特許第5972714号(P5972714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5972714-抗菌性シート及び抗菌性粘着シート 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972714
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】抗菌性シート及び抗菌性粘着シート
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/08 20060101AFI20160804BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20160804BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20160804BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20160804BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20160804BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160804BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160804BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20160804BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   A01N31/08
   A01N25/34 A
   A01N25/10
   A01N31/02
   A01P3/00
   C09J7/02 Z
   C09J11/06
   C09J201/00
   B32B7/12
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-187871(P2012-187871)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-43430(P2014-43430A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100075351
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 充
(72)【発明者】
【氏名】内山 研一
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−306024(JP,A)
【文献】 特開2000−281505(JP,A)
【文献】 特開2010−248124(JP,A)
【文献】 特開昭59−042953(JP,A)
【文献】 特開昭59−025319(JP,A)
【文献】 特開平07−069804(JP,A)
【文献】 特開昭58−113104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 31/00
A01N 25/00
A01P 3/00
B32B 7/00
C09J 7/00
C09J 11/00
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系粘着剤中にチモール及び炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールを含む抗菌性成分徐放組成物からなる抗菌性成分徐放組成物層と、該組成物層の一方の面に設けられ、チモール及び炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールを透過する透過層と、該透過層とは反対面に設けられ、チモール及び炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールを透過しないバリア層とを備えることを特徴とする抗菌性シート。
【請求項2】
チモールと炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールの含有割合が、質量比率で1:9〜9:1である、請求項1に記載の抗菌性シート。
【請求項3】
前記チモールの含有量が、0.1〜7.0g/mである、請求項又はに記載の抗菌性シート。
【請求項4】
前記透過層が、ポリオレフィンフィルムである、請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌性シート。
【請求項5】
前記バリア層がポリエチレンテレフタレートからなるフィルムである、請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌性シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌性シートと、前記バリア層の前記抗菌性成分徐放成物層とは反対面に設けられた貼付用粘着剤層と、を備えることを特徴とする抗菌性粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料や食品、衣料関連等、広く防菌、抗菌、防微生物等を目的とした用途に供される抗菌性成分徐放組成物と抗菌性シート、抗菌性粘着シートに関するものである。さらに詳しくは、抗菌性香料としてチモール(2−イソプロピル−5−メチルフェノール)を用いることにより、良好な抗菌性が得られると共に、刺激臭が少なく、使用用途及び使用範囲を広げることのできる、抗菌性成分徐放組成物、抗菌性シート及び抗菌性粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、抗菌成分を放出する粘着シートには、各種抗菌成分が使用されているが、特に食品、衣料用途などでは、人体に対する安全性が必要とされるため、ワサビ由来の成分であって、抗菌性や殺菌性を有するイソチオシアン酸アリルエステル(CH2=CHCH2N=C=S)(AIT)が用いられてきた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、上記AITは安全であるものの、ワサビ特有の刺激臭があるため、周囲の製品などに臭いが移ることから、用途が制限されるのを免れないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2581235号公報
【特許文献2】特許第3177530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下になされたものであり、良好な抗菌性が得られると共に、刺激臭が少なく、使用用途及び使用範囲を広げることのできる抗菌性成分徐放組成物、抗菌性シート及び抗菌性粘着シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)アクリル系粘着剤中にチモール及び炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールを含む抗菌性成分徐放組成物からなる抗菌性成分徐放組成物層と、該組成物層の一方の面に設けられ、チモール及び炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールを透過する透過層と、該透過層とは反対面に設けられ、チモール及び炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールを透過しないバリア層とを備えることを特徴とする抗菌性シート、
(2)チモールと炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールの含有割合が、質量比率で1:9〜9:1である、上記(1)項に記載の抗菌性シート。
(3)前記チモールの含有量が、0.1〜7.0g/mである、上記(1)又は(2)項に記載の抗菌性シート。
(4)前記透過層が、ポリオレフィンフィルムである、上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の抗菌性シート。
(5)前記バリア層がポリエチレンテレフタレートからなるフィルムである、上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の抗菌性シート。
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかに記載の抗菌性シートと、前記バリア層の前記抗菌性成分徐放組成物層とは反対面に設けられた貼付用粘着剤層と、を備えることを特徴とする抗菌性粘着シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、抗菌成分としてチモールを用いることにより、良好な抗菌性が得られると共に、刺激臭が少なく、使用用途及び使用範囲を広げることのできる抗菌性成分徐放組成物、抗菌性シート及び抗菌性粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の抗菌性粘着シートにおける層構成の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本発明の抗菌性成分徐放組成物について説明する。
[抗菌性成分徐放組成物]
本発明の抗菌性成分徐放組成物は、粘着剤中にチモールを含むことを特徴とする。
(粘着剤)
当該抗菌性成分徐放組成物を構成する粘着剤については特に制限はなく、アクリル系、ゴム系、ビニルエーテル系、シリコーン系など、いずれも用いることができる。
【0009】
<粘着剤の種類>
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシルなどの(メタ)アクリル酸エステルの一種又は二種以上と、該エステルと共重合可能な(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチルなどの官能性モノマーとの共重合物など;ゴム系粘着剤としては、天然ゴムや、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブテンゴム、ブチルゴムなどの合成ゴムを主成分とするものなど:ビニルエーテル系粘着剤としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルなど;を挙げることができる。
【0010】
これらの粘着剤の中で、アクリル系粘着剤から選択使用するのが好ましく、特に、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと官能性モノマーとの共重合体が好ましく、架橋タイプのものがより好ましい。架橋剤としては、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を使用することができる。
なお、粘着剤中には必要に応じ、テルペン系樹脂、石油系樹脂などの粘着付与剤、流動パラフィン、動植物油(例えばオリーブ油、大豆油、牛油、トン脂)、ポリブテン、低級イソプレン、ワックスなどの粘着力・保持力調整剤、酸化チタン、酸化亜鉛、メタケイ酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムなどの充填剤、水及び乳化剤(例えばソルビタンモノオレエート、ラウリルスルホン酸ナトリウム)、乳化助剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム)などを配合することもできる。
【0011】
(チモール)
当該抗菌性成分徐放組成物を構成するチモールは、下記式(1)
【化1】
で示される構造を有する2−イソプロピル−5−メチルフェノールであって、天然品及び合成品のいずれも使用することができる。
天然品としては、タチジャコウ草油、アジョワン油などの精油の主成分をなす。
合成品は、m−クレゾールにプロピレン又はイソプロピルアルコールを触媒の存在下に反応させることにより得ることができる。
チモールは、香気を有する無色結晶物であり、融点は50〜51.5℃で、水に0.1質量%溶解し、アルコール、エステル類、油類に可溶である。防腐、殺菌力が強く、防腐剤、殺菌剤、駆虫剤、合成メントールの原料などとして大量に使用されている。
【0012】
(脂肪族一価アルコール)
このチモールは室温で固体であるが、溶媒を用いることで粘着剤に容易に含有させることができる。各種溶媒が使用できるが、チモールを溶解可能で、且つ使用時のチモール放出量を向上させることができ、さらに人体に安全であることから、炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールが好ましく、チモールと脂肪族一価アルコールの含有割合は、質量比で1:9〜9:1であることが好ましく、2:8〜8:2であることがより好ましい。炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールとしては、例えばエタノール、イソプロパノール、ブタノールなどを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、特に揮発性と殺菌作用を有している点で、エタノールが好ましい。チモールにエタノールを共存させることによって、より高い抗菌効果を得ることができる。チモールとエタノールの比率は、抗菌性を発揮でき、保管時に染み出さない程度が望ましい。質量比で1:9〜9:1であることが好ましく、2:8〜8:2であることが特に好ましい。
抗菌性成分徐放組成物の製法としては、チモールを予め炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールに溶解した溶液を、粘着剤に混合あるいは含浸させるなどして得ることができる。 次に、本発明の抗菌性シートについて説明する。
【0013】
[抗菌性シート]
本発明の抗菌性シートは、前述した抗菌性成分徐放組成物を用いて形成された抗菌性成分徐放組成物層を有し、該組成物層の一方の面に、チモールと炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールを透過する透過層を設けたことを特徴とし、該透過層とは反対面にチモールと炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールを透過しないバリア層を有するものが好ましい。
前記抗菌性成分徐放組成物層の厚さは、チモールと脂肪族一価アルコールを十分に含浸することができ、且つ取り扱い性や加工性の観点から、通常10〜60μm程度、好ましくは25〜45μmである。
【0014】
(透過層)
当該抗菌性シートにおける透過層としては、適度な可とう性を有し、チモールと脂肪族一価アルコールを透過することが可能であれば特に制限はなく、例えばポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンもしくはポリスチレンからなるフィルム、紙又は布等を使用することが好ましく、特に、ポリエチレン又は無延伸ポリプロピレンからなるポリオレフィンフィルムを使用することが好ましい。そのフィルムの厚さは、10〜150μmであることが好ましく、15〜100μmであることが特に好ましく、25〜45μmであることがさらに好ましい。
【0015】
(バリア層)
当該抗菌性シートにおけるバリア層としては、適度な可とう性を有し、チモールと脂肪族一価アルコールの透過を抑制することが可能であれば特に制限はなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなどからなるフィルムが挙げられ、中でも特にポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが好ましい。さらに、これらの高分子材料による独立気泡型の発泡フィルムを使用することもできる。また、上記フィルムの厚さは、10〜60μmであることが好ましく、特に25〜45μmであることが好ましい。
【0016】
当該抗菌性シートにおけるチモール量は、抗菌性を発揮でき、かつ保管時に染み出さない程度であることが好ましく、通常0.1から7.0g/m2程度、好ましくは0.2〜6.0g/m2である。
抗菌性シートの製法としては、抗菌性成分徐放組成物層を透過層の一方の面に設け、該組成物層にバリア層を貼り合わせても良いし、抗菌性成分徐放組成物層をバリア層の一方の面に設けて、該組成物層に透過層を貼り合わせても良い。抗菌性成分徐放組成物層を設ける方法としては、チモールを炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールに溶解した溶液を、別途溶媒に溶解した粘着剤に混合し、バリア層又は透過層に、塗布乾燥することにより得ることができる。また、粘着剤層を先に設けておき、前記のチモールを炭素数2〜6の脂肪族一価アルコールに溶解した液を、該粘着剤層に含浸させて得ることもできる。これらの方法の中では、脂肪族一価アルコールの乾燥によるロスを防ぐことができる点で、含浸による方法が好ましい。含浸の方法に特に制限はなく、グラビア、マイヤーバー、スプレー、ディッピング等の方法が挙げられる。
また、当該抗菌性シートにおいては、前記透過層又はバリア層に、必要に応じ印刷を施してもよい。
次に、本発明の抗菌性粘着シートについて説明する。
【0017】
[抗菌性粘着シート]
当該抗菌性粘着シートは、前述した本発明の抗菌性シートにおけるバリア層のもう一方の面に貼付用粘着剤層を設けたことを特徴とする。
この貼付用粘着剤層を構成する粘着剤については、被着体に貼付可能であれば特に制限はなく、前述の抗菌性成分徐放組成物の説明において示した粘着剤と同じものを挙げることができる。
当該抗菌性粘着シートにおける貼付用粘着剤層は、バリア層のもう一方の面に従来公知の方法で、粘着剤を直接塗布乾燥して設けてもよいし、剥離シートの剥離処理面に、従来公知の方法で粘着剤を塗布乾燥して貼付用粘着剤層を設け、これを上記バリア層のもう一方の面に貼合してもよい。
なお、当該貼付用粘着剤層の厚さは、通常10〜50μm程度、好ましくは15〜30μmである。
【0018】
前記剥離シートとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンなどの樹脂からなる樹脂フィルム、又はそれらをシリコーン樹脂系、フッ素樹脂系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したもの; グラシン紙、クレーコート紙、ラミネート紙等の紙を上記剥離剤で剥離処理した剥離紙を使用することができる。
【0019】
図1は、本発明の抗菌性粘着シートの層構成の一例を示す断面模式図であって、抗菌性粘着シート10は、透過層1、抗菌性成分徐放組成物層2、所望により設けられる印刷層3、バリア層4、貼付用粘着剤層5及び剥離シート6が順に積層された構造を有している。
【実施例】
【0020】
次に本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた抗菌性粘着シートの抗菌試験及び刺激臭の評価は、以下に示す方法に従って行った。
【0021】
(1)抗菌試験
実施例及び比較例から得られた抗菌性シート及び抗菌性粘着シートを5cm×5cmの大きさに切り出し、試験資料とした。
容量1000mlのガラスビーカーを、底部が上になるように伏せて置き、底部の内側に試験資料を糸で吊るした。その下にカビ(JIS Z 2911に従い、Aspergillus niger NBRC105649、Penicillium citrinum NBRC6352、Chaetomium globosum NBRC6347、Myrothecium verrucaria NBRC6113のカビ4種混合の菌液を調製した。)を接種した寒天培地の入ったシャーレを置いた。
これら全体を恒温器中で28℃・1週間培養後、カビの生育を確認した。
○:菌が全く確認されない。
△:培地の面積に対して5%未満の発育が認められる。
×:培地の面積に対して5%以上の発育が認められる。
(2)刺激臭の評価
抗菌性シートを5cm角に切り出し、鼻から3cm離して、刺激臭の有無を確認した。
○:刺激臭なし。
×:刺激臭あり。
【0022】
実施例1
バリア層として、ポリエステルフィルム[東レ ルミラー50μm]にアクリル酸2-エチルヘキシル97質量%及びアクリル酸3質量%のモノマー比による共重合体からなるアクリル系粘着剤を40質量%の割合で含有する酢酸エチル溶液を、乾燥後の粘着剤層の厚みが30μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥して粘着剤層を得た。その粘着剤層の上に、室温にてチモール含有エタノール溶液(チモール:エタノール=質量比5:5)をグラビアコーターにて粘着層に、粘着剤中のチモール量が2g/m2になるよう含浸させ、さらにその上から、透過層として、ポリエチレンフィルム(40μm)を貼り合わせて抗菌性シートを得た。
得られた抗菌性シートの評価結果を第1表に示す。
【0023】
実施例2〜5
チモールの含有量を0.1、0.3、1、5g/m2になるよう含浸させた以外は、実施例1と同様な操作を行い、各抗菌性シートを得た。得られた各抗菌性シートの評価結果を第1表に示す。
【0024】
実施例6
片面をシリコーン化合物により剥離処理したポリエステルフィルム[リンテック社製、「SP−PET3811」]に、アクリル酸2-エチルヘキシル97質量%及びアクリル酸3質量%のモノマー比による共重合体からなるアクリル系粘着剤を40質量%の割合で含有する酢酸エチル溶液を、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥して貼付用粘着剤層を得た。その粘着剤層に、実施例1の抗菌性シートのポリエステルフィルム側と貼り合わせて、抗菌性粘着シートを得た。
得られた抗菌性粘着シートの評価結果を第1表に示す。
【0025】
実施例7〜10
実施例1において、チモール:エタノール質量比を2:8、4:6、7:3、8.5:1.5にて塗工した以外は、実施例1と同様な操作を行い、各抗菌性粘着シートを得た。得られた抗菌性粘着シートの評価結果を第1表に示す。
【0026】
比較例1
実施例1において、チモールを含まないこと(エタノールのみ)以外は、実施例1と同様な操作を行った。
得られた粘着シートの評価結果を第1表に示す。
【0027】
比較例2
実施例1において、チモール/エタノールの代わりにAITを同量含侵させた以外は、実施例1と同様な操作を行い、抗菌性粘着シートを得た。
得られた抗菌性粘着シートの評価結果を第1表に示す。
【0028】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の抗菌性シート及び抗菌性粘着シートは、抗菌性香料としてチモールを用いることにより、良好な抗菌性が得られると共に、刺激臭が少なく、使用用途及び使用範囲を広げることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 透過層
2 抗菌性成分徐放組成物層
3 所望により設けられる印刷層
4 バリア層
5 貼付用粘着剤層
6 剥離シート
10 抗菌性粘着シート
図1