特許第5972816号(P5972816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972816
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/022 20060101AFI20160804BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20160804BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   F01N3/022 B
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
   F01N3/022 C
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-60618(P2013-60618)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185573(P2014-185573A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 英寿
【審査官】 大城 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212917(JP,A)
【文献】 特開2004−261664(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/069378(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/022
B01D 39/20
B01D 46/00
B01J 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面と、第二端面と、前記第一端面から前記第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、前記第一端面と前記第二端面とを繋ぐ外周面とを有する複数個のハニカムセグメントが、接合材を介して一体的に接合されてなるハニカム構造体であって、
前記複数個のハニカムセグメントの内、前記ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメント以外のハニカムセグメントは、
前記第一端面と第二端面とが、同一の寸法を有する長方形であるとともに、前記第一端面に対して垂直方向から見た場合に、それぞれの長辺の延びる方向が直交する位置関係にあり、
同一である前記第一端面の長辺の長さと前記第二端面の長辺の長さとをXとし、同一である前記第一端面の短辺の長さと前記第二端面の短辺の長さとをYとしたとき、(X−Y)/2が0.2〜7mmであり、
前記外周面が4つの側面からなり、
前記4つの側面が、前記第一端面側から前記第二端面側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面からなる一対の第一テーパー側面と、前記第二端面側から前記第一端面側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面からなる一対の第二テーパー側面とにより構成されており、
前記ハニカム構造体の端面上の直交する2つの方向において、隣接する前記ハニカムセグメントの前記第一端面の向きが逆向きになっているとともに、隣接する前記ハニカムセグメントの内の一方のハニカムセグメントの第一端面の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメントの第二端面の短辺の延びる方向とが平行になっているハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカムセグメントが、長方形である前記第一端面の2本の対角線の交点と、同じく長方形である前記第二端面の2本の対角線の交点とを通過する軸に対し、2回対称となる形状である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
第一端面と、第二端面と、前記第一端面から前記第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、前記第一端面と前記第二端面とを繋ぐ外周面とを有する複数個のハニカムセグメントが、接合材を介して一体的に接合されてなるハニカム構造体であって、
前記複数個のハニカムセグメントの内、前記ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメント以外のハニカムセグメントは、
前記第一端面と第二端面とが、同一の寸法を有する長方形であるとともに、前記第一端面に対して垂直方向から見た場合に、それぞれの長辺の延びる方向が直交する位置関係にあり、
同一である前記第一端面の長辺の長さと前記第二端面の長辺の長さとをXとし、同一である前記第一端面の短辺の長さと前記第二端面の短辺の長さとをYとしたとき、(X−Y)/2が0.2〜7mmであり、
前記外周面が4つの側面からなり、
前記4つの側面が、前記第一端面側から前記第二端面側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面からなる一対の第一テーパー側面と、前記第二端面側から前記第一端面側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面からなる一対の第二テーパー側面とにより構成されており、
長方形である前記第一端面の2本の対角線の交点と、同じく長方形である前記第二端面の2本の対角線の交点とを通過する軸に対し、2回対称となる形状であり、
前記ハニカム構造体の端面上の直交する2つの方向において、隣接する前記ハニカムセグメントの前記第一端面の向きが同じ向きになっているとともに、隣接する前記ハニカムセグメントの内の一方のハニカムセグメントの第一端面の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメントの第一端面の短辺の延びる方向とが平行になっているハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカムセグメントが、所定のセルの前記第一端面側の開口端部及び残余のセルの前記第二端面側の開口端部を目封止する目封止部を有する請求項1〜3の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記第一端面における前記セルの形状と前記第二端面における前記セルの形状とが、共に長方形である請求項1〜4の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記第一端面及び前記第二端面の内の何れか一方の端面における前記セルの形状が正方形であり、他方の端面における前記セルの形状が長方形である請求項1〜4の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記第一端面及び前記第二端面において、面積の異なる2種類のセルが交互に配列されている請求項1〜4の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記ハニカムセグメントが前記接合材を介して一体的に接合された後、外周研削加工が施され、その加工面に外周コート層が形成されている請求項1〜7の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンの排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタ等に使用されるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやGDI(Gasoline Direct Injection)エンジン等のガソリンエンジンの排ガス中には、粒子状物質(パティキュレートマター(PM))が含まれている。このPMは、主にスート(煤)等のカーボン微粒子からなるもので、発がん性が認められていることから、大気中に放出されるのを防止する必要があり、厳しい排出規制が科せられている。
【0003】
このような厳しい排出規制に対応すべく、PM排出量を低減するための多くの研究が行われているが、PM排出量を燃焼技術の改善によって低減するには限界があり、排気系にフィルタを設置することが、現在、唯一の有効なPM排出量の低減手段となっている。
【0004】
PMを捕集するためのフィルタとしては、圧力損失を許容範囲に抑えつつ、高いPM捕集効率を得られることから、ハニカム構造体を用いたウォールフロー型のものが、広く使用されている。ウォールフロー型フィルタに使用されるハニカム構造体は、排ガスの入口側となる入口端面から排ガスの出口側となる出口端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有している。このハニカム構造体に、所定のセルの出口端面側の開口端部及び残余のセルの入口端面側の開口端部を目封止する目封止部を設けることにより、高いPM捕集効率を持ったフィルタが得られる。
【0005】
即ち、こうして目封止部を設けたハニカム構造体は、入口端面からセル内に流入した排ガスが、隔壁を透過した後、出口端面からセル外に流出する構造となり、排ガスが隔壁を透過する際に、隔壁が濾過層として機能し、排ガス中に含まれるPMが捕集される。
【0006】
ところで、このようなフィルタを長期間継続して使用するためには、定期的にフィルタに再生処理を施す必要がある。即ち、フィルタ内部に経時的に堆積したPMにより増大した圧力損失を低減させてフィルタ性能を初期状態に戻すため、フィルタ内部に堆積したPMを高温のガスで燃焼させて除去する必要がある。そして、この再生時には、PMの燃焼熱によってフィルタに高い熱応力が発生するため、フィルタが破損することがある。
【0007】
従来、こうしたフィルタの破損を防止するための対策として、フィルタ全体を1つのハニカム構造体として製造するのではなく、複数個のハニカム形状のセグメント(ハニカムセグメント)を接合してフィルタ用のハニカム構造体とすることが提案されている。具体的には、複数個のハニカムセグメント間を、弾性率が低く変形し易い接合材で接合一体化したセグメント構造とすることで、再生時にハニカム構造体に作用する熱応力を分散、緩和して、耐熱衝撃性の向上を図っている。
【0008】
このようなセグメント構造のハニカム構造体を用いれば、高い耐熱衝撃性を有するフィルタが得られるが、その一方で、セグメント構造のハニカム構造体に特有の新たな問題が生じる。即ち、セグメント構造のハニカム構造体を用いたフィルタには、その使用時における振動や排ガスの圧力(排圧)によって、ハニカム構造体を構成しているハニカムセグメントに、移動(ずれ)が生じ易いという問題がある。
【0009】
この問題を解消するための手段の1つとして、特許文献1では、ハニカムセグメントの接合面となる外壁の平面度を特定の値とすることにより、ハニカムセグメント間の接合強度を向上させることが提案されている。また、特許文献2では、入口側端面の面積が出口側端面の面積より小さいハニカムセグメントを使用し、入口側端面の接合材の接合幅が、出口側端面の接合材の接合幅よりも大きくなるようにすることで、構造強度を高めることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−138416号公報
【特許文献2】再公表特許WO2008/096502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1及び2で提案された手段によるハニカムセグメント間の接合力の向上には限界があり、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動(ずれ)を十分に抑制できる程の強固な構造を持ったハニカム構造体を得るのは困難であった。また、特許文献2で提案された手段は、入口側端面と出口側端面とで接合材の厚さ(接合幅)を変化させる必要があるため、組み立てが難しいという問題があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、組み立て(製造)が容易で、使用時の振動や排圧によるハニカムセグメントの移動(ずれ)を効果的に抑制することが可能なセグメント構造のハニカム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下のハニカム構造体が提供される。
【0014】
[1] 第一端面と、第二端面と、前記第一端面から前記第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、前記第一端面と前記第二端面とを繋ぐ外周面とを有する複数個のハニカムセグメントが、接合材を介して一体的に接合されてなるハニカム構造体であって、前記複数個のハニカムセグメントの内、前記ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメント以外のハニカムセグメントは、前記第一端面と第二端面とが、同一の寸法を有する長方形であるとともに、前記第一端面に対して垂直方向から見た場合に、それぞれの長辺の延びる方向が直交する位置関係にあり、同一である前記第一端面の長辺の長さと前記第二端面の長辺の長さとをXとし、同一である前記第一端面の短辺の長さと前記第二端面の短辺の長さとをYとしたとき、(X−Y)/2が0.2〜7mmであり、前記外周面が4つの側面からなり、前記4つの側面が、前記第一端面側から前記第二端面側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面からなる一対の第一テーパー側面と、前記第二端面側から前記第一端面側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面からなる一対の第二テーパー側面とにより構成されており、前記ハニカム構造体の端面上の直交する2つの方向において、隣接する前記ハニカムセグメントの前記第一端面の向きが逆向きになっているとともに、隣接する前記ハニカムセグメントの内の一方のハニカムセグメントの第一端面の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメントの第二端面の短辺の延びる方向とが平行になっているハニカム構造体。
【0015】
[2] 前記ハニカムセグメントが、長方形である前記第一端面の2本の対角線の交点と、同じく長方形である前記第二端面の2本の対角線の交点とを通過する軸に対し、2回対称となる形状である[1]に記載のハニカム構造体。
【0016】
[3] 第一端面と、第二端面と、前記第一端面から前記第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、前記第一端面と前記第二端面とを繋ぐ外周面とを有する複数個のハニカムセグメントが、接合材を介して一体的に接合されてなるハニカム構造体であって、前記複数個のハニカムセグメントの内、前記ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメント以外のハニカムセグメントは、前記第一端面と第二端面とが、同一の寸法を有する長方形であるとともに、前記第一端面に対して垂直方向から見た場合に、それぞれの長辺の延びる方向が直交する位置関係にあり、同一である前記第一端面の長辺の長さと前記第二端面の長辺の長さとをXとし、同一である前記第一端面の短辺の長さと前記第二端面の短辺の長さとをYとしたとき、(X−Y)/2が0.2〜7mmであり、前記外周面が4つの側面からなり、前記4つの側面が、前記第一端面側から前記第二端面側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面からなる一対の第一テーパー側面と、前記第二端面側から前記第一端面側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面からなる一対の第二テーパー側面とにより構成されており、長方形である前記第一端面の2本の対角線の交点と、同じく長方形である前記第二端面の2本の対角線の交点とを通過する軸に対し、2回対称となる形状であり、前記ハニカム構造体の端面上の直交する2つの方向において、隣接する前記ハニカムセグメントの前記第一端面の向きが同じ向きになっているとともに、隣接する前記ハニカムセグメントの内の一方のハニカムセグメントの第一端面の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメントの第一端面の短辺の延びる方向とが平行になっているハニカム構造体。
【0017】
[4] 前記ハニカムセグメントが、所定のセルの前記第一端面側の開口端部及び残余のセルの前記第二端面側の開口端部を目封止する目封止部を有する[1]〜[3]の何れかに記載のハニカム構造体。
【0018】
[5] 前記第一端面における前記セルの形状と前記第二端面における前記セルの形状とが、共に長方形である[1]〜[4]の何れかに記載のハニカム構造体。
【0019】
[6] 前記第一端面及び前記第二端面の内の何れか一方の端面における前記セルの形状が正方形であり、他方の端面における前記セルの形状が長方形である[1]〜[4]の何れかに記載のハニカム構造体。
【0020】
[7] 前記第一端面及び前記第二端面において、面積の異なる2種類のセルが交互に配列されている[1]〜[4]の何れかに記載のハニカム構造体。
【0021】
[8] 前記ハニカムセグメントが前記接合材を介して一体的に接合された後、外周研削加工が施され、その加工面に外周コート層が形成されている[1]〜[7]の何れかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハニカム構造体は、ハニカムセグメントの形状や配置が特定の条件を満たすように構成されていることにより、ハニカムセグメントの固定力が高い強固な構造を有する。このため、このハニカム構造体を、排気系に設置されるフィルタに用いても、フィルタ使用時の振動や排圧によるハニカムセグメントの移動(ずれ)が生じ難い。また、一部のセルは、その軸方向が、ハニカム構造体の軸方向に対して、平行ではなく、傾斜した状態となるため、ハニカム構造体の軸方向に沿って流れる排ガスは、当該セルを区画形成する隔壁と接触し易くなり、その結果、PMの捕集効率が向上する。更に、ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメントにおいては、その軸方向が、ハニカム構造体の軸方向に対して傾斜した一部のセルの内、その傾斜の度合いが大きいものは、外周の研削加工によって排ガスが殆ど流れ込まないデッドチャンネルとなるため、保温効果が生じ、フィルタを再生する際の加熱効率が向上する。また、本発明のハニカム構造体は、ハニカムセグメントの角部近傍において、接合材の一部が肉厚となり、その肉厚部分により熱容量が増加するため、耐熱衝撃性が高く、フィルタを再生する際に生じる熱応力によって破損が生じ難い。また、本発明のハニカム構造体は、その製造に際し、ハニカム構造体の一方の端面と他方の端面とで接合材の厚さを変化させるような、組み立てを困難にする工程を要しないため、比較的簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るハニカム構造体の実施形態の一例を示す概略斜視図である。
図2】本発明に係るハニカム構造体の実施形態の一例における端面の一部を示す概略平面図である。
図3図2のI−I線断面図である。
図4図2のII−II線断面図である。
図5】本発明に係るハニカム構造体の実施形態の一例において使用されている、ハニカムセグメントの概略斜視図である。
図6図5のd1方向から見た概略平面図である。
図7図5のd2方向から見た概略平面図である。
図8図5のd3方向から見た概略平面図である。
図9図5のd4方向から見た概略平面図である。
図10図5のIII−III線断面図である。
図11図5のIV−IV線断面図である。
図12】ハニカムセグメントに目封止部を形成した状態を示す概略断面図である。
図13】ハニカムセグメントの形状の一例を示す概略斜視図である。
図14】セル形状の一例を部分的に示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0025】
(1)ハニカム構造体:
図1は、本発明に係るハニカム構造体の実施形態の一例を示す概略斜視図である。図2は、本発明に係るハニカム構造体の実施形態の一例における端面の一部を示す概略平面図である。図3は、図2のI−I線断面図であり、図4は、図2のII−II線断面図である。図5は、本発明に係るハニカム構造体の実施形態の一例において使用されている、ハニカムセグメントの概略斜視図である。図6は、図5のd1方向から見た概略平面図であり、図7は、図5のd2方向から見た概略平面図であり、図8は、図5のd3方向から見た概略平面図であり、図9は、図5のd4方向から見た概略平面図である。図10は、図5のIII−III線断面図であり、図11は、図5のVI−VI線断面図である。図12は、ハニカムセグメントに目封止部を形成した状態を示す概略断面図である。図13は、ハニカムセグメントの形状の一例を示す概略斜視図であり、図14は、セル形状の一例を部分的に示す概略平面図である。尚、図1〜4において、ハニカムセグメントの隔壁部分の描画は、一部のハニカムセグメントを除いて省略してある。尚、本明細書において、「セルの軸方向」とは、「セルの長さ方向」又は「隔壁の延伸方向」を意味する。また、「ハニカムセグメントの軸方向」とは、「ハニカムセグメントの長さ方向」又は「ハニカムセグメントの第一端面及び第二端面に垂直な方向」を意味する。更に、「ハニカム構造体の軸方向」とは、「ハニカム構造体の長さ方向」又は「ハニカム構造体の両端面(入口端面及び出口端面)に垂直な方向」を意味する。
【0026】
本発明に係るハニカム構造体1は、複数個のハニカムセグメント2が、接合材9を介して一体的に接合されたものである。このハニカム構造体1は、その一方の端面が排ガス等の流体の入口側となる入口端面13であり、他方の端面が流体の出口側となる出口端面14である。各ハニカムセグメント2は、第一端面3と、第二端面4と、第一端面3から第二端面4まで延びる複数のセル7を区画形成する多孔質の隔壁8と、第一端面3と第二端面4とを繋ぐ外周面とを有する。
【0027】
本発明においては、ハニカム構造体1を構成する複数個のハニカムセグメント2の内、ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメント以外のハニカムセグメントが、特定の条件を満たす形状となっている。具体的には、まず、ハニカムセグメント2の第一端面3と第二端面4とは、同一の寸法を有する長方形である。但し、第一端面3と第二端面4とは、第一端面3に対して垂直方向から見た場合に、それぞれの長辺の延びる方向が直交する位置関係にある。
【0028】
ハニカムセグメント2の外周面は、4つの側面からなる。これら4つの側面は、一対の第一テーパー側面5と、一対の第二テーパー側面6とにより構成される。一対の第一テーパー側面5は、第一端面3側から第二端面4側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面5a,5bからなるものである。また、一対の第二テーパー側面6は、第二端面4側から前記第一端面3側に向かってその間隔が狭くなって行くように対向する2つの側面6a,6bからなるものである。
【0029】
また、図6〜9に示すように、同一である第一端面3の長辺の長さと第二端面4の長辺の長さとをXとし、同一である第一端面3の短辺の長さと第二端面4の短辺の長さとをYとしたとき、(X−Y)/2は0.2〜7mmである。
【0030】
尚、図6〜9における、X及びY以外のハニカムセグメントの寸法に関する符号について説明すると、Lは、第一端面3と第二端面4との距離、即ち、ハニカムセグメント2の長さを示す。Vは、第一端面3に対して垂直方向から見た場合における、第一端面3の一方の長辺と第二端面4の一方の短辺との距離を示す。Wは、同じく第一端面3に対して垂直方向から見た場合における、第一端面3の他方の長辺と第二端面4の他方の短辺との距離を示す。VとWとは、同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。VとWとが同一の値の場合、その値は(X−Y)/2となる。
【0031】
また、VとWとが同一の値の場合、ハニカムセグメントの形状は、図13に示すように、長方形である第一端面3の2本の対角線の交点と、同じく長方形である第二端面4の2本の対角線の交点とを通過する軸15に対し、2回対称となる形状である。ハニカムセグメントが、このような形状である場合には、接合材のハニカムセグメント間に挟まれた部分の厚さを均一とすることができるため、ハニカム構造体が製造し易くなる。
【0032】
本発明においては、前記のようなハニカムセグメント2の形状の特定に加え、ハニカムセグメント2の配置についても、特定の条件を満たす必要がある。具体的には、図2〜4に示すように、ハニカム構造体の端面上の直交する2つの方向d5,d6において、隣接するハニカムセグメント2a,2bのそれぞれの第一端面3の向きが逆向きになるように配置される。尚、ハニカムセグメント2a,2bのそれぞれの第一端面3の向きが逆向きになるように配置されれば、それぞれのハニカムセグメント2a,2bの第二端面4の向きも必然的に逆向きになる。
【0033】
また、隣接するハニカムセグメント2a,2b同士の関係において、一方のハニカムセグメント2aの第一端面3の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメント2bの第二端面4の短辺の延びる方向とが平行になるように配置される。
【0034】
尚、図示は省略するが、ハニカムセグメントが、前記のような2回対称となる形状である場合は、ハニカム構造体の端面上の直交する2つの方向において、隣接するハニカムセグメントのそれぞれの第一端面の向きが逆向きになるように配置されていなくてもよい。即ち、前記のような2回対称となる形状である場合は、ハニカム構造体の端面上の直交する2つの方向において、隣接するハニカムセグメントのそれぞれの第一端面の向きが同じ向きになるように配置されていてもよい。但し、この場合には、隣接するハニカムセグメン同士の関係において、一方のハニカムセグメントの第一端面の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメントの第一端面の短辺の延びる方向とが平行になるように配置される必要がある。
【0035】
本発明のハニカム構造体は、前記のように、ハニカムセグメントの形状や配置が特定の条件を満たすように構成されていることにより、ハニカムセグメントの固定力が高い強固な構造を有する。このため、このハニカム構造体を、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の排気系に設置されるフィルタに用いても、フィルタ使用時の振動や排圧によるハニカムセグメントの移動(ずれ)が生じ難い。
【0036】
特許文献1に記載されているような従来の一般的なハニカムセグメント(外形が四角柱状のハニカムセグメント)では、対向する一対の側面と、対向する他の一対の側面とが共に平行である。一方、本発明において用いられるハニカムセグメントでは、対向する一対の側面は第一端面側から第二端面側に向かってその間隔が狭くなって行き、対向する他の一対の側面は、第二端面側から第一端面側に向かってその間隔が狭くなって行く。このようなハニカムセグメントの外形上の差異に、前記のようなハニカムセグメントの配置の特定が加わることによって、本発明のハニカム構造体は、従来のハニカム構造体よりも、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動(ずれ)が生じ難い。これは、本発明のハニカム構造体では、ハニカムセグメントの二対の側面において、ハニカムセグメント同士がくさびのように食い込むことによって相互に移動しにくくなること、及び、セグメント間の接合面積の増加によるものと考えられる。
【0037】
また、本発明のハニカム構造体は、特許文献2に記載されたハニカム構造体のように、製造に際し、ハニカム構造体の一方の端面と他方の端面とで、隣接するハニカムセグメントの側面間の接合材の厚さを変化させるような、組み立てを困難にする工程を要しないため、比較的簡単に製造することができる。
【0038】
更に、本発明のハニカム構造体は、図2に示すように、ハニカムセグメント2の角部近傍において、接合材9の一部9aが肉厚となる。そして、その肉厚部分により熱容量が増加するため、耐熱衝撃性が高くなり、フィルタを再生する際に生じる熱応力によって破損が生じ難い。
【0039】
本発明に用いられるハニカムセグメント2において、多孔質の隔壁8により区画形成された複数のセル7は、第一端面3から第二端面4まで延びるものである。よって、第一端面3と第二端面4とでは、それら端面に開口しているセル7の数は同一である。また、第一端面3と第二端面4とは、同一の寸法を有する長方形であるため面積が等しく、セル密度(単位面積あたりのセルの数)も同一となる。但し、前記のとおり、第一端面3と第二端面4とは、第一端面3に対して垂直方向から見た場合に、それぞれの長辺の延びる方向が直交する位置関係にある。このため、通常、全てのセルの軸方向が同一方向(平行)とはならない。即ち、図10に示すように、一対の第二テーパー側面6から離れた位置にあるセル7の軸方向は、ハニカムセグメント2の軸方向(長さ方向)とほぼ平行であるが、一対の第二テーパー側面6に近い位置にあるセル7の軸方向は、ハニカムセグメント2の軸方向に対して傾斜している。そして、その傾斜は、一対のテーパー側面6に近いセル7ほど大きくなる。また、図11に示すように、一対の第一テーパー側面5から離れた位置にあるセル7の軸方向は、ハニカムセグメント2の軸方向(長さ方向)とほぼ平行であるが、一対の第一テーパー側面5に近い位置にあるセル7の軸方向は、ハニカムセグメント2の軸方向に対して傾斜している。そして、その傾斜は、一対のテーパー側面5に近いセル7ほど大きくなる。
【0040】
ハニカムセグメントの軸方向がハニカム構造体の軸方向と同一である場合、ハニカム構造体の軸方向に沿って流れる排ガスは、その軸方向がハニカムセグメントの軸方向に対して傾斜しているセルを区画形成する隔壁と接触し易くなる。このため、本発明のハニカム構造体をフィルタに用いると、PMの捕集効率が向上する。また、ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメントにおいて、その軸方向が、ハニカムセグメントの軸方向に対して傾斜した一部のセルの内、その傾斜の度合いが大きいものは、外周部の研削加工によって排ガスが殆ど流れ込まないデッドチャンネルとなる。そして、そのデッドチャンネルとなったセルにより、保温効果が生じ、フィルタを再生する際の加熱効率が向上する。
【0041】
また、本発明においては、ハニカムセグメントの軸方向に垂直な断面の断面積が、ハニカムセグメントの軸方向に沿って変化し、第一端面3及び第二端面4の面積とは異なる面積となる。具体的には、例えば、端面(第一端面3及び第二端面4)の長辺の長さをXとし、短辺の長さをYとしたとき、ハニカムセグメントの軸方向の中央における当該軸方向に垂直な断面は、一辺の長さが(X+Y)/2の正方形となり、その断面積は、端面の面積(X×Y)よりも(X−Y)/4大きい。そして、このようなハニカムセグメントの断面積の変化に伴って、セルの断面積もセルの軸方向に沿って変化する。即ち、前記の通り、第一端面3と第二端面4のセル密度は同一であるが、セルの断面積は、セルの軸方向において一定ではない。このように、本発明では、セルの断面積が一定ではなく、セルの軸方向に沿って変化することにより、排ガスとセルを区画形成する隔壁とがより接触し易くなり、PM捕集効率が向上する。
【0042】
本発明においては、前記のとおり、同一である第一端面3の長辺の長さと第二端面4の長辺の長さとをXとし、同一である第一端面3の短辺の長さと第二端面4の短辺の長さとをYとしたとき、(X−Y)/2が0.2〜7mmである。(X−Y)/2が0.2mm未満では、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を十分に抑制することができないことがある。また、(X−Y)/2が7mmを超えると、排ガスが流れる方向の変化が大きくなるために、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。更に、(X−Y)/2が7mmを超えると、後述するように、所定形状のハニカムセグメントを得るため、押出成形されたハニカム成形体の対向する側面を抑え板で挟み込んで加圧変形させる際に、セルが均等に変形し難くなり、セルの形状や大きさにばらつきが生じることがある。尚、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動の抑制、圧力損失の増大抑制、ハニカムセグメント作製時におけるセルの変形の均等化、及びPM捕集効率の観点から、(X−Y)/2は、0.5〜6.5mmであることが好ましく、1〜5mmであることが特に好ましい。
【0043】
本発明においては、ハニカムセグメント2の長さ方向に直交する断面の角部が、半径0.1〜5mmの円弧状に形成されていることが好ましい。このように、角部が円弧状に形成されていると、角部への応力集中を抑制することができ、ハニカムセグメント2が破損し難くなる。
【0044】
本発明において、ハニカムセグメント2の材質は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート、ゼオライト、バナジウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を主成分とするものであることが好ましい。ここで、「主成分」とは、全体の中の50質量%を超える成分を意味する。
【0045】
ハニカムセグメント2の隔壁8の平均細孔径は、5〜100μmであることが好ましく、8〜50μmであることが特に好ましい。隔壁8の平均細孔径が5μm未満では、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。また、隔壁8の平均細孔径が100μmを超えると、十分な強度が得られないことがある。尚、ここで言う「平均細孔径」は、水銀ポロシメータによって測定された値である。
【0046】
ハニカムセグメント2の隔壁8の気孔率は、30〜80%であることが好ましく、35〜75%であることが特に好ましい。隔壁8の気孔率が30%未満では、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。また、隔壁8の気孔率が80%を超えると、十分な強度が得られないことがある。尚、ここで言う「気孔率」は、水銀ポロシメータによって測定された値である。
【0047】
ハニカムセグメント2の隔壁8の厚さは、40〜600μmであることが好ましく、100〜400μmであることが特に好ましい。隔壁8の厚さが40μm未満であると、十分な強度が得られないことがある。また、隔壁8の厚さが600μmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。
【0048】
ハニカムセグメント2のセル密度は、15〜200セル/cmであることが好ましく、30〜100セル/cmであることが特に好ましい。セル密度が15セル/cm未満であると、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、短時間で圧力損失が増大したり、十分な強度が得られなくなったりすることがある。また、セル密度が200セル/cm超えると、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集フィルタとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。
【0049】
本発明において、複数個のハニカムセグメント2を一体的に接合している接合材9の厚さは、ハニカムセグメント間に挟まれた部分において、0.05〜3.0mmであることが好ましい。接合材9の材質は、特に制限されないが、例えば、炭化珪素、アルミナ、窒化珪素等のセラミック粒子や無機繊維が、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナにより結合されたものを好適例として挙げることができる。このような材質の接合材は、ハニカム構造体に熱応力が生じた際に、その熱応力を効果的に緩和することができる。
【0050】
本発明のハニカム構造体1の形状(外形)は、特に限定されず、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状等の形状とすることができる。尚、本発明のハニカム構造体においては、所望の形状を得るために、複数個のハニカムセグメントを接合材で接合した後、外周研削加工を施すことが好ましい。この外周研削加工により、加工後のハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメントは、それ以外のハニカムセグメント(以下、「完全セグメント」と言う場合がある。)とは異なる形状を呈するようになる。即ち、ハニカム構造体の最外周に位置するハニカムセグメントは、外周研削加工により、その一部が除去されるため、完全ハニカムセグメントから、その除去された部分を欠いた形状となる。外周研削加工後の加工面(ハニカム構造体の外周面)は、セルが露出した状態になっているので、図1に示すように、その加工面に外周コート層10を形成することが好ましい。外周コート層10の形成材料には、接合材の形成材料と同じ材料を用いることが好ましい。
【0051】
本発明において、ハニカムセグメントのセル形状は、特に限定されないが、図6及び図9に示すように、第一端面3におけるセル7の形状と第二端面4におけるセル7の形状とが、共に長方形であることが好ましい。また、第一端面3及び第二端面4の内の何れか一方の端面におけるセル7の形状が正方形であり、他方の端面におけるセル7の形状が長方形であることも好ましい。更に、第一端面3及び第二端面4において、面積の異なる2種類のセルが交互に配列されていてもよい。また、この場合、面積の異なる2種類のセルは、その形状が異なっていてもよい。例えば、図14に示すように、面積が大きい方のセル7cを八角形とし、面積が小さい方のセル7dを正方形とすることができる。
【0052】
本発明のハニカム構造体をPM捕集フィルタに用いる場合には、図12に示すように、各ハニカムセグメント2における所定のセル7aの第一端面3側の開口端部及び残余のセル7bの第二端面4側の開口端部を目封止する目封止部12を形成することが好ましい。このように、ハニカムセグメント2の各セル7の一方の開口端部を目封止部12にて目封止することにより、ハニカム構造体は、高いPM捕集効率を持ったウォールフロー型フィルタとなる。このウォールフロー型フィルタにおいては、ハニカム構造体の入口端面からセル内に流入した排ガスが、隔壁を透過した後、出口端面からセル外に流出する。そして、排ガスが隔壁を透過する際に、隔壁が濾過層として機能し、排ガス中に含まれるPMが捕集される。尚、目封止部12は、第一端面3と第二端面4とが、それぞれ、目封止部12によって開口端部が目封止されたセル7と、目封止部12によって開口端部が目封止されていないセル7とにより、市松模様を呈するような配置となるように形成されることが好ましい。
【0053】
目封止部12の材質は、ハニカムセグメント2の材質として好ましいとされた材質であることが好ましい。目封止部12の材質とハニカムセグメント2の材質とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0054】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明に係るハニカム構造体の製造方法の一例について説明する。まず、ハニカムセグメントを作製するために、セラミック原料を含有する成形原料を作製する。成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウム、ゼオライト、バナジウムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。尚、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。コージェライト化原料は、焼成されることにより、コージェライトとなる。
【0055】
成形原料は、前記のようなセラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0056】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法には、特に制限はない。好適な方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0057】
次いで、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。ここで、押出成形するハニカム成形体は、両端面が合同な正方形である四角柱状の外形を有するものである。続いて、このハニカム成形体が乾燥する前に、ハニカム成形体の対向する一対の側面を、平面を有する2枚の抑え板を用いて挟み込み、当該一対の側面の間隔が、ハニカム成形体の一方の端面側から他方の端面側に向かって狭くなって行くように加圧変形させる。また、ハニカム成形体の対向する他の一対の側面も、同様に平面を有する2枚の抑え板を用いて挟み込み、当該他の一対の側面の間隔が、ハニカム成形体の前記他方の端面側から前記一方の端面側に向かって狭くなって行くように加圧変形させる。この加圧変形により、一方の端面(最終的に第一端面となる端面)と他方の端面(最終的に第二端面となる端面)とが、同一の寸法を有する長方形であるとともに、前記一方の端面に対して垂直方向から見た場合に、それぞれの端面の長辺の延びる方向が直交する位置関係にあるハニカム成形体が得られる。乾燥前のハニカム成形体は、軟弱であるため、前記のような抑え板を用いて容易に加圧変形させることができる。尚、対向する一対の側面の加圧変形と、対向する他の一対の側面の加圧変形とは、同時には行わず、何れか一方の加圧変形を行った後、他方の加圧変形を行うことが好ましい。また、この場合において、一方の加圧変形を行っている間、加圧変形を行っていない方の一対の側面は、2枚の平板で挟むように保持することによって、その変形を防止することが好ましい。こうすることにより、加圧変形を行っていない方の一対の側面の平面状態をより良好に保つことができる。加圧変形は、雰囲気温度や湿度にもよるが、押出成形後1時間以内に行うことが好ましい。
【0058】
こうして加圧変形させた後、ハニカム成形体を乾燥する。乾燥方法は、特に限定されるものではない。好適な乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの内でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0059】
次に、乾燥後のハニカム成形体(ハニカム乾燥体)を焼成して、ハニカムセグメントを作製する。尚、この焼成(本焼成)の前に、バインダ等を除去するため、仮焼(脱脂)を行うことが好ましい。仮焼の条件は、特に限定されるものではなく、有機物(有機バインダ、界面活性剤、造孔材等)を除去することができるような条件あればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度である。そのため、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。ハニカム成形体を焼成(本焼成)する条件(温度、時間、雰囲気等)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜8時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置は、特に限定されない。好適な装置としては、例えば、電気炉、ガス炉等を挙げることができる。
【0060】
目封止部を備えるハニカム構造体を作製する場合には、焼成後、ハニカムセグメントに目封止部を形成する。目封止部は、所定のセルの一方の端面(第一端面)側の開口端部及び残余のセルの他方の端面(第二端面)側の開口端部を目封止するように形成する。この目封止部の形成には、従来公知の方法を用いることができる。具体的な方法の一例としては、まず、前記のような方法で作製したハニカムセグメントの端面にシートを貼り付ける。次いで、このシートの、目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に穴を開ける。次に、このシートを貼り付けたままの状態で、目封止部の形成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカムセグメントの端面を浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止しようとするセルの開口端部内に目封止用スラリーを充填する。こうして充填した目封止用スラリーを乾燥した後、焼成して硬化させることにより、目封止部が形成される。目封止部の形成材料には、ハニカムセグメントの形成材料と同じ材料を用いることが好ましい。尚、目封止部の形成は、ハニカム成形体の乾燥後、仮焼後あるいは焼成(本焼成)後の段階の何れの段階で行ってもよい。
【0061】
次に、得られた各ハニカムセグメントの側面に、スラリー状の接合材を塗布し、その接合材により、ハニカムセグメントの側面同士が接合されるように、複数個のハニカムセグメントを組み合わせる。この組み合わせに際しては、直交する2つの方向において、隣接するハニカムセグメントの第一端面の向きが逆向きになるように配置する。また、隣接するハニカムセグメントの内の一方のハニカムセグメントの第一端面の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメントの第二端面の短辺の延びる方向とが平行になるように配置する。尚、ハニカムセグメントが、前記のような2回対称となる形状である場合は、直交する2つの方向において、隣接するハニカムセグメントのそれぞれの第一端面の向きが同じ向きになるように配置してもよい。但し、この場合には、隣接するハニカムセグメンの一方のハニカムセグメントの第一端面の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメントの第一端面の短辺の延びる方向とが平行になるように配置する。複数個のハニカムセグメントをこのように組み合わせ、接合材を加熱乾燥させることにより、複数個のハニカムセグメントが接合材を介して接合一体化されたハニカム構造体が得られる。
【0062】
接合材としては、例えば、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、セラミック粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材と水とを加えて混練し、スラリー状としたものが、好適に使用できる。接合材をハニカムセグメントの側面に塗布する方法は、特に限定されず、刷毛塗り等の方法を用いることができる。
【0063】
複数個のハニカムセグメントを接合材によって接合した後、必要に応じて、得られたハニカム構造体の外周部分に研削加工を施し、円柱状等の所望の形状とする。この場合、研削加工後の外周部分(加工面)に、外周コート層を形成することが好ましい。
【0064】
外周コート層は、研削加工後のハニカム構造体の加工面に、外周コート材を塗布することにより形成される。外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、セラミック粒子等の無機原料機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材と水とを加えて混練し、スラリー状としたものが好適に使用できる。外周コート材をハニカム構造体の加工面に塗布する方法は、特に限定されない。好適な方法としては、例えば、研削加工後のハニカム構造体をろくろ上で回転させながら、その加工面に、外周コート材をゴムヘラなどでコーティングする方法を挙げることができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1〜28及び比較例1〜9)
SiC粉末80質量部と、金属Si粉末20質量部とを混合してセラミック原料を得た。得られたセラミック原料に、造孔材、バインダ、界面活性剤、及び水を加えて、成形原料を作製し、それを混練して坏土を得た。造孔材としては澱粉を用いた。また、バインダとしては、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロースを用いた。界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウムを用いた。各原料の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、造孔材5質量部、メチルセルロース3質量部、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース3質量部、界面活性剤1質量部、水32質量部とした。
【0067】
得られた坏土を、ハニカム成形体成形用口金を用いて押出成形し、以下に述べる加圧変形をさせずにそのままの形状で焼成した場合、焼成後の端面において全ての辺の長さが表1及び表2に示すXと同一の長さとなり、隔壁の厚さが0.13mm、セルの形状が正方形、セル密度が70セル/cmとなるような、両端面が合同な正方形である四角柱状の外形を有するハニカム成形体を得た。そして、このハニカム成形体が乾燥する前に、得られたハニカム成形体の対向する一対の側面を、平面を有する2枚の抑え板を用いて挟み込み、当該一対の側面の間隔が、ハニカム成形体の一方の端面側から他方の端面側に向かって狭くなって行き、前記他方の端面における当該間隔が、焼成後に表1及び表2に示すYの値となるように加圧変形させた。また、ハニカム成形体の対向する他の一対の側面も、同様に平面を有する2枚の抑え板を用いて挟み込み、当該他の一対の側面の間隔が、ハニカム成形体の前記他方の端面側から前記一方の端面側に向かって狭くなって行き、前記一方の端面における当該間隔が、焼成後に表1及び表2に示すYの値となるように加圧変形させた。この加圧変形により、一方の端面(最終的に第一端面となる端面)と他方の端面(最終的に第二端面となる端面)とが、同一の寸法を有する長方形であるとともに、前記一方の端面に対して垂直方向から見た場合に、それぞれの端面の長辺の延びる方向が直交する位置関係にあるハニカム成形体を得た。その後、ハニカム成形体をマイクロ波及び熱風で乾燥してハニカム乾燥体を得た。
【0068】
次いで、このハニカム乾燥体の各セルの一方の開口端部に、目封止部を形成した。目封止部の形成は、開口端部に目封止部が形成されたセルと、開口端部に目封止部が形成されていないセルとによって、ハニカム乾燥体の各端面が、市松模様を呈するように行った。目封止部の形成方法としては、まず、ハニカム乾燥体の端面にシートを貼り付け、このシートの、目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に穴を開けた。続いて、このシートを貼り付けたままの状態で、目封止部の形成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカム乾燥体の端面を浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止しようとするセルの開口端部内に目封止用スラリーを充填した。尚、目封止部の形成材料には、前記成形原料と同じものを用いた。
【0069】
こうして、セルの開口端部内に充填した目封止用スラリーを乾燥した後、このハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて約400℃で仮焼(脱脂)した。その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で焼成して、図6〜9に示すL,X,Y及び(X−Y)/2の値が表1及び表2に示す値となるとともに、セル形状が同表に示す形状であるハニカムセグメントを得た。尚、得られたハニカムセグメントは、何れも図13に示すような2回対称となる形状であり、図6のVとWの値が共に(X−Y)/2となるものである。また、これらのハニカムセグメントは、第一端面におけるセル形状と第二端面におけるセル形状とが共に長方形であり、その長方形の長辺の長さと短辺の長さも、両端面で同一であった。また、これらのハニカムセグメントの隔壁の厚さは、ハニカム成形体の加圧変形の影響により、各端面における長辺に平行な隔壁と短辺に平行な隔壁とで異なり、短辺に平行な隔壁の厚さが、長辺に平行な隔壁の厚さより厚くなっていた。尚、表1及び表2に示す隔壁の厚さ(mm)は、小数点以下2桁までの値であり、これらの数値では、各端面における長辺に平行な隔壁の厚さと短辺に平行な隔壁の厚さとの差が認められないものもある。また、これらのハニカムセグメントは、何れも気孔率が47%、平均細孔径が11μmであり、ハニカム成形体の加圧変形による影響は見られなかった。
【0070】
続いて、アルミナ粉に、シリカファイバー、有機バインダ及び水を添加してスラリー状の接合材を得た。この接合材を、ハニカムセグメントの側面に厚さ約1mmとなるように塗布し、この接合材によって、ハニカムセグメントの側面同士が接合されるように、複数個のハニカムセグメントを組み合わせた。この組み合わせに際しては、図2〜4示すように、直交する2つの方向d5,d6において、隣接するハニカムセグメント2a,2bの第一端面3の向きが逆向きになるように配置した。また、隣接するハニカムセグメントの内の一方のハニカムセグメント2aの第一端面3の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメント2bの第二端面4の短辺の延びる方向とが平行になるように配置した。そして、適宜、外部より圧力を加えるなどして、ハニカムセグメント同士を圧着させながら、120℃で2時間乾燥させてハニカム構造体を得た。尚、これらのハニカムセグメントは2回対称となる形状であり、また、第一端面におけるセル形状と第二端面におけるセル形状とが共に長方形であり、その長方形の長辺の長さと短辺の長さも、両端面で同一である。このような場合においては、隣接するハニカムセグメントの第一端面の向きが逆向きでなく、同じ向きとなっていてもよい。この場合、隣接するハニカムセグメントの内の一方のハニカムセグメントの第一端面の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメントの第一端面の短辺の延びる方向とが平行になるように配置する。
【0071】
次いで、このハニカム構造体の外形が、直径230mmの円柱状になるように、その外周を研削加工した。研削加工後、その加工面に接合材と同じ組成の外周コート材を0.6mmの厚さで塗布し、700℃で2時間乾燥硬化させて外周コート層を形成し、実施例1〜28及び比較例1〜9のハニカム構造体を得た。
【0072】
(実施例29〜33)
加圧変形させる前のハニカム成形体として、加圧変形をさせずにそのままの形状で焼成した場合、焼成後の各端面におけるセル形状が、長辺と短辺との長さの比が1.5の長方形となるハニカム成形体を用いた以外は、実施例1〜28及び比較例1〜9と同様にして、各部の寸法等が表2に示す値となるようなハニカムセグメントを得た。尚、これらのハニカムセグメントにおいては、ハニカム成形体を加圧変形する際の加圧方向が、対向する一対の側面と、対向する他の一対の側面と異なるため、表2に示すように、ハニカムセグメントの第一端面と第二端面とでセルの長辺と短辺との長さの比が異なる。また、これらのハニカムセグメントは、何れも気孔率が47%、平均細孔径が11μmであり、ハニカム成形体の加圧変形による影響は見られなかった。得られたハニカムセグメントを、実施例1〜28及び比較例1〜9と同様にして組み合わせ、外周の研削加工、外周コート層の形成を行って、実施例29、30及び33のハニカム構造体を得た。また、隣接するハニカムセグメントの第一端面の向きが同じ向きになるとともに、隣接するハニカムセグメントの内の一方のハニカムセグメントの第一端面の長辺の延びる方向と、他方のハニカムセグメントの第一端面の短辺の延びる方向とが平行になるように配置した以外は、実施例29、30及び33と同様にして、実施例31及び32のハニカム構造体を得た。尚、後述する評価において、実施例31のハニカム構造体は、それを構成するハニカムセグメントの第一端面側が上流側になるように配置して評価を行った。また、実施例32のハニカム構造体は、それを構成するハニカムセグメントの第二端面側が上流側になるように配置して評価を行った。
【0073】
(実施例34〜38)
加圧変形させる前のハニカム成形体として、加圧変形をさせずにそのままの形状で焼成した場合、焼成後の各端面に、図14に示すように、開口面積の異なる正方形のセルと八角形のセルとが交互に配置され、開口面積の大きい八角形のセルと開口面積の小さい正方形のセルとの開口面積の比が1.8となるハニカム成形体を用いた以外は、実施例1〜28及び比較例1〜9と同様にして、各部の寸法等が表2に示す値となるようなハニカムセグメントを得た。尚、これらのハニカムセグメントは、何れも気孔率が47%、平均細孔径が11μmであり、ハニカム成形体の加圧変形による影響は見られなかった。得られたハニカムセグメントを、実施例1〜28及び比較例1〜9と同様にして組み合わせ、外周の研削加工、外周コート層の形成を行って、実施例34〜38のハニカム構造体を得た。
【0074】
(比較例10(評価の基準となるハニカム構造体))
ハニカム成形体の加圧変形を行わなかった以外は、実施例1〜38及び比較例1〜9と同様にして、比較例10のハニカム構造体を得た。ハニカム成形体の加圧変形を行わなかったため、比較例10のハニカム構造体を構成するハニカムセグメントは、その両端面の形状が合同な正方形である四角柱状の外形を有し、全てのセルの軸方向がハニカムセグメントの軸方向と同一である。尚、当該ハニカムセグメントは、隔壁の厚さが0.13mm、セル密度が70セル/cm、気孔率が47%、平均細孔径が11μmであった。また、当該ハニカムセグメントは、そのハニカムセグメントの長さ(全長)と、正方形である両端面の各辺の長さとが、それぞれ実施例1〜38及び比較例1〜9で使用されたハニカムセグメントの長さLと、長方形である両端面の長辺の長さXと同一である。即ち、この比較例10は、単一のハニカム構造体ではなく、その全長及び両端面の各辺の長さが、実施例1〜38及び比較例1〜9のそれぞれのハニカム構造体を構成するハニカムセグメントのL及びXと同一である四角柱状のハニカムセグメントを用いて構成された複数のハニカム構造体である。そして、この比較例10のハニカム構造体は、後述する「加熱振動試験」、「圧力損失」及び「PM排出個数」において評価の基準となるハニカム構造体である。即ち、実施例1〜38及び比較例1〜9のハニカム構造体の評価を行う際には、その全長及び両端面の各辺の長さが、評価対象となるハニカム構造体を構成するハニカムセグメントのL及びXと同一である四角柱状のハニカムセグメントを用いて構成された、外形が直径230mmの円柱状の比較例10のハニカム構造体が、当該評価の基準となる。
【0075】
これら実施例1〜38及び比較例1〜10のハニカム構造体について、下記の方法で、加熱振動試験、圧力損失の測定及びPM排出個数の測定を行った。そして、その試験結果又は測定結果に基づいて、A,B,C,Dの4段階評価を行い、評価結果を表3及び4に示した。
【0076】
[加熱振動試験]
ハニカム構造体の外周に、非熱膨張性セラミックマットを巻き、ステンレス(SUS430)製のキャニング用缶体に押し込んでキャニング構造体とした後、加熱振動試験を行った。試験条件は、入口ガス温度を950℃、振動加速度を50G、振動周波数を200Hzとし、200時間連続して、キャニング構造体に加熱した排ガスを流入させながら、ハニカム構造体の軸方向に振動を与えた。この試験の評価基準は、以下のとおりである。
A:加熱振動試験後、缶体を解体して取り出したハニカム構造体の何れのハニカムセグメントにも移動が認められず、かつ、ハニカム構造体の周囲を手で強く(5kg程度の力で)押しても、ハニカムセグメントが移動しない。
B:加熱振動試験後、缶体を解体して取り出したハニカム構造体の何れのハニカムセグメントにも移動が認められないが、ハニカム構造体の周囲を手で強く(5kg程度の力で)押すと、ハニカムセグメントが移動する。
C:加熱振動試験後、ハニカム構造体の少なくとも1つのハニカムセグメントに移動が認められるが、最も大きく移動していたハニカムセグメントの移動量が0.5mm以下である。
D:加熱振動試験後、ハニカム構造体の少なくとも1つのハニカムセグメントに移動が認められ、最も大きく移動していたハニカムセグメントの移動量が0.5mmを超える。
【0077】
尚、この加熱振動試験の評価において、評価がA〜Cであるものは、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を効果的に抑制でき、フィルタとしての通常の使用において問題が無いものであるといえる。一方、評価がDであるものは、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を十分に抑制することができず、フィルタとしての通常の使用において問題が生じる可能性が有る。
【0078】
[圧力損失]
ハニカム構造体に大気圧(1atm)、室温(20℃)の空気を14m/分で流して、圧力損失を測定した。この測定結果に基づいて、圧力損失の評価を行った。評価基準は、以下のとおりである。
A:比較例10のハニカム構造体の圧力損失を100%としたときの相対的な圧力損失が、102%以下である。
B:比較例10のハニカム構造体の圧力損失を100%としたときの相対的な圧力損失が、102%を超え、104%以下である。
C:比較例10のハニカム構造体の圧力損失を100%としたときの相対的な圧力損失が、104%を超え、106%以下である。
D:比較例10のハニカム構造体の圧力損失を100%としたときの相対的な圧力損失が、106%を超える。
【0079】
尚、この圧力損失の評価において、評価がA〜Cであるものは、エンジン性能への影響が小さく、フィルタとしての通常の使用において問題が無いものであるといえる。一方、評価がDであるものは、エンジン性能への影響が無視できないほど圧力損失が大きく、フィルタとしての使用には適さない。
【0080】
[PM排出個数]
ハニカム構造体の外周を非熱膨張性セラミックマットで巻き、ステンレス製のキャニング用缶体に押し込んでキャニング構造体とした後、排気量2.0Lの4気筒ディーゼルエンジン車のエンジン排気マニホルドの出口側に設置した。そして、このディーゼルエンジン車を、シャーシダイナモ上でNEDC(New European Driving Cycle)モードで走行させた際のPM排出個数(個/km)を測定した。この測定結果に基づいて、PM排出個数の評価を行った。評価基準は、以下のとおりである。
A:比較例10のハニカム構造体のPM排出個数と比較して、PM排出個数が30%以上減少している。
B:比較例10のハニカム構造体のPM排出個数と比較して、PM排出個数が10%以上、30%未満の範囲で減少している。
C:比較例10のハニカム構造体のPM排出個数と比較して、PM排出個数が同等であるか、10%未満であるが減少している。
D:比較例10のハニカム構造体のPM排出個数と比較して、PM排出個数が増加している。
【0081】
尚、このPM排出個数の評価において、評価がA〜Cであるものは、PM捕集性能が良好であり、フィルタとしての通常の使用において問題が無いものであるといえる。一方、評価がDであるものは、PM捕集性能が低く、フィルタとしての使用には適さない。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
(考察)
表3及び表4に示すとおり、本発明の実施例である実施例1〜38のハニカム構造体は、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動が効果的に抑制されているとともに、圧力損失やPM捕集性能もフィルタとしての通常の使用において問題が無いものであった。一方、(X−Y)/2の値が0.2mm未満のハニカムセグメントを用いた比較例1,2,5,8のハニカム構造体は、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を十分に抑制することができず、フィルタとしての通常の使用において問題が生じる可能性が有る。更に、(X−Y)/2が0.1mmという最も小さい値であるハニカムセグメントを用いた
比較例1のハニカム構造体は、振動や排圧によるハニカムセグメントの移動を十分に抑制することができないだけでなく、PM捕集性能も低く、フィルタとしての使用には適さないものであった。また、(X−Y)/2の値が7mmを超えているハニカムセグメントを用いた比較例3,4,6,7,9のハニカム構造体は、エンジン性能への影響が無視できないほど圧力損失が大きく、フィルタとしての使用には適さないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンの排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタ等に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1:ハニカム構造体、2:ハニカムセグメント、3:第一端面、4:第二端面、5:一対の第一テーパー側面、6:一対の第二テーパー側面、7:セル、8:隔壁、9:接合材、10:外周コート層、12:目封止部、13:入口端面、14:出口端面、15:軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14