特許第5972696号(P5972696)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972696
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】CO2回収システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/20 20060101AFI20160804BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20160804BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C01B31/20 BZAB
   B01D53/62
   B01D53/14 220
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-161238(P2012-161238)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-19621(P2014-19621A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】清木 義夫
(72)【発明者】
【氏名】堀添 浩司
(72)【発明者】
【氏名】行本 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】平山 晴章
(72)【発明者】
【氏名】湯島 昌記
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/136425(WO,A1)
【文献】 特開昭63−151330(JP,A)
【文献】 特開平09−150029(JP,A)
【文献】 特表2007−533431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00 − 31/36
B01D 53/14
B01D 53/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2を含有するガスとCO2吸収液とを接触させてCO2を除去する吸収塔と、
CO2を吸収したリッチ溶液の一部を、供給されるスチームを用いたリボイラにより間接加熱し、発生させた水蒸気によりCO2を放出して再生する常圧の再生塔と、
CO2を吸収した前記CO2吸収液を前記再生塔へ送液する第1の送液ラインと、
前記再生塔でCO2が除去されたリーン溶液を前記吸収塔へ返送し、前記吸収塔で再利用する第2の送液ラインと、
前記再生塔の塔頂部から、低圧CO2ガスを含む放出ガスを放出するCO2ガス送出ラインと、
放出された前記放出ガス中のCO2を圧縮する低圧圧縮器及び高圧圧縮器を有する圧縮装置とを有するCO2回収システムであって、
前記リッチ溶液が高圧の加圧リッチ溶液であり、
加圧リッチ溶液を第1のフラッシュドラムにより気液分離し、
前記第1のフラッシュドラムで分離された液体成分のリッチ溶液を前記再生塔に導入すると共に、
前記第1のフラッシュドラムで分離された気体成分の高圧CO2ガスを所定圧縮圧力の前記高圧圧縮器へ導入することを特徴とするCO2回収システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記圧縮装置が、前記低圧圧縮器と前記高圧圧縮器との間に中圧圧縮器を有し、
前記第1のフラッシュドラムで分離したリッチ吸収液をさらに気液分離する第2のフラッシュドラムを有し、
前記第1及び第2のフラッシュドラムの前流側に第1及び第2の減圧弁を各々有すると共に、
前記第2のフラッシュドラムで分離された気体成分の中圧CO2ガス所定圧縮圧力の前記中圧圧縮器へ導入することを特徴とするCO2回収システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記吸収塔と第1のフラッシュドラムとの間に、前記加圧リッチ溶液を加熱する熱交換器を有することを特徴とするCO2回収システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記吸収塔と第1のフラッシュドラムとの間に、前記加圧リッチ溶液中の不活性ガスを分離する不活性ガス分離器と、分離された不活性ガスを前記吸収塔へ導入する不活性ガス導入ラインとを有することを特徴とするCO2回収システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記吸収塔へ導入されるガスが、常圧ガスである場合、常圧吸収塔を用いると共に、
前記常圧吸収塔からのリッチ溶液を昇圧する昇圧ポンプを有し、
昇圧されたリッチ溶液を前記第1のフラッシュドラムで気液分離することを特徴とするCO2回収システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記吸収塔へ導入されるガスが、高圧ガスである場合、加圧吸収塔を用いると共に、
加圧吸収塔からの加圧リッチ溶液を前記第1のフラッシュドラムで気液分離することを特徴とするCO2回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス中の二酸化炭素を吸収すると共に、二酸化炭素圧縮動力の軽減を図るCO2回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。CO2の発生源としては、化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い、大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラの排ガスをアミン化合物水溶液などのアミン系吸収液と接触させ、排ガス中のCO2を除去し回収する方法が精力的に研究されている。
【0003】
従来、特許文献1では、吸収液との気液接触によりCO2が吸収除去された脱炭酸排ガスに対して洗浄液を気液接触させることで、脱炭酸排ガスに同伴されたアミン化合物を回収する水洗部を複数段設け、この複数段の水洗部にて、順次、脱炭酸排ガスに同伴するアミンの回収処理を行うことが示されている。
【0004】
また、従来、特許文献2では、吸収液との気液接触によりCO2が吸収除去された脱炭酸排ガスを冷却する冷却部と、冷却部で凝縮した凝縮水と脱炭酸排ガスとを向流接触させる接触部を設けたものが示されている。さらに、特許文献2では、脱炭酸排ガスに同伴されたアミン化合物を回収する水洗部を設けたものが示され、洗浄液は、CO2が回収される前の排ガスを冷却する冷却塔で凝縮された凝縮水が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−126439号公報
【特許文献2】特開平8−80421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年では、環境保全の見地から、処理ガス流量の多い火力発電所などの排ガスに対して、CO2回収装置を設置する場合、除去される二酸化炭素量が多量であることから、例えば地中に埋設する場合におけるその圧縮に係る動力の軽減を図ることが、二酸化炭素回収プラントにおいて、切望されている。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、ガス中の二酸化炭素を吸収すると共に、二酸化炭素圧縮動力の軽減を図るCO2回収システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、CO2を含有するガスとCO2吸収液とを接触させてCO2を除去する吸収塔と、CO2を吸収したリッチ溶液の一部を、供給されるスチームを用いたリボイラにより間接加熱し、発生させた水蒸気によりCO2を放出して再生する常圧の再生塔と、CO2を吸収した前記CO2吸収液を前記再生塔へ送液する第1の送液ラインと、前記再生塔でCO2が除去されたリーン溶液を前記吸収塔へ返送し、前記吸収塔で再利用する第2の送液ラインと、前記再生塔の塔頂部から、低圧CO2ガスを含む放出ガスを放出するCO2ガス送出ラインと、放出された前記放出ガス中のCO2を圧縮する低圧圧縮器及び高圧圧縮器を有する圧縮装置とを有するCO2回収システムであって、前記リッチ溶液が高圧の加圧リッチ溶液であり、該加圧リッチ溶液を第1のフラッシュドラムにより気液分離し、前記第1のフラッシュドラムで分離された液体成分のリッチ溶液を前記再生塔に導入すると共に、前記第1のフラッシュドラムで分離された気体成分の高圧CO2ガスを所定圧縮圧力の前記高圧圧縮器へ導入することを特徴とするCO2回収システムにある。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記圧縮装置が、前記低圧圧縮器と前記高圧圧縮器との間に中圧圧縮器を有し、前記第1のフラッシュドラムで分離したリッチ吸収液をさらに気液分離する第2のフラッシュドラムを有し、前記第1及び第2のフラッシュドラムの前流側に第1及び第2の減圧弁を各々有すると共に、前記第2のフラッシュドラムで分離された気体成分の中圧CO2ガス所定圧縮圧力の前記中圧圧縮器へ導入することを特徴とするCO2回収システムにある。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記吸収塔と第1のフラッシュドラムとの間に、前記加圧リッチ溶液を加熱する熱交換器を有することを特徴とするCO2回収システムにある。
【0011】
第4の発明は、第2の発明において、前記吸収塔と第1のフラッシュドラムとの間に、前記加圧リッチ溶液中の不活性ガスを分離する不活性ガス分離器と、分離された不活性ガスを前記吸収塔へ導入する不活性ガス導入ラインとを有することを特徴とするCO2回収システムにある。
【0012】
第5の発明は、第1において、前記吸収塔へ導入されるガスが、常圧ガスである場合、常圧吸収塔を用いると共に、前記常圧吸収塔からのリッチ溶液を昇圧する昇圧ポンプを有し、昇圧されたリッチ溶液を前記第1のフラッシュドラムで気液分離することを特徴とするCO2回収システムにある。
【0013】
第6の発明は、第1の発明において、前記吸収塔へ導入されるガスが、高圧ガスである場合、加圧吸収塔を用いると共に、加圧吸収塔からの加圧リッチ溶液を前記第1のフラッシュドラムで気液分離することを特徴とするCO2回収システムにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フラッシュドラムを設置しているので、このフラッシュ操作により圧力を開放し、加圧リッチ溶液に吸収されているCO2の一部を遊離させて圧力の高いCO2ガスとして放出し、この放出された圧力の高いCO2ガスは、再生塔のガス流れ後流側に設置されるCO2を圧縮するCO2圧縮装置の圧縮器へ導入する。これにより、従来のような再生塔から排出されるCO2ガスを圧縮する際の圧縮動力の大幅な節約となり、また圧縮設備の規模の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1に係るCO2回収システムの概略図である。
図2図2は、実施例1に係るCO2回収システムの概略図である。
図3図3は、実施例1に係る他のCO2回収システムの概略図である。
図4図4は、実施例2に係るCO2回収システムの概略図である。
図5図5は、実施例2に係るCO2回収システムの概略図である。
図6図6は、実施例3に係るCO2回収システムの概略図である。
図7図7は、実施例3に係るCO2回収システムの概略図である。
図8図8は、実施例4に係るCO2回収システムの概略図である。
図9図9は、実施例5に係るCO2回収システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0017】
本発明による実施例1に係るCO2回収システムについて、図面を参照して説明する。
図1及び2は、実施例1に係るCO2回収システムの概略図である。図1に示すように、本実施例に係るCO2回収システム10Aは、CO2を含有する常圧の排ガス(「ガス(常圧)」という)11とCO2吸収液12とを接触させてCO2を除去する常圧の吸収塔13と、CO2を吸収したリッチ溶液14を再生する常圧の再生塔15と、常圧の再生塔15でCO2が除去されたリーン溶液17を吸収塔13で再利用すると共に、常圧の再生塔15で放出された放出ガス中のCO2を複数の所定圧力で徐々に圧縮する高圧圧縮器16H、低圧圧縮器16Lを有するCO2圧縮装置16とを有するCO2回収システム10Aであって、前記リッチ溶液14が昇圧ポンプ32により高圧とされた加圧リッチ液14Aであり、加圧リッチ溶液14Aをフラッシュ操作により炭酸ガス(CO2)を分離する第1フラッシュドラム21Aを設け、第1フラッシュドラム21Aで分離された液体成分のリッチ溶液14Bを再生塔15に導入すると共に、第1フラッシュドラム21Aで分離された気体成分の高圧CO2ガス22Hを所定圧力の高圧圧縮器16Hへ導入するものである。
【0018】
例えばボイラ等から排出される二酸化炭素(CO2)を含有するガス(常圧)11は、吸収塔13において、例えばアルカノールアミンをベースとするCO2吸収液(アミン溶液)12と対向流接触し、ガス11中のCO2はCO2吸収液12に吸収され、ガス11からCO2を除去する。そして、CO2を吸収したCO2吸収液であるリッチ溶液14は、再生塔15においてCO2を放出し、再生塔15下部に至る頃には、大部分のCO2が除去され、リーン溶液17として再生される。この再生されたリーン溶液17は、CO2吸収液12として再び吸収塔13に送給され、再利用されるものである。
【0019】
ここで、図1中、符号L1はリッチ溶液を吸収塔13から再生塔15側へ送液する第1の送液ライン、L2はリーン溶液17を再生塔15から吸収塔13側へ送液する第2の送液ライン、L3は高圧CO2ガス22Hを第1フラッシュドラム21Aから第1気液分離器23A側へ送液するガス送出ライン、L4は第1気液分離器23Aから回収した吸収液14aを第1フラッシュドラム21Aへ戻す戻し液ライン、L5は第1気液分離器23Aからの高圧CO2ガス22Hを高圧圧縮器16Hへ送出するガス送出ライン、L6は再生塔15の頂部からの低圧CO2ガス22Lを低圧圧縮器16Lへ送出するガス送出ライン、31はCO2が除去された浄化ガス、32は第1の送液ラインL1に介装されたリッチ溶液14の昇圧ポンプ、33は加圧リッチ溶液14Aとリーン溶液17とを熱交換する熱交換器、36は再生塔上部の水蒸気凝縮水34を冷却水35で冷却する冷却器デンサ、37はリーン溶液17の一部16aを再熱するリボイラ、38はリボイラ37へ供給する飽和水蒸気、39は水蒸気凝縮水、41A、41Bは第1の送液ラインL1に介装される減圧弁、42は再生塔15から吸収塔13へリーン溶液17を送液する送液ポンプ、43はリーン溶液17を冷却する冷却手段を各々図示する。
【0020】
常圧のガス11が吸収塔13に導入され、ガス中に含まれるCO2をCO2吸収液12で吸収させてリッチ溶液14として、吸収塔底部から排出される。その後昇圧ポンプ32で昇圧された加圧リッチ溶液14Aは、減圧弁41Aにより所定圧力に調節され、第1フラッシュドラム21Aに導入される。
ここで、昇圧ポンプ32で昇圧する圧力は、CO2圧縮装置16の高圧圧縮器16Hの圧縮圧力よりも高い圧力とする必要がある。例えば高圧圧縮器16Hの圧縮圧力が630kPaGの場合には、800kPaG程度(圧縮器の所定圧縮圧力よりも50〜200kPaG程度高い圧力)まで昇圧している。
そして、第1フラッシュドラム21Aの前流に設置した減圧弁41Aを調節して、部分再生リッチ溶液14Bの温度が102℃、655kPaG程度となるようにしている。
【0021】
第1フラッシュドラム21Aでは、加圧リッチ溶液14Aが所定の圧力においてフラッシュされ、加圧リッチ溶液14A中の二酸化炭素(CO2)の一部を遊離させ、加圧リッチ溶液14Aを部分再生吸収液としている。
そして第1フラッシュドラム21A内で高圧CO2ガス22Hとリッチ吸収液14Bとに分離させている。
【0022】
気液分離された所望圧力(例えば630kPaG)の高圧CO2ガス22Hは、ガス送出ラインL3を介して第1気液分離器23Aに送られ、ここでフラッシュした際のガスに同伴される吸収液14aを分離し、ガス送出ラインL5を介して高圧圧縮器16Hへ送られる。分離された吸収液14aは、第1フラッシュドラム21A側に戻される。
【0023】
減圧弁41A、41Bは、それぞれ所定圧力まで減圧する減圧弁であり、第1の送液ラインL1に介装され、第1フラッシュドラム21A及び再生塔15の前流側に設置して、リッチ溶液14A,14Bが所定圧力となるように調節している。
【0024】
図2は、本実施例の一例のフラッシュしたガスの温度及び圧力を例示するCO2回収システムの概略図である。
加圧リッチ溶液14Aを減圧弁41Aにより所定圧力(655kPa、102℃)とし、第1フラッシュドラム21Aに導入し、CO2の一部を遊離させ、部分再生リッチ溶液14Bとし、この部分再生リッチ溶液14Bは再生塔15側に送られる。
第1フラッシュドラム21Aで遊離された高圧CO2ガス22Hは、ガス圧力が630kPaG、40℃でガス送出ラインL5を介して高圧圧縮器16Hへ、全CO2量の17%が送出される。
再生塔15の塔頂部から放出される低圧CO2ガス22Lは、ガス圧力が50kPaG、40℃でガス送出ラインL6を介して低圧圧縮器16Lへ残りの83%が送出される。
【0025】
再生塔15の底部からのリーン溶液17は、その温度が120℃、圧力80kPaGであり、吸収液を構成するアミン溶液の劣化温度以下であるので、吸収液の劣化がない。
【0026】
これに対し、従来のような高圧リッチ溶液を直接高圧再生塔内へ導入した場合、高圧再生塔内でCO2を放出して再生されたリーン溶液は、底部から150℃程度又はそれ以上の温度及び380kPaGの圧力で排出されるので、リーン溶液17が高温状態となり、吸収液の組成であるアミン溶液が劣化していた。
【0027】
このように、本実施例によれば、第1の送液ラインL1に第1フラッシュドラム21Aを介装し、フラッシュ操作により圧力を開放し、加圧リッチ溶液14Aに吸収されているCO2の一部を遊離させて高圧CO2ガス22Hとして放出し、この放出された高圧CO2ガス22Hは、再生塔15のガス流れ後流側に設置されるCO2を圧縮するCO2圧縮装置16の高圧圧縮器16Hへ導入することとしている。
これにより、従来のような再生塔15から排出されるCO2ガスを圧縮する際の圧縮動力の大幅な節約となり、また圧縮設備の規模の軽減を図ることができる。
【0028】
図3は、本実施例に係る他のCO2回収システムの概略図である。
図3に示すように、本実施例に係るCO2回収システム10Bは、図1に示す実施例1の本実施例に係るCO2回収システム10Aにおいて、さらに昇圧ポンプ32と熱交換器33との間に、イナートガス分離器50を設置している。
不活性ガスが存在すると非凝縮ガスであるので、CO2ガスの圧縮純度の向上を図ることができない。そこで、本実施例では、第1フラッシュドラム21Aの前流側において、加圧リッチ溶液14A中に存在(0.1wt%以下)するイナートガス(N2、H2等)51を除去するようにしている。除去されたイナートガス51は、イナートガス循環ラインL20により、吸収塔13に再度循環させている。イナートガス循環ラインL20には、冷却器52及び気液分離器53が介装されている。
【0029】
このイナートガス分離器50を設けて、イナートガス51を除いているので、圧縮CO2回収ガスの純度が向上する。
【0030】
本実施例では、フラッシュドラムを用いて、気液分離を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば蒸留塔、分離カラム等を用いて気液分離を行うようにしてもよい。
【実施例2】
【0031】
本発明による実施例2に係るCO2回収システムについて、図面を参照して説明する。
図4及び5は、実施例2に係るCO2回収システムの概略図である。図4に示すように、本実施例に係るCO2回収システム10Cは、図3に示すCO2回収システム10Bにおいて、第1の送液ラインL1に第1フラッシュドラム21A及び第2フラッシュドラム21Bを介装している。
そして、第1フラッシュドラム21Aにおいて、フラッシュ操作により圧力を開放し、加圧リッチ溶液14Aに吸収されているCO2の一部を遊離させて高圧CO2ガス22Hとして放出し、この放出された高圧CO2ガス22Hは、再生塔15のガス流れ後流側に設置されるCO2を圧縮するCO2圧縮装置16の高圧圧縮器16Hへ導入することとしている。
【0032】
また、第2フラッシュドラム21Bにおいて、フラッシュ操作により圧力を開放し、部分再生リッチ溶液14Bに吸収されているCO2の一部を遊離させて中圧CO2ガス22Mとして放出し、この放出された中圧CO2ガス22Mは、再生塔15のガス流れ後流側に設置されるCO2を圧縮するCO2圧縮装置16の中圧圧縮器16Mへ導入することとしている。
【0033】
図5は、本実施例の一例の温度及び圧力を例示するCO2回収システムの概略図である。
加圧リッチ溶液14Aを減圧弁41Aにより所定圧力(655kPa、102℃)とし、第1フラッシュドラム21Aに導入し、CO2の一部を遊離させ、部分再生吸収液14Bとし、この部分再生吸収液14Bは再生塔15側に送られる。
そして、第1フラッシュドラム21Aの前流に設置した減圧弁41Aを調節して、部分再生リッチ溶液14Bの温度が102℃、655kPaG程度となるようにしている。第1フラッシュドラム21Aで遊離された高圧CO2ガス22Hは、ガス圧力が630kPaG、40℃でガス送出ラインL5を介して高圧圧縮器16Hへ、全CO2量の17%が送出される。
そして、第2フラッシュドラム21Bの前流に設置した減圧弁41Cを調節して、部分再生リッチ溶液14Cの温度が95℃、255kPaG程度となるようにしている。
第2フラッシュドラム21Bで遊離された中圧CO2ガス22Mは、ガス圧力が230kPaG、40℃でガス送出ラインL9を介して中圧圧縮器16Mへ、全CO2量の19%が送出される。
また、再生塔15の塔頂部から放出される低圧CO2ガス22Lは、ガス圧力が50kPaG、40℃でガス送出ラインL6を介して低圧圧縮器16Lへ残りの64%が送出される。
【0034】
再生塔15の底部からのリーン溶液17は、温度が120℃、圧力80kPaGであり、吸収液を構成するアミン溶液の劣化温度以下であるので、吸収液の劣化がない。
【0035】
このように、本実施例では、第1フラッシュドラム21A及び第2フラッシュドラム21Bを介装しているので、高圧CO2ガス22Hと中圧CO2ガス22Mとを抜出すことができ、実施例1の場合よりも再生塔15から排出されるCO2ガスを圧縮する際の圧縮動力の大幅な節約となり、また圧縮設備の規模の軽減を図ることができる。
【実施例3】
【0036】
本発明による実施例3に係るCO2回収システムについて、図面を参照して説明する。
図6及び7は、実施例3に係るCO2回収システムの概略図である。図6に示すように、本実施例に係るCO2回収システム10Dは、図4に示すCO2回収システム10Cにおいて、第1の送液ラインL1に介装された熱交換器33と減圧弁41Aとの間に、加圧リッチ溶液14Aを加熱する熱交換器61を設けている。
そして、設置された熱交換器61により加圧リッチ溶液14Aを、その耐熱温度である120℃近傍まで加熱している。
加圧リッチ溶液14Aを熱交換器61により加熱することで、第1フラッシュドラム21Aに導入される加圧リッチ溶液14Aの温度が上昇し、第1フラッシュドラム21Aで遊離されるCO2ガス量が増大する。
【0037】
図7は、本実施例の一例の温度及び圧力を例示するCO2回収システムの概略図である。
加圧リッチ溶液14Aを熱交換器61で加熱するので、減圧弁41Aにより所定圧力(655kPa、120℃)とし、第1フラッシュドラム21Aに導入し、CO2の一部を遊離させ、部分再生吸収液14Bとし、この部分再生吸収液14Bは再生塔15側に送られる。
第1フラッシュドラム21Aで遊離された高圧CO2ガス22Hは、ガス圧力が630kPaG、40℃でガス送出ラインL5を介して高圧圧縮器16Hへ、全CO2量の37%が送出される。
第2フラッシュドラム21Bで遊離された中圧CO2ガス22Mは、ガス圧力が230kPaG、40℃でガス送出ラインL9を介して中圧圧縮器16Mへ、全CO2量の28%が送出される。
また、再生塔15の塔頂部から放出される低圧CO2ガス22Lは、ガス圧力が50kPaG、40℃でガス送出ラインL6を介して低圧圧縮器16Lへ残りの35%が送出される。
【0038】
再生塔15の底部からのリーン溶液17は、温度が120℃、圧力80kPaGであり、吸収液を構成するアミン溶液の劣化温度以下であるので、吸収液の劣化がない。
【0039】
このように、本実施例では、第1フラッシュドラム21A及び第2フラッシュドラム21Bを2段連続して介装すると共に、第1フラッシュドラム21Aの前流側において、熱交換器61により加圧リッチ溶液14Aを加熱するので、高圧CO2ガス22Hと中圧CO2ガス22Mとを抜出すことができると共に高圧ガスのCO2ガス遊離量が増大するので、実施例2の場合よりも再生塔15から排出されるCO2ガスを圧縮する際の圧縮動力の大幅な節約となり、また圧縮設備の規模の軽減を図ることができる。
【実施例4】
【0040】
本発明による実施例に係るCO2回収システムについて、図面を参照して説明する。
図8は、実施例4に係るCO2回収システムの概略図である。図8に示すように、本実施例に係るCO2回収システム10Eは、図3に示すCO2回収システム10Bにおいて、再生塔15から排出するガス送出ラインL6に減圧弁41Dを設け、再生塔15の塔頂部から放出するガスを低圧CO2ガス22Lとして送出するようにしている。
このように調整すると、再生塔内に圧力がかかったリッチ溶液が導入されるので、再生塔15の底部からのリーン溶液17は、140℃、250kPaG程度となる。しかし、吸収液の種類によっては高温(140℃)程度を許容するものがあるので、このような耐高温性の吸収液を用いる場合には、本実施例の構成を適用することができる。
【0041】
加圧リッチ溶液14Aを減圧弁41Aにより所定圧力(655kPa、102℃)とし、第1フラッシュドラム21Aに導入し、CO2の一部を遊離させ、部分再生吸収液14Bとし、この部分再生吸収液14Bは再生塔15側に送られる。
第1フラッシュドラム21Aで遊離された高圧CO2ガス22Hは、ガス圧力が630kPaG、40℃でガス送出ラインL5を介して高圧圧縮器16Hへ、全CO2量の36%が送出される。
再生塔15の塔頂部から放出される低圧CO2ガス22Lは、ガス圧力が50kPaG、40℃でガス送出ラインL6を介して低圧縮器16Lへ残りの64%が送出される。
【0042】
再生塔15の底部からのリーン溶液17は、温度が140℃、圧力250kPaGであるが、吸収液を構成するアミン溶液の劣化温度が150℃近傍である場合には、吸収液の劣化が少ないものとなる。
【0043】
本実施例では、再生塔15の底部から排出されるリーン溶液17の温度が140℃、250kPaGであるので、吸収液において高温耐性があるものである場合に、許容されることとなる。
【実施例5】
【0044】
本発明による実施例5に係るCO2回収システムについて、図面を参照して説明する。
図9は、実施例5に係るCO2回収システムの概略図である。図9に示すように、本実施例に係るCO2回収システム10Fは、吸収塔13を加圧型とし、導入するガスを加圧ガスとしている。
このようなCO2を含む加圧ガスとしては、例えば肥料合成用の加圧ガス、高圧天然ガス等(ガス圧力:例えば3,000kPaG)を例示することができる。
なお、吸収塔13からのリッチ溶液14は、加圧状態であるので、実施例1のような昇圧ポンプが不要となり、送液ポンプ32Aを設置して、送液している。
また、再生塔15で再生されたリーン溶液17は、吸収塔13へ送る際に昇圧する必要があるので、第2の送液ラインL2に介装された昇圧ポンプ42Aにより昇圧されている。
【0045】
図9に示すCO2回収システム10Fにおいて、第1フラッシュドラム21Aにより、フラッシュ操作により圧力を開放し、加圧リッチ溶液14Aに吸収されているCO2の一部を遊離させて高圧CO2ガス22Hとして放出し、この放出された高圧CO2ガス22Hは、再生塔15のガス流れ後流側に設置されるCO2を圧縮するCO2圧縮装置16の高圧圧縮器16Hへ導入することとしている。
また、再生塔15の塔頂部から放出される低圧CO2ガス22Lは、ガス圧力が50kPaG、40℃でガス送出ラインL6を介して低圧圧縮器16Lへ残りのCO2が送出される。
【0046】
再生塔15の底部からのリーン溶液17は、温度が120℃であり、吸収液を構成するアミン溶液の劣化温度以下であるので、吸収液の劣化がない。
【0047】
このように、本実施例では、加圧ガスを用いる場合でも、第1フラッシュドラム21Aを介装しているので、高圧CO2ガス22Hを抜出すことができ、再生塔15から排出されるCO2ガスを圧縮する際の圧縮動力の大幅な節約となり、また圧縮設備の規模の軽減を図ることができる。
なお、イナートガス51を循環させるイナートガス循環ラインL20には、気液分離器53の後流側に圧縮器54を介装して、高圧ガス11と合流可能としている。
【符号の説明】
【0048】
10A〜10F CO2回収システム
11 ガス
12 CO2吸収液
13 吸収塔
14 リッチ溶液
15 再生塔
16 CO2圧縮装置
16H 高圧圧縮器
16L 低圧圧縮器
16M 中圧圧縮器
17 リーン溶液
21A 第1フラッシュドラム
21B 第2フラッシュドラム
22H 高圧CO2ガス
22L 低圧CO2ガス
22M 中圧CO2ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9