【実施例】
【0030】
つぎに、本発明の第1の実施例による弾性体ローラーおよび弾性体ローラーにおける弾性材周面への剥離剤供給方法を、前記プラテンローラー17(
図10)と同様に、サーマルプリンター8におけるプラテンローラー20(ラベル用弾性体ローラー)として構成した場合を例に取って
図1ないし
図3にもとづき説明する。ただし、
図9および
図10と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、プラテンローラー20(ラベル用弾性体ローラー)の斜視図、
図2は、プラテンローラー20の側面図、
図3は、プラテンローラー20の軸方向の要部拡大断面図である。
プラテンローラー20は、ローラーシャフト21と、このローラーシャフト21の周囲に取り付けるとともに一体的に回転可能な弾性材22と、を有するとともに、この弾性材22にラベル(たとえば前述の台紙なしラベル1、
図9)を接触させて移送するものである。
【0031】
弾性材22は、ローラーシャフト21の外周に設けた内層側弾性材23と、この内層側弾性材23の外周に一体的に設けて台紙なしラベル1に接触する外層側弾性材24と、を有する。
【0032】
図示のように、内層側弾性材23は、その外周が断面円形状を呈している。
すなわち、内層側弾性材23は、ローラーシャフト21の径方向において、均一な断面形状であって、ローラーシャフト21の径方向断面において、内層側弾性材23の直径は一定である。
【0033】
さらに、外層側弾性材24から内層側弾性材23にかけてローラーシャフト21の軸方向に沿って、かつ軸方向に直角な方向に円周をめぐって、複数本のスリット25(
図2では、点線で示している)を所定の深さまで切り込み形成することにより、弾性材22を互いに独立変位可能な複数個のユニット弾性部22A、22B、22C、・・・に分割している(
図1、
図3)。
スリット25は、図示の例では、ローラーシャフト21の軸方向に沿って、互いに隣り合うスリット25どうしのスリット間隔W(
図3)を均一としている。
たとえば、スリット25は、そのスリット間隔Wが0.50〜1.00mmである。
もちろん、スリット25は、ローラーシャフト21の軸方向に沿って、その隣り合うスリット25どうしのスリット間隔Wを不均一とすることもできる。
なお、このスリット幅Wが1.00mmをこえた場合、シリコーンオイルなどの剥離剤26(後述)の滲出量が少なくなり、十分な剥離性を得ることができない。
スリット幅Wが0.50mm未満の場合にはプラテンローラー20の強度を保つことができなくなる。、
【0034】
スリット25は、外層側弾性材24を介して内層側弾性材23の一部まで切り込んでいる。図示の例では、スリット25は、弾性材22において均一な深さで円形状を有する内層側弾性材23まで切り込んでいる。
プラテンローラー20の材料あるいはその直径などにもよるが、スリット25は、弾性材22の外表面から内方に向かってそのスリット深さD(
図3)を、たとえば、プラテンローラー20全体の直径が10〜30mm程度の場合に、1.00〜3.00mmとすることができる。
【0035】
もちろん、このスリット深さDは任意であって、スリット25は、外層側弾性材24から内層側弾性材23を通して、最深でローラーシャフト21に至る直前の深さまで切り込むこともでき、スリット深さDによりシリコーンオイルなどの剥離剤26(後述)の滲出量および滲出速度を調整可能である。
また、スリット深さDは、ローラーシャフト21の軸方向におけるそれぞれのスリット25について、これを不均一に設けることもできるし、均一にすることもできる。
さらに、ローラーシャフト21の径方向においても、スリット深さDを不均一に設けることもできるし、均一にすることもできる。
【0036】
なお、スリット深さDとスリット間隔Wとの比D:Wは、6:1〜1:3の範囲とすることができ、3:1〜1:2の範囲とすることが望ましい。
比D:Wが6:1をこえた場合、すなわち、スリット25をより深く形成し、互いの間の間隔を狭めても、ユニット弾性部22A、22B、22C、・・・の深部は押圧された場合の変形量が少ないために剥離剤滲出効果の向上を望むことができないとともに、プラテンローラー20が損傷しやすくなる不具合が生ずる。
一方、比D:Wが1:3未満になると、スリット25を形成したことによる剥離剤滲出効果を得にくくなる。
【0037】
さらに、内層側弾性材23には、シリコーンオイルなどの剥離剤26(とくに
図3において、点で描いている)を含有させてあり、サーマルヘッド16からの押圧力(印字圧)がかかるため、それぞれ独立変位可能な各ユニット弾性部22A、22B、22C、・・・におけるポンプ作用により、内層側弾性材23から剥離剤26が、スリット25を通って外層側弾性材24の周面に滲出するように構成している。
ただし、上記ポンプ作用がなくても、外層側弾性材24から内層側弾性材23にかけて形成されたスリット25の毛細管現象によって剥離剤26は、外層側弾性材24の周面に徐々に滲出する。
【0038】
なお、内層側弾性材23のA硬度(JIS K6253規格に規定するデュロメータータイプAによるゴム硬度)は、外層側弾性材24のA硬度と同等か、あるいはこれをより低く形成し、内層側弾性材23が外層側弾性材24より大きく弾性変形することが望ましい。
すなわち、複数本のスリット25により形成されたそれぞれのユニット弾性部22A、22B、22C、・・・には、サーマルヘッド16からの押圧力(印字圧力)に対して弾性反発力が発生し、撓んだユニット弾性部22A、22B、22C、・・・それぞれが互いに隣接接触しているためわずかな摩擦力に差があり、もとの形状に戻るときに、上記ポンプ作用を発揮するとともに、全く同じタイミングで同一状態には戻らず、各ユニット弾性部22A、22B、22C、・・・が、それぞれの復元力にもとづいてバラバラに、台紙なしラベル1をプラテンローラー17から離すように押し出すように作用し、プラテンローラー20に接触しつつ移送されてゆく台紙なしラベル1をプラテンローラー20の表面からはがすように作用することが期待される。
【0039】
上述のように、内層側弾性材23は、シリコーンオイルなどの剥離剤26を含有しやすく、外層側弾性材24は、剥離剤26を含有しにくい材料からこれを形成している。
したがって、既述のようにポンプ作用や毛細管現象により内層側弾性材23の剥離剤26がそれぞれのスリット25を通して外層側弾性材24の周面に徐々に滲出可能としている。
【0040】
内層側弾性材23および外層側弾性材24は、これを熱可塑性弾性部材から構成することができる。
また、内層側弾性材23および外層側弾性材24は、これを同系列のシリコーンゴムなどの熱硬化性弾性材料から構成することができる。
内層側弾性材23および外層側弾性材24を構成する合成樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブデン、結晶性ポリブタジエン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、アイオノマー、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンポリテトラフルオロエチレン共重合体、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾイル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、1,2−ポリブタジエン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂を使用することができる。
また、たとえば、熱硬化性のシリコーンゴム、一液型RTV(Room Temperature Vulcanizing)ゴム、二液型RTVゴム、LTV(Low Temperature Vulcanizable)シリコーンゴム、耐油性熱硬化性ゴムなどの熱硬化性弾性材料を用いることができる。
【0041】
こうした構成のプラテンローラー20による外層側弾性材24の周面への剥離剤26供給作用を
図3にもとづき説明する。
内層側弾性材23は、剥離剤26を含有し、外層側弾性材24から内層側弾性材23にかけてローラーシャフト21の軸方向に沿って複数本のスリット25を形成しておくことにより、所定押圧力ないし印字圧力を作用させた状態でのプラテンローラー20およびサーマルヘッド16による台紙なしラベル1の移送にともなって、内層側弾性材23の剥離剤26をこれらのスリット25を通して外層側弾性材24の周面に滲出させることができる(
図3中、点線矢印を参照)。
したがって、弾性材22(外層側弾性材24)の周面に剥離剤26を供給する剥離剤26を供給し、プラテンローラー20としての剥離性ないし非粘着性を長期間にわたって維持することができ、台紙なしラベル1の安定した移送を保障することができる。
【0042】
図4は、本発明の第2の実施例によるプラテンローラー30の軸方向の要部拡大断面図であって、プラテンローラー30は、既述のプラテンローラー20(第1の実施例、
図1)とほぼ同様の構成であるが、プラテンローラー30においては、前記スリット25における、外層側弾性材24側のスリット外端部25Aにスリット25に連通して外層側弾性材24の周面に開口する溝31を形成している。
溝31の形状は任意であり、図示の例では、外層側弾性材24の外方側に開くV字形状としてある。
【0043】
さらに、外層側弾性材24の周面は、微細粉末32を含有したシリコーンオイルなどシリコーン系塗料33によりこれを被覆しておくことができる。
微細粉末32としては、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、クレイ、シリカ、カオリン、珪藻土、マイカ、リトボン、硫酸バリウム、ガラスパウダー、三酸化アンチモン、塩素化パラフィン、カーボランダム、ケイ石粉、ベンゾフェノン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、シリコーン樹脂粒子を使用することができる。無機粉体あるいは有機粉体のどちらでもかまわない。
シリコーン型塗料33としては、前記剥離剤26と同様に、剥離性ないし離型性を有するものであればよく、剥離剤26と同種であれば好ましいが、異なる種類のものであっても、互いの剥離性を妨害するものでなければ任意の物質を採用可能である。
【0044】
こうした構成のプラテンローラー30においても、プラテンローラー20(第1の実施例、
図1ないし
図3)と同様に、内層側弾性材23の剥離剤26がスリット25および溝31を通して外層側弾性材24の周面に滲出するように供給されることとなり、プラテンローラー30の使用にともなって消耗する剥離剤26を持続的に補充して、プラテンローラー30の非粘着性あるいは剥離性(離型性)を長期にわたって維持することができる。
【0045】
とくに、スリット25のスリット外端部25Aには溝31を形成しているので、剥離剤26が溝31に一時的に滞留し、外層側弾性材24の周面への剥離剤26の供給を安定化することができる。
また、シリコーン型塗料33には、微細粉末32を含有させてあるので、剥離剤26ないしシリコーン型塗料33を外層側弾性材24の周面に安定して保持しておくことができるとともに、粘着剤層3との接触面積が少なくなるため、より剥離性を向上させることができる。
【0046】
つぎに
図5は、本発明の第3の実施例によるプラテンローラー40の斜視図、
図6は、プラテンローラー40の側面図であって、プラテンローラー40は、前記ローラーシャフト21と、弾性材41と、を有するとともに、この弾性材41に前記台紙なしラベル1(
図9)を接触させて移送するものである。
【0047】
弾性材41は、ローラーシャフト21の外周に設けた内層側弾性材42と、この内層側弾性材42の外周に一体的に設けて台紙なしラベル1に接触する外層側弾性材43と、を有する。
【0048】
図示のように、内層側弾性材42は、その外周が凹凸形状を呈しており、外層側弾性材43の外周の形状とは異なっている。
具体的には、内層側弾性材42の凹凸形状は、ローラーシャフト21の径方向に沿ったその断面形状が星形であり、この断面形状は、ローラーシャフト21のどの軸方向位置においても同じ星形である。
この星形は、図示の例では、八個の山部42Aと、山部42Aの間に位置する八個の谷部42Bと、を有する。
【0049】
さらに、外層側弾性材43から内層側弾性材42にかけてローラーシャフト21の軸方向に沿って、かつ軸方向に直角な方向に円周をめぐって、前記複数本のスリット25(
図6では、点線で示している)を切り込み形成することにより、弾性材41を互いに独立変位可能な複数個のユニット弾性部41A、41B、41C、・・・に分割している(
図5、
図7)。
なお、スリット25のスリット間隔Wおよびスリット深さDは、既述のプラテンローラー20(
図1、第1の実施例)およびプラテンローラー30(
図4、第2の実施例)の場合と同様とすることができる。
【0050】
たとえば、各スリット25は、外層側弾性材43を介して内層側弾性材42の一部まで切り込んでいる。図示の例では、スリット25は、弾性材41において均一な深さで上記星形の凹凸形状を有する内層側弾性材42の山部42Aまで切り込んでおり、その谷部42Bまでには達していない。
【0051】
なお、内層側弾性材42のA硬度は、外層側弾性材43のA硬度よりこれを低く形成し、内層側弾性材42が外層側弾性材43より大きく弾性変形するようにしている。
すなわち、複数本のスリット25により形成されたそれぞれのユニット弾性部41A、41B、41C、・・・には、サーマルヘッド16からの押圧力(印字圧力)に対してより強い弾性反発力が発生し、プラテンローラー20に接触しつつ移送されてゆく台紙なしラベル1をプラテンローラー20の表面からはがすように作用することが望ましい。
プラテンローラー20の主要構成材である内層側弾性材42および外層側弾性材43は、そのA硬度が、下記のような範囲にある合成樹脂材料を使用することができる。
たとえば、内層側弾性材42のA硬度は、10〜30度、好ましくは20〜30度であり、外層側弾性材43のA硬度は、30〜80度、好ましくは50〜60度である。
内層側弾性材42のA硬度が10度未満の場合には、内層側弾性材42が柔らかくなりすぎてそれぞれのユニット弾性部41A、41B、41C、・・・が必要な弾性力ないし反発力を得にくく、30度をこえると、逆に硬くなって、ユニット弾性部41A、41B、41C、・・・が同じく必要な反発力を得にくい。
外層側弾性材43のA硬度が30度未満の場合には、台紙なしラベル1との接触摩擦力が過剰となって、プラテンローラー20としての移送機能に支障が生じ、80度をこえると、台紙なしラベル1に反発力を伝達しにくい。
【0052】
こうした構成のプラテンローラー40による台紙なしラベル1(
図9)の移送作用、および外層側弾性材43の周面への剥離剤26供給作用を
図7および
図8にもとづき説明する。
図7は、サーマルプリンター8(
図10)においてサーマルヘッド16とプラテンローラー40との間に台紙なしラベル1を挟持した状態のローラーシャフト21の軸方向拡大断面図、
図8は、同、ローラーシャフト21の径方向拡大断面図である。ただし、
図7において、星形の内層側弾性材42における山部42Aの部分および谷部42Bの部分について、同じ図面上に区分けして図示している。
【0053】
図7および
図8に示すように、台紙なしラベル1はサーマルヘッド16とプラテンローラー40とに挟まれ、その粘着剤層3が所定の印字圧力(押圧力)でプラテンローラー40に押し付けられ、一時的に貼り付けられたと同等の状態になる。
【0054】
まず台紙なしラベル1の移送作用について述べると、プラテンローラー40には複数のスリット25が形成されているため、それぞれのスリット25により、互いに隣り合うように分割された独立変位可能なユニット弾性部41A、41B、41C、41D、41E、41F(
図7中、右側に位置している)、およびユニット弾性部41G、41H、41I、41J、41K(
図7中、左側に位置している)、..は、それぞれ独立した挙動を示す。
すなわち、それぞれのユニット弾性部41A〜41F、41G〜41Kは、内層側弾性材42および外層側弾性材43から構成されているが、内層側弾性材42の体積がそれぞれわずかずつ異なっているため、その弾性変形量が異なって同一形状には撓まない。
また、印字が終了した台紙なしラベル1がサーマルヘッド16から離れたときに、撓んだユニット弾性部41A〜41F、41G〜41Kそれぞれが互いに隣接接触しているためわずかな摩擦力に差があり、もとの形状に戻るときに、全く同じタイミングで同一状態には戻らず、各ユニット弾性部41A〜41F、41G〜41Kが、それぞれの復元力にもとづいてバラバラに、台紙なしラベル1をプラテンローラー17から離すように押し出すことになる。
なお、内層側弾性材42にまでスリット25が達していないユニット弾性部41G〜41Kは、その基部(内方側)では隣り合うユニット弾性部41G〜41Kと一体的ではありながら、その端部(外方側)では別体であり、反発力自体は低下するものの、それぞれ互いに連携はしつつ異なる復元作用を起こして、同じく、台紙なしラベル1をプラテンローラー17から離すように押し出す機能を発揮する。
【0055】
さらに、内層側弾性材42が星形の凹凸形状となっているので、単一のユニット弾性部41A〜41F、41G〜41Kにおいても、プラテンローラー40の回転にともなってサーマルヘッド16から離れるときの剥離機能が確実になる。
すなわち、
図7および
図8に示すように、比較的A硬度が小さい内層側弾性材42の体積が大きなユニット弾性部41A〜41Fと、内層側弾性材42の体積が小さなユニット弾性部41G〜41Kとでは、プラテンローラー40から受ける押圧力が同等であっても、プラテンローラー40が台紙なしラベル1を移送するように回転すると、ユニット弾性部41G〜41Kに対してユニット弾性部41A〜41Fの方が、相対的に大きな反発力を発生する。
内層側弾性材42の体積が大きいユニット弾性部41A〜41Fと、体積が小さいユニット弾性部41G〜41Kとに生じた反発量ないし復元量の違いが台紙なしラベル1を剥がれ易いように作用し、台紙なしラベル1がプラテンローラー40に貼り付くことはない。
このように各ユニット弾性部41A、41B、41C、・・・、41G、・・・41Kが台紙なしラベル1をバラバラに押し戻すことによりプラテンローラー40の非粘着性および離型性が向上され、台紙なしラベル1がプラテンローラー40に貼り付いたまま巻き込まれたり、進行方向が曲がってラベル詰まりが発生することがない。
【0056】
かくして、台紙なしラベル1あるいは台紙付きラベルなど多層構造を有する印字媒体をサーマルプリンター8に装填して印字する場合に、外層側弾性材43の外周面は平滑な曲面であって、プラテンローラー40がサーマルヘッド16の全面に印字媒体を安定して接触させることができるとともに、安定した移送印字作用を保障することができる。
【0057】
なお、
図7および
図8において、プラテンローラー40のうちユニット弾性部41A〜41Fを内層側弾性材42の体積が大きいユニット弾性部とし、ユニット弾性部41G〜41Kを体積が小さいユニット弾性部として説明したが、それは、サーマルヘッド16による押圧を受けている瞬間的に生じた状態であって、体積の大小はプラテンローラー40の回転に伴って次々に変化して行く。
たとえば、
図8においてプラテンローラー40が図示の状態からわずかに反時計方向に回転した時点では、内層側弾性材42の山部42Aは台紙なしラベル1の移送方向下流側に位置をずらしており、台紙なしラベル1に対して印字圧が発生しているサーマルヘッド16との接触部位には、ユニット弾性部41A〜41F、41G〜41Kにおける内層側弾性材42の体積がより小さくなる外層側弾性材43の周面が至り、それぞれのユニット弾性部41A〜41F、41G〜41Kによる上述したような弾性反発力が変化してゆくことになる。
換言すれば、台紙なしラベル1との接触部分から下流側にかけて、それぞれのユニット弾性部41A〜41F、41G〜41Kの表面が細かく脈を打つように独立に稼働するので、プラテンローラー40の表面に貼り付いた状態の台紙なしラベル1をその移送方向および幅方向において不均一な剥離力が作用して、台紙なしラベル1をプラテンローラー40から自律的に、かつ強制的に引きはがす結果、ラベル詰まりを発生することなく適正に移送することができる。
【0058】
つぎに、外層側弾性材43の周面への剥離剤26供給作用について述べると、既述のプラテンローラー20(第1の実施例、
図1)およびプラテンローラー30(第2の実施例、
図4)と同様に、内層側弾性材42には、シリコーンオイルなどの剥離剤26を含有させてあり、サーマルヘッド16からの押圧力(印字圧)がかかるため、それぞれ独立変位可能な各ユニット弾性部41A〜41F、41G〜41Kにおけるポンプ作用により、内層側弾性材42から剥離剤26が、スリット25を通って外層側弾性材43の周面に滲出することができる。
ただし、上記ポンプ作用がなくても、剥離剤26は、内層側弾性材42から外層側弾性材43にかけて形成されたスリット25の毛細管現象によって、外層側弾性材43の周面に徐々に滲出してゆく。
したがって、弾性材41(外層側弾性材43)の周面に剥離剤26を供給する剥離剤26を供給し、プラテンローラー20としての剥離性ないし非粘着性を長期間にわたって維持することができ、台紙なしラベル1の安定した移送を保障することができる。
【0059】
なお、スリット25のスリット深さDを調整することにより、内層側弾性材42において剥離剤26を含浸させた切込み量(断面積)を変えることができ、かくして外層側弾性材43の周面の各部位における剥離剤26の滲出量および滲出速度を調節することが可能である。
【0060】
さらに、第2の実施例によるプラテンローラー30(
図4)と同様に、スリット25に連通する溝31を形成する構成、あるいは、微細粉末32を含有したシリコーンオイルなどシリコーン系塗料33を外層側弾性材43の周面に被覆する構成を採用することもできる。
【0061】
なお、上述の第3の実施例における内層側弾性材42の凹凸形状は、図示は省略するが、上述のような構成以外にも、ローラーシャフト21の径方向あるいは軸方向における規則性を完全に排除した任意の形状、さらには、大小あるいは所定形状ないし高さの複数個のイボを突出させた形状、また、曲面あるいは平面の組み合わせによるその他任意の形状を採用することも可能であって、プラテンローラーその他の弾性体ローラーとして、押圧力が作用している状態でその回転にともないその表面が脈動的ないし不規則に変化して台紙なしラベルなどの帯状部材を積極的にローラー表面からはがしてゆくような機能を付与することができる。