特許第5972771号(P5972771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972771
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ワイヤ送出装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 49/32 20060101AFI20160804BHJP
   B65H 49/28 20060101ALI20160804BHJP
   B65H 49/24 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B65H49/32
   B65H49/28
   B65H49/24
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-265227(P2012-265227)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-108887(P2014-108887A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】遠々内 孝治
(72)【発明者】
【氏名】永峯 洋一
(72)【発明者】
【氏名】森島 隼人
(72)【発明者】
【氏名】吉良 英訓
(72)【発明者】
【氏名】川底 健
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−113415(JP,U)
【文献】 特開平04−100635(JP,A)
【文献】 特開平02−160114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 49/00 − 49/38
B65H 57/00 − 57/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が略水平状態に配置されたワイヤドラムを前記軸心の両側部分において当該軸心周りに回転可能に保持するドラム保持手段と、前記ドラム保持手段を仮想垂直線周りに旋回可能に保持するターンテーブルと
ワイヤ送出作業時、前記ワイヤドラムから送り出されるワイヤを前記ワイヤドラムの上方位置において送出方向に移動可能に保持するため、前記ワイヤドラムの鍔部材の外周縁の最上部より高い位置に、前記ワイヤドラムとの相対位置関係が一定をなす状態で配置されたガイド部材と
ワイヤ縒り取り作業時、回転を止めた前記ワイヤドラムと前記ガイド部材との相対位置関係を変えることにより前記ワイヤドラムと前記ガイド部材との間で保持された前記ワイヤを送出作業中よりも起立した状態に変更可能な進退手段とを備え
前記進退手段として、前記ターンテーブル若しくは前記ガイド部材の少なくとも一方に前記ワイヤ送出方向を含む方向における前記ターンテーブルと前記ガイド部材との距離を変更可能な移動機構を設けたワイヤ送出装置。
【請求項2】
前記ガイド部材を所定位置に保持する架台と、前記ガイド部材に対して接近離隔する方向に移動可能な状態で前記架台に装着された台車とを設け、前記ドラム保持手段及び前記ターンテーブルを備えたドラム保持ユニットを前記台車に取り付けた請求項1記載のワイヤ送出装置。
【請求項3】
前記ドラム保持ユニットが前記台車に着脱可能である請求項記載のワイヤ送出装置。
【請求項4】
前記台車の移動及び前記ターンテーブルの旋回を阻止するロック機構を設けた請求項2または3記載のワイヤ送出装置。
【請求項5】
前記ドラム軸心と前記仮想垂直線とが直交した状態となるように前記ドラム保持手段及び前記ターンテーブルを配置した請求項1〜のいずれかの項に記載のワイヤ送出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤドラムに巻回されているワイヤを当該ワイヤドラムを軸心周りに回転させながら所定方向に送り出す装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンなどに使用されているワイヤを新たなワイヤと交換する場合、ワイヤドラムに巻回された状態で納入されたワイヤをそのままワイヤドラムから繰り出してクレーンなどに装着しようとすると、作業途中でワイヤに縒りが発生し、様々な弊害を生じるので、従来、以下のような対策が講じられている。
【0003】
即ち、納入時のワイヤドラムから全てのワイヤを解いた後、8の字に巻き直して縒りを取り除く方法、クレーンのワイヤを交換した後、クレーン上部の巻きドラムのコッタからワイヤを外してワイヤの縒りを取り除く方法、あるいは納品時のワイヤドラムからワイヤを全て解いて伸ばしてワイヤの縒りを取り除く方法などが実施されている。
【0004】
しかしながら、前述した方法はワイヤドラムから全てのワイヤを解くのに多大な手間と時間を要し、作業者の肉体的負担も大であるだけでなく、ワイヤドラムから解き出したワイヤを巻き直したり、伸ばしたりするために広大なスペースを必要とするなどの問題がある。
【0005】
一方、本発明に関連する先行技術として、例えば、特許文献1記載の「ケーブル送出装置」がある。この「ケーブル送出装置」は、ボビンに巻回されたケーブルを、当該ボビンを軸心周りに回転させながら送り出す可能な装置であり、送出作業の途中でケーブルに捩れ(縒り)が生じた場合、それを取り除く機能も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭63−113415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の「ケーブル送出装置」は、送り出し中に生じたケーブルの捩れ(縒り)を取り除く機能を有する点では優れているが、ケーブルが巻回されたボビンを、水平方向の回転軸を有する捩れ解除支持機構で支持する方式であるため、ボビンは片持ち状態となっている。このため、ケーブルが巻回されたボビンの全重量を支える捩れ解除支持機構及びこれらを支える載置部などは頑丈な構造とする必要があり、作業対象であるボビンの重量が増すと、それに対応するために装置の大型化、重量の増大を招き易い。
【0008】
また、前記「ケーブル送出装置」の場合、ボビン保持部材に対するボビン着脱作業の際には、ボビン取付用保持機構の載置台にボビンを載せてボビンを上下動させなければならないので、着脱作業が面倒であり、ボビンの重量が増すと、作業性が悪化する。
【0009】
このように、前記「ケーブル送出装置」は、ケーブルが巻回されたボビンが比較的軽量である場合は好適に使用することができるが、クレーンのワイヤなどの大重量のワイヤが巻回されたワイヤドラムからのワイヤ送出作業には不向きであるため、汎用性に欠ける。
【0010】
さらに、前記「ケーブル送出装置」の場合、送出作業の進行に伴い、ボビンに巻回されているケーブルの残量が減っていくと、ボビンから送り出されるケーブルの位置(高さ)が変化していくので、送出作業が不安定となることがある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、汎用性に優れ、安定したワイヤ送出作業を行うことができ、ワイヤの縒り取り作業も容易かつ安全に行うことができるワイヤ送出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のワイヤ送出装置は、軸心が略水平状態に配置されたワイヤドラムを前記軸心の両側部分において当該軸心周りに回転可能に保持するドラム保持手段と、前記ドラム保持手段を仮想垂直線周りに旋回可能に保持するターンテーブルと
ワイヤ送出作業時、前記ワイヤドラムから送り出されるワイヤを前記ワイヤドラムの上方の位置において送出方向に移動可能に保持するため、前記ワイヤドラムの鍔部材の外周縁の最上部より高い位置に、前記ワイヤドラムとの相対位置関係が一定をなす状態で配置されたガイド部材と
ワイヤ縒り取り作業時、回転を止めた前記ワイヤドラムと前記ガイド部材との相対位置関係を変えることにより前記ワイヤドラムと前記ガイド部材との間で保持された前記ワイヤを送出作業中よりも起立した状態に変更可能な進退手段とを備え
前記進退手段として、前記ターンテーブル若しくは前記ガイド部材の少なくとも一方に前記ワイヤ送出方向を含む方向における前記ターンテーブルと前記ガイド部材との距離を変更可能な移動機構を設けたことを特徴とする。ここで、前記「送出作業中よりも起立した状態」とは、ワイヤドラムから送出されているときのワイヤの傾斜角度よりも鉛直方向に近い傾斜角度になっている状態を意味する(以下、同様。)。
【0013】
このような構成とすれば、軸心が略水平状態に配置されたワイヤドラムは、前記ドラム保持手段により、その軸心の両側部分において当該ドラム軸心周りに回転可能に保持されるので、ワイヤドラムの重量やサイズなどに左右されることなく、安定保持することができる。また、ワイヤドラムから送り出されるワイヤは、ワイヤドラムのワイヤ残量に影響されることなく、前記ガイド部材で所定位置に保持されるので、安定したワイヤ送出作業を行うことができる。このような作用は、ワイヤドラムのサイズに左右されることなく得ることができるので、汎用性にも優れている。
【0014】
さらに、ワイヤ送出作業中に縒り取りが必要になった場合は、送出作業を中断し、前記進退手段により前記ワイヤドラムと前記ガイド部材との相対位置関係を変え、前記ワイヤドラムと前記ガイド部材との間で保持された前記ワイヤを送出作業中よりも起立した状態に変更した後、ターンテーブルとともにワイヤドラムを仮想垂直線周りに旋回させるだけで、縒りを取り除くことができる。この場合、前記ガイド部材により、ワイヤが送出作業中よりも起立した状態に保持されるので、ワイヤドラムを簡単に旋回させることができ、縒り取り作業は容易である。また、縒り取り作業中、作業者がワイヤに触れる必要がないので、安全性も良好である。縒り取り作業の完了後は、前記進退手段により、前記ワイヤドラムと前記ガイド部材との相対位置関係を元の状態に戻せば、ワイヤも元の傾斜角度に戻るので、容易にワイヤ送出作業を再開することができる。
【0015】
ここで、前記ワイヤ送出装置においては、前記進退手段として、前記ターンテーブル若しくは前記ガイド部材の少なくとも一方に前記ワイヤ送出方向を含む方向における前記ターンテーブルと前記ガイド部材との距離を変更可能な移動機構を設けている。
【0016】
このような構成とすれば、前記ターンテーブル若しくは前記ガイド部材を移動させることにより、前記ワイヤドラムと前記ガイド部材との距離を変更して両者の相対位置関係を変更させ、両者間で保持されているワイヤを送出作業中よりも起立させたり、元の状態に戻したりすることが可能となるので、縒り取り作業の容易化に有効である。
【0017】
また、前記ガイド部材を所定位置に保持する架台と、前記ガイド部材に対して接近離隔する方向に移動可能な状態で前記架台に装着された台車とを設け、前記ドラム保持手段及び前記ターンテーブルを備えたドラム保持ユニットを前記台車に取り付けた構成とすることができる。
【0018】
このような構成とすれば、架台、台車及びドラム保持ユニットからなる一体化されたワイヤ送出装置を形成することができるので、当該ワイヤ送出装置の搬入、設置、撤収などを行う際の作業性が向上する。
【0019】
この場合、前記ドラム保持ユニットが前記台車に着脱可能な構成とすることもできる。
【0020】
このような構成とすれば、必要に応じて、前記ドラム保持ユニットを前記台車から取り外しておくことが可能となるので、搬送、保管などの際の利便性が向上する。また、ワイヤドラムのサイズなどに応じて複数種類のドラム保持ユニットを作成しておけば、ワイヤの型式変更にも容易に対応することができる。
【0021】
一方、前記台車の移動及び前記ターンテーブルの旋回を阻止するロック機構を設けることもできる。
【0022】
このような構成とすれば、ワイヤ送出作業あるいはワイヤの縒り取り作業などを行っているときに前記ロック機構を機能させることにより、台車やターンテーブルを所定状態に保持することが可能となるため、安全性の向上を図ることができる。
【0023】
さらに、前記ドラム軸心と前記仮想垂直線とが直交した状態となるように前記ドラム保持手段及び前記ターンテーブルを配置することもできる。
【0024】
このような構成とすれば、ワイヤの縒り取り作業を行う場合、ターンテーブルの旋回によるワイヤドラムの水平旋回作業を円滑化することができるので、作業性の向上に有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、汎用性に優れ、安定したワイヤ送出作業を行うことができ、ワイヤの縒り取り作業も容易かつ安全に行うことができるワイヤ送出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態であるワイヤ送出装置のワイヤ送出作業中の状態を示す側面図である。
図2図1に示すワイヤ送出装置の縒り取り作業中の状態を示す側面図である。
図3図2に示すワイヤ送出装置の一部省略平面図である。
図4図2中の矢線A方向から見たワイヤ送出装置の一部省略背面図である。
図5図1に示すワイヤ送出装置を構成するドラム保持ユニットの一部省略側面図である。
図6図5中の矢線B方向から見たドラム保持ユニットの一部省略背面図である。
図7図1に示すワイヤ送出装置の使用状態を示す概要図である。
図8】本発明の第2実施形態であるワイヤ送出装置のワイヤ送出作業中の状態を示す一部省略側面図である。
図9】本発明の第実施形態であるワイヤ送出装置のワイヤ送出作業中の状態を示す一部省略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。図1図4に示すように、本実施形態のワイヤ送出装置100は、H型鋼及びC型鋼を互いに組み合わせて接合することによって形成された平面視形状が略長方形状をなす架台10と、架台10の片方の短辺部材10a側に立設された一対の支柱11a,11bと、支柱11a,11bからそれぞれ他方の短辺部材10b側に向かって水平に延設された梁材12a,12bの先端寄りに軸支されたガイド部材13と、架台10の長辺10b,10cの長手方向に沿って移動可能に設けられた台車30と、台車30上に着脱可能に搭載されたドラム保持ユニット50と、を備えている。ドラム保持ユニット50は、ワイヤドラム90を軸心90c周りに回転自在に保持するドラム保持手段60と、ドラム保持手段60を仮想垂直線L周りに旋回可能に保持するターンテーブル80を備えている。
【0028】
後述するように、架台10の長辺10b,10cの長手方向に沿って台車30を移動させることにより、ワイヤドラム90とガイド部材13との相対位置関係を変えると、ワイヤドラム90とガイド部材13との間で保持されたワイヤWを送出作業中よりも起立した状態に変更することができる。即ち、台車30は、ワイヤドラム90とガイド部材13との相対位置関係を変えることにより、ワイヤドラム90とガイド部材13との間で保持されたワイヤWを送出作業中よりも起立した状態に変更可能な進退手段の一つである移動機構を構成している。
【0029】
ガイド部材13は、その両端部分が、梁材12a,12bの下面側にそれぞれ取り付けられた軸受14a,14bに略水平姿勢で回転自在に軸支された円柱状のローラである。ガイド部材13の上方には、ワイヤWが挿通可能な隙間を隔てて水平バー材15が配置されている。また、支柱11a,11b間のガイド部材13より低い位置に水平バー材16が配置されている。また、ガイド部材13の両端付近に、ガイド部材13及び水平バー材15と立体交差した状態で左右一対のサイドガイド部材18a,18bが垂直方向に配置されている。
【0030】
ワイヤ送出装置100における移動機構である台車30は、架台10の内周側に配置され、ドラム保持ユニット50を着脱可能に搭載する本体部31と、本体部31の周縁に軸支された複数の車輪32とを備え、ターンテーブル80の下面に形成された複数の突起81をそれぞれ嵌め込んで係止するための嵌合管33が本体部31に設けられている。複数の車輪32は、長辺部材10c,10dの内側をそれぞれの長手方向に沿って走行可能である。長辺部材10c,10dの車輪32の走行領域の両端部分には、台車30の移動を所定位置(ワイヤ送出作業位置、ワイヤ縒り取り作業位置)で止めるためのストッパ34a,34bが設けられている。また、長辺部材10cの支柱11a寄りの部分には、垂直方向の貫通孔を有するロック板17が水平方向に突設されている。
【0031】
図5図6に示すように、ドラム保持ユニット50は、台車30の本体部31上に着脱可能に装着されるターンテーブル80と、ターンテーブル80上に一体的に形成されたドラム保持手段60とを備えている。ターンテーブル80は、台車30の本体部31の直上に載置される支持板82と、支持板82上に支軸83を介して取り付けられた回転板84と、を備えている。回転板84は、支持板82に対し、支軸83の軸心である仮想垂直線L周りに旋回可能である。
【0032】
支持板82の下面には、倒立円錐台形状をなす複数の突起81が下方に向かって突設されている。支持板82の角縁部には、台車30を所定位置(ワイヤの縒り取り作業位置)に固定するための貫通孔を有するロック板85が水平方向に突設されている。また、ワイヤ送出作業中に回転板84が回転したり、台車30が移動したりするのを阻止するため、回転板84の後縁部に、貫通孔を有するロック板86が水平方向に突設されている。
【0033】
ドラム保持手段60は、ターンテーブル80の支持板82上に対向状態に立設された一対の支持壁61a,61bと、それぞれの支持壁61a,61b上に取り付けられた樋形状の軸受部62a,62bと、ドラム保持ユニット50を移動させたり、旋回させたりするときに作業者が把持して使用する操作ハンドル63と、ドラム保持手段60で保持されたワイヤドラム90の回転を止めるためのブレーキ64と、を備えている。
【0034】
支持壁61a,61bは側面視形状が略富士山形状の板材で形成され、ワイヤドラム90の幅(図4に示す一対の鍔部材90a,90bの外側面同士の間隔)より広い間隔を置いて対向配置されている。支持壁61a,61bの頂上部分に位置する軸受部62a,62b上に、ワイヤドラム90の芯孔に回転自在に挿通された軸体91の両部端を載置し、離脱防止具(図示せず)で係止することにより、ワイヤドラム90はドラム保持手段60に回転自在に装着される。
【0035】
ブレーキ64は支軸64aを介して支持壁61a,61bに軸支され、必要に応じて、作業者が足踏み部64bを踏むと反対側に設けられたブレーキシュー64cがワイヤドラム90の周縁に圧接され、その回転を止めることができる。なお、ワイヤWの送出作業が中断された直後の回転中のワイヤドラム90がブレーキ64によって急停止された場合、ワイヤドラム90やワイヤ送出装置100全体がワイヤWの送出方向に引きずられ、不都合が生じる可能性があるので、ブレーキ64の制動力はワイヤドラム90が急停止しない程度に抑制して設定されている。
【0036】
次に、図1図2図7を参照し、ワイヤ送出装置100の使い方について説明する。図7(a)に示すように、軸体91を介してワイヤドラム90が回転自在に保持されたドラム保持ユニット50を台車30上に載置し、図1に示すように、ロックピンP1をロック板86の貫通孔(図示せず)から架台10の短辺部材10bのロック孔10eに向かって差し込む。これにより、ドラム保持ユニット50が台車30とともに移動したり、ワイヤドラム90が仮想垂直線L周りに回転したりしないように係止される。
【0037】
この後、ワイヤドラム90に巻回されているワイヤWを引き出して、サイドガイド部材18a,18bの間からガイド部材13と水平バー材15との間及び水平バー材16の上方を経由して目的場所まで延伸させると、図1に示すように、ワイヤWは矢線X方向に向かって送出可能となり、ワイヤ送出作業を開始することができる。
【0038】
ワイヤ送出作業中は図1に示すように、ワイヤドラム90の軸心90cが略水平状態に配置されたワイヤドラム90は、ドラム保持手段60により、ワイヤドラム90の両側部分において当該軸心90c周りに回転可能に保持されるので、ワイヤドラム90の重量やサイズに左右されず安定保持することができる。また、ワイヤドラム90から送り出されるワイヤWは、ワイヤドラム90のワイヤ残量に影響されることなく、ガイド部材13で所定位置に保持されるので、安定したワイヤ送出作業を行うことができる。
【0039】
ワイヤ送出作業中に縒り取りが必要になった場合、送出作業を中断してワイヤドラム90の回転を止め、ロックピンP1を抜き取った後、図7(b)に示すように、台車30を正面方向(支柱11a,11bに接近する方向)に移動させることにより、ワイヤドラム90をドラムドラム保持ユニット50とともにガイド部材13の下方領域に進入させる。台車30の正面側の車輪32がストッパ34bに当接した時点で台車30が止まるので、図2に示すように、この状態でロックピンP2をロック板85の貫通孔(図示せず)からロック板17の貫通孔に向かって差し込むと、台車30が移動しないように係止され、図2に示す状態となる。
【0040】
即ち、前述したように台車30を移動させると、ワイヤドラム90とガイド部材13との相対位置関係が変化し、ワイヤドラム90とガイド部材13との間で保持されたワイヤWの傾斜角度は送出作業中の状態(図1に示す状態)よりも起立した状態(図2に示す状態)となる。
【0041】
この後、ターンテーブル80の回転板84とともにドラム保持手段60で保持されたワイヤドラム90を支軸83(仮想垂直線L)周りに360度旋回させると、ワイヤWの縒りを取り除くことができる。この場合、ワイヤドラム90上方に位置するガイド部材13によりワイヤWが、送出作業中よりも起立した状態に保持されるので、ワイヤドラム90を簡単に旋回させることができ、縒り取り作業は容易である。また、縒り取り作業中にワイヤWに作業者が触れる必要がないので、安全性も良好である。
【0042】
なお、ワイヤWの縒り取り作業をスムーズに行うためには、図4に示すように、ガイド部材13の位置を、ワイヤドラム90を形成する一対の鍔部材90a,90bの内側面同士の間の領域R内であって、鍔部材90a,90bの外周縁の最上部より高い位置に配置することが望ましい。
【0043】
縒り取り作業が終わったら、ロックピンP2(図2参照)を抜き取り、図7(d)に示すように、台車30とともにドラム保持ユニット50及びワイヤドラム90をガイド部材13の下方領域から退出させ、架台10の背面側の元の位置まで移動させた後、ロックピンP1をロック板86の貫通孔(図示せず)から架台10の短辺部材10bのロック孔10eに向かって差し込むと、図1に示す状態となり、ワイヤ送出作業を再開することができる。
【0044】
なお、図1に示すワイヤWの送出作業及び図7に示す縒り取り作業においては、ワイヤドラム90と支柱11a,11bとの間の領域に作業者が立ち入る必要がないので、安全性の確保の面においても優れている。また、図3中に示す仮想円Cはターンテーブル80の回転板84及びワイヤドラム90などが支軸83周りに旋回するときの最外周軌跡を示しているが、この仮想円Cの範囲内に障害物がない限り、縒り取り作業を円滑かつ安全に行うことができる。
【0045】
次に、図8図9に基づいて、本発明の第2,第3実施形態であるワイヤ送出装置200,300について説明する。なお、図8図9中において、図1図7中の符号と同符号を付している部分は、前述したワイヤ送出装置100の構成部分と同じ構造、機能などを有する部分であり、説明を省略する。
【0046】
図8に示すワイヤ送出装置200においては、支柱11a(11b)の下端部が、架台10の長辺部材10d(10c)の長手方向に沿って走行可能な台車201を介して架台10に取り付けられている。ワイヤ送出装置200によるワイヤ送出作業は図8に示す状態で行うことができ、ワイヤ送出作業中にワイヤWの縒り取りが必要になった場合は、台車201を移動させることにより、ワイヤドラム90とガイド部材13との相対位置関係を変え、ワイヤドラム90の上方領域にガイド部材13を進入させれば、図2で示した場合と同様、送出作業中よりもワイヤWが起立した状態となるので、図7(b),(c)に示すような手順でワイヤWの縒り取りを行うことができる。
【0047】
即ち、台車201は、ワイヤドラム90とガイド部材13との相対位置関係を変えることにより、ワイヤドラム90とガイド部材13との間で保持されたワイヤWを送出作業中よりも起立した状態に変更可能な進退手段の一つである移動機構を構成している。
【0048】
縒り取り作業が終わったら、台車201とともに支柱11a(11b)を元の位置に戻せば、ワイヤWは元の状態(送出作業中と同じ傾斜角度)に戻るので、ワイヤ送出作業を再開することができる。なお、ワイヤ送出作業中及びワイヤ縒り取り作業中に台車30が動かないように架台10に係止するための係止機構(図示せず)が設けられているため、作業性及び作業中の安全は十分に確保することができる。
【0049】
ワイヤ送出装置200においては、台車201が移動機構として機能しているが、これに限定しないので、図1に示すワイヤ送出装置100の様に、支柱11a(11b)の下端部を架台10に固定した構造とするとともに、梁材12a(12b)をそれぞれ長手方向に伸縮させガイド部材13を移動させる機構を設ければ、ワイヤドラム90とガイド部材13との相対位置関係を変えて、ワイヤドラム90とガイド部材13との間で保持されるワイヤWを送出作業中よりも起立した状態に変更したり、送出作業中の状態に戻したりすることができる。
【0050】
図9に示す、ワイヤ送出装置300においては、支柱11a(11b)の下端部が、架台10の短辺部材10aと平行な支軸301を介して架台10の短辺部材10a付近に回動可能に取り付けられている。ワイヤ送出装置300によるワイヤ送出作業は、図9中の実線で示す状態で行うことができ、ワイヤ送出作業中にワイヤWの縒り取りが必要となった場合は、支柱11a(11b)を支軸301中心に傾動させ、ワイヤドラム90の上方領域にガイド部材13を進入させると、ワイヤドラム90とガイド部材13との相対位置関係が変わり、図2に示す状態に近い状態(ワイヤドラム90とガイド部材13との間で保持されたワイヤWが送出作業中よりも起立した状態)となるので、図7(b),(c)に示すような手順でワイヤWの縒り取りを行うことができる。
【0051】
即ち、架台10の短辺部材10aと平行な支軸301を介して架台10の短辺部材10a付近に回動可能に取り付けられた支柱11a(11b)は、ワイヤドラム90とガイド部材13との相対位置関係を変えることにより、ワイヤドラム90とガイド部材13との間で保持されたワイヤWを送出作業中よりも起立した状態に変更可能な進退手段の一つである移動機構を構成している。
【0052】
縒り取り作業が終わったら、支柱11a(11b)を支軸301中心に回動させて元の直立状態に戻せば、ワイヤWは元の状態(送出作業中と同じ傾斜角度)に戻るので、ワイヤ送出作業を再開することができる。なお、ワイヤ送出作業時及びワイヤ縒り取り作業時に支柱11a(11b)が支軸301中心に回動するのを防止する係止機構(図示せず)が設けられているため、作業性及び作業中の安全は十分に確保することができる。
【0053】
なお、図1図9に基づいて説明したワイヤ送出装置100,200,300などは、本発明を例示するものであり、本発明のワイヤ送出装置は前述したワイヤ送出装置100,200,300などに限定されない。また、本発明のワイヤ送出装置は、ケーブル、電線あるいは紐状体などワイヤ以外の部材が巻回されたドラムからの送出作業においても好適に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のワイヤ送出装置は、ワイヤを内蔵する各種搬送機械類が使用される製造業や加工業などの分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 架台
10a,10b 短辺部材
10c,10d 長辺部材
11a,11b 支柱
12a,12b 梁材
13 ガイド部材
14a,14b 軸受
15,16 水平バー材
17 ロック板
18a,18b サイドガイド部材
30,201 台車
31 本体部
32 車輪
33 嵌合管
34a,34b ストッパ
50 ドラム保持ユニット
60 ドラム保持部材
61a,61b 支持壁
62a,62b 軸受部
63 操作ハンドル
64 ブレーキ
64a,83,301 支軸
64b 足踏み部
64c ブレーキシュー
80 ターンテーブル
81 突起
82 支持板
84 回転板
85,86 ロック板
90 ワイヤドラム
90a,90b 鍔部材
90c 軸心
91 軸体
100,200,300 ワイヤ送出装置
C 仮想円
L 仮想垂直線
R 領域
W ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9