(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972693
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】プロテクタのロック機構
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20160804BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
H02G3/04 018
H02G3/04 087
B60R16/02 623T
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-158632(P2012-158632)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-23250(P2014-23250A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 睦
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−009532(JP,A)
【文献】
特開平08−051714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル部材を収納可能なプロテクタ本体と、プロテクタ本体に対して結合されプロテクタ本体の開口を覆うことが可能なカバーと、を備え、
カバーには、係止爪を有する差込部材が対を成すように形成されており、
プロテクタ本体には、対を成す差込部材を差し込んで各係止爪を係止可能な被差込部材が形成されており、
被差込部材は、プロテクタ本体と共に溶融樹脂の射出により一体的に成形されており、
カバーを閉じると、対を成す差込部材の各係止爪が被差込部材に係止されることで、閉じたカバーがプロテクタ本体に対してロック状態に保持されるプロテクタのロック機構であって、
被差込部材は、プロテクタ本体からの溶融樹脂の射出が1箇所からのみ行われるように略T字状に形成されており、
カバーの係止爪がプロテクタ本体の被差込部材に係止した状態にあるとき、カバーに対して開き方向に力が作用すると、この作用した力が被差込部材の略T字の基部にも作用するように、係止爪と被差込部材の係止箇所は傾斜していることを特徴とするプロテクタのロック機構。
【請求項2】
ケーブル部材を収納可能なプロテクタ本体と、プロテクタ本体に対して結合されプロテクタ本体の開口を覆うことが可能なカバーと、を備え、
カバーには、係止爪を有する差込部材が対を成すように形成されており、
プロテクタ本体には、対を成す差込部材を差し込んで各係止爪を係止可能な被差込部材が形成されており、
被差込部材は、プロテクタ本体と共に溶融樹脂の射出により一体的に成形されており、
カバーを閉じると、対を成す差込部材の各係止爪が被差込部材に係止されることで、閉じたカバーがプロテクタ本体に対してロック状態に保持されるプロテクタのロック機構であって、
被差込部材は、プロテクタ本体からの溶融樹脂の射出が1箇所からのみ行われるように対を成す略L字状に形成されていることを特徴とするプロテクタのロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタのロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内の電気品を接続するケーブル部材(ワイヤーハーネス等)を収納した状態で車両ボデーに組み付け可能なプロテクタが既に知られている。このようなプロテクタは、ケーブル部材を収納可能な長溝状に形成されたプロテクタ本体と、このプロテクタ本体に対してヒンジ結合されプロテクタ本体の開口を覆い可能なカバーとから構成されている。そして、このプロテクタには、カバーをプロテクタ本体に対して閉じた状態に保持可能なロック機構が設けられている。ここで、下記特許文献1には、
図13〜14に示すように、係止爪324を有する差込部材322と、差込部材322を差し込んで係止爪324を係止可能な被差込部材312とから成るロック機構rがプロテクタ301と共に樹脂により一体的に成形されている技術が開示されている。これにより、ロック機構rを備えていても、プロテクタ301を簡便に製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−51714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、被差込部材312は、係止爪324を係止する引っ掛け部314と、この引っ掛け部314をプロテクタ本体310に対して支持する一対の基部316、316とから略コ字状に形成されている。そのため、この被差込部材312を成形する金型のキャビティ(図示しない)への溶融樹脂は、
図13の矢印で示すように、一対の基部316、316から引っ掛け部314へ射出されるようになっていた。したがって、出来上がった被差込部材312(溶融樹脂が冷却固化した後の被差込部材312)において、その引っ掛け部314の中央が溶融樹脂の合流点となるため、ウエルドが発生することがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、ウエルドの発生を防止できるプロテクタのロック機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、ケーブル部材を収納可能なプロテクタ本体と、プロテクタ本体に対して結合されプロテクタ本体の開口を覆うことが可能なカバーと、を備え、カバーには、係止爪を有する差込部材が対を成すように形成されており、プロテクタ本体には、対を成す差込部材を差し込んで各係止爪を係止可能な被差込部材が形成されており、被差込部材は、プロテクタ本体と共に溶融樹脂の射出により一体的に成形されており、カバーを閉じると、対を成す差込部材の各係止爪が被差込部材に係止されることで、閉じたカバーがプロテクタ本体に対してロック状態に保持されるプロテクタのロック機構であって、被差込部材は、プロテクタ本体からの溶融樹脂の射出が1箇所からのみ行われるように略T字状に形成されて
おり、カバーの係止爪がプロテクタ本体の被差込部材に係止した状態にあるとき、カバーに対して開き方向に力が作用すると、この作用した力が被差込部材の略T字の基部にも作用するように、係止爪と被差込部材の係止箇所は傾斜していることを特徴とする構成である。
この構成によれば、出来上がった被差込部材(溶融樹脂が冷却固化した後の被差込部材)において、溶融樹脂の合流点が存在しない。したがって、ウエルドが発生することがない。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、
ケーブル部材を収納可能なプロテクタ本体と、プロテクタ本体に対して結合されプロテクタ本体の開口を覆うことが可能なカバーと、を備え、カバーには、係止爪を有する差込部材が対を成すように形成されており、プロテクタ本体には、対を成す差込部材を差し込んで各係止爪を係止可能な被差込部材が形成されており、被差込部材は、プロテクタ本体と共に溶融樹脂の射出により一体的に成形されており、カバーを閉じると、対を成す差込部材の各係止爪が被差込部材に係止されることで、閉じたカバーがプロテクタ本体に対してロック状態に保持されるプロテクタのロック機構であって、被差込部材は、プロテクタ本体からの溶融樹脂の射出が1箇所からのみ行われるように対を成す略L字状に形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、
請求項1と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係るプロテクタのカバーが開いた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のカバーが閉じた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例2に係るプロテクタのカバーが開いた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のカバーが閉じた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例3に係るプロテクタのカバーが開いた状態を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、従来技術に係るプロテクタのカバーが開いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、
図1〜4を用いて説明する。この実施例1のプロテクタ1は、ケーブル部材(図示しない、ワイヤーハーネス等)を収納可能な長溝状に形成されたプロテクタ本体10と、このプロテクタ本体10に対してヒンジ30によって結合されプロテクタ本体10の開口10aを覆い可能なカバー20とから構成されている。
【0011】
そして、このプロテクタ1には、カバー20をプロテクタ本体10に対して閉じた状態に保持可能なロック機構Rが設けられている。このロック機構Rは、プロテクタ1の長手方向に沿って適宜の箇所に複数(この例では、2箇所)設けられている。ここで、このロック機構Rについて詳述すると、このロック機構Rは、カバー20側に形成された左右に対を成す差込部材22、22と、プロテクタ本体10側に形成された被差込部材12とから構成されている。
【0012】
これら差込部材22、22には、突起状を成す係止爪24、24が形成されている。一方、被差込部材12は、これら係止爪24、24をそれぞれ係止する引っ掛け部14と、この引っ掛け部14の中央をプロテクタ本体10に対して支持する基部16とから略T字状に形成されている。
【0013】
このように形成されていると、被差込部材12を成形する金型のキャビティ(図示しない)への溶融樹脂は、
図1の矢印で示すように、基部16から引っ掛け部14の両端へ射出されるようになる。これらの記載が、特許請求の範囲に記載の「被差込部材は、プロテクタ本体からの溶融樹脂の射出が1箇所からのみ行われるように略T字状に形成されている」に相当する。
【0014】
そして、カバー20をプロテクタ本体10に対して閉じた状態にすると、差込部材22、22の係止爪24、24が被差込部材12の引っ掛け部14にそれぞれ係止する。これにより、
図2〜4に示すように、カバー20をプロテクタ本体10に対して閉じた状態に保持できる。ロック機構Rは、このように構成されている。
【0015】
なお、
図3に示すように、この各係止爪24は、その上縁24aが互いに近づく方向に向けて上り傾斜するようにそれぞれ形成されている。また、この引っ掛け部14は、上述した各係止爪24の上縁24aに対応するように、その下縁14aが中央に向けて左右から上り傾斜するように形成されている。
【0016】
このように各係止爪24の上縁24aと被差込部材12の引っ掛け部14の下縁14aとが傾斜するように形成されていると、カバー20の各係止爪24、24がプロテクタ本体10の被差込部材12の引っ掛け部14に係止した状態(ロック機構Rのロック状態)にあるとき、カバー20に対して開き方向に力(カバー20に対する解除力)が作用すると、この作用した力が被差込部材12の略T字の基部16にも作用することとなる。
【0017】
すなわち、カバー20に対して開き方向に力(カバー20に対する解除力)が作用すると、この作用した力を基部16に向けた分力として分解できる。また、プロテクタ本体10には、その被差込部材12の両側に左右に対を成すガイド18、18が形成されている。これにより、プロテクタ本体10と被差込部材12との間に異物が挟まることを防止できる。
【0018】
プロテクタ1は、このように構成されている。なお、このように構成されているプロテクタ1は、そのプロテクタ本体10およびカバー20がロック機構Rと共に溶融樹脂の射出によって一体的に形成されている。
【0019】
本発明の実施例1に係るプロテクタ1のロック機構Rは、上述したように構成されている。この構成によれば、被差込部材12を成形する金型のキャビティ(図示しない)への溶融樹脂は、
図1の矢印で示すように、基部16から引っ掛け部14の両端へ射出されるようになっている。そのため、出来上がった被差込部材12(溶融樹脂が冷却固化した後の被差込部材12)において、その引っ掛け部14に溶融樹脂の合流点が存在しない。したがって、ウエルドが発生することがない。
【0020】
また、この構成によれば、各係止爪24の上縁24aと被差込部材12の引っ掛け部14の下縁14aとが傾斜するように形成されている。このように形成されていると、カバー20の各係止爪24、24がプロテクタ本体10の被差込部材12の引っ掛け部14に係止した状態(ロック機構Rのロック状態)にあるとき、カバー20に対して開き方向に力(カバー20に対する解除力)が作用すると、この作用した力が被差込部材12の略T字の基部16にも作用することとなる。すなわち、カバー20に対して開き方向に力(カバー20に対する解除力)が作用すると、この作用した力を基部16に向けた分力として分解できる。したがって、カバー20に対して開き方向に作用する力(カバー20に対する解除力)を実質的に抑えることができる。結果として、ロック機構Rの保持力を向上させることができる。
【0021】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、
図5〜8を用いて説明する。この実施例2のプロテクタ101は、既に説明した実施例1のプロテクタ1と比較すると、被差込部材12の形状を簡素化した形態である。なお、この被差込部材12の形状以外の構成は、実施例1と同一もしくは均等であるため、図面において同一符号を付すことで重複する説明は省略することとする。
【0022】
図5〜6からも明らかなように、この実施例2のプロテクタ101の被差込部材12は、左右に独立した構成となっている。すなわち、被差込部材12、12は、左右に対を成す係止爪24、24をそれぞれ係止する引っ掛け部14、14と、この引っ掛け部14、14の端をプロテクタ本体10に対してそれぞれ支持する基部16、16とから略L字状に形成されている。
【0023】
このように形成されていると、実施例1と同様に、
図7〜8に示すように、カバー20をプロテクタ本体10に対して閉じた状態にすると、差込部材22、22の係止爪24、24が被差込部材12、12の引っ掛け部14、14にそれぞれ係止する。これにより、カバー20をプロテクタ本体10に対して閉じた状態に保持できる。
【0024】
本発明の実施例2に係るプロテクタ101のロック機構Rは、上述したように構成されている。この構成によれば、実施例1のプロテクタ1と同様の作用効果、すなわち、ウエルドの発生を防止できるという作用効果を得つつ、被差込部材12の形状を簡素化できる。
【0025】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3を、
図9〜12を用いて説明する。この実施例3のプロテクタ201は、既に説明した実施例2のプロテクタ101と比較すると、ロック機構Rの保持力を向上させた形態である。
【0026】
図11に示すように、各係止爪24は、その上縁24aが互いに近づく方向に向けて下り傾斜するようにそれぞれ形成されている。また、引っ掛け部14は、上述した各係止爪24の上縁24aに対応するように、その下縁14aが中央に向けて左右から下り傾斜するように形成されている。
【0027】
このように各係止爪24の上縁24aと被差込部材12の引っ掛け部14の下縁14aとが傾斜するように形成されていると、カバー20の各係止爪24、24がプロテクタ本体10の被差込部材12の引っ掛け部14に係止した状態(ロック機構Rのロック状態)にあるとき、カバー20に対して開き方向に力(カバー20に対する解除力)が作用すると、この作用した力が被差込部材12の基部16にも作用することとなる。すなわち、カバー20に対して開き方向に力(カバー20に対する解除力)が作用すると、この作用した力を基部16に向けた分力として分解できる。
【0028】
本発明の実施例3に係るプロテクタ201のロック機構Rは、上述したように構成されている。この構成によれば、実施例2のプロテクタ101と同様の作用効果を得つつ、ロック機構Rの保持力を向上させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 プロテクタ(実施例1)
10 プロテクタ本体
10a 開口
12 被差込部材
16 基部
20 カバー
22 差込部材
24 係止爪
101 プロテクタ(実施例2)
201 プロテクタ(実施例3)
R ロック機構