特許第5972731号(P5972731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972731
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】熱伝導性シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/02 20060101AFI20160804BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160804BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20160804BHJP
   C08L 83/00 20060101ALI20160804BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B32B7/02 105
   B32B27/00 A
   B32B27/00 101
   C08J7/04 ZCEZ
   C08L83/00
   C08L83/04
   C08K3/00
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-206952(P2012-206952)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-61617(P2014-61617A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】日本バルカー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今田 博久
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−194117(JP,A)
【文献】 特開2006−022319(JP,A)
【文献】 特開2005−097369(JP,A)
【文献】 特開2003−292761(JP,A)
【文献】 特開2010−232535(JP,A)
【文献】 特開2014−062158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 7/04−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂組成物の硬化物からなる熱伝導層と、
第2の樹脂組成物の硬化物からなり、前記熱伝導層の表面を被覆する表面層と、を有する熱伝導性シートであって、
前記第1の樹脂組成物は、下記に示す化合物(A1)、(B1)、(A2)、(B2)及び(C)を含み、
化合物(A1)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%である下記式[6]で表される主鎖構造を有するフッ素系化合物であり、
化合物(B1)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%である下記式[6]で表される主鎖構造を有するフッ素系化合物であり、
化合物(A2)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%である下記式[6]で表される主鎖構造を有するフッ素系化合物であり、
化合物(B2)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%である下記式[6]で表される主鎖構造を有するフッ素系化合物であり、
化合物(C)は、熱伝導性フィラーであり、
前記化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)の含有量に関し、下記式[1]〜[3]:
〔(A1)+(B1)〕/〔(A2)+(B2)〕=20/80〜80/20 [1]
(A1)/(B1)=20/80〜80/20 [2]
(A2)/(B2)=20/80〜80/20 [3]
を満たし、
前記第2の樹脂組成物は、下記に示す化合物(D1)及び/又は(D2)と、化合物(E1)及び/又は(E2)とを含み、
化合物(D1)、(D2)、(E1)及び(E2)は、それぞれが主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、下記式[6]で表される主鎖構造を有するフッ素系化合物(D1f)、(D2f)、(E1f)及び(E2f)であり、またはそれぞれが主鎖中にシロキサン結合を有し、下記式[11]で表されるシリコーン系化合物(D1s)、下記式[13]で表されるシリコーン系化合物(D2s)、下記式[12]で表されるシリコーン系化合物(E1s)及び下記式[14]で表されるシリコーン系化合物(E2s)であり、
化合物(D1)は、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%である化合物であり、
化合物(E1)は、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%である化合物であり、
化合物(D2)は、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%である化合物であり、
化合物(E2)は、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%である化合物であり、
前記化合物(D1)、(D2)、(E1)及び(E2)の含有量に関し、下記式[21]:
〔(D1)+(D2)〕/〔(E1)+(E2)〕=40/60〜60/40 [21]
を満たす、熱伝導性シート。
【化1】

(式[6]中、nは1〜10の整数である。)
【化2】

(式[11]中、nは1〜10の整数であり、ZはSi(H)(R92を表わし、Z10は、末端ヒドロシリル基を2個有する分子においては、Si(H)(R102を表わし、末端ヒドロシリル基を1個有する分子においては、Si(R11を表わし、R、R10、R11は、それぞれ独立して、置換または非置換の一価炭化水素基であり、R,Rは、それぞれ、水素原子または不飽和結合を含有しない非置換または置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基である。)
【化3】

(式[13]中、nは1〜10の整数であり、Z13及びZ14はそれぞれ、上記Z及びZ10と同じ意味を表し、R17およびR18はそれぞれ、上記RとRと同じ意味を表わす。)
【化4】

(式[12]中、nは1〜10の整数であり、Z11はSi(アルケニル基)(R142を表わし、Z12は、末端アルケニル基を2個有する分子においては、Si(アルケニル基)(R152を表わし、末端アルケニル基を1個有する分子においては、Si(R16を表わし、R14、R15、R16は、それぞれ独立して、置換または非置換の一価炭化水素基であり、R12,R13は、それぞれ、水素原子または不飽和結合を含有しない非置換または置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基である。)
【化5】

(式[14]中、nは1〜10の整数であり、Z15及びZ16はそれぞれ、上記Z11及びZ12と同じ意味を表し、R19およびR20はそれぞれ、上記R12とR13と同じ意味を表わす。)
【請求項2】
前記第2の樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含まない、請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
前記第2の樹脂組成物において、化合物(D1)、(D2)、(E1)及び(E2)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有するフッ素系化合物(D1f)、(D2f)、(E1f)及び(E2f)であ請求項1または2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
前記第2の樹脂組成物において、前記フッ素系化合物(E1f)及び(E2f)が有するアルケニル基がビニル基である請求項3に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
前記第1の樹脂組成物において、前記フッ素系化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)の合計含有量100重量部に対して、前記熱伝導性フィラー(C)を50〜500重量部含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体と放熱体との間に介在させて、発熱体の熱を効率的に放熱体に伝導させるためのシート等として用いられる熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
各種装置や電子機器の内部で発生する熱を外部に効率的に放出するための手段として、電子部品等の発熱体と放熱体(放熱用部材あるいは冷却用部材)との間に熱伝導性シートを配置することが従来行なわれている。柔軟性を有し、熱伝導性能の高い熱伝導性シートを介在させることにより、良好な密着力で熱伝導性能の高い熱伝導性シートを介して発熱体と放熱体とを結合させることができるため、結果として熱伝導性シートを介在させない場合に比べて、発熱体から放熱体への熱伝導効率を改善することができる。
【0003】
現在、一般的に市場流通している熱伝導性シートは、その多くがケイ素を主成分とするシリコーンゴムシートである。しかし、シリコーンゴムからなる熱伝導性シートが、シート中に含有される低分子量シロキサン成分の揮発により系を汚染するという問題を有していることはよく知られているところである。また昨今、特に半導体製造装置向け及びパワーデバイス向けの市場では、200℃以上の高温での使用に耐える熱伝導性シートが要求されているが、シリコーンゴムからなる熱伝導性シートは、このような耐熱性の面でも課題を抱えているのが現状である。
【0004】
上記課題を解決すべく特開2010−232535号公報(特許文献1)には、液状フッ素化ポリエーテルと熱伝導性充填剤との混合物を反応硬化させることにより得られる、フッ素を主成分とするフッ素ゴムシートを熱伝導性シート(耐熱性放熱シート)として用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−232535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フッ素ゴムシートによれば、ケイ素を主成分とするシリコーンゴムシートに比べて、概して耐熱性を向上させることが可能である。フッ素ゴムシートにおいては、高い熱伝導性能を付与するためには、比較的多量の熱伝導性フィラー(熱伝導性充填剤)を含有させる必要があるが、これに伴ってシートの硬度が高くなる。このような硬度の上昇は、熱伝導性シートに隣接して配置される発熱体及び放熱体との接触性(密着性)を悪化させ、接触熱抵抗を上昇させる要因となる。接触熱抵抗が高くなると、熱伝導性シート自体の熱伝導性能が高い場合であっても、その性能を十分に発揮することができず、発熱体から放熱体への良好な熱伝導効率を得ることができない。また、フッ素ゴムシートにおいては、高温環境下に長時間晒すと、シート内部の成分が外部に染み出すブリードが生じる場合がある。ブリードは系を汚染させるので、好ましくない。
【0007】
そこで本発明は、熱伝導性フィラーを高充填した場合であっても優れた熱伝導効率を有し、かつ高温環境下に長時間晒された場合であってもブリードの発生が抑制されたフッ素系の熱伝導性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく種々検討を行ない、次の点を見出し、さらに検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0009】
(1)フッ素系熱伝導性シートのバインダーを形成するフッ素系化合物として、硬化反応(架橋)によりエラストマー特性を示すフッ素系ポリマー(ゴム状弾性体)を形成するフッ素系化合物対を単独で用いると(例えば、特許文献1の実施例のように)、熱伝導性フィラーを高充填した場合、シートの硬度が高くなる。
【0010】
(2)一方、フッ素系熱伝導性シートのバインダーを形成するフッ素系化合物として、硬化反応によりゲル特性を示すフッ素系ポリマー(ゲル状弾性体)を形成するフッ素系化合物対を単独で用いると、シート成型が困難となる。
【0011】
(3)これに対し、フッ素系熱伝導性シートのバインダーを形成するフッ素系化合物として、硬化反応によりエラストマー特性を示すフッ素系ポリマー(ゴム状弾性体)を形成するフッ素系化合物対〔後述するフッ素系化合物(A1)及び(B1)〕と、硬化反応によりゲル特性を示すフッ素系ポリマー(ゲル状弾性体)を形成するフッ素系化合物対〔後述するフッ素系化合物(A2)及び(B2)〕とを適切な比で併用し、かつ、配合比(A1)/(B1)及び(A2)/(B2)をも適切な所定の比に調整した熱伝導性樹脂組成物を用いると、熱伝導性フィラーを高充填した場合であっても、良好な低硬度性を有するシート(熱伝導層)を得ることができる。
【0012】
(4)熱伝導層に含まれるフッ素系化合物〔後述するフッ素化合物(A1)及び(A2)〕が分子末端に有する官能基であるヒドロシリル基を分子末端に有する化合物と、熱伝導層に含まれるフッ素系化合物〔後述するフッ素化合物(B1)及び(B2)〕が分子末端に有する官能基であるアルケニル基を分子末端に有する化合物とを、適切な所定の比で調整した樹脂組成物により熱伝導層を被覆することにより、高温環境下に長時間晒した場合であっても、ブリードの発生を抑制することができる。
【0013】
なお本明細書中において、「エラストマー特性」とは、JIS K6253に準拠して測定されるShore A硬度が20〜40の範囲内であることを意味する。また、「ゲル特性」とは、JIS K2207に準拠して測定される針入度が60〜80の範囲内であることを意味する。
【0014】
すなわち本発明は、
第1の樹脂組成物の硬化物からなる熱伝導層と、
第2の樹脂組成物の硬化物からなり、熱伝導層の表面を被覆する表面層と、を有する熱伝導性シートであって、
第1の樹脂組成物は、下記に示す化合物(A1)、(B1)、(A2)、(B2)及び(C)を含み、
化合物(A1)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%であるフッ素系化合物であり、
化合物(B1)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%であるフッ素系化合物であり、
化合物(A2)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%であるフッ素系化合物であり、
化合物(B2)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%であるフッ素系化合物であり、
化合物(C)は、熱伝導性フィラーであり、
化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)の含有量に関し、下記式[1]〜[3]:
〔(A1)+(B1)〕/〔(A2)+(B2)〕=20/80〜80/20 [1]
(A1)/(B1)=20/80〜80/20 [2]
(A2)/(B2)=20/80〜80/20 [3]
を満たし、
第2の樹脂組成物は、下記に示す化合物(D1)及び/又は(D2)と、化合物(E1)及び/又は(E2)とを含み、
化合物(D1)、(D2)、(E1)及び(E2)は、それぞれが主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有するフッ素系化合物(D1f)、(D2f)、(E1f)及び(E2f)であり、またはそれぞれが主鎖中にシロキサン結合を有するシリコーン系化合物(D1s)、(D2s)、(E1s)及び(E2s)であり、
化合物(D1)は、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%である化合物であり、
化合物(E1)は、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%である化合物であり、
化合物(D2)は、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%である化合物であり、
化合物(E2)は、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%である化合物であり、
化合物(D1)、(D2)、(E1)及び(E2)の含有量に関し、下記式[21]:
〔(D1)+(D2)〕/〔(E1)+(E2)〕=40/60〜60/40 [21]
を満たす、熱伝導性シートを提供する。
【0015】
本発明において、上記第2の樹脂組成物は、好ましくは熱伝導性フィラーを含まない。また、上記第2の樹脂組成物において、化合物(D1)、(D2)、(E1)及び(E2)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有するフッ素系化合物(D1f)、(D2f)、(E1f)及び(E2f)とすることができ、フッ素系化合物(D1f)、(D2f)、(E1f)及び(E2f)は、たとえば、下記式[6]:
【0016】
【化1】
【0017】
(式中、nは1〜10の整数である。)
で表される主鎖構造を有する。
【0018】
上記第2の樹脂組成物において、フッ素系化合物(E1f)及び(E2f)が有するアルケニル基は、好ましくは、ビニル基である。
【0019】
上記第1の樹脂組成物において、フッ素系化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)の合計含有量100重量部に対して、熱伝導性フィラー(C)を好ましくは50〜500重量部含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱伝導性フィラーを高充填した場合であっても優れた熱伝導効率を示し、また高温環境下に長時間晒した場合であっても高いブリードの発生抑制効果を有し、もって耐熱性の優れた熱伝導性シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<熱伝導性シート>
本発明は、発熱体と放熱体との間に介在させて、発熱体の熱を効率的に放熱体に伝導させる熱伝導性シートであり、第1の樹脂組成物の硬化物からなる熱伝導層と、第2の樹脂組成物の硬化物からなり、熱伝導層の表面を被覆する表面層と、を有する。
【0022】
〔1〕熱伝導層
熱伝導層は、第1の樹脂組成物の硬化物からなる。熱伝導層の厚さは、たとえば、0.05〜3mmとすることができる。第1の樹脂組成物は、以下の化合物を含む。
【0023】
(A1)主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%であるフッ素系化合物〔以下、「フッ素系化合物(A1)」ともいう。〕、
(B1)主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%であるフッ素系化合物〔以下、「フッ素系化合物(B1)」ともいう。〕、
(A2)主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%であるフッ素系化合物〔以下、「フッ素系化合物(A2)」ともいう。〕、
(B2)主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%であるフッ素系化合物〔以下、「フッ素系化合物(B2)」ともいう。〕、及び
(C)熱伝導性フィラー。
【0024】
上記のとおり、フッ素系化合物(A1)及び(B1)は、硬化(架橋)反応によりエラストマー特性を示すフッ素系ポリマー(ゴム状弾性体)を形成するフッ素系化合物対であり、フッ素系化合物(A2)及び(B2)は、硬化反応によりゲル特性を示すフッ素系ポリマー(ゲル状弾性体)を形成するフッ素系化合物対である。本発明は、これらのフッ素系化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)を併用し、さらにはこれらを特徴的な配合比で熱伝導層を形成する第1の樹脂組成物に含有させることによって、良好な低硬度性を有する熱伝導層、ひいては良好な熱伝導効率を有する熱伝導性シートの実現を可能としたものである。
【0025】
なおここで留意すべきは、本発明が単純に、エラストマー特性を示す架橋体(A1)−(B1)と、ゲル特性を示す架橋体(A2)−(B2)とブレンドすることによって、得られる熱伝導層の特性を調整するという着想に基づくものではないことである。本発明係る第1の樹脂組成物は、あらかじめ調製された架橋体(A1)−(B1)と架橋体(A2)−(B2)とを配合成分として含むものではなく、架橋前の状態のフッ素系化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)を含むものであり、したがって第1の樹脂組成物から形成される熱伝導層は、上記4種のフッ素系化合物が種々の組み合わせで架橋し合う結果として、架橋体(A1)−(B1)及び(A2)−(B2)以外にも多種の架橋体(ポリマー鎖長等をも考慮すればさらに多種の架橋体)をバインダーとして含む。
【0026】
本発明の特徴の一つは、それら同士のみで架橋したならばエラストマー特性を示す架橋体を形成するフッ素系化合物対と、それら同士のみで架橋したならばゲル特性を示す架橋体を形成するフッ素系化合物対とを併用することにより、エラストマー特性の利点とゲル特性の利点とを併せ持つ熱伝導層を得るという着想を前提としつつも、上記のように、シート成型時に多種にわたる架橋体が生成することを考慮して、所望の特性を有する熱伝導性シートの実現のために、4種のフッ素系化合物の含有量比を適切に制御したことにある。
【0027】
〔1−1〕フッ素系化合物(A1)
フッ素系化合物(A1)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にヒドロシリル基(SiH基)を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%、好ましくは80〜100モル%であり(したがって、ヒドロシリル基を1個有する分子の含有率が0〜40モル%、好ましくは0〜20モル%であり)、フッ素系化合物(B1)及びフッ素系化合物(B2)のアルケニル基と付加反応可能なフッ素系化合物である。
【0028】
フッ素系化合物(A1)の主鎖構造は、パーフルオロオキシアルキレン単位から構成されるものであることができ、好ましくは下記式[6]:
【0029】
【化2】
【0030】
(式[6]中、nは1〜10の整数である。)
で表される構造である。
【0031】
フッ素系化合物(A1)として好適に用いられる化合物の代表例は、下記式[7]:
【0032】
【化3】
【0033】
で表されるヒドロシリル基末端フッ素系化合物である。式[7]中、nは上記と同じ意味を表す。Z1はヒドロシリル基を含む架橋部であり、Si(H)(R12を表す。Z2は、末端ヒドロシリル基を2個有する分子においては、Z1と同様、Si(H)(R22を表し、末端ヒドロシリル基を1個有する分子においては、Si(R33を表す。
【0034】
上記R1、R2、R3は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、置換または非置換の一価炭化水素基であり、その例を挙げれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などである。R1、R2、R3は、好ましくは炭素原子数1〜5のアルキル基である。
【0035】
フッ素系化合物(A1)は、JIS K7117−1に準拠して測定される粘度が1.5〜4.0Pa・sであることが好ましい。
【0036】
式[7]で表されるフッ素系化合物(A1)として、信越化学工業(株)製の商品名「SIFEL 8370−A」などを好適に用いることができる。
【0037】
〔1−2〕フッ素系化合物(B1)
フッ素系化合物(B1)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%、好ましくは80〜100モル%であり(したがって、アルケニル基を1個有する分子の含有率が0〜40モル%、好ましくは0〜20モル%であり)、フッ素系化合物(A1)及びフッ素系化合物(A2)のヒドロシリル基と付加反応可能なフッ素系化合物である。
【0038】
フッ素系化合物(B1)の主鎖構造は、パーフルオロオキシアルキレン単位から構成されるものであることができ、好ましくは上記式[6]で表される構造である。フッ素系化合物(B1)においても、式[6]中のnは1〜10の整数である。フッ素系化合物(B1)におけるnの数は、フッ素系化合物(A1)と同じであっても、異なっていてもよい。
【0039】
フッ素系化合物(B1)として好適に用いられる化合物の代表例は、下記式[8]:
【0040】
【化4】
【0041】
で表されるアルケニル基末端フッ素系化合物である。式[8]中、nは上記と同じ意味を表す。Z3はアルケニル基を含む架橋部であり、Si(アルケニル基)(R42を表す。Z4は、末端アルケニル基を2個有する分子においては、Z3と同様、Si(アルケニル基)(R52を表し、末端アルケニル基を1個有する分子においては、Si(R63を表す。
【0042】
上記R4、R5、R6は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、置換または非置換の一価炭化水素基であり、その例は、上記R1、R2、R3について述べたものと同様である。R4、R5、R6は、好ましくは炭素原子数1〜5のアルキル基である。
【0043】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、メチルビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の、通常、炭素原子数2〜8、好ましくは2〜4程度のものが挙げられ、とりわけビニル基が好ましい。
【0044】
フッ素系化合物(B1)は、JIS K7117−1に準拠して測定される粘度が1.5〜4.0Pa・sであることが好ましい。
【0045】
式[8]で表されるフッ素系化合物(B1)として、信越化学工業(株)製の商品名「SIFEL 8370−B」などを好適に用いることができる。
【0046】
〔1−3〕フッ素系化合物(A2)
フッ素系化合物(A2)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にヒドロシリル基(SiH基)を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%、好ましくは20〜40モル%であり(したがって、ヒドロシリル基を1個有する分子の含有率が60〜100モル%、好ましくは60〜80モル%であり)、フッ素系化合物(B1)及びフッ素系化合物(B2)のアルケニル基と付加反応可能なフッ素系化合物である。
【0047】
フッ素系化合物(A2)の主鎖構造は、パーフルオロオキシアルキレン単位から構成されるものであることができ、好ましくは上記式[6]で表される構造である。フッ素系化合物(A2)においても、式[6]中のnは1〜10の整数である。フッ素系化合物(A2)におけるnの数は、フッ素系化合物(A1)や(B1)と同じであっても、異なっていてもよい。
【0048】
フッ素系化合物(A2)として好適に用いられる化合物の代表例は、下記式[9]:
【0049】
【化5】
【0050】
で表されるヒドロシリル基末端フッ素系化合物である。式[9]中、nは上記と同じ意味を表す。Z5及びZ6はそれぞれ、上記Z1及びZ2と同じ意味を表す。
【0051】
フッ素系化合物(A2)は、JIS K7117−1に準拠して測定される粘度が1.5〜500Pa・sであることが好ましい。
【0052】
式[9]で表されるフッ素系化合物(A2)として、信越化学工業(株)製の商品名「SIFEL 3405−A」、「SIFEL 3505−A」などを好適に用いることができる。
【0053】
〔1−4〕フッ素系化合物(B2)
フッ素系化合物(B2)は、主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%、好ましくは20〜40モル%であり(したがって、アルケニル基を1個有する分子の含有率が60〜100モル%、好ましくは60〜80モル%であり)、フッ素系化合物(A1)及びフッ素系化合物(A2)のヒドロシリル基と付加反応可能なフッ素系化合物である。
【0054】
フッ素系化合物(B2)の主鎖構造は、パーフルオロオキシアルキレン単位から構成されるものであることができ、好ましくは上記式[6]で表される構造である。フッ素系化合物(B2)においても、式[6]中のnは1〜10の整数である。フッ素系化合物(B2)におけるnの数は、フッ素系化合物(A1)や(B1)、(A2)と同じであっても、異なっていてもよい。
【0055】
フッ素系化合物(B2)として好適に用いられる化合物の代表例は、下記式[10]:
【0056】
【化6】
【0057】
で表されるアルケニル基末端フッ素系化合物である。式[10]中、nは上記と同じ意味を表す。Z7及びZ8はそれぞれ、上記Z3及びZ4と同じ意味を表す。アルケニル基は、フッ素系化合物(B1)と同様、例えば、ビニル基、メチルビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の、通常、炭素原子数2〜8、好ましくは2〜4程度のものであることができ、とりわけビニル基が好ましい。フッ素系化合物(B2)のアルケニル基は、フッ素系化合物(B1)のアルケニル基と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
フッ素系化合物(B2)は、JIS K7117−1に準拠して測定される粘度が1.5〜500Pa・sであることが好ましい。
【0059】
式[10]で表されるフッ素系化合物(B2)として、信越化学工業(株)製の商品名「SIFEL 3405−B」、「SIFEL 3505−B」などを好適に用いることができる。
【0060】
〔1−5〕フッ素系化合物の含有量
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、フッ素系化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)の含有量に関し、下記式[1]〜[3]:
〔(A1)+(B1)〕/〔(A2)+(B2)〕=20/80〜80/20 [1]
(A1)/(B1)=20/80〜80/20 [2]
(A2)/(B2)=20/80〜80/20 [3]
を満たす。
【0061】
上記式[1]〜[3]を満たす含有量比で、フッ素系化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)を配合することにより、熱伝導性フィラー(C)を高充填した場合であっても、良好な低硬度性を有する熱伝導層、ひいては良好な熱伝導効率を有する熱伝導性シートを得ることができる。
【0062】
より優れた低硬度性を得るために、含有量比〔(A1)+(B1)〕/〔(A2)+(B2)〕は、25/75以上とすることが好ましく、30/70以上とすることがより好ましく、また、75/25以下とすることが好ましい。含有量比〔(A1)+(B1)〕/〔(A2)+(B2)〕は、例えば、70/30以下、60/40以下、あるいは50/50程度とすることができる。含有量比〔(A1)+(B1)〕/〔(A2)+(B2)〕が20/80未満である場合には、熱伝導層への成型が困難となる傾向にある。一方、含有量比〔(A1)+(B1)〕/〔(A2)+(B2)〕が80/20を超える場合には、熱伝導層の硬度が高くなる傾向にある。
【0063】
上記式[1]に加えて含有量比(A1)/(B1)及び(A2)/(B2)をそれぞれ20/80〜80/20の範囲内とする(上記式[2]及び[3]を満たす)ことにより、良好な低硬度性を得ること可能であるが、より優れた低硬度性を得るためには、含有量比(A1)/(B1)及び(A2)/(B2)は、下記式[4]及び[5]:
(A1)/(B1)=20/80〜40/60又は60/40〜80/20 [4]
(A2)/(B2)=20/80〜40/60又は60/40〜80/20 [5]
を満たすことが好ましい。
【0064】
すなわち、上記式[4]及び[5]を満たすように、フッ素系化合物(A1)又は(B1)のいずれか一方を他方に対して過剰に配合し、フッ素系化合物(A2)又は(B2)のいずれか一方を他方に対して過剰に配合することにより、過剰分のフッ素系化合物が効果的に作用して、熱伝導層の低硬度性を向上させることができる。ただし、上記過剰分が過度に多いと、すなわち、含有量比(A1)/(B1)又は(A2)/(B2)が20/80未満又は80/20を超える場合には、上記式[1]を満たしている場合であっても、熱伝導層への成型が困難となる傾向にある。
【0065】
なお、上記過剰分のフッ素系化合物は、熱伝導性シートを高温環境下に長時間晒した場合に、染み出すことが懸念されるが、本発明の熱伝導性シートは、後述する表面層を有することにより、このような染み出しを抑制することができる。すなわち、本発明の熱伝導性シートは、高温環境下に長時間晒された場合であっても、ブリードの発生が抑制される。
【0066】
〔1−6〕熱伝導性フィラー(C)
熱伝導性フィラー(C)としては、特に制限されず、一般的に使用されているものを用いることができる。具体例を挙げれば、例えば、酸化アルミニウム(Al23)、結晶性酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ケイ素(Si34)、窒化ホウ素(六方晶BNや立方晶BN)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、炭素繊維、ダイヤモンド、黒鉛などである。
【0067】
熱伝導性フィラー(C)の形状は、粒状、鱗片状、針状などであり得るが、より高密度充填できることから粒状であることが好ましい。粒状である熱伝導性フィラー(C)の平均粒子径は、例えば0.1〜100μmであり、好ましくは0.5〜50μmである。
【0068】
熱伝導性フィラー(C)として、1種の熱伝導性フィラーを単独で用いてもよいし、2種以上の熱伝導性フィラーを混合して用いてもよい。また、高密度充填性などを考慮して、平均粒子径の異なる2種以上の熱伝導性フィラーを混合して用いることもできる。
【0069】
第1の樹脂組成物において、熱伝導性フィラー(C)の含有量は、フッ素系化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)の合計含有量100重量部に対して、通常50〜500重量部であり、好ましくは100〜400重量部である。本発明によれば、熱伝導性フィラー(C)の含有量を例えば200〜500重量部程度まで高くしても、良好な熱伝導効率を有する熱伝導性シートを得ることができる。熱伝導性フィラー(C)の含有量がフッ素系化合物の合計含有量100重量部に対して50重量部以上、好ましくは100重量部以上、より好ましくは250重量部以上であると、熱伝導性シート自体の十分な熱伝導性性能が得られやすい。また、熱伝導性フィラー(C)の含有量がフッ素系化合物の合計含有量100重量部に対して500重量部以下、好ましくは400重量部以下であると、熱伝導性層への成型性を十分に確保できるとともに、極度の熱伝導性フィラー充填による熱伝導性層の硬度上昇を抑制することができる。
【0070】
〔1−7〕白金族系触媒
第1の樹脂組成物は、フッ素系化合物のヒドロシリル基とアルケニル基との架橋反応(ヒドロシリル化反応)を触媒する白金族系触媒を含み、通常は白金族系触媒を含む。白金族系触媒としては、例えば白金系触媒が好ましく用いられる。白金系触媒としては、白金の単体;塩化白金酸;塩化白金;白金−オレフィン錯体;白金−アルケニルシロキサン錯体;白金−カルボニル錯体;白金−ホスフィン錯体;白金−アルコール錯体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金を担持させたものなどが挙げられる。
【0071】
白金系触媒以外の白金族系触媒としては、ロジウム系化合物、ルテニウム系化合物、イリジウム系化合物、パラジウム系化合物が挙げられる。
【0072】
白金族系触媒の含有量は、第1の樹脂組成物の架橋硬化を促進するために必要な有効量であれば特に限定されず、フッ素系化合物(A1)、(B1)、(A2)及び(B2)の合計含有量100重量部に対して、0〜10重量部であることができ、典型的には、上記合計含有量に対して、0.1〜1000ppm程度である。
【0073】
〔1−8〕その他の配合成分
第1の樹脂組成物は必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、難燃剤、分散剤、溶剤などを含むことができる。
【0074】
〔2〕表面層
表面層は、第2の樹脂組成物の硬化物からなる。表面層は、熱伝導層の少なくとも一方の表面を被覆し、好ましくは熱伝導層の表面全体を被覆する。表面層の厚さは、10〜1000μmであることが好ましく、20〜500μmであることがさらに好ましい。表面層の厚さが10μm未満であるとブリードの抑制効果が十分でない場合があり、また表面層の厚さが1000μmを超えると熱伝導層の有する特性である、熱伝導性、低硬度性を低下させる場合がある。
【0075】
第2の樹脂組成物は、下記に示す化合物(D1)及び/又は(D2)と、化合物(E1)及び/又は(E2)とを含む。なお、化合物(D1)、(D2)、(E1)及び(E2)は、それぞれが主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有するフッ素系化合物(D1f)、(D2f)、(E1f)及び(E2f)であり、またはそれぞれが主鎖中にシロキサン結合を有するシリコーン系化合物(D1s)、(D2s)、(E1s)及び(E2s)である。
【0076】
化合物(D1)〔フッ素系化合物(D1f)またはシリコーン系化合物(D1s)〕は、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%である化合物であり、
化合物(E1)〔フッ素系化合物(E1f)またはシリコーン系化合物(E1s)〕は、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%である化合物であり、
化合物(D2)〔フッ素系化合物(D2f)またはシリコーン系化合物(D2s)〕は、分子末端にヒドロシリル基を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%である化合物であり、
化合物(E2)〔フッ素系化合物(E2f)またはシリコーン系化合物(E2s)〕は、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%である化合物である。
【0077】
本発明の熱伝導性シートの表面層においては、ヒドロシリル基を有する化合物〔化合物(D1)、(D2)〕と、アルケニル基を有する化合物〔化合物(E1)、(E2)〕とを所定の配合比で混合することにより、上記熱伝導層のブリードに対して優れた抑制効果を発揮するものである。具体的には、化合物(D1)、(D2)、(E1)及び(E2)の含有量に関し、下記式[21]:
〔(D1)+(D2)〕/〔(E1)+(E2)〕=40/60〜60/40 [21]
を満たす。
【0078】
より優れたブリード抑制効果を得るために、含有量比〔(D1)+(D2)〕/〔(E1)+(E2)〕は、50/50に近い値である程好ましく、50/50であることが最も好ましい。
【0079】
〔2−1〕フッ素系化合物(D1f)
フッ素系化合物(D1f)は、〔1−1〕で説明したフッ素系化合物(A1)と同じである。
【0080】
〔2−2〕フッ素系化合物(E1f)
フッ素系化合物(E1f)は、〔1−2〕で説明したフッ素系化合物(B1)と同じである。
【0081】
〔2−3〕フッ素系化合物(D2f)
フッ素系化合物(D2f)は、〔1−3〕で説明したフッ素系化合物(A2)と同じである。
【0082】
〔2−4〕フッ素系化合物(E2f)
フッ素系化合物(E2f)は、〔1−4〕で説明したフッ素系化合物(B2)と同じである。
【0083】
〔2−5〕シリコーン系化合物(D1s)
シリコーン系化合物(D1s)は、主鎖中にシロキサン結合を有し、分子末端にヒドロシリル基(SiH基)を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%、好ましくは80〜100モル%であり(したがって、ヒドロシリル基を1個有する分子の含有率が0〜40モル%、好ましくは0〜20モル%であり)、シリコーン系化合物(E1s)及びシリコーン系化合物(E2s)のアルケニル基と付加反応可能なシリコーン系化合物である。
【0084】
シリコーン系化合物(D1s)として好適に用いられる化合物の代表例は、下記式[11]:
【0085】
【化7】
【0086】
で表わされるヒドロシリル基末端シリコーン系化合物である。式[11]中、nは1〜10の整数である。Zはヒドロシリル基を含む架橋部であり、Si(H)(R92を表す。Z10は、末端ヒドロシリル基を2個有する分子においては、Zと同様、Si(H)(R102を表わし、末端ヒドロシリル基を1個有する分子においては、Si(R11を表わす。
【0087】
上記R、R10、R11は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、置換または非置換の一価炭化水素基であり、その例を挙げれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などである。R、R10、R11は、好ましくは炭素原子数1〜5のアルキル基である。
【0088】
式[11]中、R,Rは、それぞれ、水素原子または不飽和結合を含有しない非置換または置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基の例を挙げれば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したものなどである。
【0089】
シリコーン系化合物(D1s)は、JIS K7117−1に準拠して測定される粘度が0.2〜200Pa・sであることが好ましい。
【0090】
式[11]で表わされるシリコーン系化合物としては、信越化学工業(株)製の商品名「KE−1950−30(A)」などを好適に用いることができる。
【0091】
〔2−6〕シリコーン系化合物(E1s)
シリコーン系化合物(E1s)は、主鎖中にシロキサン結合を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%、好ましくは80〜100モル%であり(したがって、アルケニル基を1個有する分子の含有率が0〜40モル%、好ましくは0〜20モル%であり)、シリコーン系化合物(D1s)及びシリコーン系化合物(D2s)のヒドロシリル基と付加反応可能なシリコーン系化合物である。
【0092】
シリコーン系化合物(E1s)として好適に用いられる化合物の代表例は、下記式[12]:
【0093】
【化8】
【0094】
で表わされるアルケニル基末端シリコーン系化合物である。式[12]中、nは1〜10の整数である。Z11はアルケニル基を含む架橋部であり、Si(アルケニル基)(R142を表す。Z12は、末端アルケニル基を2個有する分子においては、Z11と同様、Si(アルケニル基)(R152を表わし、末端アルケニル基を1個有する分子においては、Si(R16を表わす。
【0095】
上記R14、R15、R16は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、置換または非置換の一価炭化水素基であり、その例を挙げれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などである。R14、R15、R16は、好ましくは炭素原子数1〜5のアルキル基である。
【0096】
式[12]中、R12,R13は、それぞれ、水素原子または不飽和結合を含有しない非置換または置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基の例を挙げれば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したものなどである。
【0097】
シリコーン系化合物(E1s)は、JIS K7117−1に準拠して測定される粘度が5〜20Pa・sであることが好ましい。
【0098】
式[12]で表わされるシリコーン系化合物としては、信越化学工業(株)製の商品名「KE−1950−30(B)」などを好適に用いることができる。
【0099】
〔2−7〕シリコーン系化合物(D2s)
シリコーン系化合物(D2s)は、主鎖中にシロキサン結合を有し、分子末端にヒドロシリル基(SiH基)を1〜2個有する化合物であって、ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%、好ましくは20〜40モル%であり(したがって、ヒドロシリル基を1個有する分子の含有率が60〜100モル%、好ましくは60〜80モル%であり)、シリコーン系化合物(E1s)及びシリコーン系化合物(E2s)のアルケニル基と付加反応可能なフッ素系化合物である。
【0100】
シリコーン系化合物(D2s)として好適に用いられる化合物の代表例は、下記式[13]:
【0101】
【化9】
【0102】
で表されるヒドロシリル基末端シリコーン系化合物である。式[13]中、nは1〜10の整数である。Z13及びZ14はそれぞれ、上記Z及びZ10と同じ意味を表す。また、R17およびR18はそれぞれ、上記RとRと同じ意味を表わす。
【0103】
シリコーン系化合物(D2s)は、JIS K7117−1に準拠して測定される粘度が50〜200Pa・sであることが好ましい。
【0104】
式[13]で表されるシリコーン系化合物(D2s)として、信越化学工業(株)製の商品名「KE−1950−10(A)」などを好適に用いることができる。
【0105】
〔2−8〕シリコーン系化合物(E2s)
シリコーン系化合物(E2s)は、主鎖中にシロキサン結合を有し、分子末端にアルケニル基を1〜2個有する化合物であって、アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%、好ましくは20〜40モル%であり(したがって、アルケニル基を1個有する分子の含有率が60〜100モル%、好ましくは60〜80モル%であり)、シリコーン系化合物(D1s)及びシリコーン系化合物(D2s)のヒドロシリル基と付加反応可能なシリコーン系化合物である。
【0106】
シリコーン系化合物(E2s)として好適に用いられる化合物の代表例は、下記式[14]:
【0107】
【化10】
【0108】
で表されるアルケニル基末端シリコーン系化合物である。式[14]中、nは1〜10の整数である。Z15及びZ16はそれぞれ、上記Z11及びZ12と同じ意味を表す。また、R19およびR20はそれぞれ、上記R12とR13と同じ意味を表わす。
【0109】
シリコーン系化合物(E2s)は、JIS K7117−1に準拠して測定される粘度が50〜200Pa・sであることが好ましい。
【0110】
式[14]で表されるシリコーン系化合物(E2s)として、信越化学工業(株)製の商品名「KE−1950−10(B)」などを好適に用いることができる。
【0111】
〔2−9〕白金族系触媒
第2の樹脂組成物は、フッ素系化合物またはシリコーン系化合物のヒドロシリル基とアルケニル基との架橋反応(ヒドロシリル化反応)を触媒する白金族系触媒を含み、通常は白金族系触媒を含む。白金族系触媒の説明は、〔1−7〕で説明した白金族系触媒と同様であるので、説明を省略する。
【0112】
〔2−10〕その他の配合成分
第2の樹脂組成物は必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、難燃剤、分散剤、溶剤などを含むことができる。なお、接触熱抵抗が高くなる可能性があることから、好ましくは熱伝導性フィラーを含まない。
【0113】
〔3〕製造方法
まず、第1の樹脂組成物を用いて熱伝導層を作製する。熱伝導層は、第1の樹脂組成物を一般的な方法によりシート成型するとともに、成型時の加熱により架橋させて得られる。なお、この段階では、第1の樹脂組成物が半加硫状態となるように成型時の加熱を行なうことが好ましい。ここでいう半加硫状態とは、キュラストメーターにて測定されるトルク値がトルク最大値の50〜90%である状態を意味する。成型方法としては、プレス成型、射出成型、トランスファー成型、押出成型などを挙げることができる。
【0114】
その後、第2の樹脂組成物を用いて、熱伝導層の表面に表面層を設ける。表面層は、未加硫の第2の樹脂組成物を、熱伝導層の表面に、コーター、ロール、浸漬法などにより塗布する。その後、第2の樹脂組成物の塗布層と、半加硫状態の熱伝導層とからなる積層体を加熱して、熱伝導層と塗布層とを硬化させる。このとき、熱伝導層の未加硫部と塗布層とが結合する。以上の工程により、本発明の熱伝導性シートを作製することができる。
【0115】
〔4〕熱伝導性シートのパラメータ
熱伝導性シートの厚さは、用途などにより適宜設定されるが、通常0.05〜3mm程度であり、好ましくは0.1〜1mm程度である。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。下記実施例及び比較例で得られた熱伝導性シートについて行なった評価試験の試験方法は次のとおりである。
【0117】
(1)熱抵抗
発熱基板(発熱量:45W)上に、熱伝導性シートから切り出した縦10mm、横10mm、厚さ0.5mmの試料片を貼り付けた。試料片の上に、上記発熱基板と同じ材質からなる冷却機構付き基板を配置し、98kPaの一定荷重で圧接した。両基板には温度センサーが取り付けられており、両基板の温度をモニタリングしながら、発熱基板に通電した。通電開始から5分経過後の発熱基板の温度T1(℃)及び冷却機構付き基板の温度T2(℃)を測定し、下記式:
熱抵抗(℃/W)=(T1−T2)/Q 〔Qは発熱基板の発熱量(W)〕
に基づき熱抵抗を算出した。
【0118】
(2)重量減少率(ブリード評価値)
熱伝導性シートから切り出した縦25mm、横25mm、厚さ0.5mmの試料片を電気炉にて200℃で72時間加熱処理を行ない、加熱処理前後の重量減少率(%)を測定した。重量減少は、ブリードにより生じているものと見なすことができるため、重量減少率よりブリードの程度を評価することができる。
【0119】
(3)硬度
ASKER製のASKER C硬度計を用いて25℃での比較例3〜5の熱伝導性シートの硬度を測定した。
【0120】
<熱伝導層1〜3>
熱伝導層1〜3の形成には、表1に示される配合比率(数値の単位は重量部である)で同表に示される各配合成分を自動乳鉢を用いて混合し、さらにロールに通して高分散化させ、得られた熱伝導層形成用混練物(第1の樹脂組成物)を用いた。
【0121】
【表1】
【0122】
<表面層1〜6>
表面層1〜6の形成には、表2に示される配合比率(数値の単位は重量部である)で同表に示される各配合成分を自動乳鉢を用いて混合し、さらにロールを通して高分散化させ、得られた表面層形成用混練物(第2の樹脂組成物)を用いた。
【0123】
【表2】
【0124】
<実施例1〜10、比較例1,2>
表3に示される熱伝導層の熱伝導層形成用混練物を、金型を用いて熱プレス(100℃、7分間)でシート状に成型し(半加硫状態)、熱伝導層を作製した。そして、熱伝導層の両表面に、表3に示される表面層の表面層形成用混練物をディップコーターを用いて塗布した。その後、熱伝導層と、表面層形成用混練物の塗布層とからなる積層体を電気炉により150℃、60分間加熱し、熱伝導性シートを得た。得られた熱伝導性シートの熱伝導層の厚さは0.45mm、表面層の厚さは0.025mmであった。
【0125】
<比較例3〜5>
表3に示される熱伝導層の熱伝導層形成用混練物を、金型を用いて熱プレス(120℃、10分間)でシート状に成型し(加硫状態)、熱伝導性シートを得た。得られた熱伝導性シートの厚さは、0.50mmであった。
【0126】
【表3】
【0127】
実施例及び比較例で使用した各配合成分の詳細は次のとおりである。
〔a〕フッ素系化合物(A1)、(D1f):信越化学工業(株)製の商品名「SIFEL 8370−A」(ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%の範囲内であるフッ素系化合物)、
〔b〕フッ素系化合物(B1)、(E1f):信越化学工業(株)製の商品名「SIFEL 8370−B」(アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%の範囲内であるフッ素系化合物)、
〔c〕フッ素系化合物(A2)、(D2f):信越化学工業(株)製の商品名「SIFEL 3405−A」(ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%の範囲内であるフッ素系化合物)、
〔d〕フッ素系化合物(B2)、(E2f):信越化学工業(株)製の商品名「SIFEL 3405−B」(アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%の範囲内であるフッ素系化合物)、
〔e〕シリコーン系化合物(D1s):信越化学工業(株)の商品名「KE-1950-30(A)」(ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%の範囲内であるシリコーン系化合物)、
〔f〕シリコーン系化合物(E1s):信越化学工業(株)製の商品名「KE-1950-30(B)」(アルケニル基を2個有する分子の含有率が60〜100モル%の範囲内であるシリコーン系化合物)、
〔g〕シリコーン系化合物(D2s):信越化学工業(株)製の商品名「KE-1950-10(A)」(ヒドロシリル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%の範囲内であるシリコーン系化合物)、
〔h〕シリコーン系化合物(E2s):信越化学工業(株)製の商品名「KE-1950-10(B)」(アルケニル基を2個有する分子の含有率が0〜40モル%の範囲内であるシリコーン系化合物)、
〔i〕酸化アルミニウムA:電気化学工業(株)製「DAM−45」(平均粒子径40μm)、
〔j〕酸化アルミニウムB:電気化学工業(株)製「DAM−05A」(平均粒子径0.5μm)、
〔k〕白金触媒:田中貴金属社製「TEC10E50E」(担持量50重量%)。
【0128】
表3に示されるとおり、実施例1〜10の熱伝導性シートは、重量減少率が小さく、高温環境下に長時間晒した場合であっても、ブリードがほどんど生じていないことがわかる。また、実施例1〜10の熱伝導性シートは、十分に低い硬度を有することがわかる。さらに、実施例1〜10の熱伝導性シートは、表面層を有さない点のみ異なる比較例3,4の熱伝導性シートと比較して、熱抵抗が高くなるということがなく、熱伝導性シートとして有用であることがわかる。
【0129】
これに対して、比較例1、2の表面層を構成する第2の樹脂組成物は、〔(D1f)+(D2f)〕/〔(E1f)+(E2f)〕が40/60〜60/40の範囲内になく、このため、高温環境下に長時間晒した場合のブリードの抑制効果が十分ではなかった。また、比較例5の熱伝導層を構成する第1の樹脂組成物は、〔(A1)+(B1)〕/〔(A2)+(B2)〕が20/80〜80/20のの範囲内になく、さらに(A2)/(B2)が20/80〜80/20の範囲内になく、硬度が高いものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の熱伝導性シートは、優れた熱伝導効率を示すものであり、各種装置や電子機器などの幅広い分野における熱伝導性シートとして好適に使用することができる。本発明の熱伝導性シートを、例えば半導体製造装置に適用した場合には、半導体製造プロセスを高温環境下で実施することが可能となるため、回路の線幅を小さくすることによるLSIの高集積化、ひいては、より高性能な半導体装置を実現し得る。