(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸筒の後端側にそれぞれ軸方向に沿ってかつ周方向に並ぶようにして形成された複数のガイドスリットと、前記ガイドスリットの各々に案内されて前記軸筒の軸方向に摺動可能になされ、前記軸筒内に収容された各筆記体の後端部がそれぞれ接続された複数のノック棒とが備えられ、前記複数のノック棒のうち、一つのノック棒が軸筒の先端側に向かって摺動されると、前記ノック棒に接続された筆記体の先端筆記部が、前記軸筒の先端口から突出して筆記が可能となるように構成された複式筆記具であって、
前記軸筒内に回転可能に装着されると共に、前記複数のノック棒のうち、一つのノック棒が軸筒の先端側に向かって摺動されるに伴って回転駆動され、前記一つのノック棒を前進状態で係止する係止部が形成された回転カムが具備され、
前記回転カムは、他の一つのノック棒が軸筒の先端側に向かって摺動されるに伴って回転駆動され、前記一つのノック棒における前記係止部による係止状態を解くと共に、前記他の一つのノック棒を係止部により前進状態で係止するように構成したことを特徴とする複式筆記具。
前記回転カムは円筒状に形成されて、その円筒軸が前記軸筒の軸方向に一致するようにして回転可能に支持され、前記ノック棒を軸筒の先端側に向かって前記ガイドスリットに沿って摺動させた場合に、当該ノック棒に形成された軸中心方向に突出する突起部が摺動することによって、軸回りの回転駆動を受ける第1カム部が前記回転カムの円筒面に形成され、かつ前記回転カムには前記軸回りの回転とは逆回りの回転作用を与える第2カム部が、前記回転カムの軸方向の端部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された複式筆記具。
前記回転カムは軸方向に移動可能に支持されると共に、前記第2カム部に対峙するようにして固定カム部が配置され、前記第2カム部が前記固定カム部に当接することで、前記回転カムに前記軸回りの回転とは逆回りの回転作用を与えることを特徴とする請求項2に記載された複式筆記具。
前記回転カムを軸方向に付勢して、前記第2カム部を前記固定カム部にかみ合い状態にするカム付勢ばねが備えられていることを特徴とする請求項3に記載された複式筆記具。
前記回転カムの円筒面に形成された前記第1カム部は、前記円筒面上において軸方向に長く島状に突出して形成された複数の島状突出部と、前記ノック棒が軸筒の先端側に向かって移動した時に、当該ノック棒に形成された前記突起部が摺動して、前記回転カムを一方向に回転駆動させる前記島状突出部にそれぞれ形成された軸方向に対して所定の傾斜角度を持つカム面より構成し、
前記ノック棒を前進状態で係止する係止部が、軸方向に直交するようにして前記島状突出部に形成された係止面により構成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載された複式筆記具。
前記各島状突出部に形成された軸方向に対して所定の傾斜角度を持つ各カム面は、一つの前記ノック棒を軸筒の先端側に向かって前記ガイドスリットに沿って摺動させた場合に、前記回転カムを軸回りの第1回転方向に回転作用を与えるように構成すると共に、他の一つの前記ノック棒を軸筒の先端側に向かって前記ガイドスリットに沿って摺動させた場合に、前記回転カムを前記第1回転方向に対して逆回りの第2回転方向に回転作用を与えるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載された複式筆記具。
前記回転カムに前記第1回転方向の回転作用を与える島状突出部と、前記回転カムに前記第1回転方向に対して逆回りの第2回転方向に回転作用を与える島状突出部には、一つの前記ノック棒を軸筒の先端側に向かって前記ガイドスリットに沿って摺動させた場合に、他の一つノック棒に形成された軸中心方向に突出する前記突起部が当接することで、前記他の一つノック棒が軸筒の先端側に向かって摺動するのを阻止するストッパー部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項6に記載された複式筆記具。
前記各ノック棒には、当該ノック棒を後退する方向に付勢するリターンばねがそれぞれ装着され、前記島状突出部に形成された係止部に係止された前進状態のノック棒が、その係止が解かれた状態において、前記ノック棒に形成された前記突起部が前記島状突出部の長手方向の側面に突出する緩衝用突起に摺接しつつ、前記ノック棒が前記リターンばねの付勢力で後退位置に戻るように構成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載された複式筆記具。
前記回転カムを構成する円筒状部材の円筒面は、軸方向に沿って同一径に構成され、前記円筒状部材の円筒面に、前記ノック棒に形成された軸中心方向に突出する突起部が摺接しつつ、軸方向に移動するように構成したことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載された複式筆記具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献3に開示された複式筆記具のノック棒によると、ノック棒の前端部がボールペンリフィールの後端部の外側を前記した連結孔部によって囲むようにして接続することになる。これによると、ボールペンリフィールの後端部側がノック棒の一部によって覆われるために、ボールペンリフィールの撓み(湾曲)を大きくとることができず、ノック操作により選択されたボールペンリフィールの一部が軸筒内で接触し、筆記体の繰り出し動作や後退動作に不良が発生し得る。
【0011】
また、特許文献1〜3に開示された従来の複式筆記具においては、ノック棒をノック操作することで、ノック棒に形成された前記係止片が軸筒の軸芯方向に落ち込み、軸筒内に配置された鍔部等に係止される。これにより、ボールペンリフィール等の先端筆記部が軸筒の先端口から繰り出された状態に保持される。
すなわち、ガイドスリットに沿って摺動する前記指掛け部は、ノック操作に伴って前記ガイドスリット内に落ち込むような動作がなされる。
【0012】
したがって、ノック棒に形成された前記指掛け部は、その落ち込み度合いを考慮して予め甲高に突出したようなデザインを余儀なくされる場合が生ずる。
また、前記指掛け部に代えて、前記ノック棒にクリップ部を形成する場合には、クリップ部の根元部分が同様に軸芯方向に落ち込む動作がなされるために、軸筒に対するクリップ部の配置が不自然で、外観上において見栄えが悪いなどの印象を与えることになる。
【0013】
この発明は、前記した従来の複式筆記具の問題点に着目してなされたものであり、筆記体の繰り出し不良などの動作不良の発生を効果的に防止し得ると共に、前記したノック棒のカム片を不要にすることでノック棒を短寸にすることを可能にし、筆記具全体の長さ寸法を大きくすることなく、筆記距離の長いリフィールを搭載可能な複式筆記具を提供することを課題とするものである。
また、ガイドスリットに沿って摺動する前記指掛け部もしくはクリップ部の根元部分が軸芯に向かって落ち込む動作がなされることで外観上の見栄えを悪くするなどの問題を解消することができる複式筆記具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る複式筆記具は、軸筒の後端側にそれぞれ軸方向に沿ってかつ周方向に並ぶようにして形成された複数のガイドスリットと、前記ガイドスリットの各々に案内されて前記軸筒の軸方向に摺動可能になされ、前記軸筒内に収容された各筆記体の後端部がそれぞれ接続された複数のノック棒とが備えられ、前記複数のノック棒のうち、一つのノック棒が軸筒の先端側に向かって摺動されると、前記ノック棒に接続された筆記体の先端筆記部が、前記軸筒の先端口から突出して筆記が可能となるように構成された複式筆記具であって、前記軸筒内に回転可能に装着されると共に、前記複数のノック棒のうち、一つのノック棒が軸筒の先端側に向かって摺動されるに伴って回転駆動され、前記一つのノック棒を前進状態で係止する係止部が形成された回転カムが具備され、前記回転カムは、他の一つのノック棒が軸筒の先端側に向かって摺動されるに伴って回転駆動され、前記一つのノック棒における前記係止部による係止状態を解くと共に、前記他の一つのノック棒を係止部により前進状態で係止するように構成したことを特徴とする。
【0015】
この場合、好ましい形態においては、前記回転カムは円筒状に形成されて、その円筒軸が前記軸筒の軸方向に一致するようにして回転可能に支持され、前記ノック棒を軸筒の先端側に向かって前記ガイドスリットに沿って摺動させた場合に、当該ノック棒に形成された軸中心方向に突出する突起部が摺動することによって、軸回りの回転駆動を受ける第1カム部が前記回転カムの円筒面に形成され、かつ前記回転カムには前記軸回りの回転とは逆回りの回転作用を与える第2カム部が、前記回転カムの軸方向の端部に形成した構成にされる。
【0016】
加えて、前記回転カムは軸方向に移動可能に支持されると共に、前記第2カム部に対峙するようにして固定カム部が配置され、前記第2カム部が前記固定カム部に当接することで、前記回転カムに前記軸回りの回転とは逆回りの回転作用を与えるように構成される。
【0017】
この場合、好ましくは前記回転カムを軸方向に付勢して、前記第2カム部を前記固定カム部にかみ合い状態にするカム付勢ばねが備えられる。
【0018】
加えて好ましい形態においては、前記回転カムの円筒面に形成された前記第1カム部は、前記円筒面上において軸方向に長く島状に突出して形成された複数の島状突出部と、前記ノック棒が軸筒の先端側に向かって移動した時に、当該ノック棒に形成された前記突起部が摺動して、前記回転カムを一方向に回転駆動させる前記島状突出部にそれぞれ形成された軸方向に対して所定の傾斜角度を持つカム面より構成し、前記ノック棒を前進状態で係止する係止部が、軸方向に直交するようにして前記島状突出部に形成された係止面により構成される。
【0019】
また、前記した複式筆記具における他の好ましい形態においては、前記各島状突出部に形成された軸方向に対して所定の傾斜角度を持つ各カム面は、一つの前記ノック棒を軸筒の先端側に向かって前記ガイドスリットに沿って摺動させた場合に、前記回転カムを軸回りの第1回転方向に回転作用を与えるように構成すると共に、他の一つの前記ノック棒を軸筒の先端側に向かって前記ガイドスリットに沿って摺動させた場合に、前記回転カムを前記第1回転方向に対して逆回りの第2回転方向に回転作用を与えるように構成される。
【0020】
加えて、前記した複式筆記具における他の好ましい形態においては、前記回転カムに前記第1回転方向の回転作用を与える島状突出部と、前記回転カムに前記第1回転方向に対して逆回りの第2回転方向に回転作用を与える島状突出部には、一つの前記ノック棒を軸筒の先端側に向かって前記ガイドスリットに沿って摺動させた場合に、他の一つノック棒に形成された軸中心方向に突出する前記突起部が当接することで、前記他の一つノック棒が軸筒の先端側に向かって摺動するのを阻止するストッパー部がそれぞれ形成される。
【0021】
さらに、前記した複式筆記具における他の好ましい形態においては、前記各ノック棒には、当該ノック棒を後退する方向に付勢するリターンばねがそれぞれ装着され、前記島状突出部に形成された係止部に係止された前進状態のノック棒が、その係止が解かれた状態において、前記ノック棒に形成された前記突起部が前記島状突出部の長手方向の側面に突出する緩衝用突起に摺接しつつ、前記ノック棒が前記リターンばねの付勢力で後退位置に戻るように構成される。
【0022】
また、前記回転カムを構成する円筒状部材の円筒面は、軸方向に沿って同一径に構成され、前記円筒状部材の円筒面に、前記ノック棒に形成された軸中心方向に突出する突起部が摺接しつつ、軸方向に移動するように構成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
前記した構成の複式筆記具によると、任意の一つのノック棒の前進動作に伴って回転駆動され、前記ノック棒の前進状態で係止する係止部を有する回転カムを具備した構成にされているので、前記した特許文献1および2に示されたように各ノック棒に対して所定の距離をおいて係止片とカム片を配置したノック棒は不要となり、前記したノック棒を用いることで、筆記体としての例えばボールペンリフィールの長さを短縮させなければならないという問題を解消することができる。
【0024】
また、特許文献1および2に開示されたノック棒を用いることによる前記問題点を解消しようとする特許文献3に記載のノック棒を用いる場合、ボールペンリフィールの撓み(湾曲)を大きくとることができずに生ずる筆記体の繰り出し不良などの動作不良の発生も効果的に防止することができる複式筆記具を提供することができる。
【0025】
さらに、前記した複式筆記具によると、ノック棒のノック操作に伴って回転カムに形成された係止部に、ノック棒に形成された軸中心方向に突出する突起部が係止されるように構成されているので、ノック操作に伴ってノック棒に形成された指掛け部もしくはクリップ部の根元部分が軸芯に向かって落ち込み、外観上の見栄えを悪くするという従来の複式筆記具の問題点を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明に係る複式筆記具の第1の実施の形態について、筆記体として5本のボールペンリフィールを軸筒内に収容した複式多色ボールペンに基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては、同一部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面においては、代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の各図面に付けた符号を引用して説明する場合もある。
【0028】
図1に全体構成を断面図で示したとおり、複式筆記具1の外郭を構成する軸筒は、前軸2および後軸3により構成されている。すなわち、前軸2の後端部外周面に形成された雄ネジに対して、後軸3の前端部内周面に形成された雌ネジが螺合して両者が分離可能に連結されている。
前記前軸2はその先端部が円錐形状に縮径して、先端口4が開口されており、この先端口4よりボールペンリフィール5の先端筆記部(ボールペンチップ)5aが択一的に突出できるように構成されている。また、前記前軸2の外周面にはゴムもしくは合成樹脂を素材としたグリップ部6が捲装されるようにして装着されている。
【0029】
前記後軸3は、
図2に拡大して一部を断面図で示したとおり、その前端部内周面には前記前軸2に螺合するための雌ネジ7が施され、この雌ネジ7の若干後部寄りには後述するスペーサを嵌合して取り付けるための内周面に僅かに突出する環状突起8が形成されている。また後軸3の内周面の中央部には、5本のガイドリブ9が周方向に等間隔に、かつ軸方向に沿って突出して形成されている。これは前記したボールペンリフィール5を周方向に均等配置すると共に、ボールペンリフィール5の前進および後退運動においてガイドとしての役割を果たす。
【0030】
また、
図2に示すように前記後軸3の後端部側面には、それぞれ軸方向に沿ってかつ周方向に等間隔に並ぶようにして、5本のガイドスリット11が後軸3を貫通するようにして形成されている。このガイドスリット11は、後述するノック棒を案内して当該ノック棒をそれぞれ軸方向に摺動可能に支持する機能を果たす。また後軸3の後端部内面には、固定カム部12が形成されているが、この固定カム部については、後で
図11および
図14を用いて詳しく説明する。
【0031】
図1に示すように、後軸3内にはスペーサ13が後軸3の内周面に嵌合した状態で取り付けられている。
図3は、前記スペーサ13の単体を拡大して示したものであり、このスペーサ13には円筒部14と、この円筒部の軸方向の端面に一体に形成されたガイド棒15とが備えられている。そして、前記円筒部14には、前記ボールペンリフィール5を挿通するための5つのリフィール挿通孔16が形成されると共に、前記ガイド棒15には前記ボールペンリフィール5の前進および後退動作をガイドするために円弧状に凹んだ5本の円弧状溝15aが軸方向に沿って形成されている。
【0032】
図3に示したスペーサ13における前記円筒部14の円筒面には、
図3には現れていないが、僅かに中央部が凹んだ状態に成形されており、
図2に示した後軸3の前記環状突起8を利用して、スペーサ13は
図1に示すように後軸3内において嵌合されることにより取り付けられている。
また、
図1に示すように後軸3内には、この後軸3の後端部に形成された前記ガイドスリット11に案内されて軸方向に摺動可能にノック棒18が配置されている。
【0033】
図4および
図5は、前記ノック棒18の外観構成を拡大して示したものである。このノック棒18の前端部には、円筒状に突出して前記ボールペンリフィール5の後端部内面に嵌合するリフィール取付け部19が形成されると共に、ノック棒18の後端部には、前記ガイドスリット11を介して後軸3の外側に突出する半円形状の指掛け部20が形成されている。
また、ノック棒18の前記指掛け部20の背中合わせの位置には、
図5に示すように円柱状の突起部21が形成されており、このノック棒18は
図1に示すように後軸3内に装着された状態で、前記円柱状の突起部21は、軸中心方向に向くように形成されている。
【0034】
さらにノック棒18におけるリフィール取付け部19の若干後方寄りには、一部が鍔状になされたばね受け部22が形成されている。
このばね受け部22は、
図1に示すようにノック棒18にリフィール5が取り付けられた状態において、前記スペーサ13の円筒部14との間でコイル状のリターンばね23が介装され、このリターンばね23の作用により、前記ノック棒18およびリフィール5が軸筒内で後退する方向に付勢される。
【0035】
図1に示すように後軸3内の後端部付近には、回転カム25が収容されている。この回転カム25は円筒状に形成されて、その円筒軸が金属製の支持シャフト26によって回転可能にかつ軸方向に移動可能に支持されている。
前記金属製の支持シャフト26は、
図6に拡大して示したとおり、前方の一端部が大径部26aになされ、後方の他端部が小径部26bになされている。したがって、支持シャフト26の前記小径部26b側からコイル状のカム付勢ばね27、続いて前記回転カム25を挿通した上で、前記小径部26bを後軸3の後端部に嵌合することで、回転カム25の円筒軸が後軸3の軸方向に一致するように取り付けることができる。なお、支持シャフト26は金属製であると説明したが、これは樹脂製でも良い。
【0036】
前記した回転カム25の取付け構造によると、円筒状の回転カム25は、支持シャフト26の軸回りに回転可能に支持され、かつ支持シャフト26の軸方向に摺動可能に支持されると共に、前記カム付勢ばね27の作用により回転カム25は軸方向の後方に向けて付勢された状態になされる。
【0037】
図7〜
図10は、前記回転カム25の構成を示したものである。この回転カム25は
図7に示すとおり、軸方向に沿って同一径に構成された円筒状部材25aの円筒面に、第1カム部31が形成されている。この第1カム部31は、前記円筒面上において軸方向に長く島状に突出して形成された5つの島状突出部31aにより構成されており、前記各島状突出部31aの軸方向の後端側、すなわち
図7および
図8において向かって右側には、軸方向に対して所定の傾斜角度を持つカム面31bが形成されている。
【0038】
また、前記各島状突出部31aの前端側、すなわち
図7および
図8において向かって左側には、軸方向に直交するように形成された係止面による係止部31cが形成されている。さらに、前記各島状突出部31aの前端側における前記係止部31cに隣接する位置には、軸方向に対して所定の傾斜角度を持つ傾斜面31dが形成されている。
【0039】
一方、前記回転カム25には、その軸方向の後端部に第2カム部32が形成されている。この第2カム部32は、前記回転カム25の円筒部端面から軸方向の後方に突出する2本の棒状突出部32aにより構成され、各棒状突出部32aの頂端部には、軸に直交する面に対して所定の傾斜角度を持つカム面32bが形成されている。
【0040】
なお、
図9は前記した回転カム25における第1カム部31の中央部において、軸に直交する方向で切断した断面図で示しており、第1カム部31を構成する前記した5つの島状突出部31aは、周方向に等間隔に形成されている。
また、
図10は前記した第2カム部32の棒状突出部32aの位置において、軸に直交する方向で切断した断面図で示しており、前記第2カム部32のカム面32bは、回転カム25の軸を中央にした対称位置(180度対向する位置)にそれぞれ形成されている。
【0041】
前記した回転カム25の第2カム部32に対峙するようにして、前記した固定カム部12が後軸3の後端部内面に配置されている。この固定カム部12は、
図11に拡大断面図で示したとおり、円環状に突出した端面における180度対向する位置にそれぞれ所定の角度の傾斜面を有する第1カム面12aが形成され、この2つの第1カム面12aを円環状に結ぶ位置には第2カム面12bが形成されている。すなわち、前記第1カム面12aと第2カム面12bとが交互に周方向に連続して形成されており、その作用は
図14に示す模式図に基づいて後で説明する。
【0042】
なお、
図11において後軸3の後端部中央に形成された貫通孔3aは、
図6に示した金属製の支持シャフト26における小径部26bが嵌合されるためのものであり、これにより、前記した回転カム25は軸筒内の後端部側に回転可能にかつ軸方向に移動可能に取り付けられる。
【0043】
図12〜
図14は、前記した回転カム25における第1カム部31、第2カム部32、後軸3内に配置された固定カム部12の作用について説明するものである。
図12は、前記した回転カム25における第1カム部31の一部の構成を模式的に示したものであり、この
図12においては周方向に隣接する2つの島状突出部31aが展開された状態で描かれている。また
図13は、回転カム25における第2カム部32の棒状突出部32aを展開して示したものであり、棒状突出部32aの先端部には、軸に直交する面に対して同一の傾斜角度を有するカム面32bがそれぞれ形成されている。
【0044】
さらに
図14(a)および(b)は、後軸3内に配置された固定カム部12を展開して示したものであり、
図14(a)は前記した先端筆記部(ボールペンチップ)5aの繰り出し操作の前後の状態を示し、
図14(b)は先端筆記部5aの繰り出し操作の途中の状態を示している。
なおこの
図14においては、固定カム部12に対して前記した第2カム部32における2つの棒状突出部32aのそれぞれのカム面32bが当接することになるが、ここでは図が繁雑になるために、1つの棒状突出部32aのカム面32bが当接している状態を模式的に示している。
【0045】
図14に示すように、後軸3内に配置された固定カム部12には、前記したとおり第1カム面12aと第2カム面12bとが交互に周方向に連続して形成されているが、前記第2カム部32のカム面32bは、前記したコイル状のカム付勢ばね27の作用により第2カム面12bに当接している。
【0046】
なお、固定カム部12に形成された第1カム面12aは、以下に説明する先端筆記部5aの繰り出し動作に直接関係するものではないが、この第1カム面12aは、前記した支持シャフト26を利用して回転カム25を後軸3内に組み付ける際に利用される。
すなわち、組み付けの際に前記棒状突出部32aの先端部が第1カム面12aに当接した場合、棒状突出部32aの先端部は第1カム面12aを滑って、前記第2カム面12bに落ち込むように作用する。したがって、前記回転カム25を後軸3内に組み付けた際には、必ず
図14(a)に示す状態になされる。
【0047】
前記した複数のノック棒18のうち、任意の一つのノック棒がガイドスリット11に沿って軸筒の先端側に向かって摺動されると、
図12に示す模式図において、ノック棒18に形成された軸中心方向に突出する円柱状の突起部21が、回転カム25を構成する円筒状部材25aの円筒面に摺接しつつ軸方向の前方に移動する。
図12には前記突起部21の移動状態が矢印aで示されている。
これにより、前記ノック棒18に形成された突起部21は、
図12に矢印aで示されているとおり、島状突出部31aに形成されたカム面31bに当接する。なお、5本のリフィールを備えることで、5つの島状突出部31aを具備したこの実施の形態においては、前記カム面31bの軸方向に対する傾斜角度Xは、20〜30度程度とすることが望ましい。
【0048】
前記ノック棒18に形成された突起部21が、島状突出部31aに形成されたカム面31bに当接する初期の状態においては、
図13に展開して示す第2カム部32のカム面32bは、
図14(a)に示すように固定カム12に形成された第2カム面12bの深い位置(後退位置)に当接している。
続いて、ノック棒18が先端側に向かってさらに摺動されると、回転カム25のカム面31bに当接する前記突起部21は、相対的に矢印bで示す前進作用を受けて、回転カム25は矢印d方向、すなわち軸回りの第1回転方向に回転する。この動作により、
図14(b)に示すように第2カム部32のカム面32bは、固定カム12に形成された第2カム面12b上に沿って矢印d方向にせり上る。
【0049】
この時、第2カム部32のカム面32bは、前記したコイル状のカム付勢ばね27の作用により、
図14(a)に示す状態に戻ろうとする動作が働き、前記回転カム25を前記第1回転方向に対して逆回りの第2回転方向(矢印e)に回転させようとするトルクが発生する。
この状態において、なおもノック棒18は先端側に向かう動作を受け、ノック棒18に形成された突起部21が、
図12に示すように島状突出部31aに形成された係止部31cまで達すると、前記第2回転方向(矢印e)の回転トルクを受ける回転カム25の作用により、ノック棒18に形成された突起部21は、相対的に矢印cで示す動きをすることになり、突起部21は島状突出部31aに形成された係止部31cに係止される。
これにより、ノック棒18に取り付けられたリフィール5の先端筆記部5aが、前記した前軸2の先端口4から突出して筆記が可能になる。
【0050】
この状態において、任意の他の一つのノック棒18をガイドスリット11に沿って軸筒の先端側に向かって摺動させると、前記と同様の作用により、回転カム25は矢印d方向、すなわち第1回転方向に回転するため、島状突出部の係止部31cに係止されていた前進動作中のリフィール5を支持するノック棒18の突起部21は、
図12に示す傾斜面31dを摺動しながら、前記したリターンばね23の作用により軸筒内を後退する。
【0051】
そして、任意の他の一つのノック棒18の前進動作による前記係止部31cによる係止動作は、前記した動作と同様になされ、これにより任意の他の一つのリフィール5が使用可能になる。
なお、前記回転カム25の島状突出部31aに形成された傾斜面31dは、軸方向に対する傾斜角度Yが、15〜25度程度とすることが望ましい。この傾斜面31dは、ノック棒18の突起部21が、前記係止部31cによる係止から解かれた状態において、ノック棒18およびリフィール5の後退動作を円滑に誘導するように作用し、これによりノック棒18およびリフィール5の戻り不良を防止することに寄与できる。
【0052】
次に
図15〜
図22は、この発明に係る複式筆記具の第2の実施の形態を示したものであり、これは筆記体として1本のシャープペンシルリフィール、および2本のボールペンリフィールを軸筒内に収容した例を示している。
なお、
図15〜
図22に示す第2の実施の形態においては、すでに説明した
図1〜
図14に示した第1の実施の形態と同一の機能を果たす部分を同一符号で示している。したがって、その詳細な説明は適宜省略する。
【0053】
図15(a)は、シャープペンシルリフィール41が繰り出され、前軸2の先端口4より先端筆記部41aが突出した状態を示している。
この実施の形態において用いられるシャープペンシルリフィール41の単体構成を
図15(b)に示しており、シャープペンシルリフィール41は、先端に筆記部41aを備えた先部材41bと、この先部材41bに接続された芯ケース41cと、前記先部材41bと芯ケース41cとの間に配置されたチャックばね41dを備えている。
また、前記芯ケース41cの後端部はボールジョイント等の連結部41eを介して短軸の継手部材41fが接続され、この継手部材41fの後端部にノック棒への接続部41gが取り付けられている。
【0054】
前記連結部41eは、芯ケース41cと継手部材41fとの間を屈曲可能に連結するものであり、これによりシャープペンシルリフィール41の繰り出しおよび収納を可能にしている。すなわち関節機能を備えた前記連結部41eの存在により、長尺状の芯ケース41cを湾曲させずにシャープペンシルリフィール41の繰り出し動作等を可能にしており、これにより芯ケース41c内の筆記芯を折損させるなどの問題を回避するようにされている。
【0055】
この実施の形態においては、前記シャープペンシルリフィール41の後端部に配置された接続部41gがノック棒18の前端部に形成されたリフィール取付け部19に嵌合することで取り付けられている。またこの実施の形態においては、ノック棒18の指掛け部20に連続してクリップ20aが形成されているが、このクリップ20aは、必ずしも必須のものではない。
【0056】
周知のとおり、前記シャープペンシルリフィール41内には、図示していないが筆記芯を保持する金属製のチャック、このチャックを取り囲む環状の締め具、筆記芯を一時的に保持するゴム製の保持チャックなどが備えられている。
そして、シャープペンシルリフィール41が繰り出された
図15(a)に示す状態において、前記指掛け部20を前方にノック操作することで、前記チャックがチャックばね41dを圧縮しながら先部材41b内を前進し、これにより筆記芯の繰り出しがなされる。すなわち、前記指掛け部20のノック操作を繰り返すことで、先端筆記部41aより筆記芯が順次繰り出されることになる。
【0057】
図16は後軸3の単体構成を示したものであり、これは第1の実施の形態としてすでに説明した
図2に示す構成に対応するものとなる。
ただしこの
図16に示す後軸3の構成においては、後軸3の後端部側面には、それぞれ軸方向に沿ってかつ周方向に等間隔に並ぶようにして、3本のガイドスリット11が後軸3を貫通するようにして形成されており、また、後軸3の内周面には3本のガイドリブ9が周方向に等間隔に、かつ軸方向に沿って突出して形成されている。
これにより、前記したシャープペンシルリフィール41および2本のボールペンリフィール5を周方向に均等配置すると共に、各リフィール5,14の前進および後退運動においてガイドとしての役割を果たす。
【0058】
図17は後軸3の内周面に嵌合した状態で取り付けられるスペーサ13の単体構成を示したものであり、これは第1の実施の形態としてすでに説明した
図3に示す構成に対応するものとなる。
ただしこの
図17に示すスペーサ13においては、円筒部14には、前記各リフィール5,14を挿通するための3つのリフィール挿通孔16が軸回りに等間隔に形成されると共に、ガイド棒15には前記各リフィール5,14の前進および後退動作をガイドするために円弧状に凹んだ3本の円弧状溝15aが軸方向に沿って形成されている。
【0059】
図18は円筒状に形成された回転カム25を回転可能にかつ軸方向に移動可能に支持する支持シャフト26の構成を示すものであり、これは第1の実施の形態としてすでに説明した
図6に示す構成に対応するものとなる。この
図18に示す支持シャフト26においても、前方の一端部が大径部26aになされ、後方の他端部が小径部26bになされており、その基本構成は、
図6に示した支持シャフト26と同一である。
なお、
図18に示す支持シャフト26においては、軸方向の中央部に外径が若干異なる環状の段部26cが施されており、
図15(a)に示すように、この段部26cにカム付勢ばね27の一端部が当接し、回転カム25を軸方向の後端側に押すように作用する。
【0060】
図19および
図20は、第2の実施の形態において用いられる回転カム25の構成を正面図および一部断面図で示したものであり、また
図21は
図19おける回転カム25をその右側(第2カム部側)から見た状態の側面図である。
この第2の実施の形態に用いられる回転カム25の第1カム部31には、軸筒内に収容されるリフィールの数に合わせて3つの島状突出部31aが周方向に等間隔に形成されている。
【0061】
そしてこの実施の形態においては、各島状突出部31aのうちのいずれか1つの島状突出部31aに形成されたカム面31bの傾斜方向は、他の島状突出部31aに形成されたカム面31bの傾斜方向と軸対称となるように構成されている。
すなわち
図22に3つの島状突出部31aを展開して示したように、上下の島状突出部31aに施されたカム面31bの傾斜方向は、軸方向に対して所定の角度をもってそれぞれ同一方向に向くように構成されているのに対して、中央の島状突出部31aに施されたカム面31bの傾斜方向は、前記2つのカム面31bの傾斜方向に対して軸対称の傾斜方向となるように構成されている。
【0062】
すなわち、
図22に示す上下いずれかの島状突出部31aに位置するノック棒18を軸筒の先端側に向かって摺動させた場合には、回転カム25を軸回りの第1回転方向に回転作用を与えるように作用し、
図22に示す中央の島状突出部31aに位置するノック棒18を軸筒の先端側に向かって摺動させた場合には、前記回転カム25を前記第1回転方向に対して逆回りの第2回転方向に回転作用を与えるように作用する。
この構成によれば、全てのノック棒18を同時に軸筒の先端側に向かって摺動させることが不可能となるように、すなわち全てのリフィールを同時に繰り出すことができないように作用する。
【0063】
図22には前記した動作を説明するために、2つのノック棒18に形成された突起部21が示されている。この2つの突起部21は、第1の実施の形態と同様にリフィールの繰り出し操作により矢印a方向に移動するものの、傾斜方向が軸方向で対称となるそれぞれのカム面31bに同時に当接するために、回転カム25は回転不可能となる。したがって、全てのノック棒18を同時に前方に移動させることは不可能となる。
【0064】
なお、この種の複式筆記具においては、複数のノック棒18を同時に前方に移動させようとした場合には、これらのノック棒に連結された各リフィールの先端筆記部が軸筒の先端口付近で衝突するために、実質的に複数のノック棒を同時に前方に移動させることは不可能である。
【0065】
しかしながら、第1の実施の形態においては、後軸3から前軸2を取り外した状態においては、前記動作が可能となり、例えば全てのリフィールを掴んで故意に前方に引き出すような動作をさせた場合には、全てのリフィール(ノック棒)が繰り出し状態となって、初期の状態に復帰させることが不可能となる場合が生ずる。
したがって、第2の実施の形態における回転カム25の前記した第1カム部31の構成を採用することで、前記した技術的な課題を解消することができる。
【0066】
なお、前記した第2の実施の形態における回転カム25の構成によると、
図22に模式図で示す上下のいずれかの島状突出部31aに施されたカム面31bにノック棒の突起部21が当接する場合と、中央の島状突出部31aに施されたカム面31bにノック棒の突起部21が当接する場合とでは、カム面31bの傾斜方向が異なるために回転カム25の回転方向が異なるものとなる。
しかしながら回転カム25は、いずれの方向に回転が付与されても元の方向に回転復帰するように構成されている。
【0067】
すなわち、
図19〜
図21に示すように、回転カム25の軸方向の後端部側に形成された第2カム部32には、回転カム25の円筒状の端面に、一対のカム面32c,32dによる2つの山形のカム部が形成されている。すなわちカム面32cと32dの境界部が山形のカム部の頂点となるように構成されている。
【0068】
この第2カム部32は、
図16に示す後軸3内の固定カム部12に当接することにより、回転カム25がいずれの方向に回転動作しても、元の方向に回転復帰するように作用する。これにより、ノック棒18の突起部21が、回転カム25の係止部31cに係止される動作、および異なるノック棒18の前進動作により、先の突起部21の係止動作が解かれる点については、前記した第1の実施の形態と同様になされる。
【0069】
以上説明した複式筆記具によると、任意の一つのノック棒の前進動作に伴って回転駆動され、前記ノック棒を前進状態で係止する係止部を有する回転カムを具備した構成にされているので、特許文献1および2に開示されたノック棒を用いることで、筆記体としての例えばボールペンリフィールの長さを短縮させなければならないという問題を解消することができる。
さらに、前記した複式筆記具によると、特許文献3に開示されたノック棒を用いることによる筆記体の繰り出し不良などの動作不良の発生を効果的に防止することができるなど、前記した発明の効果の欄に記載した作用効果を得ることができる。
【0070】
ところで、
図19〜
図21に示した回転カム25を利用した場合には、
図22に示す模式図に基づいて説明したように、全てのノック棒18を同時に前方に移動させることは不可能になるものの、各ノック棒18について前方に移動させるタイミングをずらした場合には、全てのノック棒18を前方に移動させることが可能になる場合も発生する。
この場合においては、前記したとおり全てのリフィール(ノック棒)が繰り出し状態となって、初期の状態に復帰させることが不可能となる。
【0071】
そこで、次に示す
図23および
図24は、前記した問題をさらに解消し得る回転カム25の形態を説明するものである。すなわち
図23および
図24は、
図19に示した回転カムを基本とした第1変形例について示したものであり、
図23は前記回転カム25を第2カム部側から見た状態の模式図であり、
図24は前記回転カム25の第1カム部を展開して示した模式図である。
【0072】
この第1変形例については、
図21および
図22に示した形態に対して、ハッチングを付けた部分、すなわちハッチングで示すストッパー部31eが加わっている。
このストッパー部31eは、回転カム25に前記第1回転方向の回転作用を与える島状突出部(
図24に示す上側の島状突出部31a)および回転カム25に前記第1回転方向に対して逆回りの第2回転方向に回転作用を与える島状突出部(
図24に示す中央の島状突出部31a)のそれぞれに対して施されている。
そして、各ストッパー部31eは、
図24に模式図で示したように各島状突出部31aにおけるカム面31bが施された側面に対して背面側にそれぞれ配備されている。
【0073】
この構成によると、
図24にノック棒の突起部を符号21で示したように、いずれか一つのノック棒を軸筒の先端側に向かって移動させた場合に、他の一つノック棒に形成された突起部21は、いずれかのストッパー部31eに当接し、この突起部21を備えたノック棒は、軸筒の先端側に向かって摺動するのが阻止される。
すなわち、
図24に示すように2つのノック棒18に備えられたそれぞれの突起部21は、矢印cで示すように軸筒の先端側に向かって摺動可能であるが、残りの1つのノック棒18に備えられた突起部21は、矢印aで示すようにストッパー部31eに当接して前進が阻止される。
【0074】
したがって、
図23および
図24に示すように、回転カム25にストッパー部31eを配備することにより、全てのリフィール(ノック棒)が繰り出し状態になされる問題を、効果的に防止することができる。
【0075】
また、
図25および
図26は、
図19に示した回転カムを基本として、その第2変形例について示したものであり、この
図25および
図26は、前記した回転カム25を第2カム部側から見た状態の模式図および第1カム部を展開して示した模式図である。
この第2変形例については、
図21および
図22に模式図で示した形態に対して、ハッチングを付けた部分が加わっており、軸方向に長い島状突出部31aの長手方向の両辺に、軸方向と直交する方向に円弧状の突出部31fが、それぞれ島状突出部31aと一体に成形されている。
【0076】
図25および
図26に示した回転カム25の構成によると、島状突出部31aに形成された係止部31cに係止された前進状態のノック棒18の前記突起部21は、その係止が解かれた状態において、ノック棒に形成された前記突起部21が島状突出部21aの長手方向の側面に突出する円弧状の緩衝用突起31fに摺接しつつ、前記したリターンばね23の付勢力で後退位置に戻るように動作する。
【0077】
すなわち、島状突出部31aに前記した緩衝用突起31fが形成されているために、前進状態のノック棒18における前記突起部21は、緩衝用突起31fに摺接した後に後退位置に戻るように動作する。
これによれば、前記緩衝用突起31fの存在により、ノック棒18の戻り動作に制動が付与され、ノック棒18が後退位置に戻った時に発生する衝撃が和らげられる。
【0078】
それ故、ノック棒18の戻り動作において発生する衝撃音を減少させることができると共に、ノック棒18に常に衝撃が加わることにより、リフィール内のインク中に微小な泡等が生成されるのを防止することにも寄与できる。
【0079】
なお、
図25および
図26は、島状突出部31aに形成されたカム面31bの傾斜方向が互いに異なるように(軸対称となるように)された構成に、緩衝用突起31fを形成した例を示しているが、この緩衝用突起31fは、
図7〜
図10に示したように島状突出部31aに形成されたカム面31bの傾斜方向が同一方向に向くようにされた構成にも適用することができる。
この場合には、ノック棒18の戻り動作時において、前記突起部21が移動する経路に、すなわち各島状突出部31aの長手方向の一側面に、前記緩衝用突起31fを配置することで同様の作用効果を得ることができる。
【0080】
以上説明した実施の形態においては、回転カム25を構成する円筒状部材25aの円筒面は、軸方向に沿って同一径になされ、前記円筒状部材25aの円筒面に、ノック棒18に形成された軸中心方向に突出する突起部21が摺接しつつ、軸方向に移動するように構成されている。したがって、前記したガイドスリット11に沿って移動するノック棒18の指掛け部20は、軸筒の軸芯と平行状態に移動することになる。
【0081】
図27は、その様子を示した第3の実施の形態を示す外観図であり、すでに説明した各部に相当する部分を同一符号で示している。なお、
図27(a)は、いずれか1つの指掛け部20を軸筒の前方に向かってノック操作した状態を示している。また
図27(b)は全ての指掛け部20が、軸筒の後端部側に戻されている状態を示している。
特に、
図27(a)に示されているように、ガイドスリット11に沿って前進移動する指掛け部20は、軸筒の軸芯に対して平行移動し、従来例で示した複式筆記具のように、前進動作に伴って指掛け部20が、ガイドスリット11内に落ち込むような動作はなされない。
【0082】
これは、
図15(a)に示したように、ノック棒18に一体にクリップ20aを形成した場合も同様であり、クリップ20aの前進動作に伴ってその根元部分が軸芯方向に落ち込む動作はなされず、クリップ20aは軸筒の軸芯に対して平行移動する。
したがって、ガイドスリットに沿って摺動する前記指掛け部もしくクリップの落ち込み動作に配慮して、前記指掛け部もしくクリップを予め甲高に突出させるなどの工夫は不必要となり、デザイン上の観点においても優れた複式筆記具を提供することができる。