネット(永久磁石)を備えたロータが回転自在な状態で収められている。この構造に関連する技術として、特許文献1および2に示すものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−180069号公報
【特許文献2】特開2000−217332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した構造のステッピングモータでは、ロータを回転駆動させるために、コイル線に励磁電流を流しステータに磁束を形成させる必要がある。ここで流す励磁電流は極めて短い時間周期で方向が反転するので、この周期に対応してステータに形成される磁路も向きが周期的に反転し、それにより振動が発生する。ここで、ボビンは電気絶縁性や加工性の点から樹脂性のものが用いられるが、何らかの理由によりボビンに変形が発生すると、ステータを構成する部材との間にガタが生じる。このガタが生じると、上記の振動の際にステータを構成する部材とボビンの接触が不安定となり、更なる振動が発生し、また騒音が発生する。
【0005】
このような背景において、本発明は、ボビンとステータを構成する部材との間にガタが生じ難い構造のステッピングモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ステータコイルが巻回されたボビンと、軸方向で対向する対向面を有し、該対向面の間に前記ボビンを挟んで保持する第1のステータ部とを備え、前記ボビンの前記対向面の一方と接触する接触面には、傾斜面を有する凸部が設けられ、前記対向面の前記一方には、前記凸部が嵌る凹部が設けられ、前記凹部の縁と前記凸部の前記傾斜面とが接触することで、前記対向面の一方と前記ボビンの前記接触面との間に隙間が形成されていることを特徴とするステッピングモータである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ボビンに設けられた凸部の斜面がステータ側の凹部の縁に接触することで、ステータとボビンとの間に軸方向における隙間が形成される。このため、ボビンの変形がこの隙間で吸収され、ボビンとステータを構成する部材との間にガタが生じ難い構造が得られる。ここで、凹部は、底のある窪みであってもよいし、裏側に貫通した孔により構成されていてもよい。凹部が孔により構成されている場合、凸部の先端は、孔の向こう側に突き抜けてもよいし、突き抜けなくてもよい。ただし、孔の向こう側に他の部材がある場合、その部材との干渉を避けるために、凸部の先端が孔の内部に納まる寸法関係とすることが好ましい。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記対向面の少なくとも一方は、前記ボビンの方向への付勢力を生じる弾性変形が生じていることを特徴とする。請求項2に記載の発明によれば、ステータを構成する部材の弾性変形に起因する反発力を利用して、ボビンを押す付勢力が生じ、この付勢力により、ボビンが弾性的に保持される。このため、ボビンの変形に起因するボビンとステータを構成する部材との間のガタが生じ難い構造が得られる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第1のステータ部と同様の構造を有する第2のステータ部を備え、前記第1のステータ部と前記第2のステータ部とは、それぞれの前記対向面の他方を構成する部材同士を接触させた状態で軸方向において結合しており、前記接触する2つの部材は、前記接触がない状態において軸方向に対して傾いており、前記接触した状態で結合することで、前記軸方向に対する傾きが矯正され、前記付勢力が生じていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記傾きは、軸中心から離れる方向に対するなす角度で捉えて1°〜3°の範囲にあることを特徴とする。この角度が1°より小さいと、生じる反発力が小さく、ボビンを弾性的に保持する機能が低下する。また、この角度を3°より大きくすると、ステータを構成する部材の加工が困難となる。なお、軸中心というのは、当該ステッピングモータの回転軸の中心(回転中心)のことをいう。また、請求項4に記載の発明において、第1のステータ部と第2のステータ部は、厳密に同じ構造でなくてもよい(勿論、全く同じ構造であってもよい)。また、傾きの矯正は、弾性力が生じる程度のものであれば、完全でなくてもよい。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の発明において、前記接触する2つの部材の接触面の一方に先端が斜めにカットされた凸部が設けられ、他方に前記凸部に嵌合する凹部が設けられていることを特徴とする。請求項5に記載の発明によれば、嵌合する相手となる凹部が設けられている面が傾いていても、凹部の縁と凸部先端の縁との干渉が避けられ、凸部の凹部への嵌合がスムーズに行なえる。このため、組み立て易い構造が得られる。なお、先端が斜めにカットされた凸部という概念には、実際に斜めにカットする加工が行われていなくても、プレス加工や研磨等の方法で、斜めにカットしたような形状とされた場合が含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボビンとステータを構成する部材との間にガタが生じ難い構造のステッピングモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ステッピングモータの分解斜視図(A)と分解側面図(B)である。
図2】第1のステータ部の分解斜視図である。
図3】第1のステータ部の側面図(A)、斜視図(B)および斜視図(C)である。
図4】ボビンの上面図(A)、正面図(B)、側面図(C)および背面図(D)である。
図5】外側ステータとボビンが接触した状態を示す側断面図である。
図6】内側ステータの正面図(A)側断面図(B)および(C)である。
図7】第1のステータ部と第2のステータ部とを軸方向で接触させた状態を示す側面図(A)と、(A)の状態から軸方向の圧力を加え、内側ステータの円環部の傾きを矯正し、第1のステータ部と第2のステータ部とを結合させた状態を示す側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(全体の構成)
図1には、実施形態のステッピングモータ100が示されている。ステッピングモータ100は、クローポール型のステッピングモータである。ステッピングモータ100は、ステータ500(図7参照)を備えている。ステータ500は、第1のステータ部であるフロント側ステータアッシー200と、第2のステータ部であるエンド側ステータアッシー300を軸方向で結合した構造を有している。ここで、フロント側ステータアッシー200とエンド側ステータアッシー300は、同じ構造であり、一方を他方に対して軸方向において反転させ、その背面同士を接触させ、結合することで、ステータ500が得られている。
【0016】
フロント側ステータアッシー200には、フロントプレート210が固定され、エンド側ステータアッシー300には、エンドプレート310が固定されている。ステータ500は、略筒形状を有し、その内側にロータ400が回転自在な状態で収められている。
【0017】
(フロント側ステータアッシー200の構造)
図2には、フロント側ステータアッシー200の分解斜視図が示され、図3には、フロント側ステータアッシー200の側面図(A)、斜視図(B)および(C)が示されている。図4には、ボビンの上面図(A)、正面図(B)、側面図(C)および背面図(D)が示されている。
【0018】
図1図3に示すように、フロント側ステータアッシー200は、外側ステータ220、ボビン230、内側ステータ240を軸方向で結合した構造を有している。外側ステータ220は、磁路が形成されるヨークとして機能する部分であり、電磁軟鉄あるいは圧延鋼板などの磁性材料により構成されている。外側ステータ220は、平たい板状の形状の円環部221、円環部221の外縁から軸方向に延在した円筒形状の外筒部222、円環部221の内周側の縁から軸方向に延在し、周方向に沿って間隔をおいて複数が配置された極歯223を備えている。
【0019】
ボビン230は、軸中心と同軸構造を有するステータコイルが巻回される部材であり、樹脂製であり、射出成形法を用いて形成されている。ボビン230には、ステータコイル231が巻回されている。ボビン230は、ステータコイル231を構成するマグネットワイヤが巻回される円筒部232、円筒部232の軸方向における両端に位置し、巻回されるマグネットワイヤを軸方向の両側から抑えるフランジとして機能する円環部233,234を備えている。円環部234には、端子部235が設けられ、端子部235には、ステータコイル231の巻線の端部が絡げられ接続される2本又は3本の金属製の端子ピン236が埋め込まれている。
【0020】
ステータコイル231が巻回されたボビン230は、外側ステータ220の外筒部222と複数の極歯223の間のドーナツ状の空間(円環状の空間)に配置されている。円環部233の円環部221に対向する面には、円環部221の方向(軸方向)に突出する3箇所の凸部237が設けられている。凸部237は、斜面を有する凸状の部分であり、頂上が平坦な円錐形を有し、軸方向から見て、等角な位置(120°毎の角度位置)に設けられている。
【0021】
図5には、ボビン230の円環部233と、外側ステータ220の円環部221との位置関係を示す断面図が示されている。図5に示すように、ボビン230の円環部233と、外側ステータ220の円環部221とは、結合した状態において、直接面で接触していない。すなわち、凸部237の斜面が孔部224の縁に接触した状態で、凸部237が孔部224に嵌ることで、高さLの凸部237が孔部224の内部に埋没せず、円環部221と円環部233との間に隙間eが形成されている。この条件を満たすために、凸部237の頂上部分の円形の平坦部分の径をa、凸部237の基部の径をb、孔部224の径をCとして、a<C<bの関係が満たされている。ここで、C=(a+b)/2とすると、構造的に安定したものとなり、好ましい。なお、円錐形の凸部237の一部が円環部221の内部に入り込み、凸部237の斜面が円環部221に接触することで、隙間eが形成されればよいので、孔部224は、貫通した孔ではなく、凸部237が嵌る底のある穴(つまり、窪み)であってもよい。
【0022】
また、図5に示す例では、図1に示すフロントプレート210との干渉を避けるために、凸部237の先端が孔部224から飛び出ない寸法関係に設定されている。なお、上述した干渉の問題がないのであれば、凸部237が孔部224から突出した構造も可能である。
【0023】
図6には、内側ステータの正面図(A)、断面図(B)および(C)が示されている。内側ステータ240の円環部241は、部品単体の状態(つまり、組み立てる前の段階)において、軸に垂直な方向から見て、軸中心から離れる方向に対して2°傾いた断面形状を有している。すなわち、円環部241は、上述した傾きを有した円錐面の一部を構成する形状を有している。この傾きが1°を下回る値であると、その効果が低く、他方で3°を超えると、組み立て作業が困難になる。よって、その値は、1〜3°程度の範囲から選択するのが適当である。
【0024】
図3に示すように、円環部241には、孔部244と凸状のボス245が設けられている。孔部244には、エンド側ステータアッシー300の内側ステータ340を構成する円環部341のボス(図1では隠れていて見えない)が嵌合する。ボス245は、エンド側ステータアッシー300の内側ステータ340を構成する円環部341の孔部345に嵌合する。
【0025】
フロント側ステータアッシー200の内側ステータ240と同じ部材を軸方向で反転させたものが、エンド側ステータアッシー300の内側ステータ340である。内側ステータ240と340とを、同じ面を向かい合わせで接触させることで、フロント側ステータアッシー200とエンド側ステータアッシー300の結合が行なわれている。この際、円環部241の孔部244に円環部341のボス(図示されず)が嵌り、円環部241のボス245が円環部341の孔部345に嵌る。
【0026】
なお、上記の説明から明らかなように、組み立てる前の状態において、円環部341は、円環部241と逆の方向に傾いている。つまり、円環部241と円環部341とを背面同士で位置合わせした場合、軸中心から離れるに従って、その間の距離が増大する位置関係となる。
【0027】
ここで、ボス245の先端は、外側に向かって下る傾斜の斜め形状にカットされた形状を有している。これは、軸に垂直な方向から見た円環部241の傾いた形状に関係する。すなわち、円環部241は、円環部341に対向し、最終的には、軸方向に圧力が加えられ、その傾きが矯正された状態で円環部341と面接触するが、組み立ての過程においては、上記の傾きがある状態でボス245を孔部345に位置合わせし、嵌合させる必要がある。しかしながら、ボス245の側断面形状を単に矩形の形状とした場合(つまり、ボス245を単なる円柱形状とした場合)、円環部241,341の傾きに起因して、その外側の縁の部分が、孔部345の縁と干渉し、上述の嵌合作業がスムーズに行えない。この問題を解消するために、ボス234の先端は、外側に向かって下る傾斜の斜めにカットされた形状に加工されている。
【0028】
円環部221のボビン230に対向する側と反対側の面には、フロントプレート210が結合している。フロントプレート210は、中心に円形の開口部211を備え、この開口部211に軸受250が取り付けられている。軸受250は、ロータ400の軸中心の位置に固定されたシャフト(回転する軸部材)401を回転自在な状態で保持している。
【0029】
(エンド側ステータアッシー300の構造)
エンド側ステータアッシー300は、フロント側ステータアッシー200と同じ構造であり、フロント側ステータアッシー200と同じ構造のものを、軸方向で反転させた状態で用いられている。エンド側ステータアッシー300は、外側ステータ320、ボビン330、内側ステータ340を軸方向で組み合わせた構造を有している。ここで、外側ステータ320は、外側ステータ220と同じ構造の部品あり、ボビン330は、ボビン230と同じ構造の部品であり、内側ステータ340は、内側ステータ240と同じ構造の部品である。
【0030】
外側ステータ320には、エンドプレート310が結合している。エンドプレート310は、中心に円形の開口部311を備え、この開口部311に軸受260が取り付けられている。軸受260は、シャフト401の図では他の部材に隠れている側の部分を回転自在な状態で保持している。
【0031】
(ロータの構造)
ロータ400は、略円柱状の構造を有し、その外周にマグネット(永久磁石)を備えている。このマグネットは、周方向に沿ってNSNSと交互に磁極が反転する状態で着磁された磁極構造を有している。ロータ400の軸中心には、シャフト401が軸方向に貫通した状態で固定され、シャフト401のロータ400から一方の方向に突出した部分は、軸受250を介してフロントプレート210に回転自在な状態で保持され、シャフト401のロータ400から他方の方向に突出した部分(図1では他の部材に隠れている)は、軸受260を介してエンドプレート310に回転自在な状態で保持されている。すなわち、軸受250と260によって、ロータ400は、ステータ500(図7参照)に対して、その内側で回転自在な状態で保持されている。
【0032】
(組み立て手順)
まず、フロント側ステータアッシー200とエンド側ステータアッシー300を組み立てる。両者は同じ構造であるので、以下、代表してフロント側ステータアッシー200を組み立てる手順を説明する。最初に、ボビン230にステータコイル231を巻回し、図1に示すボビン230の状態を得る。次に、このボビン230を外側ステータ220の内側に納めた状態において、外側ステータ220にフロントプレート210および内側ステータ240を組み付ける。この過程における外側ステータ220、ボビン230および内側ステータ240の位置関係が、図2および図3に示されている。また、同様な工程により、エンド側ステータアッシー300を組み立てる。
【0033】
また、シャフト401に取り付けたロータ400を用意する。そして、ロータ400を図1(A)に示すように内側に納めた状態で、フロント側ステータアッシー200の円環部241の露出面と、エンド側ステータアッシー300の円環部341の露出面とを対向させ、軸中心の位置を合わせた状態で両者を接触させる。この際、円環部241の孔部244に円環部341のボス(図示されず)を嵌合させ、円環部241のボス245を円環部341の孔部345に嵌合させる。またこの際、軸受250を介してシャフト401をフロントプレート210に回転自在な状態で固定し、軸受260を介してシャフト401エンドプレート310に回転自在な状態で固定する。なお、軸受250,260は、滑り軸受であり、軸受250,260とロータ400との間には、図示省略されたスプリングワッシャが配置され、ロータ400の軸方向における位置決めがされる構造を有している。
【0034】
この状態が図7(A)に示されている。なお、図7において、フロントプレート210とエンドプレート310は記載されていない。図7(A)に示す状態では、円環部241と円環部341を単に接触させただけであり、両者の傾きは矯正されていない。したがって、その縁の付近は、tで示す隙間を有している。一例であるが、円環部241および341の幅を5mm、その板厚を0.5mm、図2のθの値を2°とした場合、隙間tの値は0.15mm程度となる。
【0035】
図7(A)の状態において、フロント側ステータアッシー200およびエンド側ステータアッシー300の外側ステータ220,320を互いに近付けることで円環部241,341に軸方向両側から圧力を加え、円環部241と341の傾き(図6参照)が矯正されるように、円環部241と341を変形させる。内側ステータ240,340の円環部241,341は、対向しているボビン230,330の円環部(ボビン230では円環部234)で押され、円環部241と341の傾きが矯正される。つまり、円環部241と341の面の向き(面に垂直な方向)が軸方向に一致するように図7(A)の左右の方向からボビン230、330を介して力を加え、傾いた円環部241,341を変形させ、その傾きを矯正する。そして、t=0(あるいは誤差範囲以内)となった状態で外側ステータ220,320を溶接して図7(B)に示す状態を得る。この際、円環部241,341は弾性変形しており、元に戻ろうとする反発力が発生している状態となる。
【0036】
組み立てが完成した状態において、ボビン230の円環部234は、円環部241が発する弾性力により、円環部221の方向に押された状態となる。ここで、図5に関連して説明したように、円環部221とボビン230の円環部23とは、凸部237を介してのピンポイント的な接触であり、円環部221と円環部233との間には、隙間eが形成されている。したがって、何らかの理由により、ボビン230の変形が生じても、その変形は、隙間eの変動により吸収される。この際、円環部241が発する弾性力により、ボビン230と外側ステータ220との接触、およびボビン230と内側ステータ240との接触が保たれ、ガタの発生が抑えられる。つまり、ボビン230の変形が生じても、外側ステータ220と内側ステータ240との間におけるボビン230の安定した状態が維持される。これは、エンド側ステータアッシー300の側のボビン330に関しても同じである。
【0037】
(優位性)
ボビン230は、外側ステータ220と内側ステータ240の間において、ボビン230の変形を吸収する隙間e(図5参照)を有した状態で、且つ、ボビン230が軸方向の圧力を受けた状態で保持されるので、ボビン230の変形により、ボビン230と外側ステータ220および内側ステータ240との間でガタが生じる問題が抑制される。このため、ガタの発生による振動の発生や騒音の発生が抑えられる。
【0038】
(その他)
凸部237の形状は、角錐であってもよい。また、その頂上部分が尖っていても良い。例示した実施形態では、内側ステータ側の円環部241を軸方向に傾け、その傾きが矯正された際に発生する反発力を利用して、ボビン230を軸方向に付勢した状態で保持する例を示したが、それに加えて、あるいはそれに替えて外側ステータ側の円環部(例えば、符合221)を軸方向に傾け、その傾きが矯正された際に発生する反発力を利用して、ボビン230を軸方向に付勢する構造も可能である。また、円環部241の傾きは、完全に矯正されなくてもよい。すなわち、傾きが残っていても、弾性変形に起因する反発力が発生する状態とする構造も可能である。
【0039】
凸部237と同様な凸部を、円環部234における円環部241に対向する側の面に設け、また円環部241にこの凸部が嵌る孔部(凹部)を設け、実施形態と同様な結合が円環部234と円環部241との間で行なわれる構造も可能である。この場合、円環部221の側の凸部237を利用したボビン230と外側ステータ220との接触の構造を併用してもよいし、併用しなくてもよい。
【0040】
本発明は、軸方向の前後に位置する2つのステータ(ヨーク)部材と、この2つのステータ部材の間に位置し、軸中心と同軸構造を有するステータコイルが巻回されたボビンとを備えた構造のモータに利用することができる。このようなモータとして、特開平1−198263号公報や特開2002−27722号公報に記載されたモータが挙げられる。
【0041】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ステッピングモータに利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
100…ステッピングモータ、200…フロント側ステータアッシー、210…フロントプレート、211…開口部、220…外側ステータ、221…円環部、222…外筒部、222a…段差部、223…極歯、224…孔部、230…ボビン、231…ステータコイル、232…円筒部、233…円環部、234…円環部、235…端子部、236…端子ピン、237…凸部、240…内側ステータ、241…円環部、243…極歯、244…孔部、245…ボス、250…軸受、260…軸受、300…エンド側ステータアッシー、310…エンドプレート、311…開口部、320…外側ステータ、330…ボビン、340…内側ステータ、341…円環部、345…孔部、400…ロータ、401…シャフト、500…ステータ。
図1
図2
図3
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図5
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図7