特許第5972716号(P5972716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972716
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】車両ウィンドウ用アンプ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   H01Q1/22 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-192987(P2012-192987)
(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-50007(P2014-50007A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 仁之
【審査官】 米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3098997(JP,U)
【文献】 特開2000−006655(JP,A)
【文献】 特表2008−529206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ウィンドウに設けられたアンテナへ電気的に接続され、該アンテナで受信した信号を増幅するアンプと、該アンプを車両ウィンドウへ設置固定するブラケットとを有する車両ウィンドウ用アンプ装置であって、
前記車両ウィンドウは合成樹脂製であり、
記ブラケットのベース部には、貫通孔が形成されており、
前記ブラケットは、弾性を有する高分子材料からなる接合剤を介して前記車両ウィンドウへ接合され、
該接合剤は、前記貫通孔を介して前記ベース部の裏面から表面へ溢れ出した状態で突起部を形成しており、
前記アンプは、前記ブラケットに装着した際に前記突起部によって常時押圧付勢されており、
前記アンプから延在する金属端子と前記アンテナとがハンダ付けされていないことを特徴とする、車両ウィンドウ用アンプ装置。
【請求項2】
前記高分子材料が軟質樹脂又は熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載の車両ウィンドウ用アンプ装置。
【請求項3】
前記ブラケットには、前記ベース部から対向状に立設する少なくとも2つの係合片を有し、
前記アンプは、前記2つの係合片の間に係合されており、
前記貫通孔及び突起部が、前記2つの係合片の内側に形成されている、請求項1または請求項2に記載の車両ウィンドウ用アンプ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両ウィンドウ用アンプ装置の製造方法であって、
前記車両ウィンドウと前記ブラケットとを金型内に予め設置した状態で、該車両ウィンドウとブラケットとの間に、硬化後に弾性を有する熱可塑性の高分子材料を射出して、前記車両ウィンドウと前記ブラケットとをアウトサート成形により接合し、
前記接合剤は、前記アウトサート成形時に前記ベース部の貫通孔から溢れ出した状態で突起部を形成する、車両ウィンドウ用アンプ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ウィンドウに設けられたアンテナへ電気的に接続され、該アンテナで受信した信号を増幅するアンプと、該アンプを車両ウィンドウへ設置固定するブラケットとを有する車両ウィンドウ用アンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアンプ装置として、例えば下記特許文献1がある。特許文献1では、ガラス製の車両ウィンドウに対して、アンプを設置している。具体的には、ガラスウィンドウ用アンプは、金属端子と、該金属端子に一体的に取付けられるブラケットと、該ブラケットに取付けられ金属端子からアンテナで受信した信号が送られる本体部とからなる。金属端子は、中央がアンテナから離れる方向に曲げられブリッジ部とされている導電板と、該導電板の底面に半円状に設けられアンテナに接触する接触凸部とを有する。そのうえで、接触凸部とアンテナとをハンダ付けすることで、ブラケットをガラスウィンドウへ設置固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−97187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、車両軽量化などの観点から、透明樹脂製のウィンドウも開発されている。この場合、樹脂ウィンドウ上でアンテナと金属端子とをハンダ付けすると、その熱によって樹脂ウィンドウが溶融してしまうという問題が生じる。そのため、樹脂ウィンドウにおいては、金属端子とアンテナとのハンダ付けによるブラケットの設置固定ができない。
【0005】
しかし、アンプの金属端子とアンテナとを安定して接続固定することができないと、従来のガラス製ウィンドウよりも車両走行時などにおける振動の影響を受け、アンプがガタつき、金属端子とアンテナとの通電状態が不安定となることによって電気信号にノイズが発生し易くなる。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、ハンダ付けせずにアンプを安定して設置固定することができ、振動に起因するノイズの発生も抑制することができる、車両ウィンドウ用アンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段として、本発明は、車両ウィンドウに設けられたアンテナへ電気的に接続され、該アンテナで受信した信号を増幅するアンプと、該アンプを車両ウィンドウへ設置固定するブラケットとを有する車両ウィンドウ用アンプ装置であって、前記車両ウィンドウは合成樹脂製であり、前記車両ウィンドウと前記ブラケットとを金型内に予め設置した状態で、該車両ウィンドウとブラケットとの間に、硬化後に弾性を有する熱可塑性の高分子材料を射出して、前記車両ウィンドウと前記ブラケットとをアウトサート成形により接合している。このとき、前記ブラケットのベース部には貫通孔が形成されており、前記高分子材料は、前記アウトサート成形時に前記ベース部の貫通孔から溢れ出した状態で突起部を形成している。そして、前記アンプは前記ブラケットに装着した際に前記突起部によって常時押圧付勢されており、前記アンプから延在する金属端子と前記アンテナとがハンダ付けされていないことを特徴とする。
【0008】
このように、車両ウィンドウとブラケットとをアウトサート形成により接合したうえでブラケットにアンプを装着しているだけなので、樹脂製の車両ウィンドウを溶融させることなくアンプを設置固定することができる。このとき、アンプは突起部によって常時押圧付勢されているので、アンプを安定して固定することができる。しかも、突起部は弾性を有するので、車両走行時等の振動によるアンプのガタつきを突起部が吸収する。これにより、金属端子とアンテナとをハンダ付けせずに安定した接触状態を保つことができ、延いては振動に起因するノイズの発生を抑制することができる。また、突起部の熱収縮による保持力によって、ブラケットの設置安定性も向上する。
【0009】
なお、本発明における「弾性」とは、振動に伴うアンプのガタを吸収できる程度の変形性(柔軟性)を有することを意味し、一般的に「弾性体」と称されるような高い弾性率(弾性係数)を有する物である必要は無い。このような弾性を有する前記高分子材料としては、軟質樹脂又は熱可塑性エラストマーを使用できる。
【0010】
前記ブラケットは、前記ベース部から対向状に立設する少なくとも2つの係合片を有し、前記アンプは、前記2つの係合片の間に係合されている。したがって、前記貫通孔及び突起部は、前記2つの係合片の内側に少なくとも形成する必要がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハンダ付けせずにアンプを安定して設置固定することができ、振動に起因する電気信号のノイズの発生も抑制することができる、
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】アンプ装置の斜視図である。
図2】アンプの分解斜視図である。
図3】ベース部の斜視図である。
図4図1のIV−IV線断面図である。
図5】接着工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、適宜図面を参照しながら本発明の代表的な実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態のアンプ10は、ブラケット20を介して自動車を代表とする車両のウィンドウWに設置される。車両用のウィンドウWとしては、アンテナAを配すことができる限り、フロントウィンドウ、サイドウィンドウ、又はリアウィンドウのいずれでもよい。アンテナAは、金属からなる導線がウィンドウWの表面に所定パターンでプリント配線されている。アンテナAは、AMラジオ用、FMラジオ用、テレビ用、カーナビゲーションシステム用など、任意の電子機器用のアンテナとして使用される。ウィンドウWは、ポリカーボネート樹脂(PC)やアクリル樹脂などの透明樹脂からなる。
【0014】
図2に示すように、アンプ10は、アタッシュケース状のケース11と、アンテナAに接触する金属端子12と、該金属端子12を介してアンテナAから受信した信号を増幅する増幅回路13と、該増幅回路13によって増幅された信号を車室内のオーディオ等へ送信する電気ケーブル14と、電気ケーブル14を増幅回路13へ固定するケーブルブラケット15とを備える。
【0015】
ケース11は、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂からなる射出成形品であって、アンダーケース11aとアッパケース11bとがヒンジ部11cを介して開閉自在に一体的に連続している。ケース11を閉じたとき、アッパケース11bに設けられたフック11dがアンダーケース11aに設けられた係合突起11eと係合することで、ロックされる。
【0016】
金属端子12は三角枠状を呈し、その頂部がアンダーケース11aの底面に形成された長孔11fを介してケース11外に突出している。そのうえで、金属端子12の先端がアンテナAと接触することで、アンプ10とアンテナAとが電気的に接続される(図4参照)。なお、金属端子12及びアンテナAは、+極用と−極用との2つ存在している。また、金属端子12の底辺部には、爪部12aが外方に延在するように一体的に形成されている。当該爪部12aが、それぞれ増幅回路13に設けられた係合孔13aに係合されることで、金属端子12が増幅回路13へ固定される。
【0017】
増幅回路13は、2つの位置決め孔13bがアンダーケース11a内に設けられた位置決めピン11gに挿嵌されることで、ケース11内へ安定して設置される。なお、図示していないが、増幅回路13には所定形状の導電パターンがプリント配線されており、金属端子12及び電気ケーブル14と電気的に接続されている。電気ケーブル14は、開口11hを介してケース11の内外へ連続している(図1参照)。
【0018】
ブラケット20もポリプロピレン(PP)等の合成樹脂からなる射出成形品であって、ウィンドウWに接着されるベース部20aと、該ベース部20aから対向状に立設する2つの係合片20bとを有する。係合片20bには係合孔20cが設けられており、当該係合孔20cにケース11の両側面に形成された係合突起11kが係合されることで、図1,4に示すように、ブラケット20に対してアンプ10が固定される。このとき、アンプ10は2つの係合片20bの間においてベース部20aから所定量浮上した状態となっている。ベース部20aの中央部には切欠部20dを有し、当該切欠部20d内までアンテナAの先端部が延在している。これにより、アンプ10をブラケット20へ固定すると、必然的に金属端子12がアンテナAと接触することになる。また、係合片20bの内外には、それぞれ1つずつ貫通孔20eを有する。符号20fは、係合片20b補強用のリブである。
【0019】
そのうえで、図4に示すように、ブラケット20は弾性を有する高分子材料からなる接合剤Sを介してウィンドウWに対へ接合されている。したがって、アンプ10から延在する金属端子12とアンテナAとはハンダ付けする必要は無い。接合剤Sとしては、硬化後にある程度の弾性を有する、ウィンドウW及びブラケット20よりも融点の低い熱可塑性材料を用いる。このような接合剤Sとしては、軟質樹脂や熱可塑性エラストマーを挙げることができる。軟質樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂などを挙げることができる。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑エラストマーなどを挙げることができる。
【0020】
接合剤Sは、ブラケット20に設けられた各貫通孔20eを介してベース部20aの裏面から表面へ溢れ出した状態で突起部Stを形成している。このように、貫通孔20eから溢れ出したように形成された突起部Stは、ボルトと同じような形状となっていることで、ブラケット20の保持力が大きく向上する。しかも、平面方向で係合片20bの内外双方に存在することで、突起部Stによる保持力はより大きくなっている。したがって、振動等によりアンプ10に上下方向(図4基準)の力が作用すると、係合片20bには左右方向(図4基準)の応力が作用することでベース部20aがガタつくことになるが、内外の突起部Stによって強固に保持される。また、突起部Stの厚み(高さ)は、ベース部20aとアンプ10との距離よりも僅かに大きい。これにより、アンプ10は突起部Stによって常時上方へ押圧付勢され、安定して固定される。しかも、突起部Stは弾性を有するので、車両走行時等の振動によるアンプ10のガタつきを突起部Stによって吸収することができる。これにより、金属端子12とアンテナAとをハンダ付けせずに安定した接触状態を保つことができ、延いては振動に起因する電気信号のノイズの発生を抑制することができる。
【0021】
次に、図5を参照しながら、ブラケット20の設置方法について説明する。基本的には、ウィンドウWとブラケット20との間に溶融状態の接合剤Sを射出し、アウトサート成形することで突起部Stを形成しながらウィンドウW上にブラケット20を接合することができる。詳しくは、図5(a)に示すように、上型30と下型31とには、それぞれ接合面にウィンドウ設置用の凹み32とブラケット設置用の凹み33とが形成されている。そして、図5(b)に示すように、ウィンドウ設置用の凹み32とブラケット設置用の凹み33に、それぞれ別途形成したウィンドウWとブラケット20を予めセットする。なお、金型内には、接合剤Sの突起部St用のキャビティも形成されている。また、ウィンドウWの表面には、接合剤Sとの接着性をより高めるため、必要に応じて接着剤層や両面テープを配しておくこともできる。次いで、図5(c)に示すように、上型30と下型31とを型締めしたうで、ランナ35を通して溶融状態の接合剤Sをキャビティ内に射出する。射出された溶融接合剤Sは、ブラケット20の貫通孔20eを通して流入していく。そして、接合剤Sを固化することで、ウィンドウWとブラケット20との接合と同時に、突起部Stも形成することができる。なお、突起部Stにおいては、溶融接合剤Sが固化する際の熱収縮によってもブラケット20が強固に保持される。最後に、これらを金型から取り出して、アンプ10をブラケット20へ係合することで設置できる。
【0022】
(変形例)
ブラケット20の安定性は若干低下するが、突起部Stは、対向する2つの係合片20bの内側に少なくとも形成してあれば、両係合片20bの外側には必ずしも設けなくてもよい。また、アンプ10をブラケット20へ係合固定する係合片は、上記アンプ10の両側方の係合片20bの他に、アンプ10の前後いずれか一方又は双方にも設けることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 アンプ
11 ケース
11k 係合突起
12 金属端子
12a 爪部
13 増幅回路
14 電気ケーブル
20 ブラケット
20a ベース部
20b 係合片
20c 係合孔
20e 貫通孔
A アンテナ
S 接合剤
St 突起部
W ウィンドウ

図1
図2
図3
図4
図5