(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、肌側の両側部にそれぞれ、弾性伸縮部材による収縮力によって肌側に起立する立体ギャザーを形成するサイド不織布が設けられる吸収性物品において、
前記サイド不織布は、吸収性物品の長手方向両端部において折り畳まれて前記吸収体側に接合される固定区間と、吸収性物品の長手方向中間部において前記弾性伸縮部材が接合されることによって肌側に起立する起立区間と、前記固定区間と起立区間との間において、前記弾性伸縮部材が接合されないとともに、前記吸収体側に接合されない非固定区間とを有し、前記起立区間の前側端部は前記吸収性物品を個装する際に吸収性物品の前側部分を折り畳む折り線より後側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキン、パンティライナー、おりものシート、失禁パッドなどの吸収性物品Nとしては、例えば
図10および
図11に示されるように、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネート不織布などからなる不透液性裏面シート50と、不織布または透孔性プラスチックシートなどからなる透液性表面シート51との間に綿状パルプなどからなる吸収体52を介在させ、かつ肌側の両側部にそれぞれサイド不織布53、53を配置し、このサイド不織布53の内部に1または複数の糸ゴムなどからなる弾性伸縮部材54を伸長状態で配置することにより、弾性伸縮部材54の収縮力によって肌側に起立する立体ギャザー55、55を形成したものが知られている。なお、
図10において、L1、L2は、吸収性物品Nを個装する際に長手方向に折り畳む折り線位置を示している。
【0003】
前記立体ギャザー55は、少なくとも体液排出部位Hに対応する長手方向の所定区間に亘り弾性伸縮部材54による収縮力によって肌側に起立し、立体ギャザー55の先端を身体に密着させることで体液を堰き止めて横漏れを防止するようにしている。
【0004】
このような立体ギャザーを備えた吸収性物品として、下記特許文献1においては、防漏部に吸収性物品の長手方向に沿って配設される弾性体が、防漏部の長手方向における中央領域と端部領域との少なくとも境界を含む所定範囲において、長手方向に伸長した状態でシートに固定される固定部と、前記固定部よりも長手方向の外側に位置し、シートに固定されていない自由端とを有し、前記端部領域は、シートが互いに対面する部分を接合する接合処理が施される接合処理部と、前記接合処理が施されていない非接合処理部とを有し、前記自由端は、前記非接合処理部に配設される吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2においては、立体ギャザーの長手方向前後両端部に、弾性伸縮部が本体に接合されている接合領域を有し、これら前後両端部に挟まれた該立体ギャザーの長手方向内方部に、弾性伸縮部が本体に接合されていない非接合領域を有している吸収性物品が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の吸収性物品では、
図10に示されるように、弾性伸縮部材54による収縮力によって肌側に起立した起立区間の直ぐ外側が、サイド不織布53を折り畳んで弾性伸縮部材54とともに吸収体側に固定した固定区間となっているため、弾性伸縮部材54の収縮力が、この固定区間と起立区間との境界部分の弾性伸縮部材54の収縮力が作用し始める部分に直接集中荷重として作用して、吸収性物品の長手方向端部が肌側に立ち上がりやすくなっていた(
図6参照)。このように吸収性物品の長手方向端部が肌側に大きく立ち上がるため、装着時に吸収性物品の長手方向端部が折れ曲がってヨレが発生し違和感を生じやすくなるとともに、このヨレが立体ギャザーの起立部分にまで影響して防漏効果が十分に発揮できない場合があった。このことは、上記特許文献2記載の吸収性物品についても同様である。
【0008】
一方、上記特許文献1記載の吸収性物品では、弾性体が中央領域と端部領域との境界に設けられた固定部にてシートに固定され、この固定部より長手方向の外側では弾性体がシートに固定されない自由端とされているが、前記固定部の直ぐ外側に、シートが互いに接合された接合処理部を有しているため、吸収性物品の長手方向端部の立ち上がりが十分に抑えられる構造とはなっていなかった。
【0009】
また、
図10に示されるように、従来の吸収性物品では、前記サイド不織布53が弾性伸縮部材54による収縮力によって肌側に起立する起立区間の直ぐ外側に連続して、サイド不織布53が折り畳まれて弾性伸縮部材54とともに吸収体側に一体的に接合された固定区間が設けられるため、起立区間の肌当接面が前記固定区間で折り畳まれた状態、つまり肌当接面が内側に倒れ込んだ状態のまま肌側に起立するようになる(
図9(A)参照)。すなわち、左右の立体ギャザー先端の離間幅が固定区間で折り畳まれた離間幅とほとんど変わらない幅となるため、左右の立体ギャザーの先端同士の離間幅である有効吸収幅が狭く、吸収性能及び横漏れ防止効果が低下していた。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、肌側の両側部にそれぞれ肌側に起立する立体ギャザーを備えた吸収性物品において、吸収性物品の長手方向端部が弾性伸縮部材の収縮力によって立ち上がるのを軽減するとともに、吸収性能及び横漏れ防止効果を向上させた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、肌側の両側部にそれぞれ、弾性伸縮部材による収縮力によって肌側に起立する立体ギャザーを形成するサイド不織布が設けられる吸収性物品において、
前記サイド不織布は、吸収性物品の長手方向両端部において折り畳まれて前記吸収体側に接合される固定区間と、吸収性物品の長手方向中間部において前記弾性伸縮部材が接合されることによって肌側に起立する起立区間と、前記固定区間と起立区間との間において、前記弾性伸縮部材が接合されないとともに、前記吸収体側に接合されない非固定区間とを有し
、前記起立区間の前側端部は前記吸収性物品を個装する際に吸収性物品の前側部分を折り畳む折り線より後側に設けられていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、肌側の両側部にそれぞれ設けられるサイド不織布が、吸収性物品の長手方向両端部において折り畳まれて吸収体側に接合される固定区間と、吸収性物品の長手方向中間部において前記弾性伸縮部材が接合されることによって肌側に起立する起立区間と、前記固定区間と起立区間との間において、前記弾性伸縮部材が接合されないとともに、前記吸収体側に接合されない非固定区間とを有し
、前記起立区間の前側端部は前記吸収性物品を個装する際に吸収性物品の前側部分を折り畳む折り線より後側に設けられている。このように本吸収性物品では、前記固定区間と起立区間との間に非固定区間を設けてあるため、前記起立区間に接合された弾性伸縮部材の固定端が直接固定区間に固定されるのではなく、固定区間との間に非固定区間が介在する可動点となるため、弾性伸縮部材の端部に作用する張力が小さくなるとともに、弾性伸縮部材の収縮力が集中荷重ではなく前記非固定区間のサイド不織布を介した分布荷重として作用することから、吸収性物品の端部が肌側に起立する角度が小さく抑えられるようになる。
【0013】
特に本発明では、前記起立区間の前側端部が吸収性物品を個装する際に吸収性物品の前側部分を折り畳む折り線より後側に設けられているため、吸収性物品の前側部分を立ち上がらせる回転モーメントを最小化できるようになる。
【0014】
また、前記起立区間に固定された弾性伸縮部材の固定端が可動点となるため、弾性伸縮部材が固定区間でサイド不織布とともに接合された従来のものに比べ、弾性伸縮部材の収縮力によって立体ギャザー自体の変形が自由に行われるようになり、立体ギャザーの先端が肌側に大きく起立するようになる。このため、左右の立体ギャザーの先端同士の離間幅である有効吸収幅が拡大し、より広い範囲の体液を受け止めることができるようになり、吸収性能が向上するとともに、立体ギャザーによる体液の堰き止め効果が向上し、横漏れ防止効果が向上するようになる。
【0015】
請求項2に係る本発明として、前記非固定区間は、吸収性物品の長手方向に10mm以上の長さで形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明では、前記非固定区間を吸収性物品の長手方向に10mm以上の長さで形成することにより、前記起立区間の弾性伸縮部材の固定端が確実に可動点として作用するため、固定区間でサイド不織布が固定された影響をほとんど受けずに、前記起立区間に前記弾性伸縮部材による収縮力によって肌側に起立する立体ギャザーが形成されるようになる。
【0017】
請求項3に係る本発明として、前記起立区間の前側端部は、吸収性物品の前端から60mm以上離間した位置に設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項3記載の発明では、起立区間の前側端部を吸収性物品の前端から60mm以上離間した位置に設けることにより、弾性伸縮部材による収縮力の作用点が吸収性物品の前端から十分に離間した位置となるため、吸収性物品の前側部分の立ち上がりがより確実に小さくできる。
【0019】
請求項
4に係る本発明として、少なくとも前記立体ギャザーの幅方向範囲において、長手方向端部の外形線が凹凸状に形成されている請求項1〜
3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項
4記載の発明では、少なくとも立体ギャザーの幅方向範囲において、長手方向端部の外形線を凹凸状に形成することによって、端部の折れやヨレが防止できるとともに、端部が身体の曲線に沿って変形でき、違和感が軽減できるようになる。なお、長手方向端部の外形線とは、長手方向前側の外形線と長手方向後側の外形線の両方又はいずれか一方のことである。
【0021】
請求項
5に係る本発明として、前記弾性伸縮部材は、前記立体ギャザーの幅方向範囲のうち吸収性物品の幅方向内側に多く偏在している請求項1〜
4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項
5記載の発明では、前記弾性伸縮部材を立体ギャザーの幅方向範囲のうち吸収性物品の幅方向内側に多く偏在させることにより、弾性伸縮部材の収縮力によって立体ギャザーの幅方向外側が内側に湾曲する幅方向の変形が抑えられるようになる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収性物品の長手方向端部が弾性伸縮部材の収縮力によって立ち上がるのが軽減できるとともに、吸収性能及び横漏れ防止効果が向上できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
《生理用ナプキン1の構造例》
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1〜
図4に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部位Hを含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7とから構成されている。前記吸収体4の周囲において、その上下端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。
【0027】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0028】
前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。
【0029】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0030】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
図1に示されるように、前記透液性表面シート3の外面側から各種のエンボスを付与し、体液の滞留を促進し吸収効率を高めることにより横漏れを防止するのが望ましい。本生理用ナプキン1では、前記エンボスとしては、
図1に示されるように、幅方向中央部に肌側に高い吸収体の中高部4aを有するとともに、この中高部4aの両側及び前側を囲むように、後側が開放した平面視略コの字状に形成された第1エンボス8と、この第1エンボス8の後側に間隔をあけて、両側に離間するとともに、それぞれナプキン1の外側に曲率中心を有する弧状曲線によって形成された第2エンボス9、9と、この両側の第2エンボス9、9の中間であってナプキン幅方向中央部から後側に向けて離間幅が拡大する略逆V字状に形成された第3エンボス10と、前記第1エンボス8の前側に間隔をあけて、幅方向両側に離間する平面視略ハート形に形成された第4エンボス11とから構成されている。
【0032】
一方、本生理用ナプキン1の表面側両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによりウイング状フラップW、Wが形成されている。前記ウイング状フラップW、Wの不透液性裏面シート2の外面側にはウイングズレ止め粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。同じく、吸収体4が介在された本体部分の不透液性裏面シート2の外面側には、本体ズレ止め粘着剤層(図示せず)が備えられている。
【0033】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにする。
【0034】
図2に示されるように、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、適宜の弾性伸縮部材12〜14が配設されている。具体的には、二重シート内部の高さ方向基端部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された弾性伸縮部材12が配設されるとともに、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された弾性伸縮部材13が配設され、且つ前記弾性伸縮部材13の上側部位に1本又は複数本の、図示例では2本の弾性伸縮部材14、14が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は生理用ナプキン1の前後端部では
図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、前記弾性伸縮部材13の配設部位を屈曲点として、断面く字状を成す立体ギャザーBS、BSが形成されている。このサイド不織布7については後段で詳述する。
【0035】
前記弾性伸縮部材12〜14としては、通常使用されるゴムやシリコンなどの素材を用いた糸状のものを使用することが好ましい。この糸ゴムの太さとしては、300dtex〜1000dtexが好ましく、400dtex〜550dtexがより好ましい。
【0036】
前記弾性伸縮部材12〜14の伸長率としては、自然長を100%としたとき、105%〜160%、好ましくは120%〜140%とするのがよい。前記弾性伸縮部材12、13、14は同等の伸長率で配設するのが好ましい。
【0037】
前記生理用ナプキン1は、長手方向に適宜に折り畳まれて個装状態とされる。具体的には、ウイング状フラップW、Wを基端部の折り線RL、RLにて透液性表面シート3側に折り返した後、個装シート(図示せず)によって個装する。個装方法は、
図1に示されるように、後側の折り線L1位置にてナプキン後側部分を個装シートとともに透液性表面シート3側に折り畳んだ後、前側の折り線L2位置にてナプキン前側部分を個装シートとともに透液性表面シート3側に折り畳む3つ折りとし、個装シートの開口した端部をそれぞれ封鎖することによって個装状態とする。なお、生理用ナプキン1の折り数は、4つ折り以上としてもよい。
【0038】
前側の折り線L2は、
図1に示されるように、平面視略コの字状に形成された前記第1エンボス8の前側端部を通る位置に設けるのが好ましい。これにより、前記第1エンボス8の前側のナプキン幅方向に延びるエンボス部分を可撓軸として、ナプキン前側部分を折り畳みやすくなる。また、後側の折り線L1は、略逆V字状に形成された前記第3エンボス10の前側端部を通る位置に設けるのが好ましい。これにより、前記第3エンボス10の幅方向中央部の略逆V字状の基端部を通るナプキン幅方向線を可撓軸として、ナプキン後側部分を折り畳みやすくなる。
【0039】
《サイド不織布7》
前記サイド不織布7はそれぞれ、
図1に示されるように、二重に折り畳んだ内方側部分の形態によってナプキン長手方向に所定の区間に区画されている。前記区間としては、生理用ナプキン1の長手方向両端部において、内方側部分を折り畳んで前記吸収体4側に接合した固定区間20、20と、生理用ナプキン1の長手方向中間部において、前記弾性伸縮部材12〜14がそれぞれサイド不織布7に接合され、前記弾性伸縮部材による収縮力によって肌側に起立する立体ギャザーBSを形成する起立区間21と、前記固定区間20と起立区間21との間において、前記弾性伸縮部材12〜14がサイド不織布7に接合されないとともに、前記サイド不織布7が吸収体4側に接合されない非固定区間22、22とから構成されている。なお、
図1及び後段で説明する
図5では、弾性伸縮部材12〜14がそれぞれ起立区間21を越えて非固定区間22及び固定区間20の中間まで延在して図示されているが、前記非固定区間22及び固定区間20の弾性伸縮部材12〜14は、弾性伸縮部材12〜14による収縮力が作用しない自然状態で延在しているものである。また、この起立区間21を越えて自然状態で延在する範囲は任意である。例えば、図示例のように、非固定区間22を越えて固定区間20の中間までとしてもよいし、非固定区間22の中間までとしてもよいし、延在させなくてもよい。
【0040】
前記固定区間20、起立区間21及び非固定区間22は、互いに間をあけずナプキン長手方向に連続して設けられ、サイド不織布7のナプキン長手方向の全長に亘って設けられている。
【0041】
前記固定区間20は、
図3に示されるように、二重に折り返されたサイド不織布7の内方側部分を断面Z状に折り畳んで、互いに対面するシート同士をホットメルト接着剤やヒートシールなどの接合手段によって接合した区間である。この固定区間20では、前記二重シート内部に弾性伸縮部材12〜14が伸長状態で接合されておらず、前記弾性伸縮部材12〜14による収縮力が作用していない。なお、前記二重シート内部は、接合してもよいし、接合しなくてもよい。
【0042】
前記起立区間21は、
図1に示されるように、少なくとも体液排出部位Hを含む長手方向範囲に設けられている。
図1に示される例では、ウイング状フラップWの前側基端部から生理用ナプキン後方の所定位置まで連続して設けられている。前記起立区間21では、
図2に示されるように、前記二重シート内部に、少なくとも該起立区間21の両端、好ましくは起立区間21の両端及び長手方向の適宜の位置で、ホットメルト接着剤などの接合手段によってサイド不織部7に接合された弾性伸縮部材12〜14が配設されることにより、前記弾性伸縮部材13配設部位を屈曲点として、断面く字状に内側に開口を向けたポケットC、Cを形成しながら肌側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。前記起立区間21では、二重に折り返されたサイド不織布7を折り畳んだ状態で互いに対面するシート同士が接合されることはなく、使用状態では
図2に示されるように弾性伸縮部材による収縮力によって肌側に起立している。前記二重シート内部は、弾性伸縮部材12〜14とサイド不織布7との接合部位のみで接合し、それ以外の部位は接合しなくてもよいし、弾性伸縮部材の接合部位以外の部位でも接合するようにしてもよい。
【0043】
前記非固定区間22では、
図4に示されるように、二重シート内部に弾性伸縮部材12〜14が伸長状態で接合されておらず、前記弾性伸縮部材12〜14による収縮力が作用していない。また、非固定区間22では、二重に折り返されたサイド不織布7を折り畳んだ状態で互いに対面するシート同士が接合されることはなく、使用状態では、
図4に示されるように、前記起立区間21が肌側に起立するのに引っ張られて肌側に起立し、この起立高さは前記起立区間21に近づくにつれて高くなっている。
【0044】
次に、前記各区間20〜22と、生理用ナプキン1を個装する際の折り線との相対的位置関係について説明する。第1形態例としては、
図1に示されるように、生理用ナプキン1の前側において、起立区間21の前側端部が生理用ナプキン1の前側部分を折り畳む折り線L2より前側に位置するように設けている。すなわち、生理用ナプキン1の前側部分を折り畳む折り線L2は、起立区間21を通る位置に設けられている。
【0045】
また、第2形態例としては、
図5に示されるように、生理用ナプキン1の前側において、起立区間21の前側端部が生理用ナプキン1の前側部分を折り畳む折り線L2より後側に位置するように設けている。すなわち、生理用ナプキン1の前側部分を折り畳む折り線L2は、非固定区間22を通る位置に設けられている。
【0046】
以上の構成からなる本生理用ナプキン1では、前記固定区間20と起立区間21との間に非固定区間22を設けてあるため、従来のものに比べ、個装状態から取り出した状態で、ナプキン端部の立ち上がりが小さく抑えられるとともに、吸収性能及び横漏れ防止効果が向上するという効果を奏する。詳細に説明すると、
図10及び
図11に示される従来の吸収性物品Nの場合、
図6に示されるように、弾性伸縮部材54による収縮力によりサイド不織布53が肌側に起立して立体ギャザー55を形成する起立区間の直ぐ外側に連続して、サイド不織布53を折り畳んだ状態で吸収体側に固定する固定区間が設けられている。これにより、弾性伸縮部材54の固定端Pと固定区間の内部側位置とが一致するように形成されている。その結果、弾性伸縮部材54の収縮力が、直接、固定端Pに集中荷重として作用するため、吸収性物品の端部を起立させる力が大きくなり、個装から取り出した状態では、前側の折り線L2を屈曲軸として吸収性物品の前側が肌側に大きく立ち上がるようになる。
【0047】
これに対して、起立区間21の前側端部が前記折り線L2より前側に位置する前記第1形態例に係る生理用ナプキン1では、
図7に示されるように、固定区間20と起立区間21との間に非固定区間22が備えられているため、前記起立区間21に接合された弾性伸縮部材14の固定端Pが直接固定区間20に固定されるのではなく、固定区間20との間に非固定区間22が介在する可動点となるため、弾性伸縮部材14の固定端Pに作用する張力が小さくなる。また、弾性伸縮部材14の固定端Pとサイド不織布7が吸収体側に固定される固定区間20との間に、サイド不織布7が吸収体側に固定されず弾性伸縮部材による収縮力も作用しない非固定区間22が設けられることにより、弾性伸縮部材14の固定端Pに作用する収縮力は、非固定区間22のサイド不織布7を介して分布荷重として作用する。このため、生理用ナプキン1の前側部分の立ち上がりが抑えられるようになる。
【0048】
一方、起立区間21の前側端部が前記折り線L2より後側に位置する前記第2形態例に係る生理用ナプキン1の場合、
図8に示されるように、前記第1形態例の場合と同様に、弾性伸縮部材14の固定端Pがナプキン本体に対して可動点となるため、固定端Pに作用する張力が小さくなる。また、弾性伸縮部材14の収縮力は、非固定区間22を介して分布荷重として作用するため、生理用ナプキン1の前側部分の起立が小さく抑えられる。
【0049】
更に、弾性伸縮部材14の固定端Pが、個装時に生理用ナプキン1の前側部分を折り畳む折り線L2より後側に位置しているため、生理用ナプキン1の前側部分を立ち上がらせる回転モーメントを最小化できるようになる。仮に、弾性伸縮部材14の固定端Pと固定区間20の内部側位置との中央に折れ曲がりの基点(折り線L2)が位置すると(S/2=F)、上方向分力の回転モーメントを0とでき、水平方向分力による回転モーメントもかなり小さくできる。弾性伸縮部材14の固定端Pと固定区間20の内部側位置との間の距離S(非固定区間22のナプキン長手方向の長さ)の寸法は、立体ギャザーBSの起立高さHに対して、H/2以上、好ましくは2H/3以上、更に好ましくはH以上とするのがよい。
【0050】
また、前記固定区間20と起立区間21との間に非固定区間22を設けることにより、
図9に示されるように、立体ギャザーBSの肌当接面の起立状態も良好となる。すなわち、従来の吸収性物品では、
図9(A)に示されるように、起立区間の直ぐ外側に連続して、弾性伸縮部材及びサイド不織布を固定した固定区間が設けられているため、立体ギャザーの肌当接面(最も肌側に起立する面)が固定区間で折り畳まれて吸収体側に接合された状態のまま、肌側に突出するようになる。すなわち、
図11に示されるように、立体ギャザーの肌当接面が固定区間で固定された内側に倒れ込んだ平面状態をほぼ保持したまま肌側に突出する。このため、
図11に示されるように、左右の立体ギャザーの先端同士の離間幅である有効吸収幅が狭く、実質的に体液を吸収するのに効果的な吸収幅が狭くなっていた。これに対し、本生理用ナプキン1では、
図9(B)に示されるように、起立区間21と固定区間20との間にサイド不織布7を固定しない非固定区間22が備えられているため、起立区間21における弾性伸縮部材14による変形が固定区間20で固定された状態に影響を受けずに成されるようになり、立体ギャザーBSの肌当接面が弾性伸縮部材14の収縮力により外側に拡がるように変形する。このため、
図2に示されるように、左右の立体ギャザーBS、BSの先端同士の離間幅である有効吸収幅が広くなり、広い面積で体液が吸収できるようになる。
【0051】
前記非固定区間22のナプキン長手方向の長さSは、具体的な長さで示すと、10mm以上、好ましくは10mm〜40mm、より好ましくは10mm〜20mmとするのがよい。前記非固定区間22を所定の長さ以上で形成することにより、固定区間20でサイド不織布7を折り畳んで固定した状態が起立区間21で肌側に起立する状態に影響を及ぼしにくくなり、起立区間21の立体ギャザーBSの起立がより一層良好となる。
【0052】
図1及び
図5に示されるように、前記弾性伸縮部材14の前側の固定端Pは、生理用ナプキン1の前端から60mm以上、好ましくは60mm〜100mm、より好ましくは60mm〜70mm離間した位置に設けるのがよい。この距離は、弾性伸縮部材12〜14を伸長させ生理用ナプキン1を展開した状態(
図1及び
図5に示される展開状態)での長さである。これにより、生理用ナプキン1の前側部分に作用する弾性伸縮部材14による収縮力の作用点が前端から十分に離間した位置となるため、この収縮力による生理用ナプキン1の前側部分の立ち上がりがより確実に小さくできる。
【0053】
生理用ナプキン1の外形線は、少なくとも立体ギャザーBSが形成された幅方向範囲において、長手方向前側の外形線が凹凸状に形成されるようにするのが好ましい。立体ギャザーBSが形成された幅方向範囲とは、肌側に起立する立体ギャザーBSが形成されるナプキン幅方向の範囲であって、固定区間20においてサイド不織布7が折り畳まれて吸収体4側に固定されたナプキン幅方向範囲のことである。また、外形線が凹凸状に形成されるとは、波状に形成された外形線の中心部を通る直線又は曲線に対し、外形線が外側に突出する凸部と内側に窪む凹部が少なくとも一つずつ形成されるようにしたものである。この範囲の外形線を凹凸状に形成することにより、前側端部の折れやヨレが防止できるとともに、前側端部が身体の曲線に沿って変形しやすくなり、違和感が軽減できるようになる。なお、ナプキンの外形線が凹凸状に形成される範囲は、
図1及び
図5に示されるように、立体ギャザーBSの幅方向範囲を越えた範囲まで形成することができる。
【0054】
前記立体ギャザーBSの肌当接面に配置する弾性伸縮部材14は、立体ギャザーBSの幅方向範囲のうち、ナプキン幅方向内側に多く偏在しているのが好ましい。立体ギャザーBSの幅方向範囲とは、固定区間20においてサイド不織布7が折り畳まれて吸収体4側に固定されたナプキン幅方向範囲のことである。ナプキン幅方向内側に多く偏在するとは、前記立体ギャザーBSの幅の1/2より内側に配置された本数が、これより外側に配置された本数より多いことである。好ましくは、立体ギャザーBSの肌当接面には、幅方向範囲の1/2より内側にのみ弾性伸縮部材14を配置するのがよい。これにより、弾性伸縮部材14の収縮力によって立体ギャザーBSの幅方向外側が内側に湾曲するナプキン幅方向の変形が抑えられるようになる。
【0055】
ところで、生理用ナプキン1の後側においても前側と同様に構成することにより、ナプキン後側部分が弾性伸縮部材による収縮力によって肌側に立ち上がるのを軽減するとともに、吸収性能及び横漏れ防止効果を向上させるようにするのが好ましい。すなわち、ナプキン後側の非固定区間22の長さも、10mm以上、好ましくは10mm〜40mm、より好ましくは10mm〜20mmとするのがよい。
【0056】
また、起立区間21の後側端部は、生理用ナプキン1の後端から70mm以上離間した位置に設けるのが好ましい。ナプキン後側は、臀部の丸みに対応してナプキン前側より緩やかに変形することが求められることから、ナプキン前側の起立区間21の前端とナプキン前端との距離より長くしている。
【0057】
更に、生理用ナプキン1の後側においても、少なくとも前記立体ギャザーBSが形成された幅方向範囲において、長手方向前側の外形線が凹凸状に形成されるようにするのが好ましい。長手方向端部の外形線を凹凸状に形成するのは、前側と後側の両方としてもよいし、いずれか一方としてもよい。