(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972815
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】石炭ミル
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
B02C15/04
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-58397(P2013-58397)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-180650(P2014-180650A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】正田 功彦
(72)【発明者】
【氏名】亀山 達也
(72)【発明者】
【氏名】中馬 康晴
(72)【発明者】
【氏名】大丸 卓一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 次男
(72)【発明者】
【氏名】有馬 謙一
(72)【発明者】
【氏名】松本 慎治
(72)【発明者】
【氏名】西浦 謙佑
【審査官】
大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−248473(JP,A)
【文献】
特開2000−126631(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0327094(US,A1)
【文献】
実開昭52−128257(JP,U)
【文献】
特開平07−039773(JP,A)
【文献】
実開昭50−119891(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪軸シャフトに取り付けられて回転する粉砕テーブルと、
該粉砕テーブルに落下した石炭に噛み込み、自らも転動して石炭を粉砕する複数のローラとを備えた石炭ミルにおいて、
前記石炭から前記ローラに加わる反力に抗して、前記ローラをバネ部材を介して弾性的に支持するバネ式支持機構と、
前記バネ式支持機構に発生した振動荷重を減衰させる減衰機構とを備え、
前記バネ式支持機構は、
前記ローラに加わる反力が軸方向に伝達されるスタッドと、
前記スタッドを弾性的に支持するバネ部材とで構成され、
前記減衰機構は、前記スタッドと摺接し、前記スタッドの動きを摩擦抵抗により減衰させる摩擦部材で構成され、
前記バネ部材は、前記スタッドの外周面を囲むように配置され、前記スタッドの外周面に一体に形成された拡径部に一端が当接し、他端が固定部材に当接したコイルバネで構成され、
前記摩擦部材は、端部が前記スタッドの端面に軸方向に形成された凹部に挿入され、該凹部の内面に摺接すると共に、他端が前記固定部材に固定された摩擦板で構成されていることを特徴とする石炭ミル。
【請求項2】
竪軸シャフトに取り付けられて回転する粉砕テーブルと、
該粉砕テーブルに落下した石炭に噛み込み、自らも転動して石炭を粉砕する複数のローラとを備えた石炭ミルにおいて、
前記石炭から前記ローラに加わる反力に抗して、前記ローラをバネ部材を介して弾性的に支持するバネ式支持機構と、
前記バネ式支持機構に発生した振動荷重を減衰させる減衰機構とを備え、
前記バネ式支持機構は、
前記ローラに加わる反力が軸方向に伝達されるスタッドと、
前記スタッドを弾性的に支持するバネ部材とで構成され、
前記減衰機構は、前記スタッドと摺接し、前記スタッドの動きを摩擦抵抗により減衰させる摩擦部材と、前記スタッドと同一軸線上に配置されたショックアブソーバとで構成され、
前記バネ部材は、前記スタッドの外周面を囲むように配置され、前記スタッドの外周面に一体に形成された拡径部に一端が当接し、他端が固定部材に当接したコイルバネで構成され、
前記摩擦部材は、端部が前記スタッドの端面に軸方向に形成された凹部に挿入され、該凹部の内面に摺接すると共に、他端が前記ショックアブソーバのピストンロッドと同一軸方向に結合した摩擦板で構成されていることを特徴とする石炭ミル。
【請求項3】
前記固定部材は、ハウジングに固定され、内部に被圧縮性液体が封入された前記ショックアブソーバを構成するシリンダであり、
前記ピストンロッドは、前記シリンダの内部に摺動可能に配置され、前記被圧縮性液体が流通する貫通孔を有するピストンを有していることを特徴とする請求項2に記載の石炭ミル。
【請求項4】
前記摩擦板は、前記凹部と相対位置が前記凹部に対して進退方向に調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭ミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭粉砕時に石炭から反力を受けるローラをバネ式支持機構で支持する石炭ミルに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚きボイラなどに微粉炭を供給するため、石炭を粉砕する石炭ミルが用いられている。石炭ミルは、竪軸シャフトに取り付けられて回転する粉砕テーブルと、粉砕テーブルに落下した石炭に噛み込み、石炭や粉砕テーブルとの摩擦力で自らも転動して石炭を粉砕する複数のローラとを備えている。
ローラは石炭粉砕時に石炭から反力を受けため、ローラをミル本体に弾性的に支持する必要がある。現状、ローラの支持機構として、バネ式支持機構と油圧式支持機構とが採用されている。
【0003】
図7(A)にバネ式支持機構を、
図7(B)に、油圧式支持機構を模式的に示している。
図7(A)において、粉砕テーブル100の上面にローラ102が載置されている。ローラ102の回転軸104は支点106に回動可能に支持されている。ローラ102は、自重により発生する粉砕テーブル100の上面との摩擦で自ら転動しながら、粉砕テーブル100の上面に落下した石炭cを自重で押し潰しで粉砕する。回転軸104は、アーム108を介してハウジングの隔壁112に固定されたバネ式支持機構110に接続されている。
図7(B)においては、アーム108は、ハウジングの隔壁112に固定された油圧式支持機構114のピストンロッド114aに接続されている。
【0004】
油圧式支持機構は、バネ式支持機構と比べて減衰機能が優れているが、反面、高コストとなるという問題がある。一方、バネ式支持機構は、油圧式支持機構と比べて、低コストである反面、油圧式支持機構より減衰機能が劣っている。そのため、石炭粉砕時、ローラが石炭で形成された凸部を通過した時に生じる過度振動が低減せず、振動荷重が大きくなるという問題がある。
図8に、ローラが石炭で形成された凸部を通過した時に生じる過度振動曲線を示す。図中、曲線Aがバネ式支持機構で生じた過度振動であり、曲線Bが油圧式支持機構で生じた過度振動である。
【0005】
特許文献1には、バネ式支持機構を備えた石炭ミルが開示されている。このバネ式支持機構は、ローラが石炭から受ける反力をコイルバネを介して丸棒状の与圧スタッドで弾性的に受けるものである。また、与圧スタッドの外周面に螺合したナットを有し、該ナットにコイルバネの一端が当接されている。与圧スタッドを回動させ、ナットを与圧スタッドの軸方向に移動させることで、与圧スタッドに付加されるコイルバネの弾性力を調整可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2011−524251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたバネ式支持機構には、減衰機構が設けられていない。前述のように、バネ式支持機構は、油圧式支持機構と比べて、低コストであるが、反面、油圧式支持機構と比べて減衰機能が劣っている。そのため、石炭粉砕時に生じる過度振動が低減せず、振動荷重が大きくなるという問題がある。また、振動荷重が低減しないため、石炭ミルの耐久性及び信頼性を損なうおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、ローラをバネ式支持機構で支持する石炭ミルにおいて、石炭粉砕時に生じる過度振動を減衰可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の石炭粉砕ミルは、石炭からローラに加わる反力に抗して、ローラをバネ部材を介して弾性的に支持するバネ式支持機構と、バネ式支持機構に発生した振動荷重を減衰させる減衰機構とを備えている。このように、減衰機構を設けたことで、発生した振動荷重を低減させることができる。そのため、油圧式支持機構と同等の減衰機能を有し、かつ油圧式支持機構より低コストな支持機構を実現できる。
【0010】
さらに、本発明は、バネ式支持機構を、ローラに加わる反力が軸方向に伝達される棒状のスタッドと,このスタッドを弾性的に支持するバネ部材とで構成すると共に、減衰機構は、スタッドと摺接し、スタッドの動きを摩擦抵抗により減衰させる摩擦部材で構成
する。これによって、バネ式支持機構及び減衰機構を、共に簡素化かつ低コスト化できる。
【0011】
さらに、
本発明は、スタッドの外周面を囲むように配置され、スタッドの外周面に一体に形成された拡径部に一端が当接し、他端が固定部材に当接したコイルバネで構成
する。また、これに対する摩擦部材は、端部がピストンロッドの端面に軸方向に形成された凹部に挿入され、この凹部の内面に摺接すると共に、他端が固定部材に固定された摩擦板で構成
する。これによって、バネ式支持機構及び減衰機構をさらに低コスト化できる。
凹部と摩擦板との間に働く摩擦力(摩擦抵抗)は、両者間で形成される摺動面積、クリアランス、又は凹部又は摩擦板の表面粗さ又は硬度等で決まる。従って、これらのファクタを調整することで、減衰機構の減衰機能を調整できる。
【0012】
本発明の一態様として、バネ式支持機構を、ローラに加わる反力が軸方向に伝達されるスタッドと,スタッドを弾性的に支持するバネ部材とで構成すると共に、減衰機構を、ハウジングに固定され、内部に被圧縮性液体が封入されたシリンダと、シリンダの内部を貫通するピストンロッドと、このピストンロッドと一体に形成され、シリンダの内部空間を二分すると共に、被圧縮性液体が流通する貫通孔を有するピストンとで構成する。そして、スタッドとピストンロッドとを同一軸方向に結合するようにする。
【0013】
前記構成の減衰機構は、従来、ショックアブソーバ又はシリンダ・ダンパと称されるものと同等の構成を有するものである。かかる構成の減衰機構を用いることで、優れた減衰効果を得ることができる。
【0014】
また、前記バネ部材は、スタッドの外周面に形成された拡径部に一端が当接し、他端がシリンダの端面に当接されたコイルバネで構成することができる。これによって、バネ式支持機構を簡素化かつ低コスト化できる。
【0015】
また、本発明は、竪軸シャフトに取り付けられて回転する粉砕テーブルと、該粉砕テーブルに落下した石炭に噛み込み、自らも転動して石炭を粉砕する複数のローラとを備えた石炭ミルにおいて、前記石炭から前記ローラに加わる反力に抗して、前記ローラをバネ部材を介して弾性的に支持するバネ式支持機構と、前記バネ式支持機構に発生した振動荷重を減衰させる減衰機構とを備え、前記バネ式支持機構は、前記ローラに加わる反力が軸方向に伝達されるスタッドと、前記スタッドを弾性的に支持するバネ部材とで構成され、前記減衰機構は、前記スタッドと摺接し、前記スタッドの動きを摩擦抵抗により減衰させる摩擦部材と、前記スタッドと同一軸線上に配置されたショックアブソーバとで構成され、前記バネ部材は、前記スタッドの外周面を囲むように配置され、前記スタッドの外周面に一体に形成された拡径部に一端が当接し、他端が固定部材に当接したコイルバネで構成され、前記摩擦部材は、端部が前記スタッドの端面に軸方向に形成された凹部に挿入され、該凹部の内面に摺接すると共に、他端が前記ショックアブソーバのピストンロッドと同一軸方向に結合した摩擦板で構成されていることを特徴とする。
また、一態様では、前記固定部材は、ハウジングに固定され、内部に被圧縮性液体が封入された前記ショックアブソーバを構成するシリンダであり、前記ピストンロッドは、前記シリンダの内部に摺動可能に配置され、前記被圧縮性液体が流通する貫通孔を有するピストンを有している。
バネ式支持機構として、前記ピストンロッド及び前記コイルバネで構成されたバネ式支持機構を用いる。そして、減衰機構として、ショックアブソーバ又はシリンダ・ダンパと称される前記構成の減衰機構を用いる。そして、ピストンロッドの端面に軸方向に形成された凹部に挿入され、該凹部の内面に摺接する摩擦板をピストンロッドと同一軸方向に結合してなるものである。この態様では、コイルバネの他端はシリンダの端面に当接され支持される。
これによって、凹部と摩擦板間の摩擦抵抗で生まれる減衰効果と、ショックアブソーバ又はシリンダ・ダンパ式の減衰機構から生まれる減衰効果との相乗効果で大きな減衰効果を得ることができる。
【0016】
さらに、摩擦板は、凹部に対する相対位置が凹部に対して進退方向に調整可能に構成することができる。これによって、減衰機能の調整が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ローラを支持するバネ式支持機構に減衰機構を設けたことで、バネ式支持機構に発生した振動荷重を低減でき、低コストで、石炭ミルの信頼性及び耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る石炭ミルの全体構成図である。
【
図2】前記石炭ミルのローラ支持機構の縦断面図である。
【
図3】前記ローラ支持機構の一部拡大断面図である。
【
図4】前記ローラ支持機構の減衰効果を示す線図である。
【
図5】本発明の
参考例に係るローラ支持機構の縦断面図である。
【
図6】本発明の
第2実施形態に係るローラ支持機構の縦断面図である。
【
図7】(A)はバネ式支持機構の模式図であり、(B)は油圧式支持機構の模式図である。
【
図8】従来のバネ式支持機構及び油圧式支持機構で生じた過度振動曲線を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0020】
(実施形態1)
本発明の第1実施形態を
図1〜
図4に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る石炭ミルの全体図である。
図1において、竪型石炭ミル10は、ほぼ竪型円筒形状のハウジング12を有している。ミル駆動用モータ14からカップリング16を介して減速機18に動力が伝達される。この動力により粉砕テーブル20が鉛直軸回りに回転する。3個のローラ22が、粉砕テーブル上で周方向に等間隔で配置されている。ローラ22は、自重により粉砕テーブル20の上面との間に摩擦力が発生し、この摩擦力により粉砕テーブル20に連れ回りする。即ち、回転軸22aを中心に回転する。
【0021】
石炭cは、粉砕テーブル20の中央上方から供給管24を通して供給される。粉砕テーブル20の上面に落下した石炭cは、転動するローラ22によって押し潰され粉砕される。粉砕された粉炭は、粉砕テーブル20の回転による遠心力でテーブル周辺部へ移動する。微粉炭は、粉砕テーブル20の下部に設けられた熱空気供給管26から導入され、ハウジング12と粉砕テーブル外周部との隙間から噴出する熱空気により、乾燥されると共に、吹き上げられる。
【0022】
吹き上げられた粉炭は、粉砕テーブル20の上方に設けられた分級器28で微粉と粗粉とに分級される。分級された微粉は、排出管30を通じて竪型石炭ミル10より排出され、粗粉は、粉砕テーブル20に落下して再度石炭cと共に粉砕される。ローラ22には、石炭cの反力が加わる。そのため、ローラ22を弾性的に支持するバネ式支持機構32が設けられている。以下、
図2により、バネ式支持機構32Aの構成を説明する。
【0023】
図2において、ローラ22の回転軸22aに対してアーム34がほぼ直角方向に取り付けられている。回転軸22aとアーム34とは、アーム軸35を中心に、夫々矢印方向に回転可能になっている。ハウジング12に開口が形成され、該開口に中空円筒形状の台座36が挿入固定されている。台座36に外側から、フランジ38aを有するスリーブ38が挿入固定され、台座36に内側から、内側端に縮径された支持部40aを有するスリーブ40が挿入固定されている。これらスリーブの内側に、丸棒状のスタッド42が軸方向に摺動可能に挿入されている。アーム34には球面状の係合座部34aが形成され、スタッド42の一端は係合座部34aに当接している。
【0024】
スタッド42の
他端側部位は小径部42aとなっており、小径部42aに拡径部44が一体に形成されている。スリーブ38のフランジ38aには、中空円筒体46のフランジ46aがボルト結合されている。中空円筒体46の他方のフランジ46bには、円形の端板48がボルト結合されている。拡径部44と端板48とで形成された中空円筒体46の内部空間に、コイルバネ50が挿入されている。コイルバネ50は、スタッド42の周囲に配置されている。スタッド42の外側端面には、軸方向に等間隔の寸法を有する平面状の内面を有する凹部52が刻設されている。凹部52に摩擦板54の一端が挿入され、凹部52の内面と摺接している。
【0025】
摩擦板54の他端には雄ネジ部54aが形成されている。雄ネジ部54aは、端板48の中心に形成された孔48aから中空円筒体46の外部に突出し、雄ネジ部54aにはナット56が螺合している。ナット56を回すことで、摩擦板54の軸方向移動が可能になり、凹部52に挿入される摩擦板54の挿入量を調整できる。コイルバネ50と端板48との間にクッション57が介装されている。また、台座36、スリーブ38のフランジ38a及び中空円筒体46のフランジ46aには、調整ボルト58が螺合しており、調整ボルト58で台座36に対するスリーブ38の挿入量を調整できる。
【0026】
かかる構成において、ローラ22が石炭cから受ける反力は、アーム34の回動及びスタッド42の軸方向への移動を介してコイルバネ50に伝達される。ローラ22は、コイルバネ50によって弾性的に支持される。また、スタッド42の軸方向への移動によって、凹部52の内面と摩擦板54とが摺接する。凹部52の内面と摩擦板54間に発生する摩擦抵抗によって、石炭cで形成される凸部をローラ22が通過したときに発生する過度振動を低減させることができる。
【0027】
図3は凹部52及び摩擦板54の拡大図であり、凹部52の内面と摩擦板54間に発生する摩擦抵抗は、凹部52と摩擦板54間の摺動面積、凹部内面と摩擦板54間のクリアランスt、及び凹部52と摩擦板54間の摺動面の粗さ及び摩擦板54の硬度等によって決まる。例えば、摩擦板54の硬度を大きくすることで、両者間の摩擦抵抗を高め、減衰効果を高めることができる。
【0028】
図4は、前記各種ファクタと減衰効果との関係を示す線図である。
図4において、クリアランスtが小さくなるほど、減衰効果は大きくなるが、摩擦板54の摺動ができなくなる閾値Sが存在する。また、減衰効果は、凹部52及び摩擦板54の表面粗さ、摺動面積及び硬度等で異なってくる。従って、これら表面粗さ、摺動面積及び硬度等に応じて、摩擦板54の摺動ができなくなるクリアランスtの値は異なる。
【0029】
本実施形態によれば、摩擦板54などで構成される減衰機能を有するバネ式支持機構32Aを備えているので、ローラ22に過度振動が発生しても、振動荷重を低減できる低コストな支持機構を実現できる。そのため、竪型石炭ミル10の信頼性及び耐久性を向上できる。また、バネ式支持機構32Aは、ピストンロッド42とコイルバネ50で構成され、減衰機構も、主要部材が摩擦板54であるので、共に低コスト化できる。さらに、凹部52と摩擦板54間のクリアランスt、凹部52と摩擦板54間の摺動面の面積、表面粗さ及び摩擦板54の硬度等を調整することで、減衰機能の調整が容易になる。また、ナット56を調整することで、凹部52と摩擦板54間の摺動面積を調整でき、これによっても、減衰機能の調整が容易になる。
【0030】
(
参考例)
次に、本発明の
参考例を
図5により説明する。本
参考例のバネ式支持機構32Bは、スタッド42の小径部42aの端部にショックアブソーバ60が設けられている。本
参考例では、中空円筒体46が前記第1実施形態より軸方向に長い寸法を有しており、この中空円筒体46の内部にショックアブソーバ60が配置されている。
【0031】
ショックアブソーバ60は、内部に被圧縮性のオイルoが封入されたシリンダ62と、シリンダ62の両端面中央に形成された孔を貫通して配置されたピストンロッド64と、ピストンロッド64と一体に形成され、ピストンロッド64と共に、シリンダ62の内部を摺動可能に配置されたピストン66とで構成されている。ピストン66には、オイルoが流通する小径の貫通孔66aが形成されている。ピストンロッド64は、スタッド42の端面に軸方向に形成された穴に密嵌固定され、スタッド42と同一軸線上に配置されている。
【0032】
コイルバネ50の両端は、拡径部44及びシリンダ62の端面に当接されている。中空円筒体46の端部は端板48で塞がれ、ピストンロッド64の端部には雄ネジ部54aが形成されている。雄ネジ部54aは、端板48の中心に形成された孔48aから中空円筒体46の外部に突出し、雄ネジ部54aにはナット56が螺合している。ナット56を回すことで、拡径部44の軸方向移動が可能になり、スタッド42に付加されるコイルバネ50の弾性力を調整できる。
【0033】
なお、コイルバネ50とシリンダ62の端面との間にクッション68が介装され、シリンダ62の他方の端面と端板48との間に、クッション70が介装されている。その他の構成は、第1実施形態と同一であり、同一の部材又は同一の機器には第1実施形態と同一の符号を付している。
【0034】
本
参考例の減衰機構はショックアブソーバ60で構成されている。ローラ22に加わる石炭cの反力は、スタッド42を介してピストンロッド64に伝達される。ピストンロッド64に加わった振動荷重は、貫通孔66aを流れるオイルoの流動抵抗によって低減される。
【0035】
本
参考例によれば、第1実施形態で得られる作用効果に加えて、ショックアブソーバ60を設けたことで、減衰効果をさらに向上できる。また、ナット56を調整することで、スタッド42の拡径部44の位置を移動できるので、スタッド42に加わるコイルバネ50の弾性力を容易に調整できる。
【0036】
(実施形態
2)
次に、本発明の
第2実施形態を
図6により説明する。本実施形態のバネ式支持機構32Cは、スタッド42側のピストンロッド64の端部が摩擦板72で構成されている。そして、摩擦板72とスタッド42との係合状態は、第1実施形態と同一の構成となっている。即ち、スタッド42の端面には、軸方向に等間隔の寸法を有する平面状の内面を有する凹部52が刻設され、凹部52に摩擦板72の一端が挿入されている。摩擦板54は凹部52の内面と摺接している。そのため、凹部52と摩擦板72間に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によって減衰力が発生する。その他の構成は、
参考例と同一である。
【0037】
本実施形態によれば、
参考例で得られる作用効果に加えて、凹部52と摩擦板72間に発生する摩擦抵抗による減衰効果と、ショックアブソーバ60による減衰効果との相乗効果で、減衰効果を飛躍的に向上できる。
さらに、第1実施形態と同様に、凹部52と摩擦板54間のクリアランスt、凹部52と摩擦板54間の摺動面の面積、表面粗さ及び摩擦板54の硬度等を調整することで、減衰機能の調整が容易になる。また、ナット56を調整することで、凹部52と摩擦板54間の摺動面積を調整でき、これによっても、減衰機能の調整が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、ローラの支持機構として、低コストでかつ石炭粉砕時に生じる過度振動を減衰可能な石炭ミルを実現できる。
【符号の説明】
【0039】
10 竪型石炭ミル
12 ハウジング
14 ミル駆動用モータ
16 カップリング
18 減速機
20 粉砕テーブル
22 ローラ
22a 回転軸
24 供給管
26 熱空気供給管
28 分級器
30 排出管
32A、32B、32C バネ式支持機構
34 アーム
34a 係合座部
35 アーム軸
36 台座
38、40 スリーブ
38a フランジ
40a 支持部
42 スタッド
42a 小径部
44 拡径部
46 中空円筒体
46a、46b フランジ
48 端板
48a 孔
50 コイルバネ
52 凹部
54、72 摩擦板
54a 雄ネジ部
56 ナット
57、68,70 クッション
58 調整ボルト
60 ショックアブソーバ
62 シリンダ
64 ピストンロッド
66 ピストン
66a 貫通孔
S 閾値
c 石炭
o オイル
t クリアランス