(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4突出部の内部空間と前記第2突出部とでポリマー収納部をなし、該ポリマー収納部における吸水性ポリマーの充填率は、最大充填可能容積に対し10%以上60%以下である請求項1記載の吸収体。
前記第1シートの前記第1突出部と前記第2シートの前記第3突出部は、前記第1シートの前記第1突出部の内部空間がなくなるように接合されている請求項1又は2に記載の吸収体。
前記第1シートの前記第2突出部の繊維密度(r2)は前記第1突出部の繊維密度(r1)よりも高く、前記第2シートの前記第4突出部の繊維密度(r4)は前記第3突出部の繊維密度(r3)よりも高い請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収体。
前記第1シートの壁部の繊維が第1突出部から第2突出部に向かって配向しており、前記第2シートの壁部の繊維が第3突出部から第4突出部に向かって配向している請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収体。
前記第1シートの第1突出部の繊維密度(r1)が、前記第2シートの第3突出部の繊維密度(r3)より低く、前記第1シートの第2突出部の繊維密度(r2)が、前記第2シートの第4突出部の繊維密度(r4)よりも低い請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収体。
前記第1シートの第1面側にさらに第3シートを有し、該第3シートは前記第1面側に突出し、前記第2面側に内部空間を有する第5突出部と、前記第2面側に突出し第1面側に内部空間を有する第6突出部とを有し、前記第5、第6突出部が該シートの平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に壁部を介して連続して配された凹凸形状であり、前記第1シートとの凹凸構造の周期を一致させている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る吸収体の好ましい一実施形態である吸収体10について、図面を参照しながら、以下に説明する。
本発明の吸収体10は例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の液体保持部として適用することが好ましく、第1面側Z1を着用者の肌面側に向けて用い、第2面側Z2を着用者の衣類(図示せず)側に配置して用いることが好ましい。この場合の第1面側Z1は、排泄液の受け取り面であり、肌に対向する面として押圧等を受ける面である。以下、図面に示した吸収体10の第1面側Z1を着用者の肌面に向けて用いる実施態様を考慮して説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0013】
図1に示すように、吸収体10は、第1面側Z1の第1シート1と第2面側の第2シート2との間に吸水性ポリマー3を介在配置させた構成を有し、両面に凹凸を有する。吸水性ポリマー3は集合体31とされ、後述の第2シート2における第4突出部24の内部空間24Kに間隙部5を残して収納されている。この収納された集合体31が吸収体10の平面方向に複数散点配置されている。
第1シート1及び第2シート2はいずれも親水性で液透過性の不織布からなり、両面に凹凸のある形状を有する。この両シートの凹凸の周期は一致した配置とされて積層されている。第1シート1及び第2シートはそれぞれ、後述の接合部4の配された部分を除いて、押圧やエンボス処理等の圧密による繊維の硬化部分がなく、全体とした繊維の柔らかさが維持されたシート体である。また第1シート1及び第2シートはそれぞれ、屈曲を有さず、全体が連続した曲面で構成された両面凹凸構造を有する。この「連続」とは、断続した部分や小孔がないことを意味する。だたし、繊維間の隙間のような微細孔は上記の小孔に含めない。上記小孔とは、例えば、その孔径が円相当の直径で1mm以上のものと定義する。
【0014】
この吸収体10は、両面凹凸構造内に、吸水性ポリマー3の集合体31を内蔵し、かつ、その同一空間内の上部に間隙部5を備えた内部構造を有する。この内部構造によって、吸収体10は通液性に優れる。しかもこの通液性は、後述するように湿潤時でも持続される。また、前記両面凹凸構造は、第1面側と第2面側とを波状に往復して繋ぐ凹凸構造であり、面状の押圧を分散させ、前記内部構造が潰れてしまう等の影響を低減する。そのため前記通液性が持続し、繰り返しの液との接触でも高い液吸収性能が持続する。
しかも、吸収体の両面凹凸構造は、平面視の一方向ではなく多方向に配されているため、面状の押圧に対して優れたクッション性を備える。このクッション性は、前記2つのシートの凹凸の周期の一致により、形状の安定性と押圧に対する形状回復性が高められている。特に、肌面側からの圧力を直接受ける第1突出部11は、第3突出部23との接合で形状回復性が高められている。これにより、吸収体の前記内部構造が維持され通液性が持続する。この形状回復性は、後述の繊維配向性及び繊維密度によりさらに高められる。
また吸収体10は、吸水性ポリマー3を液保持剤として薄型化を可能とし、同時にクッション性による柔らかな風合いを有する。さらに吸収体10は、吸水性ポリマー3が吸水膨潤した状態でも柔軟性に優れる。なお、本発実施形態の吸収体10は、フラップパルプを含むものではないが、これを全く排除するものでなく必要により含有するものであってもよい。
このような特徴を有する吸収体10について以下に詳述する。
【0015】
まず第1シート1は、
図2(A)に示されるように、該シートを平面視した側の第1面側Z1に突出し内部空間11Kを有する第1突出部11と、第1面側Z1とは反対側の第2面側Z2に突出し内部空間12Kを有する第2突出部12とを有している。これらの第1,第2突出部11,12は、第1シート1の例えば全面にわたって平面視交差する異なる方向のそれぞれに壁部を介して交互に連続して配されている。上記異なる方向とは、具体的一例として、上記異なる方向の1方向であるX方向と、このX方向とは異なり、上記異なる方向の1方向であるY方向である。ここでは、第1面側Z1からみた凸部が第1突出部11であり、凹部が第2突出部12の内部空間12Kとなる。また、第2面側Z2からみた凸部が第2突出部12であり、凹部が第1突出部11の内部空間11Kとなる。上記x軸とy軸の交差角度は、30°以上90°以下とすることが好ましく、本実施形態では90°とした。
【0016】
第2シート2は、
図2(B)に示されるように、該シートを平面視した側の第1面側Z1に突出し内部空23Kを有する第3突出部23と、第1面側Z1とは反対側の第2面側Z2に突出し内部空間24Kを有する第4突出部24とを有している。これらの第3,第4突出部23,24は、第2シート2の例えば全面にわたって平面視交差する異なる方向のそれぞれに壁部を介して交互に連続して配されている。上記異なる方向とは、具体的一例として、上記異なる方向の1方向であるX方向と、このX方向とは異なり、上記異なる方向の1方向であるY方向である。ここでは、第1面側Z1からみた凸部が第3突出部23であり、凹部が第4突出部24の内部空間24Kとなる。また、第2面側Z2からみた凸部が第4突出部24であり、凹部が第3突出部23の内部空間23Kとなる。上記x軸とy軸の交差角度は、30°以上90°以下とすることが好ましく、本実施形態では90°とした。
【0017】
第1シート1及び第2シート2における各突出部の配列形態は上記に限定されず、連続しうる配列で配置しうる形態であればよい。例えば、第1シート1において、第1突出部11を中心に6角形の頂点に6つの第2突出部12が配置され、そのパターンが面内に広がる配列であってもよい。また、第1突出部11を中心に正方形の頂点に4つの第2突出部12が配置され、さらに各頂点間の中心にそれぞれ第2突出部12が配置されて、計8つの第2突出部12が配置され、そのパターンが面内に広がる配列であってもよい。この点は、第2シート2における第3突出部23と第4突出部24との配列形態においても同様に当てはまる。
【0018】
第1シート1の第1突出部11及び第2突出部12、並びに第2シート2の第3突出部23及び第4突出部24は、それぞれの頂部11T及び12T、並びに頂部23T及び24Tに丸みをもった円錐台形状もしくは半球状にされている。より詳細にみれば、第1突出部11及び第3突出部23の突出形状はどちらかというと半球状であり、他方、第2突出部12及び第4突出部24の突出形状は頂部に丸みのある円錐ないし円錐台形状になっている。なお、第1突出部11及び第2突出部112並びに第3突出部23及び第4突出部24は上記形状に限定されず、どのような突出形態でもよく、例えば、様々な錐体形状(本明細書において錐体形状とは、円錐、円錐台、角錐、角錐台、斜円錐等を広く含む意味である。)であることが実際的である。各シートの各突出部はその外形と相似する頂部に丸みのある円錐台形状もしくは半球状の内部空間を有している。
【0019】
第1シート1の第1面側Z1において、内部空間12Kを囲む各第1突出部11同士はその各頂部11Tから延びる稜線部11Nによって連結されている。稜線部11Nは、両端の頂部11Tの間で第2面側にやや窪むように湾曲した形状である。この稜線部11Nが、内部空間12Kの上端縁をなす。同様に、第2シート2の第1面側Z1において、内部空間24Kを囲む各第3突出部23同士はその各頂部23Tから延びる稜線部23Nによって連結されている。稜線部23Nは、両端の頂部23Tの間で第2面側にやや窪むように湾曲した形状である。この稜線部23Nが内部空間24Kの上端縁をなす。上記の稜線部11N及び稜線部23Nは、内部空間12K及び内部空間24Kを谷として見たときに、谷と谷との間の山地起伏部の連続した部分を意味する。
【0020】
第1シートを厚み方向(Z方向)にみて、第1突出部11と第2突出部12とは、壁部18を共有して連続した構造である。壁部18は内部空間11K及び内部空間12Kの側壁をなし、両空間を画定している。同様に、第2シート2を厚み方向(Z方向)にみて、第3突出部23と第4突出部24とは、壁部28を共有した連続した構造である。壁部28は内部空間23K及び内部空間24Kの側壁をなし、両空間を画定している。
【0021】
壁部18及び壁部28は、各内部空間を取り囲む環状構造を成している。ここでいう「環状」とは、平面視において無端の一連の形状をなしていれば特に限定されず、平面視において円、楕円、矩形、多角形など、どのような形状であってもよい。シートの連続状態を好適に維持する上では円又は楕円が好ましい。さらに、「環状」を立体形状としていえば、円柱、斜円柱、楕円柱、切頭円錐、切頭斜円錐、切頭楕円錐、切頭四角錐、切頭斜四角錐など任意の環構造が挙げられ、連続したシート状態を実現する上では、円柱、楕円柱、切頭円錐、切頭楕円錐が好ましい。
【0022】
壁部18及び壁部28は、連続したシート内において、両面の突出部と明確に区分されるものではないが、該突出部同士の連結部分として、シート厚みを3等分した中央部分P3として定義できる。この場合、厚み(P1+P3)を第1突出部11及び第3突出部23とし、厚み(P2+P3)を第2突出部12及び第4突出部24とする。
あるいは、第1シート1の第1突出部11と第2突出部との頂部の尖度ないし曲率が異なるときには、断面において直線状になった比較的狭い部分P3’を壁部18とし、そこから湾曲しつつ丸みを帯びていく部分をP1及びP2’と定義することもできる。第2シート2においても同様に適用される。この場合、厚み(P1+P3’)を第1突出部11及び第3突出部23とし、厚み(P2’+P3’)を第2突出部12及び第4突出部24とする。後者の定義によるなら、第2突出部12及び第4突出部24それぞれの厚み(P2’)は、これに対応する第1突出部11及び第3突出部23それぞれの厚み(P1)より大きく、各シート全体において、区分に偏倚のある形態とされる。
【0023】
吸収体10は、このような第1シート1及び第2シート2を凹凸の周期を一致させて積層したものである。これにより吸収体10は、
図3に示されるように、両面に凹凸構造を有する。
より詳細には、まず第2シート2の第3突出部23が、第2シートの内部空間11Kに入り込んでいる。つまり、第1突出部11と第3突出部23とが吸収体10の厚み方向(Z方向)に重なる配置である。この重なりにおいて、第3突出部23の頂部23Tと内部空間11Kの底部11Gとが接合部4で接合固定されている。このことはつまり、第1シート1の第1突出部11と第2シート2の第3突出部23とが、第1シート1の第1突出部11の内部空間11Kがなくなるように接合されていることになる。この接合部4は、接着剤(例えばホットメルト接着剤)を用いた接合、熱による融着接合、圧力をかけて接合する圧着接合等、種々の接合方法により形成することができる。また接合部4の配設は、厳密に第3突出部23の頂部23Tのみとするものではなく、その周辺を含む範囲内でなされることが好ましい。
そして、第1シート1の第2突出部12は、第2シート2の第4突出部24の内部空間24Kに入りつつも離間している。この状態において両シート間に内部空間24の一部が保持され、第1シート1の第2突出部12は内部空間24Kの蓋をなす(以下、内部空間24Kのうち、第2突出部12が入り込み残された空間をポリマー収納部24Pという。)。この第4突出部24の内部空間24Kには、第2突出部12側に間隙部5を残して、複数の吸水性ポリマー3の集合体31が充填されている。この吸水性ポリマー3の集合体31は、
図1に示されるように、第2シート2の内部空間24Kに合わせて複数散点配置されている。
【0024】
このようにして吸収体10は、内部空間24Kに吸水性ポリマー3の集合体31を内蔵し、かつ、その同一空間内の上部に間隙部5を備えた内部構造を有する。この内部構造において、間隙部5は、両面凹凸構造の厚み方向の中間に位置し、下記に詳述する通液性を奏する。
【0025】
間隙部5は、尿等の排泄液との接触で膨潤した吸水性ポリマー3を受け入れる空間となる。これにより吸水性ポリマー3の膨潤性が両シートの挟持などで阻害されることがなく、吸収体10としての吸水性能が十分発揮される。また間隙部5は吸水性ポリマー3の膨潤圧力を吸収し、第1シート1及び第2シート2の凹凸形状を変形させる力を軽減する。これにより吸収体10全体の凹凸形状の形状保持性が高められる。
さらに第4突出部24の内部空間24K自体が、第2突出部12で蓋をされた袋状のポリマー収納部24Pをなし、吸水性ポリマー3の高い収納安定性を有する。そのため吸水性ポリマー3は、不織布同士の密着で強固に固定される必要がなく、ある程度の自由度を持って集積されている。このことが、間隙部5の存在とともにさらに吸水性ポリマー3の膨張の自由度を高めている。
【0026】
加えて、間隙部5は隣接する内部空間24K同士の間で繋がっている。より具体的には、
図4(A)に示されるように、第3突出部23同士を結ぶ稜線部23Nは、接合部4のある頂部23Tを除いて、第1突出部11同士を結ぶ稜線部11Nと接合されていない。この2つの稜線部11Nと23Nとの間隙連結部6を介して、
図4(B)に示されるように、内部空間24の間隙部5同士が繋がっている。
これにより、
図5(B)の第2シートの平面図に示されるように、内部空間24にある排泄液が、稜線部23Nを越えて他の内部空間24へと移行し他の吸水性ポリマー3で吸収保持される。このように間隙部5同士の連通構造が、吸収体10内部における通液路となり、吸収体10内部での平面方向への液の拡散力となる。また間隙部5は、吸収水性ポリマー3の上面側で液を拡散するので、膨張した吸水性ポリマーがゲルブロッキングすることによる通液ないし液吸収の阻害の影響を受けない。
【0027】
また、通液路である間隙部5が吸水性ポリマー3と同じ内部空間24Kにあることで、第1面側Z1への液の溢れを回避して、吸収体10内部で液を各集合部31へと効率よく分配する。このとこにより、吸水性ポリマー3を小分けにして複数の集合体31として平面方向に散点配置しても吸収体10としての吸収性能が十分に発揮され得る。むしろ、散点配置にすることで、吸水性ポリマー3の集積によるゲルブロッキングの影響を低減することができる。なお、この間隙連結部6は、狭い隙間であるため、排泄液の移動は可能であるが、吸水性ポリマーの移動まではほとんど起こらない。また、吸水性ポリマーは、ホットメルト接着剤や若干の水分によって、第2シート2の第4突出部の内部空間24Kに面する底部24Gや壁部28等の内壁に固定されていてもよい。
【0028】
さらに不織布からなる第2シート2は、吸水性ポリマー3の集合部31の外側を通って、吸水性ポリマー3の配置厚み領域71とその上方の非配置厚み領域72とを繰り返し往復する凹凸形状である(
図3参照)。この凹凸形状に沿って生じる繊維の毛管力が、排泄液を前記2つの領域の間で移動させ、複数の集合部31に行き渡らせる拡散性を有する。
【0029】
以上のことから吸収体10は、一度に多量の排泄や2回目以降の繰り返しの排泄であっても、間隙部5の液拡散力で吸収体10の広い範囲の吸収性能が活用される。その結果、吸収体10は、継続的な排泄液の受け入れを可能にし、高い吸収性能が持続する。さらに吸収体内の液拡散力は、外部からの圧力による吸収体10の表面への液戻りを抑制する。
【0030】
上記の通液性は、吸収体10を吸収性物品に組み込んだときに、第1面側Z1の凹凸形状(第1突出部11と内部空間12K)、第2面側の凹凸形状(内部空間23Kと第4突出部)によってさらに促進される。
まず第1面側Z1の第1突出部11と内部空間12Kがなす凹凸形状は、排泄液を受けとる面として排泄液の捕集性及び液透過性に優れる。具体的には、複数の散点する内部空間12Kが、周囲に配された、肌側に最も近い第1突出部から排泄液を捕集し、不織布の繊維を介して内部空間24Kへと透過させる。このように平坦面でなく凹凸形状の第1面側Z1が、繰り返しの排泄にも対応して前記通液性を促進する。
他方、第2面側Z2の内部空間23Kと第4突出部24がなす凹凸形状は、非肌面側の防漏性の裏面シートとの組み合わせで、液拡散を促進する。具体的には、第3突出部23の内部空間23Kが排泄液を取り込んで拡散させる。この拡散は、各集合部31の外側で吸水性ポリマー3の膨張を受けず持続性が高い。これにより第2面側Z2の凹凸形状は、繰り返しの排泄にも対応して排泄液の調整弁をなし、前記通液性を促進する。
【0031】
以上のとおり、吸収体10は通液性が高く、内部の吸水性ポリマー3を無駄なく活用して液保持する。特に、液を吸収した後の湿潤状態において通液性が高いことは、繰り返しの排泄液への対応の観点から好ましい。この湿潤状態とは、吸水性ポリマーが飽和している状態のことである。
この湿潤状態における通液性は、下記の測定方法により得られる通液時間で示される。この通液時間が短いほど通液性が良いことを示す。この通液時間は、30秒以内が好ましく、10秒以内がより好ましい。上記の上限値以下とすることで、肌に付着する液が減ることとなり好ましい。
【0032】
(湿潤状態における通液時間の測定方法)
吸収体10を生理食塩水に十分浸させた状態(生理食塩水100gに30分浸水)とし、吸収体10の縦横中央部分で5cm×5cmの矩形形状に裁断したものを試料として3つ準備する。この試料の1つを内径35mmの上部円筒(ガラス製)と内径35mmの下部円筒(ガラス製)との間に、上下に2つのシリコン製パッキンで繊維シートを挟み込み、上部円筒の下端及び下部円筒の上端に設けられた環状のフランジ部にクリップを嵌合させ、上下の円筒を固定する。この際、前記2つの円筒は水平な作業台に対し垂直方向となるように配置する。試験液として濃度0.9%の食塩水40gを、上方の円筒状の上部より一度に入れて、注入開始から吸収体上から液がなくなるまでの時間を測定する。この測定を残りの試料についても行い、合計3回行った測定値の平均を通液時間とする。
【0033】
吸収体10の通液性は、吸収体の両面凹凸構造によって間隙部5等の内部構造が維持されることによって、圧力下にあっても持続する。
具体的には、吸収体10では、第1突出部11と第2突出部12とが壁部18を介して連続して多方向に繰り返し、かつ、これに同期をとって第3突出23と第4突出部24とが壁部28を介して連続して多方向に繰り返している。これにより、吸収体10は、第1面側と第2面側とを波状に往復して繋ぐ凹凸構造となって、面状の押圧を分散させ、面状の押圧に対して優れたクッション性を備える。特に、肌面側からの圧力を直接受ける第1突出部11は、第3突出部23との接合で形状回復性が高められている。
その結果、外部からの圧力は、両面凹凸の厚み中間位置において軽減され、前記内部構造の空間が保持される。その結果、吸収体10の通液性が持続し、繰り返しの排泄液との接触でも高い液吸収性能が持続する。
【0034】
さらに吸収体10の平面方向において、吸水性ポリマー3の集合体31を散点配置させたことで、吸水性ポリマー3の配置平面領域73と非配置平面領域74とを有する。この平面方向の非配置平面領域74と厚み方向の非配置厚み領域72との重なり部分が柔らかな不織布のみの積層部分となり柔軟性を有する。この重なり部分が吸収体10の可撓部7となる。しかも可撓部7は、凹凸の一部として種々の傾斜角度を有し多数点在し、吸収体10全体は多方向への変形性を有する。つまり吸収体10は、液吸収前の乾燥時に限らず、吸水性ポリマー3の吸水膨潤時においても高い柔軟性を有する。
これにより、吸収体10を組み込んだ使い捨ておむつ等の吸収性物品は、着用時に身体の起伏に併せた高いフィット性を有する。また、着用中の着用者の動作等に対する高い追従性を有する。このことが、漏れの原因となる、吸収性物品と着用者の体との隙間の発生を抑制する。
【0035】
この吸収体10の柔軟性は、下記の測定方法により得られる湿潤状態での曲げ剛性値や曲げ回復性値(曲げヒステリシス幅)により示される。これらの数値が小さいほど、吸水性ポリマーの膨潤にも係らず、吸収体10に柔軟性があることを示す。また数値が小さい程、吸収体10を吸収性物品内に組み込み装着した状態において、体圧でのよれが生じ難く身体追従性及びフィット性に優れることを示す。
吸収体10の湿潤状態での曲げ剛性値は、80gf・cm
2/cm以下が好ましく、60gf・cm
2/cm以下がより好ましい。また、湿潤状態での曲げ回復性値(ヒステリシス幅)は、30gf・cm/cm以下が好ましく、20gf・cm/cm以下がより好ましい。上記の上限値以下とすることで、着用時の変形による違和感が低減されることとなり好ましい。
【0036】
(湿潤状態での曲げ剛性値の測定方法)
「風合い評価の標準化と解析(第2版)」(著者;川端季雄、発行所;財団法人日本繊維機械学会、風合い計量と規格化研究委員会、発行日;昭和55年7月10日)の第27頁〜第28頁に記載の方法に準じて測定できる。詳細には、吸収体10を純水に十分浸させた状態(純水100gに30分浸水)とし、該吸収体の縦横中央部分で10cm×10cmに裁断して測定サンプルとする。得たサンプルをカトーテック(株)社製純曲げ試験機(商品名;KES−FB2)のチャックに、チャック間距離が10mmとなるように試料を取り付ける。取り付け方向は、吸収体の長手方向が曲げ方向となるようにする。重力の影響を少なくするために、試料は垂直に取り付ける。曲率K=−2.5cm
−1以上+2.5cm
−1以下の範囲で等速度曲率の純曲げを行なう。変形速度は0.50cm
−1/secとする。この操作によって、試料の単位面積当たりの曲げモーメントMと曲率Kとの関係(M−K曲線)を求める。その結果から、M−K曲線の傾斜である単位長さあたりの曲げ剛性B(gf・cm
2/cm)を算出した。Bは、K=0.5cm
−1と1.5cm
−1との間の傾斜、及びK=−0.5cm
−1と−1.5cm
−1との間の傾斜を、Kの絶対値の増加過程の特性から測定し、それぞれBf、Bbとする。その平均値(Bf+Bb)/2を湿潤状態での曲げ剛性値とする。湿潤状態での曲げ剛性値が低いほど吸収体は柔らかい。
【0037】
(湿潤状態での曲げ回復性値(曲げヒステリシス幅)の測定方法)
前記曲げ剛性値の測定と同様の方法で純曲げを行いM−K曲線を求める。その結果から平均曲げヒステリシス幅2HB(gf・cm/cm)を測定する。曲率K=−1cm
−1と1cm
−1とにおけるヒステリシス幅をそれぞれ2HBf及び2HBbとし、その平均値(2HBf+2HBb)/2を湿潤状態での曲げ回復性値とする。この値が小さいほど吸収体の曲げ回復性が高い。
【0038】
上記の吸水性ポリマー3の高い膨潤性、吸収体10の通液性及び柔軟性の持続性の観点から、第2突出部12で蓋をされた内部空間24K(ポリマー収納部24P)の最大充填可能容積(Vt)に対する充填された吸水性ポリマー3の体積(Vp)の比率(充填率(Vp/Vt))は、60%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。また各集合体31としての吸収性能の確保の観点から、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。
【0039】
上記の吸水性ポリマー3の充填率(Vp/Vt)は、以下の方法により算出することができる。
(i)まず、第2シート2の内部空間24K全体の容積(V1)を、底部24Gと周囲の4つの第3突出部23の頂部23Tとで規定される半円球体として計測する。該半円球体の底面JのCD方向(機械の流れ方向と交差する方向)の対向する2つの頂部間の長さ(CDピッチ;2b)、残りのMD方向(機械の流れ方向)の対向する2つの頂部間の長さ(MDピッチ;2c)をマイクロスコープ((株)キーエンス社製、VHX−1000(商品名))を用いて測定する。それぞれの長さの半分を、底面の半径b及びcと定める。同様にして、内部空間底部24Gから前記底面までの長さを測定し、これを半球体の高さ(a)として測定する。
上記の測定値を下記の(式1)にあてはめて内部空間24K全体の容積(V1)を算出する。
V1=(4π×a×b×c)/6・・・・・・・・(式1)
(ii)次に、内部空間24Kの蓋部分となる第2突出部12の外形体積(V2)を、前記容積(V1)の底面を共通とし、該底面から頂部12Kまでを高さ(d)とする半円球体として計測する。高さ(d)は、前記(i)の高さ(a)と同様にして測定する。
上記の測定値を下記の(式2)にあてはめて蓋部分の外形体積(V2)を算出する。そしてポリマー収納部24Pの容積(V3)を下記の(式3)から算出する。
V2=(4π×d×b×c)/6・・・・・・・・(式2)
V3=V1−V2・・・・・・・・・・・・・・・(式3)
(なお、稜線部11N及び23Nは、頂部11T及び23Tよりも低い部分を含むが、この開いた部分は微差であり、この微差はないものとみなして計算する。)
(iii)次に、単位面積あたりの内部空間24Kの数を算出する。具体的には、サンプル四方の縦長さ(B)及び横長さ(C)を測定し、下記の(式4)にあてはめて内部空間24の数(N)を算出する。
N=(B×C)/(b×c)・・・・・・・・・・(式4)
(iv)次に、上記の算出結果から単位面積あたりの最大充填可能容積(Vt)を下記の(式5)から算出する。
Vt=V3×N・・・・・・・・・・・・・・・・(式5)
(v)次に、吸水性ポリマー粒子の質量(M)及び体積密度(ρ)をJIS7370かさ比重測定法に準じて、電子天秤とメスシリンダーによって測定する。測定した値を下記の(式6)に当てはめて、吸水性ポリマー粒子の体積(Vp)を算出する。
Vp=M/ρ・・・・・・・・・・・・・・・・・(式6)
(vi)最後に、上記のVt及びVpから単位面積あたりの充填率(Vp/Vt)を算出する。
【0040】
上記の充填率を満たしつつ吸水性ポリマーによる十分な吸収性能を確保するためには、ポリマー収納部24Pが十分な容積であることが好ましい。十分は容積とするためには、第1シート1の第2突出部12及び第2シート2の第4突出部24の高さや傾斜角度等を異ならせることにより設定することができる。例えば、
図6に示されるように、第4突出部24が第2突出部12よりも極端に長くされた形状であってもよい。
上記の高さは、吸収体10の高さH10に対する、頂部12Tと底部24Gを結ぶポリマー収納部24Pの高さH4の比(H4/H10)として示される。この比率(H4/H10)は、下限は、吸収性能の観点から0.05以上が好ましく、0.08以上がより好ましい。またその上限は、通液性の観点から、0.8以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
また上記の傾斜角度は、第1シート1の第1突出部11の内部空間11Kの底部11Gと第2突出部12の頂部12Tを結ぶ仮想線1Fと、第2シート2の第3突出部23の頂部23Tと第4突出部の内部空間24Kの底部24Gとを結ぶ仮想線2Fとがなす角度(α)として示される。この角度(α)(deg)は、下限は、吸収性能の観点から2°以上が好ましく、4°以上がより好ましい。またその上限は、通液性の観点から、30°以下が好ましく、20°以下がより好ましい。
【0041】
さらに吸収体10において、第1シート1をなす不織布の繊維は、第1突出部11から第2突出部に向かう繊維配向を有することが好ましい。具体的には、第2突出部12の周囲にある複数の第1突出11から第2突出部12の頂部12Tへと収束する繊維配向性を有する(
図5(A)における符号1A,1B,1C,1D)。また、頂部11T同士を繋ぐ稜線部11Nと第2突出部12の頂部12Tとを結ぶ繊維配向性を有する(
図5(B)における符号1E,1F,1G,1H)。これにより、第1突出部11と第2突出部12とを繋ぐ壁部18は、環状の全周にわたっていずれの箇所においても第2突出部頂部12Tに向かって収束する放射線状の繊維配向性を有する。この繊維配向性は、X方向やY方向など種々の方向のシート断面においても、シート厚み方向の起伏に沿った配向であり、第1シート1全体の形状維持性を高める。特に、壁部18は両突出部をシートの厚み方向(Z方向)に起立させる支えとなる。
同様に、第2シート2をなす不織布の繊維は、第3突出部23から第4突出部24に向かう繊維配向性を有することが好ましい。具体的には、第4突出部24の周囲にある複数の第3突出部23から第4突出部24の頂部24Tへと収束する繊維配向を有する(
図5における符号2A,2B,2C,2D)。また、頂部23T同士を繋ぐ稜線部23Nと第4突出部24の頂部24Tとを結ぶ繊維配向性を有する(
図5における符号2E,2F,2G,2H)。これにより、第3突出部23と第4突出部24とを繋ぐ壁部28は、環状の全周にわたっていずれの箇所においても第2突出部頂部12Tに向かって収束する放射線状の繊維配向性を有する。この繊維配向性は、X方向やY方向など種々の方向のシート断面においても、シート厚み方向の起伏に沿った配向であり、第1シート1全体の形状維持性を高める。特に、これにより壁部28が両突出部をシート厚み方向(Z方向)に起立させる支えとなる。
【0042】
このような繊維配向性により、第1シート1及び第2シート2を組み合わせた吸収体10は、様々な方向からの圧力に対しても、両面凹凸形状が維持され易く、かつ、より優れたクッション性が得られる。
これに対して従来の一般的なエアスルー不織布では、通常不織布を製造するときに、そのMD方向に繊維が配向しそのまま融着される。そのため、MD方向断面における壁部の繊維はその起立方向に繊維が配向するものの、CD方向断面においては、起立方向とは直行する方向に繊維が配向することとなるため、上記のような放射線状の繊維配向性は有さない。そのため従来の不織布を用いても吸収体10における形状維持性及びクッション性は得られない。なお、前記MDとは、機械方向ともいい、不織布製造時における繊維ウエブの送給方向であり、「Machine Direction」の略語である。上記CDとはMDに対して直交する方向であり、「Cross Direction」の略語である。
【0043】
前記繊維配向性とは、繊維の配向角と配向強度からなる概念である。繊維の配向角は、色々な方向性を有する複数の繊維が全体としてどの方向に配向しているかを示す概念で、繊維の集合体の形状を数値化している。繊維の配向強度は、配向角を示す繊維の量を示す概念であり、配向強度は、1.05未満では、ほとんど配向しておらず、1.05以上で配向を有しているといえる。しかしながら、本実施形態においては、繊維配向がその部位によって変化している。すなわち、ある配向角の状態の部位から異なる配向角の部位へと変化する間(繊維がある方向に配向強度が強い状態から異なる配向に強い強度を示す部位へ変化する間)に、配向強度が弱い状態や再配向することで高い状態へ至る等の様々な状態を有する。そのため、ある強い配向角を示す部位と別の方向に強い配向角を示す部位との間においては、繊維の配向強度が弱くとも繊維の配向角が変わっていることが好ましく、配向強度が高いことがより好ましい。
【0044】
前記の配向角、配向強度について本実施形態において一例を示すと、第1シート1の壁部18の曲面構造に対して配向角は、50°以上130°以下が好ましく、より好ましくは60°以上120°以下であり、配向強度は1.05以上が好ましく、より好ましくは1.10以上である。このことは、第2シート2の壁部28においても同様である。なお、本発明において、特に断らない限りシート厚み方向(第1シート1において第2突出部12同士を繋いでできる仮想面に第1突出部11の頂部11Tを垂直に下して結ぶ方向、第2シートにおいて第4突出部24同士を繋いでできる仮想面に第3突出部23の頂部23Tを垂直に下して結ぶ方向)を配向角度90°とする。
【0045】
このように壁部18及び壁部28の繊維の配向方向が各頂部の中心に向かう方向であることから、両シートを組み込んだ吸収体10はクッション性を発現する。また、壁部18及び壁部28の繊維配向性により高加圧下においても吸収体10は十分な耐圧縮性を有し、第1突出部11の潰れを防ぐ。これにより十分な液の捕捉空間としての内部空間12、23及び24を確保でき、多量の液、固形分、高粘性液体等を十分に捕捉し、漏れを抑制する効果を十分に発揮する。
【0046】
また、前記繊維配向強度は、第1シート1と第2シート2とで同じであってもよく異なってもよい。特に、第2シート2の壁部28の繊維の各頂部に向かう配向強度が、第1シート1の壁部18のものと同等もしくは大きくなっていることが好ましい。これにより、吸水性ポリマーへの液の引き込みが強くなる。また、第1シート1の壁部18の繊維の配向強度と第2シート2の壁部28の繊維の配向強度とに差がある場合には、第2シート2の壁部28の方が第1シート1よりも、0.02以上大きいことが好ましく、0.05以上大きいことがより好ましい。第2シート2の壁部28の繊維の配向強度が第1シート1の壁部18の繊維の配向強度よりも大きいと多量の液、固形分、高粘性液体等を十分に捕捉し、漏れを抑制する効果を十分に発揮する効果がより高くなる。
【0047】
(繊維配向性(配向角、配向強度)の測定方法)
繊維配向性(配向角、配向強度)は、以下の方法により測定することができる。
まず、日本電子(株)社製の走査電子顕微鏡JCM−5100(商品名)を使用し、
図3における前記シート厚み方向が上下となるようにサンプルを静置し、サンプルの測定する面(CD方向断面)に対して垂直の方向から撮影した画像(測定する繊維が10本以上計測できる倍率に調整;70倍以上300倍以下)を印刷し、透明PET製シート上に繊維をなぞる。前記の画像をパソコン内に取り込み、株式会社ネクサス社製のnexusNewQube[商品名](スタンドアロン版)画像処理ソフトウエアを使用し、前記画像を二値化する。次いで、前記二値化した画像を、繊維配向解析プログラムである、Fiber Orientation Analysis 8.13 Singleソフト(商品名)を用い、フーリエ変換し、パワースペクトルを得、楕円近似した分布図から、配向角と配向強度を得る。
配向角は繊維が最も配向している角度を示し、配向強度はその配向角における強度を示している。壁部及び第1突出部の測定においては、配向角が90°に近い値ほど、第2突出部12の頂部12Tに向かう方向に繊維が配向していることを示し、60°以上120°以下であれば、第2突出部12の頂部12Tに向かって繊維が配向していると判断する。また、配向強度の値が大きいほど繊維の向きがそろっていることを表す。配向強度が1.05以上の場合を配向しているとする。測定は3ヶ所行い、平均してそのサンプルの配向角と配向強度とする。
【0048】
上記に加えて、第1シート1の繊維密度に関し、第1突出部11の繊維密度(r1)よりも第2突出部12の繊維密度(r2)が高いことが好ましい。また第2シート2の繊維密度に関し、第3突出部23の繊維密度(r3)よりも第4突出部24の繊維密度(r4)が高いことが好ましい。
【0049】
このような繊維密度を有する吸収体10を使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用すると、第1突出部11及び第3突出部23は、通液抵抗の低さから、表面シート側からの排泄物(図示せず)を素早く内部空間23Kへと導く。同時に、繊維密度差による毛管力で液が壁部18及び28を伝って第2突出部12及び第4突出部24へと移行する。このことから、前述の繊維密度が、表面シートからの液の引き込み性を高め、吸収体内部への通液性を高める。さらに、第1突出部11及び第3突出部23においては押圧に対して適度に潰れ肌に刺すような感じを与えず良好な肌当たりを実現することができる。一方、第2突出部12及び第4突出部24は潰れにくく、排泄物を捕集した後の保形成に優れ、型崩れせずに良好なクッション性と捕集物の拡散防止性に優れる。その結果、吸収体10を組み込んだ吸収性物品において、排泄物は肌に付き難くなり、着用者の赤み、かぶれ、褥瘡等の発生を防止することができる。
【0050】
ここでいう繊維密度とは、各突出部の厚みの中心付近の繊維密度であり、1mm
2当たりの繊維本数を計測することで評価した。例えば、第1突出部11の繊維密度(r1)及び第3突出部23の繊維密度(r3)は30本/mm
2以上であることが好ましく、50本/mm
2以上であることがより好ましく、また、130本/mm
2以下であることが好ましく、120本/mm
2以下であることがより好ましい。一方、第2突出部12の繊維密度(r2)及び第4突出部24の繊維密度(r4)は250本/mm
2以上であることが好ましく、270本/mm
2以上であることがより好ましく、また、500本/mm
2以下であることが好ましく、480本/mm
2以下であることがより好ましい。また、第1突出部11と第2突出部12との繊維密度の差、及び第3突出部23と第4突出部24との繊維密度の差は、150本/mm
2以上であることが好ましく、300本/mm
2以上であることがより好ましい。この差は、大きいほど好ましいが、上限としては、700本/mm
2程度である。
【0051】
前記繊維密度は、第1シート1と第2シート2とで同じであってもよく異なってもよい。特に、第2シート2の第3突出部23の繊維密度(r3)が第1シート1の第1突出部11の繊維密度(r1)と同等もしくは第1突出部11の繊維密度(r1)より高くなっていることが好ましい。これにより、吸収体内部の下層側での通液路への液の引き込みが促進される。第1突出部11の繊維密度(r1)と第3突出部23の繊維密度(r3)とに差がある場合には、第3突出部23の方が第1突出部11よりも、20本/mm
2以上高いことがより好ましく、50本/mm
2以上高いことがより好ましい。第3突出部23の繊維密度(r3)が第1突出部11の繊維密度(r1)よりも高いと、第1突出部11の粗な液透過力と第3突出部の密な毛管力との相互作用により、吸収速度向上の効果がより高くなる。
また、第1シート1の第2突出部12の繊維密度(r2)が第2シート2の第4突出部24の繊維密度(r4)と同等もしくは第4突出部24の繊維密度(r)より低くなっていることが好ましい。これにより、第1シート1の繊維の融着点が増え強度が増す。第4突出部24の繊維密度(r4)と第2突出部12の繊維密度(r2)の差がある場合には、第4突出部24の方が第2突出部12よりも、50本/mm
2以上高いことがより好ましく、100本/mm
2以上高いことがより好ましい。第4突出部24の繊維密度(r4)が第2突出部12の繊維密度(r2)よりも高いと、吸収体10の非肌当接面側で押圧力が集中する第4突出部24の保形性に優れ、立体構造を維持しやすく、クッション性の効果がより高くなる。
【0052】
<繊維密度の測定方法>
繊維密度は、例えば、以下の方法で測定することができる。
第1シート1及び第2シート2の切断面を、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30から60本計測できる倍率(150倍以上500倍以下)に調整し、繊維の断面数を測定し、一定面積あたりの前記切断面によって切断されている繊維の断面数を数える。また、観察の中心は、第1シート1の第1突出部11については頂部11Tの層厚みTL1の中央付近であり、壁部18についてはシート厚み方向の中心付近における層厚みTL3の中央付近である。第2突出部12については頂部12Tの層厚みTL2の中央付近である。同様に、第2シート1の第3突出部23については頂部23Tの層厚みTL4の中心付近であり、壁部28についてはシート厚み方向の中心付近における層厚みTL6の中心付近である。第4突出部24については頂部24Tの層厚みTL5の中心付近である。
次に1mm
2当たりの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm
2)とする。測定は3ヶ所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とする。上記走査電子顕微鏡には、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いることができる。
【0053】
上記実施形態で説明した吸収体10は、さらに以下のような作用を奏する。
吸収体10は、優れたクッション性を有する。
吸収体10は表裏の片面だけではなく、両面において突出した部分を有するため、その構造に特有のクッション性を発現する。例えば筋状の突起や片面の突起ではどうしても線ないし面としての弾力性を発現することとなるが、本実施形態によれば三次元的な動きに対してもよく追従して両面において点で支持された立体的なクッション性を奏する。また、積層された壁部18及び壁部28の厚み方向に向けた前記繊維配向性を有することで、壁部18及び壁部28にしっかりとしたコシが生まれ、繊維が厚み方向に潰れてしまうことのない適度のクッション性を有する。さらに、壁部18及び壁部28における前記繊維配向性により、押圧力を受けて吸収体10が潰されても、その形状復元力が大きく、梱包状態や着用が継続されても初期のクッション力が維持されやすい。すなわち、各突出部は、潰れ難く、変形が起こっても回復し易い。
上記の良好なクッション性に起因する作用により液を一時保持する空間を確保できるため、吸収速度を速く維持できるとともに、吸収体にかかる圧力が適度に分散されるため、吸収体からの液戻り量が低減される。また形状復元力が大きいことから、吸収性能の安定性も確保される。
【0054】
吸収体10は、柔らかな風合いを有する。
吸収体10には両面方向に積層された突出部を有し、第1突出部11の頂部11Tは丸みを帯びている。そのため、第1突出部11側の面を肌面側にすることで、これに直接又は他のシート部材を介して接すると、点で優しく接触し柔らかな風合いとなる。また、外からの圧力に対しても接触する点が面状に増減することで柔らかな風合いとしながら、圧力に対する吸収体全体の形状変形を抑えられる。また、圧力変形からの形状復元も高い。
さらに前述した、壁部18及び壁部28の厚み方向に配向した繊維によって、液がスムースに繊維を伝い流れ、液の拡散性と液保持性を高める。これにより、第1面側Z1への液戻りが少なく、吸収体表面のドライ感が実現される。
【0055】
吸収体10は排泄物の捕捉性に優れる。
吸収体10においては、第1面側Z1の内部空間12K、第2面側Z2の内部空間23K、及び吸収体内の内部空間24Kを有することから、排泄液や排泄物の物性に応じて多様な形態でこれらを捕捉し対応することができる。例えば、吸収体10の第1面側Z1を肌面側として説明すると、粘度が高く浸透性の低い排泄物であれば、内部空間12Kに一時その排泄物が溜められ、水分及び一部分は第2突出部12を通して内部空間24Kで吸水性ポリマー3に吸収保持される。一方、粘度が低く透過しやすい排泄液であれば、主に第1突出部11を透過したのち、内部空間23Kで捕捉され平面方向への液拡散とともに吸水性ポリマー3で素早く吸収保持される。このいずれの場合にも、肌面に最も近くに配される部分が第1突出部頂部11Tであり、上記捕捉された排泄液ないし排泄物は肌に接触しにくくされている。これにより、尿や便、経血や下り物の排泄ののちにも、幅広く対応して極めて良好なサラッと感じが持続される。
【0056】
吸収体10を構成する第1シート1及び第2シート2は、吸収体の剛性を低減し柔軟性を高めつつ、湿潤時でも外圧に耐え得る耐久性を備えたものであることが好ましい。
この観点から、第1シート1及び第2シート2のシート厚みTS(
図2参照)は、用途によって適宜調節すればよいが、おむつや生理用品等の吸収体として用いる場合、1mm以上7mm以下が好ましく、1.5mm以上5mm以下がより好ましい。その範囲とすることにより、積層しても薄く、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、さらには、適度なクッション性を実現することができる。
【0057】
前記シート厚みは、第1シート1と第2シート2とで同じであってもよく、互いに異なていてもよい(なおシート厚みTSについて、第1シートのシート厚みをTS1とし、第2シートのシート厚みをTS2としていうこともある。)。特に、吸水性ポリマーの保持容積の十分な確保の観点から、第1シート1のシート厚みTS1が第2シート2のシート厚みTS2と同等もしくは上記第2シート2のシート厚みTS2より薄くなっていることが好ましい。第1シート1のシート厚みTS1と第2シート2のシート厚みTS2とに差がある場合には、第2シート2の方が第1シート1よりも0.5mm以上厚いことが好ましく、1mm以上厚いことがより好ましい。第2シート2のシート厚みTS2が第1シート1のシート厚みTS1よりも厚いと吸水性ポリマーの保持量を増やすことができ、吸収性能を向上させる。
【0058】
<シート厚みの測定>
不織布試験体の切断面を、(株)キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−1000で測定する部位が十分に視野に入り測定できる大きさ(10〜100倍)に拡大し、
図4に示した第1突出部頂部11Tから第2突出部頂部12Tのシート厚みTS1及び第3突出部頂部23Tから第4突出部頂部24Tのシート厚みTS2を測定する。測定は、5回行い、平均してそのサンプルのシート厚みTS1(mm)とシート厚みTS2(mm)とした。
【0059】
層厚みTL(
図1参照)は、シート内の各部位において異なっていてよく、用途によって適宜調節すればよい。おむつや生理用品等の吸収体として用いる場合、第1突出部頂部11T及び第3突出部頂部23Tの層厚みTL1は0.1mm以上3mm以下であることが好ましく、0.4mm以上2mm以下がより好ましい。好ましい層厚みの範囲としては第2突出部頂部12T及び第4突出部頂部24Tの層厚みTL2並びに壁部18及び28の層厚みTL3も同様である。各層厚みTL1、TL2、TL3の関係は、TL1>TL3>TL2であることが好ましい。これにより、第1突出部11及び第3突出部23において、特に肌面側では、繊維密度が低く、良好な肌当たりを実現することができる。一方、第2突出部12及び第4突出部24は繊維密度が高くなり、潰れにくく、型崩れせずに良好なクッション性と液体の吸収速度に優れた不織布とすることができる。
なお、シート厚みTSとは、各シート部材の側面視としてみたときの全体の厚さのことあり、層厚みTLとは各シート部材の凹凸に湾曲した局部的な厚さをとする。
上記第1突出部11と第2突出部12との間隔、及び第3突出部23と第4突出部24との間隔は、用途によって適宜調節すればよく、おむつや生理用品等の吸収体として用いる場合、1mm以上15mm以下が好ましく、3mm以上10mm以下がより好ましい。また第1シート1及び第2シート2それぞれの坪量は特に限定されないが、シート全体の平均値で15g/m
2以上50g/m
2以下が好ましく、20g/m
2以上40g/m
2以下がより好ましい。
【0060】
前記シート坪量は、第1シート1と第2シート2とで同じであってもよく異なっていてもよい。特に、第1シート1のシート坪量が第2シート2のシート坪量と同等もしくは第2シート2のシート坪量より少なくなっていることが好ましい。これにより、吸収体内部の下層側での通液路への液の引き込みが促進される。第1シート1のシート坪量と第2シート2のシート坪量とに差がある場合には、第2シート2のシート坪量が第1シート1のものよりも5g以上大きいことが好ましく、10g以上大きいことがより好ましい。第2シート2のシート坪量が第1シート1のシート坪量よりも大きいと、肌面側の第1シート1が液透過性に優れ、吸収速度向上の効果がより高くなる。
【0061】
<坪量の測定>
第1シート1および第2シート2のそれぞれについて、10cm各で切り出したサンプル重量を、電子天秤を用いて測定した。重量測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して面積で割ることで坪量とした。
【0062】
第1シート1及び第2シート2に用いることができる繊維材料は特に限定されない。例えば、具体的には、下記の繊維などが挙げられる。ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維等のポリオレフィン繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で用いてなる繊維;芯鞘型、サイドバイサイド型等の構造の複合繊維、例えば鞘成分がポリエチレン又は低融点ポリプロピレンである芯鞘構造の繊維が好ましく挙げられ、該芯/鞘構造の繊維の代表例としては、PET(芯)とPE(鞘)、PP(芯)とPE(鞘)、PP(芯)と低融点PP(鞘)等の芯鞘構造の繊維。更に具体的には、上記構成繊維は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン複合繊維を含むのが好ましい。ここで、該ポリエチレン複合繊維の複合組成は、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンであり、該ポリプロピレン複合繊維の複合組成が、ポリエチレンテレフタレートと低融点ポリプロピレンであるのが好ましく、より具体的には、PET(芯)とPE(鞘)、PET(芯)と低融点PP(鞘)が挙げられる。また、これらの繊維は、単独で用いて不織布を構成してもよいが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0063】
吸水性ポリマー3の形成素材として、この種の物品に用いられるものと特に制限ない採用できる。吸水性ポリマー3は、自重の20倍以上の水又は生理食塩水を吸収し保持し得る性能を有するような超吸収性高分子化合物であることが好ましい。例えば、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。吸水性ポリマー3としては、通常は粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の吸水性ポリマーには、その形状の違いから、不定形タイプ、塊状タイプ、俵状タイプ、球粒凝集タイプ、球状タイプ等があるが、何れのタイプも用いることができる。
【0064】
吸水性ポリマーの粒径は1000μm以下、特に200μm以上500μm以下のものがより好ましい。また吸水性ポリマーとしては吸収速度(JISK7224−1996)が30秒以下のものが好ましい。吸収速度が30秒以下であれば、多量の液が一度に排出されても十分吸収できるため、あふれることなく漏れが生じにくく、液戻りも抑制される。吸水性ポリマーとしては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好ましい
【0065】
本実施形態の吸収体10は不織布の2層構造である。この2層構造を具備し、前記作用を奏する限り、本発明の吸収体はさらなる凹凸不織布を積層するものであってもよい。積層数は使用目的等により適宜設定できる。また3層以上とする場合の吸水性ポリマー3の配置層もまた使用目的等により適宜設定できる。さらに他の部材と組み合わせでもよい。
例えば3層とする例として
図7(A)及び(B)が挙げられる。
図7(A)の吸収体20は、第1シート1の肌面側(第1面側Z1)に、第3シート8を積層させたものである。第3シート8は、第5突出部85と第6突出部86とを有し、第1シート1と凹凸の周期を一致させて積層させている。つまり、第1突出部11と第5突出部85とが接合固定され、第2突出部12と第6突出部86とが離間し内部空間12Kが保持されている。吸水性ポリマー3は、中層の第1シート1と下層の第2シート2との間の内部空間24Kに配されており、上層の第3シート8と中層の第1シート1との間には配されていない。これにより、吸収体内部で液の通液領域が増え、吸収体としての吸収性能を向上させる。また第3シート8と第1シート1との間に内部空間12kを有し、吸収体20の肌側面が飽和した吸水性ポリマーから離れているため、液戻りが低減される。
図7(A)の例において、第2突出部12と第6突出部86との離間の程度としては、前述の内部空間24Kと同様のものであってもよく、異なるものであってもよい。また、第2突出部12と第6突出部86とは離間する場合に限らず、接合されて空間部12Kが無い状態であってもよい。第3シート8において、シート厚みTSや各層厚みTL1、TL2、TL3は上記の第1シート1及び第2シート2と同様の範囲で設定されることが好ましい。
【0066】
図7(B)の吸収体30は、第2シート2の非肌面側(第2面側Z2)に、第4シート9を積層させたものである。第4シート9は、第7突出部97と第8突出部98とを有し、第2シート1と凹凸の周期を一致させて積層させている。つまり、第4突出部24と第8突出部98とが接合固定され、第3突出部23と第7突出部97とが離間し内部空間23Kが保持されている。吸水性ポリマー3は、上層の第1シート1と中層の第2シート2との間の内部空間24Kに配されており、下層の第4シート9と中層の第2シート2との間には配されていない。これにより、吸収体内部の下層側での通液路ができ、液保持部である内部空間24Kの下側での液拡散が促進される。また第2シート2に比較的伸度の少ない第4シート9が加わることで高加重時にも立体性が維持されやすくなり、クッション性に優れる。
図7(B)の例において、第3突出部23と第7突出部97との離間の程度としては、前述の内部空間24Kと同様のものであってもよく、異なるものであってもよい。また、第4シート9自体が通液路となるため、第3突出部23と第7突出部97とは離間する場合に限らず、接合されて内部空間23Kが無い状態であってもよい。第4シート9において、シート厚みTSや各層厚みTL1、TL2、TL3は上記の第1シート1及び第2シート2と同様の範囲で設定されることが好ましい。
【0067】
一方、
図7(C)の吸収体40は、
図7(A)及び(B)を併せた4層構造である。これにより、中層の液保持部に対し、上層及び下層での液拡散が可能となり好ましい。また第3シート8と第1シート1との間に内部空間12kを有し、吸収体40の肌側面が飽和した吸水性ポリマーから離れているため、液戻りが低減される。また第2シート2に比較的伸度の少ない第4シート9が加わることで高加重時にも立体性が維持されやすくなり、クッション性に優れる。
【0068】
以上のとおり本発明の吸収体は、不織布シートの2層構造を基本とし、3層以上としてもよい。またその平面形状は、適用する吸収性物品に併せて、また使用目的等に併せて適宜決めることができる。例えば、縦長の矩形形状であってもよく、長手方向の中央が幅方向内方に括れた形状であってもよく、内部に縦長のスリット部を備えるものであってもよい。いずれの形状においても、積層された不織布シートの外周縁は、ヒートシールやホットメルト等の接着剤により接合された閉じた構造であることが液漏れ防止の観点から好ましい。
【0069】
次に、上述の吸収体10を構成する不織布シート(第1シート1及び第2シート2)の製造方法の好ましい一実施形態について、
図8を参照しながら、以下に説明する。
上述の不織布シートの製造方法は、以下の製造方法を適宜採用すればよい。
まず、第1シート11と第2シート12を別々に製造する。なお、第1シート11と第2シート12の製造方法は同一であってもよく、または、いずれか一方のシートの突出部の高さを変えて製造してもよい。
この実施形態では、第1シート11と第2シート12とを同一の製造方法で製造する場合を説明する。したがって、代表して第1シート11の製造方法を説明する。なお、
図7で示した第3シート8及び第4シート9も同様の製造方法により作製できる。
【0070】
ウエブ賦形の支持体の一例として、
図8(1)に示した構成の支持体110を用いる。この支持体110は、第2突出部12が賦形される位置に対応して多数の突起111を有し、第1突出部11が賦形される位置に対応して孔112が配されている。すなわち、支持体110は凹凸形状を有しており、突起111と孔112とが異なる方向に交互に配されていて、例えば、X方向とY方向のそれぞれに突起111と孔112とが交互に配されている。
上記支持体110上にウエブ(繊維ウエブともいう)50を配して、ウエブ50に向けて第1の熱風W1を吹き付けた場合、
図8(2)に示すように、支持体110の孔112に対応して第1突出部11が賦形され、突起111の位置に対応して第2突出部12が賦形される。したがって、平面視した側の第1面側Z1に突出し内部空間11Kを有する第1突出部11と、第1面側Z1とは反対側の第2面側Z2に突出し内部空間12Kを有する第2突出部12とは、平面視交差する異なるX方向とY方向のそれぞれに交互に連続して配されて、第1シート1が賦形される。この場合、突起111に対応して賦形された第2突出部12より孔112に対応して賦形された第1突出部11の繊維密度が低くなる。
なお、図面矢印は第1の熱風W1の流れを模式的に示している。
【0071】
この製造方法の具体的一例を挙げると、下記のような態様が挙げられる。
融着する前のウエブ50を、所定の厚みとなるようカード機(図示せず)からウエブを賦形する装置に供給する。賦形装置では、まず上記支持体110上に上記ウエブ50を搬送して定着させる。次いで、その支持体110上のウエブ50に第1の熱風W1を吹きつける(
図8(1)の状態。)。そしてウエブ50を支持体110の形状に沿うように賦形する(
図8(2)の状態。)。このときの第1の熱風W1の温度は、この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、ウエブ50を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃以上70℃以下低いことが好ましく、5℃以上50℃以下低いことがより好ましい。第1の熱風W1の風速は、支持体110の突起111の高さにもよるが、賦形性と風合いの観点から、20m/s以上150m/s以下に設定され、好ましくは30m/s以上100m/s以下である。風速がこの下限値より遅くなると、十分に賦形されなくなり、クッション性と排泄物のストック性と通気性の効果が十分に発揮されない。風速がこの上限値を超えると、第2突出部22の頂部22Tに開孔が生じることになり、潰れやすくなり、クッション性と排泄物のストック性と通気性の効果が十分に発揮されない。さらに、排泄物がその開孔部を通って逆戻りしやすくなる。
このようにして、ウエブ50を凹凸形状に賦形する。
【0072】
なお、支持体110の突起111の高さは、賦形されるシート全体の厚みやシートの層厚みによって適宜決定される。例えば、1mm以上10mm以下に設定され、好ましくは1.5mm以上9mm以下に設定され、より好ましくは2mm以上8mm以下に設定される。
【0073】
次に、
図8(3)に示すように、ウエブ50の各繊維が適度に融着可能な温度の第2の熱風W2を吹きつけて、繊維同士を融着させる。このときの第2の熱風W2の温度は、この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、ウエブ50を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃以上70℃以下高いことが好ましく、5℃以上50℃以下高いことがより好ましい。第2の熱風W2の風速は、1m/s以上10m/s以下に設定され、好ましくは3m/s以上8m/s以下に設定される。この第2の熱風W2の風速は、遅すぎると繊維への熱伝達ができず、繊維同士が融着せず凹凸形状の固定が不十分になる。一方、風速が速すぎると、繊維へ熱が当たりすぎるため、風合いが悪くなる傾向となる。
【0074】
熱可塑性繊維としては、前述した繊維が用いられる。例えば熱可塑性繊維として低融点成分および高融点成分を含む複合繊維を用いる場合、ウエブ50に吹き付ける第2の熱風W2の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。
【0075】
またウエブ50は、熱可塑性繊維を、30質量%以上100質量%以下含んでいることが好ましく、より好ましくは40質量%以上100質量%以下である。ウエブ50は、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)を含んでいてもよい。
【0076】
以上説明したようにして、第1シート11が作製される。
上記製造方法は、連続生産を考慮すると、製造装置(図示せず)は、上記支持体110を搬送可能なコンベア式またはドラム式のものとし、搬送されてくる凹凸形状を固定された第1シート11を、ロール(図示せず)で巻き取っていく態様が挙げられる。
【0077】
また、第2シート12も第1シート11と同様の製造方法によって作製される。第2シート12の場合、第3突出部23が第1シート11の第1突出部11に対応し、第4突出部24が第1シート11の第2突出部12に対応する。支持体110の孔112に対応して第3突出部23が賦形され、突起111の位置に対応して第4突出部24が賦形される。このように賦形されることによって、平面視した側の第1面側Z1に突出し内部空間23Kを有する第3突出部23と、第2面側Z2に突出し内部空間24Kを有する第2突出部24とが、平面視交差する異なるX方向とY方向のそれぞれに交互に連続して配される。この場合、突起111に対応して賦形された第4突出部24より孔112に対応して賦形された第3突出部23の繊維密度が低くなる。
次に、第1シート11の製造方法と同様にして、第2の熱風W2を吹き付けて繊維同士を融着させて賦形形状を固定して、第2シート12が作製される。
【0078】
第2シート2の作製にあたり、支持体110として、突起111の高さや各突起111間の間隔、孔112の大きさを第1シート11で用いたものと異なるものとしてもよい。これにより、第4突出部24の内部空間24Kがより深く大きなシート体が得られる。すなわち支持体110の設定により、突起や内部空間の大きさ及び高さをできる。
【0079】
上記製造方法においては、各シートの厚みは、第1の熱風W1の風速によって、適宜決定される。例えば、風速を速くするとシートの厚みが厚くなり、遅くするとシートの厚みが薄くなる。また、風速を速くすると第1突出部と第2突出部の繊維密度差が大きくなり、風速を遅くすると第1突出部と第2突出部の繊維密度差が小さくなる。
【0080】
次に、得られた第1シート1と第2シート2とを組み合わせて吸収体とする。
まず、第2シート2の第3突出部23及び内部空間24Kのある面を上面として配し、吸水性ポリマー3を散布し、内部空間24Kに充填する。このとき、第1シート1の第2突出部12の入り込みとその後の間隙部5を考慮して散布量を決定する。なお、散布後の吸水性ポリマー3に対して微量の水分を噴霧すると、水分の付着により吸水性ポリマー自身の粘着性発現させてもよい。これにより製造工程中に吸水性ポリマーの流出を防止できる。
次いで、第2シート2上に第1シート1を積層して接合する。その際、第2シート2の第3突出部23が第1シート1の内部空間11Kに入り込み、第2シート2の内部空間24kに第1シート1の第2突出部12が入り込むようにする。両シートの接合は、例えば、ホットメルト接着剤を用いて接合する。または熱融着によって接合してもよく、または圧着もしくは熱圧着によって接合してもよい。この接合では、第3突出部頂部23Tと内部空間11Kの底部11Gとが接合していることが好ましいが、必ずしも頂点同士が接合していなくともその周辺で接合されていればよい。
【0081】
上記のホットメルト接着剤を用いた接合方法の一例としては、第2シート2の第3突出部23側を上面にした状態で、ホットメルトコーター(図示せず)を用いて、第3突出部23の頂部23T周辺にホットメルト接着剤(図示せず)を塗工する。次いで、第3突出部23を第1シート1の内部空間11Kに侵入させるようにして第1シートを積層し、両シートを貼り合わせる。その他、スロットスプレー法やスパイラル法によってホットメルト接着剤を塗工する方法でもよい。
【0082】
上記製造方法では、凹凸形状を有する支持体110上に搬送したウエブ50に第1の熱風を吹き付けることによってウエブ50を賦形することから、上述の放射線状の繊維配向性を有する不織布シートを製造できる。このような不織布シートを第1シート1及び第2シート2として組み合わせ、内部空間24Kに間隙部5を残して総合に連通させた吸収体とすることで、優れた通液性と高い吸収性能の持続など上述の優れた特性を有するものとなる。
【0083】
次に、本発明の吸収体を用いた吸収性物品の1実施形態として、使い捨ておむつ100について
図9を参照して以下に説明する。
図9に示すように、本発明の吸収体10を用いた使い捨ておむつ100は、テープ型の乳幼児用使い捨ておむつであり、平面に展開した状態のおむつを多少曲げて内側(肌当接面側)からみた状態で示している。
【0084】
この使い捨ておむつ100(以下、おむつ100ともいう。)は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート101と、非肌当接面側に配置される液防漏性の裏面シート102とを有し、両シートの間に吸収体10を介在する配置している。吸収体10は、その第1突出部11側が肌当接面とされている。裏面シート102は展開状態で、その両側縁が長手方向中央部Cにおいて内側に括れた形状を有しており、1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。本例においては、撥水性のサイドシート105がなす横漏れ防止ギャザー107が設けられており、これにより乳幼児の運動等による股関節部分における液体等の横漏れを効果的に防止しうる。本実施形態のおむつにおいては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。なお、
図9においては各部材の配置関係や境界を厳密には図示しておらず、この種のおむつの一般的な形態とされていれば特にその構造は限定されない。なお、上記の構成において、液の横漏れ防止の観点から、吸収体10の側面に撥水性のサイドシート105又は液防漏性の裏面シート102の一部が当接して配されることが好ましい。
【0085】
おむつ100はテープ型のものとして示しており、背側Rのフラップ部にはファスニングテープ106が設けられている。このファスニングテープ106を腹側Fのフラップ部に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して、おむつを装着固定することができる。このとき、おむつ中央部Cを緩やかに内側に折り曲げて、吸収体10が乳幼児の臀部から下腹部にわたって沿わされるように着用する。これにより排泄物が的確に吸収体10に吸収保持される。
【0086】
吸収体10をこのような形態で用いることにより、おむつが肌と接する部分において、表面シート101を介して厚み方向に良好なクッション性と優しい肌触りが得られる。また、上述した吸収体10の優れた通液性及び液保持性により液吸収性能が持続し、排泄液の表面シート側への液戻りや液残りが抑制され、装着したときの肌のドライ感が向上する。さらに表面シート101を介して透過される排泄物の捕捉性については、従来の吸収体では達成できない極めて高い性能を実現することができ、例えば、乳幼児の肌を下痢便や軟便等による肌荒れから好適に保護することできる。また、上述した構造の維持による吸収体10自体の通気性に優れ、表面シート点接触の効果により、カブレの防止に役立つ。
【0087】
上記のおむつに適用される吸収体は、吸収体10のほか前述の吸収体20,30,40であってもよい。また、基本構造である吸収体10の構成を有する限り、他の部材と組み合わされた吸収体であってもよい。
本発明の吸収体を上記のような構成の吸収性物品に適用するに当たり、吸収体の外形をなす不織布シートが液透過性を有することから、最上層のシートを表面シートの代用として用いることも可能である。つまり、上記のおむつ100において、表面シート101を配さない構成であってもよい。
【0088】
本発明の吸収体10は、その他、各種用途に用いることができる。例えば、成人用や乳幼児用の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等など液保持機能を備える吸収性物品において好適に使用することができる。その他、食品用ドリップ吸収体、ふきとり用掃除器具として利用する形態も挙げられる。
【0089】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の吸収体及び吸収性物品を開示する。
【0090】
<1>第1シート及び第2シートの間に吸水性ポリマーを配置した構造を有する吸収体であって、
前記第1シート及び第2シートは不織布からなり、
前記第1シートは、前記吸収体を平面視した側の第1面側に突出し、前記第1面側とは反対側の第2面側に内部空間を有する第1突出部と、前記第2面側に突出し第1面側に内部空間を有する第2突出部とを有し、前記第1、第2突出部が該シートの平面視交差する異なる方向のそれぞれに壁部を介して交互に連続して配された凹凸形状であり、
前記第2シートは、前記第1面側に突出し、前記第2面側に内部空間を有する第3突出部と、前記第2面側に突出し第1面側に内部空間を有する第4突出部とを有し、前記第3、第4突出部が該シートの平面視交差する異なる方向のそれぞれに壁部を介して交互に連続して配された凹凸形状であり、
前記第1シートと第2シートとは互いの凹凸の周期が一致した配置とされ、前記第3突出部は前記第1突出部の内部空間に入り込んで部分的に接合固定されており、前記第2突出部は前記第4突出部の内部空間に該内部空間を一部残して入り込み、該第4突出部の内部空間には、前記第2突出部側に間隙部を残して前記吸水性ポリマーが充填されており、
充填された前記吸水性ポリマーの集合体は、前記第4突出部の内部空間の配置に合わせて複数散点配置され、前記間隙部が各第4突出部の内部空間同士の間で繋がっている吸収体。
【0091】
<2>前記第4突出部の内部空間と前記第2突出部とでポリマー収納部をなし、該ポリマー収納部における吸水性ポリマーの充填率は、最大充填可能容積に対し10%以上60%以下である前記<1>に記載の吸収体。
<3>前記吸収体の厚み方向高さH10に対する、前記ポリマー収納部の厚み方向高さH4の比H4/H10は、0.05以上が好ましく、0.08以上がより好ましい前記<2>に記載の吸収体。
<4>前記吸収体の厚み方向高さH10に対する、前記ポリマー収納部の厚み方向高さH4の比H4/H10は、0.8以下が好ましく、0.5以下がより好ましい前記<2>又は<3>に記載の吸収体。
<5>前記ポリマー収納部について、前記第1シートにおける第1突出部の内部空間の底部と第2突出部の頂部を結ぶ仮想線と、前記第2シートにおける第3突出部の頂部と第4突出部の内部空間の底部とを結ぶ仮想線とがなす角度αは、2°以上が好ましく、4°以上がより好ましい前記<2>〜<4>のいずれか1に記載の吸収体。
<6>前記ポリマー収納部について、前記第1シートにおける第1突出部の内部空間の底部と第2突出部の頂部を結ぶ仮想線と、前記第2シートにおける第3突出部の頂部と第4突出部の内部空間の底部とを結ぶ仮想線とがなす角度αは、30°以下が好ましく、20°以下がより好ましい前記<2>〜<4>のいずれか1に記載の吸収体。
<7>前記第1シートの前記第1突出部と前記第2シートの前記第3突出部は、前記第1シートの前記第1突出部の内部空間がなくなるように接合されている前記<1>〜<6>のいずれか1に記載の吸収体。
【0092】
<8>前記第1シートの前記第2突出部の繊維密度(r2)は前記第1突出部の繊維密度(r1)よりも高く、前記第2シートの前記第4突出部の繊維密度(r4)は前記第3突出部の繊維密度(r3)よりも高い前記<1>〜<7>のいずれか1に記載の吸収体。
<9>前記第1突出部の繊維密度(r1)及び第3突出部の繊維密度(r3)は、30本/mm
2以上であることが好ましく、50本/mm
2以上であることがより好ましい前記<1>〜<8>のいずれか1に記載の吸収体。
<10>前記第1突出部の繊維密度(r1)及び第3突出部の繊維密度(r3)は、130本/mm
2以下であることが好ましく、120本/mm
2以下であることがより好ましい前記<1>〜<9>のいずれか1に記載の吸収体。
<11>前記第2突出部の繊維密度(r2)及び第4突出部の繊維密度(r4)は、250本/mm
2以上であることが好ましく、270本/mm
2以上であることがより好ましい前記<1>〜<10>のいずれか1に記載の吸収体。
<12>前記第2突出部の繊維密度(r2)及び第4突出部の繊維密度(r4)は、500本/mm
2以下であることが好ましく、480本/mm
2以下であることがより好ましい前記<1>〜<11>のいずれか1に記載の吸収体。
<13>前記第1突出部と第2突出部との繊維密度の差、及び前記第3突出部と第4突出部との繊維密度の差は、150本/mm
2以上であることが好ましく、300本/mm
2以上であることがより好ましい前記<1>〜<12>のいずれか1に記載の吸収体。
【0093】
<14>前記第1シートの壁部の繊維が第1突出部から第2突出部に向かって配向しており、前記第2シートの壁部の繊維が第3突出部から第4突出部に向かって配向している前記<1>〜<13>のいずれか1に記載の吸収体。
<15>前記第1シートの壁部及び前記第2シートの壁部の繊維の配向角がそれぞれ、50°以上130°以下が好ましく、60°以上120°以下がより好ましい前記<1>〜<14>のいずれか1に記載の吸収体。
<16>前記第1シートの壁部及び前記第2シートの壁部の繊維の配向強度がそれぞれ、1.05以上が好ましく、1.10以上がより好ましい前記<1>〜<15>のいずれか1に記載の吸収体。
<17>前記第2シートの壁部の繊維の配向強度が、前記第1シートの壁部の繊維の配向強度よりも、0.02以上大きいことが好ましく、0.05以上大きいことがより好ましい前記<1>〜<16>のいずれか1に記載の吸収体。
【0094】
<18>前記第1シート及び前記第2シートのシート厚みはそれぞれ、1mm以上7mm以下が好ましく、1.5mm以上5mm以下がより好ましい前記<1>〜<17>のいずれか1に記載の吸収体。
<19>前記第1シートと、前記第2シートのシート厚みが同じである前記<1>〜<18>のいずれか1に記載の吸収体。
<20>前記第1シートと、前記第2シートのシート厚みが異なる前記<1>〜<18>のいずれか1に記載の吸収体。
<21>前記第2シートのシート厚みが、前記第1シートのシート厚みよりも0.5mm以上厚いことが好ましく、1mm以上厚いことがより好ましい前記<20>に記載の吸収体。
<22>第1シート及び第2シートのシート坪量はそれぞれ、シート全体の平均で15g/m
2以上50g/m
2以下が好ましく、20g/m
2以上40g/m
2以下がより好ましい前記<1>〜<21>のいずれか1に記載の吸収体。
<23>前記第2シートのシート坪量が前記第1シートのシート坪量よりも5g以上大きいことが好ましく、10g以上大きいことがより好ましい前記<1>〜<22>のいずれか1に記載の吸収体。
【0095】
<24>前記第1シートの第1突出部の繊維密度(r1)が、前記第2シートの第3突出部の繊維密度(r3)より低く、前記第1シートの第2突出部の繊維密度(r2)が、前記第2シートの第4突出部の繊維密度(r4)よりも低い前記<1>〜<23>のいずれか1に記載の吸収体。
<25>前記第3突出部の繊維密度(r3)が、前記第1突出部の繊維密度(r1)よりも、20本/mm
2以上高いことがより好ましく、50本/mm
2以上高いことがより好ましい前記<24>に記載の吸収体。
<26>前記第4突出部の繊維密度(r4)が、前記第2突出部の繊維密度(r2)よりも、50本/mm
2以上高いことがより好ましく、100本/mm
2以上高いことがより好ましい前記<24>又は<25>に記載の吸収体。
【0096】
<27>前記第1シートの第1面側にさらに第3シートを有し、該第3シートは前記第1面側に突出し、前記第2面側に内部空間を有する第5突出部と、前記第2面側に突出し第1面側に内部空間を有する第6突出部とを有し、前記第5、第6突出部が該シートの平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に壁部を介して連続して配された凹凸形状であり、前記第1シートとの凹凸構造の周期を一致させている、前記<1>〜<26>のいずれか1に記載の吸収体。
<28>前記吸水性ポリマーの粒径は、1000μm以下であり、200μm以上500μm以下が好ましい前記<1>〜<27>のいずれか1に記載の吸収体。
<29>前記吸水性ポリマーの吸収速度(JISK7224−1996)が30秒以下であり、ゲル強度が1000Pa以上である前記<1>〜<28>のいずれか1に記載の吸収体。
<30>前記吸収体の湿潤状態における通液時間が、30秒以内であることが好ましく、10秒以内であることがより好ましい前記前記<1>〜<29>のいずれか1に記載の吸収体。
<31>前記吸収体の湿潤状態における曲げ剛性値が、80gf・cm
2/cm以下であることが好ましく、60gf・cm
2/cm以下であることがより好ましい前記<1>〜<30>のいずれか1に記載の吸収体。
<32>前記吸収体の湿潤状態における曲げ回復性値は、30gf・cm/cm以下であることが好ましく、20gf・cm/cm以下であることがより好ましい前記<1>〜<31>のいずれか1に記載の吸収体。
<33>前記<1>〜<32>のいずれか1に記載の吸収体を用いた吸収性物品。
【実施例】
【0097】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0098】
(実施例1)
(1)第1シートの作製
芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.4dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を坪量30g/m
2となるようカード機からウエブ50として賦形装置に供給した。賦形装置では、多数の突起を有し通気性を有する支持体110の上に上記ウエブ50を定着させた。この支持体110の突起111の平面視におけるMDピッチを8mm、CDピッチを5mmとし、突起111の高さを3mmとした。また支持体110における孔112の孔径を2.8mmとした。
次いで、その支持体110上のウエブ50に第1の熱風W1(温度130℃、風速50m/s)を吹きつけて、支持体110上の突起111にそってウエブ50を賦形した。次に、温度145℃、風速5m/sの第2の熱風W2に切り替えて各芯鞘構造の繊維同士を融着させて賦形形状を固定した。このようにして第1シートを作製した。
このようにして得られた第1シートは、300mm×200mmの大きさの矩形で立体凹凸を有するシートであった。またシート厚み(TS)は3.7mmであった。第1突出部11の繊維密度(r1)は97本/mm
2であり、第2突出部12の繊維密度(r2)は454本/mm
2であった。
(2)第2シートの作製
第2シートも第1シートと同様の製造方法によって作製した。ただし、用いた支持体110として、突起111の平面視におけるMDピッチが8mm、CDピッチが5mm、突起111の高さが3mm、孔112の孔径が2.8mmのものを用いた。
このようにして得られた第2シートは、300mm×200mmの大きさの矩形で立体凹凸を有するシートであった。またシート厚み(TS)は3.7mmであった。第3突出部23の繊維密度(r3)は97本/mm
2であり、第4突出部24の繊維密度(r4)は454本/mm
2であった。
(3)吸収体の作製
上記の第2シートの第3突出部のある面を上面として、吸水性ポリマー((株)日本触媒製、アクアリック)を散布し、内部空間24Kにおける吸水性ポリマーの坪量が60g/m
2となるように充填した。次いで、ホットメルトコーダを用いて第3突出部23の頂部23Kにホットメルト接着剤を塗工し、第3突出部23が第1シート1の内部空間11Kに入り込み、第2シート2の内部空間24kに第1シート1の第2突出部12が入り込むようにして、第1シートを積層し、両シートを接合した。最後に積層された両シートの外周縁部をヒートシールして実施例1の試料1とした。
試料1の吸収体の高さは4.7mmであった。そのうち、ポリマー収納部24Pの高さは0.45mmであった。最大充填可能容積(Vp)に対する吸水性ポリマーの充填率は、33%であった。
【0099】
(実施例2)
吸水性ポリマーの坪量を100g/m
2とし、充填率を56%とした以外は実施例1の試料1と同様にして試料2を作製した。試料2の吸収体の高さは4.6mmであった。そのうち、ポリマー収納部24Pの高さは0.45mmであった。
【0100】
(実施例3)
(1)第1シートの作製
実施例1で用いたものと同様のウエブ50を用いて、支持体110の上に上記ウエブ50を定着させた。この支持体110の突起111の平面視におけるMDピッチを15mm、CDピッチを7.5mmとし、突起111の高さを7.5mmとした。また支持体110における孔112の孔径を3mmとした。
次いで、その支持体110上のウエブ50に第1の熱風W1(温度130℃、風速50m/s)を吹きつけて、支持体110上の突起111にそってウエブ50を賦形した。次に、温度145℃、風速5m/sの第2の熱風W2に切り替えて各芯鞘構造の繊維同士を融着させて賦形形状を固定した。このようにして第1シートを作製した。
このようにして得られた第1シートは、300mm×200mmの大きさの矩形で立体凹凸を有するシートであった。またシート厚み(TS)は6.0mmであった。第1突出部11の繊維密度(r1)は81本/mm
2であり、第2突出部12の繊維密度(r2)は398本/mm
2であった。
(2)第2シートの作製
第2シートも第1シートと同様の製造方法によって作製した。ただし、用いた支持体110として、突起111の平面視におけるMDピッチが15mm、CDピッチが7.5mm、突起111の高さが7.5mm、孔112の孔径が3mmのものを用いた。
このようにして得られた第2シートは、300mm×200mmの大きさの矩形で立体凹凸を有するシートであった。またシート厚み(TS)は6.0mmであった。第3突出部23の繊維密度(r3)は81本/mm
2であり、第4突出部24の繊維密度(r4)は398本/mm
2であった。
(3)吸収体の作製
得られた上記の第1シート及び第2シートを用いて、実施例1と同様の方法にて吸収体の試料3を得た。このとき、吸水性ポリマーの坪量を60g/m
2とし、充填率を11%とした。試料3の吸収体の高さは7.9mmであった。そのうち、ポリマー収納部24Pの高さは1.40mmであった。
【0101】
(実施例4)
(1)第1シートの作製
実施例1で用いたものと同様のウエブ50を用いて、支持体110の上に上記ウエブ50を定着させた。この支持体110の突起111の平面視におけるMDピッチを8mm、CDピッチを5mmとし、突起111の高さを7mmとした。また支持体110における孔112の孔径を2mmとした。
次いで、その支持体110上のウエブ50に第1の熱風W1(温度130℃、風速50m/s)を吹きつけて、支持体110上の突起111にそってウエブ50を賦形した。次に、温度145℃、風速5m/sの第2の熱風W2に切り替えて各芯鞘構造の繊維同士を融着させて賦形形状を固定した。このようにして第1シートを作製した。
このようにして得られた第1シートは、300mm×200mmの大きさの矩形で立体凹凸を有するシートであった。またシート厚み(TS)は2.2mmであった。第1突出部11の繊維密度(r1)は105本/mm
2であり、第2突出部12の繊維密度(r2)は286本/mm
2であった。
(2)第2シートの作製
第2シートも第1シートと同様の製造方法によって作製した。ただし、用いた支持体110として、突起111の平面視におけるMDピッチが8mm、CDピッチが5mm、突起111の高さが3mm、孔112の孔径が2.8mmのものを用いた。
このようにして得られた第2シートは、300mm×200mmの大きさの矩形で立体凹凸を有するシートであった。またシート厚み(TS)は3.7mmであった。第3突出部23の繊維密度(r3)は97本/mm
2であり、第4突出部24の繊維密度(r4)は454本/mm
2であった。
(3)吸収体の作製
得られた上記の第1シート及び第2シートを用いて、実施例1と同様の方法にて吸収体の試料3を得た。このとき、吸水性ポリマーの坪量を100g/m
2とし、充填率を16%とした。試料3の吸収体の高さは4.6mmであった。そのうち、ポリマー収納部24Pの高さは1.8mmであった。
【0102】
(比較例1)
比較例1は、前記特許文献2の明細書の記載に基づき、
図4に示された吸収層を2つ作製し、これらを
図7Bに示された形態となるよう組み合わせて試料C1とした。
具体的には、第1吸収層として、不織布(fibertex社スパンボンドをMD10mm、CD8mmで凹凸エンボス)からなる基材(10cm×10cm)の一面側に、吸水性ポリマー((株)日本触媒製、アクアリック)をエンボス部の大きさの塊として配置して円形のランド領域を形成し、該ランド領域を間隔を開けて縦横に配置した。その上に熱可塑接着材料(ホットメルトコータを用いてホットメルト接着剤を塗工)を一面塗布し、さらにフラット不織布(支持体を用いずに実施例3と同じ条件で作成された不織布)からなる被覆層を被せて一体化させた。前記ランド領域とランド領域との間が接合領域となった。さらに第1吸収層と同じものをもう一つ作製し第2吸収層とした。
次いで、第1吸収層と第2吸収層のランド領域の配された凹凸面をそれぞれ対向させ、凹凸グリッドパターンを致該にオフセットさせて組み合わせ、吸収性コアの試料C1とした。
作製された試料C1は、両面が平坦で、実施例の両面凹凸形状とは異なる。そのため、各突出部の繊維密度の測定はできないが、各吸収層の基材及び被覆層で用いた不織布の繊維密度を測定した。その結果は次のとおりであった。第1吸収層の基材の繊維密度は111本/mm
2であり、被覆層のランド領域における繊維密度は70本/mm
2であった。第2吸収層の基材の繊維密度は112本/mm
2であり、被覆層のランド領域における繊維密度は69本/mm
2であった。
また試料C1は、ランド領域における吸収性粒子状ポリマーの坪量が100g/mm
2であり、ランド領域の充填率100%で間隙はなかった。
【0103】
(比較例2)
比較例2は、前記特許文献1の例1記載の方法により、試料C2を作製した。
具体的には、不織布(fibertex社スパンボンドをMD10mm、CD8mmで凹凸エンボス)からなる基材(10cm×10cm)の一面側に、熱可塑接着材料(ホットメルトコータを用いてホットメルト接着剤を塗工)を一面塗布し、その上に吸水性ポリマー((株)日本触媒製、アクアリック)を一様散布し、さらに不織布(fibertex社スパンボンドをMD10mm、CD8mmで凹凸エンボス)からなる基材(10cm×10cm)を被せて一体化させた。
試料C2では、ティシュの4プライを使用してティッシュ層間の3個の界面それぞれに超吸収性重合体粒子を実質上一様に散布したものであった。これは実施例の2層構造とは異なるものの、次のようにして各突出部の繊維密度を測定した。両面凹凸のうち、一方の面を第1面側と決め、その第1面側にある最外層を第1シートとみなして、第1突出部及び第2突出部の繊維密度を測定した。第1突出部の繊維密度は70本/mm
2であり、第2突出部の繊維密度は68本/mm
2であった。また第1面と反対側の面を第2面側とし、第2面側の最外層を第2シートとみなして、第1突出部に対応する第3突出部、第2突出部に対応する第4突出部の繊維密度を測定した。第3突出部の繊維密度は71本/mm
2であり、第4突出の繊維密度は68本/mm
2であった。なお、超吸収性重合体粒子は3個の界面にそれぞれ一様に散布され、実施形態の集合体及び間隙部を形成するものではないため、超吸収性重合体粒子の坪量及び充填率の測定は行わなかった。
【0104】
上記の実施例1〜4及び比較例1,2の試料について、吸水後の通液性(湿潤状態における通液時間)、吸水後の平均曲げ剛性及び曲げヒステリシスを測定した。これらの測定は、前述の(通液時間の測定方法)、(湿潤状態での曲げ剛性の測定方法)及び(湿潤状態での曲げ回復性(曲げヒステリシス)の測定方法)で示した測定方法により行った。
【0105】
上記各評価項目についての測定結果および評価結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
上記の結果からあきらかなように、実施例1〜4の試料は、比較例と比べて格段に優れた(湿潤状態における)通液性をしめした。またこの試験において、実施例1〜4の試料では、吸水性ポリマーの膨潤による型崩れはみられず、さらに吸収体内で吸水性ポリマーの吸水膨潤があった。
また、湿潤状態での曲げ剛性及び曲げ回復性(ヒステリシス)については、比較例1及び2がいずれも測定不能(曲げ剛性250gf・cm
2/cm以上、曲げヒステリシス50gf・cm/cm以上)となってしまった。この比較例1及び2の測定不能は、測定に用いた測定機の曲げ加重の最大値を超えてしまったことによるものであり、曲げ剛性が高く、硬いということを示す。これに対し、実施例1〜4の試料は格段に低い数値を示し、吸水性ポリマーの膨潤後でも優れた柔軟性と、これによる身体追従性が高いことを示した。
以上のことから、本発明の吸収体は、吸水性ポリマーの膨潤性を阻害せず、該吸水性ポリマーの膨潤状態でも液通液性と柔軟性とを保持するものであることが分かった。