特許第5972783号(P5972783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972783
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】多板式クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/70 20060101AFI20160804BHJP
   F16D 13/62 20060101ALI20160804BHJP
   F16D 25/0638 20060101ALI20160804BHJP
   F16D 25/064 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   F16D13/70 A
   F16D13/62 A
   F16D25/0638
   F16D25/064
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-286016(P2012-286016)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-126201(P2014-126201A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直記
(72)【発明者】
【氏名】大石 栄幸
(72)【発明者】
【氏名】古橋 慎二
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−229765(JP,A)
【文献】 特開2011−174597(JP,A)
【文献】 特開2001−234946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/70
F16D 13/62
F16D 25/0638
F16D 25/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側の入力系と連結される略円環状の複数のクラッチディスクと、
該クラッチディスクと交互に重ね合わされて積層されるとともに、車輪側の出力系と連結される略円環状の複数のクラッチプレートと、
前記クラッチディスクのクラッチプレートと対向した面に沿って形成され、当該クラッチプレートと圧接又は離間可能な摩擦材と、
を具備し、前記クラッチディスクとクラッチプレートとが前記摩擦材を介して圧接することでエンジン側と車輪側との間で動力が伝達されるとともに、当該圧接力が解放されることで当該動力の伝達を遮断し得る多板式クラッチ装置において、
前記クラッチプレートは、その外縁部から内側に向かって切り欠かれた凹部が形成されるとともに、前記クラッチディスクが重ね合わされた状態で、当該凹部の形成範囲内に前記摩擦材の一部が位置することを特徴とする多板式クラッチ装置。
【請求項2】
前記凹部は、曲線状に切り欠かれた形状から成ることを特徴とする請求項1記載の多板式クラッチ装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記クラッチプレートの外縁部全周に亘って等間隔に複数形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の多板式クラッチ装置。
【請求項4】
前記摩擦材は、前記クラッチディスクのクラッチプレートと対向した面に沿って所定寸法離間しつつ固着された複数の矩形状部材から成り、これら摩擦材の離間部にてクラッチディスクとクラッチプレートとの間のオイルを排出可能とされたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の多板式クラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチディスクとクラッチプレートとが摩擦材を介して圧接することでエンジン側と車輪側との間で動力が伝達されるとともに、当該圧接力が解放されることで当該動力の伝達を遮断し得る多板式クラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動二輪車などの車両が具備する多板式クラッチ装置は、エンジンの駆動力のミッション及び駆動輪への伝達又は遮断を任意に行わせるためのもので、エンジン側の入力系と連結される略円環状の複数のクラッチディスクと、該クラッチディスクと交互に重ね合わされて積層されるとともに車輪(駆動輪)側の出力系と連結される略円環状の複数のクラッチプレートとを有している。また、クラッチディスクのクラッチプレートと対向した表面には、コルク材などから成る摩擦材が固着されており、クラッチディスクとクラッチプレートとが摩擦材を介して圧接することでエンジン側と車輪側との間で動力が伝達されるとともに、当該圧接力が解放されることで当該動力の伝達を遮断し得るよう構成されていた。
【0003】
従来の多板式クラッチ装置においては、例えば特許文献1にて開示されているように、摩擦材が固着された部位にクラッチディスクの径方向に延びる溝部を形成するものが提案されている。かかる従来技術によれば、クラッチディスクとクラッチプレートとが相対回転する際、溝部を介して内部のオイルを外部へ排出させることができるので、クラッチディスクとクラッチプレートとを離間(圧接力の解放)させてクラッチオフした際に当該クラッチディスクとクラッチプレートとの間に残留したオイルの粘性抵抗によって生じてしまう引摺りトルクを低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−146018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の多板式クラッチ装置においては、摩擦材の固着部位に形成された溝部にて内部のオイルを外部に排出させて引摺りトルクをある程度低減させ得るものの、引摺りトルクの更なる低減を図るには、クラッチディスクとクラッチプレートとの間のオイルの排出効果を更に向上させる必要があった。また、引摺りトルクの低減に加え、クラッチディスクとクラッチプレートとが相対回転する直前のトルクである張り付きトルクの低減や多板式クラッチ装置の軽量化も同時に図りたいというニーズが高まりつつあり、本出願人は、当該ニーズに応えるべく鋭意検討するに至った。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、引摺りトルク及び張り付きトルクをより低減させることができるとともに、装置の軽量化を同時に図ることができる多板式クラッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、エンジン側の入力系と連結される略円環状の複数のクラッチディスクと、該クラッチディスクと交互に重ね合わされて積層されるとともに、車輪側の出力系と連結される略円環状の複数のクラッチプレートと、前記クラッチディスクのクラッチプレートと対向した面に沿って形成され、当該クラッチプレートと圧接又は離間可能な摩擦材とを具備し、前記クラッチディスクとクラッチプレートとが前記摩擦材を介して圧接することでエンジン側と車輪側との間で動力が伝達されるとともに、当該圧接力が解放されることで当該動力の伝達を遮断し得る多板式クラッチ装置において、前記クラッチプレートは、その外縁部から内側に向かって切り欠かれた凹部が形成されるとともに、前記クラッチディスクが重ね合わされた状態で、当該凹部の形成範囲内に前記摩擦材の一部が位置することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の多板式クラッチ装置において、前記凹部は、曲線状に切り欠かれた形状から成ることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の多板式クラッチ装置において、前記凹部は、前記クラッチプレートの外縁部全周に亘って等間隔に複数形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の多板式クラッチ装置において、前記摩擦材は、前記クラッチディスクのクラッチプレートと対向した面に沿って所定寸法離間しつつ固着された複数の矩形状部材から成り、これら摩擦材の離間部にてクラッチディスクとクラッチプレートとの間のオイルを排出可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、クラッチプレートは、その外縁部から内側に向かって切り欠かれた凹部が形成されるとともに、クラッチディスクが重ね合わされた状態で、当該凹部の形成範囲内に摩擦材の一部が位置するので、引摺りトルク及び張り付きトルクをより低減させることができるとともに、装置の軽量化を同時に図ることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、凹部は、曲線状に切り欠かれた形状から成るので、クラッチディスクとクラッチプレートとが相対回転する際、凹部の輪郭縁部に摩擦材が引っ掛かってしまうのを防止することができ、円滑な相対回転を行わせることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、凹部は、クラッチプレートの外縁部全周に亘って等間隔に複数形成されたので、クラッチディスクとクラッチプレートとの間のオイルをより多く外部に排出させることができるとともに、クラッチプレートの周方向の重量バランスを良好に維持することで、当該クラッチプレートを安定して回転させることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、摩擦材は、クラッチディスクのクラッチプレートと対向した面に沿って所定寸法離間しつつ固着された複数の矩形状部材から成り、これら摩擦材の離間部にてクラッチディスクとクラッチプレートとの間のオイルを排出可能とされたので、凹部によるオイルの排出効果と併せて当該クラッチディスクとクラッチプレートとの間のオイルをより多く外部に排出させることができ、引摺りトルク及び張り付きトルクをより一層低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る多板式クラッチ装置を示す縦断面図
図2】同多板式クラッチ装置におけるクラッチディスクを示す平面図
図3】同多板式クラッチ装置におけるクラッチプレートを示す平面図
図4】同多板式クラッチ装置におけるクラッチディスクとクラッチプレートとを重ね合わせた状態を示す平面図
図5】同多板式クラッチ装置における技術的優位性を示す実験結果を示すグラフ
図6】本発明の他の実施形態に係る多板式クラッチ装置におけるクラッチプレートを示す平面図
図7】同多板式クラッチ装置におけるクラッチディスクとクラッチプレートとを重ね合わせた状態を示す平面図
図8】本発明の更に他の実施形態に係る多板式クラッチ装置におけるクラッチプレートを示す平面図
図9】同多板式クラッチ装置におけるクラッチディスクとクラッチプレートとを重ね合わせた状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る多板式クラッチ装置は、二輪車等の車両に配設されて任意にエンジンやミッションの駆動力を車輪(駆動輪)側へ伝達し又は遮断するためのもので、図1に示すように、ギア1が形成されてエンジン側の入力系を構成するクラッチハウジング2と、シャフト3と連結されて車輪側の出力系を構成するクラッチ部材4と、該クラッチ部材4の同図中右端側に取り付けられたプレッシャ5と、クラッチハウジング2側に連結されたクラッチディスク6及びクラッチ部材4側に連結されたクラッチプレート7とから主に構成されている。
【0017】
ギア1は、エンジンから伝達された駆動力(回転力)が入力されるとシャフト3を中心として回転可能とされたもので、リベット8等によりクラッチハウジング2と連結されている。該クラッチハウジング2は、同図右端側が開口した円筒状のケース部材から成り、その内周壁には複数のクラッチディスク6が形成されている。かかるクラッチディスク6のそれぞれは、図2に示すように、略円環状に形成された金属製の板材から成るとともに、外周部に複数の凸部6aが形成されており、かかる凸部6aを介してクラッチハウジング2とスプライン嵌合されるよう構成されている。これにより、クラッチディスク6は、クラッチハウジング2と共に回転可能とされるとともに、その回転軸方向(図1の左右方向)に対する摺動が許容されている。
【0018】
クラッチ部材4は、クラッチハウジング2内に配設された同図中右端側が開口した円筒状のケース部材から成るものである。かかるクラッチ部材4の略中央にはシャフト3が貫通しつつスプライン嵌合により連結されており、クラッチ部材4が回転するとシャフト3も回転するよう構成されている。また、クラッチ部材4の外周壁には、その回転軸方向(図1中左右方向)に延びるスプラインが形成されており、該スプラインにクラッチプレート7が嵌め込まれて形成されている。
【0019】
かかるクラッチプレート7は、クラッチディスク6と交互に重ね合わされて積層形成されており、隣接するもの同士が圧接又は離間可能なようになっている。かかるクラッチプレート7のそれぞれは、図3に示すように、クラッチディスク6に対応して略円環状に形成された金属製の板材から成るとともに、内周部に複数の凸部7aが形成されており、かかる凸部7aを介してクラッチ部材4とスプライン嵌合されるよう構成されている。これにより、クラッチプレート7は、クラッチ部材4と共に回転可能とされるとともに、その回転軸方向(図1の左右方向)に対する摺動が許容されている。
【0020】
すなわち、クラッチディスク6及びクラッチプレート7は、クラッチハウジング2及びクラッチ部材4の回転軸方向への摺動が許容されており、プレッシャ5にて同図中左方向へ押圧されると圧接され、クラッチハウジング2の回転力がクラッチ部材4及びシャフト3に伝達される状態となり、プレッシャ5による押圧を解除すると互いに離間して圧接力が解かれ、クラッチ部材4がクラッチハウジング2の回転に追従しなくなって停止することで、シャフト3への回転力の伝達がなされなくなるのである。
【0021】
さらに、クラッチディスク6のクラッチプレート7と対向した面(表裏面)には、図2に示すように、コルク材等の摩擦抵抗が大きな摩擦材10が固着されている。本実施形態に係る摩擦材10は、クラッチディスク6のクラッチプレート7と対向した面に沿って所定寸法離間しつつ接着剤等で固着された複数の矩形状部材から成り、これら摩擦材10の離間部にてクラッチディスク6とクラッチプレート7との間のオイルを排出可能とされている。しかして、クラッチディスク6とクラッチプレート7とが摩擦材10を介して圧接することでエンジン側と車輪側との間で動力が伝達されるとともに、これらクラッチディスク6とクラッチプレート7とが離間して当該圧接力が解放されることで当該動力の伝達を遮断し得るようになっている。
【0022】
なお、本発明でいうクラッチディスク6とクラッチプレート7の離間とは、これらクラッチディスク6とクラッチプレート7の間にクリアランスを生じた状態である必要はなく、物理的なクリアランスが生じていなくても、圧接力が解除されてクラッチ部材4がクラッチハウジング2の回転に追従しなくなった状態(即ち、クラッチディスク6がクラッチプレート7上を摺動する状態)をも含むものとする。
【0023】
プレッシャ5は、クラッチ部材4の開口(同図中右端)を塞ぐ如く略円板状に形成されたもので、クラッチスプリングSにより同図中左方向へ常時付勢されている。即ち、クラッチ部材4にはプレッシャ5側へ延びて貫通したボス部4bが形成されており、該ボス部4bにクラッチボルトBを挿通させるとともに、かかるクラッチボルトBの頭部側とプレッシャ5との間にクラッチスプリングSを介装することにより、当該プレッシャ5が常時左方向へ付勢されているのである。
【0024】
さらに、プレッシャ5の縁部5aは、クラッチディスク6及びクラッチプレート7が積層された同図中最右部と当接しており、クラッチスプリングSの付勢力によりこれらクラッチディスク6とクラッチプレート7とが圧接するようになっている。かかる構成により、クラッチハウジング2とクラッチ部材4とは常時連結された状態となっており、ギア1に回転力が入力されるとシャフト3を回転させ得るようになっている。
【0025】
一方、シャフト3の内部には、その軸方向に延びるプッシュロッド9が配設されており、運転者が図示しない操作手段を操作することにより当該プッシュロッド9を同図中右方向へ突出させ、プレッシャ5をクラッチスプリングSの付勢力に抗して右方向へ移動させることができるようになっている。プレッシャ5が右方向へ移動すると、クラッチディスク6とクラッチプレート7との圧接力が解かれ、離間状態となってギア1及びクラッチハウジング2へ入力された回転力がクラッチ部材4及びシャフト3へ伝達されず遮断されることとなる。すなわち、プレッシャ5は、クラッチ部材4に対する軸方向への移動に伴いクラッチディスク6とクラッチプレート7とを圧接又は離間させることができるよう構成されているのである。
【0026】
なお、プレッシャ5のクラッチ部材4に対する回転を規制するために、当該プレッシャ5にはストッパ部5bが突出形成されている。かかるストッパ部5bは、プレッシャ5から同図中左側へ延び、且つ、当該プレッシャ5と一体的に形成された略凸形状から成り、クラッチ部材4の内周壁に形成された凹部4aに嵌り込んでプレッシャ5のクラッチ部材4に対する回転を規制する回り止めとして機能するものである。
【0027】
ここで、本実施形態に係るクラッチプレート7は、図3、4に示すように、その外縁部から内側に向かって切り欠かれた凹部11が形成されるとともに、クラッチディスク6が重ね合わされた状態(図4参照)で、当該凹部11の形成範囲内に摩擦材10の一部が位置する(同図においては、凹部11を介して摩擦材10を臨ませ得る)よう構成されている。なお、本実施形態に係るクラッチプレート7は、金属製板材(ブランク材)を図3の如き形状に抜き加工することで得られたものとされている。
【0028】
これにより、凹部11が形成された部位であってクラッチプレート7の表裏面にそれぞれ重なり合ったクラッチディスク6の間には、摩擦材10の一部を含んだ比較的大きな空間が形成されることとなり、かかる空間を介してクラッチディスク6とクラッチプレート7との間のオイルを外部に排出可能とされている。したがって、クラッチディスク6とクラッチプレート7とが相対回転する直前、及び相対回転した状態において、凹部11が形成された空間を介して、より多くのオイルを外部に排出することができるので、引摺りトルク及び張り付きトルクをより低減させることができる。加えて、凹部11は、クラッチプレート7の外縁部から内側に向かって切り欠かれた部位から成るので、その切り欠かれた分だけ重量を低減させることができ、多板式クラッチ装置の軽量化を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態に係る凹部11は、曲線状(種々曲率の曲線を滑らか且つ連続的に接続させた形状)に切り欠かれた形状(クラッチプレート7の平面視の形状)から成るものとされている。これにより、クラッチディスク6とクラッチプレート7とが相対回転する際、凹部11の輪郭縁部に摩擦材10が引っ掛かってしまうのを防止することができ、円滑な相対回転を行わせることができる。
【0030】
またさらに、本実施形態に係る凹部11は、クラッチプレート7の外縁部全周に亘って等間隔に複数(本実施形態においては6つ)形成されている。これにより、クラッチディスク6とクラッチプレート7との間のオイルをより多く外部に排出させることができるとともに、クラッチプレート7の周方向の重量バランスを良好に維持することで、当該クラッチプレート7を安定して回転させることができる。加えて、複数の凹部11を形成することで、その切り欠かれた総量分だけ重量を低減させることができ、多板式クラッチ装置の更なる軽量化を図ることができる。
【0031】
次に、本実施形態に係る多板式クラッチ装置の技術的優位性を証明するための実験結果について説明する。
上記の実施形態の如き凹部11が周方向に複数形成されたクラッチプレートを実施例とするとともに、当該凹部11が一切形成されず、略円環状のクラッチプレートを比較例として用意した。そして、実施例及び比較例に係るクラッチプレートに対してそれぞれクラッチディスクと重ね合わせて圧接させ、一体的に回転させた後、当該圧接力を解放することでクラッチプレートとクラッチディスクとを相対回転させた。
【0032】
しかるに、圧接力を解放した時点(すなわち、クラッチディスクとクラッチプレートとが相対回転する直前)からの経過時間を横軸、クラッチディスクとクラッチプレートとの間のトルクを縦軸として、プロットしたところ、図5のグラフの如き結果が得られた。かかるグラフから分かるように、経過時間0(sec)におけるトルク(張り付きトルク)、及びその後の所定経過時間のトルク(引摺りトルク)は、何れも実施例の方が比較例よりも低かった。これは、実施例のクラッチプレートに凹部11が形成されており、その凹部11により形成された隣り合うクラッチディスクの間の比較的大きな空間によって、クラッチディスク6とクラッチプレート7との間のオイルを比較例のものより多く外部に排出することが可能とされていることが原因であると推測できる。
【0033】
上記のように、本実施形態によれば、クラッチプレート7は、その外縁部から内側に向かって切り欠かれた凹部11が形成されるとともに、クラッチディスク6が重ね合わされた状態で、当該凹部11の形成範囲内に摩擦材10の一部が位置するので、引摺りトルク及び張り付きトルクをより低減させることができるとともに、多板式クラッチ装置の軽量化を同時に図ることができる。
【0034】
特に、本実施形態に係る摩擦材10は、クラッチディスク6のクラッチプレート7と対向した面に沿って所定寸法離間しつつ固着された複数の矩形状部材から成り、これら摩擦材10の離間部にてクラッチディスク6とクラッチプレート7との間のオイルを排出可能とされたので、凹部11によるオイルの排出効果と併せて当該クラッチディスク6とクラッチプレート7との間のオイルをより多く外部に排出させることができ、引摺りトルク及び張り付きトルクをより一層低減させることができる。
【0035】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、クラッチプレート7に形成される凹部11について、他の形態のものとしてもよい。例えば、図6、7に示すように、クラッチプレート7の外縁部に略円弧状に形成された凹部12を形成し、クラッチディスク6が重ね合わされた状態で、当該凹部12の形成範囲内に摩擦材10の一部が位置するもの、又は図8、9に示すように、クラッチプレート7の外縁部に互いに異なる曲率の曲線から成る複数の凹部a〜fを形成し、クラッチディスク6が重ね合わされた状態で、当該凹部a〜fのそれぞれの形成範囲内に摩擦材10の一部が位置するもの等としてもよい。
【0036】
また、クラッチプレート7に形成された凹部11、12、a〜fは、何れも曲線状に切り欠かれた形状から成るものであるが、これに代えて、矩形状に切り欠かれたもの等、他の形状としてもよい。またさらに、本実施形態に係る凹部11は、クラッチプレート7の外縁部全周に亘って等間隔に6つ形成されているが、1〜5つ、或いは7つ以上形成するものであってもよく、複数の場合は、等間隔に形成されたものに限定されない。
【0037】
なお、本実施形態に係る摩擦材10は、矩形状部材をクラッチディスク6のクラッチプレート7と対向した面に沿って所定寸法離間しつつ固着されたものとされているが、円環状部材を固着したもの、或いはコルク材とは異なる他の材質から成るもの等であってもよい。また、本発明の多板式クラッチ装置は、二輪車の他、自動車、3輪又は4輪バギー、或いは汎用機等種々の多板のクラッチ型のものに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
外縁部から内側に向かって切り欠かれた凹部が形成されるとともに、クラッチディスクが重ね合わされた状態で、当該凹部の形成範囲内に摩擦材の一部が位置するクラッチプレートを具備した多板式クラッチ装置であれば、外観形状が異なるもの、或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ギア
2 クラッチハウジング
3 シャフト
4 クラッチ部材
4a 凹部
5 プレッシャ
5b ストッパ部
6 クラッチディスク
7 クラッチプレート
8 リベット
9 プッシュロッド
10 摩擦材
11、12 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9