特許第5972891号(P5972891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーの特許一覧

特許5972891改善された熱老化および中間層結合強度を有する複合材構造
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972891
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】改善された熱老化および中間層結合強度を有する複合材構造
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20160804BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 3/10 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C08J5/04CFG
   C08L77/00
   C08K5/053
   C08K3/16
   C08K3/10
   C08K3/04
   C08K7/06
   C08K7/14
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-536801(P2013-536801)
(86)(22)【出願日】2011年10月27日
(65)【公表番号】特表2013-540884(P2013-540884A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011057979
(87)【国際公開番号】WO2012058366
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】61/410,108
(32)【優先日】2010年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/410,104
(32)【優先日】2010年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/410,100
(32)【優先日】2010年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/410,093
(32)【優先日】2010年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/408,166
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100147588
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 浩司
(72)【発明者】
【氏名】エリア アンドリ イー
(72)【発明者】
【氏名】キルヒナー オラフ ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ウェイクマン マーティン ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ユェン シェンメイ
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−234259(JP,A)
【文献】 特開2010−037358(JP,A)
【文献】 特開2000−061983(JP,A)
【文献】 特表2013−543802(JP,A)
【文献】 特表2013−543803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04−5/10、5/24
B29B 11/16、15/08−15/14
B29C 70/00−70/88
B32B 1/00−43/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドマトリックス樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜重量パーセントの銅をベースとする熱安定剤を含んでなるポリアミドマトリックス樹脂組成物と、
織物または不織物構造、フェルト、ニット、ブレイズ、テキスタイル、繊維バッティングまたはマットおよびこれらの組み合わせから選択される繊維材料と、
ポリアミド表面樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜3重量パーセントの表面熱安定剤を含んでなるポリアミド表面樹脂組成物と
を含んでなる複合材構造であって、
前記表面熱安定剤が、前記銅をベースとする熱安定剤とは異なり、そして
前記繊維材料が、前記ポリアミドマトリックス樹脂組成物で含浸される、複合材構造。
【請求項2】
請求項1に記載の複合材構造から製造される物品。
【請求項3】
熱および圧力下、マトリックス樹脂組成物で繊維材料を含浸する工程を含んでなる、複合材構造の製造方法であって、前記複合材構造の表面の少なくとも一部分が、表面樹脂組成物を含んでなり、
前記複合材構造が、
ポリアミドマトリックス樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜重量パーセントの銅をベースとする熱安定剤を含んでなるポリアミドマトリックス樹脂組成物と、
織物または不織物構造、フェルト、ニット、ブレイズ、テキスタイル、繊維バッティングまたはマットおよびこれらの組み合わせから選択される繊維材料と、
ポリアミド表面樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜3重量パーセントの表面熱安定剤を含んでなるポリアミド表面樹脂組成物と
を含んでなる方法。
【請求項4】
請求項1に記載の複合材構造、
ならびに
ポリアミド樹脂組成物を含んでなり、そして
ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズおよびアラミド繊維から選択される強化剤を含んでなっていてもよく、
そして前記第1の構成部分上へオーバーモールドされる第2の構成部分であって、
前記第1の構成部分の表面の少なくとも一部分に接着される第2の構成部分
を含んでなるオーバーモールド複合材構造。
【請求項5】
請求項1に記載の複合材構造上へ第2の構成部分をオーバーモールドする工程を含んでなる、オーバーモールド複合材構造の製造方法であって、
前記第2の構成部分が、ポリアミド樹脂組成物を含んでなり、そしてガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズおよびアラミド繊維から選択される強化剤を含んでなっていてもよい方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された熱老化を有する複合材構造、その製造プロセスおよび最終用途物品の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
匹敵するか、または優れた機械的性能を有しながら、軽量化およびコスト削減のために金属部品を置き換える目的で、繊維材料を含有するポリマーマトリックスを含んでなる複合材料に基づく構造が開発されている。このような関心が高まるなか、繊維材料とポリマーマトリックスとの組み合わせから生じるそれらの優れた物理的特性のため、繊維強化プラスチック複合材構造が設計されており、そして様々な最終用途で使用されている。複合材構造の特性を最適化するため、ポリマーマトリックスによる繊維材料の含浸を改善する製造技術が開発されている。
【0003】
自動車および航空宇宙用途における構造部品などの、要求が非常に高い用途において、複合材料は、軽量、高強度および耐温度性のユニークな組み合わせのため望ましい。
【0004】
高性能複合材構造は、ポリマーマトリックスとして熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を使用して得ることができる。熱可塑性物質に基づく複合材構造は、熱および圧力の適用によって後形成または再加工される能力を含む、熱硬化性物質に基づく複合材構造に勝るいくつかの利点を示す。加えて、硬化工程が必要とされないため、複合材構造を作成するために必要とされる時間が短縮され、そしてそれによってリサイクルの可能性が増加する。
【0005】
熱可塑性樹脂の中でも、ポリアミドは複合材構造を製造するために特に適している。熱可塑性ポリアミド組成物は、それらの良好な機械的特性、耐熱性、耐衝撃性および耐化学薬品性のため、そしてそれらは、様々な程度の複雑性および複雑さの様々な物品に、都合よく、そして柔軟に成形され得るため、自動車で使用される部品、電気/電子機器部品、家庭用機器および家具を含む広範囲にわたる用途にとって望ましい。
【0006】
複合材構造および集積複合材構造を製造するための製造プロセスを改善し、そして繊維材料のより容易で、より短時間の均一な混合または含浸を可能にする目的で、ポリマーマトリックスの溶融粘度を低下するためのいくつかの方法が開発された。低い溶融粘度を有することによって、ポリマー組成物はより速く流動し、したがって加工がより容易である。ポリマーマトリックスの溶融粘度を低下させることによって、所望の混合度を達成するために必要な時間は短縮され得、それによって、全体的な製造速度が増加して、したがって生産性増加が導かれる。
【0007】
しかしながら、繊維材料の混合または含浸を改善または促進するために低溶融粘度ポリアミド組成物を使うことによって、乏しい機械的特性および熱老化特性のため、自動車分野などの要求が非常に高い用途には理想的ではない複合材構造が導かれ得る。
【0008】
ポリマーマトリックス組成物への熱安定剤の添加によって、より高い含浸温度が可能となり、それによって、ポリマーマトリックス組成物の粘度が低下するが、これらの熱安定剤は、オーバーモールド樹脂の接着性を妨害するおそれがある。
【0009】
米国特許第7,763,674号明細書は、ヨウ化銅/ヨウ化カリウム混合物で熱安定化された繊維強化ポリアミド組成物を開示する。
【0010】
米国特許出願公開第2010/0120959号明細書は、熱安定剤として遷移金属イオンで変性された粘土を含んでなるポリアミド組成物を開示する。粘土を変性するのに用いられる金属イオンは、周期表の第IB族、第VIIB族、第VIIB族および第VIII族の遷移金属、ならびにそれらの組み合わせから選択される遷移金属である。
【0011】
米国特許出願公開第2009/0269532号明細書は、少なくとも1種の安定層を含んでなる多層構造を教示する。安定層は、0.5パーセントのヨウ化銅およびヨウ化カリウムをベースとする安定剤によって安定化される。この安定剤は、10パーセントのヨウ化銅、80パーセントのヨウ化カリウムおよび10パーセントのステアリン酸亜鉛からなる。
【0012】
米国特許出願公開第2008/0146718号明細書は、熱安定剤として金属粉末を含んでなる非繊維強化熱可塑性成形組成物であって、金属粉末が多くても1mmの重量平均粒径を有し、そして金属粉末中の金属が、周期表の第VB族、第VIIB族、第VIIB族および第VIIIB族の元素金属、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される組成物を開示する。
【0013】
米国特許第7,811,671号明細書は、熱安定剤としてステアリン酸マグネシウム結合剤と一緒にヨウ化カリウムおよびヨウ化第一銅を使用する、ポリアミド組成物を含んでなるフィルムを開示する。
【0014】
仏国特許第2,158,422号明細書は、低分子量ポリアミドマトリックスおよび強化繊維から製造される複合材構造を開示する。ポリアミドの低分子量のため、ポリアミドは低粘度を有する。ポリアミドマトリックスの低粘度によって、強化繊維の効率的な含浸が可能である。
【0015】
米国特許第7,323,241号明細書は、強化繊維および星型構造を有する分枝状ポリアミド樹脂から製造される複合材構造を開示する。開示された星型構造を有するポリアミドは、溶融状態で高い流動性を示すと言われており、したがって、強化繊維の良好な含浸を可能にし、良好な機械的特性を有する複合材構造を形成する。
【0016】
国際公開第2007/149300号パンフレットは、ポリアミドマトリックス組成物を含んでなる繊維強化材料を含んでなる構成部分、ポリアミド組成物を含んでなるオーバーモールドされた構成部分、およびその間の任意の結合層を含んでなる半芳香族ポリアミド複合材物品であって、ポリアミド組成物の少なくとも1種が半芳香族ポリアミド組成物である物品を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、繊維材料を迅速かつ効率的に含浸することができ、そして複合材構造が良好な長期的熱安定性を示す、マトリックス樹脂組成物を含んでなる複合材構造がなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書において、熱安定剤の組み合わせを含んでなる複合材構造およびオーバーモールド複合材構造が開示され、請求される。
【0019】
複合材構造は、
ポリアミドマトリックス樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜3または約3重量パーセントの銅をベースとする熱安定剤を含んでなるポリアミドマトリックス樹脂組成物と、
織物または不織物構造、フェルト、ニット、ブレイズ、テキスタイル、繊維バッティングまたはマットおよびこれらの組み合わせから選択される繊維材料と、
ポリアミド表面樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜3重量パーセントの表面熱安定剤を含んでなるポリアミド表面樹脂組成物と
を含んでなり、
表面熱安定剤は、銅をベースとする熱安定剤とは異なり、そして
繊維材料は、ポリアミドマトリックス樹脂組成物で含浸される。
【0020】
好ましくは、本発明の複合材構造において、表面熱安定剤は、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールおよびこれらの混合物から選択される。より好ましくは、表面熱安定剤は、ジペンタエリスリトールから選択される。
【0021】
第2の態様において、本発明は、本発明の複合材構造から調製される物品を提供する。
【0022】
なおもう1つの態様において、本発明は、本発明の複合材構造を製造するプロセスを開示し、請求する。
【0023】
なおもう1つの態様において、本発明は、オーバーモールド複合材構造、およびオーバーモールド複合材構造を製造するプロセスを開示し、請求する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による複合材構造は、それらの製造中の良好な熱安定性、良好な熱老化特性、長期高温曝露後の機械的特性の保持を提供する。
【0025】
オーバーモールドされた複合材構造を製造するため、そしてポリマーの性能を増加させるため、構成部分の構造を包囲または封入するように、構成部分の上部の一部分または表面の全てに1種またはそれ以上のポリマー組成物を「オーバーモールドする」ことがしばしば望ましい。オーバーモールドするとは、構成部分構造(第1の構成部分)の1つまたはそれ以上の表面上に直接的に第2のポリマー(第2の構成部分)を成形して、オーバーモールドされた複合材構造を形成することを伴い、第1の構成部分と第2の構成部分は、少なくとも1つの界面において互いに接着されて、オーバーモールドされた複合材構造を製造する。第1の構成部分は、複合材構造であることが可能であり、そして第1の構成部分は、様々なポリマーおよび繊維材料を含んでなることができる。第1の構成部分または複合材構造の繊維材料を含浸するために使用される本発明のポリマー組成物(すなわち、マトリックスポリマー組成物)は、第1の構成部分または複合材構造の表面を構成する樹脂(すなわち、表面樹脂組成物)とは異なる組成物であるが、それらは同一のポリアミドポリマーを含んでなってもよい。オーバーモールドされた複合材構造の第1の構成部分または複合材構造および第2の構成部分は、互いに良好な接着性を有することが望ましい。複合材構造および/またはオーバーモールドされた複合材構造は、良好な寸法安定性を有し、熱サイクルを含む不利な条件下でその機械的特性を保持することが望ましい。
【0026】
ポリアミドは、それらの優れた機械的特性のため、複合材構造またはオーバーモールドされた複合材構造を製造するために使用可能なポリマーの優れた例である。都合の悪いことに、ポリアミド組成物は、それらの製造間および使用間の長期高温曝露時にそれらの機械的特性の容認できない悪化を起こし得、したがって、それらは自動車分野などの要求が非常に高い用途で使用されるオーバーモールドされた複合材構造を製造するためには理想ではあり得ない。実際に、自動車分野で現在一般的に望まれているものは、高温耐性、軽量構造である。そのような高温耐性構造は、それらが、自動車のボンネット下の領域でしばしば達成されるような120℃より高い、またはさらには200℃より高い温度に曝露される時に、それらの機械的特性を保持すること、または長期間、例えば90℃などの中間温度でそれらの機械的特性を保持することが必要とされる。プラスチック部分がそのような時間および温度の組み合わせに曝露される時、ポリマーの熱酸化によって機械的特性が低下する傾向が一般的な現象である。この現象は熱老化と呼ばれる。
【0027】
都合の悪いことに、既存の技術では、繊維材料の含浸速度に関して、良好な熱耐性、長期高温曝露に対する機械的特性の良好な保持、およびオーバーモールド組成物への優れた接着性を有するポリマーによって、容易かつ効率的なプロセス可能性を組み合わせることができない。
【0028】
本発明は、複合材構造およびそれらの製造プロセスに関する。本発明による複合材構造は、少なくとも1種の繊維材料に含浸される少なくとも1種のポリアミドマトリックス樹脂を含んでなり、そしてポリアミドマトリックス樹脂は銅をベースとする熱安定剤を含んでなる。複合材構造は、表面熱安定剤を含んでなるポリアミド表面樹脂組成物を追加的に含んでなる。好ましくは、表面熱安定剤は、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールおよびこれらの混合物から選択され、そしてさらにより好ましくは、表面熱安定剤は、ジペンタエリスリトールである。ポリアミドマトリックス樹脂組成物およびポリアミド表面樹脂組成物で使用されるポリアミドは、同一のポリアミドまたは異なるポリアミド、あるいは2種以上のポリアミドのブレンドであることが可能である。
【0029】
第1の構成部分または複合材構造をオーバーモールドするために使用される第2の構成部分は、銅をベースとする熱安定剤を含んでなり、そして任意選択的に強化剤を含んでなるポリアミド樹脂組成物である。
【0030】
定義
本明細書で使用される場合、「約」および「または約」という句は、問題の量または値が、示される値またはほぼ同じのいくつかの他の値であってもよいことを意味するように意図される。この句は、同様の値が、本発明による等しい結果または効果を促進することを伝えるように意図される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「オーバーモールドされた複合材構造」という用語は、第1の構成部分または複合材構造および第2の構成部分を含んでなる構造を意味する。第2の構成部分が第1の構成部分または複合材構造上へオーバーモールドされて、オーバーモールドされた複合材構造が製造される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「第1の構成部分」または「複合材構造」という用語は、少なくとも1種のポリアミドマトリックス樹脂組成物、少なくとも1種の繊維材料およびポリアミド表面樹脂組成物を含んでなる組成物を意味する。ポリアミド表面樹脂組成物は、第1の構成部分または複合材構造の全表面の最外部の表面であるか、あるいは第1の構成部分または複合材構造の表面の一部分のみであり、これは、第1の構成部分表面または複合材構造表面の何パーセントがオーバーモールドされるかによる。ポリアミド表面樹脂組成物は、第1の構成部分または複合材構造の最外部の上部、最外部の底面、または最外部の上部および最外部の底面の両方であることが可能である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ポリアミドマトリックス樹脂」という用語は、繊維材料を含浸するために使用されるポリアミド樹脂組成物を意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「表面熱安定剤」という用語は、ポリアミド表面樹脂組成物で使用される安定剤を意味する。表面熱安定剤は、銅をベースとする熱安定剤ではなく、銅または銅イオンを含有しない。
【0035】
本明細書で使用される場合、「繊維材料」という用語は、当業者に既知のあらゆる適切なマット、ファブリックまたはウェブの形態である材料を意味する。繊維材料を形成するために使用される繊維またはストランドは、相互に連結する(すなわち、少なくとも1つの繊維またはストランドが、少なくとも1つの他の繊維またはストランドに接触して、連続的な材料を形成する)か、または互いに接触して、連続的なマット、ウェブまたは同様の構造が形成される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ポリアミド表面樹脂」という用語は、第1の構成部分または複合材構造の外部表面を含んでなるポリアミド組成物を意味する。ポリアミド表面樹脂組成物は、最終用途次第で、第1の構成部分または複合材構造の全外部表面、あるいは第1の構成部分または複合材構造の外部表面の一部分を含んでなることができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「銅をベースとする熱安定剤」という用語は、ハロゲン化銅化合物およびハロゲン化アルカリ金属化合物、あるいは種々のハロゲン化銅化合物またはハロゲン化アルカリ金属化合物の組み合わせを含んでなる熱安定剤を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「第2の構成部分」または「オーバーモールド構成部分」という用語は、ポリアミド樹脂組成物を含んでなり、そして強化剤を含んでいてもよい組成物を意味する。第2の構成部分は、第1の構成部分または複合材構造をオーバーモールドするために使用される。
【0039】
本明細書で使用される場合、「オーバーモールドされる」という用語は、高分子組成物によって基板、構造または物品をオーバーモールドするために使用される成形およびキャスティングプロセスを意味する。それは、基板、構造、物品における成形プロセスであり、オーバーモールド高分子組成物は結合して、冷却時に基板、構造または物品の必要不可欠な部分(すなわち外部の部分)になる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「含浸される」という用語は、繊維材料のキャビティおよび空隙空間にポリアミドマトリックス樹脂組成物が流れ込むことを意味する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「結合強度」という用語は、オーバーモールドされた複合材構造の第1の構成部分または複合材構造と第2の構成部分またはオーバーモールド構成部分と間の結合の強度を意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「熱老化」という用語は、所与の期間で高温に構成部分構造、複合材構造および/またはオーバーモールドされた複合材構造を曝露することを意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「高温長期的曝露」という用語は、曝露要因(すなわち時間および温度)の組み合わせを指す。研究室条件、または自動車のボンネット下の領域で達成されるものなどのポリマーの寿命の条件(例えば、120℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上、そしてなおより好ましくは200℃以上の温度で、老化または曝露が500時間以上、好ましくは1000時間以上である)で熱老化性能を実証するポリマーは、より長期間の老化または曝露の間、より低い温度で同様の性能を示すために、示されることができる。ポリマー劣化の速度定数の温度依存は、例えば、“Journal of Materials Science”,1999年,34,843−849などの文献から既知であって、そしてArrheniusの法則によって説明されており、一例として、180℃で500時間老化は、おおよそ、80℃で12年間の老化に等しい。
【0044】
第1の構成部分または複合材構造
第1の構成部分または複合材構造は、1種またはそれ以上のポリアミドマトリックス樹脂組成物で含浸される1種またはそれ以上の繊維材料を含んでなり、そして1種またはそれ以上の表面樹脂組成物を含んでなる。第1の構成部分または複合材構造は、約50〜20000ミクロン、好ましくは約50〜5000ミクロン、より好ましくは約500〜3000ミクロン、最も好ましくは約800〜2000ミクロンの全体の厚さを有することができる。第1の構成部分または複合材構造は、複数の繊維材料を有することができる。
【0045】
ポリアミド表面樹脂組成物は、第1の構成部分または複合材構造の上部および底面表面であることができる(本質的に完全に第1の構成部分または複合材構造を封入する)。そのような組成物は、第2の構成部分によって第1の構成部分または複合材構造の全表面を封入またはオーバーモールドすることが望ましい場合に有用であり得る。ポリアミド表面樹脂組成物は、第1の構成部分または複合材構造の上部のみまたは底面のみであってもよく、あるいは上部または底面表面の一部分のみであってもよく、これは、第1の構成部分または複合材構造表面の何パーセントがオーバーモールドされるかによる。
【0046】
第1の構成部分または複合材構造が、1つの表面または表面の一部分上のみにオーバーモールドされる場合、ポリアミド表面樹脂組成物は、第2の構成部分によってオーバーモールドされる表面または表面の一部分上のみに存在してよい。
【0047】
繊維材料
ポリアミドマトリックス樹脂組成物で含浸される繊維材料は、当業者に既知のあらゆる適切なマット、ファブリックまたはウェブの形態でもよい。そのような繊維材料の適切な例には、織物または不織物ファブリックまたはマット、繊維の一方向性ストランドなどが含まれ、そして第1の構成部分または複合材構造中の繊維材料の異なる層は、異なる種類の繊維、マットまたはファブリックから形成されてもよい。第1の構成部分または複合材構造は、1種またはそれ以上のポリアミドマトリックス樹脂組成物で含浸される複数の層の繊維材料を含有してもよい。追加的に、あらゆる所与の繊維層は、2種類以上の繊維(例えば、炭素およびガラス繊維)から形成されてもよい。繊維は一方向性でもよいか、二方向性でもよいか、多方向性でもよい。あらかじめ含浸された一方向性繊維および繊維バンドルを、繊維材料を形成するために適切な織物または不織物マットまたは他の構造に形成してもよい。繊維材料は、一方向性のあらかじめ含浸された材料またはあらかじめ含浸された材料の多方向性ラミネートの形態であってもよい。
【0048】
繊維材料は、好ましくは、織物または不織物構造(例えば、マット、フェルト、ファブリックおよびウェブ)テキスタイル、繊維バッティング、2種以上の材料の混合物およびそれらの組み合わせから選択される。不織物構造は、ランダム繊維配向または整列繊維構造から選択することができる。ランダム繊維配向の例には、限定されないが、マット、ニードルドマットまたはフェルトの形態であることができる材料が含まれる。整列繊維構造の例には、限定されないが、一方向性繊維ストランド、二方向性ストランド、多方向性ストランド、多軸テキスタイルが含まれる。テキスタイルは織物形態のもの、ニット、ブレイズ、及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ポリアミドマトリックス樹脂組成物で含浸される繊維材料」という用語は、マトリックス樹脂組成物によって実質的に包囲される繊維材料の相互に浸透するネットワークを形成するために、ポリアミドマトリックス樹脂組成物が繊維材料を封入および包埋することを意味する。本明細書の目的のために、「繊維」という用語は、その長さに対して垂直なその断面領域を横切って、長さ対幅の高い比率を有する肉眼的に均一な実体として定義される。繊維断面はあらゆる形状であることが可能であるが、典型的に丸いかまたは卵型である。複合材構造の最終用途および/またはオーバーモールドされた複合材構造および必要とされる機械的特性次第で、いくつかの同一繊維材料または異なる繊維材料の組み合わせのいずれかを使用することによって、2種以上の繊維材料を使用することが可能である。異なる繊維材料の組み合わせの例は、例えば中心層として配置される平面ランダムマットなどの不織物構造と、外側の層または中心層の上層もしくは下層、または中心層の上下の両方の層として配置される1種またはそれ以上の織物連続繊維材料とを含んでなる組み合わせである。そのような組み合わせは、第1の構成部分または複合材構造の加工性および均質性の改善を可能にし、したがって、複合材構造および/またはオーバーモールドされた複合材構造の機械的特性の改善を導く。繊維材料は、あらゆる適切な材料または材料の混合物から製造されてもよいが、ただし、材料または材料の混合物が、ポリアミドマトリックス樹脂組成物およびポリアミド表面樹脂組成物による含浸の間、および第2の構成部分による第1の構成部分または複合材構造のオーバーモールドの間に使用される加工条件に耐えることを条件とする。
【0050】
好ましくは、繊維材料は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、グラファイト繊維、金属繊維、セラミック繊維、天然繊維またはそれらの混合物を含んでなり、より好ましくは、繊維材料は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維またはそれらの混合物を含んでなり、そしてなおより好ましくは、繊維材料は、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維またはそれらの混合物を含んでなる。天然繊維とは、植物由来または動物由来のあらゆる材料を意味する。使用される場合、天然繊維は、好ましくは、例えば、シードヘア(例えば綿)、茎植物(例えば麻、亜麻、竹、靭皮およびコアファイバーの両方)、葉植物(例えばサイザルとマニラ麻)、農業繊維(例えば、穀物わら、コーンコブ、米外皮およびココナッツヘア)またはリグノセルロース系繊維(例えば木材、木部繊維、木粉、紙および木材関連材料)などの植物供給源から誘導される。上記のとおり、2種以上の繊維材料を使用することができる。例えば、ガラス繊維または天然繊維から製造された1種またはそれ以上の中心層と、炭素繊維またはガラス繊維から製造された1種またはそれ以上の外部層(中心層と関連する)とを含んでなる第1の構成部分または複合材構造などの異なる繊維から製造された繊維材料の組み合わせを使用することができる。好ましくは、繊維材料は、織物構造、不織物構造またはそれらの組み合わせから選択され、上記構造は、8〜30μmの直径、好ましくは10〜24μmの直径を有するE−ガラスフィラメントであるガラス繊維から製造される。本発明の第1の構成部分または複合材構造で使用される繊維材料は、短繊維または粒子であることは不可能である。明白にするため、第1の構成部分または複合材構造中の繊維材料は、連続マット、ウェブまたは同様の層状構造を形成するために、相互連結しない繊維または粒子であることは不可能である。言い換えると、それらが独立していることは不可能であり、あるいはポリアミドマトリックス樹脂組成物によって包囲される単一の繊維または粒子であることは不可能である。
【0051】
繊維材料は、熱可塑性材料をさらに含んでなってもよい。例えば、繊維材料は、混合または交織糸の形態、あるいは織物または不織物の形態へのその後の加工に適切である熱可塑性材料から製造された粉末で含浸された繊維材料、あるいは一方向性材料として使用するための混合物であってもよい。
【0052】
好ましくは、第1の構成部分または複合材構造(すなわち、マトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物との組み合わせにおける繊維材料)中の繊維材料とポリマー材料の比率は、第1の構成部分構造または複合材構造の全容量に基づく体積パーセントであるパーセントで、少なくとも30パーセントの繊維材料、そしてより好ましくは40〜60パーセントの繊維材料である。
【0053】
銅をベースとする熱安定剤
ポリアミドマトリックス樹脂組成物(第1の構成部分または複合材構造)および任意選択的に第2の構成部分で使用される熱安定剤は、ハロゲン化銅をベースとする無機熱安定剤である。熱安定剤は、少なくとも1種のハロゲン化銅または酢酸銅および少なくとも1種のハロゲン化アルカリ金属を含んでなる。ハロゲン化銅の非限定的な例には、ヨウ化銅および臭化銅が含まれる。ハロゲン化アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのヨウ化物および臭化物からなる群から選択され、ヨウ化または臭化カリウムが好ましい。好ましくは、銅をベースとする熱安定剤は、10〜50重量パーセントのハロゲン化銅、50〜90重量パーセントのヨウ化カリウム、および0〜15重量パーセントのステアリン酸金属の混合物である。さらにより好ましくは、銅をベースとする熱安定剤は、10〜30重量パーセントのハロゲン化銅、70〜90重量パーセントのヨウ化カリウム、および0〜15重量パーセントのステアリン酸金属の混合物であり、最も好ましくは、銅をベースとする熱安定剤は、10〜20重量パーセントのハロゲン化銅、75〜90重量パーセントのヨウ化カリウム、および0〜12重量パーセントのステアリン酸金属の混合物である。本発明の銅をベースとする熱安定剤の例は、それぞれ、ヨウ化カリウム、ヨウ化第一銅およびステアリン酸アルミニウムの重量比7:1:1(重量パーセント比約78:11:11)のブレンドを含んでなるCiba Specialty Chemicals社製のPolyadd P201である。好ましい熱安定剤は、ヨウ化銅およびヨウ化カリウム(CuI/Ki)の混合物である。熱安定剤は、場合により、第1の構成部分または複合材構造のポリアミドマトリックス樹脂組成物の全重量に基づく、または第2の構成部分のポリアミド樹脂組成物の全重量に基づく重量パーセントで、0.1または約0.1〜3または約3重量パーセント、好ましくは0.1または約0.1〜1.5または約1.5重量パーセント、あるいはより好ましくは0.1または約0.1〜1.0または約1.0重量パーセントの量で存在する。ポリアミドマトリックス樹脂組成物または第2の構成部分のポリアミド樹脂組成物のハロゲン化銅をベースとする熱安定剤の量は、予期される用途次第である。極めて高温の環境が想像されるならば、より高濃度のハロゲン化銅熱安定剤が必要である。
【0054】
表面熱安定剤
ポリアミド表面樹脂組成物の表面熱安定剤は、ポリアミドマトリックス樹脂組成物の銅をベースとする熱安定剤とは異なる。ポリアミド表面樹脂組成物の1種またはそれ以上の表面熱安定剤は、第1の構成部分または複合材構造のポリアミド表面樹脂組成物の全重量に基づく重量パーセントで、0〜3または約3重量パーセント、好ましくは0.1または約0.1〜3または約3重量パーセント、より好ましくは0.1または約0.1〜1または約1重量パーセント、あるいはより好ましくは0.1または約0.1〜0.7または約0.7重量パーセントの量で存在する。
【0055】
ポリアミド表面樹脂組成物で使用される表面熱安定剤は、それがハロゲン化銅をベースとする熱安定剤ではない限り、あらゆる熱安定剤であることが可能である。ポリアミド表面樹脂組成物で有用な熱安定剤には、3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールが含まれる。1種またはそれ以上の多価アルコールは、独立して、3個以上のヒドロキシル基を含有する脂肪族ヒドロキシル基化合物、3個以上のヒドロキシル基を含有する脂肪族脂環式化合物、3個以上のヒドロキシル基を含有する脂環式化合物および3個以上のヒドロキシル基を含有する糖類から選択されてもよい。
【0056】
多価アルコールの脂肪族鎖は、炭素原子のみではなく、例えば、窒素、酸素および硫黄原子から選択されてもよい1種またはそれ以上のヘテロ原子を含むことができる。多価アルコールに存在する脂環式環は、単環式または二環式もしくは多環式環系の一部であることができ、そして炭素環式または複素環式でもよい。多価アルコールに存在する複素環式環は、単環式または二環式もしくは多環式環系の一部であることができ、そして例えば、窒素、酸素および硫黄原子から選択されてもよい1種またはそれ以上のヘテロ原子を含んでもよい。1種またはそれ以上の多価アルコールは、エーテル、カルボン酸、カルボン酸アミドまたはカルボン酸エステル基などの1種またはそれ以上の置換基を含有してもよい。
【0057】
3個以上のヒドロキシル基を含有する多価アルコールの例には、限定されないが、グリセロール、トリメチロールプロパン、2,3−ジ−(2’−ヒドロキシエチル)−シクロヘキサン−1−オール、ヘキサン−1,2,6−トリオール、1,1,1−トリス−(ヒドロキシメチル)エタン、3−(2’−ヒドロキシエトキシ)−プロパン−1,2−ジオール、3−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−プロパン−1,2−ジオール、2−(2’−ヒドロキシエトキシ)−ヘキサン−1,2−ジオール、6−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−ヘキサン−1,2−ジオール、1,1,1−トリス−[(2’−ヒドロキシエトキシ)−メチル]−エタン、1,1,1−トリス−[(2’−ヒドロキシプロポキシ)−メチル]−プロパン、1,1,1−トリス−(4’−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス−(ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1,3−トリス−(ジヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、1,1,4−トリス−(ジヒドロキシフェニル)−ブタン、1,1,5−トリス−(ヒドロキシフェニル)−3−メチルペンタン、ジ−トリメチロプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、またはトリメチロールプロパンプロポキシレートなどのトリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールなどのポリオール、ならびにシクロデクストリン、D−マンノース、グルコース、ガラクトース、スクロース、フルクトース、キシロース、アラビノース、D−マンニトール、D−ソルビトール、D−またはL−アラビトール、キシリトール、イジトール、タリトール、アリトール、アルトリトール、グイリトール、エリスリトール、トレイトール、D−グロニック−y−ラクトンなどの3個以上のヒドロキシル基を含有する糖類などが含まれる。
【0058】
好ましい多価アルコールには、少なくとも1個の原子によって互いに分離されたそれぞれの炭素原子に結合する一対のヒドロキシル基を有するものが含まれる。特に好ましい多価アルコールは、一対のヒドロキシル基が、1個の炭素原子によって互いに分離されたそれぞれの炭素原子に結合するものである。好ましくは、本明細書に記載されるポリアミド表面樹脂組成物に含まれる1種またはそれ以上の多価アルコールは、独立して、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ジ−トリメチロプロパン、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトールおよびそれらの混合物から選択される。より好ましくは、本明細書に記載されるポリアミド組成物に含まれる1種またはそれ以上の多価アルコールは、独立して、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールおよびそれらの混合物から選択される。なおより好ましくは、本明細書に記載されるポリアミド表面樹脂組成物に含まれる1種またはそれ以上の多価アルコールは、ジペンタエリスリトールおよび/またはペンタエリスリトールである。
【0059】
1種またはそれ以上の多価アルコールは、第1の構成部分または複合材構造のポリアミド表面樹脂組成物の全重量に基づく重量パーセントで、0.25重量パーセント〜15重量パーセント、より好ましくは0.5重量パーセント〜10重量パーセント、そしてなおより好ましくは0.5重量パーセント〜5重量パーセントで本明細書に記載されるポリアミド表面樹脂組成物に存在する。
【0060】
好ましくは、本明細書に記載されるポリアミド組成物に含まれる1種またはそれ以上の多価アルコールは、ジペンタエリスリトールおよび/またはペンタエリスリトールであり、そして第1の構成部分または複合材構造のポリアミド表面樹脂組成物の全重量に基づく重量パーセントで、0.1または約0.1〜3または約3重量パーセント、より好ましくは0.1または約0.1〜1または約1重量パーセント、あるいはより好ましくは0.1または約0.1〜0.7または約0.7重量パーセントで本明細書に記載されるポリアミド表面樹脂組成物に存在する。
【0061】
ポリアミド樹脂
本発明の複合材構造の製造および/またはオーバーモールドされた複合材構造の製造に使用されるポリアミド樹脂は、1種またはそれ以上のジカルボン酸および1種またはそれ以上のジアミン、および/または1種またはそれ以上のアミノカルボン酸の縮合生成物、および/または1種またはそれ以上の環式ラクタムの開環重合生成物である。ポリアミド樹脂は、完全脂肪族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂およびそれらの混合物から独立して選択される。「半芳香族」という用語は、脂肪族カルボン酸モノマーおよび脂肪族ジアミンモノマーを含んでなるポリアミド樹脂を説明する「完全脂肪族」と比較して、少なくともいくつかの芳香族カルボン酸モノマーおよび脂肪族ジアミンモノマーを含んでなるポリアミド樹脂を説明する。
【0062】
完全脂肪族ポリアミド樹脂は、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸およびそれらの反応性等価物などの脂肪族および脂環式モノマーから形成される。適切なアミノカルボン酸には、11−アミノドデカン酸が含まれる。本発明の文脈上、「完全脂肪族ポリアミド樹脂」という用語は、そのようなモノマーの2種以上から誘導されたコポリマー、および2種以上の完全脂肪族ポリアミド樹脂のブレンドを指す。直鎖、分枝状および環式モノマーが使用されてよい。
【0063】
完全脂肪族ポリアミド樹脂の調製に有用なカルボン酸モノマーとしては、限定されないが、例えば、アジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、セバシン酸(C10)、ドデカンジ酸(C12)およびテトラデカンジ酸(C14)などの脂肪族カルボン酸が含まれる。有用なジアミンとしては、限定されないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、および/またはそれらの混合物を含む4個以上の炭素原子を有するものが含まれる。完全脂肪族ポリアミド樹脂の適切な例には、PA6、PA6,6、PA4,6、PA6,10、PA6,12、PA6,14、P6,13、PA6,15、PA6,16、PA11、PA12、PA10、PA9,12、PA9,13、PA9,14、PA9,15、PA6,16、PA9,36、PA10,10、PA10,12、PA10,13、PA10,14、PA12,10、PA12,12、PA12,13、PA12,14、ならびにそれらのコポリマーおよびブレンドが含まれる。本明細書に記載されるポリアミド組成物に含まれる完全脂肪族ポリアミド樹脂の好ましい例としては、PA6、PA11、PA12、PA4,6、PA6,6、PA,10、PA6,12、PA10,10、ならびにそれらのコポリマーおよびブレンドが含まれる。
【0064】
半芳香族ポリアミド樹脂は、酸モノマーの少なくとも一部が1種またはそれ以上の芳香族カルボン酸から選択されるホモポリマー、コポリマー、ターポリマーまたはより高次のポリマーである。1種またはそれ以上の芳香族カルボン酸は、テレフタル酸、またはテレフタル酸と、1種またはそれ以上の、イソフタル酸、例えば2−メチルテレフタル酸などの置換フタル酸、およびナフタレンジカルボン酸の未置換または置換異性体などの他のカルボン酸との混合物であることが可能であり、カルボン酸成分は少なくとも55モルパーセントのテレフタル酸を含有する(カルボン酸混合物に基づくモルパーセントで)。好ましくは、1種またはそれ以上の芳香族カルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸およびそれらの混合物から選択され、そしてより好ましくは、1種またはそれ以上のカルボン酸は、テレフタル酸およびイソフタル酸の混合物であり、混合物は好ましくは少なくとも55モルパーセントのテレフタル酸を含有する。さらに、1種またはそれ以上のカルボン酸を、1種またはそれ以上の、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン二酸などの脂肪族カルボン酸、好ましくはアジピン酸と混合することができる。より好ましくは、半芳香族ポリアミド樹脂の1種またはそれ以上のカルボン酸混合物に含まれるテレフタル酸およびアジピン酸の混合物は、少なくとも25モルパーセントのテレフタル酸を含有する。半芳香族ポリアミド樹脂は、4個以上の炭素原子を有するジアミンから選択されることができる1種またはそれ以上のジアミンを含んでなり、限定されないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、および/またはそれらの混合物が含まれる。半芳香族ポリアミド樹脂の適切な例には、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド6,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(6,T/6,I)、ポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,6/6,T/6,I)、ポリ(カプロラクタム−ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド6/6,T)、ならびにそれらのコポリマーおよびブレンドが含まれる。本明細書に記載されるポリアミド組成物に含まれる半芳香族ポリアミド樹脂のより好ましい例は、PA6,T、PA6,T/6,6、PA6,T/6,I、PAMXD,6、PA6,T/D,T、ならびにそれらのコポリマーおよびブレンドが含まれる。
【0065】
ポリアミドマトリックス樹脂組成物、ポリアミド表面樹脂組成物、および第2の構成部分のポリアミド樹脂のポリアミドとして、脂肪族または半芳香族ポリアミドのあらゆる組み合わせを使用することができる。最終用途次第でポリアミドの適切な組み合わせを選択することは、当業者の通常の技術の範囲内である。
【0066】
第2の構成部分またはオーバーモールドされる構成部分
第1の構成部分または複合材構造をオーバーモールドするために使用されるオーバーモールドされた複合材構造の第2の構成部分は、任意選択的に上記銅をベースとする熱安定剤および任意選択的に強化剤を含んでなるポリアミド樹脂組成物である。1種またはそれ以上のポリアミドは、第1の構成部分または複合材構造マトリックス樹脂および表面樹脂組成物の1種またはそれ以上のポリアミドと同一であっても、異なってもよい。
【0067】
強化剤
第2の構成部分のポリアミド樹脂組成物は、さらに、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、マイカ、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、タルク、焼成粘土、カオリン、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸ナトリウムアルミニウム、バリウムフェライトおよびチタン酸カリウムなどの1種またはそれ以上の強化剤を含んでなってもよい。第2の構成部分の強化剤は、第1の構成部分または複合材構造で使用されるものなどのマットまたは織布であることは不可能である。好ましくは、強化剤は、均一にポリアミドにブレンドされた独立した繊維または粒子を含んでなる。第2の構成部分で使用されるいずれの強化剤も、ポリアミド樹脂組成物が注入またはフロー成形されることを可能にしなければならない。存在する場合、1種またはそれ以上の強化剤は、第2の構成部分のポリアミド樹脂組成物の全重量に基づく重量パーセントで、1または約1重量パーセント〜60または約60重量パーセント、好ましくは1または約1重量パーセント〜40または約40重量パーセント、あるいはより好ましくは1または約1重量パーセント〜35または約35重量パーセントの量で存在する。
【0068】
オーバーモールドされた複合材構造
本発明の構成部分に表面および銅をベースとする熱安定剤を添加することによって、加工の間、ならびに複合材構造またはオーバーモールドされた複合材構造の使用時および経時的に、第1の構成部分または複合材構造および任意選択的に第2の構成部分の熱安定性が改善する。改善された熱安定性に加えて、熱安定剤の存在によって、繊維材料の含浸の間に使用される温度の増加が可能になり得、したがって、本明細書に記載されるマトリックス樹脂の溶融粘度を低下させる。マトリックス樹脂の溶融粘度低下の結果として、繊維材料の含浸速度は増加し得る。
【0069】
ポリアミドマトリックス樹脂組成物および第1の構成部分または複合材構造のポリアミド表面樹脂組成物における異なる熱安定剤の使用は、本発明の重要な態様である。ポリアミド表面樹脂組成物における表面熱安定剤と組み合わせてのポリアミドマトリックス樹脂組成物における銅をベースとする熱安定剤の使用によって、複合材構造の熱老化特性が改善する。
【0070】
好ましい実施形態において、表面熱安定剤は、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールおよびこれらの混合物から選択され、そしてマトリックス樹脂組成物のマトリックス熱安定剤は、銅をベースとする熱安定剤である。
【0071】
オーバーモールドされた複合材構造は、第1の構成部分または複合材構造の上にオーバーモールドされた第2の構成部分を含んでなる。第2の構成部分は、第1の構成部分または複合材構造の上部または底面表面の少なくとも一部分、第1の構成部分または複合材構造の上部または底面の全て、または両方において、上記第1の構成部分または複合材構造に結合するか、あるいは第1の構成部分または複合材構造を完全に封入する。第1の構成部分または複合材構造の表面のどの部分がオーバーモールドされるかに関係なく、オーバーモールドされる第1の構成部分または複合材構造の表面は、第1および第2の構成部分の良好な結合強度を確実にするため、ポリアミド表面樹脂組成物を含まなければならない。第2の構成部分は、上記のものなどの脂肪族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせから選択される1種またはそれ以上のポリアミド樹脂組成物を含んでなる。
【0072】
添加剤
複合材構造またはオーバーモールドされた複合材構造のいずれの構成部分のポリアミド樹脂も、さらに、限定されないが、ポリマーコンパウンド技術において既知の紫外線光安定剤、難燃剤、フロー向上添加剤、潤滑剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料、カーボンブラックなどを含む)、核形成剤、結晶化促進剤および他の加工助剤またはそれらの混合物を含む1種またはそれ以上の一般的な添加剤を含んでもよい。
【0073】
上記充填材、変性剤および他の成分は、当該技術で周知の量および形態で存在してよく、粒子の少なくとも1つの寸法が1〜1000nmの範囲である、いわゆるナノ材料の形態を含む。
【0074】
好ましくは、熱安定剤を含むが本発明の第1の構成部分または複合材構造に使用される繊維材料を除く、複合材構造および/またはオーバーモールドされた複合材構造のいずれかの構成部分に使用されるポリアミド樹脂に添加されるいずれの添加剤も、ポリアミド樹脂内で十分に分散される。本発明のポリアミド樹脂および添加剤を組み合わせるために、いずれの溶融混合法も使用されてよい。例えば、ポリアミド樹脂および添加剤は、例えば、一軸または二軸押出機、ブレンダー、一軸または二軸ニーダー、あるいはバンブリー攪拌器などの溶融攪拌器に、単一工程での添加によって全て一度に、または段階的に添加されて、次いで溶融混合されてもよい。段階的にポリアミド樹脂および追加の添加剤を添加する場合、ポリアミド樹脂および/または添加剤の一部を最初に添加して、溶融混合し、その後、残りのポリアミド樹脂および添加剤を添加して、十分に混合された、または均一な組成物が得られるまでさらに溶融混合する。
【0075】
本発明によるオーバーモールドされた複合材構造は、第1の構成部分または複合材構造を第2の構成部分でオーバーモールドする工程を含んでなるプロセスによって製造されてもよい。「オーバーモールドする」とは、第2の構成部分が、第1の構成部分または複合材構造の表面の少なくとも一部分上へ成形されるか、または押出成形されることを意味する。
【0076】
オーバーモールドプロセスの一例において、第1および第2の構成部分が、第1の構成部分または複合材構造の表面の少なくとも一部分において互いに結合するように、第2の構成部分は、以下に記載されるようにあらかじめ製造された第1の構成部分または複合材構造がすでに含まれる型に注入される。第1の構成部分または複合材構造は、最終オーバーモールドされた複合材構造の外部表面を画定するキャビティを有する型に配置される。第2の構成部分は、第1の構成部分または複合材構造の片側または両側でオーバーモールドされてもよく、そして第1の構成部分または複合材構造を完全に、または部分的に封入してもよい。型に第1の構成部分または複合材構造を配置した後、次いで、第2の構成部分が溶融形態で導入される。2つの構成部分は、オーバーモールド工程として、好ましくは射出または圧縮成形によって、そしてより好ましくは射出成形によって一緒に結合される。
【0077】
第1の構成部分または複合材構造は、ポリアミドマトリックス樹脂組成物で繊維材料を含浸する工程であって、第1の構成部分または複合材構造の表面の少なくとも一部分がポリアミド表面樹脂組成物を含んでなる工程を含んでなるプロセスによって製造することができる。好ましくは、繊維材料は、サーモプレスすることによって、ポリアミドマトリックス樹脂組成物で含浸される。サーモプレスの間、ポリマーを溶融させて、繊維材料に浸透させ、したがって、上記繊維材料を含浸するため、繊維材料、ポリアミドマトリックス樹脂組成物およびポリアミド表面樹脂組成物は熱および圧力を受ける。
【0078】
典型的に、適切な含浸を可能にするため、サーモプレスは、2〜100バール、より好ましくは10〜40バールの圧力で、そしてポリアミドマトリックス樹脂組成物およびポリアミド表面樹脂組成物の融点より高い温度、好ましくは融点より少なくとも約20℃高い温度で実行する。加熱は、接触加熱、輻射ガス加熱、赤外線加熱、対流または強制対流、誘導加熱、マイクロ波加熱またはそれらの組み合わせを含む様々な手段によって行われてもよい。ポリアミド組成物がサーモプレスの間、溶融状態にある場合であっても、ポリアミド表面樹脂組成物は、いずれかの重要な程度まで、表面から移行しない。サーモプレス後、第1の構成部分または複合材構造は、一体化された構成部分構造以外の別々の層を有するラミネート構造ともはや考えられない。
【0079】
ポリアミド表面樹脂組成物における表面熱安定剤と組み合わせて銅をベースとする熱安定剤をポリアミドマトリックス樹脂組成物に添加することによって得られた改善された熱安定性により、繊維材料の含浸の間に使用される温度を増加させることができる。温度のこの増加によって得られるポリアミドマトリックス樹脂組成物の溶融粘度の低下によって、繊維材料のより迅速な含浸速度が可能となり、これは、より迅速な複合材構造および/またはオーバーモールド複合材構造の全体的な製造サイクルに変換される。ポリアミドマトリックス樹脂組成物へのハロゲン化銅をベースとする熱安定剤の添加によって、含浸の間にポリアミドマトリックス樹脂組成物に熱安定性がもたらされる。
【0080】
含浸プロセスの間に使用される圧力は、静的プロセスによって、または連続的プロセス(動的プロセスとしても知られる)によって加えることが可能であり、速度の理由で連続的プロセスが好ましい。含浸プロセスの例には、限定されないが、真空成形、インモールドコーティング、クロスダイ押出成形、引き抜き成形、ワイヤーコーティング型プロセス、ラミネーション、スタンピング、ダイヤフラム形成またはプレス成形が含まれ、ラミネーションが好ましい。
【0081】
繊維材料を含浸するために使用されるプロセスの一例は、ラミネーションプロセスである。ラミネーションプロセスの第一工程は、加熱ゾーンにおいて対立する加圧ローラーまたはベルトを通して、繊維材料、ポリアミドマトリックス樹脂組成物およびポリアミド表面樹脂組成物に適用される熱および圧力が関与し、好ましくは、続いて、圧密を完成させるために冷却領域において圧力が連続適用され、そして加圧手段によって含浸された繊維材料を冷却する。ラミネーション技術の例には、限定されないが、カレンダー仕上げ、フラットベッドラミネーションおよび二重ベルトプレスラミネーションが含まれる。含浸プロセスとしてラミネーションが使用される場合、好ましくは、ラミネーションに二重ベルトプレスが使用される。ラミネーションプロセスは、ポリアミドマトリックス樹脂組成物および繊維材料の様々な層の組み合わせを含んでなってもよい。ポリアミド表面樹脂組成物は、ラミネーションプロセスの間、上部層、または上部および底面層の両方として常に使用される。例えば、多層ラミネートは、2層のポリアミドマトリックス樹脂組成物層、繊維層として1層の織物連続ガラス繊維テキスタイル、2層のポリアミドマトリックス樹脂組成物層、1層の織物連続ガラス繊維テキスタイル、2層のポリアミドマトリックス樹脂組成物層、1層の織物連続ガラス繊維テキスタイルおよび2層のポリアミド表面層を含んでなり、11層ラミネートが製造されてもよい。ラミネーションプロセスを使用する繊維材料の含浸後、最終製品は本発明の第1の構成部分または複合材構造であり、次いでオーバーモールド可能である。このプロセスによって調製される第1の構成部分または複合材構造は、もはや多層ラミネートでなく、識別できる個々の層のない一体化された構造(ポリマー連続体)である。
【0082】
ポリアミドマトリックス樹脂組成物およびポリアミド表面樹脂組成物は、例えば、粉末コーティング、フィルムラミネーション、押出コーティング、またはそれらの2種以上の組み合わせなどの従来の手段によって繊維材料に適用されることも可能であるが、ただし、ポリアミドオーバーモールド樹脂組成物が第1の構成部分または複合材構造の表面の少なくとも一部分に適用される場合、接近可能となるように、ポリアミド表面樹脂組成物が第1の構成部分または複合材構造の表面の少なくとも一部分上に適用されることを条件とする。
【0083】
粉末コーティングプロセスの間、従来の粉砕方法によって得られたポリマー粉末を繊維材料に適用する。粉末は、分散、振りかけ、噴霧、熱または火炎噴霧、あるいは流動床コーティング法によって繊維材料上に適用されてもよい。複数の粉末コーティング層を繊維材料に適用することができる。任意選択的に、粉末コーティングプロセスは、繊維材料上での粉末のポスト焼結工程である工程をさらに含んでもよい。ポリアミドマトリックス樹脂組成物およびポリアミド表面樹脂組成物は、第1の構成部分または複合材構造の表面の少なくとも一部分がポリアミド表面樹脂組成物を含んでなるように、繊維材料に適用される。その後、加圧領域の外側の粉末コーティングされた繊維材料を任意選択的に予熱して、粉末コーティングされた繊維材料上にサーモプレスを実行する。
【0084】
フィルムラミネーションの間、例えば、ブローフィルム押出成形、キャストフィルム押出成形およびキャストシート押出成形などの当該技術で既知の従来の押出法によって得られた、ポリアミドマトリックス樹脂組成物を含んでなる1枚またはそれ以上のフィルム、およびポリアミド表面樹脂組成物から製造された1枚またはそれ以上であるフィルムを、例えば、層化によって繊維材料に適用する。ポリアミド表面樹脂組成物は、再び、サーモプレスの前にフィルムラミネートの上部または底面、あるいは上部および底面層である。その後、ポリアミドマトリックス樹脂組成物、ポリアミド表面樹脂組成物、および1種またはそれ以上の繊維材料から製造された1枚またはそれ以上のフィルムを含んでなるフィルムラミネート上でサーモプレスを実行する。サーモプレスの間、フィルムは溶融し、そしてポリアミドマトリックス樹脂が繊維材料を包囲するポリマー連続体として、繊維材料の周囲で浸透する。ポリアミド表面樹脂組成物は、第1の構成部分または複合材構造の表面上に残存する。
【0085】
押出コーティングの間、マトリックス樹脂組成物から製造されたペレットおよび/または粒状体、ならびに表面樹脂組成物から製造されたペレットおよび/または粒状体は、フィルムラミネーションプロセスと同様の様式で、溶融し、そして1つまたはそれ以上の溶融カーテンを形成するように、1個またはそれ以上のフラットダイを通して押出され、次いで、1つまたはそれ以上の溶融カーテンを配置することによって、溶融カーテンは繊維材料上へ適用される。その後、本発明の第1の構成部分または複合材構造を提供するために、サーモプレスを層化構造上で実行する。
【0086】
第1の構成部分または複合材構造と第2の構成部分との間の結合強度を改善する目的で、オーバーモールド工程の前に、第1の構成部分または複合材構造は、典型的に、ポリアミドマトリックス樹脂組成物の溶融温度付近であるが、溶融温度以下の温度で加熱され、次いで、加熱された第1の構成部分または複合材構造を迅速に、加熱された型に移動して、これはオーバーモールド工程に使用される。そのような予熱工程は、接触加熱、輻射ガス加熱、赤外線加熱、対流または強制対流加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱またはそれらの組み合わせを含む様々な手段によって行われてもよい。
【0087】
最終用途次第で、第1の構成部分または複合材構造は、オーバーモールド工程の前に、所望の形状または形態に成形されてもよく、あるいはシートの形態で使用されてもよい。第1の構成部分または複合材構造は可撓性であってもよく、その場合は、巻き上げて、次いで、オーバーモールドするために広げることができる。
【0088】
第1の構成部分または複合材構造を形成するための1つのプロセスは、含浸工程の後に第1の構成部分または複合材構造を形成する工程を含んでなる。第1の構成部分または複合材構造を成形する工程は、圧縮成形、スタンピング、あるいは熱および/または圧力を使用するいずれかの技術によって実行されてもよく、圧縮成形およびスタンピングが好ましい。好ましくは、圧力は油圧成形プレスを使用することによって加えられる。圧縮成形またはスタンピングの間、複合材構造は、ポリアミド表面樹脂組成物の溶融温度より高い温度まで、そして好ましくは加熱手段によってポリアミドマトリックス樹脂組成物の溶融温度より高い温度まで予熱されて、そして、最終的な所望形状のキャビティを有する型を含有する成形プレスなどの形成手段に移され、それによって、所望形態に成形され、そしてその後、ポリアミド表面樹脂組成物の溶融温度より低い温度まで、そして好ましくはポリアミドマトリックス樹脂組成物の溶融温度より低い温度まで冷却した後にプレスまたは型から移される。
【0089】
複合材構造および/またはオーバーモールドされた複合材構造の製造間の1つの課題は、上記の予熱工程の間および形成工程の間の第1の構成部分または複合材構造の熱酸化および劣化、特に第1の構成部分または複合材構造の表面の熱劣化に関連する。本発明は、良好な熱安定性を有する第1の構成部分または複合材構造を提供するのみでなく、第2の構成部分に対する優れた結合強度を有する第1の構成部分も提供する。これは、高温操作製造環境への曝露間の機械性能の劣化に抵抗する複合材構造および/またはオーバーモールドされた複合材構造を導き、そして優れた長期曲げ強度(結合強度)を提供する。
【0090】
オーバーモールドされた複合材構造の第1の構成部分または複合材構造と第2の構成部分との間の接着性を改善する目的で、第1の構成部分または複合材構造の表面は、オーバーモールドするために利用可能な比表面を増加させるために、テクスチャ表面であってもよい。そのようなテクスチャ表面は、その表面に例えば小孔またはインデントを有するプレスまたは型を用いる形成工程の間に得られてもよい。
【0091】
あるいは、単一成形ステーションで第1の構成部分または複合材構造を形成し、オーバーモールドする工程を含んでなる1工程プロセスが使用されてもよい。この1工程プロセスは、型またはプレスにおける第1の構成部分または複合材構造の圧縮成形またはスタンピング工程を省略し、そして任意の予熱工程および成形ステーションまたはキャビティへの予熱された第1の構成部分または複合材構造の移動を省略する。この1工程プロセスの間、第1の構成部分または複合材構造は、成形ステーションの外側で、それに隣接して、またはその中で、第1の構成部分または複合材構造が、オーバーモールド工程の間、適合しているか、または形成可能である温度で加熱され、好ましくは、第1の構成部分または複合材構造は、その溶融温度より高い温度まで加熱される。第1の構成部分または複合材構造の形状は、続いてオーバーモールドが行われる型によって与えられる。
【0092】
本発明による複合材構造および/またはオーバーモールドされた複合材構造は、例えば、自動車、トラック、民間航空機、航空宇宙、鉄道、家庭用機器、コンピュータハードウェア、携帯型ハンドヘルド電子デバイス、レクリエーションおよびスポーツ装置用の部品、機械用、ビル用、光電子装置用または機械的デバイス用の構造部品などの広範囲の種々の用途で使用されてもよい。
【0093】
自動車用途の例としては、限定されないが、シート部品およびシートフレーム、エンジンカバーブラケット、エンジンクレイドル、サスペンションアームおよびクレイドル、スペアタイヤウェル、シャシー強化材、フロアパン、フロントエンドモジュール、ステアリングコラムフレーム、インストルメントパネル、ドアシステム、ボディパネル(例えば水平ボディパネルおよびドアパネル)、テールゲート、ハードトップフレーム構造、コンバーチブルトップフレーム構造、ルーフィング構造、エンジンカバー、トランスミッションおよびパワー供給部品のためのハウジング、オイルパン、エアバッグハウジングキャニスター、自動車内部インパクト構造、エンジンサポートブラケット、クロスカービーム、バンパービーム、歩行者用セーフティビーム、ファイアウォール、リアパーセルシェルフ、クロスビヒクルバルクヘッド、圧力容器、例えば、冷却剤ボトル、消火器、トラック圧縮エアブレーキシステム容器、ハイブリッド内部燃焼/電気または電気自動車バッテリートレイ、自動車サスペンションウイッシュボーンおよびコントロールアーム、サスペンションスタビライザリンク、リーフスプリング、ビヒクルホイール、レクリエーショナルビヒクルおよびオートバイスイングアーム、フェンダー、ルーフィングフレームおよびタンクフラップが含まれる。
【0094】
家庭用機器の例は、限定されないが、洗濯機、乾燥器、冷蔵庫、空気調節および暖房が含まれる。レクリエーションおよびスポーツの例には、限定されないが、インライン−スケート部品、野球バット、ホッケースティック、スキーおよびスノーボードバインディング、リュックサックバックおよびフレーム、ならびに自転車フレームが含まれる。機械用構造部品の例には、例えば、ハンドヘルド電子デバイス、コンピュータ用のハウジングなどの電気/電子機器部分が含まれる。
【0095】
好ましくは、本発明の複合材構造および/またはオーバーモールドされた複合材構造は、高温環境が存在する自動車のボンネット下の部品として使用される。
【実施例】
【0096】
本発明による複合材構造の実施例(表中「E」と略される)および比較例の複合材構造(表中「C」と略される)を調製するために、以下の材料を使用した。
【0097】
ポリアミド1(PA1):アジピン酸および1,6−ヘキサメチレンジアミンを含んでなり、約32000ダルトンの重量平均分子量を有し、E.I.du Pont de Nemours and Company社からPA66として商業的に入手可能なポリアミド。PA1は、約260℃〜約265℃の融点および約40℃〜約70℃のガラス転移を有し、これはDSC器具によって最初に10℃/分で加熱走査して測定された。
【0098】
多価アルコールをベースとする熱安定剤(DPE):Di−Penta 93として、Perstorp Speciality Chemicals AB社,Perstorp,スウェーデンから商業的に入手可能なジペンタエリスリトール。
【0099】
銅をベースとする熱安定剤(CuI/KI):Ciba Specialty Chemicals社から入手可能な、ヨウ化カリウム、ヨウ化第一銅、およびステアリン酸アルミニウムの7−1−1(重量で)ブレンドのブレンド。
【0100】
フィルムの調製
表1に示される実施例E1および比較例C1、C2、C3のマトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物は、約280℃で、二軸押出機で溶融または溶融ブレンドされた。約280℃でアダプターおよびフィルムダイによって押出機から出し、約100℃にオイル加熱されたキャスティングドラム上にキャストし、次いで、空気中で引き抜き、そして室温でコアの周りに巻くことによって、溶融または溶融ブレンドされたポリアミド組成物(表1)からフィルムを製造した。マトリックスおよび表面樹脂組成物は、約250ミクロン厚膜に製造された。フィルムの厚さは、引き抜きの速度によって制御された。
【0101】
複合材構造の調製
表1のE1、C1、C2およびC3の複合材構造の調製は、表1に示される組成物のフィルム、および織物連続ガラス繊維テキスタイル(17ミクロンの直径を有し、0.4%のシランベースサイジング剤でサイジングされ、そして1200g/kmの公称移動テックスを有するE−ガラス繊維、600g/mの範囲重量で、2/2ツイル(バランス織り)に織られたもの)の複数の層を、以下の配列でラミネートすることで実行された:表面樹脂組成物の2枚の層のフィルム、1層の織物連続ガラス繊維テキスタイル、2層のマトリックス樹脂組成物層のフィルム、1層の織物連続ガラス繊維テキスタイル、2層のマトリックス樹脂組成物層のフィルム、1層の織物連続ガラス繊維テキスタイルおよび2層の表面樹脂層のフィルム。
【0102】
複合材構造は、8インチのプラテンを用いるDake Press(Grand Haven,Mich)Model 44−225、圧力範囲0〜25KTによって圧縮成形された。上記フィルムおよびガラス織物層の6×6インチ試験片を型に配置し、そして約320℃の温度まで加熱し、圧力を用いずに2分間この温度に保持し、次いで以下の圧力で320℃の温度でプレスした:約2分間約6バール、次いで、さらに約2分間約22バール、次いで、さらに約2分間約45バール。これをその後、周囲温度まで冷却した。そのようにして形成された複合材構造は約1.6mmの厚さを有した。複合材構造は約245℃(融解開始)〜約268℃(融解終了)の融解範囲を有し、融解ピークは約260℃〜265℃であった。これはDSC器具によって最初に10℃/分で加熱走査して測定された。
【0103】
熱老化
ラミネートを、ダイヤモンドエッジブレードを備えたMK−377 Tile Sawおよび潤滑剤として水を用いて、幅1/2インチ(約12.7mm)×長さ3インチ(約76mm)の試験片(バー)に切断した。試験片の半分を210℃の循環空気オーブンで500時間熱老化した。
【0104】
表1の複合材構造の曲げ強度
曲げ強度は、3点曲げ法により、熱老化された試験片において試験された。装置および形状はISO方法178に従い、2.0インチ支点幅で試験片を曲げ、荷重端部がスパンの中央にある。試験は、破損するまで2mm/分で1KN荷重で実行された。結果は、熱老化されていない試験片の試験結果とともに表1に示される。熱老化後の曲げ強度の保持率%も表1に記録する。表1中、マトリックス樹脂組成物中に銅をベースとする熱安定剤および表面樹脂組成物中にDPEを含有する実施例E1は、空気中210℃で500時間熱老化後に曲げ強度を保持する(39%曲げ強度保持)ことが見られる。対照的に、それぞれ、マトリックスおよび表面樹脂組成物の両方にDPEを含有する(C1)、マトリックスおよび表面樹脂組成物の両方に銅をベースとする熱安定剤およびDPEの両方を含有する(C2)、熱安定剤を含有しない(C3)比較例C1、C2およびC3では、空気中210℃で500時間熱老化後に曲げ強度をより失った。
【表1】
【0105】
以下、本発明の好ましい態様を示す。
1.ポリアミドマトリックス樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜3または約3重量パーセントの銅をベースとする熱安定剤を含んでなるポリアミドマトリックス樹脂組成物と、
織物または不織物構造、フェルト、ニット、ブレイズ、テキスタイル、繊維バッティングまたはマットおよびこれらの組み合わせから選択される繊維材料と、
ポリアミド表面樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜3重量パーセントの表面熱安定剤を含んでなるポリアミド表面樹脂組成物と
を含んでなる複合材構造であって、
前記表面熱安定剤が、前記銅をベースとする熱安定剤とは異なり、そして
前記繊維材料が、前記ポリアミドマトリックス樹脂組成物で含浸される、複合材構造。
2.前記マトリックス樹脂組成物の前記ポリアミドおよび前記表面樹脂組成物の前記ポリアミドが、PA6、PA11、PA12、PA4,6、PA6,6、PA,10、PA6,12、PA10,10、PA6T、PA6I、PA6I/6T、PA6,T/6,6、PAMXD6、PA6T/DT、ならびにそれらのコポリマーおよびブレンドから独立して選択される、上記1に記載の複合材構造。
3.前記ポリアミドマトリックス樹脂組成物および前記ポリアミド表面樹脂組成物が、PA6、PA6,6またはこれらのブレンドから独立して選択される、上記1または2に記載の複合材構造。
4.前記表面熱安定剤が、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールおよびこれらの混合物から選択される、上記1〜3のいずれか一項に記載の複合材構造。
5.前記銅をベースとする熱安定剤が、10〜50重量パーセントのハロゲン化銅、50〜90重量パーセントのヨウ化カリウム、および0〜15重量パーセントのステアリン酸金属の混合物である、上記1〜4のいずれか一項に記載の複合材構造。
6.前記繊維材料が、前記複合材構造の30体積パーセント〜60体積パーセントである、上記1〜5のいずれか一項に記載の複合材構造。
7.前記表面樹脂組成物および/または前記マトリックス樹脂組成物が、1種以上の衝撃改質剤、1種以上の酸化安定剤、1種以上の強化剤、1種以上の紫外線光安定剤、1種以上の難燃剤あるいはそれらの混合物をさらに含んでなる、上記1〜6のいずれか一項に記載の複合材構造。
8.上記1〜7のいずれか一項に記載の複合材構造から製造される物品。
9.自動車、トラック、民間航空機、航空宇宙、鉄道、家庭用機器、コンピュータハードウェア、ハンドヘルドデバイス、レクリエーションおよびスポーツ用の部品、機械用の構造部品、ビル用の構造部品、光電子装置用の構造部品または機械的デバイス用の構造部品の形態である、上記8に記載の物品。
10.自動車パワートレインカバーおよびハウジング、エンジンカバーブラケット、ステアリングコラムフレーム、オイルパン、ならびに排気装置部品の形態である、上記8に記載の物品。
11.熱および圧力下、マトリックス樹脂組成物で繊維材料を含浸する工程を含んでなる、複合材構造の製造方法であって、前記複合材構造の表面の少なくとも一部分が、表面樹脂組成物を含んでなり、
前記複合材構造が、
ポリアミドマトリックス樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜3または約3重量パーセントの銅をベースとする熱安定剤を含んでなるポリアミドマトリックス樹脂組成物と、
織物または不織物構造、フェルト、ニット、ブレイズ、テキスタイル、繊維バッティングまたはマットおよびこれらの組み合わせから選択される繊維材料と、
ポリアミド表面樹脂組成物の重量に基づき、0.1〜3重量パーセントの表面熱安定剤を含んでなるポリアミド表面樹脂組成物と
を含んでなる方法。
12.前記表面熱安定剤が、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールおよびこれらの混合物から選択される、上記11に記載の方法。
13.前記表面熱安定剤がジペンタエリスリトールである、上記12に記載の方法。
14.上記1〜7のいずれか一項に記載の複合材構造、
ならびに
ポリアミド樹脂組成物を含んでなり、そして
ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズおよびアラミド繊維から選択される強化剤を含んでなっていてもよく、
そして前記第1の構成部分上へオーバーモールドされる第2の構成部分であって、
前記第1の構成部分の表面の少なくとも一部分に接着される第2の構成部分
を含んでなるオーバーモールド複合材構造。
15.上記1〜7のいずれか一項に記載の複合材構造上へ第2の構成部分をオーバーモールドする工程を含んでなる、オーバーモールド複合材構造の製造方法であって、
前記第2の構成部分が、ポリアミド樹脂組成物を含んでなり、そしてガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズおよびアラミド繊維から選択される強化剤を含んでなっていてもよい方法。