【実施例】
【0031】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0032】
本実施例は、配管1を抱持支承するC状の金属製帯板材の上部に平板状の取付部3を一体的に連設した挟持半体2の下部同士を枢着して、互いに下方へ開閉回動自在な配管抱持部材4を構成し、この左右一対の挟持半体2から成る配管抱持部材4の前記対向する取付部3間に、上部に吊りボルト螺着部7を設けた取付部材8の下部を重合連結する構成としている。
【0033】
また、取付部材8は、金属製帯板材を略逆U字状に折曲形成して上部の折り返し部に前記吊りボルト螺着部7を設け、この取付部材8下部の対向板部を重合部5として前記取付部3間に垂下配設する構成としている。
【0034】
本実施例では、前記配管抱持部材4の対向する取付部3に夫々ボルト挿通孔13を貫通形成し、この取付部3間に配する前記取付部材8の重合部5にも夫々横方向に貫通ボルト孔16を形成し、各取付部3と各重合部5とを重合すると共に各ボルト挿通孔13と各貫通ボルト孔16とを連通させた上、この連通孔13・16に止着ボルト9を挿通してナット12を螺着することで、この止着ボルト9を介して配管抱持部材4と取付部材8とを連結した構成としている。
【0035】
また、この各ボルト挿通孔13と各貫通ボルト孔16とは、止着ボルト9のボルト杆部10の径より径大に形成してこのボルト杆部10に対して遊びを生じる所謂バカ穴に構成し、この各ボルト挿通孔13と各貫通ボルト孔16に対して止着ボルト9が傾動(移動)できるように構成している。
【0036】
また、本実施例では、各ボルト挿通孔13のうちの一方(図面ではナット12を螺着した止着ボルト9のボルト先端部が位置する側(
図6〜
図8において左側))を、次のように形成している。
【0037】
上下方向に長さを有する長孔形状であって、前記止着ボルト9のボルト杆部10より径大であってこの止着ボルト9に螺着するナット12より径小な抜止孔部14を上部に、前記止着ボルト9に螺着するナット12より径大な挿脱孔部15を下部にして、相対的に前記止着ボルト9がこの挿脱孔部15から抜止孔部14へ移動自在となり、逆に抜止孔部14から挿脱孔部15へも移動自在となるように連通状態に構成している。
【0038】
更に詳しくは、止着ボルト9のボルト杆部10より径大であってこの止着ボルト9に螺着するナット12より径小な径小丸穴14と、止着ボルト9に螺着するナット12若しくはボルト頭部11より径大な径大丸穴15とを、前記径小丸穴14が上に前記径大丸穴15が下になるようにして上下方向に連設状態に設け、上部の径小丸穴14を前記抜止孔部14とし、下部の径大丸穴15を挿脱孔部15としている。尚、このボルト挿通孔13の形状は、本実施例に限らず適宜設計変更可能である。
【0039】
また、各ボルト挿通孔13の他方は、止着ボルト9のボルト頭部11やこの止着ボルト9に螺着するナット12が通ることができない孔径寸法を有するものとし、止着ボルト9にナット12が螺着されている以上は、この他方のボルト挿通孔13から止着ボルト9が抜け落ちることのない構成としている。
【0040】
従って、前記止着ボルト9にナット12を螺着した状態であっても、前記ボルト挿通孔13の挿脱孔部15を介して挟持半体2を回動操作することでボルト挿通孔13にナット12と共に止着ボルト9を挿通でき、この止着ボルト9をボルト挿通孔13のこの挿脱孔部15から上方の抜止孔部14へ相対的に移動させることでナット12の内側(ボルト頭部11側)面が抜止孔部14周囲の取付部3に当接係止して、ボルト挿通孔13(抜止孔部14)より止着ボルト9が抜け止め状態となるように構成し、この抜止孔部14に止着ボルト9のボルト杆部10が位置する状態でナット12を締付螺着することで挟持半体2を閉塞保持する構成としている。
【0041】
また、前記止着ボルト9のボルト杆部10の先端部側に螺着した前記ナット12を緩め回動してこの先端方向へ移動させた状態でこの止着ボルト9の先端部側を下方へ傾動し得るように止着ボルト9に対する前記各ボルト挿通孔13と貫通ボルト孔16の形状を前述のようにやや大きめ(径大)に設定し、この止着ボルト9を下方へ傾動させることで止着ボルト9にナット12を螺着したまま前記ボルト挿通孔13の径大な挿脱孔部15より止着ボルト9を係脱自在に設けて、止着ボルト9にナット12を螺着したままで前記一方の挟持半体2を開閉回動し得るように構成している。
【0042】
従って、配管1を抱持している本金具を取り外す場合を例にとって説明すれば、先ず止着ボルト9のボルト杆部10に締め付け螺着しているナット12を緩め回動し、止着ボルト9の先端部側へナット12を移動させる。
【0043】
尚、このナット12を緩めた状態では、
図2に示すように止着ボルト9に対しては本金具の自重や抱持している配管1の荷重が加わっていて、止着ボルト9にナット12を螺着したままとなっているから、止着ボルト9が抜け外れたり、傾いて止着ボルト9に螺着したナット12がボルト挿通孔13の径大な挿脱孔部15から容易に抜け外れてしまうことはない。
【0044】
例えば、
図3に示すようにこの状態で手で支えるなどして本金具や配管1の荷重を弱め、止着ボルト9を下方に傾けるなどしてボルト挿通孔13から抜き外したいナット12をボルト挿通孔13の径小な抜止孔部14から径大な挿脱孔部15へ移動させる。そしてこのボルト挿通孔13を設けた一方の挟持半体2を下方へ回動させ、ナット12を螺着したままの止着ボルト9から抜き外して本金具を開き配管1から本金具を取り外す。
【0045】
従って、本実施例は、止着ボルト9にナット12を螺着したままで挟持半体2を開閉させて本金具の取り付け取り外し作業ができるから、止着ボルト9が抜けて金具がバラけてしまうこともなく、また、このように止着ボルト9にナット12を螺着したまま開閉できるから、いちいちナット12を螺着したり、取り外したりする手間もなく、ナット12を落としたり、無くしたりしないようにナット12を管理する煩わしさもない構成としている。
【0046】
尚、本実施例では、止着ボルト9にナット12を螺着させたまま開閉させるため、止着ボルト9からナット12を取り外す必要はないことから、ナット12を緩め回動して止着ボルト9から抜落しないように、例えば止着ボルト9のボルト杆部10先端部のネジ溝をつぶすなどして抜脱不能に構成しても良い。このように構成することにより、ナット12の緩めすぎに気をとられることもなく、また、必ずナット12が止着ボルト9から抜け外れて落下することはないから、一層優れた配管支持金具となる。また、本実施例では、ナット12をボルト挿通孔13の挿脱孔部15から抜き外すようにした場合を示したが、ボルト頭部11をボルト挿通孔13の挿脱孔部15から抜き外すようにしても良い。
【0047】
本実施例は、前記取付部材8の前記重合部5に、外方へ向けて下動阻止突起17を突設し、この下動阻止突起17を、前記重合部5を前記取付部3に重合した際に前記取付部3の外方へ貫通突出させる突起挿通孔部18を前記取付部3に設けると共に、この突起挿通孔部18は、前記ボルト挿通孔13と前記貫通ボルト孔16とに挿通した前記止着ボルト9を前記抜止孔部14に位置させて前記吊り下げ状態とした際に前記下動阻止突起17に掛止られることで前記止着ボルト9のボルト杆部10が前記抜止孔部14に接触しない離間状態で抜止孔部14に挿通する構成としている。
【0048】
具体的には、前記各重合部5の一方(図面ではナット12を螺着した止着ボルト9のボルト先端部が位置する側(
図6〜
図8において左側))に、下動阻止突起17を各重合部5の対向外側に向けて突設して、この外側に突設する下動阻止突起17が止着ボルト9に螺着した前記ナット12若しくは止着ボルト9のボルト頭部11に係止するように構成している。
【0049】
また、この下動阻止突起17は、前記貫通ボルト孔16を設けた前記重合部5から切り起こした切り起こし片17で構成すると共に、この重合部5の貫通ボルト孔16の二箇所に設け、この二箇所の下動阻止突起17に、前記止着ボルト9に螺着した前記ナット12若しくはこの止着ボルト9のボルト頭部11が係止して、このナット12若しくはボルト頭部11に回り止め作用を付与する構成としている。
【0050】
更に詳しくは、前記重合部5に前記貫通ボルト孔16をプレス穴抜き形成するが、この際に前記切り起こし片17の内方に向かって二箇所突出する形状に貫通ボルト孔16を穴抜きし(突片を有する形状に貫通ボルト孔16を貫通形成し)、この穴抜きによって形成された二箇所の切り起こし片17を垂直にした重合部5に対して水平外方に突出するようにプレス折曲等により90度曲げ起こしたこの各切り起こし片17を下動阻止突起17としている。
【0051】
また、この二箇所の下動阻止突起17の間隔を、前記ナット12若しくはボルト頭部11の径寸法より小間隔に設定して、この二箇所の下動阻止突起17にナット12若しくはボルト頭部11の二面が係止して回り止め作用が付与される構成とすると共に、この二箇所の下動阻止突起17が前記抜止孔部14に挿通した前記止着ボルト9に螺着した前記ナット12の図面下側に位置する部位の左右二箇所に当接係止することで、止着ボルト9が下方の挿脱孔部15側に移動できなくなって抜止孔部14にとどまることになる構成としている。
【0052】
更に具体的には、ナット12の六面ある外周面のうちの一面を下方を向いた水平状態とした際に、その両隣に存する外周面)に一つずつ下動阻止突起17が当接係止するように、この下動阻止突起17の形成位置を設定構成し、このナット12の二面に下動阻止突起17が当接係止することでナット12に回り止め作用を付与して、この止着ボルト9とナット12の締付け及び緩め作業が非常に容易に行われる構成としている。
【0053】
また、この下動阻止突起17は、その突出長を、ナット12を多少緩めた程度ではナット12への係止状態が解除されない長さに設定し、これにより万が一ナット12が多少緩んだとしても、止着ボルト9が抜止孔部14にとどまって止着ボルト9が抜け外れることのない構成としている。
【0054】
更に具体的には、下動阻止突起17は、前記取付部3の板厚の2倍以上の突出長を有する構成とし、これにより取付部3を重合部5に重合して下動阻止突起17を突起挿通孔部18に挿通した際に、取付部3の外方へ下動阻止突起17が大きく突出する構成としている。
【0055】
また、前記突起挿通孔部18は、前記ボルト挿通孔13の前記抜止孔部14と前記挿脱孔部15との境目付近に、このボルト挿通孔13と連設状態に設けている。
【0056】
具体的には、ボルト挿通孔13は、前記取付部3にプレス穴抜き形成するが、この際に前記ボルト挿通孔13の前記抜止孔部14と前記挿脱孔部15との境目付近の両側位置に角形の突起挿通孔部18が形成される孔形状に穴抜きし、このボルト挿通孔13と一体化して抜かれた二箇所の角孔部分を前記突起挿通孔部18としている。
【0057】
また、この突起挿通孔部18は、上部の孔縁が水平縁19となる角孔に形成してこの水平縁19を掛止縁19とし、この掛止縁19を、突起挿通孔部18に挿通した下動阻止突起17の上面部に掛止し得るようにしている。そして、本実施例では、前記ボルト挿通孔13と前記貫通ボルト孔16とに挿通した前記止着ボルト9を前記抜止孔部14に位置させて取付部材8に対し配管抱持部材4を吊り下げ状態とした際に、前記突起挿通孔部18(の掛止縁19)が前記下動阻止突起17に掛止られることで重合部5に対し取付部3が位置決められると共に、この際、前記止着ボルト9のボルト杆部10が前記抜止孔部14に接触しない離間状態で抜止孔部14に挿通するように、下動阻止突起17,突起挿通孔部18の形成位置や形状を設定構成している。
【0058】
従って、本実施例によれば、止着ボルト9をボルト挿通孔13の抜止孔部14に移動し、この止着ボルト9に螺着したナット12を締付して配管抱持部材4の挟持半体2を締付閉塞保持すると、ナット12の二箇所に下動阻止突起17が係止して止着ボルト9がボルト挿通孔13下部の挿脱孔部15に移動することが確実に阻止される構成としている。よって、この配管抱持部材4の閉塞保持状態では、止着ボルト9が何らかの要因によって挿脱孔部15に移動してしまうようなことは決してなく、この挿脱孔部15からナット12若しくはボルト頭部11が挿脱して止着ボルト9が抜け外れること(配管1が配管抱持部材4から脱落すること)が確実に防止されることになる(
図1,
図3参照。)。
【0059】
また、止着ボルト9に螺着したナット12を緩めてナット12とボルト頭部11間の距離を拡大すれば(
図6(a)参照。)、ナット12を下動阻止突起17の突出先端部より外方へ位置させることでナット12の下動阻止突起17への係止状態を解除し得るように構成している(
図6(b)参照。)。
【0060】
また、本実施例では、
図9,
図10に示すように、配管抱持部材4で配管1を抱持する際に配管1上に取付部材8を寝かせておき、
図11に示すように上方に位置する下動阻止突起17をいずれか一方の突起挿通孔部18に配してこの突起挿通孔部18に配した下動阻止突起17を支点にして取付部材8を起立状態となるまで起動回動させると、下方に位置する下動阻止突起17が前記挿脱孔部15の孔内縁に沿って他方の突起挿通孔部18へと簡単に案内される丸穴形状に、前記挿脱孔部15を設定構成している。
【0061】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。