【文献】
Russell Higuchi et al.,Simultaneous Amplification and Detection of Specific DNA Sequences,BIO/TECHNOLOGY,1992年 4月,Vol.10,pp.413-417
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抽出用カラムは、ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカ、アセチルセルロース、セロファンからなる群から選ばれる少なくともいずれか1つを材料とし、平均孔径が0.1nm以上かつ2nm以下である膜を含む、請求項18または19に記載のキット。
前記抽出用カラムと前記収容部との間に、前記抽出用カラム側から前記収容部側に向かって窄むテーパー部が設けられている、請求項18〜20のいずれか一項に記載のキット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
標的核酸を高精度かつ高感度に検出するためには、核酸増幅産物を汚染する汚染物質が混入しない状態で検出を行うことが好ましい。従来の標的核酸の検出方法では、例えば、核酸を抽出する工程と標識化された核酸を増幅する工程との間、または、標識化された核酸を増幅する工程と核酸増幅産物を試験紙や検出装置で検出する工程との間において、試料容器間で試料の移し替えが行われることが一般的であった。
【0006】
以上の現状に鑑み、本明細書は、核酸増幅産物を汚染する汚染物質が混入することを抑制し、高精度かつ高感度な検出が実現可能な標的核酸の検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、以下に示す標的核酸を検出する方法、または検出するキットを開示する。
(1)標的核酸を検出する方法であって、
前記標的核酸の増幅工程と、標識化工程と、検出工程と、
を含み、
前記増幅工程、前記標識化工程、および前記検出工程は、同一の閉空間内で実施される、方法。
(2)前記標的核酸の抽出工程をさらに含み、
前記抽出工程、前記増幅工程、前記標識化工程、および前記検出工程は、同一の閉空間内で実施される、(1)に記載の方法。
(3)標的核酸を検出するキットであって、
前記標的核酸を増幅する増幅剤と、
前記標的核酸を標識化する標識剤と、
前記増幅剤および前記標識剤を収容して封止された容器と、を備える、キット。
(4)前記容器内を区画する隔壁をさらに備え、
前記封止された容器内で、前記隔壁によって前記増幅剤と前記標識剤が隔離される初期状態から、前記増幅剤と前記標識剤の少なくとも一部が混合される混合状態に移行可能な、(3)に記載のキット。
(5)前記初期状態において前記隔壁の少なくとも一部が開放されて前記混合状態に移行可能な、(4)に記載のキット。
(6)前記封止された容器の外側からの圧力によって前記隔壁の少なくとも一部を開放可能な、(5)に記載のキット。
(7)前記容器内に、前記隔壁の前記増幅剤が収容されている側と前記標識剤が収容されている側の双方に連通する空間が設けられており、
前記封止された容器内で、前記増幅剤と前記標識剤の少なくともいずれか一方の少なくとも一部が前記隔壁を超えて、前記混合状態に移行可能な、(4)に記載のキット。
(8)前記標的核酸を検出可能な検出子を前記容器内にさらに備える、(3)〜(7)のいずれかに記載のキット。
(9)前記検出子の少なくとも一部は、前記増幅剤と前記標識剤の少なくともいずれか一方に浸漬している、(8)に記載のキット。
(10)前記容器内に収容された前記標的核酸を検出可能な検出子と、
前記容器内を区画する隔壁をさらに備え、
前記封止された容器内で、前記隔壁によって前記増幅剤および前記標識剤の混合物と、前記検出子が隔離される第1状態から、前記混合物に前記検出子の少なくとも一部が浸漬される第2状態に移行可能な、(3)に記載のキット。
(11)前記第1状態において前記隔壁の少なくとも一部が開放されて前記第2状態に移行可能な、(10)に記載のキット。
(12)前記封止された容器の外側からの圧力によって前記隔壁の少なくとも一部を開放可能な、(5)に記載のキット。
(13)前記容器内に、前記隔壁の前記増幅剤および前記標識剤が収容されている側と前記検出子が収容されている側の双方に連通する空間が設けられており、
前記封止された容器内で、前記増幅剤および前記標識剤の少なくとも一部が前記隔壁を超えて前記検出子の少なくとも一部を浸漬し、前記第2状態に移行可能な、(10)に記載のキット。
(14)前記検出子は、目視で検出可能な発光又は発色を提示する発光物質又は発色物質を含む標識剤である、(8)〜(13)のいずれかに記載のキット。
(15)前記検出子は、前記容器の内壁に取り付けられる、(14)のいずれかに記載のキット。
(16)前記検出子は、前記容器の内壁と一体化している、(14)に記載のキット。
(17)前記検出子は、透過性材料の検出片である、(15)または(16)に記載のキット。
(18)前記容器内に前記標的核酸を抽出する抽出用カラムをさらに備え、
前記抽出用カラムは、前記容器内を、前記標的核酸を含む試料を注入する注入部と、前記増幅剤および前記標識剤が収容された収容部とに区画する、(3)〜(17)のいずれかに記載のキット。
(19)前記抽出用カラムは、前記標的核酸の増幅を阻害する物質を吸着する、(18)に記載のキット。
(20)前記抽出用カラムは、ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカ、アセチルセルロース、セロファンからなる群から選ばれる少なくともいずれか1つを材料とし、平均孔径が0.1nm以上かつ2nm以下である膜を含む、(18)または(19)に記載のキット。
(21)前記抽出用カラムと前記収容部との間に、前記抽出用カラム側から前記収容部側に向かって窄むテーパー部が設けられている、(18)〜(20)のいずれかに記載のキット。
(22)前記テーパー部は、少なくともその表面が断熱性である、(21)に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、標的核酸の検出方法等に関する。本明細書が開示する標的核酸の検出方法の1つは、標的核酸の増幅工程と、標識化工程と、検出工程と、を含むことができ、増幅工程、標識化工程、および検出工程は、同一の閉空間内で実施される。標的核酸の検出における各工程を同一の平空間内で実施することで、核酸増幅産物を汚染する汚染物質が混入することを抑制し、高精度かつ高感度な検出が実現できる。
【0010】
本明細書が開示する、標的核酸を検出するキットの1つは、標的核酸を増幅する増幅剤と、標的核酸を標識化する標識剤と、増幅剤および標識剤を収容して封止された容器と、を備える。増幅剤と標識剤が容器内に収容されて封止されているため、この容器内で増幅工程および標識化工程を実施することができ、核酸増幅産物を汚染する汚染物質が混入することを抑制し、高精度かつ高感度な検出が実現できる。
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
なお、本明細書において「核酸」とは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、全RNA、hnRNAおよび合成RNAを含む全てのDNAおよびRNA、並びにペプチド核酸、モルホリノ核酸、メチルフォスフォネート核酸およびS−オリゴ核酸などの人工合成核酸を含む。また、1本鎖であっても2本鎖であってもよい。また、本明細書において「標的核酸」とは、任意の配列を有する任意の核酸である。典型的には、体質、遺伝病、癌などの特定疾患についての発症、疾患診断、治療予後、薬剤や治療の選択などのヒトや非ヒト動物における遺伝子上の指標となる塩基配列を有する可能性のある核酸が挙げられる。指標としては、SNPなどの多型や先天的又は後天的変異が挙げられる。また、病原菌やウイルスなどの微生物由来の核酸なども標的核酸に含まれる。
【0013】
標的核酸は、後述する試料又はその核酸画分をそのまま用いることもできるが、好ましくは、PCRによる増幅反応、より好ましくはマルチプレックスPCRによる増幅反応により、複数の標的核酸が増幅された増幅産物を用いることが好ましい。
【0014】
本明細書において「試料」とは、標的核酸を含む可能性のある試料をいう。試料としては、細胞、組織、血液、尿、唾液等が含まれ、核酸を含む任意の試料を用いることができる。こうした各種の試料からの核酸を含む画分は当業者であれば適宜従来技術を参照して取得することができる。
【0015】
本明細書において「標的配列」とは、検出対象の標的核酸に特徴的な1又は2以上の塩基からなる配列をいう。例えば、標的核酸同士のホモロジーの低い部分配列であってもよいし、試料に含まれる可能性のある他の核酸に相補性もしくは相同性の低い配列であってもよい。標的配列は、標的核酸に特徴的な配列であってもよい。こうした標的配列は、人工的に配列を変更したものであってもよい。
【0016】
以下では、本明細書の開示の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本明細書の開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本明細書の開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに開示は、さらに改善された標的核酸の検出方法等を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0017】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本明細書の開示を実施する際に必須のものではなく、特に本明細書の開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本明細書の開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0018】
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
[標的核酸を検出する方法]
【0019】
本明細書に開示される検出方法は、標的核酸の増幅工程と、標識化工程と、検出工程と、を備えている。これらの工程は、同一の閉空間内で実施される。
【0020】
ここでいう増幅工程は、従来公知の核酸を増幅して核酸増幅産物を製造する工程であって、公知の全ての形態が包含される。得られる増幅断片の形態についても、従来公知の全ての形態(完全二本鎖、一方の5’末端に一本鎖部分を有する部分二本鎖、双方の5’末端に一本鎖部分を有する部分二本鎖など)が含まれる。
【0021】
ここでいう標識化工程は、従来公知の核酸、典型的には核酸増幅産物を、標識剤により標識化する工程であって、公知の全ての形態が包含される。なお、標識化工程は、核酸増幅工程とは別個に実施されるほか、核酸増幅工程において同時に実施されるものであってもよい。この場合、核酸増幅に用いるプライマーセットの少なくとも一方のプライマーに標識物質を予め結合させておき、これを標識剤として用いることができる。また、核酸増幅に用いるヌクレオチドに標識物質を予め結合させておき、これを標識剤として用いることもできる。
【0022】
標識剤は、公知のものを用いることができるが、目視(肉眼で)で検出可能な発光又は発色を提示する発光物質又は発色物質である標識物質を含んでいることが好ましい。標識物質が、直接それ自体が、他の成分を必要としないで肉眼で標的核酸を視認可能なシグナルを生成でき、検出工程を目視だけで実施できるからである。こうした標識物質としては、典型的には、各種の顔料や染料などの各種の着色剤が挙げられる。また、化学発光物質が挙げられる。さらに、これに準ずる、金、銀などの貴金属ほか、銅などの各種金属又は合金、あるいは当該金属を含む有機化合物(錯体化合物であってもよい)が挙げられる。さらにまた、マイカ等の無機化合物が挙げられる。
【0023】
この種の標識物質としては、より具体的には、各種染料、各種顔料、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウム化合物、オレフィン、エノールエーテル、エナミン、アリールビニルエーテル、ジオキセン、アリールイミダゾール、ルシゲニン、ルシフェリン及びエクリオンを包含する化学発光物質が挙げられる。また、こうした標識物質でラベルされているラテックス粒子などの粒子が挙げられる。さらに、金コロイド若しくはゾル又は銀コロイド若しくはゾルを包含するコロイド若しくはゾル等が挙げられる。さらにまた、金属粒子、無機粒子等が挙げられる。
【0024】
標識剤の一部を構成するラテックス粒子などの粒子の平均粒子径は、特に限定しないが、例えば、20nm以上20μm以下であり、典型的には、40nm〜10μm、好ましくは0.1μm以上10μm以下、特に好ましくは0.1μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上2μm以下の平均粒子径を有している。好ましい粒子は、水溶液に懸濁でき、そして水不溶性ポリマー材料からなる粒子である。例えばポリエチレン、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アクリロニトリルポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリビニルアセテート−アクリレート、ポリビニルピロリドン又は塩化ビニル−アクリレートが挙げられる。それらの表面上に活性基、例えばカルボキシル、アミノ又はアルデヒド基を有するラテックス粒子も挙げられる。
【0025】
こうした標識物質は、商業的に入手できるほか、標識物質の製造及び標識を粒子にラベルする方法も公知であり、当業者であれば適宜公知技術を利用して取得することができる。さらに、こうした標識要素又は標識要素でラベル化された粒子とDNA等のオリゴヌクレオチドとの結合もアミノ基等の官能基を介して適宜可能であり、それ自体は当該分野において周知である。
【0026】
標識剤としては、核酸増幅産物の一部と特異的にハイブリダイズ可能なヌクレオチド鎖が上記標識物質に結合されたものが挙げられる。例えば、こうしたヌクレオチド鎖が結合された着色ラテックス粒子、金コロイド粒子又は銀コロイド粒子等が挙げられる。
【0027】
同一の閉空間とは、外部に対して閉じて状態が維持可能なひとまとまりの空間を意味している。例えば、同一の閉空間とは、1つの容器内の1つの閉空間、1つの容器内において2以上に区画されているが互いに部分的に連通する1つの閉空間、及び1つの容器内の互いに区画されて連通しない2以上の閉空間であって工程の実施のために必要に応じて連通される閉空間が挙げられる。
【0028】
増幅工程及び標識化工程に先立って、抽出工程も同一の閉空間で実施されてもよい。抽出工程も同一の閉空間で実施されることにより、抽出工程から増幅工程へのロスやコンタミネーションの発生を抑制できる。
【0029】
ここでいう検出工程は、増幅され標識化された核酸増幅産物を、従来公知の核酸増幅産物の検出子によって検出する工程であって、公知の全ての形態が包含される。
【0030】
検出工程は、増幅工程及び標識化工程が完了した後に実施されてもよいし、標識化工程および増幅工程とほぼ並行して実施されてもよい。例えば、増幅され標識化された核酸増幅産物に順次検出子が接触されるようにしてもよい。また、さらに抽出工程を行う場合には、抽出工程が完了した後に標識化工程及び増幅工程が実施されてもよいし、抽出工程によって抽出された核酸が順次増幅工程及び標識化工程に使用されるようにしてもよい。
【0031】
本明細書が開示するキットは、本明細書に開示する検出方法を実現可能なキットの一例である。このキットは、標的核酸を増幅する増幅剤と、標的核酸を標識化する標識剤と、増幅剤および標識剤を収容して封止された容器と、を備える。このキットは、標的核酸を検出可能な検出子を前記容器内にさらに備えることができる。または、このキットは、標的核酸を抽出する抽出用カラムをさらに備えることができる。
【0032】
図1にその一例を示すように、増幅剤及び標識剤等を収容する容器の内部は、その内部を区画する部材が存在しない単一の収容室であってもよい。キット11の容器110は、チューブ型の容器であり、単一の収容室111を有している。容器110は、例えば、着脱可能な蓋112を容器110の上方の開口に嵌め込むことによって封止することができる。容器が単一の収容室を有する場合、増幅剤と標識剤は、混合されて容器内に収容される。すなわち、増幅剤と標識剤の混合液117が収容室111に収容される。容器内に検出子をさらに収容する場合には、検出子は、増幅剤と標識剤との混合液に一部または全部が浸漬されていてもよい。
図1には、混合液117に浸漬された試験片状の検出子119を図示している。もしくは、例えば容器の上部に混合液が存在しない空間ができるように混合液量が調整されており、その部分に検出子が固定され、容器を傾斜させる等によって適切なタイミングで検出子を混合液に浸漬させてもよい。
【0033】
図2にその一例を示すように、増幅剤及び標識剤等を収容する容器は、容器内を区画する隔壁をさらに備えていてもよい。キット12の容器120は、チューブ型の容器であり、隔壁125によって区画された収容室121と収容室123とを有している。隔壁125は、容器120の下端から中央程度まで伸びており、その上方の空間124は、収容室121および収容室123に連通している。容器120は、例えば、着脱可能な蓋122を容器120の上方の開口に嵌め込むことによって封止することができる。キットが容器内を区画する隔壁を有する場合、封止された容器内で、隔壁によって、増幅剤と標識剤が隔離されてもよい(初期状態)。すなわち、収容室121に増幅剤127が収容され、収容室125に標識化剤128が収容されてもよい。容器内に検出子をさらに収容する場合には、隔壁によって増幅剤および標識剤の混合物と、検出子が隔離されてもよい(第1状態)。または、前記初期状態において隔壁によって互いに隔離された増幅剤もしくは標識剤のいずれか一方に検出子の少なくとも一部が浸漬していてもよい。
図2には、増幅液127にその一部が浸漬された試験片状の検出子129を図示している。
【0034】
隔壁は、
図2に示す隔壁125のように、容器内に設置した仕切りでもよい。また、隔壁を有する容器は、二股試験管のように、複数の容器をその入り口付近で一体化し、全体として1つの容器を構成しているものであってもよい。
【0035】
隔壁の少なくとも一部を開放することによって、もしくは、隔壁を超えて互いに隔離された収容物が移動することによって、前記初期状態から増幅剤と標識剤の少なくとも一部が混合される混合状態への移行、または前記第1状態から増幅剤および標識剤の混合物に検出子の少なくとも一部が浸漬される第2状態への移行が可能である。
【0036】
隔壁は、容器の外側からの圧力によって、その一部または全部を破壊して開放してもよい。隔壁の開放部分を通じて、外部からの異物の混入が無い状態で収容物同士を混合できる。例えば、外部からの異物の混入が無い状態で増幅剤と標識剤とを混合して、標識化された核酸増幅産物を得ることができる。
【0037】
容器の外側からの圧力を加える具体的な手段の一例を
図3および
図4に示す。
図3に示すように、
図2に示す蓋122に替えて、加圧用の管133を備えた蓋132を用い、管133を通じてポンプで高圧の気体を容器120内に注入することで、隔壁125を破壊して開放することができる。また、
図4に示すように、
図2に示す蓋122に替えて、加圧用の蛇腹構造部143を備えた蓋142を用い、蛇腹構造部143を押し縮めて通じて気体を容器120内に注入することで、隔壁125を破壊して開放することができる。また、容器の外側から与えられる圧力は、こうした気体による圧力に限定されるものでなく、容器外壁に対して付与される外力であってもよい。
【0038】
容器内に、隔壁によって隔てられた双方の収容室に連通する空間が設けられている場合には、その空間を経由して、隔壁を超えて収容物同士を混合できる。混合する方法は、例えば、容器を傾斜させる等によって、隔壁によって隔てられた収容物の一方または双方を空間側に移動させることによって実現できる。例えば、
図2の状態のキット12を
図5に示すように容器を上下逆に転倒させれば、空間124に増幅剤127および標識剤128が移動し、混合されて混合液157となる。このように、容器の下方に隔壁に隔てられた複数の収容室が設けられ、複数の収容室の上方に、これら収容室に連通する空間が設けられている場合には、容器の上下を逆にして、空間に収容室の収容物を移動させることによって、収容物同士を混合できる。
【0039】
または、空間が容器上方で複数の収容室が容器下方にある状態のままで、容器を回転させることによっても、隔壁を超えて収容物同士を混合できる。例えば、
図2の状態のキット12を
図6に示すように回転させれば、増幅剤127の液面と標識剤128の液面の一部が遠心力によって上昇し、増幅剤127と標識剤128が少なくともその一部において混合される。
【0040】
検出工程を実施するためには、検出子の少なくとも一部が核酸増幅産物を含む液体に浸漬されればよい。検出子の一部を核酸増幅産物に浸漬させる場合にはいわゆる核酸クロマトグラフィーのような展開型のハイブリダイゼーションのための検出子を選ぶことができる。検出子を核酸増幅産物に浸漬させる場合には、いわゆるDNAチップないしDNAアレイのような浸漬型ハイブリダイゼーションのための検出子を選ぶことができる。
【0041】
一般に検出子は担体と担体に固定化された検出用プローブとを有している。担体はプラスチックであってもよいし、ガラスであってもよく、材質は特に限定されない。また、セルロース、ニトロセルロース、ナイロン等の多孔質体であってもよい。
【0042】
検出用プローブは、検出子の形態に応じて所定のパターンで固相担体に供給される。浸漬型ハイブリダイゼーションでは、典型的には個々の検出用プローブに対応するドットが配列されたパターンとなる。また、展開型ハイブリダイゼーションでは、典型的には個々の検出用プローブに対応するドット状又はストリーク状(帯状体)等が展開方向に沿う1又は2以上の展開位置に配列されたパターンとなる。
【0043】
検出子に固定化された検出用プローブの固定化形態は特に限定されない。検出用プローブは、その3’末端が担体に結合されていてもよいし、5’末端が結合されていてもよい。共有結合性であってもよいし非共有結合性であってもよい。検出用プローブは、従来公知の各種の方法で担体の表面に固定化することができる。例えば、検出用プローブを含む溶液の微小液滴を吐出する方法で、担体に所定の平面形態を描くように供給する。そして、必要に応じて加熱等することによって乾燥することで検出用プローブを固定化する。さらに、例えば、検出用プローブの固相担体への固定化のために、検出用プローブにポリTなどのオリゴヌクレオチドを付加してもよいし、アルブミンなどのタンパク質を連結して担体への固着性を高めることもできる。また、加熱処理やUV照射などの各種放射線照射により固着性を高めることもできる。
【0044】
また、検出用プローブは、担体の表面に対しては適当なリンカー配列を備えていてもよい。リンカー配列は、好ましくは検出用プローブ間において同一塩基長で同一配列とする。
【0045】
既に説明したように、核酸増幅産物の検出は、発光または発色することによって可視的に検出の有無を認識可能な標識剤によることが好ましい。可視的に増幅産物の有無を認識するために、容器が内部の検出子及び識別された増幅産物が視認可能な程度に透明性を有していることが好ましい。さらに、検出子が容器の内壁に取り付けられていてもよい。こうすることで、検出子の位置が固定されているために、増幅産物の位置を視認しやすい。また、同様の観点から検出子が容器の内壁と一体化(すなわち、内壁材料が検出用プローブの固相担体として機能している)していてもよい。さらに、検出子が透過性材料の検出片である等の形態を有することが好ましい。こうすることで検出子の表面及び裏面のいずれの方向からでも核酸増幅産物を浸透させてハイブリダイズさせることができるとともに、標識された増幅産物をいずれの方向からもでも視認できる。
【0046】
本明細書が開示するキットは、容器内に標的核酸を抽出する抽出用カラムをさらに備えることができる。この抽出用カラムは、容器内を、標的核酸を含む試料を注入する注入部と、増幅剤および標識剤が収容された収容部とに区画する。増幅剤等と、抽出カラムとを収容した状態で、容器は封入される。この容器の注入部にシリンジ等を用いて試料を注入すると、抽出カラムを通過した核酸等を含む抽出物が、増幅剤および標識剤が収容された収容部に移動する。試料の注入時に、容器の密閉性が損なわれるものの、注入部と収容部とは、抽出カラムによって区画され、収容部には、抽出カラムを通過した抽出物のみが移動可能であるから、異物の混入を防止することが可能である。また、容器を移し替えることによる試料の損失を防止することが可能である。
【0047】
抽出用カラムは、異物の混入を高度に阻害可能な構成を有していてもよい。例えば、抽出用カラムは、標的核酸の増幅を阻害する物質を吸着することが好ましい。また、具体的には、抽出用カラムは、ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカ、アセチルセルロース、セロファンからなる群から選ばれる少なくともいずれか1つを材料とし、平均孔径が0.1nm以上かつ2nm以下である膜を含むことが好ましい。
【0048】
抽出用カラムと収容部との間に、抽出用カラム側から収容部側に向かって窄むテーパー部が設けられていることが好ましい。テーパー部によって、収容部に収容された増幅剤または標識剤が抽出用カラム側に移動することを抑制できる。テーパー部においては、少なくとも表面が断熱性を有していることが好ましい。テーパー部の全体または表面を断熱材料で形成する、または、テーパー部の表面を断熱剤でコーティングする、等によって、テーパー部に断熱性を付与することができる。
【実施例1】
【0049】
(検出子の作製)
担体として日本ポール社製ポリエーテルスルホンメンブレン用い、5‘末端または3‘末端側に、以下の塩基配列からなる20塩基長のオリゴヌクレオチド鎖を有する合成オリゴDNA(株式会社日本遺伝子研究所製)を溶かした水溶液を検出用プローブとし、日本ガイシ株式会社にてGENESHOT(登録商標)スポッターを用いてスポットした。
検出用プローブの塩基配列: ACAAGAGACTGGTTACTTAGACG
【0050】
スポットの後、80℃、1時間のベークを行った。さらに、以下に記載した手順で、合成オリゴDNAの固定化を行った。すなわち、2×SSC/0.2%SDSで15分洗浄後、95℃の2×SSC/0.2%SDSで5分洗浄し、その後、滅菌水で洗浄(10回上下振とう)を3回繰り返した。その後、遠心(1000rpm×3分)により脱水した。得られた検出用メンブレンを2mm×2mmに裁断し、検出片とした。
【0051】
また、目視で検出可能な発色を提示する物質を含む標識剤として、青色に発色する、表面にカルボキシル基を介してサンプルDNAと反応するオリゴDNA(polyA(20A))を付けたラテックスビーズ溶液を準備した。
【0052】
(キット容器内での増幅工程、標識化工程、検出工程の実施)
増幅するゲノムDNAとして、コスモバイオ社 ヒト正常組織ゲノムDNA(Cat.No. D1234148)を準備した。PCR増幅試薬として、日本ジェネティクス社の KAPA2G Fast HotStart PCR Kit (Cat.No.KK5502)を準備した。STH増幅プライマーとして、下記の配列を有する日本遺伝子研究所の合成品を準備した。なお、このプライマーセットによる核酸増幅産物は、プローブACAAGAGACTGGTTACTTAGACGに対応している。
<STH増幅プライマー配列>
修飾基:X=SpacerC3
プライマー(Forward):
5'-(TGTTCTCTGACCAATGAATCTGCXACCAAAGAATATGGCTGAATTTAGTAGTGTTTTAAATAATTTTAA)-3'
プライマー(Reverse):
5'-(TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTXACCTGCTAATGAGATGATCCCTTATTTTGAAAACAACTATTCCTA)-3'
【0053】
図1に示すような単一の収容室を有し、内容積が200μlのチューブ型の容器内に下記のPCR反応液1(10.0μl)、上記の検出片、および1μlのラテックスビーズ溶液を入れて蓋をし、サーマルサイクラーとしてApplied Biosystems社のGeneAmp PCR System9700を用いてサーマルサイクル反応を実施した。サーマルサイクルは、95℃で3分を1サイクル行った後、95℃で15秒、68℃で2分を1サイクルとして、40サイクルを繰り返した。サーマルサイクル終了後の10分後、検出片上の上記プライマーセットによる増幅産物に対応する検出用プローブのスポット領域に青色の発色がみられた。増幅剤と、標識剤と、増幅剤および標識剤を収容して封止された容器と、を備え、容器が単一の収容室を有するキットにおいて、容器内で増幅工程および標識化工程を実施し、標的核酸を検出することができた。
<PCR反応液1>
5xKAPA2B Buffer :3.0μl
STH増幅プライマー(500nM,each):0.5μl
dNTP Mixture(各10mM) :0.2μl
MgCl
2(25mM) :0.9μl
DNAポリメラーゼ(5U/μl) :0.08μl
RNaseフリー水 :2.82μl
ゲノムDNA(10ng/μl) :2.5μl
【実施例2】
【0054】
(キット容器内での増幅工程、標識化工程、検出工程の実施)
図3に示すような隔壁のあるチューブ型の容器(内容積200μl)と、加圧用の管を備えた蓋とを準備し、隔壁の一方側に実施例1で用いたPCR溶液1を10.0μl入れ、他方側に、実施例1で用いたラテックスビーズ溶液1μlおよび検出片を入れて蓋をし、実施例1と同様にサーマルサイクル反応を実施した。サーマルサイクル終了後、蓋に取り付けた管からポンプによって圧力を加えて、隔壁を破壊した。破壊後の10分後に検出片上の上記プライマーセットによる増幅産物に対応する検出用プローブのスポット領域に青色の発色がみられた。隔壁によって増幅剤および標識剤の混合物(PCR溶液)と検出子が隔離された状態でPCR反応を行って標的核酸を増幅させた後、隔壁を破壊して、核酸増幅産物を含むPCR反応液に検出子を浸漬し、標的核酸を検出することができた。
【実施例3】
【0055】
(検出子の作製)
実施例1と同様の検出用メンブレンを2mm×4mmに裁断し、検出片とした。また、目視で検出可能な発色を提示する物質を含む標識剤として、青色に発色する標識剤と赤色に発色する標識剤を準備した。これらの標識剤はいずれも、表面にカルボキシル基を介してサンプルDNAと反応するオリゴDNA(polyA(20A))を付けたラテックスビーズ溶液である。青色に発色する標識剤と赤色に発色する標識剤は、それぞれ異なる核酸増幅産物に対して発色するように調整されている。
【0056】
(キット容器内での増幅工程、標識化工程、検出工程の実施)
増幅するゲノムDNAとして、コスモバイオ社 ヒト正常組織ゲノムDNA(Cat.No.D1234148)を準備した。PCR増幅試薬として、QIAQEN社の Multiplex PCR Master Mixを準備した。STH増幅プライマーとして、下記の配列を有する日本遺伝子研究所の合成品を準備した。なお、下記のプライマー1による核酸増幅産物は青色に発色する標識剤によって検出され、下記のプライマー2による核酸増幅産物は赤色に発色する標識剤によって検出されるようにした。これらのプライマーセットによる増幅産物は、プローブACAAGAGACTGGTTACTTAGACG及びTCCAAAAAGATCTCACCTGTGCCに対応している。
<STH増幅プライマー配列>
修飾基:X=SpacerC3
プライマー(Forward):
1(青色)
5'-(TGTTCTCTGACCAATGAATCTGCXACCAAAGAATATGGCTGAATTTAGTAGTGTTTTAAATAATTTTAA)-3'
2(赤色)
5-AGGTTTTTCTAGAGTGGACACGGXAGCCTAGATTCATTATTCAAAGATATGAAATTTTAAAATGCATA-3’
プライマー(Reverse):
1(青色)
5'-(TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTXACCTGCTAATGAGATGATCCCTTATTTTGAAAACAACTATTCCTA)-3'
2(赤色)
5'-CATCTAAAGCGTTCCCAGTTCCAXCTAGAGATACTACAGAGCCTGTCCGTCCAAGGTCATA-3'
【0057】
図1に示すような単一の収容室を有し、内容積が200μlのチューブ型の容器内に下記のPCR反応液2(10.0μl)、上記の検出片、および赤色・青色のラテックスビーズ溶液(各1.0μl)を入れて蓋をし、サーマルサイクラーとしてApplied Biosystems社のGeneAmp PCR System9700を用いてサーマルサイクル反応を実施した。サーマルサイクルは、95℃で3分を1サイクル行った後、95℃で30秒、80℃で1秒、64℃で6分を1サイクルとして、40サイクルを繰り返した。サーマルサイクル終了後の10分後、検出片上の上記プライマーセットによる増幅産物に対応する検出用プローブのスポット領域に青色および赤色の発色がみられた。複数の標的核酸を検出する場合でも、実施例1と同様に、単一の収容室を有する容器内で増幅工程および標識化工程を実施し、標的核酸を検出することができた。
<PCR反応液2>
2x Multiplex PCR Master Mix :5.0μl
STH増幅プライマー(500nM,each) :0.5μl
RNaseフリー水 :2.0μl
ゲノムDNA(10ng/μl) :2.5μl
【実施例4】
【0058】
(検出子の作製)
実施例1と同様の検出用メンブレンを5mm×3mmに裁断し、検出片とした。
【0059】
(容器の移し替えの影響評価)
図1に示すような単一の収容室を有し、容積および形状が同じチューブ型の容器を3つ用意した。10nMの検出サンプル溶液(実施例1と同様のオリゴDNA溶液)を準備した。第1の容器には予め検出片の入れた後で、検出サンプル溶液を10μl入れて蓋をした。第2の容器には、検出片を入れた。第3の容器には検出用メンブレンの入っていない状態で検出サンプル溶液を10μl入れた。そして、第3の容器の溶液を第2の容器に移し替えて、第2の容器に蓋をした。第1、第2の容器について、サンプル溶液を加えてから10分後に蓋を開けて検出用メンブレンを取り出し、クロマトリーダー(浜松ホトニクス社製)を用いて検出ラインの濃さを吸光度により比較評価した。吸光度は、第1の容器の検出片(溶液の移し替えなし)で0.30であり、第2の容器の検出片(溶液の移し替えあり)で0.28であった。溶液の移し替えを行わない方が、高い検出感度を得られることがわかった。
【0060】
(攪拌の影響評価)
図1に示すような単一の収容室を有し、容積および形状が同じチューブ型の容器を2つ用意した。10ng/μlの実施例1と同様のゲノムDNA)を準備した。第1の容器にはゲノムDNA液を10μl入れた後、蓋をし、ボルテックスミキサーを用いて5分間激しく攪拌した。その後、蓋を開けて検出片、および下記のPCR反応液3を入れ、再度蓋をして、実施例1と同様の温度サイクルで増幅工程を行った。第2の容器には、ゲノムDNA液を10μl、検出片および下記のPCR反応液3を入れて蓋をし、実施例1と同様の温度サイクルで増幅工程を行った。増幅工程終了後、第1および第2の容器を室温で10分間静置した後、それぞれ蓋を開けて検出片を取り出し、クロマトリーダー(浜松ホトニクス社製)を用いて検出ラインの濃さを吸光度により比較評価した。吸光度は、第1の容器の検出片(攪拌あり)で0.33であり、第2の容器の検出片(攪拌なし)で0.35であった。本評価により、攪拌を行わない方が、高い検出感度を得られることがわかった。DNAを含む溶液を移し替えるためにピペッティング操作等を行うと、液を攪拌し、DNAの切断等を引き起こして検出感度の低下の要因となり得る。溶液の移し替えを行わない場合には、DNAを含む溶液の攪拌を回避でき、検出感度を低下させることを抑制できる。
<PCR反応液3>
2x Multiplex PCR Master Mix :20.0μl
STH増幅プライマー(500nM,each) :2.0μl
RNaseフリー水 :8.0μl
【0061】
(工程数の影響評価)
ゼオライト製のDNA精製カラムの付いたDNA抽出専用のチューブ型の容器を用意した。10nMの検出サンプル溶液(実施例1に記載の検出用プローブと相補のオリゴDNA溶液)を10μl入れた後、室温で10分間静置した。DNA精製カラムを通過した溶液を検出片、および上記PCR反応液3の入ったチューブ型の容器に入れて、実施例1と同様の温度サイクルで増幅工程を行った。増幅工程終了後、室温で10分間静置した後、検出片を取り出し、クロマトリーダー(浜松ホトニクス社製)を用いて検出ラインの濃さを吸光度により比較評価した。吸光度は、0.22であった。
【0062】
図7に示すように、テーパー形状のテーパー部516を有するカラム装着チューブ510を準備し、単一の収容室を有するチューブ型の容器520の上方から挿し込むように設置した。カラム装着チューブ510の内壁面に接するようにゼオライト製のDNA精製カラム512が設置されており、DNA精製カラム512によって、カラム装着チューブ510の上方の空間522と下方の空間524が区画されている。カラム装着チューブ510の上部に蓋514が嵌め込まれ、これによって上方の空間522は封止される。なお、カラム装着チューブ510をチューブ型の容器520に挿し込むことで、下方の空間524は封止される。テーパー部516は、DNA精製カラム512から下方の空間524に向かって漏斗状に窄んでいる。
【0063】
蓋514を開封し、上方の空間522に10nMの検出サンプル溶液(実施例1に記載の検出用プローブと相補のオリゴDNA溶液)を10μl入れた後、室温で10分間で静置した。DNA精製カラム512を通過して下方の空間524に移動した溶液を検出片、PCR反応液3の入った別のチューブ型の容器に入れて、実施例1と同様の温度サイクルで増幅工程を行った。増幅工程終了後、室温で10分間静置した後、検出片を取り出し、クロマトリーダー(浜松ホトニクス社製)を用いて検出ラインの濃さを吸光度により比較評価した。吸光度は、0.26であった。抽出工程で得られた抽出物をそのまま増幅剤等を含む液体に滴下した方が、高い検出感度を得られることがわかった。
【0064】
(カラム装着チューブ形状の影響評価)
図8に示すように、3種類のカラム装着チューブ(チューブ530、チューブ540、チューブ550)を準備した。チューブ530,540,550の上端からゼオライト製のDNA精製カラム512の下端までの部分である、上部531,541,551は、同様の形状かつ材料である。チューブ530の下部532は、
図5のカラム装着チューブ510と同様にテーパー形状を有し、その表面に断熱剤がコーティングされている。チューブ540の下部542は、チューブ530の下部532と同様のテーパー形状を有しており、上部541と同じ材料が用いられている。チューブ550は、下部を有していない。
【0065】
容積および形状が同じチューブ型の容器を3つ用意して、水を100μl入れた。
図5と同様に、それぞれの容器の上方にチューブ530,540,550を嵌め込んで、さらに蓋をし、実施例1と同様の温度サイクルで増幅工程と同様のサーマルサイクルを実施した。チューブ型の容器内に残った液量は、チューブ530,540,550を用いた場合において、それぞれ、90μl、85μl、60μlであった。カラム装着チューブがその出口側にテーパー部を有すると、増幅剤等を含む液体がカラム側に拡散することを抑制できることがわかった。さらに、テーパー部の表面を断熱剤でコーティングすると、増幅剤等を含む液体がカラム側に拡散することを抑制できる効果がより高くなることがわかった。
【0066】
(検出子の作製)
実施例1と同様の検出用メンブレンを2mm×2mmに裁断し、検出片とした。
また、青色に発色する標識剤として、実施例1と同様のラテックスビーズ溶液を準備した。
【0067】
(キット容器内での抽出工程、増幅工程、標識化工程、検出工程の実施)
増幅するゲノムDNA、PCR増幅試薬、STH増幅プライマーとしては、実施例1と同様のものを準備した。
【0068】
内容積が200μlのチューブ型の容器内に下記の同様のPCR反応液(10.0μl)、上記の検出片、および1μlのラテックスビーズ溶液を入れ、その開口部側に、
図5に示すカラム装着チューブ510と同様のカラム装着チューブを挿し込んだ。DNA精製カラムによってPCR反応液の収容室と区画されている部分に(カラム装着チューブの上部のDNA精製カラム上)に、ゲノムDNAの入った擬似血液5μlとDNA抽出液(0.3M NaOH、1% SDS)10μlとを加え20分間静置した。その後、カラム装着チューブに蓋をすることで圧力を加え、DNA精製カラムを通過したDNA抽出液をPCR反応液の収容室に落とした。さらに、実施例1と同様の条件でサーマルサイクル反応を実施した。サーマルサイクル終了後の10分後、検出片に青色の発色がみられた。増幅剤、標識剤および検出子が収容された容器の上部に標的核酸を抽出する抽出用カラムを装着し、ゲノムDNAの入った擬似血液を抽出カラムを通過させて容器内に導入することで、標的核酸を検出することができた。
<PCR反応液>
5xKAPA2B Buffer :3.0μl
STH増幅プライマー(500nM,each) :0.5μl
dNTP Mixture(各10mM) :0.2μl
MgCl
2(25mM) :0.9μl
DNAポリメラーゼ(5U/μl) :0.08μl
RNaseフリー水 :2.82μl