【実施例】
【0026】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0027】
本実施例は、先端に第一作用部1aを有し基端に第一握持部1bを有する第一半体1と、先端に第二作用部2aを有し基端に第二握持部2bを有する第二半体2とを交叉枢着し、第二半体2に当接し両握持部1b,2bを開き付勢する付勢体3を第一半体1に設けたものである。
【0028】
具体的には、
図1に図示したように適宜な金属製の一対の長尺板状半体1,2(第一半体及び第二半体)を設け、この第一半体1及び第二半体2夫々の先端寄りの部位を軸部材6aを介して枢着し、この第一半体1及び第二半体2の枢着部6よりも基端側の部位夫々に合成樹脂製のグリップ7を被覆した握持部1b,2b(第一握持部及び第二握持部)を設け、一方、枢着部6よりも先端側の部位に作用部1a,2a(第一作用部及び第二作用部)を設け、本実施例では、第一作用部1a及び第二作用部2aとして刃部を設けている。尚、本実施例では、第一作用部1a及び第二作用部2aとして第一半体1及び第二半体2夫々の対向部位に切断刃を設けた刃部を採用したが、被挟持物を平坦状の挟持面で挟んで保持する挟持作用部を採用しても良いなど、本実施例の特性を発揮する構成であれば適宜採用するものである。
【0029】
第一半体1は、
図1,2に図示したように第二半体2と枢着する部位よりも基端側二箇所に表裏面に貫通する貫通孔1cが設けられており、この貫通孔1cは、後述する付勢体3を止着するための止着孔である。
【0030】
第二半体は、
図1,2に図示したように第一半体1と枢着する部位よりも基端側位置にして内側縁部に凹部4が設けられており、この凹部4は、後述する付勢体3の先端部3aが嵌入係止する部位である。
【0031】
この付勢体3の先端部3aは平面視円形状であり、両握持部1b,2bを所定の力で所定開き位置よりも開いた際、凹部4から円滑に離脱する。
【0032】
また、この凹部4の側部には傾斜部5が設けられている。
【0033】
この傾斜部5は、
図3,4に図示したように第一握持部1b及び第二握持部2bを開いた際、付勢体3の先端部3aが移動する軌道線上に設けられており、凹部4へ向けて登り傾斜状に設けられている。
【0034】
尚、本実施例ではこの傾斜部5を凸湾曲した傾斜状に設けているが、平坦面から成る傾斜部としても良い。
【0035】
また、本実施例は、第一半体1に第一握持部1b及び第二握持部2bを開き方向に付勢する付勢体3を設けている。
【0036】
具体的には、この付勢体3は、
図1,2,3,4に図示したように適宜な金属製の板材を打ち抜き成形して成る平面視J形状の板状バネ材で構成されており、2枚の板体3A,3Bが基部で連設された構成であり、一方の板体3Aは第一半体1の表面に添設状態となるものであり、基部から先端部3aにかけて板面方向及び板面直交方向に適度な弾性を有するように構成されている。尚、付勢体3は型成形でも良いなど、本実施例の特性を発揮する構成であれば適宜採用し得るものである。
【0037】
また、付勢体3は、
図1に図示したように板体3Bの先端部と基部に凸部3’が設けられており、第一半体1に添設状態とした際、第一半体1に設けた貫通孔1cに凸部3’を嵌挿させて抜け止め係止して、第一半体1に付勢体3を設けている。
【0038】
また、本実施例では、この凸部3’を貫通孔1cに係止することで第一半体1に対して付勢体3を仮止め状態としており、この状態でグリップ7をインサート成形することで完全に固定している。符号1d,2dはグリップ7の一部が嵌入することで該グリップ7の抜け止めとなる孔である。
【0039】
この付勢体3の先端部3aは、前述した第二半体2の凹部4に嵌合係止するように設けられている。
【0040】
従って、第一握持部1b及び第二握持部2bを閉じた際、付勢体3は戻り付勢力が生じる。この第一握持部1b及び第二握持部2bを閉じた際の付勢体3の板面方向の変形により生じる付勢作用は当該第一握持部1b及び第二握持部2bを開き方向に付勢する開き付勢作用である。
【0041】
また、付勢体3の先端部3aは平面視円形状に形成されており、これは、凹部4からの離脱と、凹部4から離脱した状態から傾斜部5を摺動して乗り越えることが円滑に行われるようにする為である。
【0042】
また、付勢体3の先端部3aは、第一半体1の表面から起き上がり状態に折り曲げ形成されている。
【0043】
これは、前述した付勢体3の先端部3aを平面視円形状にしたことと同様、凹部4からの離脱と、凹部4から離脱した状態から傾斜部5を摺動して乗り越えることが円滑に行われるようにするためである。
【0044】
尚、付勢体3は合成樹脂製でも良い。
【0045】
また、本実施例は、第一半体1には付勢体3を押圧して凹部4から先端部3aを離脱せしめる係止解除部10が設けられている。
【0046】
この係止解除部10は、
図4,5,6,7,8に図示したように第一半体1にして第二半体2と枢着する部位よりも基端側位置に表裏面に貫通する孔部1eを設け、この孔部1eに棒状部材を進退移動自在となるよう抜け止め状態に設けて構成されている。
【0047】
従って、この係止解除部10の基端部10bを押圧操作して前進移動させた際、係止解除部10の先端部10aが付勢体3の戻り付勢に抗して該付勢体3を押圧することになり、付勢体3はこの係止解除部10により押圧されて板面直交方向に起き上がり、先端部3aは板面直交方向に移動することになり、この係止解除部10による押圧により付勢体3の先端部3aを凹部4から離脱させることができる。係止解除部10への押し込み操作を解除すると、付勢体3の戻り付勢により係止解除部10は元の位置に後進移動する。
【0048】
また、本実施例は、第二半体2にして凹部4の一側部に凹状部が設けられている。
【0049】
この凹状部は、係止解除部10による押圧により付勢体3の先端部3aを凹部4から離脱させ、この状態で両握持部1b,2bを所定閉じ位置まで閉じた後に係止解除部10による押圧が解除された際、付勢体3の先端部3aが係止する係止部11として構成されている。
【0050】
従って、係止部11に付勢体3の先端部3aが落ち込み係止することで両握持部1b,2bの閉じが保持される(
図9,10,11参照)。
【0051】
本実施例は上述のように構成したから、第一握持部1b及び第二握持部2bを握持操作して閉じると第一作用部1a及び第二作用部2aは閉じ、この第一握持部1b及び第二握持部2bを握持する力を緩めると、付勢体3の開き付勢により第一握持部1b及び第二握持部2bは開き、これに伴い第一作用部1a及び第二作用部2aも開く。
【0052】
また、本実施例は、付勢体3の先端部3aが係止する凹部4を第二半体2に設けており、この構成から、付勢体3により、第一握持部1b及び第二握持部2bは所定開き位置まで開き付勢されるとともに、この所定開き位置で第一握持部1b及び第二握持部2bの開きが阻止される。
【0053】
従って、第一握持部1b及び第二握持部2bは常態においては必要以上に開くことが無い。
【0054】
また、本実施例は、第一握持部1b及び第二握持部2bを所定の力で所定開き位置よりも開いた際、付勢体3の先端部は凹部4から離脱するように設けられている(
図3,12,13参照)。
【0055】
従って、第一握持部1b及び第二握持部2bを無理に開かせようとする強い力が加わっても、付勢体3の先端部3aが凹部4から離脱することで付勢体3の破損が可及的に防止される。
【0056】
また、本実施例は、第二半体2にして凹部4の側部には凸湾曲形状の傾斜部5が設けられ、付勢体3の先端部3aが凹部4から離脱した状態から第一握持部1b及び第二握持部2bを閉じた際、付勢体3の先端部3aが傾斜部5を摺動して乗り越えることで該先端部3aは凹部4に係止する(
図14〜16参照)。
【0057】
仮にこの傾斜部5が無い場合、凹部4から離脱した状態の付勢体3の先端部3aを再び凹部4に係止させようとすると、例えば付勢体3を支えながら第一握持部1b及び第二握持部2bを閉じるという厄介な作業となるが、この点、本実施例は、第一握持部1b及び第二握持部2bを閉じるだけで、この第一握持部1b及び第二握持部2bの閉じ動に伴い付勢体3の先端部3aは動いて傾斜部5を摺動して乗り越えることで凹部4に自動的に係止することになる。
【0058】
従って、この付勢体3の破損を防止するために凹部4から離脱させた先端部3aを簡易且つ円滑に元の状態(凹部3に先端部3aが係止した状態)に戻すことができて操作性が良好となる。
【0059】
また、本実施例は、第一半体1に設けた係止解除部10による押圧により付勢体3の先端部3aを凹部4から離脱させ、この状態で両握持部1b,2bを所定閉じ位置まで閉じた後に、係止解除部10による押圧が解除されると、付勢体3の先端部3aは第二半体2に設けられた係止部11に落ち込み係止し、この係止部11に付勢体3の先端部3aが落ち込み係止することで両握持部1b,2bの閉じが保持される(
図9,10,11参照)。
【0060】
よって、本実施例によれば、付勢体3を具備することで開閉作業を素早く行なえることになり、しかも、付勢体3の先端部3aが係止する凹部4が設けられているから、両握持部1b,2bの開き過ぎが防止され、従って、使い易く、また、付勢体3の先端部3aが凹部4から離脱するから、付勢体3の破損が可及的に防止されることになり、更に、凹部4の側部には傾斜部5が設けられているから、凹部4から離脱した付勢体3を簡易且つ円滑に元の状態に戻すことができて操作性が良好となる。
【0061】
また、本実施例は、第一半体1には付勢体3を押圧して凹部4から先端部3aを離脱せしめる係止解除部10が設けられ、この係止解除部10による押圧により先端部3aを凹部4から離脱させて両握持部1b,2bを閉じ位置まで閉じた後に係止解除部10による押圧が解除された際、付勢体3の先端部3aが係止する係止部11が第二半体2に設けられ、係止部11に付勢体3の先端部3aが係止することで両握持部1b,2bの閉じが保持されるように構成されているから、例えば、第一作用部1aと第二作用部2aとの閉じた状態を保持したい場合には、この付勢体3を利用して両握持部1b,2bの閉じた状態を保持することで達成されることになり、よって、工具を使用しない場合などに安全な保管状態が得られ、しかも、極めて効率の良い構造と言える。
【0062】
また、本実施例は、付勢体3は、第一半体1の表面に添設状態となる板状の長尺体であり、付勢体3の先端部3aは、第一半体1の表面に対して起き上がり状態に折曲形成されているから、付勢体3を具備しても作業の邪魔になったりせず、しかも、凹部4に対する離脱及び傾斜部5の乗り上げが極めて良好に行われることになる。
【0063】
また、本実施例は、付勢体3の先端部3aは平面視円形状であるから、この点においても凹部4に対する離脱及び傾斜部5の乗り上げが極めて良好に行われることになる。
【0064】
また、本実施例は、第一半体1に設けた貫通孔1cに付勢体3に設けた凸部3’を係止して、第一半体1に付勢体3は設けられているから、前述した秀れた作用効果が簡易構造で得られることになる。
【0065】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。