(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972917
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】空間的に閉じ込められた誘電体領域を含む半導体構造
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20160804BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20160804BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20160804BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/20
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-2688(P2014-2688)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-160807(P2014-160807A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年3月12日
(31)【優先権主張番号】14/140,222
(32)【優先日】2013年12月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/752,258
(32)【優先日】2013年1月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597161115
【氏名又は名称】インターナショナル レクティフィアー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エイ ブリエール
【審査官】
棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−093037(JP,A)
【文献】
特開平04−260337(JP,A)
【文献】
特開2007−059595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/337−338
H01L 21/20
H01L 29/778
H01L 29/80−812
H01L 27/095−098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IV族基板上に製造されたドレイン、ソース及びゲートを含むIII族窒化物電界効果トランジスタ(FET)、及び
前記基板内に前記ドレインの下部に形成された、空間的に閉じ込められた誘電体領域を備え、該空間的に閉じ込められた誘電体領域は、前記III族窒化物電界効果トランジスタ(FET)内のIII族窒化物層の厚さに基づく幅を有し、
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域が前記ドレイン対前記基板の容量結合を低減し、
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域の全側面が前記基板により包囲されている、
ことを特徴とする半導体構造。
【請求項2】
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域は前記ドレインの下部にほぼ中心に位置する、請求項1記載の半導体構造。
【請求項3】
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域はシリコン酸化物を備える、請求項1記載の半導体構造。
【請求項4】
前記基板はIV族半導体基板を備える、請求項1記載の半導体構造。
【請求項5】
前記基板はシリコン基板及び複合シリコン基板のうちの1つである、請求項1記載の半導体構造。
【請求項6】
前記III族窒化物FETはIII族窒化物高電子移動度トランジスタ(HEMT)を備える、請求項1記載の半導体構造。
【請求項7】
IV族基板上に製造されたドレイン、ソース及びゲートを含むIII族窒化物電界効果トランジスタ(FET)、及び
前記基板内に前記ソース及び前記ドレインの各々の下部に形成された、空間的に閉じ込められた誘電体領域を備え、該空間的に閉じ込められた誘電体領域は、前記III族窒化物電界効果トランジスタ(FET)内のIII族窒化物層の厚さに基づく幅を有し、
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域が前記ソース及び前記ドレイン対前記基板の容量結合を低減し、
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域の全側面が前記基板により包囲されている、
ことを特徴とする半導体構造。
【請求項8】
空間的に閉じ込められた誘電体領域をIV族基板内に形成するステップ、
前記基板上にドレイン、ソース及びゲートを含むIII族窒化物電界効果トランジスタ(FET)を製造するステップ、及び
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域の上及び前記III族窒化物FETの下にシリコン横方向エピタキシャル過成長層を形成するステップを備え、前記基板はシリコンを含み、
前記III族窒化物FETの前記ドレインは、前記ドレイン対前記基板の結合容量を低減するために、前記空間的に閉じ込められた誘電体領域の上方に形成され、前記空間的に閉じ込められた誘電体領域は、前記III族窒化物電界効果トランジスタ(FET)内のIII族窒化物層の厚さに基づく幅を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域は前記基板への酸素注入によって形成される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域は前記ドレインの下部にほぼ中心に位置する、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記基板はIV族半導体基板を備える、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記基板はシリコン基板及び複合シリコン基板のうちの1つである、請求項8記載の方法。
【請求項13】
空間的に閉じ込められた誘電体領域をIV族基板内に形成するステップ、
前記基板上にドレイン、ソース及びゲートを含むIII族窒化物電界効果トランジスタ(FET)を製造するステップ、及び
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域の上及び前記III族窒化物FETの下にシリコン横方向エピタキシャル過成長層を形成するステップを備え、
前記III族窒化物FETの前記ドレイン及び前記ソースの各々は、前記ドレイン及び前記ソース対前記基板の結合容量を低減するために、前記それぞれ1つの空間的に閉じ込められた誘電体領域の上方に形成され、前記空間的に閉じ込められた誘電体領域は、前記III族窒化物電界効果トランジスタ(FET)内のIII族窒化物層の厚さに基づく幅を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記空間的に閉じ込められた誘電体領域は前記基板への酸素注入によって形成される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記基板はIV族半導体基板を備える、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記基板はシリコン基板及び複合シリコン基板のうちの1つである、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年1月14日に「III-Nitride Transistor Including Spatially Defined Buried Dielectric」という名称で出願された米国特許仮出願第61/752,258号の優先権の利益を主張する。この継続中の仮出願の開示内容は参照することにより本出願に全て組み込まれる。
【0002】
さらに、下記の米国特許及び特許出願の各々も参照することによりその全体が本出願に組み込まれる。
米国特許第6,649,287号(発効日02/22/2011;名称「Gallium Materials and Methods」)
米国特許第7,892,938号(発効日02/22/2011;名称「Structure and Method for III-Nitride Monolithic power IC」)
米国特許第7,915,645号(発効日03/29/2011;名称「Monolithic Vertically Integrated Composite Group III-V and group IV Semiconductor Device and Method for fabricating Same」)
米国特許第7,999,288号(発効日08/16/2011;名称「High Voltage Durability III-Nitride Semiconductor Device」)
米国特許第8,159,003号(発効日04/17/2012;名称「III-Nitride Wafer and Devices Formed in a III-Nitride Wafer」)
米国特許出願第13/197,514号(出願日08/03/2011;名称「High Voltage III-Nitride Transistor」)
米国特許出願第13/197,676号(出願日08/03/2011;名称「High Voltage III-Nitride Transistor」)
米国特許出願第13/544,829号(出願日07/09/2012;名称「Composite Semiconductor Device With a SOI Substrate Having an Integrated Diode」)
米国特許出願第13/945,276号(出願日07/18/2013;名称「Integrated III-Nitride and Silicon Device」)
【0003】
定義
本明細書で使用される、用語「III−V族」は少なくとも1つのIII族元素と少なくとも1つのV族元素を含む化合物半導体を意味する。例えば、III−V族半導体は、III族窒化物半導体の形を取り得る。「III族窒化物」又は「III−N」は窒素とアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びボロン(B)などの少なくとも1つのIII族元素を含む化合物半導体を意味し、例えば窒化アルミニウムガリウム(Al
xGa
(1-x)N、窒化インジウムガリウムIn
yGa
(1-y)N、窒化アルミニウムインジウムガリウムAl
xIn
yGa
(1-x-y)N、砒化リン化窒化ガリウム(GaAs
aP
bN
(1-a-b))、砒化リン化窒化アルミニウムインジウムガリウム(Al
xIn
yGa
(1-x-y)As
aP
bN
(1-a-b))などの合金を含むが、これらに限定されない。また、III族窒化物は一般に、Ga極性、N極性、半極性又は非極性結晶方位などの任意の極性を有するが、これらに限定されない。また、III族窒化物材料は、ウルツ鉱型、閃亜鉛鉱型、あるいは混合ポリタイプ(結晶多形)のいずれかを含むことができ、単結晶又はモノクリスタル、多結晶、または非結晶の結晶構造を含むことができる。本明細書で使用される、「窒化ガリウム」、「GaN」はIII族窒化物化合物半導体を意味し、III族元素は若干量又は相当量のガリウムを含むが、ガリウムに加えて他のIII族元素も含むことができる。
【0004】
さらに、本明細書で使用される、用語「IV族」はシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)及び炭素(C)などの少なくとも1つのIV族の元素を意味し、例えばシリコンゲルマニウム(SiGe)及び炭化シリコン(SiC)などの化合物半導体も含む。また、IV族は歪化されたIV族材料を生成するためにIV族元素の2つ以上の層又はIV族元素のドーピングを含む半導体材料も意味し、例えばシリコン・オン・インシュレータ(SOI)、酸素注入分離基板(SIMOX)及びシリコンオンサファイヤ(SOS)などのIV族ベースの複合基板又はシリコン複合基板も含み得る
【背景技術】
【0005】
III族窒化物材料のようなIII−V族半導体は、比較的広いバンドギャップを有するとともに強い圧電分極を有することができ、高い降伏電界、高い飽和速度及び2次元電子ガス(2DEG)の生成を可能にする半導体化合物である。その結果、III族窒化物材料及び他のIII−V族半導体は、多くのマイクロ電子応用において高電子移動度トランジスタ(HEMT)のようなヘテロ構造FET(HFET)を含む電界効果トランジスタ(FET)として適している。
【0006】
III族窒化物は広いバンドギャップ材料として知られているが、酸化シリコン(SiO
2)に比較して相対的に高い誘電率を有する。例えば、約3.9のSiO
2の誘電率に比較して、砒化ガリウム(GaN)は約9.5の誘電率を有し、窒化アルミニウム(AlN)は約9.1の誘電率を有する。その結果、III族窒化物ベースのFETを高電圧スイッチング用に使用するとき、装置基板に達するまでのIII族窒化物材料の下層間の寄生容量のために所定の電圧においてスイッチング時間が遅くなるとともにスイッチング電荷が高くなり得る。従って、FETのソースとFETの基板との間の寄生容量の増大がFETの高いスイッチング性能に対して望ましくない結果をもたらし得る。
【0007】
従来技術において、基板内のソース及びドレイン領域を変更することによってIII族窒化物装置の降伏電圧を増大する様々な方法が開発されているが、それらの方法は他の性能上の不利益を被る。一つのこのような技術は、基板の背面をIII族窒化物装置のソース及び/又はドレイン領域の下部で部分的にエッチ除去する。この技術は装置の降伏電圧を増大するが、逆にIII族窒化物装置の生成が悪い熱特性及び不安定な表面状態で行われるという不利益をもたらす。
【0008】
従来使用されている第2の技術は、基板内にIII族窒化物装置のドレイン領域の下部に位置するPN接合を形成する。しかしながら、この方法は一般にPN接合リークを特に高温で生じ、相対的に高い基板結合容量も生じ得る。従って、安定な高電圧、高い温度性能を低減された対基板寄生容量とともに維持しながら、速いスイッチング時間及び低いスイッチング電荷を示すIII族窒化物電力装置を形成する代替方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本出願は、空間的に閉じ込められた誘電体領域含む半導体構造を目的とし、この半導体構造は少なくとも1つの図面に示され及び/又は該図面と関連して説明され、請求の範囲により完全に特定される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の一実施形態による、空間的に閉じ込められた誘電体領域を含む模範的な半導体構造の断面図を示す。
【
図3A】本発明の一実施形態による、複数の空間的に閉じ込められた誘電体領域を含む模範的な半導体構造の上面図を示す。
【
図4】本発明の別の実施形態による、複数の空間的に閉じ込められた誘電体領域を含む模範的な半導体構造の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明には本発明の実施形態に関連する具体的な情報が含まれる。当業者に明らかなように、本発明は本明細書に具体的に記載される態様と異なる態様で実施することができる。本願の添付図面及びそれらの詳細説明は模範的な実施形態を対象にしているにすぎない。特に断らない限り、図中の同等もしくは対応する構成要素は同等もしくは対応する参照番号で示されている。更に、本願の図面及び説明図は一般に正しい寸法比で示されておらず、実際の相対寸法に対応するものではない。
【0012】
図1は従来の半導体構造100の断面図を示す。半導体構造100は基板110の上に製造された電界効果トランジスタ(FET)120を含む。
図1に示されるように、FET120はソース132、ドレイン134及びゲート136を含む。
図1に示す例では、FET120は基板110の上に製造されたIII族窒化物FET、例えばIII族窒化物高電子移動度トランジスタ(HEMT)又は他のタイプのIII族窒化物へテロ構造FET(HFET)として実装される。基板110はFET120の支持基板として使用するのに適した任意のタイプの基板とすることができる。従って、基板110は、例えばシリコン基板などのIV族基板とすることができる。
【0013】
実質的に全体がHFET構造の場合には、半導体構造100を横切って幾つかの電流路及びリーク電流が存在する。
図1は、寄生結合キャパシタ124(CIII-N)として表示されているドレイン134対基板110の容量結合による1つのこのような通路を示している。多くの実装例において、例えばソース132を基板124に結合する場合に、半導体構造100と関連する追加の寄生容量が存在し得るが、一般には寄生結合キャパシタ124で表されるドレイン対基板寄生容量が特に心配される点に留意されたい。
【0014】
上述したように、III族窒化物材料は広いバンドギャップ材料として知られているが、酸化シリコン(SiO
2)に比較して相対的に高い誘電率を有する。例えば、上述したように、SiO
2の約3.9の誘電率に比較して、砒化ガリウム(GaN)は約9.5の誘電率を有し、窒化アルミニウム(AlN)は約9.1の誘電率を有する。その結果、III族窒化物ベースのFETを高電圧スイッチング用に使用するとき、基板110に達するまでのFET120のIII族窒化エピタキシャル下層の間の寄生容量(寄生結合キャパシタ124として表されている)のために所定の電圧においてスイッチング時間が遅くなるとともにスイッチング電荷量が高くなる。従って、寄生結合キャパシタ124で表されるドレイン対基板容量がFET120の高いスイッチング(速度及び電荷)性能に対して望ましくない結果をもたらし得る。
【0015】
寄生結合キャパシタ124で表される寄生容量を低減する1つの従来の方法は、FET120で使用されるIII族窒化物層の厚さを大きくするものである。しかしながら、半導体装置の大規模製造においては大きな直径の基板が一般に使用されている。さらに、大きな直径の基板上に形成されるIII族窒化物層の厚さは一般にFET120を形成するために使用されるIII族窒化物材料並びに基板110に生じる応力により制限される。
【0016】
半導体構造100内に生じるこれらの応力は、FET120に使用されるIII族窒化物層と基板110を提供するために使用されるシリコン又は他の非ネイティブ(非III族窒化物)材料との間の格子定数の不一致及び/又は熱膨張係数の不一致に起因する。これらの応力は基板に過度のゆがみやそりを生じ、またFET120のIII族窒化物層に亀裂を生じ得る。従って、所定の定格電圧のFET120の形成に使用されるIII族窒化物層の厚さを実質的に増大する必要なしに寄生結合キャパシタ124で表される寄生容量を低減する代替方法が必要とされる。上述したように、従来実行されている基板領域を局部的にエッチ除去する方法又は基板の内部でIII族窒化物FETのドレイン領域の下部にPN接合を形成する方法は他の装置性能の制限をもたらす。
【0017】
本出願はドレイン対基板容量結合及びソース対基板容量結合が低減されたFETを含む半導体構造を目的とする。本出願に開示される解決方法は、同時にFETと基板との間の適度の熱移動性能を提供するとともに、改善された高電圧スイッチング性能及び従って改善されたスタンドオフ電圧性能を有するFETを提供する。本出願に開示されるように、このような解決方法は、基板内にてFETドレイン及び/又はFETソースの下部に形成された1以上の空間的に閉じ込められた誘電体領域の使用によって達成することができる。
【0018】
図2を参照すると、
図2は、一実施形態による、空間的に閉じ込められた誘電体領域240を含む模範的な半導体構造200の断面図を示す。半導体構造200は基板210の上に製造されたFET220を含む。
図2に示されるように、FET220はソース232、ドレイン234及びゲート236を含み、基板210の主表面214の上に製造される。
図2に示す模範的な実施形態によれば、空間的に閉じ込められた誘電体領域240はFET220のドレイン234の下部の基板210内に厚さ242まで形成される。
図2には、ドレイン234対基板210の容量結合(即ちドレイン対基板容量結合250)に寄与するIII族窒化物寄生キャパシタ224及び誘電体寄生キャパシタ244並びに空間的に閉じ込められた誘電体領域240の上側面246も示されている。
【0019】
基板210は、IV族材料(例えば、Si,SiC,Ge,SiGe等)、III族窒化物材料、サファイヤ、又は他の適切な材料のような材料を用いて形成することができる。基板210は単結晶又は多結晶とすることができ、また複合基板として形成することもできる。さらに、本出願で使用される「シリコン基板」はシリコン表面を有する任意の基板も指す。適切なシリコン基板の例は、特にほぼ全体がシリコンからなる基板(バルクシリコンウェハ)及びシリコン・オン・サファイヤ基板を含む。適切なシリコン基板は、ダイアモンド、AlN又は他の多結晶材料等の別の材料に結合されたしウェハを有する複合基板も含む。一部の実施形態においては、異なる結晶配向を有するシリコン基板を使用することができる。例えば、ある場合には、シリコン(111)基板が基板210のために好ましい。他の場合には、シリコン(100)又は(110)基板が基板210のために好ましい。
【0020】
FET220は複数のIII族窒化物又は他のIII−V族材料層を含むことができる。例えば、FET220は基板210の上に形成された1以上のIII族窒化物遷移層及び/又はバッファ層を含むことができる。さらに、FET220は少なくとも1つの活性層を含む。一実施形態においては、例えばFET220は基板210の上に形成された遷移層及び/又はバッファ層の上に形成されたIII−V族へテロ構造を含むHEMTとすることができる。III−V族へテロ構造は、III−V族チャネル層の上に形成され、該III−V族チャネル層に2DEGを生じさせるIII−Vバリア層を含むとともに、III−Vバリア層の上に形成される1以上のキャップ層及び/又はパッシベーション層を含むことができる。
【0021】
空間的に閉じ込められた誘電体領域240は、例えばSiO
2で形成でき、基板210への酸素注入によって基板210内に形成することができる。例えば、酸素はシリコン基板内に約1×10
18/cm
2の濃度で注入することができる。空間的に閉じ込められた誘電体領域240を形成し得る幾つかの方法があり、特に酸素の拡散、ウェハボンディング、及びシリコン横方向成長技術がある。しかしながら、一部の実施形態においては、酸素の注入による分離(SIMOX)が有利であり、また望ましい。
【0022】
SiO
2の空間的に閉じ込められた誘電体領域240は基板210上のFET220のIII族窒化物エピタキシャル層の成長前に形成するか、或いはIII族窒化物エピタキシャル層の成長中にほぼ同時に形成することができる。従って、一部の実施形態においては、FET220のIII族窒化物エピタキシャル層の形成に必要とされる高い成長温度を利用して注入酸素の近傍のシリコンを消費させてSiO
2の空間的に閉じ込められた誘電体領域240を形成する。例えば、空間的に閉じ込められた誘電体領域240はシリコン基板210の主表面214より下に位置させることができるため、III族窒化物のエピタキシャル核生成に必要とされるように、主表面214にシリコンのほぼ均一な層を存在させることができる。しかしながら、FET220のIII族窒化物材料が高い温度で堆積される間に、空間的に閉じ込められた誘電体領域240は基板210の主表面に向かって成長又は膨張するため、空間的に閉じ込められた誘電体領域240の上側面246はFET220のIII族窒化物材料とインタフェースする。
【0023】
図2に示されるように、一部の実施形態においては、空間的に閉じ込められた誘電体領域240はドレイン234の下部にほぼ中心に位置する。さらに、空間的に閉じ込められた誘電体領域240は基板210の主表面214にほぼ平行な平面内で横方向に閉じ込めることができる。空間的に閉じ込められた誘電体領域240は基板210内の埋め込み誘電体領域とすることができ、また基板20内を主表面214まで垂直方向に延在させることもできる。言い換えれば、一部の実施形態においては、空間的に閉じ込められた誘電体領域240のすべての側面を半導体基板210により包囲することができるが、他の実施形態においては、
図2に示すように、空間的に閉じ込められた誘電体領域240の上側面は基板210で覆われないようにすることができる。
【0024】
空間的に閉じ込められた誘電体領域240は上述したようにSi0
2からなるものとし得るが、他の誘電体を使用することもできる。例えば、シリコン半導体製造においては、様々な半導体層間の寄生容量を低減するために低誘電率(low-k)誘電体が使用されている。本明細書で使用する「low-k誘電体」はSiO
2シリコンの誘電率より低い誘電率を有する誘電体材料を指す。上述したように、SiO
2の誘電率は約3.9である。従って、空間的に閉じ込められた誘電体領域240を形成するために、他のlow-k誘電体のうち炭素ドープ又はフッ素ドープSiO
2等のlow-k誘電体を使用することができる。
【0025】
空間的に閉じ込められた誘電体領域240の厚さ242はFET220の電圧レンジに部分的に依存する。例えば、約千ボルト(1000V)に耐えるためには、SiO
2の空間的に閉じ込められた誘電体領域240の厚さ242は約1マイクロメートル(1.0μm)である。様々な実施形態において、空間的に閉じ込められた誘電体領域240の厚さ242は約0.1μmから約3.0μmの範囲とすることができる。
【0026】
さらに
図2に示されるように、空間的に閉じ込められた誘電体領域240の形成は、III族窒化物寄生キャパシタ224及び誘電体寄生キャパシタ244がFET220のドレイン234と基板210との間に直列に結合された等価回路を生じる。この模範的な実施形態によれば、III族窒化物寄生キャパシタ224と直列の誘電体寄生キャパシタ244の付加は所定の電圧に対する総ドレイン対基板容量結合250を有利に低減する。その結果、基板210内の空間的に閉じ込められた誘電体領域240の存在はFET220のスイッチング時間及びスイッチング電荷性能を高める。
【0027】
図2に示す模範的な実施形態はドレイン234の下部に形成された空間的に閉じ込められた誘電体領域240を示しているが、他の実施形態においては空間的に閉じ込められた誘電体領域240はFET220のソース232の下部に、又はドレイン234及びソース232の両方の下部に形成することができることに留意されたい。空間的に閉じ込められた誘電体領域240がソース232の下部にて基板210内に形成される実施形態においては、空間的に閉じ込められた誘電体領域240はソース232対基板210の容量結合を低減する。さらに、空間的に閉じ込められた誘電体領域240がドレイン234及びソース232の両方の下部にて基板210内に形成される実施形態においては、空間的に閉じ込められた誘電体領域240はドレイン234及びソース232対基板210の容量結合を低減する。
【0028】
さらに、空間的に閉じ込められた誘電体領域240はFET220のドレイン234及び/又はソース232の下部にのみ位置するように形成する必要はないが、それらの実施形態はFET220により発生される熱の放散に関して有利であることに留意されたい。基板210内の埋め込み誘電体材料の存在は、熱が発生するFET220と熱が主として放出される基板210の底面との間の熱通路を妨げるという望ましくない結果をもたらし得る。従って、連続する誘電体層よりはむしろ空間的に閉じ込められた誘電体領域240を使用することは、ドレイン234及び/又はソース232対基板210の容量結合を低減すると同時に、FET220に対する効率的な熱管理を提供するために従来の熱管理技術の使用が可能になるという利点をもたらす。
【0029】
続いて
図3A及び
図3Bにつき説明すると、
図3Aは複数の空間的に閉じ込められた誘電体領域340を含む模範的な半導体構造300の上面図を示し、
図3Bは模範的な半導体構造300の断面図を示す。
図3Bに示されるように、半導体構造300は基板310の上に製造されたFET320を含む。
図3A及び
図3Bに示されるように、FET320はソース領域332、ドレイン領域334及びゲート336を含み、基板310の主表面314の上に製造される。
図3には、空間的に閉じ込められた誘電体領域340の幅348、及びFET320のピッチ338、即ち直接隣接する又は近接するソース領域332間の距離も示されている。さらに、FET320のドレイン接点の幅は間隔335により概念的に示され、FET320の生成に使用されるIII族窒化物又は他のIII−V族材料層の厚さは
図3Bに厚さ328として示されている。
【0030】
概念上明確にするために
図3A及び
図3Bに示されていないが、半導体構造300は、パッシベーション及び絶縁層、フィールドプレート(ソース,ゲート及びドレイン)などの追加の被覆層、並びに金属ボンドパッド、トレース及び相互接続ビアを含むことができる。
図3A及び
図3Bに示されるように、空間的に閉じ込められた誘電体領域340はそれぞれのドレイン領域334の下部に中心に位置し、両方向にゲート336の方へ横方向に延在する。ソース領域332、ドレイン領域334及びゲート336を含むFET320は概して
図2のソース232、ドレイン234及びゲート236を含むFET220に対応する。さらに、
図3A及び
図3Bの基板310及び空間的に閉じ込められた誘電体領域340は、
図2の基板210及び空間的に閉じ込められた誘電体領域240にそれぞれ対応し、上記の対応する特徴に起因する特性のいずれも共有することができる。
【0031】
一部の実施形態においては、空間的に閉じ込められた誘電体領域340の幅348はFET320のピッチ338に基づいて決定するのが有利又は望ましい。例えば、一実施形態においては、幅348はFET320のピッチ338の約半分(0.5倍)未満に制限するのが有利又は望ましい。他の実施形態においては、空間的に閉じ込められた誘電体領域340の幅348はFET320の形成に使用されるIII族窒化物又は他のIII−V族層の厚さ328並びにFET320上に形成されるドレイン接点の幅に対応する間隔335に基づいて決定するのが有利又は望ましい。例えば、空間的に閉じ込められた誘電体領域340の幅348はおよそ厚さ328の1〜2倍に間隔335を加えたものとするのが有利又は望ましい。特定の例として、様々な実施形態においては、空間的に閉じ込められた誘電体領域340の幅348は約5μmから約30μmの範囲内とすることができる。
【0032】
図4に移り説明すると、
図4は別の実施形態による、複数の空間的に閉じ込められた誘電体領域440を含む模範的な半導体構造400の断面図を示す。半導体構造400は複合基板410の上に製造されたFET420を含む。
図4に示されるように、FET420はソース領域432、ドレイン領域434及びゲート436を含み、複合基板410の主表面414の上に製造される。
図4にさらに示されるように、複合基板410はその基板内に形成された空間的に閉じ込められた誘電体領域440を有する第1の基板層411、及び第1の基板層411の上及びFET420の下に形成された第2の基板層412を含む。ソース領域432、ドレイン領域434及びゲート436を含むFET420は概して
図2のソース232、ドレイン234及びゲート236を含むFET220に対応する。さらに、
図4の空間的に閉じ込められた誘電体領域440は、
図2の空間的に閉じ込められた誘電体領域240に対応し、上記の対応する特徴に起因する特性のいずれも共有することができる。
【0033】
空間的に閉じ込められた誘電体領域440は複合基板410の第1の基板層411の上面418に形成することができる。次に、シリコンエピタキシャル横方向過成長法を用いて、シリコンを第2の基板層412上に空間的に閉じ込められた誘電体領域440と第1の基板層411の上面418との間及びそれらの上方で再成長させ、続いて第2の基板層412の上面で標準の化学機械研磨(CMP)を用いる平坦化によって複合基板410の主表面414を提供することができる。一部の実施形態においては、複合基板410の主表面414をIII族窒化物準備層として形成するために、CMP表面上にシリコンの薄い最終エピタキシャル層を成長させることができる。その結果、
図4に示すように、一部の実施形態においては、空間的に閉じ込められた誘電体領域440の全側面を複合基板410で包囲することができる。
【0034】
FETのドレイン及び/又はソース対基板の結合容量を改善するのに加えて、本出願に開示された空間的に閉じ込められた誘電体領域は所定のIII族窒化物エピタキシャル層の厚さでFETのスタンドオフ電圧性能を高めることができる。このような性能の向上は、高電界領域の一部分がシリコン基板自体より高いブレークダウン特性を有する空間的に閉じ込められた誘電体領域と交差することによって生じる。これは所定のスタンドオフ電圧を維持するためにFETに必要とされるIII族窒化物エピタキシャル層の厚さを低減するという追加の利点をもたらす。この概念は所定のスタンドオフ電圧を維持すためにより薄いIII族窒化物層の使用を可能にするため、この概念はさらに、FET220の製造のためにより大きな直径のウェハを使用すること及び/又はエピタキシャルスループットを増大することを可能にする。
【0035】
従って、本出願はドレイン−基板間及び/又はソース−基板間の容量結合を低減したFETを含む半導体構造を開示する。その結果、本出願により開示された解決方法は、FETと基板の間に適度の熱移動性能を提供しながら、向上したスタンドオフ電圧性能及び向上した高電圧スイッチング性能を有するFETを提供する。上で説明したように、本明細書に開示する解決方法は1以上の空間的に閉じ込められた誘電体領域をFETのドレイン及び/又はソースの下部の基板内に形成することによって達成される。
【0036】
以上の説明から明らかなように、本願に記載の発明の概念は本発明の概念の範囲を逸脱することなく種々の技術を用いて実施することができる。更に、特に幾つかの実施形態について本発明の概念を説明したが、当業者であれば、それらの形態及び細部に本発明の概念の精神及び範囲を逸脱することなく種々な変更を加えることができることは理解されよう。従って、上述した実施形態はあらゆる点において例示的なものであり、限定的なものではないと考慮されたい。更に、本発明は上述した特定の実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなしに、本発明に多くの再配置、変形及び置換を行い得ることを理解されたい。