(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2の洗濯槽回転検出装置の分解能を向上させるためには、周方向により多くの黒色部および白色部を配置した検出パターンを回転板に設けなければならない。ここで、黒色部および白色部の周方向の幅を小さくして、検出パターンを増やす場合には、黒色部や白色部が汚れるなどした場合に、フォトセンサによる検出精度が低下するおそれがある。一方、黒色部および白色部の周方向の幅を維持し、回転板の径を大きくすることにより検出パターンを増やす場合には、回転板が周囲の配線などを巻き込まないようにするために、洗濯槽回転検出装置を洗濯機に搭載する際に回転板の周囲により大きな空間を確保しなければならず、洗濯機の大型化を招くという問題がある。
【0005】
このような問題点に鑑みて、本発明の課題は、洗濯槽と一体に回転する部材の径を増大させることなく洗濯槽の回転を検出するための分解能を向上させることができる洗濯槽回転検出装置、および、このような洗濯槽回転検出装置を搭載する洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の洗濯槽回転検出装置は、洗濯槽と一体に回転する出力歯車と、前記出力歯車の回転を増速して伝達する増速輪列と、前記増速輪列の最終歯車に搭載された被検出部材と、前記被検出部材の移動を検出するセンサと、
前記増速輪列、前記被検出部材および前記センサを内部に収納するケースと、を有し、前記増速輪列は、前記出力歯車と噛合する第1歯車を備えており、前記ケースは、前記第1歯車を前記出力歯車に噛合させるために当該第1歯車の一部分を露出させる開口部を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、洗濯槽と一体回転する出力歯車の回転を検出することにより洗濯槽の回転を検出するのではなく、この出力歯車の回転を増速して伝達する増速輪列の最終歯車の回転を検出することにより洗濯槽の回転を検出している。ここで、洗濯槽と一体回転する部材に検出パターンなどの被検出部材を搭載してセンサで検出する構成では、分解能を向上させるためにこの部材の径を大きくする必要があるが、本発明のように洗濯槽と一体回転する部材(出力歯車)の回転を増速輪列で増速して検出する構成であれば、増速比を大きくすることにより分解能を向上させることができる。従って、洗濯槽と一体回転する部材(出力歯車)の径を増大させる必要がない。また、輪列を介して洗濯槽の回転を検出すれば、振動などによって洗濯槽が揺動した場合に、この揺動が輪列のバックラッシュにより吸収されるので、揺動が最終歯車まで伝達されることが抑制或は防止される。従って、被検出部材の移動を検出するセンサでチャタリングが発生することを抑制或は防止できる。さらに、輪列を介して洗濯槽の回転を検出するので、洗濯槽と一体に回転する部材とセンサとの位置を離間させることができ、センサを配置する位置の自由度が増す。従って、センサを水滴や湿気などから隔離した位置に配置することが容易となる。
【0008】
また、本発明によれば、前記増速輪列、前記被検出部材および前記センサを内部に収納するケースを有し、前記増速輪列は、前記出力歯車と噛合する第1歯車を備えており、前記ケースは、前記第1歯車を前記出力歯車に噛合させるために当該第1歯車の一部分を露出させる開口部を備えている
ため、洗濯槽から漏れる水滴などからセンサを守ることができる。また、洗濯槽から外に出た糸くずなどが増速輪列やセンサに付着することを防止あるいは抑制できる。
【0009】
本発明において、前記被検出部材は、前記最終歯車の回転中心線から外れた位置に搭載されたマグネットであり、前記センサは、前記マグネットと対向可能な位置に配置された磁気センサであることが望ましい。すなわち、磁気を利用して洗濯槽の回転を検出すれば、洗濯槽から外に出た糸くずなどがセンサに付着した場合でも、洗濯槽の回転を検出することができる。また、被検出物の移動を光学的に検出する構成と比較して、湿気により受光部が曇るなどの問題がないので、湿気に強い。
【0010】
次に、本発明の洗濯機は、モータと、洗濯槽と、前記モータの回転駆動力を前記洗濯槽に伝達する駆動力伝達機構と、上記の洗濯槽回転検出装置と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、洗濯槽回転検出装置の分解能を向上させる際に、洗濯槽と一体に回転する出力歯車の径を増大させる必要がない。従って、分解能の高い洗濯槽回転検出装置を洗濯機に搭載する場合でもあっても、出力歯車の周囲により大きな空間を確保する必要がなく、洗濯機の大型化を招くことがない。
【0012】
本発明において、前記洗濯槽内に配置されたパルセータを有し、前記駆動力伝達機構は、前記モータの回転駆動力を前記パルセータに伝達し前記駆動力伝達機構において、前記モータから前記洗濯槽に至る駆動力伝達経路の途中には、前記洗濯槽への前記回転駆動力を継断するクラッチ機構が設けられていることが望ましい。すなわち、洗濯槽回転検出装置は、クラッチ機構によって洗濯槽の動作状態が回転状態と停止状態に制御される洗濯機において、洗濯槽の回転と停止を検出するものとすることができる。
【0013】
この場合において、前記クラッチ機構は、前記モータの回転駆動力が伝達される第1回転体に係合可能な第2回転体と、前記第2回転体を回転可能な状態で支持している支持部材と、前記第2回転体が前記第1回転体に係合して当該第1回転体と一体に回転する接続位置および当該第2回転体が当該第1回転体から離間する切断位置の間で前記支持部材を移動させる支持部材移動機構と、前記接続位置および前記切断位置の一方に配置された前記支持部材を検出するためのスイッチと、前記スイッチが搭載された剛性の回路基板とを有し、前記第2回転体は、連結部材を介して前記洗濯槽と一体回転可能に連結されており、前記出力歯車は、前記連結部材に取り付けられており、前記センサは、前記回路基板に搭載されていることが望ましい。このようにすれば、クラッチ機構と洗濯槽回転検出装置をコンパクトに構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗濯槽回転検出装置によれば、分解能を向上させる際に、洗濯槽と一体に回転する出力歯車の径の増大を招くことがない。また、
洗濯槽から漏れる水滴などからセンサを守ることができ、洗濯槽から外に出た糸くずなどが増速輪列やセンサに付着することを防止あるいは抑制できる。さらに、本発明の洗濯機では、分解能が高い洗濯槽回転検出装置を洗濯機に搭載する場合でもあっても、出力歯車の周囲により大きな空間を確保する必要がなく、洗濯機の大型化を招くことがない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(全体構成)
図1は本発明の実施の形態である洗濯機の概略構成を示す縦断面図である。
図1に示すように、洗濯機1は本体フレーム2を有している。本体フレーム2は上面に衣類などの洗濯物を出し入れするための開口部2aを備えている。本体フレーム2は角筒型であり、その下面は開口している。本体フレーム2の内部には、有底筒状の洗濯槽3がその開口部3aを上方に向けて収納されている。洗濯槽3は、不図示の緩衝部材を介して本体フレーム2に吊り下げられており、その軸線L回りに回転可能な状態とされている。洗濯槽3の内側の底部分にはパルセータ4が配置されている。
【0018】
洗濯槽3の下方にはモータ5が配置されている。モータ5の回転駆動力は駆動力伝達機構6を介して洗濯槽3およびパルセータ4に伝達される。駆動力伝達機構6はモータ5から洗濯槽3に至る駆動力伝達経路の途中に、モータ5の回転駆動力の洗濯槽3への伝達を継断するクラッチ機構7を備えている。また、洗濯槽3の下方には洗濯槽3の回転を検出するための洗濯槽回転検出装置8が配置されている。クラッチ機構7は、支持プレート9を介して本体フレーム2に支持されている。
【0019】
本体フレーム2の開口部2aを介して衣類が洗濯槽3内に投入された状態で洗濯機1が動作すると、不図示の給水管を介して洗濯槽3内に洗濯水が供給される。その後に、モータ5が駆動され、これによりパルセータ4が回転して洗濯槽3内の衣類の洗濯が行われる。衣類を洗濯する洗濯動作中は、クラッチ機構7はモータ5の回転駆動力の洗濯槽3への伝達を切断する切断状態とされている。従って、洗濯槽3は停止している。
【0020】
洗濯動作が終了して洗濯水が洗濯槽3から排出されると、衣類を脱水する脱水動作が行われる。脱水動作では、クラッチ機構7はモータ5の回転駆動力を洗濯槽3へ伝達する接続状態とされ、この状態でモータ5が駆動される。この結果、パルセータ4および洗濯槽3が一体に回転するので、洗濯槽3内の衣類も洗濯槽3およびパルセータ4と共に回転する。従って、遠心力により衣類が脱水される。
【0021】
(駆動力伝達機構)
図2は駆動力伝達機構6の主要部の斜視図である。
図3は駆動力伝達機構6の主要部の分解斜視図である。なお、
図2では駆動力伝達機構6を見やすくするために、クラッチ機構7を支持する支持プレート9を省略している。
図3では支持プレート9を示している。
【0022】
駆動力伝達機構6は、モータ5の出力軸11の回転駆動力が無端ベルト12(
図1参照)を介して伝達される第1回転体13と、第1回転体13に同軸に取り付けられた軸部材14と、洗濯槽3の下端部分に同軸に連結されている連結部材15と、連結部材15に連結された第2回転体20を備えている。
【0023】
図2、
図3に示すように、第1回転体13は円盤形状をしており、洗濯槽3の下方において洗濯槽3と同軸に配置されている。第1回転体13の円形外周面は無端ベルト12が取り付けられる取り付け面13aとなっている。また、第1回転体13は上端面の中央部分に歯部13bを備えている。歯部13bは等角度間隔で径方向に延びる複数の突条から形成されている。
【0024】
軸部材14は、
図3に示すように、中空の外側軸部材16と、この外側軸部材16の中空内に配置された回転軸17を備えている。回転軸17は、
図1に示すように、下端部分が第1回転体13に連結され、上端部分が洗濯槽3の底部を貫通してパルセータ4に連結されている。従って、モータ5の回転駆動力は、無端ベルト12、第1回転体13、回転軸17を介してパルセータ4に伝達される。すなわち、モータ5とパルセータ4の間には、無端ベルト12、第1回転体13および回転軸17を備える駆動力伝達経路が形成されている。
【0025】
ここで、外側軸部材16は回転軸17に対して相対回転可能な状態とされており、外側軸部材16と第1回転体13は連結されていない。一方、外側軸部材16の外周側には連結部材15が取り付けられており、外側軸部材16と連結部材15は一体に回転する。
【0026】
連結部材15は、
図3に示すように、軸線L方向の上から下に向かって洗濯槽3に連結される大径フランジ部18と当該大径フランジ部18よりも小径の小径筒部19を備えている。小径筒部19の内側には軸部材14が挿入されており、軸部材14の外側軸部材16は連結部材15と共回りするように小径筒部19に連結されている。小径筒部19の下側部分の外周側には第2回転体20が同軸に取り付けられている。小径筒部19の上端部分の外周側には洗濯槽回転検出装置8の出力歯車81が同軸に取り付けられている。
【0027】
図4(a)は第2回転体20を斜め上方から見た斜視図であり、
図4(b)は第2回転体20を下方から見た斜視図である。
図4に示すように第2回転体20は、下側から上側に向かって環状の歯形成部21と、歯形成部21よりも小径の連結筒部22と、連結筒部よりも大径の大径筒部23を備える回転体本体24と、回転体本体24の上端から外周側に突出する環状のフランジ25を備えている。小径筒部19は連結筒部22の内側に挿入されている。回転体本体24の連結筒部22の内周面と、小径筒部19の外周面には、連結筒部22の内周面に形成された複数の縦溝26aと、小径筒部19の外周面に形成された複数の突条26bからなるセレーション26が構成されており、第2回転体20は、セレーション26によって、連結部材15に対して軸線L方向に相対移動可能な状態、かつ、連結部材15と一体に回転可能な状態で連結される。
【0028】
また、
図4(b)に示すように、第2回転体20は、歯形成部21の下端面に第1回転体13の歯部13bと噛合可能な歯部21aを備えている。歯部21aは、等角度間隔で径方向に延びる複数の突条から形成されている。第2回転体20は、軸線L方向の下方に移動したときにその歯部21aと第1回転体13の歯部13bが係合する。第2回転体20と第1回転体13が係合すると第2回転体20は第1回転体13と同軸状態で一体に回転する。この結果、モータ5の回転駆動力は、無端ベルト12、第1回転体13、第2回転体20、連結部材15を介して洗濯槽3に伝達される。すなわち、モータ5と洗濯槽3の間には、無端ベルト12、第1回転体13、第2回転体20、連結部材15を備える駆動力伝達経路が設けられている。
【0029】
なお、
図3に示す支持プレート9は、クラッチ機構7を洗濯槽3の下方の所定の位置に支持するための部材であり、洗濯槽3とともに不図示の緩衝部材を介して本体フレーム2から吊り下げられている。支持プレート9にはクラッチ機構7の上側部分を被うカバーケース30が下面側から取り付けられ、クラッチ機構7はカバーケース30が支持プレート9に固定されることにより支持プレート9に支持される。
【0030】
ここで、支持プレート9は、中心部分が連結部材15の小径筒部19を軸線L方向に貫通させる貫通孔9aとなっている環状突出部9bを備えている。環状突出部9bは、カバーケース30に設けられた貫通孔30aを貫通して下方に突出しており、その下端部分は第2回転体20の回転体本体24の内側に挿入される。また、
図1に示すように、環状突出部9bの下端面と回転体本体24の歯形成部21の間には圧縮コイルバネ31が挿入され、この圧縮コイルバネ31は第2回転体20を下方(第1回転体13に向かう方向)に付勢する。さらに、支持プレート9において環状突出部9bの上面側は環状の凹部9cとなっており、凹部9c内には、連結部材15を介して洗濯槽3を回転可能に下方から支持する環状のベアリング32が配置される。また、支持プレート9は環状突出部9bの外周側に後述するカバーケース30の収納部30bが貫通する貫通孔が9d設けられる。
【0031】
(クラッチ機構)
次に、
図3〜
図8を参照してクラッチ機構7を説明する。
図5は支持部材を斜め上方から見た斜視図である。
図6は検出機構が搭載されたフレームの平面図である。
図7は変換機構の説明図であり、
図7(a)は支持部材が切断位置に配置された状態を示し、
図7(b)は支持部材が接続位置に配置された状態を示している。
図8は第2回転体移動機構の説明図であり、
図8(a)は支持部材が切断位置に配置された状態を示し、
図8(b)は支持部材が接続位置に配置された状態を示している。
【0032】
図3に示すように、クラッチ機構7は、第2回転体20と、第2回転体20を軸線L方向に移動させる第2回転体移動機構33を備えている。第2回転体移動機構33は、第2回転体20を回転可能な状態で支持している支持部材34と、第2回転体20が第1回転体13から離間した切断位置34Aおよび第2回転体20が第1回転体13に同軸に係合して当該第1回転体13と一体に回転する接続位置34Bの間で支持部材34を移動させる支持部材移動機構35を備えている。
【0033】
支持部材移動機構35は、
図6に示すように、支持部材34を軸線L方向に移動可能かつ軸線L回りに移動可能な状態で支持しているフレーム36と、駆動源としての同期モータ37と、同期モータ37の出力軸の一方向の回転を支持部材34の軸線L回りの往復揺動に変換する変換機構38(回転−揺動変換機構)と、支持部材34の往復揺動に連動させて支持部材34を軸線L方向に往復移動させるカム機構39(
図8参照)を備えている。また、支持部材移動機構35は、支持部材34が切断位置34Aに移動したことを検出する検出機構40と、同期モータ37を駆動制御するクラッチ制御部41を備えている。クラッチ制御部41は同期モータ37への給電を行うための回路が構成された回路基板42に構成されている。本例の同期モータ37はAC同期モータであり、回転方向が一方向に規制されているものである。
【0034】
支持部材34は、
図5に示すように、環状部45と、環状部45から外周側に突出しているレバー部46を備えている。第2回転体20は、回転体本体24が環状部45の内側に挿入され、フランジ25が環状部45の上面に載せられた状態で支持部材34に支持される。環状部45の下面には、等角度間隔で離間する3箇所にカム機構39のカムフォロワー47が設けられている。各カムフォロワー47は、下方に向かって突出しており、周方向の一方側から他方側に向かって下方に傾斜する傾斜面47aと、傾斜面の下端から軸線Lと直交する方向に延びる平坦な下端面47bを備えている。レバー部46には直線状の長孔48が形成されている。長孔48は変換機構38を構成するものであり、レバー部46の突出方向(軸線Lの中心から遠ざかる方向)に長く延びている。
【0035】
図6に示すように、フレーム36は、支持部材34を支持するための支持部材支持部51を備えている。支持部材支持部51は軸線Lを中心に円形に形成されている。フレーム36において、支持部材支持部51の外周側には変換機構38を搭載するための変換機構搭載部52が設けられている。支持部材支持部51の外周側であって軸線L回りで変換機構搭載部52に隣接する位置には、詳細を後述する洗濯槽回転検出装置8の増速輪列82を搭載するための輪列搭載部53が設けられている。また、フレーム36には、軸線L方向の上方に突出して、支持部材支持部51、変換機構搭載部52および輪列搭載部53を囲むフレーム外周壁54を備えている。さらに、フレーム36は、後述する洗濯槽回転検出装置8の第1複合歯車86、第2複合歯車87および最終歯車83を回転可能に支持する支軸がそれぞれ圧入固定される軸支持部36a、36b、36cが形成されている。なお、フレーム36は軸線L方向に分かれる金型を用いた樹脂成型によって形成される。
【0036】
支持部材支持部51は、支持部材34に支持された第2回転体20の回転体本体24の下側部分を軸線L方向に貫通させる貫通孔55と、貫通孔55の開口縁において支持部材34の環状部45を下方から支持する環状の支持部材載置部56と、支持部材載置部56の外周縁から上方に突出する円周壁57を備えている。貫通孔55、支持部材載置部56および円周壁57は軸線Lと同軸に形成されている。
【0037】
円周壁57において変換機構搭載部52の側の周方向の一部分は、上方から切り欠かれた切り欠き部57aとなっている。円周壁57において周方向で変換機構搭載部52および輪列搭載部53とは異なる角度範囲の部分はフレーム外周壁54と一体になっている。円周壁57の内周面には軸線L方向に延びる突条57bが周方向で離間した位置に複数設けられている。ここで、支持部材34は、レバー部46を切り欠き部57aから変換機構搭載部52の側に突出させた状態で支持部材載置部56に上方から載置される。支持部材34が支持部材載置部56に載置されると、各突条57bの内周側の端部は、支持部材載置部56に載置された支持部材34の環状部45の外周縁に外側から当接する。支持部材34は、各突条57bと環状部45の当接によって、径方向への移動が規制された状態となる。
【0038】
支持部材載置部56の上面には、支持部材34のカムフォロワー47が摺接するカム機構39のカム面58が等角度間隔で3箇所に設けられている。各カム面58は、支持部材載置部56の上面から上方に突出する突起59の上端面であって、軸線Lと直交する方向に延びる第1カム面部分58aと、突起59の周方向の一方側の側面であって、周方向の一方側に向って下方に傾斜する第2カム面部分58bと、支持部材載置部56の上面であって第2カム面部分58bの下端から軸線Lと直交する方向に延びる第3カム面部分58cを備えている。
【0039】
変換機構38は、
図7に示すように、支持部材34のレバー部46に設けられた長孔48と、長孔48内をスライド可能な状態で長孔48に挿入されている円柱形状の駆動部材60と、駆動部材60を予め設定した回転中心軸L1から離れた位置で当該回転中心軸L1回りの一方向に回転させる回転機構61を有している。回転中心軸L1は軸線Lと平行である。
【0040】
回転機構61は、その出力軸を回転中心軸L1と平行にして配置された同期モータ37と、回転中心軸L1回りに回転可能に支持された円形の回転板62と、同期モータ37の回転駆動力を回転板62に伝達する輪列63を備えている。駆動部材60は回転板62の外周縁部分の周方向の一箇所から軸線L方向の上方に突出している。輪列63は、第1複合歯車64、第2複合歯車65および第3複合歯車66を備えている。より詳細には、輪列63は、同期モータ37の出力軸に取り付けられたピニオンと噛合する第1大径歯車と当該第1大径歯車よりも小径で当該第1大径歯車と同軸に形成された第1小径歯車と備える第1複合歯車64、第1複合歯車64の第1小径歯車と噛合する第2大径歯車と当該第2大径歯車よりも小径で当該第2大径歯車と同軸に形成された第2小径歯車を備える第2複合歯車65、および、第2複合歯車65の第2小径歯車と噛合する第3大径歯車と当該第3大径歯車よりも小径で当該第3大径歯車と同軸に形成された第3小径歯車を有する第3複合歯車66を備えている。第3複合歯車66の第3小径歯車が回転板62に設けられた歯部(不図示)と噛合している。
【0041】
同期モータ37が駆動されると、回転板62が回転し、駆動部材60は回転中心軸L1回りの円形軌道に沿って一方向に移動する。また、駆動部材60は、円形軌道に沿って移動する間に、長孔48内をスライドして支持部材34のレバー部46を所定の角度範囲で揺動させる。
【0042】
ここで、
図7(a)および
図8(a)に示すように、レバー部46が揺動範囲の一方端の第1位置46Aに配置されると、支持部材34のカムフォロワー47が支持部材載置部56の第1カム面部分58aに乗り上げた状態となる。これにより、支持部材34は、軸線L方向を上昇して切断位置34Aに配置される。支持部材34が切断位置34Aに配置されると、支持部材34に支持されている第2回転体20は圧縮コイルバネ31の付勢力に抗して軸線L方向を上方に移動して、第1回転体13から離れる。この結果、
図2に示すように、第2回転体20と第1回転体13の係合は解除され、クラッチ機構7はモータ5の回転駆動力を洗濯槽3に伝達しない切断状態となる。
【0043】
一方、
図7(b)および
図8(b)に示すように、支持部材34のレバー部46が揺動範囲の他方端の第2位置46Bに配置された状態では、支持部材34のカムフォロワー47が支持部材支持部51の第2カム面部分58bを滑り降りて第3カム面部分58cに当接している。これにより、支持部材34は、切断位置34Aから軸線L方向を下降して接続位置34Bに配置される。支持部材34が接続位置34Bに配置されると、支持部材34に支持されている第2回転体20の歯部21aが第1回転体13の歯部13bと係合して、第2回転体20と第1回転体13が一体回転可能な状態となる。従って、クラッチ機構7はモータ5の回転駆動力を洗濯槽3に伝達する接続状態となる。
【0044】
検出機構40はレバー部46の位置を検出することにより支持部材34の位置を検出する。
図9は変換機構搭載部52の部分拡大図であり、
図9(a)は検出機構40が支持部材34を検出している状態を示し、
図9(b)は検出機構40が支持部材34を検出していない状態を示す。
図9に示すように、検出機構40は、回転カム70と、回転カム70によって操作されるタクトスイッチ71と、回転カム70の回転を規制するためのストッパ72と、回転カム70を、カム面70aがタクトスイッチ71から離れる第1回転方向D1に付勢して、ストッパ72に押し付けている付勢部材73を備えている。付勢部材73はつるまきバネである。
【0045】
図9(a)に示すように、回転カム70は、レバー部46が切断位置46Aに配置されたときに当該レバー部46と当接して操作される。これにより回転カム70は付勢部材73の付勢力に抗して第1回転方向D1とは反対の第2回転方向D2に回転する。
【0046】
ここで、タクトスイッチ71は回路基板42に取り付けられており、回転カム70が第2回転方向D2に回転したときに当該回転カム70のカム面70aにより押圧される押圧部71aを備えている。押圧部71aは、タクトスイッチ71に設けられた付勢部材によってカム面70a側に付勢される。従って、レバー部46が第1位置46Aに配置されると、回転カム70によって押圧部71aが押圧され、タクトスイッチ71からは支持部材34が切断位置34Aに配置されたことを示す信号が出力される。支持部材34が切断位置34Aに配置されたことを示す信号は、すなわち、クラッチ機構7が切断状態となったことを示す信号であり、クラッチ機構7が切断状態となった後に出力される。
【0047】
レバー部46が第1位置46Aから第2位置46Bに向かって移動すると、
図9(b)に示すように、レバー部46と回転カム70の当接が解除される。従って、回転カム70は付勢部材73の付勢力によって第1回転方向D1に回転して、ストッパ72に押し付けられた状態に戻る。この結果、回転カム70による押圧部71aの押圧が解除されるので、タクトスイッチ71からの信号は停止する。
【0048】
クラッチ制御部41は、モータ5の駆動を制御する中央制御部(不図示)からの制御信号に基づいて同期モータ37を駆動する。クラッチ制御部41がクラッチ機構7を切断状態とする際には、タクトスイッチ71から信号が出力されていない状態から、タクトスイッチ71から信号が出力されるまで同期モータ37への通電を行って同期モータ37を一方向に回転させ、支持部材34を切断位置34Aに配置する。一方、クラッチ制御部41がクラッチ機構7を接続状態とする際には、タクトスイッチ71からの信号が出力されている状態から、予め定めた設定時間の給電を行って同期モータ37を一方向に回転させ、切断位置34Aに配置されている支持部材34を接続位置34Bに配置する。
【0049】
なお、中央制御部(制御部)は、洗濯動作時には、クラッチ制御部41を制御してクラッチ機構7を切断状態としてモータ5を駆動することにより、パルセータ4を回転させる。また、中央制御部(制御部)は、脱水動作時には、クラッチ制御部41を制御してクラッチ機構7を接続状態としてモータ5を駆動することにより、パルセータ4および洗濯槽3を一体に回転させる。
【0050】
ここで、カバーケース30は、フレーム36に上方から被せられて固定されており、
図2に示すように、フレーム36とともにクラッチ機構7を被うケースとしてのクラッチケース74を構成している。より詳細には、カバーケース30は、
図3に示すように、その貫通孔30aをフレーム36の貫通孔55と同軸に配置した状態で、フレーム36のフレーム外周壁54の上端部分に上方から被せられて固定されている。なお、カバーケース30の貫通孔30aには連結部材15の小径筒部19が挿入されており、カバーケース30の上面は連結部材15の大径フランジ部18よりも下方に位置している。カバーケース30は、その上面が支持プレート9に固定され、これによりクラッチ機構7は支持プレート9に支持される。クラッチ機構7は、
図2に示すように、第2回転体20の回転体本体24の下側部分を除いてカバーケース30とフレーム36の間に収納されている。
【0051】
(洗濯槽回転検出装置)
図10はクラッチ機構7および洗濯槽回転検出装置8の平面図である。
図10に示すように、洗濯槽回転検出装置8は、連結部材15に連結されて洗濯槽3と一体に回転する出力歯車81と、出力歯車81の回転を増速して伝達する増速輪列82と、増速輪列82の最終歯車83に搭載された被検出部材としてのマグネット84と、マグネット84の移動を検出するセンサ(磁気センサ)としてのホールIC85を備えている。増速輪列82はフレーム36の輪列搭載部53に載置されており、ホールIC85はクラッチ機構7の回路基板42に搭載されている。
【0052】
出力歯車81は中心に貫通孔81aを備え、外周縁に歯部81bを備える環状の歯車である。出力歯車81は貫通孔81aに連結部材15の小径筒部19を挿入させた状態で、連結部材15に同軸に連結されている。より詳細には、小径筒部19の上端部分には、小径筒部19の外周面から径方向を外側に向って上方に延びて大径フランジ部18に連続する複数のリブ15aが形成されており(
図2、
図3参照)、出力歯車81の貫通孔81aの内周面にはリブ15aに対応する複数の縦溝81cが形成されており、連結部材15の小径筒部19を貫通孔55に挿入したときに、各リブ15aを各縦溝81cに挿入して、出力歯車81を連結部材15に連結している。従って、出力歯車81は連結部材15と一体回転する。
【0053】
増速輪列82は、出力歯車81に噛合する第1小径歯車86aと当該第1小径歯車86aよりも大径で当該第1小径歯車86aと同軸に形成された第1大径歯車86bと備える第1複合歯車86、第1複合歯車86の第1大径歯車86bと噛合する第2小径歯車87aと当該第2小径歯車87aよりも大径で当該第2小径歯車87aと同軸に形成された第2大径歯車87bを備える第2複合歯車87を備えており、第2複合歯車87の第2大径歯車87bは最終歯車83と噛合している。第1複合歯車86の第1小径歯車86aは支持プレート9の上方で出力歯車81の歯部81bと噛合している。
【0054】
最終歯車83は、第2複合歯車87の第2大径歯車87bと噛合している歯部21aの下側に、歯部21aよりも外周側に突出する腕部88を備えている。マグネット84はこの腕部88の先端側部分に搭載されている。すなわち、マグネット84は、最終歯車83において、その回転中心軸L2から外れた位置に搭載されている。
【0055】
ホールIC85は、腕部88の下方であって、マグネット84と対向可能な位置に配置されている。すなわち、ホールIC85は、回転中心軸L2回りの円形軌道に沿って移動するマグネット84と対向可能な位置に配置されている。
【0056】
本例では、洗濯槽3が1回転する間に最終歯車83が48回転するように、増速輪列82の増速比が設定されている。従って、洗濯槽3が1回転する間に、マグネット84はホールIC85上を48回通過する。この結果、ホールIC85からは洗濯槽3が1回転する間に48回のパルス信号が出力される。なお、増速輪列82の増速比をより大きくすれば、パルス幅が短くなり、洗濯槽3が1回転する間により多くのパルス信号が出力される。すなわち、洗濯槽回転検出装置8が洗濯槽3の回転を検出するための分解能を高めることができる。
【0057】
ホールIC85からの信号は回路基板42を介して洗濯機1の中央制御部に入力される。中央制御部では、クラッチ機構7が接続状態とされているときにホールIC85からのパルス信号に基づいて洗濯槽3の回転速度を取得して、洗濯槽3の回転異常を検出する。また、中央制御部では、取得された回転速度に基づいてモータ5の回転を調整するフィードバック制御を行う。さらに、中央制御部では、クラッチ機構7が接断状態とされたときまたはモータ5の駆動を停止したときに、ホールIC85からのパルス信号の有無、つまりホールIC85からの信号が所定期間変化しないことに基づいて洗濯槽3の停止を検出する。なお、本例では洗濯槽3が1回転する間に最終歯車83が48回転するので、パルス信号の有無を検出する期間を短く設定した場合でも、洗濯槽の停止を検出できる。従って、洗濯槽3が実際に停止した時点から、中央制御部において洗濯槽の停止の検出までの時間を短くすることができる。
【0058】
ここで、ホールIC85および増速輪列82は、カバーケース30とフレーム36の間に収納されている。より詳細には、カバーケース30は、
図3に示すように、増速輪列82の第1複合歯車86および第2複合歯車87を収納するために貫通孔30aの開口縁部分に上方に突出した収納部30bを備えている。また、収納部30bの貫通孔30a側の側面には、第1複合歯車86の第1小径歯車(第1歯車)86aを出力歯車81に噛合させるために当該第1小径歯車86aの一部分を露出させる開口部30cが設けられている。従って、ホールIC85および増速輪列82は、第1複合歯車86における出力歯車81との噛合部分を除いて、カバーケース30とフレーム36によって構成されたクラッチケース74に覆われた状態となっている。
【0059】
(作用効果)
本例の洗濯槽回転検出装置8は、洗濯槽3と一体回転する出力歯車81の回転を検出することにより洗濯槽3の回転を検出するのではなく、この出力歯車81の回転を増速して伝達する増速輪列82の最終歯車83の回転を検出することにより洗濯槽3の回転を検出している。ここで、洗濯槽3と一体回転する部材に検出パターンなどの被検出部材を搭載してセンサで検出する構成では、洗濯槽3の回転を検出するための分解能を向上させるためにこの部材の径を大きくする必要があるが、本例のように洗濯槽3と一体回転する部材(出力歯車81)の回転を増速輪列82で増速して検出する構成であれば、増速比を大きくすることによって分解能を向上させることができる。従って、洗濯槽3と一体回転する部材(出力歯車81)の径を増大させる必要がない。
【0060】
また、本例によれば、増速輪列82を介して洗濯槽3の回転を検出しているので、振動などによって洗濯槽3が揺動した場合に、この揺動が増速輪列82のバックラッシュにより吸収され、揺動が最終歯車83まで伝達されることが抑制或は防止される。従って、最終歯車83に搭載したマグネット84の移動を検出するホールIC85でチャタリングが発生することを抑制或は防止できる。
【0061】
さらに、本例では、増速輪列82を介して洗濯槽3の回転を検出するので、洗濯槽3と一体に回転する出力歯車81とホールIC85の位置を離間させることができ、ホールIC85を配置する位置の自由度が増す。従って、ホールIC85を水滴や湿気などから隔離した位置に配置することが容易であり、この結果、洗濯槽回転検出装置8のホールIC85をクラッチ機構7の回路基板42に搭載することが可能となっている。
【0062】
また、本例では、増速輪列82、マグネット84およびホールIC85がクラッチケース74の内部に収納されているので、洗濯槽3から漏れる水滴などからホールIC85を守ることができる。また、洗濯槽3から外に出た糸くずなどが増速輪列82やホールIC85に付着することを防止あるいは抑制できる。
【0063】
さらに、本例では、クラッチ機構7の第2回転体20が連結される連結部材15に洗濯槽回転検出装置8の出力歯車81を取り付けているので、洗濯槽回転検出装置8をクラッチ機構7に近い位置に配置することが可能となっており、これらがコンパクトに構成されている。
【0064】
また、本例では、洗濯槽3の回転を検出するためのセンサとして磁気を検出するホールIC85を利用しているので、洗濯槽3から外に出た糸くずなどがホールIC85に付着した場合でも、洗濯槽3の回転を検出することができる。また、センサがホールIC85などの磁気センサであれば、被検出物の移動を光学的に検出する構成と比較して、受光部が曇るなどの問題がないので、湿気に強い。
【0065】
(その他の実施の形態)
洗濯槽回転検出装置8において、最終歯車83の回転中心軸L1から外れた位置に反射部材(被検出部材)を搭載し、反射部材と対向可能な位置に反射型のフォトセンサを配置し、フォトセンサによって反射部材の移動を検出する構成を採用することもできる。また、洗濯槽回転検出装置8としては、最終歯車83にスリットを備える円盤を同軸に搭載し、フォトインタラプタによってこの円盤のスリットを検出する構成を採用することもできる。