【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.槽体の排水口に取付けられる排水栓装置であって、
自身の内周に雌ねじ部を有する筒状の配管と、
前記排水口に挿通されるとともに、前記雌ねじ部に螺合可能な雄ねじ部を外周に有し、前記雌ねじ部に前記雄ねじ部を螺合し、前記配管との間で前記槽体を挟み込むことで、前記槽体に前記配管を接続する筒状の排水口部材と、
前記排水口に設けられる栓蓋が取付けられる支持軸を有し、前記栓蓋を上下動可能に支持する支持機構と、
前記支持軸を直接又は間接的に保持する保持部、及び、当該保持部からその外側に向けて延びるアーム部を有するアタッチメント部材とを備え、
前記アタッチメント部材の外周、及び、前記配管の内周のうちの一方には、凸部が設けられるとともに、
前記アタッチメント部材の外周、及び、前記配管の内周のうちの他方には、上下方向に前記凸部を挟んだ状態で前記凸部が係止される把持部が設けられ、
前記排水口部材よりも下方において前記把持部に前記凸部が係止されることで、前記配管に対して前記アタッチメント部材が取付けられ、
前記アタッチメント部材は、前記配管に対して前記排水口部材の上方から取付・取外可能とされることを特徴とする排水栓装置。
【0011】
上記手段1によれば、支持機構を保持する(又は、支持機構が一体化された)アタッチメント部材を、配管に予め取付けておくことで、配管に対して支持機構を予め取付けておくことができる。このため、配管内から支持機構等を引き出すといった面倒な作業が不要となり、取付作業性の向上や支持機構の引き出し時における部材の破損防止を図ることができる。
【0012】
また、アタッチメント部材及び配管のうちの一方に設けられた凸部を、アタッチメント部材及び配管のうちの他方に設けられた把持部に係止することで、配管に対してアタッチメント部材をワンタッチで取付けることができる。従って、配管に対してアタッチメント部材を取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【0013】
さらに、アタッチメント部材が、配管に対して排水口部材の上方から取付・取外可能とされている。従って、排水口部材を配管から取外すことなく、アタッチメント部材や支持機構を容易に取外すことができる。その結果、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0014】
尚、アタッチメント部材を、配管に対して排水口部材の上方から取付・取外可能とするためには、例えば、アタッチメント部材が排水口部材の内周を通過可能となるように構成すればよい。
【0015】
手段2.前記配管は、
前記雌ねじ部を内周に有する第1筒状部と、
前記第1筒状部の延びる方向と異なる方向に向けて延びる第2筒状部と、
前記第1筒状部の内部及び前記第2筒状部の内部を連通する屈曲筒状部とを備えるとともに、
前記第1筒状部、前記第2筒状部、及び、前記屈曲筒状部は、樹脂により一体的に形成され、
前記第1筒状部は、自身の開口側に向けて内径が一定又は拡径する形状をなし、
前記第2筒状部は、自身の開口側に向けて内径が一定又は拡径する形状をなし、
前記屈曲筒状部は、前記第2筒状部の中心軸と直交する方向に沿ったその内部の幅が、前記第2筒状部の開口側に向けて一定又は拡幅する形状をなし、
前記把持部は、前記アタッチメント部材の外周に設けられるとともに、前記凸部は、前記第1筒状部の下端内周に設けられることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0016】
尚、「内径が一定又は拡径する形状をなし」とあるのは、全域に亘って、内径が一定とされたり、拡径されたりする場合だけでなく、内径が一定の部位と拡径する部位との双方が形成される場合も含む。また、「幅が一定又は拡幅する形状をなし」とあるのは、全域に亘って、幅が一定とされたり、拡幅されたりする場合だけでなく、幅が一定の部位と拡幅する部位との双方が形成される場合も含む(以下同様)。
【0017】
上記手段2によれば、第1筒状部は、自身の開口側に向けて内径が一定又は拡径する形状をなし、第1筒状部の下端内周に突起部が設けられている。従って、配管を型成形により形成する際に、第1筒状部の内周面を形成する型を、第1筒状部の開口から抜出すことができる。また、第2筒状部は、自身の開口側に向けて内径が一定又は拡径する形状をなし、屈曲筒状部は、その内部の幅が第2筒状部の開口側に向けて一定又は拡幅する形状をなすように構成されている。従って、第2筒状部及び屈曲筒状部の内周面を形成する型を、第2筒状部の開口から抜出すことができる。すなわち、上記手段2によれば、型成形により、内周に凸部を有してなる配管を容易に製造することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0018】
手段3.第1筒状部は、その開口側に設けられた大径部と、当該大径部の内径よりも内径が小さい小径部とを備え、
前記凸部は、前記小径部のうち前記第2筒状部の内周面及び前記大径部間に位置する部位である凸片部により形成されることを特徴とする手段2に記載の排水栓装置。
【0019】
上記手段3によれば、型成形により配管を形成する場合において、配管の内周に凸部を容易に設けることができ、優れた生産性を実現することができる。
【0020】
手段4.第1筒状部は、その開口側に設けられた大径部と、当該大径部の内径よりも内径が小さい小径部とを備え、
前記屈曲筒状部の内周面に対して、前記第2筒状部の中心軸に沿って前記第2筒状部のうち最も内径の小さい部位の内部領域を投影したときにおいて、前記屈曲筒状部の内周面のうち前記内部領域の投影された領域内には、前記第1筒状部に隣接する凹状の溝部が設けられ、
前記凸部は、前記小径部のうち前記第2筒状部の内周面及び前記大径部間に位置する部位である第1凸片部と、前記小径部のうち前記溝部及び前記大径部間に位置する部位である第2凸片部とにより構成されることを特徴とする手段2に記載の排水栓装置。
【0021】
上記手段4によれば、型成形により配管を形成する場合において、配管の内周に凸部を比較的容易に設けることができ、良好な生産性を実現することができる。
【0022】
また、上記手段4によれば、凸部が第1凸片部及び第2凸片部により構成されるため、配管に対するアタッチメント部材の取付安定性をより高めることができる。
【0023】
手段5.前記第1凸片部と前記第2凸片部とは、上下方向において同一の位置に設けられることを特徴とする手段4に記載の排水栓装置。
【0024】
尚、「上下方向において同一の位置」とあるのは、上下方向において厳密に同一の位置に設けられる場合のみならず、上下方向において若干(例えば、コンマ数mm程度)のずれがある場合も含む(以下、同様)。
【0025】
上記手段5によれば、第1凸片部と第2凸片部とが上下方向において同一の位置(高さ位置)に設けられるため、アタッチメント部材に設けられる把持部の高さ位置も同一とすることができる。そのため、把持部において、第1凸片部が係止される側と第2凸片部が係止される側とを区別することなく、アタッチメント部材を配管に対して取付けることができる。その結果、配管に対してアタッチメント部材を取り付ける際の作業性を一層向上させることができる。
【0026】
手段6.前記凸部の下面は、平面とされることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の排水栓装置。
【0027】
上記手段6によれば、凸部の下面に対して把持部をより確実に接触させることができ、配管に対するアタッチメント部材の取付安定性を高めることができる。
【0028】
手段7.前記配管は、
前記雌ねじ部を内周に有する第1筒状部と、
前記第1筒状部の延びる方向と異なる方向に向けて延びる第2筒状部と、
前記第1筒状部の内部及び前記第2筒状部の内部を連通する屈曲筒状部とを備えるとともに、
前記第1筒状部、前記第2筒状部、及び、前記屈曲筒状部は、樹脂により一体的に形成され、
前記第1筒状部は、自身の開口側に向けて内径が一定又は拡径する形状をなし、
前記第2筒状部は、自身の開口側に向けて内径が一定又は拡径する形状をなし、
前記屈曲筒状部は、前記第2筒状部の中心軸と直交する方向に沿ったその内部の幅が、前記第2筒状部の開口側に向けて一定又は拡幅する形状をなし、
前記第1筒状部の下端内周には、径方向内側に向けて突出する突起部が設けられ、
前記配管は、前記排水口部材の下方に配置され、前記突起部が係止される凹状部を外周に有する筒状の取付部を備え、
前記把持部は、前記取付部の内周に設けられるとともに、前記凸部は、前記アーム部の先端部に設けられることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0029】
上記手段7によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏されることとなる。すなわち、型成形により、内周に突起部を有してなる配管を容易に製造することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0030】
ところで、アタッチメント部材において、アーム部の折損等を防止するためには、アーム部の先端部同士を連結する環状部を設け、アーム部の強度向上を図ることが好ましい。しかしながら、排水口部材の内周に環状部を配置する場合には、排水口部材の内周側に形成される排水流路の通水面積が減少してしまい、排水能力の低下を招いてしまうおそれがある。
【0031】
この点、上記手段7によれば、配管(取付部)にアタッチメント部材が取付けられた際には、筒状の取付部によってアーム部の先端部同士が連結された状態となるため、アーム部の強度向上を図ることができる。さらに、取付部は、排水口部材の下方に設けられるため、取付部の存在により、排水口部材の内周に形成される排水流路の通水面積が減少してしまうことを効果的に抑制できる。その結果、良好な排水能力を実現することができる。
【0032】
手段8.前記取付部は、自身の上面部が前記排水口部材の下面部に接触した状態で設けられることを特徴とする手段7に記載の排水栓装置。
【0033】
上記手段8によれば、取付部は、自身の上面部が排水口部材の下面部に接触した状態で設けられる。すなわち、取付部は、排水口部材の下面部を基準とする適切な配置位置に設けられ、ひいては栓蓋の開口量(ストローク量)が安定することとなる。
【0034】
詳述すると、栓蓋が槽体に密着することで排水口を閉鎖する構成の場合、排水口部材は、配管との間で槽体を挟み込む際に槽体の表面に接触するが、槽体の表面は裏面等と比較して通常精度よく形成される。そのため、同種の槽体において、栓蓋によるシール位置から、排水口部材が接触する槽体の表面までの距離にバラツキが生じてしまうことが極めて少ない。従って、排水口部材を最終的な配置位置に設けたときに、排水口部材は、栓蓋によるシール位置に対して一定の位置に設けられ、ひいては排水口部材の下面部に接触する取付部も前記シール位置に対して一定の位置に設けられる。その結果、アタッチメント部材及びこれに保持される支持機構もシール位置に対して一定の位置に設けられ、栓蓋の開口量(ストローク量)を安定させることができる。
【0035】
また、栓蓋が排水口部材に密着することで排水口を閉鎖する構成の場合、上述の通り、取付部の上面部は排水口部材の下面部に接触しているため、排水口部材と取付部との相対配置位置は変化せず、ひいては、排水口部材に対して支持機構やアタッチメント部材が一定の位置に配置されることとなる。そのため、栓蓋の開口量(ストローク)を安定させることができる。
【0036】
手段9.第1筒状部は、その開口側に設けられた大径部と、当該大径部の内径よりも内径が小さい小径部とを備え、
前記突起部は、前記小径部のうち前記第2筒状部の内周面及び前記大径部間に位置する部位である突起片部により形成されることを特徴とする手段7又は8に記載の排水栓装置。
【0037】
上記手段9によれば、上記手段3とほぼ同様の作用効果が奏されることとなる。すなわち、配管の内周に突起部を容易に設けることができ、優れた生産性を実現することができる。
【0038】
手段10.第1筒状部は、その開口側に設けられた大径部と、当該大径部の内径よりも内径が小さい小径部とを備え、
前記屈曲筒状部の内周面に対して、前記第2筒状部の中心軸に沿って前記第2筒状部のうち最も内径の小さい部位の内部領域を投影したときにおいて、前記屈曲筒状部の内周面のうち前記内部領域の投影された領域内には、前記第1筒状部に隣接する凹状の溝部が設けられ、
前記突起部は、前記小径部のうち前記第2筒状部の内周面及び前記大径部間に位置する部位である第1突起片部と、前記小径部のうち前記溝部及び前記大径部間に位置する部位である第2突起片部とにより構成されることを特徴とする手段7又は8に記載の排水栓装置。
【0039】
上記手段10によれば、上記手段4とほぼ同様の作用効果が奏されることとなる。すなわち、良好な生産性を実現することができるとともに、配管に対するアタッチメント部材の取付安定性をより高めることができる。
【0040】
手段11.前記第1突起片部と前記第2突起片部とは、上下方向において同一の位置に設けられることを特徴とする手段10に記載の排水栓装置。
【0041】
上記手段11によれば、第1突起片部と第2突起片部とが上下方向において同一の位置(高さ位置)に設けられるため、取付部に設けられる凹状部の高さ位置も同一とすることができる。そのため、凹状部において、第1突起片部が係止される側と第2突起片部が係止される側とを区別することなく、取付部を設けることができる。その結果、第1筒状部に取付部を設ける際の作業性を向上させることができる。
【0042】
手段12.前記突起部の下面は、平面とされることを特徴とする手段7乃至11のいずれかに記載の排水栓装置。
【0043】
上記手段12によれば、突起部の下面に対して取付部をより確実に接触させることができ、ひいては配管に対するアタッチメント部材の取付安定性を高めることができる。
【0044】
手段13.前記配管は、
前記雌ねじ部を内周に有する第1筒状部と、
前記第1筒状部の延びる方向と異なる方向に向けて延びる第2筒状部と、
前記第1筒状部の内部及び前記第2筒状部の内部を連通する屈曲筒状部とを備えるとともに、
前記第1筒状部、前記第2筒状部、及び、前記屈曲筒状部は、一体的に形成され、
前記把持部は、前記アタッチメント部材の外周に設けられるとともに、前記凸部は、前記第1筒状部の内周に設けられ、
前記凸部は、前記第1筒状部の内周に接合された環状のリング部により構成されることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0045】
上記手段13によれば、屈曲する配管の内周に対して凸部を容易に設けることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0046】
手段14.前記配管の内周には、径方向内側に向けて突出する突起部が設けられ、
前記配管は、前記排水口部材の下方に配置され、前記突起部が係止される凹状部を外周に有する筒状の取付部を備え、
前記把持部は、前記取付部の内周に設けられるとともに、前記凸部は、前記アーム部の先端部に設けられることを特徴とする手段
1に記載の排水栓装置。
【0047】
上記手段14によれば、上記手段7とほぼ同様の作用効果が奏されることとなる。すなわち、排水口部材の内周側に形成される排水流路の通水面積が十分に確保され、良好な排水能力を維持することができる。また、筒状の取付部によりアーム部の先端部同士が連結された状態となり、アーム部の強度向上を図ることができる。